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特許7560156調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20240925BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20240925BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G02B26/00
G02B5/26
B81B3/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022552127
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2020072828
(87)【国際公開番号】W WO2021142791
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521399803
【氏名又は名称】深▲せん▼市海譜納米光学科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN HYPERNANO OPTICS TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】1903,1904, Building1, COFCO Chuangxin R&D Centre Zone 69, Xingdong Community Xin’an Street, Bao’an District Shenzhen, Guangdong 518000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】郭 斌
【審査官】弓指 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522510(JP,A)
【文献】特開2001-296483(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080317(WO,A1)
【文献】特開2005-250376(JP,A)
【文献】特開2005-055790(JP,A)
【文献】特開2008-134388(JP,A)
【文献】国際公開第2005/050801(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103048283(CN,A)
【文献】TUOHINIEMI M ET AL,"Optical transmission performance of a surface-micromachined Fabry-Perot interferometer for thermal infrared",JORNAL OF MICROMECHANICS AND MICROENGINEERING,英国,INSTITUTE OF PHYSICS PUBLISHING,2012年09月18日,vol.22, no.11,115004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/35、26/00-26/08
B81B 1/00- 7/04
B81C 1/00-99/00
G01J 3/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスであって、互いに結合されてそれらの間にチャンバーを形成する第1鏡面及び第2鏡面を含み、前記第1鏡面と前記第2鏡面の互いに結合される部位の表面に前記第1鏡面又は第2鏡面の移動を駆動するための電極が設けられ、前記第1鏡面と前記第2鏡面はそれぞれシリコン薄膜を多点結合加工することによって形成された分布ブラッグ反射器であり、前記第1鏡面及び前記第2鏡面の互いに結合される部位は、前記多点結合されてその間に形成されるキャビティのうちの1つの位置に対応することを特徴とする調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項2】
前記第1鏡面と前記第2鏡面はそれぞれ絶縁層を有するシリコンベース上に形成され、前記第1鏡面と前記第2鏡面はそれぞれ多点結合によってそれらの間にキャビティを形成する2層の前記シリコン薄膜から構成される前記分布ブラッグ反射器を含むことを特徴とする請求項1に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項3】
