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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】仮想空間展示システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240925BHJP
   G06Q 30/0241 20230101ALI20240925BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
G06Q30/0241
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023071995
(22)【出願日】2023-04-26
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】303016018
【氏名又は名称】株式会社ITP
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206863
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 博太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 眞二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雅也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴正
(72)【発明者】
【氏名】黒田 宅美
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-133109(JP,A)
【文献】特開2022-164988(JP,A)
【文献】特開2023-048271(JP,A)
【文献】特開2020-126455(JP,A)
【文献】特開2022-113022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G06Q 30/0241
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間において電子的に構成された仮想展示を行う仮想展示システムであって、
前記仮想空間及び前記仮想展示を表す仮想データを記憶する仮想データ記憶部と、
前記仮想展示を閲覧するユーザの前記仮想空間における視界を特定する視界情報を入力する視界情報入力部と、
前記視界情報に基づいて、前記仮想データを用いて、前記ユーザが使用するユーザ用出力装置に前記仮想展示の画像を表示させるユーザ用表示制御部と、
前記仮想展示の案内者が使用する案内者用出力装置に、前記ユーザ用出力装置に表示させる画像と同じ画像を表示させる案内者用表示制御部と、
前記ユーザに提供される案内情報を前記案内者から受け付ける案内情報入力部と、
前記案内情報を、前記ユーザ用出力装置に出力させる出力制御部とを備える仮想展示システム。
【請求項2】
請求項1記載の仮想展示システムであって、
前記ユーザ用表示制御部は、前記視界情報に基づいて前記仮想展示の2次元画像を生成し、
前記案内者用表示制御部は、前記視界情報に基づく画像の生成を行うことなく、前記ユーザ用表示制御部で生成された前記2次元画像を利用して前記表示を行う仮想展示システム。
【請求項3】
請求項1記載の仮想展示システムであって、
前記ユーザ用表示制御部は、前記案内者が指示した動画像データを用いて前記ユーザ用出力装置に動画像を表示可能であり、
前記案内者用表示制御部は、前記ユーザ用表示制御部が前記動画像データのいずれの時刻を再生しているかを表す再生位置情報を間欠的に取得し、該取得した時点で前記再生位置情報に同期させながら、前記案内者が指示した動画像データを用いて前記案内者用出力装置に動画像を表示する仮想展示システム。
【請求項4】
仮想空間において電子的に構成された仮想展示を行う仮想展示システムであって、
前記仮想空間及び前記仮想展示を表す仮想データを記憶する仮想データ記憶部と、
前記仮想展示を閲覧するユーザからの指示に応じて、前記仮想空間内における前記ユーザの位置を設定する位置設定部と、
前記仮想展示を閲覧するユーザの前記仮想空間の前記位置における視界を特定する視界情報を入力する視界情報入力部と、
前記視界情報に基づいて、前記仮想データを用いて、前記ユーザが使用するユーザ用出力装置に前記仮想展示の画像を表示させるユーザ用表示制御部と、
前記位置設定部による位置の設定、および前記視界情報の一方または双方を、前記仮想展示の案内者からの指示または予め用意されたデータに基づいて制御するプッシュ型案内部を備える仮想展示システム。
【請求項5】
請求項1または4記載の仮想展示システムであって、
前記仮想データ記憶部は、前記案内者を表す画像を表示するための案内者画像データを記憶しており、
