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特許7560159ボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240925BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/04 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023003880
(22)【出願日】2023-01-13
(65)【公開番号】P2024100130
(43)【公開日】2024-07-26
【審査請求日】2024-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田澤 秀博
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-194553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-H01L 21/607
H05K 3/30-H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、
前記電子部品を初期位置からピックアップして前記対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、
前記ボンディングツールを移動させる駆動部と、
前記ボンディングツールの前記電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、
前記ボンディングツールにおける前記初期位置から前記目標位置までの複数の軌跡を記憶する記憶部であって、前記複数の軌跡は前記撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記複数の軌跡から選択された所定の軌跡に沿って前記ボンディングツールを移動させるように前記駆動部を制御する制御部と
を備える、
ボンディング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の軌跡に沿って前記ボンディングツールを移動させ、
前記撮像部は、前記複数の軌跡のそれぞれに対応する、前記ボンディングツールの先端部の複数の撮像画像を撮像し、
前記所定の軌跡は、前記複数の撮像画像に基づいて選択される、
請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
前記複数の撮像画像に基づいて、前記複数の軌跡の前記通過位置における前記ボンディングツールの先端部の、前記撮像部の焦点からの遠近を評価する遠近評価部と、
前記遠近評価部の評価結果に基づいて、前記ボンディングツールの先端部が前記撮像部の焦点に最も接近する軌跡を、前記所定の軌跡として選択する軌跡選択部と
をさらに備える、
請求項2に記載のボンディング装置。
【請求項4】
前記制御部は、
第1時間変数型多項式によって生成される、前記ボンディングツールの第1方向における位置を指令する第1位置指令と、
前記第1時間変数型多項式とは独立した第2時間変数型多項式によって生成される、前記ボンディングツールの前記第1方向と交差する第2方向における位置を指令する第2位置指令と、
に基づいて、前記駆動部を制御する、
請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項5】
前記第1時間変数型多項式の最大次数は、前記第2時間変数型多項式の最大次数よりも大きい、
請求項4に記載のボンディング装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1時間変数型多項式として下記式によって生成される、前記ボンディングツールの前記第1方向における前記第1位置指令に基づいて、前記駆動部を制御する、
請求項4に記載のボンディング装置。
【数1】
Z:tZ時点での前記第1方向における位置
z:前記第1方向における最終到達位置の座標
z0,Cz1,…,Cz(n-1),Czn:係数(nは2以上の整数)
z:前記第1方向における移動開始時点からの経過時間
z:前記第1方向における移動開始時点から移動終了時点までの移動時間
【請求項7】
前記制御部は、前記第2時間変数型多項式として下記式によって生成される、前記ボンディングツールの前記第2方向における前記第2位置指令に基づいて、前記駆動部を制御する、
請求項4に記載のボンディング装置。
【数2】
Y:tY時点での前記第2方向における位置
y:前記第2方向における最終到達位置の座標
y0,Cy1,…,Cy(m-1),Cym:係数(mは2以上の整数)
y:前記第2方向における移動開始時点からの経過時間
y:前記第2方向における移動開始時点から移動終了時点までの移動時間
【請求項8】
前記複数の軌跡は、前記第1時間変数型多項式及び前記第2時間変数型多項式の係数の相違によって実現される、
請求項5に記載のボンディング装置。
【請求項9】
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、
前記電子部品を初期位置からピックアップして前記対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、
前記ボンディングツールを移動させる駆動部と、
前記ボンディングツールの前記電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、
前記ボンディングツールの軌跡を記憶する記憶部と、
前記駆動部を制御する制御部と
を備えるボンディング装置を用いたボンディング方法であって、
前記ボンディング方法は、
前記ボンディングツールにおける前記初期位置から前記目標位置までの複数の軌跡を記憶することであって、前記複数の軌跡は前記撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、前記複数の軌跡を記憶することと、
前記複数の軌跡から所定の軌跡を選択することと、
前記所定の軌跡に沿って前記ボンディングツールを移動させることと
を含む、
ボンディング方法。
【請求項10】
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、
前記電子部品を初期位置からピックアップして前記対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、
前記ボンディングツールを移動させる駆動部と、