前記第1鏡面又は前記第2鏡面の前記シリコン薄膜はシリコン薄膜ウエハからシリコン基板及び対応する絶縁層を除去して形成されたシリコン薄膜であることを特徴とする請求項2に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項4】
前記シリコンベースは前記シリコン薄膜ウエハの前記シリコン基板から形成されることを特徴とする請求項3に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項5】
前記第1鏡面と前記第2鏡面の前記チャンバーとは反対側の面に環状重りが設けられることを特徴とする請求項3に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項6】
前記環状重りは前記シリコン薄膜ウエハの前記シリコン基板の一部を保留することによって製造されることを特徴とする請求項5に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項7】
前記第1鏡面と前記第2鏡面はそれぞれ前記シリコン薄膜をSOIウエハのシリコン薄膜上に多点結合することによって形成された前記分布ブラッグ反射器であり、前記SOIウエハの前記デバイスの有効動作領域に対応する領域のシリコン基板は部分的に除去されることを特徴とする請求項1に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項8】
前記SOIウエハの前記シリコン基板が除去された領域の厚さは10~200ミクロンであることを特徴とする請求項7に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項9】
前記SOIウエハの前記シリコン基板を除去された残り領域は絶縁層及び前記SOIウエハのシリコン薄膜を含むことを特徴とする請求項7に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項10】
前記SOIウエハの周辺部分の前記シリコン基板と前記絶縁層上に前記第1鏡面又は前記第2鏡面を載置するためのシリコンベースを形成することを特徴とする請求項9に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項11】
前記第1鏡面と前記第2鏡面はそれぞれ前記シリコン薄膜をシリコン基板上に多点結合することによって前記分布ブラッグ反射器を形成し、前記第1鏡面と前記第2鏡面の互いに結合される部位は前記シリコン薄膜と前記シリコン基板との間に形成されるキャビティのうちの1つの位置に対応することを特徴とする請求項1に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項12】
前記シリコン基板の前記チャンバーとは反対側に絶縁層が設けられることを特徴とする請求項11に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項13】
前記絶縁層は二酸化シリコン又は反射防止膜であることを特徴とする請求項2、3、9、12のいずれか1項に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項14】
前記シリコン薄膜はSOIウエハ上に形成された単結晶シリコン薄膜又は絶縁層を有するシリコン基板上に堆積によって形成された多結晶シリコン薄膜を含むことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項15】
前記シリコン薄膜と前記キャビティの光学的厚さは前記デバイスの中心波長の1/4であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【請求項16】
前記結合の方式は共晶結合、ポリマー結合、陽極結合又はシリコン~シリコン直接結合を含むことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターの分野に関し、特に調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