ユーザ用表示制御部は、前記案内者画像データに基づいて前記案内者の画像を表示可能であり、
該案内者の画像の表示位置は、前記仮想空間内で予め設定された所定の位置に規制されている仮想展示システム。
【請求項6】
請求項5記載の仮想展示システムであって、
前記所定の位置は、前記ユーザがいずれの位置にても、その視界内に前記案内者の画像を表示可能に設定されており、
前記視界には前記案内者の画像が1体だけ表示される仮想展示システム。
【請求項7】
請求項1または4記載の仮想展示システムであって、
前記仮想空間内における前記ユーザの位置は、予め設定された既定位置に規制される仮想展示システム。
【請求項8】
請求項1または4記載の仮想展示システムであって、
一人または特定のグループ内のユーザに対して、前記仮想空間が個別に割り当てられる仮想展示システム。
【請求項9】
請求項1または4記載の仮想展示システムであって、
前記ユーザからの指示に応じて、前記案内者が配布資料として用意した資料データを、前記ユーザが自由に利用可能な状態に取得させる資料配付部と、
いずれの前記ユーザが、前記資料データを取得したかを前記案内者に提供する情報提供部とを備える仮想展示システム。
【請求項10】
請求項1または4記載の仮想展示システムであって、
前記ユーザが、前記仮想空間内に滞在していた時間を、前記案内者に提供する情報提供部とを備える仮想展示システム。
【請求項11】
請求項1または4記載の仮想展示システムであって、
前記仮想データ記憶部は、複数の仮想データを記憶しており、
前記ユーザ用表示制御部は、前記複数の仮想データのうち前記ユーザが選択した仮想データを用いて表示を行う仮想展示システム。
【請求項12】
仮想空間において電子的に構成された仮想展示を行う仮想展示方法であって、
コンピュータが実現するステップとして、
前記仮想空間及び前記仮想展示を表す仮想データを記憶するステップと、
前記仮想展示を閲覧するユーザの前記仮想空間における視界を特定する視界情報を入力するステップと、
前記視界情報に基づいて、前記仮想データを用いて、前記ユーザが使用するユーザ用出力装置に前記仮想展示の画像を表示させるステップと、
前記仮想展示の案内者が使用する案内者用出力装置に、前記ユーザ用出力装置に表示させる画像と同じ画像を表示させるステップと、
前記ユーザに提供される案内情報を前記案内者から受け付けるステップと、
前記案内情報を、前記ユーザ用出力装置に出力させるステップとを備える仮想展示方法。
【請求項13】
仮想空間において電子的に構成された仮想展示を行う仮想展示方法であって、
コンピュータが実現するステップとして、
前記仮想空間及び前記仮想展示を表す仮想データを記憶するステップと、
前記仮想展示を閲覧するユーザからの指示に応じて、前記仮想空間内における前記ユーザの位置を設定するステップと、
前記仮想展示を閲覧するユーザの前記仮想空間の前記位置における視界を特定する視界情報を入力するステップと、
前記視界情報に基づいて、前記仮想データを用いて、前記ユーザが使用するユーザ用出力装置に前記仮想展示の画像を表示させるステップと、
前記仮想展示の案内者からの指示がなされた場合は、前記ユーザの指示にかかわらず、前記案内者からの指示によって前記位置を設定するステップとを備える仮想展示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間をユーザに展示する仮想空間展示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、仮想空間により展示会その他のイベントを開催する技術が着目されている。
特許文献1は、閲覧ユーザに対して仮想空間内のデータをヘッドマウントディスプレイなどの三次元ビューワにより閲覧可能な状態で提示するシステムを開示する。閲覧ユーザは、仮想空間内を移動しながら、仮想展示物を閲覧することができる。閲覧ユーザがリクエストをすれば、仮想展示物に関する説明が、文字等で表示されたり、音声で出力されたりする。
特許文献2は、オンライン展示会において、スタッフが来場者に対して、ビデオ通話を介して案内をできる技術を開示している。スタッフは、来場者と画面を共有しながら、説明をすることも可能となっている。
特許文献3は、仮想空間を利用して観光を行う仮想観光システムを開示している。ユーザは、アバターを仮想空間内で移動させることにより観光することができ、他のユーザと会話をすることもできる。ガイドが複数のユーザを案内することで、仮想の観光ツアーをすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-133109号公報
【文献】特開2022-164988号公報