前記ボンディングツールの前記電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、
前記ボンディングツールの軌跡を記憶する記憶部と、
前記駆動部を制御する制御部と
を備えるボンディング装置を動作させるボンディングプログラムであって、
コンピュータに、
前記ボンディングツールにおける前記初期位置から前記目標位置までの複数の軌跡を記憶することであって、前記複数の軌跡は前記撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、
前記複数の軌跡を記憶することと、
前記複数の軌跡から所定の軌跡を選択することと、
前記所定の軌跡に沿って前記ボンディングツールを移動させることと
を実行させる、
ボンディングプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボンディング装置は、電子部品をピックアップして基板にボンディングするボンディングツールと、ボンディングツールを移動させる駆動部と、ボンディングツールが所定の軌跡に沿って移動するように駆動部を制御する制御部と、所定の軌跡に沿って移動しているボンディングツールを撮像する撮像部とを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、制御対象物を所定の軌跡に沿って移動させる数値制御方法が開示されている。ここでは、まず、軌跡を空間多項式で近似すると共に、該多項式を時間関数としての多項式に変換する。次に、変換された時間関数としての多項式を各制御軸について分配し、各軸に分配された時間関数としての多項式に基づいて、各制御軸における制御指令を生成する。次に、制御指令に基づいて、各制御軸を制御して、制御対象物を軌跡に沿って移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-175105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ボンディングツールと撮像部の相対的な位置関係は、ボンディング装置のメンテナンスなどによって変化する。このため、一定の軌跡に沿ってボンディングツールを移動させると、撮像部の焦点からボンディングツールが離間し、撮像画像が不鮮明になる場合がある。
【0006】
本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡易に焦点を合わせることができるボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様に係るボンディング装置は、電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、電子部品を初期位置からピックアップして対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、ボンディングツールを移動させる駆動部と、ボンディングツールの電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、ボンディングツールにおける初期位置から目標位置までの複数の軌跡を記憶する記憶部であって、複数の軌跡は撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、記憶部と、記憶部に記憶された複数の軌跡から選択された所定の軌跡に沿ってボンディングツールを移動させるように駆動部を制御する制御部とを備える。
【0008】
本願発明の他の一態様に係るボンディング方法は、電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、電子部品を初期位置からピックアップして対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、ボンディングツールを移動させる駆動部と、ボンディングツールの電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、ボンディングツールの軌跡を記憶する記憶部と、駆動部を制御する制御部とを備えるボンディング装置を用いたボンディング方法であって、ボンディング方法は、ボンディングツールにおける初期位置から目標位置までの複数の軌跡を記憶することであって、複数の軌跡は撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、複数の軌跡を記憶することと、複数の軌跡から所定の軌跡を選択することと、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを移動させることとを含む。
【0009】
本願発明の他の一態様に係るボンディングプログラムは、電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、電子部品を初期位置からピックアップして対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、ボンディングツールを移動させる駆動部と、ボンディングツールの電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、ボンディングツールの軌跡を記憶する記憶部と、駆動部を制御する制御部とを備えるボンディング装置を動作させるボンディングプログラムであって、コンピュータに、ボンディングツールにおける初期位置から目標位置までの複数の軌跡を記憶することであって、複数の軌跡は撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、複数の軌跡を記憶することと、複数の軌跡から所定の軌跡を選択することと、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを移動させることとを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、簡易に焦点を合わせることができるボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るボンディング装置の構成を示す図である。
図2】複数の軌跡を示す図である。
図3】一実施形態に係るボンディング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本願発明の実施形態について説明する。本実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0013】