中赤外線及び熱赤外線範囲(例えば、3000nm~14000nm)のスペクトルイメージングは例えば、リアルタイムガス識別や漏れ監視などの分野に幅広く適用できる。現在、関連する波長範囲のスペクトルカメラは主にロータリーフィルター又はプリズム分光に基づく技術を使用している。その結果、装置の体積が大きく、コストが高く、赤外線スペクトルイメージング技術の大規模な応用に大きな支障をもたらす。研究分野では、現在、Fabry~Perot(ファブリペロチャンバー)干渉に基づく調整可能なフィルタリングデバイス(tunable FPI)を使用して赤外線分光器モジュールを構成する技術は既存である。しかしながら、関連するFPI技術を小型化された低コストの赤外線スペクトルイメージングに使用することはまだ空白である。
【0003】
現在のFPIデバイスは主にマイクロマシニング(micromachining)によって形成され、本体プロセス型及び表面プロセス型を含む。表面プロセス型デバイスは宙吊りの薄膜によって可動鏡面を形成する。本体プロセス型デバイスはカンチレバービーム構造を有する基板によって可動鏡面を形成する。中赤外線及び熱赤外線スペクトルのFPIデバイスに対して、本体プロセス型デバイスの場合、基板にカンチレバービームを加工すると、デバイスの設計及び加工の複雑さが増加するため、コストが増加してしまう。本体プロセス型デバイスでは、スプリング構造(spring)と鏡面は同一の基板によって提供されるため、鏡面はスプリング構造の影響を受けて固有の応力及び変形が存在する。カンチレバービーム構造は非常に大きなチップ面積を占有するため、鏡面自体の寸法も制限されている。現在の表面プロセス型デバイスは加工が困難で、プロセスが複雑であるため、大規模な商業的応用を実現することが非常に困難である。
【0004】
これを鑑みて、中赤外線及び熱赤外線範囲のスペクトルイメージングに対して新規のFPIデバイス構造を設計することは非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、中赤外線及び熱赤外線帯域の従来のファブリペロチャンバーデバイスではハイパースペクトルイメージングを行うための解決的手段を提供することが困難であり、且つ従来のFPIデバイスには加工の難しさが高く、プロセスが複雑であるなどの問題があることに対して、本願の実施例は、上記問題を解決するために、調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様によれば、本願は調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスを提供し、該デバイスは、互いに結合されてそれらの間にチャンバーを形成する第1鏡面及び第2鏡面を含み、第1鏡面と第2鏡面の互いに結合される部位の表面に第1鏡面又は第2鏡面の移動を駆動するための電極が設けられ、第1鏡面と第2鏡面はそれぞれシリコン薄膜を結合加工することによって形成された分布ブラッグ反射器である。シリコン薄膜を結合して第1鏡面と第2鏡面を形成することで、プロセスを簡素化し、デバイスの体積を効果的に小さくすることができる。
【0007】
好ましくは、第1鏡面と第2鏡面はそれぞれ絶縁層を有するシリコンベース上に形成され、第1鏡面と第2鏡面はそれぞれ多点結合によってそれらの間にキャビティを形成する2層のシリコン薄膜から構成される分布ブラッグ反射器を含む。このとき、第1鏡面と第2鏡面は2層のシリコン薄膜及び中間のキャビティによって可動鏡面構造を形成し、第1鏡面と第2鏡面を結合することでファブリペロキャビティ構造を形成し、薄膜構造を使用してファブリペロキャビティを構成することで、デバイスの体積を効果的に小さくすることができる。
【0008】
好ましくは、第1鏡面又は第2鏡面のシリコン薄膜はシリコン薄膜ウエハからシリコン基板及び対応する絶縁層を除去することによって形成されたシリコン薄膜である。シリコン薄膜ウエハを使用してシリコン薄膜を作製することで、低いコスト及び加工の難しさを実現できる。
【0009】
好ましくは、シリコンベースはシリコン薄膜ウエハのシリコン基板から形成される。シリコン薄膜ウエハのシリコン基板を部分的に除去すると、シリコンベースを形成することができ、作製方式は簡便である。
【0010】
好ましくは、第1鏡面と第2鏡面のチャンバーとは反対側の面に環状重りが設けられる。環状重りは第1鏡面と第2鏡面の平坦度を向上させることができる。
【0011】
好ましくは、環状重りはシリコン薄膜ウエハのシリコン基板の一部を保留することによって製造される。環状重りの加工は簡単である。