【文献】特開2023-48271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、仮想空間におけるバーチャル展示会において、来場者に対して、展示物の説明が予め用意された文字、音声で提供されており、臨場感に欠けるという課題があった。特許文献2、3では、来場者と会話をすることも可能ではあるが、この場合においても、スタッフは、来場者が展示物のどこを見ながら質問しているのかを把握することができないため、現実の展示会に比べると円滑なコミュニケーションを実現できなかった。また、説明者が来場者に見せたい展示物がある場合、口頭でその展示物がある場所を説明する必要があり、来場者を案内することは容易ではなかった。
かかる課題は、仮想空間において展示会を開催する場合に限らず、観光その他の自然観察、美術館、博物館、工場その他の施設見学など種々の目的で、ユーザに対して仮想空間を展示する場合に共通の課題である。本発明は、かかる課題を解決し、仮想空間を展示する際に、案内者とユーザとのコミュニケーションを円滑にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1の態様として、
仮想空間において電子的に構成された仮想展示を行う仮想展示システムであって、
前記仮想空間及び前記仮想展示を表す仮想データを記憶する仮想データ記憶部と、
前記仮想展示を閲覧するユーザの前記仮想空間における視界を特定する視界情報を入力する視界情報入力部と、
前記視界情報に基づいて、前記仮想データを用いて、前記ユーザが使用するユーザ用出力装置に前記仮想展示の画像を表示させるユーザ用表示制御部と、
前記仮想展示の案内者が使用する案内者用出力装置に、前記ユーザ用画像表示装置に表示させる画像と同じ画像を表示させる案内者用表示制御部と、
前記ユーザに提供される案内情報を前記案内者から受け付ける案内情報入力部と、
前記案内情報を、前記ユーザ用出力装置に出力させる出力制御部とを備える仮想展示システムとすることができる。
【0006】
本発明の第1の態様では、仮想空間および仮想展示の画像を表示させることにより、ユーザに仮想空間内で仮想展示を閲覧しているように認識させることができる。そして、ユーザに表示している画像と同じ画像を、仮想展示の案内者にも表示させることができる。
従来技術においても、案内者が用意した画像を、ユーザと共有することは可能であったが、この方法ではユーザが何に関心を示しているかは、わからなかった。これに対して、本発明では、案内者は、ユーザが、仮想空間内でどのような場面を視ているかを確認しながら、案内することができるため、ユーザの興味関心に沿った案内を行うことが可能となる。
本発明において、視界情報とは、仮想空間内での視点の位置、視線方向、画角などとすることができる。入力するのは、これらの一部であってもよい。また、一部の情報は、予め設定した固定値としてもよい。
本発明において、仮想空間および仮想展示は、2次元であっても良いが、3次元とすることにより、臨場感のある展示を行うことができる。また、仮想空間および仮想展示はCG(コンピュータグラフィックス)で提供してもよいし、現実の展示等を撮影した写真・動画・CGで作成した静止画または動画のテクスチャを貼り付けるなどして提供しても良い。仮想空間および仮想展示は、その他種々の方法で提供することができる。
テクスチャとして、実写の動画またはCG動画(アニメーション)を用いれば、仮想空間における動きも再現することができ、一層、臨場感を向上させることができる。特に、本発明を、観光案内などに利用する場合には、動画を用いれば、滝や川の流れ、木々が風でなびく様子などを表現できる利点がある。
以下、本明細書において、写真、CGという場合には、これらに代えて、またはこれらとともに実写の動画、アニメーションを用いてもよい。
仮想展示は、いわゆる展示会のように商品またはサービスの内容を説明するものの他、観光地の景色、美術館、博覧会など種々の内容とすることができる。
ユーザ用出力装置は、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどのディスプレイとしてもよいし、また頭部に装着するゴーグルやメガネなどを利用してもよい。特にゴーグルやメガネなどを利用する場合には、一層、臨場感が向上する利点がある。案内者用出力装置も同様である。また、ユーザ用出力装置および案内者用出力装置は、画像だけでなく音声なども出力可能としてもよい。
ユーザに提供する案内情報は、文字、画像、音声など種々の態様をとることができる。
【0007】
本発明において、
前記ユーザ用表示制御部は、前記視界情報に基づいて前記仮想展示の2次元画像を生成し、
前記案内者用表示制御部は、前記視界情報に基づく画像の生成を行うことなく、前記ユーザ用表示制御部で生成された前記2次元画像を利用して前記表示を行ってもよい。
【0008】
ユーザが視認している画像を、案内者に共有させる方法としては、2つの方法が考えられる。1つめの方法は、ユーザ用出力装置および案内用出力装置に表示させる画像をそれぞれ個別に生成するものとし、両者で画像を生成するためのパラメータを共有する方法である。2つめの方法は、ユーザ用出力装置のために生成された画像データを、そのまま案内用出力装置でも使用する方法である。