<ボンディング装置>
まず、図1及び図2を参照しつつ、本願発明の一実施形態に係るボンディング装置1の構成について説明する。図1は、一実施形態に係るボンディング装置の構成を示す図である。図2は、複数の軌跡を示す図である。
【0014】
なお、図1及び図2には、位置関係及び移動方向等を説明するために、便宜的にX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標を付している。X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とする。X軸方向は紙面に垂直方向、Y軸方向は紙面の左右方向、Z軸方向は紙面の上下方向である。
【0015】
ボンディング装置1は、ダイ(半導体チップ)12をリードフレーム21にボンディングするダイボンダである。ダイ12は電子部品の一例に相当し、リードフレーム21は対象物の一例に相当する。ボンディング装置1は、Z軸方向が鉛直方向、且つ、X軸方向及びY軸方向が水平方向となるように用いられる。
【0016】
なお、電子部品はダイ12に限定されるものではなく、例えば、能動素子、受動素子又はMEMSデバイスなどであってもよい。また、対象物は基板の一種であるリードフレーム21に限定されるものではなく、例えば、インタポーザ基板、半導体基板又はキャリアプレートなどの基板であってもよく、ダイなどの電子部品であってもよい。
【0017】
ボンディング装置1は、ピックアップ部10、ボンディングステージ20、ボンディングヘッド30、撮像部40、駆動部50及び制御装置90を備えている。
【0018】
ピックアップ部10は、ダイ12の集合基板であるウェハ11を搬送し、ボンディングヘッド30へとダイ12を供給する。ピックアップ部10は、電子部品を供給する電子部品供給部の一例に相当する。電子部品供給部は、例えば、トレイフィーダ、パーツフィーダ又はテープフィーダなどであってもよい。
【0019】
ボンディングステージ20は、リードフレーム21を供給する。また、ボンディングステージ20は、搬送されてきたリードフレーム21にダイ12をボンディングするためのステージである。ボンディングステージ20は、リードフレーム21を搬送するための移動ステージを兼ねてもよい。ボンディングステージ20は、Y軸方向においてピックアップ部10と並んで設けられている。ボンディングステージ20は、対象物への電子部品のボンディングが実行されるボンディング部の一例に相当する。対象物が基板である場合、ボンディング装置1は、例えば、マガジンに収納された基板を供給する基板供給部、基板をマガジンから取り出してボンディング部へ搬送するローダ、電子部品が実装された基板をボンディング部から搬送してマガジンに収容するアンローダ、基板をスライドして搬送するガイドレール、又は、基板を整列させる基板インデックスなどの図示しない構成要素を有しもよい。
【0020】
ボンディングヘッド30は、ダイ12をピックアップ及びリリースする。また、ボンディングヘッド30は、ダイ12をリードフレーム21にボンディングする。ボンディングヘッド30は、ピックアップ部10の上方の初期位置P1と、ボンディングステージ20の上方の目標位置P2との間を往復する。ボンディングヘッド30は、その上部において駆動部50に接続されている。ボンディングヘッド30は、吸着コレット33を備えている。
【0021】
吸着コレット33は、ダイ12を吸着して保持する保持ツールである。吸着コレット33は、ボンディングヘッド30の駆動部50とは反対側の端部に設けられている。吸着コレット33の先端部が、ダイ12を保持可能に構成されている。吸着コレット33は、ダイ12を初期位置P1においてピックアップしてリードフレーム21の上の目標位置P2においてボンディングしてリリースする。吸着コレット33は、ボンディングツールの一例に相当する。
【0022】
なお、ボンディングツールは、電子部品のピックアップ及びボンディングが可能であれば、吸着コレットに限定されるものではない。ボンディングツールは、例えば、電子部品を電気的に吸着する静電チャックであってもよく、電子部品を機械的に支持するメカニカルチャックであってもよい。
【0023】
なお、図示を省略しているが、ボンディングヘッド30は、ダイ12を吸着するためにエアを吸引する吸引ツール、ダイ12を加熱する加熱ツール、ダイ12を冷却する冷却ツール、及び、非酸化性雰囲気を形成するパージガスを供給するパージガス供給ツールなどをさらに備えてもよい。
【0024】
撮像部40は、初期位置P1と目標位置P2との間を往復する吸着コレット33の先端部を撮像するイメージセンサの一種である。撮像部40は、吸着コレット33によるダイ12の保持状態を評価するための撮像画像を撮像する。撮像部40は、移動する吸着コレット33をZ軸負方向側から撮像するように配置されている。つまり、撮像部40の光軸41は、撮像部40からZ軸正方向に延出している。撮像画像は、撮像部40から後述する画像解析部95に送られる。
【0025】
駆動部50は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にボンディングヘッド30を移動させる直交ロボットである。駆動部50は、X軸アクチュエータ51、Y軸アクチュエータ52及びZ軸アクチュエータ53を有している。X軸アクチュエータ51はボンディングヘッド30をX軸方向に沿って移動させ、Y軸アクチュエータ52はボンディングヘッド30をY軸方向に沿って移動させ、Z軸アクチュエータ53はボンディングヘッド30をZ軸方向に沿って移動させる。駆動部50は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれにおけるボンディングヘッド30の移動を独立に制御される。
【0026】
ボンディングヘッド30がダイ12を初期位置P1においてピックアップしてから目標位置P2においてボンディングするまでの間、駆動部50は、例えば、ボンディングヘッド30をX軸方向において固定し、Y軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる。駆動部50は、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjに沿って吸着コレット33を移動させることができるように構成されている。
【0027】