【0012】
好ましくは、第1鏡面と第2鏡面はそれぞれシリコン薄膜をSOIウエハのシリコン薄膜上に多点結合することによって形成された分布ブラッグ反射器であり、SOIウエハのデバイスの有効動作領域に対応する領域のシリコン基板は部分的に除去される。このとき、第1鏡面と第2鏡面はいずれもシリコン薄膜とSOIウエハのシリコン薄膜とを結合することによって形成され、加工が容易であり、信頼性が高い。
【0013】
好ましくは、SOIウエハのシリコン基板が除去された領域の厚さは10~200ミクロンである。この厚さの第1鏡面と第2鏡面はデバイスの機械的性能に応じて可動鏡面を設計して形成することができる。
【0014】
好ましくは、SOIウエハのシリコン基板が除去された領域は絶縁層及びSOIウエハのシリコン薄膜を含む。シリコン基板はエッチングの方式によって除去でき、SOIウエハの絶縁層及びSOIウエハのシリコン薄膜を可動鏡面として保留する。
【0015】
好ましくは、SOIウエハの周辺部分にあるシリコン基板と絶縁層は第1鏡面又は第2鏡面を載置するためのシリコンベースを形成する。シリコンベースはデバイス組立の支持に使用できる。
【0016】
好ましくは、第1鏡面と第2鏡面はそれぞれシリコン薄膜をシリコン基板上に多点結合することによって分布ブラッグ反射器を形成し、第1鏡面と第2鏡面の互いに結合される部位はシリコン薄膜とシリコン基板との間に形成されるキャビティのうちの1つの位置に対応する。この構造では、シリコン薄膜とキャビティは弾性可動構造を形成し、それにより第1鏡面と第2鏡面の移動を駆動し、構造が簡単である。
【0017】
好ましくは、シリコン基板の前記チャンバーとは反対側に絶縁層が設けられる。絶縁層は堆積又は熱酸化などの方式によってシリコン基板上に加工することで得られ、従って、ソースが簡単であり、加工が容易である。
【0018】
好ましくは、絶縁層は二酸化シリコン又は反射防止膜である。二酸化シリコン又は反射防止膜は絶縁層における光の反射率を低下させ、光の透過率を向上させることができる。
【0019】
好ましくは、シリコン薄膜はSOIウエハ上に形成された単結晶シリコン薄膜又は絶縁層を有するシリコン基板上に堆積によって形成された多結晶シリコン薄膜を含む。シリコン薄膜はSOIウエハを加工することによって形成されるか、又は化学気相堆積によって形成されることができ、生産プロセスが成熟し、難しさが低い。
【0020】
好ましくは、シリコン薄膜とキャビティの光学的厚さはデバイスの中心波長の1/4である。デバイスの中心波長(例えば、3000nm~14000nm)によってシリコン薄膜とキャビティの光学的厚さを制御することができ、さらにシリコン薄膜とキャビティの物理的厚さを得て、中赤外線及び熱赤外線範囲のFPIデバイスの要件を満たす。
【0021】
好ましくは、結合の方式は共晶結合、ポリマー結合、陽極結合又はシリコン~シリコン直接結合を含む。結合の方式は様々であり、技術が成熟し、工業生産に有利である。
【発明の効果】
【0022】
本願の実施例は調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスを開示し、互いに結合されてそれらの間にチャンバーを形成する第1鏡面及び第2鏡面を含み、第1鏡面と第2鏡面の互いに結合される部位の表面に第1鏡面又は第2鏡面の移動を駆動するための電極が設けられ、第1鏡面と第2鏡面はそれぞれシリコン薄膜を結合加工することによって形成された分布ブラッグ反射器である。シリコン薄膜はシリコン薄膜ウエハによって加工され、2層のシリコン薄膜及び中間のキャビティから構成される分布ブラッグ反射器を形成することができる。分布ブラッグ反射器はさらにシリコン薄膜とSOIウエハのシリコン薄膜とを結合することによって形成されてもよい。また、第1鏡面と第2鏡面はキャビティに接触するシリコン薄膜上に結合されることで弾性可動構造を形成してもよく、それにより、さらに第1鏡面と第2鏡面の移動を駆動する。該光学フィルタリングデバイスは赤外線波長範囲内に適用でき、構造が簡単であり、加工プロセスが成熟し、FPIデバイスの体積を効果的に小さくするとともに、産業上の商業的量産を実現することができる。
【0023】