上記態様は、2つめの方法をとるものに相当する。こうすれば、比較的容量が大きくなる画像データを転送するデメリットがあるものの、案内用出力装置に表示させる画像を生成する負荷が軽減され、両者の同期を比較的容易かつ確実に実現することができる利点がある。
【0009】
本発明において、
前記ユーザ用表示制御部は、前記案内者が指示した動画像データを用いて前記ユーザ用出力装置に動画像を表示可能であり、
前記案内者用表示制御部は、前記ユーザ用表示制御部が前記動画像データのいずれの時刻を再生しているかを表す再生位置情報を間欠的に取得し、該取得した時点で前記再生位置情報に同期させながら、前記案内者が指示した動画像データを用いて前記案内者用出力装置に動画像を表示してもよい。
【0010】
動画像を再生する場合には、仮想空間内を透視投影等する必要がないため、ユーザ用出力装置および案内用出力装置で個別に再生する方法が好ましい。ただしこの場合は、個別に再生するため、両者の同期が必ずしも保たれるとは限らず、再生位置にずれが生じることがある。一方、常に両者の同期を維持しようとすれば、ユーザ用出力装置における動画の再生位置を常時監視する必要があり、再生に要する負荷が多大となる。
上記態様によれば、再生位置情報を間欠的に取得することにより、負荷を抑制しながら、ユーザ用出力装置および案内用出力装置における違和感のない程度の同期を実現することができる。
上記態様において、再生位置情報を間欠的に取得するタイミングは、ユーザ用出力装置および案内用出力装置において動画を再生した場合のずれの発生状況に応じて、違和感が生じない範囲で任意に決めれば良い。
【0011】
本発明は、第2の態様として、
仮想空間において電子的に構成された仮想展示を行う仮想展示システムであって、
前記仮想空間及び前記仮想展示を表す仮想データを記憶する仮想データ記憶部と、
前記仮想展示を閲覧するユーザからの指示に応じて、前記仮想空間内における前記ユーザの位置を設定する位置設定部と、
前記仮想展示を閲覧するユーザの前記仮想空間の前記位置における視界を特定する視界情報を入力する視界情報入力部と、
前記視界情報に基づいて、前記仮想データを用いて、前記ユーザが使用するユーザ用出力装置に前記仮想展示の画像を表示させるユーザ用表示制御部と、
前記位置設定部による位置の設定、および前記視界情報の一方または双方を、前記仮想展示の案内者からの指示または予め用意されたデータに基づいて制御するプッシュ型案内部を備える仮想展示システムとすることができる。
【0012】
本発明の第2の態様では、ユーザが自ら指示して仮想空間内の位置を設定することができる、即ち、ユーザが自分の意思で仮想空間内を移動することができる。現実の展示会において種々のブースを視て回るように、仮想空間内を自由に移動できるようにしてもよい。また、リストなどから所望の出展者を選択することで、その出展者に対応する仮想展示に移動できるようにしてもよい。
第2の態様では、さらに、案内者の指示または予め用意されたデータに基づいて、ユーザの位置や視界情報の一方または双方をコントロールすることができる。つまり、案内者等の指示を、ユーザの指示よりも優先させることもできる。こうすることにより、現実空間で案内者がユーザを連れて案内するのと同じように、仮想空間内でユーザを移動させながら案内することが可能となる。また、視界情報をコントロールすれば、ユーザに所望の方向を向かせて案内を行うことができる。これらの案内を予め用意されたデータに基づいて行えるようにすれば、自動案内を実現することもできる。
上記態様において、案内者の指示を優先する動作状態は、常に有効としてもよいし、ユーザからの同意が得られた場合にのみ有効となるようにしてもよい。
また、案内者がユーザの位置を自由に移動させられるように構成してもよいし、仮想空間内に予め用意された所定の案内地点に限定して移動させられるようにしてもよい。後者の方法によれば、ユーザを所望の位置に容易に移動させることが可能となる。また、ユーザも、仮想空間内とはいえ自分の意思に関わらず自由に移動させられる場合には多少なりとも不快感を覚えるおそれがあるが、後者の方法によれば、こうした不快感を軽減することも可能となる。
【0013】
本発明の第1の態様、第2の態様のいずれにおいても、
前記仮想データ記憶部は、前記案内者を表す画像を表示するための案内者画像データを記憶しており、
ユーザ用表示制御部は、前記案内者画像データに基づいて前記案内者の画像を表示可能であり、
該案内者の画像の表示位置は、前記仮想空間内で予め設定された所定の位置に規制されているものとしてもよい。
【0014】
このように案内者の画像を表示させることにより、ユーザに臨場感を与えることができる。案内者の画像は、仮想展示と同様のものとすることが好ましい。つまり、仮想展示が2次元画像で行われている場合は案内者の画像も2次元とし、仮想展示が3次元画像で行われている場合は、案内者の画像も3次元とすることが好ましい。案内者の画像は、人間の容姿とする他、動物、架空の生物など種々のものとすることができる。