ピックアップされたダイ12がピックアップ部10上の他のダイ12に接触しないよう、吸着コレット33は、Z軸方向の移動を開始してから、時間差を付けてY軸方向の移動を開始する。同様に、ボンディングするダイ12がリードフレーム21やボンディング済みの他のダイ12に接触しないよう、吸着コレット33は、Y軸方向の移動を終了してから、時間差を付けてZ軸方向の移動を終了する。このように、初期位置P1及び目標位置P2の直近において、吸着コレット33はZ軸方向にのみ移動するため、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjは、初期位置P1及び目標位置P2の直近において重なっている。
【0028】
図2に示すように、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjは、初期位置P1から目標位置P2までの軌跡であって、撮像部40の光軸41上の通過位置L1,L2,…,Ljが互いに異なる軌跡である。すなわち、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjは、移動開始地点と移動終了地点とが同じであって、中間地点が互いに異なる。軌跡TR1は、通過位置L1,L2,…,Ljのうち、撮像部40に最も近い通過位置L1を通過する。軌跡TR2は、通過位置L1の次に撮像部40に近い通過位置L2を通過する。軌跡TRjは、通過位置L1,L2,…,Ljのうち、撮像部40から最も遠い通過位置Ljを通過する。通過位置L1と通過位置Ljとの間に撮像部40の焦点Fが位置する。言い換えると、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjは、撮像部40の焦点F又は焦点F近傍を通過するように設定される。
【0029】
焦点Fの最も近くを通過する軌跡をTRk(1≦k≦j)とし、軌跡TRkにおける撮像部40の光軸41上の通過位置をLkとする。このとき、通過位置Lkと焦点Fとの間の距離を|Lk-F|とし、通過位置L1と通過位置Ljとの間の距離をLj-L1としたとき、0≦|Lk-F|≦{(Lj-L1)/(j-1)}/2の関係が成り立つ。{(Lj-L1)/(j-1)}は、通過位置L1,L2,…,Ljのうち隣接する2点の通過位置の間の距離の平均である。jが大きくなるほど、すなわち軌跡の数が多くなるほど、通過位置Lkと焦点Fとの間の距離|Lk-F|は小さくなる。したがって、吸着コレット33に焦点Fの近くを通過させることができる。jの値は、例えば3以上20以下とすることができる。
【0030】
なお、ピックアップからボンディングまでの間、駆動部50は、吸着コレット33を、Y軸方向及びZ軸方向に加えて、X軸方向にさらに移動させてもよい。この場合であっても、吸着コレット33の軌跡は、撮像部40の光軸41上の焦点F又は焦点F近傍を通過するように設定される。
【0031】
なお、駆動部は、直交ロボットに限定されるものではなく、例えばロボットマニピュレータ等であってもよい。
【0032】
制御装置90は、ボンディングヘッド30、撮像部40及び駆動部50を制御する。制御装置90は、例えば、記憶部91、指令生成部93、制御部94、遠近評価部97、軌跡選択部98及び画像解析部95を備えている。制御装置90の各部は、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによって構成される。すなわち、制御装置90は、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア又はこれらの協働によって実行される。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを備えている。メモリには本願発明のプログラムが格納されている。CPUは、メモリに格納されたプログラムを実行することによって、記憶部91、指令生成部93、制御部94、遠近評価部97、軌跡選択部98及び画像解析部95の機能を実現するように構成されている。
【0033】
記憶部91は、制御部94が駆動部50を制御するための位置指令を生成する時間変数型多項式を記憶する。当該位置指令は、移動開始時点からの経過時間に対する吸着コレット33の位置を指令する情報である。また、記憶部91は、当該位置指令に基づいて、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjに沿って吸着コレット33を初期位置P1から目標位置P2まで移動させるための、制御部94の制御パラメータをさらに記憶する。言い換えると、記憶部91は、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjを記憶する。
【0034】
記憶部91に記憶される時間変数型多項式は、互いに独立した第1時間変数型多項式及び第2時間変数型多項式を含む。第1時間変数型多項式は、Z軸方向における吸着コレット33の位置を指令する第1位置指令を生成するための関数である。第1時間変数型多項式は、Z軸方向における移動開始時点Tz1からの経過時間を変数とし、吸着コレット33のZ軸方向における位置を導出する。第1時間変数型多項式によって生成される第1位置指令に基づいて、制御部94は、駆動部50のZ軸アクチュエータ53を制御する。第2時間変数型多項式は、Y軸方向における吸着コレット33の位置を指令する第2位置指令を生成するための関数である。第2時間変数型多項式は、Y軸方向における移動開始時点Ty1からの経過時間を変数とし、吸着コレット33のY軸方向における位置を導出する。第2時間変数型多項式によって生成される第2位置指令に基づいて、制御部94は、駆動部50のY軸アクチュエータ52を制御する。
【0035】
例えば、第1時間変数型多項式の最大次数は、第2時間変数型多項式の最大次数よりも大きい。これは、第1時間変数型多項式によって生成される第1位置指令に基づいて制御されるZ軸方向の移動が、第2時間変数型多項式によって生成される第2位置指令に基づいて制御されるY軸方向の移動よりも複雑なためである。具体的には、初期位置P1から目標位置P2へ移動するとき、吸着コレット33のY軸方向における移動は+Y軸方向の片方向であるが、吸着コレット33のZ軸方向における移動は+Z軸方向及び-Z軸方向の双方向である。このように、移動経路が複雑な方向における時間変数型多項式の次数を大きくすることで、吸着コレット33の軌跡を滑らかにすることができる。
【0036】
第1時間変数型多項式は、例えば下記式で表される。一例として、第1時間変数型多項式は、下記式においてn=9とした9次式である。
【数1】
Z:t時点での第1方向における位置
:Z軸方向における最終到達位置の座標
z0,Cz1,…,Cz(n-1),Czn:係数(nは2以上の整数)