実施例をさらに理解するために図面が含まれており、図面は本明細書の一部として本明細書に組み込まれている。図面は実施例を示し、説明とともに本発明の原理を解釈することに用いられる。ほかの実施例及び実施例の予期の利点の多くは、以下の詳細な説明を引用することによってよりよく理解されると容易に想到できる。図面の素子は必ずしも互いに縮尺に応じて作成されたものではない。同一の符号は対応する類似の部材を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願の実施例1に係る調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスの断面模式図である。
図2】本願の実施例1に係る調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスのシリコン薄膜ウエハの断面模式図である。
図3】本願の実施例1に係る調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスの複合層の断面模式図である。
図4】本願の実施例1に係る調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスの第1鏡面又は第2鏡面の断面模式図である。
図5】本願の実施例2に係る調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスの断面模式図である。
図6】本願の実施例3に係る調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面及び実施例を参照しながら本願をさらに詳細に説明する。理解できるように、ここで説明される具体的な実施例は単に関連する発明を解釈することにのみ用いられ、該発明を限定するものではない。またなお、説明の便宜上、図面には発明に関連する部分のみが示されている。
【0026】
なお、矛盾しない限り、本願の実施例及び実施例の特徴を互いに組み合わせることができる。以下、図面及び実施例を参照しながら本願を詳細に説明する。
【0027】
本発明の実施例では、調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス1を提供し、互いに結合されてそれらの間にチャンバー2を形成する第1鏡面11及び第2鏡面12を含み、第1鏡面11と第2鏡面12の互いに結合される部位の表面に第1鏡面11又は第2鏡面12の移動を駆動するための電極3が設けられ、第1鏡面11と第2鏡面12はそれぞれシリコン薄膜4を結合加工することによって形成された分布ブラッグ反射器である。分布ブラッグ反射器(distributed Bragg reflector、DBR)はファブリペロキャビティ構造の反射器として機能する。光は異なる媒体を通過するとき界面で反射され、反射率の大きさが媒体間の屈折率の大きさに関係し、従って、異なる屈折率の薄膜を交互に周期的に積層すると、光がこれら異なる屈折率の薄膜を通過するとき、各層で反射された光が位相角の変化により干渉し、その後、互いに結合されて強い反射光を得るため、一定の波長範囲で光の反射を減少させ、光の通過量を増加させることができる。好適な実施例では、第1鏡面11と第2鏡面12はそれぞれシリコン薄膜4を結合してシリコン/空気/シリコン積層構造を形成する分布ブラッグ反射器である。シリコン薄膜4は直接シリコン薄膜ウエハ上で加工して作製することができ、プロセスが簡単であり、技術が成熟し、工業生産の要件を満たす。該調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス1は加工プロセスが簡単であり、コストが低く、小型赤外線スペクトルイメージング装置に適用できる。
【0028】
(実施例1)
【0029】
図1は本発明の実施例1に係る調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイス1の断面図を示す。図1に示すように、第1鏡面11と第2鏡面12はそれぞれシリコンベース5上に形成され、第1鏡面11又は第2鏡面12のシリコン薄膜4はシリコン薄膜ウエハ6からシリコン基板10及び対応する絶縁層9を除去して形成されたシリコン薄膜4である。第1鏡面11と第2鏡面12はそれぞれ多点結合によってそれらの間にキャビティ8を形成する2層のシリコン薄膜4から構成される分布ブラッグ反射器を含む。シリコンベース5はシリコン薄膜ウエハ6の一部であり、シリコン薄膜ウエハ6は好ましくは、図2に示す構造であり、即ち、シリコン基板10、絶縁層9及びシリコン薄膜4を積層することで形成され、シリコン薄膜ウエハ6上のシリコン薄膜4は一定の厚さを有する。