案内者画像データは、CGで作成したものであってもよいし、写真、動画などを用いてもよい。
ユーザの位置に応じて案内者の位置も移動させることもできるが、上記態様では、案内者の仮想空間内での位置を所定の位置に規制している。こうすることにより、案内者の位置が仮想展示と干渉するといった不都合を容易に回避することができる利点がある。案内者の仮想空間内位置は、一点または複数の点で規定してもよいし、領域で規定してもよい。
案内者の画像は、常時、表示させるようにしてもよいし、ユーザからの要求または案内者の操作に応じて表示させるようにしてもよい。
【0015】
上記態様においては、
前記所定の位置は、前記ユーザがいずれの位置にても、その視界内に前記案内者の画像を表示可能に設定されており、
前記視界には前記案内者の画像が1体だけ表示されるものとしてもよい。
【0016】
こうすることにより、ユーザには、いずれの位置にいても案内者の画像が表示されるため、臨場感を維持することができる。案内者は、ユーザの視界内に入っていればよく、必ずしも正面に表示させる必要はない。また、常に視界に入っている必要はなく、それぞれの位置でいずれかの方向を見れば、視認できるようになっていればよい。
案内者は、複数表示させる態様としてもよいが、1体だけ表示されるようにすれば、ユーザは、表示された案内者とコミュニケーションをとっているように感じ、一層、臨場感を向上させることができる。
1体だけ表示させる方法は、例えば、2通りが考えられる。1つ目の方法は、ユーザの視界内に複数の案内者が入ることがないように、予め案内者の位置を決めておく方法である。2つ目の方法は、複数の案内者が視界内に入る場合には、いずれか1体のみを選択して表示させる方法である。いずれの方法を採用してもよい。
また、上記態様において、ユーザの「視界」は、ユーザの位置から所定の距離範囲内に制限してもよい。こうすることで、遠方に案内者が表示されることを許容しつつ、近くに表示される案内者は1体とすることができる。
【0017】
本発明の第1の態様、第2の態様のいずれにおいても、
前記仮想空間内における前記ユーザの位置は、予め設定された既定位置に規制されるものとしてもよい。
【0018】
こうすることにより、効率的に仮想展示を提供でき、ユーザも効率的に閲覧することができる。
上記態様においては、規定位置における視界情報は任意としてもよいし、視界情報も規制してもよい。
【0019】
本発明の第1の態様、第2の態様のいずれにおいても、
一人または特定のグループ内のユーザに対して、前記仮想空間が個別に割り当てられるものとしてもよい。
【0020】
上記態様において、仮想空間を構成するデータ自体は、複数のユーザに流用しても差し支えない。「個別に」とは、同一の仮想空間内に自己または自己が所属するグループ以外のユーザが存在しないことを意味する。
こうすることにより、ユーザと案内者とのコミュニケーションが、他のユーザに対して漏洩することを回避できる。
メタバースと呼ばれる技術においては、仮想空間内に不特定の複数のユーザが集合して、コミュニケーションをとることが可能となっているが、上記態様では、かかる方法ではなく、敢えてユーザまたは特定のグループごとに固有の仮想空間とするのである。
なお、このような固有の仮想空間と、不特定のユーザが混在する仮想空間とを任意に選択できるようにしても良い。
【0021】
本発明の第1の態様、第2の態様のいずれにおいても、
前記ユーザからの指示に応じて、前記案内者が配布資料として用意した資料データを、前記ユーザが自由に利用可能な状態に取得させる資料配付部と、
いずれの前記ユーザが、前記資料データを取得したかを前記案内者に提供する情報提供部とを備えてもよい。
【0022】
こうすることにより、ユーザが、どの配布資料に興味関心を示したかを分析することが可能となる。この分析結果は、例えば、商談が成立する可能性が高いユーザを選択することに活用できる。また、配付資料の内容の改善その他の用途にも活用することができる。
【0023】
本発明の第1の態様、第2の態様のいずれにおいても、
前記ユーザが、前記仮想空間内に滞在していた時間を、前記案内者に提供する情報提供部とを備えてもよい。
【0024】
こうすることにより、仮想空間が、どの程度、ユーザの興味関心を惹いたかを分析することが可能となる。この分析も、商談が成立する可能性が高いユーザの選択、仮想展示の内容の改善その他の用途に活用することができる。
【0025】
本発明の第1の態様、第2の態様のいずれにおいても、
前記仮想データ記憶部は、複数の仮想データを記憶しており、
前記ユーザ用表示制御部は、前記複数の仮想データのうち前記ユーザが選択した仮想データを用いて表示を行ってもよい。
【0026】
こうすることにより、展示会でいくつかのブースを視て回るように、仮想空間内でいくつかの仮想展示を視て回ることが可能となる。複数の仮想展示は、異なる主体によって提供されてもよいし、同一の主体で提供されてもよい。
【0027】