:Z軸方向における移動開始時点Tz1からの経過時間
:Z軸方向における移動開始時点Tz1から移動終了時点Tz2までの移動時間
【0037】
第2時間変数型多項式は、例えば下記式で表される。一例として、第2時間変数型多項式は、下記式においてm=7とした7次式である。
【数2】
Y:t時点での第2方向における位置
:Y軸方向における最終到達位置の座標
y0,Cy1,…,Cy(m-1),Cym:係数(mは2以上の整数)
:Y軸方向における移動開始時点Ty1からの経過時間
:Y軸方向における移動開始時点Ty1から移動終了時点Ty2までの移動時間
【0038】
記憶部91に記憶される制御パラメータは、例えば、第1及び第2時間変数型多項式の係数、総移動時間、移動開始時間差、移動終了時間差、ダイ12の構成、並びに、リードフレーム21の構成などである。
【0039】
第1及び第2時間変数型多項式の係数は、係数Cz0,Cz1,…,Cz(n-1),Czn及び係数Cy0,Cy1,…,Cy(m-1),Cymの組み合わせである。係数Cz0,Cz1,…,Cz(n-1),Czn及び係数Cy0,Cy1,…,Cy(m-1),Cymの組み合わせによって、吸着コレット33の軌跡は決定される。記憶部91は、j本の軌跡TR1,TR2,…,TRjのそれぞれに対応する、j組の係数の組み合わせを記憶する。
【0040】
総移動時間は、吸着コレット33の初期位置P1から目標位置P2までの移動に要する時間の長さである。言い換えると、ダイ12をピックアップしてからボンディングするまでの間に、吸着コレット33がZ軸方向及びY軸方向の少なくとも一方向において移動している時間の長さである。
【0041】
なお、総移動時間の代わりに、吸着コレット33の移動速度の平均値及び最大値などが制御パラメータとして記憶されてもよい。この場合、記憶された移動速度に基づいて、総移動時間が算出されてもよい。
【0042】
移動開始時間差は、ダイ12をピックアップした吸着コレット33の、Z軸方向における移動開始時点とY軸方向における移動開始時点との時間差である。移動終了時間差は、ダイ12をボンディングする吸着コレット33の、Z軸方向における移動終了時点とY軸方向における移動終了時点との時間差である。
【0043】
第1時間変数型多項式、第2時間変数型多項式、第1及び第2時間変数型多項式の係数、移動時間、移動開始時間差、並びに、移動終了時間差は、例えば、制御装置90の図示を省略した入力部によって入力される。入力部は、例えば、キーボード、マウス又はタッチパネルなどである。
【0044】
指令生成部93は、記憶部91に記憶された第1時間変数型多項式及び制御パラメータによって、吸着コレット33のZ軸方向における位置指令を生成する。指令生成部93は、記憶部91に記憶された第2時間変数型多項式及び制御パラメータによって、吸着コレット33のY軸方向における位置指令を生成する。
【0045】
制御部94は、ボンディングヘッド30、撮像部40及び駆動部50を制御する。
【0046】
制御部94は、ボンディングヘッド30の吸着コレット33を制御して、吸着コレット33にダイ12をピックアップ又はリリースさせる。具体的には、ボンディングヘッド30が初期位置P1に到着したときに、制御部94は、吸着コレット33の吸引を開始し、ダイ12を吸着コレット33に吸着させる。ボンディングヘッド30が目標位置P2に到着したときに、制御部94は、吸着コレット33の吸引を終了し、ダイ12を吸着コレット33から離脱させる。
【0047】
制御部94は、撮像部40を制御して、吸着コレット33が撮像部40の光軸41上の通過位置L1,L2,…,Ljを通過するときに、吸着コレット33の先端部の動画又は静止画を撮像させる。
【0048】
焦点Fに最も接近する軌跡TRkが複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から選択される前には、制御部94は、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjに沿った往路及び復路の少なくとも一方において、吸着コレット33の先端部を撮像させる。このとき、例えば、吸着コレット33の先端部にはダイ12が保持されている。往路とは、吸着コレット33が初期位置P1から目標位置P2に向けて移動する経路である。復路とは、吸着コレット33が目標位置P2から初期位置P1に向けて移動する経路である。
【0049】
焦点Fに最も接近する軌跡TRkが複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から選択された後には、制御部94は、所定の軌跡の往路及び復路の両方において、吸着コレット33の先端部を撮像させる。このとき、例えば、往路における吸着コレット33の先端部にはダイ12が保持されており、復路における吸着コレット33の先端部にはダイ12が保持されていない。
【0050】
制御部94は、X軸アクチュエータ51を制御して、吸着コレット33をX軸方向において移動させる。制御部94は、Y軸アクチュエータ52を制御して、吸着コレット33をY軸方向において移動させる。制御部94は、Z軸アクチュエータ53を制御して、吸着コレット33をZ軸方向において移動させる。具体的には、制御部94は、指令生成部93において第1時間変数型多項式によって生成されたZ軸方向の位置指令に基づいて、Z軸アクチュエータ55を制御し、吸着コレット33をZ軸方向に移動させる。また、制御部94は、指令生成部93において第2時間変数型多項式によって生成されたY軸方向の位置指令に基づいて、Y軸アクチュエータ52を制御し、吸着コレット33をY軸方向に移動させる。
【0051】
焦点Fに最も接近する軌跡TRkが複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から選択される前には、制御部94は、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjに沿って吸着コレット33を移動させる。焦点Fに最も接近する軌跡TRkが複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から選択された後には、制御部94は、選択された軌跡TRkに沿って吸着コレット33を移動させる。
【0052】