シリコン薄膜ウエハ6上のシリコン薄膜4は堆積によって形成された多結晶シリコン薄膜であってもよい。好ましくは、シリコン薄膜ウエハ6はSOIウエハ6であってもよく、このとき、SOIウエハ6上のシリコン薄膜4は単結晶シリコンである。好適な実施例では、第1鏡面11又は第2鏡面12のシリコン薄膜4はSOIウエハ6からシリコン基板10を除去することで形成される。一方では、第1鏡面11と第2鏡面12のチャンバー2を向く面には研磨又はエッチングによってSOIウエハ6のシリコン基板10を完全に除去してシリコン薄膜4を形成する。他方では、第1鏡面11と第2鏡面12のチャンバー2とは反対側の面にはSOIウエハ6のシリコン基板10を部分的に除去してシリコンベース5を形成する。従って、SOIウエハ6上にシリコン薄膜4を加工形成するため、プロセスが簡単であり、工業生産を実現することができ、第1鏡面11と第2鏡面12がシリコンベース5上に設けられることで、後続のFPIデバイスの支持及び組立が容易になる。
【0030】
第1鏡面11又は第2鏡面12のシリコン薄膜4はシリコン薄膜ウエハ6からシリコン基板10及び対応する絶縁層9を除去することで形成されたシリコン薄膜4であり、シリコン薄膜ウエハ6からシリコン薄膜4及び第1鏡面11又は第2鏡面12を加工する具体的なステップは以下の手段を採用できる。2つのシリコン薄膜ウエハ6のシリコン薄膜4を有する面を互いに向かい合わせ、多点結合によって図3に示す複合層7を形成する。ここでの多点結合とは、2つのシリコン薄膜ウエハ6の間に複数の第1結合物13を設けることであり、第1結合物13間はキャビティ8である。複合層7の一方側のシリコン薄膜ウエハ6のシリコン基板10が完全に除去されてシリコン薄膜4を保留するとともに、他方側のシリコン薄膜ウエハ6のデバイス1の有効動作領域に対応するシリコン基板10が部分的に除去されてシリコンベース5を形成する。好適な実施例では、研磨又はエッチングによってSOIウエハ6のシリコン基板10を完全に除去してシリコン薄膜4を形成し、該SOIウエハ6からシリコン薄膜4を加工する手段は簡単であり、信頼性が高い。
【0031】
図4に示すように、好適な実施例では、シリコンベース5はSOIウエハ6のシリコン基板10によって形成される。シリコンベース5上に絶縁層9を有する。第1鏡面11と第2鏡面12のチャンバー2とは反対側の面に環状重り14が設けられる。選択可能な実施例では、環状重り14はSOIウエハ6上のシリコン基板10の一部を保留することによって形成され、プラズマエッチングなどの方法を使用してシリコンベース5の一部を除去することで、第1鏡面11と第2鏡面12の平坦度を強化するための環状重り14を形成することができ、ただし、環状重り14の形状は環状に限定されず、楕円、矩形などのほかの規則的又は不規則な形状であってもよく、エッチング方式はプラズマエッチングに限定されず、化学試薬エッチングであってもよく、具体的な使用シーンに応じて適切なエッチング方式を選択して所要の形状をエッチングすることができる。
【0032】
複合層7のSOIウエハ6を除去処理して図4に示す第1鏡面11又は第2鏡面12の構造を得て、このとき、第1鏡面11と第2鏡面12はそれぞれ多点結合によってそれらの間にキャビティ8を形成する2層のシリコン薄膜4を含み、それにより分布ブラッグ反射器を形成する。シリコン薄膜4の存在によって、デバイス1全体の体積を効果的に小さくすることができる。最後に、第1鏡面11と第2鏡面12を結合してファブリペロキャビティ構造を形成し、具体的な構造は図1に示され、第2結合物15は第1鏡面11と第2鏡面12の外周に位置し、第1鏡面11と第2鏡面12は可動鏡面構造として電極3によって第1鏡面11と第2鏡面12の移動を駆動することができ、良好なフィルタリング効果を達成することができる。シリコン薄膜4とキャビティ8の光学的厚さはデバイス1の中心波長の1/4である。デバイス1の中心波長(例えば、3000nm~14000nm)によってシリコン薄膜4とキャビティ8の光学的厚さを制御することができ、さらにシリコン薄膜4とキャビティ8の物理的厚さを得て、中赤外線及び熱赤外線範囲のFPIデバイスの要件を満たす。光学では、光学的厚さは屈折率と物理的厚さとの積に等しく、例えば、デバイス1の中心波長が3000nm、シリコン薄膜4の屈折率が3である場合、シリコン薄膜4の物理的厚さは3000/4/3=250nmである。