本発明は、上述した特徴を必ずしも全てを備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり、組み合わせたりしてもよい。上述した仮想展示をコンピュータによって実行する仮想展示方法として構成してもよいし、かかる方法をコンピュータに行わせるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。さらに、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例における仮想展示システムの構成を示す説明図である。
図2】データ構造を示す説明図である。
図3】表示される画像の生成方法を示す説明図である。
図4】ユーザに表示される画像例(1)を示す説明図である。
図5】ユーザに表示される画像例(2)を示す説明図である。
図6】案内者の位置の設定を示す説明図である。
図7】仮想空間選択処理のフローチャートである。
図8】ユーザ画像生成処理のフローチャートである。
図9】視点変更処理のフローチャートである。
図10】動画再生処理のフローチャートである。
図11】情報提供処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例について、仮想空間において展示会を開催する場合を例にとって以下の項目に分けて説明する。
A.システム構成:
B.画像の表示方法:
C.案内者の位置:
D.仮想空間選択処理:
E.ユーザ画像生成処理:
F.動画再生処理:
G.情報提供処理:
H.効果および変形例:
【0030】
A.システム構成:
図1は、実施例における仮想展示システムの構成を示す説明図である。複数の出展者が仮想空間において、仮想的なブースを設置し、商品またはサービスの仮想展示をユーザに提供するシステムである。
仮想展示システムは、その主要な機能を提供するサーバ100、各ブースの出展者が利用する出展者端末200、ブースを訪れるユーザが利用するユーザ端末300を、インターネットなどのネットワークNEで接続して構成されている。出展者端末200、ユーザ端末300としては、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどネットワークNEに接続可能な種々の機器を用いることができる。また、サーバ100の機能は、複数台によって提供してもよい。出展者端末200、ユーザ端末300も、複数台が接続可能である。
【0031】
出展者端末200およびユーザ端末には、図示する機能が設けられている。
送受信部211、送受信部311は、ネットワークNEを介して情報を送受信する機能を奏する。情報としては、文字、画像、動画、音声などが挙げられる。また、出展者およびユーザから仮想展示システムに対する種々の指示なども含まれる。
入出力部212、入出力部312は、情報の入出力を行うデバイスを制御する。本実施例では、出展者のオペレータはゴーグル201を装着し、ユーザもゴーグル301を装着するものとしている。これらのゴーグル201、301には、仮想展示システムで提供される種々の画像が表示され、音声が出力される。また、マイクが組み込まれており、音声を入力することもできる。オペレータが、仮想展示システムに入力を行う場合は、出展者端末200のキーボード、マウスなどのデバイスを利用する。ユーザが、入力を行う場合は、ユーザ端末300のタッチパネルを利用する。入出力は、かかる例に限らず、種々の態様をとることができる。
アプリケーション213、アプリケーション313は、仮想展示システムから送信された情報に基づいて上述の入出力を行わせるなどの機能を提供する。仮想展示システムに固有のソフトウェアとして構成してもよいし、ブラウザなどの汎用的なソフトウェアを使用するものとしてもよい。
【0032】
サーバ100には、図示する機能が設けられている。
仮想データ記憶部101は、仮想空間および仮想展示を実現するための種々のデータ(以下、「仮想データ」と総称することもある)を記憶している。本実施例では、仮想展示会を開催する会場全体を表す仮想データは、仮想展示会の主催者または仮想展示システムの運営者が用意する。各ブースを表す仮想データは、出展者が用意する。
ユーザデータ記憶部102は、各ブースを訪れるユーザについての情報を記憶する。
出展者データ記憶部103は、各ブースを出展する出展者についての情報を記憶する。
資料データ記憶部104は、各ブースでユーザに配布する資料、動画などのデータを記憶する。
これらのデータの具体的な内容および構造については、後述する。
【0033】
仮想空間割当部111は、ユーザに対して仮想空間を割り当てる。本実施例では、ユーザがいずれかのブースを訪れたとき、そのブースの仮想空間を、そのユーザに固有の空間として設定するのである。こうすることにより、あたかもそのブースには、そのユーザしか存在しないかのように、出展者のオペレータとユーザがコミュニケーションをとることが可能となる。仮想空間割当部111は、かかる機能を実現するのである。
データ管理部112は、仮想データ記憶部101、ユーザデータ記憶部102、出展者データ記憶部103、および資料データ記憶部104のデータの入出力を管理する。