遠近評価部97は、通過位置L1,L2,…,Ljにおいて撮像された複数の撮像画像に基づいて、通過位置L1,L2,…,Ljにおける吸着コレット33の先端部の、撮像部40の焦点Fからの遠近を評価する。遠近評価部97は、カメラのオートフォーカスにおいて用いられる技術が利用可能である。例えば、遠近評価部97は、コントラスト方式、位相差方式又は鏡面位相差方式によって評価する。コントラスト方式の場合、遠近評価部97は、隣接画素間のコントラストが大きいほど、吸着コレット33の先端部が撮像部40の焦点Fに近いと評価する。位相差方式又は鏡面位相差方式の場合、遠近評価部97は、撮像画像を2つに分割し、2つの撮像画像の間隔が小さいほど、吸着コレット33の先端部が撮像部40の焦点Fに近いと評価する。
【0053】
軌跡選択部98は、通過位置L1,L2,…,Ljにおいて撮像された複数の撮像画像に基づいて、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から、1つの軌跡TRkを選択する。軌跡選択部98は、遠近評価部97の評価結果に基づいて、吸着コレット33の先端部が焦点Fに最も接近する軌跡TRkを選択する。選択された軌跡TRkは、記憶部91に記憶される。
【0054】
画像解析部95は、撮像部40によって撮像された画像を解析する。画像解析部95は、選択された軌跡TRkの往路及び復路の両方において、吸着コレット33の画像を解析する。
【0055】
往路の吸着コレット33の画像を解析するとき、画像解析部95は、吸着コレット33によるダイ12の保持状態を評価する。画像解析部95は、往路の吸着コレット33にダイ12が保持されているか否かを評価する。画像解析部95は、往路の吸着コレット33にダイ12が保持されていないと評価した場合、吸着コレット33が初期位置P1においてダイ12をピックアップし損ねたと判断する。この場合、制御部94は、吸着コレット33を初期位置P1に移動させ、吸着コレット33にダイ12のピックアップを行わせる。画像解析部95は、往路の吸着コレット33にダイ12が保持されていると評価した場合、吸着コレット33の正常な保持位置からのダイ12のズレの有無及び程度を評価する。吸着コレット33の正常な保持位置からのダイ12のズレの程度に応じて、指令生成部93は、吸着コレット33の位置指令を補正する。
【0056】
復路の吸着コレット33の画像を解析するとき、画像解析部95は、ダイ12が保持されているか否かを評価する。画像解析部95は、復路の吸着コレット33にダイ12が保持されていると評価した場合、吸着コレット33が目標位置P2においてダイ12をリリースし損ねたと判断する。この場合、制御部94は、吸着コレット33を目標位置P2に移動させ、吸着コレット33にダイ12のリリースを再実施する。または、制御部94は、ボンディング装置1の動作を停止するとともに、オペレータに通知して当該ダイの廃棄を促す。画像解析部95が復路の吸着コレット33にダイ12が保持されていないと評価した場合、制御部94は、吸着コレット33に次のダイ12をピックアップさせるべく、吸着コレット33を初期位置P1に移動させる。
【0057】
<ボンディング方法>
次に、図3を参照しつつ、本願発明の一実施形態に係るボンディング装置1を用いたボンディング方法について説明する。図3は、一実施形態に係るボンディング方法を示すフローチャートである。
【0058】
まず、第1時間変数型多項式及び第2時間変数型多項式を記憶し(S11)、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjを記憶する(S12)。ステップS12では、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjに沿って吸着コレット33を初期位置P1から目標位置P2まで移動させるための、制御部94の制御パラメータを記憶する。
【0059】
次に、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjに対応する複数の撮像画像を撮像する(S13)。撮像部40は、光軸41上を通過する吸着コレット33の先端部を撮像する。すなわち、撮像部40は、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの通過位置L1,L2,…,Ljにおける吸着コレット33の先端部を撮像する。例えば、吸着コレット33の先端部にはダイ12が保持されており、撮像画像にはダイ12が写っている。但し、撮像画像はダイ12が写っているものに限定されるものではなく、ダイ12を保持していない吸着コレット33の先端部を写すものであってもよい。
【0060】
次に、複数の撮像画像の焦点Fからの遠近を評価する(S14)。遠近評価部97は、撮像部40から撮像された複数の撮像画像を取得する。遠近評価部97は、取得した複数の撮像画像を基に、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの通過位置L1,L2,…,Ljの焦点Fからの距離の大小を評価する。
【0061】
次に、所定の軌跡TRkを選択する(S15)。軌跡選択部98は、遠近評価部97の評価結果に基づいて、通過位置L1,L2,…,Ljの中から、最も焦点Fに近い通過位置Lkを選択する。そして、軌跡選択部98は、この最も焦点Fに近い通過位置Lkを通過する軌跡TRk、すなわち吸着コレット33の先端部が焦点Fに最も接近する軌跡TRk、を選択する。
【0062】
最後に、ボンディングを開始する(S16)。まず、制御装置90は、初期位置P1において吸着コレット33にダイ12をピックアップさせる。次に、制御装置90は、軌跡選択部98によって選択された所定の軌跡TRkに沿って、吸着コレット33を初期位置P1から目標位置P2までの往路において移動させる。次に、制御装置90は、目標位置P2において吸着コレット33にダイ12をボンディングさせる。次に、制御装置90は、目標位置P2において吸着コレット33にダイ12をリリースさせる。次に、制御装置90は、吸着コレット33を所定の軌跡TRkに沿って、目標位置P2から初期位置P1までの復路において移動させる。なお、制御装置90は、所定の軌跡TRkの往路及び復路において、撮像部40によって吸着コレット33の先端部を撮像し、画像解析部95によって吸着コレット33によるダイ12の保持状態を評価させる。
【0063】