【0033】
該光学フィルタリングデバイス1はSOIウエハ6をもとに加工され、加工プロセスが簡単である。そして、該光学フィルタリングデバイス1はシリコン薄膜4から構成され、従って、デバイスの体積を大幅に小さくすることができ、低コストの小型赤外線スペクトルイメージング装置での応用に有利である。
【0034】
(実施例2)
【0035】
図5に示すように、第1鏡面11と第2鏡面12はそれぞれシリコン薄膜4をSOIウエハ6のシリコン薄膜4上に多点結合することで分布ブラッグ反射器を形成し、SOIウエハ6のシリコン薄膜4の上方のデバイス1の有効動作領域に対応する領域のシリコン基板10は部分的に除去される。このとき、シリコン薄膜4は相対的に薄く、SOIウエハ6のシリコン薄膜4は相対的に厚い。好適な実施例では、SOIウエハのシリコン基板10が除去された領域の厚さは10~200ミクロンである。この厚さでは、第1鏡面と第2鏡面はデバイスの機械的性能に応じて可動鏡面を設計して形成することができる。
【0036】
好適な実施例では、SOIウエハ6のシリコン基板10が除去された領域は絶縁層9及びSOIウエハ6のシリコン薄膜4を含む。シリコン基板10はエッチングによって除去でき、SOIウエハ6の絶縁層9及びSOIウエハ6のシリコン薄膜4を可動鏡面として保留する。SOIウエハ6の周辺部分のシリコン基板10及び絶縁層9は第1鏡面11又は第2鏡面12を載置するためのシリコンベース5を形成する。このとき、第1鏡面11と第2鏡面12はいずれもシリコン薄膜4とSOIウエハ6のシリコン薄膜4とを結合することで形成され、多点結合では第1結合物13を使用して間隔をあけて配列してキャビティ8を形成する。
【0037】
好適な実施例では、シリコン薄膜4はシリコン薄膜ウエハ6又はSOIウエハ6のシリコン薄膜4であってもよく、SOIウエハ6のシリコン薄膜4は単結晶シリコンである。シリコン薄膜4はさらに堆積によって形成された多結晶シリコン薄膜であってもよい。1つの場合では、SOIウエハ6のシリコン薄膜4はSOIウエハ6をさらに加工することによって形成されることができ、具体的な加工プロセスについて、実施例1におけるシリコン薄膜4の作製プロセスを参照する。別の場合では、シリコン薄膜4は化学気相堆積によって多結晶シリコン薄膜を形成することができ、これらの2種の作製プロセスはいずれも非常に成熟し、コストが低い。SOIウエハ6からシリコン薄膜4を加工する手段は簡単であり、信頼性が高い。好適な実施例では、絶縁層9は二酸化シリコン又は反射防止膜である。SOIウエハ6のシリコン薄膜4上の二酸化シリコン又は反射防止膜は絶縁層9における光の反射を低減させ、光の透過率を向上させることができる。最後に、第1鏡面11と第2鏡面12の外周に第2結合物15が設けられ、第1鏡面11と第2鏡面12を結合してファブリペロキャビティ構造を構成し、電極3によって第1鏡面11と第2鏡面12の移動を制御し、第1鏡面11と第2鏡面12との距離を変更し、それにより共振条件を変更し、フィルタリング効果を達成し、所要の波長の光を得る。
【0038】
(実施例3)
【0039】
図6に示すように、第1鏡面11と第2鏡面12はそれぞれシリコン薄膜4をシリコン基板10上に多点結合することによって分布ブラッグ反射器を形成し、多点結合では第1結合物13を使用して間隔をおいて配列してキャビティ8を形成する。第1鏡面11と第2鏡面12の互いに結合される部位はシリコン薄膜4とシリコン基板10とから形成されるキャビティ8のうちの1つの位置に対応する。このとき、第1鏡面11と第2鏡面12の互いに結合される部位は第2結合物15によって結合され、第2結合物15はシリコン薄膜4とシリコン基板10との間に形成されるキャビティ8のうちの1つの位置に設けられる。それにより、シリコン薄膜4とキャビティ8は弾性可動構造を形成し、それにより第1鏡面11と第2鏡面12の移動を駆動し、第1鏡面11と第2鏡面12との距離を変更し、フィルタリング効果を達成し、所要の波長の光を得る。好適な実施例では、シリコン基板10のチャンバー2から離れた側に絶縁層9が設けられ、絶縁層9は二酸化シリコン又は反射防止膜である。シリコン基板10上の二酸化シリコン又は反射防止膜によって光の透過率を向上させることができる。
【0040】