送受信部113は、ネットワークNEを介して出展者端末200、ユーザ端末300と情報の送受信を行う。
【0034】
出展者用表示制御部121は、出展者端末200に表示する画像データを生成し送信する。画像を生成するための情報を出展者端末200に送信し、画像データを生成させるようにしてもよい。
案内情報入力部122は、出展者端末200から、商品またはサービスなどを案内する案内情報を入力する。案内情報は、出展者端末200でオペレータが、文字、音声などの形で入力することができる。入力された案内情報がユーザ端末300に送信されることにより、オペレータとユーザとのコミュニケーションが実現される。
情報提供部123は、出展者に対して、出展の実績に関する種々の情報を提供する。例えば、ユーザがブースに滞在した時間、ブースを来訪したユーザの数、ユーザがブースで取得した資料の種類などの情報が挙げられる。これらの情報に基づいて行った分析結果を含めても良い。
プッシュ型案内部124は、オペレータが、ユーザの位置、視線方向などを設定する機能を奏する。こうすることで、あたかもオペレータがユーザを連れていくかのようにブース内を案内することもできる。また、オペレータが対応できない場合、予め用意されたデータに従って、サーバ100が自動的にユーザの案内を行うようにしてもよい。
【0035】
ユーザ用表示制御部131は、ユーザ端末300に表示する画像データ(以下、「ユーザ画像」という)を生成し送信する。画像を生成するための情報をユーザ端末300に送信し、画像データを生成させるようにしてもよい。
位置設定部132は、仮想空間内におけるユーザの位置を設定する。本実施例では、ユーザが位置を設定することにより、仮想空間内を移動することができる。
視界情報入力部133は、ユーザ端末300から視界情報を入力する。視界情報とは、ユーザ画像を生成するための視点位置、視線方向、画角などの情報である。
資料配付部134は、ユーザの指示に従って、ブース内で配布されている資料のデータを送信する。資料のデータは、ユーザ端末300等にダウンロードされる。
【0036】
仮想展示システムは、かかる構成に限らず、種々の構成をとることができる。図示した機能も全てを備えている必要はなく、一部を省略してもよい。また、図示した以外の機能を備えていてもよい。
なお、以上で説明したそれぞれの機能は、本実施例では、ソフトウェア的に構築しているが、その一部または全部をハードウェア的に構築することも可能である。
【0037】
図2は、データ構造を示す説明図である。
出展者データ記憶部103には、出展者ごとに識別子である出展者IDが割り当てられ、出展者名、連絡先、仮想データ、招待者、訪問者など出展者の情報が記憶されている。
仮想データ情報は、出展者のブースを構成する3次元モデルや写真・動画、テクスチャ、その他のデータの所在を表す。本実施例では、仮想データは、仮想データ記憶部101に識別子である仮想データIDを付して記憶されているから、仮想データ情報としては、仮想データIDを記憶することができる。
招待者情報とは、出展者がブースに招待したユーザの情報である。後述する通り、ユーザには、それぞれ識別子であるユーザIDが付されているから、招待者の情報としては、ユーザIDを記憶しておけば良い。
訪問者情報は、ブースを訪問したユーザの情報である。招待者と同様、ユーザIDが記憶されている。
【0038】
ユーザデータ記憶部102には、ユーザIDごとに、氏名、連絡先、訪問ログ、資料ログ、グループなどのユーザの情報が記憶されている。
訪問ログとは、訪問したブースの履歴である。ブースを訪問した時刻、退出した時刻などで記録することができる。また、ブースは、出展者IDで特定することができる。
資料ログは、ダウンロードにより取得した資料の履歴である。資料に付された固有のIDなどで記録することができる。
グループ情報は、ユーザとグループを構成する他のユーザのユーザIDを記憶する。本実施例では、ブースを訪問すると、ユーザ固有の仮想空間として、そのブースが割り当てられるが、グループを指定しておくことにより、グループに固有の仮想空間として割り当てることも可能となる。グループ情報は、ユーザが適宜、編集可能とすることが好ましい。
【0039】
仮想データ記憶部101には、仮想空間および仮想展示を構成する仮想データを記憶する。
「会場データ」は、仮想展示会の主催者または仮想展示システムの運営者が用意するデータである。仮想展示会を開催する会場全体の仮想空間を表す3次元モデルや写真・動画、テクスチャなどを記憶する。
各出展者が用意するブースの仮想データは、ブースごとに仮想データIDを付して記憶されている。出展者が複数のブースを出展する場合には、複数の仮想データIDが割り当てられることになる。
仮想データ情報としては、出展者ID、ブースデータ、展示物データ、視点データ、案内者データ、閲覧ログなどが記憶されている。