以上説明したように、本発明の一態様に係るボンディング装置1は、吸着コレット33の軌跡を記憶する記憶部91と、吸着コレット33を移動させる駆動部50と、駆動部50を制御する制御部94を備える。記憶部91は、初期位置P1及び目標位置P2が同じであって、撮像部40の光軸41上の通過位置L1,L2,…,Ljがそれぞれ異なる、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjを記憶する。制御部94は、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から選択された所定の軌跡TRkに沿って吸着コレット33を移動させるように駆動部50を制御する。また、本発明の一態様に係るボンディング方法は、当該ボンディング装置1を用いたボンディング方法であって、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjを記憶することと、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から所定の軌跡TRkを選択することと、所定の軌跡TRkに沿って吸着コレット33を移動させることとを含む。また、本発明の一態様に係るボンディングプログラムは、当該ボンディング装置1を動作させるボンディングプログラムであって制御装置90を構成するコンピュータに、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjを記憶することと、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から所定の軌跡TRkを選択することと、所定の軌跡TRkに沿って吸着コレット33を移動させることとを実行させる。
【0064】
これらの態様によれば、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjの中から、撮像部40の光軸41上の通過位置Lkが撮像部40の焦点Fに最も近い軌跡TRkを選択することができる。このため、撮像部40、ボンディングヘッド30及び吸着コレット33の取付位置を調整することや、撮像部40の焦点Fの位置を調整することなく、撮像部40の焦点Fを吸着コレット33の先端部に簡易に合わせることができる。したがって、鮮明な撮像画像を簡易に取得することができ、当該撮像画像に基づいて吸着コレット33におけるダイ12の保持状態を評価することができる。
【0065】
一態様として、制御部94は、実際に複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjに沿って吸着コレット33を移動させる。このとき、撮像部40は、複数の軌跡TR1,TR2,…,TRjのそれぞれに対応する、吸着コレット33の先端部の複数の撮像画像を撮像する。そして、所定の軌跡TRkは、複数の撮像画像に基づいて選択される。
【0066】
この態様によれば、実際に撮像した複数の撮像画像に基づいて最適な軌跡TRkを選択することで、焦点Fを合わせる精度を向上させることができる。したがって、さらに鮮明な撮像画像を取得することができ、吸着コレット33におけるダイ12の保持状態についての評価精度を向上させることができる。
【0067】
一態様として、ボンディング装置1は、遠近評価部97と、軌跡選択部98とを備える。遠近評価部97は、複数の撮像画像に基づいて、通過位置L1,L2,…,Ljの焦点Fからの遠近を評価する。軌跡選択部98は、遠近評価部97の評価結果に基づいて、吸着コレット33の先端部が最も焦点Fに接近する軌跡TRkを選択する。
【0068】
この態様によれば、自動的に焦点Fを合わせることができる。したがって、焦点Fを合わせる速度を向上させることができる。
【0069】
一態様として、制御部94は、第1時間変数型多項式によって生成されるZ軸方向における位置指令に基づいてZ軸アクチュエータ53を制御し、第2時間変数型多項式によって生成されるY軸方向における位置指令に基づいてY軸アクチュエータ52を制御する。第1時間変数型多項式及び第1時間変数型多項式は互いに独立し、第1時間変数型多項式の最大次数は、第2時間変数型多項式の最大次数よりも大きい。
【0070】
これによれば、Y軸方向よりも複雑なZ軸方向における吸着コレット33の移動を、滑らかにすることができる。
【0071】
以下に、本願発明の実施形態の一部又は全部を付記する。なお、本願発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0072】
[付記1]
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、電子部品を初期位置からピックアップして対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、ボンディングツールを移動させる駆動部と、ボンディングツールの電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、ボンディングツールにおける初期位置から目標位置までの複数の軌跡を記憶する記憶部であって、複数の軌跡は撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、記憶部と、記憶部に記憶された複数の軌跡から選択された所定の軌跡に沿ってボンディングツールを移動させるように駆動部を制御する制御部とを備える、ボンディング装置。
【0073】
この態様によれば、複数の軌跡の中から、撮像部の光軸上の通過位置が撮像部の焦点に最も近い軌跡を選択することができる。このため、撮像部やボンディングツールの取付位置を調整することや、撮像部の焦点の位置を調整することなく、撮像部の焦点をボンディングツールの先端部に簡易に合わせることができる。したがって、鮮明な撮像画像を簡易に取得することができ、当該撮像画像に基づいてボンディングツールにおける電子部品の保持状態を評価することができる。
【0074】
[付記2]
制御部は、複数の軌跡に沿ってボンディングツールを移動させ、撮像部は、複数の軌跡のそれぞれに対応する、ボンディングツールの先端部の複数の撮像画像を撮像し、所定の軌跡は、複数の撮像画像に基づいて選択される、[付記1]に記載のボンディング装置。
【0075】
この態様によれば、実際に撮像した複数の撮像画像に基づいて最適な軌跡を選択することで、焦点を合わせる精度を向上させることができる。したがって、さらに鮮明な撮像画像を取得することができ、ボンディングツールにおける電子部品の保持状態についての評価精度を向上させることができる。
【0076】
[付記3]
複数の撮像画像に基づいて、複数の軌跡の通過位置におけるボンディングツールの先端部の、撮像部の焦点からの遠近を評価する遠近評価部と、遠近評価部の評価結果に基づいて、ボンディングツールの先端部が撮像部の焦点に最も接近する軌跡を、所定の軌跡として選択する軌跡選択部とをさらに備える、[付記2]に記載のボンディング装置。
【0077】