好適な実施例では、シリコン薄膜4はシリコン薄膜ウエハ6のシリコン薄膜4又は多結晶シリコン薄膜を含む。シリコン薄膜ウエハ6はSOIウエハ6であってもよく、このとき、SOIウエハ6上のシリコン薄膜4は単結晶シリコンである。1つの場合では、SOIウエハ6のシリコン薄膜4はSOIウエハ6をさらに加工することによって形成でき、具体的な加工プロセスについて、実施例1におけるシリコン薄膜4の作製プロセスを参照する。別の場合では、シリコン薄膜4は化学気相堆積によって多結晶シリコン薄膜を形成することができ、これらの2種の作製プロセスはいずれも非常に成熟し、コストが低い。
【0041】
好適な実施例では、第1鏡面11と第2鏡面12の結合部位の表面にそれぞれ環状電極3を有する。2つの環状電極3は第1鏡面11と第2鏡面12が結合された後、容量性ドライバーを形成する。2つの環状電極3に電圧を印加すると、第1鏡面11と第2鏡面12は相対的に変位する。2つの環状電極3はさらにそれぞれリード電極に接続され、外部回路の接続に用いられる。ほかの選択可能な実施例では、電極3は環状に限定されず、楕円形、方形などの形状であってもよく、具体的には、デバイスの要件に応じて設計される。
【0042】
好適な実施例では、本願の実施例で使用される結合の方式は共晶結合、ポリマー結合、陽極結合又はシリコン~シリコン直接結合を含み、シリコン薄膜4とシリコン薄膜4/シリコン基板10との結合、及び第1鏡面11と第2鏡面12との結合を含む。共晶結合は金属を移行層として使用することによってシリコン~シリコン結合を実現し、表面に対する要件が低く、結合温度が低く、結合強度が高い。陽極結合は結合温度が低く、ほかのプロセスとの適合性が高く、結合強度及び安定性が高いなどの利点を持ち、シリコン/シリコン基板間の結合、非シリコン材料とシリコン材料、及びガラス、金属、半導体、セラミックとの相互結合に適用できる。2つのシリコンウエハ(酸化又は非酸化)は高温処理によって直接結合でき、何らかの接着剤や外部電界が不要であり、プロセスが簡単である。この結合技術はシリコン~シリコン直接結合技術と呼ばれる。実際の結合の表面プロセス及び材料に応じて適切な結合方式を選択して鏡面チップの結合を実現することができる。
【0043】
本願の実施例は調整可能な赤外線光学フィルタリングデバイスを開示し、互いに結合されてそれらの間にチャンバーを形成する第1鏡面及び第2鏡面を含み、第1鏡面と第2鏡面の互いに結合される部位の周辺表面に第1鏡面又は第2鏡面の移動を駆動するための電極が設けられ、第1鏡面と第2鏡面はそれぞれシリコン薄膜結合を加工することによって形成された分布ブラッグ反射器である。シリコン薄膜はSOIウエハによって加工を行うことで、2層のシリコン薄膜及び中間のキャビティから構成される分布ブラッグ反射器を形成することができる。分布ブラッグ反射器はさらにシリコン薄膜とSOIのシリコン薄膜とを結合することによって形成されてもよい。また、第1鏡面と第2鏡面はさらにキャビティに接触するシリコン薄膜上に結合されることで弾性可動構造を形成してもよく、それによりさらに第1鏡面と第2鏡面の移動を駆動する。該光学フィルタリングデバイスは構造が簡単であり、加工プロセスが成熟し、産業上の量産を実現することができる。
【0044】
以上、本願の具体的な実施形態を説明したが、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本願に開示されている技術的範囲を逸脱せずに容易に想到し得る変化や置換はすべて本願の保護範囲に含まれている。従って、本願の保護範囲は上記請求項の保護範囲に準じるべきである。
【0045】
本願の説明では、理解する必要がある点として、用語「上」、「下」、「内」、「外」などで指示される方位又は位置関係は図示に基づく方位又は位置関係であり、単に本願を説明しやすく説明を簡素化するためのものであり、係る装置又は素子が必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構成及び操作されたりすることを指示又は暗示するものではなく、従って、本願を限定するものとして理解されるべきではない。用語「含む」は請求項にリストされていない素子又はステップの存在を排除しない。素子の前にある用語「一」又は「1つ」がこの素子が複数存在することを排除しない。互いに異なる従属請求項に記載されるいくつかの措置の簡単な事実はこれらの措施の組み合わせが改良に使用できないことを示すものではない。請求項におけるいずれの参照符号は範囲を限定するためのものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6