この態様によれば、自動的に焦点を合わせることができる。したがって、焦点を合わせる速度を向上させることができる。
【0078】
[付記4]
制御部は、第1時間変数型多項式によって生成される、ボンディングツールの第1方向における位置を指令する第1位置指令と、第1時間変数型多項式とは独立した第2時間変数型多項式によって生成される、ボンディングツールの第1方向と交差する第2方向における位置を指令する第2位置指令と、に基づいて、駆動部を制御する、[付記1]から[付記3]のいずれか一つに記載のボンディング装置。
【0079】
[付記5]
第1時間変数型多項式の最大次数は、第2時間変数型多項式の最大次数よりも大きい、[付記4]に記載のボンディング装置。
【0080】
この態様によれば、第1方向におけるボンディングツールの移動を、第2方向における移動よりも複雑で滑らかにすることができる。
【0081】
[付記6]
制御部は、第1時間変数型多項式として下記式によって生成される、ボンディングツールの第1方向における第1位置指令に基づいて、駆動部を制御する、[付記4]又は[付記5]に記載のボンディング装置。
【数1】
Z:t時点での第1方向における位置
:第1方向における最終到達位置の座標
z0,Cz1,…,Cz(n-1),Czn:係数(nは2以上の整数)
:第1方向における移動開始時点からの経過時間
:第1方向における移動開始時点から移動終了時点までの移動時間
【0082】
[付記7]
制御部は、第2時間変数型多項式として下記式によって生成される、ボンディングツールの第2方向における第2位置指令に基づいて、駆動部を制御する、[付記4]から[付記6]のいずれか1つに記載のボンディング装置。
【数2】
Y:t時点での第2方向における位置
:第2方向における最終到達位置の座標
y0,Cy1,…,Cy(m-1),Cym:係数(mは2以上の整数)
:第2方向における移動開始時点からの経過時間
:第2方向における移動開始時点から移動終了時点までの移動時間
【0083】
[付記8]
複数の軌跡は、第1時間変数型多項式及び第2時間変数型多項式の係数の相違によって実現される、[付記4]から[付記7]のいずれか一つに記載のボンディング装置。
【0084】
[付記9]
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、電子部品を初期位置からピックアップして対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、ボンディングツールを移動させる駆動部と、ボンディングツールの電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、ボンディングツールの軌跡を記憶する記憶部と、駆動部を制御する制御部とを備えるボンディング装置を用いたボンディング方法であって、ボンディング方法は、ボンディングツールにおける初期位置から目標位置までの複数の軌跡を記憶することであって、複数の軌跡は撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、複数の軌跡を記憶することと、複数の軌跡から所定の軌跡を選択することと、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを移動させることとを含む、ボンディング方法。
【0085】
この態様によれば、複数の軌跡の中から、撮像部の光軸上の通過位置が撮像部の焦点に最も近い軌跡を選択することができる。このため、撮像部やボンディングツールの取付位置を調整することや、撮像部のレンズを調整することなく、撮像部の焦点をボンディングツールの先端部に簡易に合わせることができる。したがって、鮮明な撮像画像を簡易に取得することができ、当該撮像画像に基づいてボンディングツールにおける電子部品の保持状態を評価することができる。
【0086】
[付記10]
電子部品を対象物にボンディングするボンディング装置であって、電子部品を初期位置からピックアップして対象物の上の目標位置にボンディングするボンディングツールと、ボンディングツールを移動させる駆動部と、ボンディングツールの電子部品を保持可能に構成された先端部を撮像する撮像部と、ボンディングツールの軌跡を記憶する記憶部と、駆動部を制御する制御部とを備えるボンディング装置を動作させるボンディングプログラムであって、コンピュータに、ボンディングツールにおける初期位置から目標位置までの複数の軌跡を記憶することであって、複数の軌跡は撮像部の光軸上の通過位置が互いに異なる、複数の軌跡を記憶することと、複数の軌跡から所定の軌跡を選択することと、所定の軌跡に沿ってボンディングツールを移動させることとを実行させる、ボンディングプログラム。
【0087】
この態様によれば、複数の軌跡の中から、撮像部の光軸上の通過位置が撮像部の焦点に最も近い軌跡を選択することができる。このため、撮像部やボンディングツールの取付位置を調整することや、撮像部のレンズを調整することなく、撮像部の焦点をボンディングツールの先端部に簡易に合わせることができる。したがって、鮮明な撮像画像を簡易に取得することができ、当該撮像画像に基づいてボンディングツールにおける電子部品の保持状態を評価することができる。
【0088】
以上説明したように、本願発明の一態様によれば、簡易に焦点を合わせることができるボンディング装置、ボンディング方法及びボンディングプログラムを提供することができる。
【0089】
なお、本願発明の一実施形態に係るボンディング装置は、電子部品を対象物にボンディングする装置であればダイボンダに限定されるものではなく、例えば、フリップチップボンダ又はチップマウンタであってもよい。
【0090】
以上説明した実施形態は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、本願発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…ボンディング装置
10…ピックアップ部
11…ウェハ
12…ダイ
20…ボンディングステージ
21…リードフレーム
30…ボンディングヘッド
33…吸着コレット
40…撮像部
41…光軸
50…駆動部
51…X軸アクチュエータ
52…Y軸アクチュエータ
53…Z軸アクチュエータ
90…制御装置
91…記憶部
93…指令生成部
94…制御部
97…遠近評価部
98…軌跡選択部
95…画像解析部
P1…初期位置
P2…目標位置
F…焦点
TR1,TR2,…,TRj…軌跡
TRk…所定の軌跡
L1,L2,…,Lj…通過位置
Lk…最も焦点に近い通過位置
図1
図2
図3