ブースデータは、ブースを構成する3次元モデルや写真・動画、テクスチャなどのデータである。現実のブースを撮影した写真・動画を用いてブースを表現してもよい。
展示物データは、ブース内の展示物の3次元データ、2次元の画像データ、動画データなどである。展示物をCGで提供する他、展示物を撮影した写真・動画を貼り付ける方法で提供してもよい。
視点データとは、ブース内でユーザが移動可能な位置を記憶する。本実施例では、後述する通り、ユーザがブース内を完全に自由に移動できる態様ではなく、予め設定された場所に選択的に移動可能な態様をとっている。視点データは、この移動可能な位置を表すデータとなる。
案内者データは、ブース内でユーザに案内を行う者を表す3次元画像データ、いわゆるアバターのデータである。本実施例では、案内者は、ブース内を自由に移動するのではなく、規定の位置に固定して表示するものとした。案内者データは、案内者を表示させる位置の情報も合わせて記憶している。
閲覧ログとは、ブース内を訪問したユーザの履歴である。ユーザごとに訪問時刻、退出時刻を記録している。ユーザとオペレータとのコミュニケーションの内容を合わせて記録してもよい。
この他、オペレータが不在の場合に、自動的にブースをユーザに案内するためのデータを用意してもよい。例えば、音声案内データ、ユーザの視点や視線を制御するためのデータ、ブース内のパネルの拡大、動画の再生などを指示するデータなどが考えられる。
【0040】
仮想空間割当データは、ユーザがブースを訪問したときに、仮想空間割当部111が生成するデータである。図示するように、ブースを特定する仮想データIDと、出展者を特定する出展者ID、ユーザを特定するユーザIDを対応づける。ユーザがグループで訪問しているときは、グループに存在する複数のユーザIDが対応づけられることになる。ユーザの質問等は、対応づけられた出展者IDのオペレータのみに伝えられ、逆にオペレータの回答は、対応づけられたユーザのみに伝えられる。こうすることで、ユーザは、他のユーザへの漏洩などを心配することなく、オペレータとユーザと閉じたコミュニケーションをとることが可能となる。
仮想空間割当データは、ユーザまたはグループごとに生成される。仮想データIDは重複していても良い。こうすることで、ブースの展示は、複数のユーザに提供しながらも、ユーザごとに固有の仮想空間が提供されるのである。
なお、ブースに複数のユーザが来訪しているときは、一つの出展者IDに対して、複数の仮想空間割当データが設定される。このような場合は、オペレータが、来訪中のいずれかのユーザを選択してコミュニケーションすることになる。会話フラグは、オペレータとの会話の可否を表すフラグである。オペレータが、来訪中のユーザのいずれかを選択すると、そのユーザに対する仮想空間割当データにおいては、会話フラグはオンとなり、他の仮想空間割当データの会話フラグはオフとなる。こうすることで、複数のユーザがブースを来訪している場合でも、上述した閉じたコミュニケーションを実現することができる。
なお、出展者端末200を複数台用意する場合には、複数人のオペレータが分担してユーザに対応するようにしてもよい。かかる場合は、フラグを省略しても良い。
【0041】
B.画像の表示方法:
図3は、表示される画像の生成方法を示す説明図である。本実施例では、会場を表す仮想空間は、球状の仮想空間Sの内面に、会場を表す写真・動画のテクスチャを貼り付けることで構成した。また、ブースBは、図示するように、出展者が3次元モデル等によって仮想データを構成しており、仮想空間内に配置された状態となっている。ブースBも、実際のブースを撮影した写真・動画を貼り付けることで構成してもよい。
ユーザ画像は、仮想空間内で視点VP、視線方向VL、画角VAなどの視界情報に応じた透視投影によって生成することができる。視点VP、視線方向VLは、仮想空間内の3次元座標などを用いて定めることができる。画角VAは固定としてもよいし、ユーザが調整可能としてもよい。
なお、図示および説明の便宜上、図3では、会場の仮想空間Sの外側に視点VPが位置しているように示したが、実際には、視点VPは、仮想空間Sの中心に位置することになる。
【0042】
図4は、ユーザに表示される画像例(1)を示す説明図である。会場の画像IM0およびブースを3次元的に描いた画像IM1が表されている。また、ブースを案内する案内者Gが表示されている。ブース内の人PMは、臨場感を表すために描かれた人型の固定のモデルである。壁に吊された展示物は、静止画で表されるパネルや、動画等である。床に描かれたVP1は、ユーザが移動可能な視点位置を表している。
ユーザ画像の左上には、ブースの平面図W1が表示されている。図の上側に、平面図W1の拡大図を示した。本実施例では、ユーザは、ブース内を自由に移動できる訳ではなく、予め設定された視点位置に選択的に移動する。平面図W1は、ユーザが移動可能な視点位置および視界を図示するものである。移動可能な視点位置は、カメラのアイコンで示されている。図4に示したユーザ画像は、視点位置VP0から、視界VAのように視た状態であることを表している。ユーザ画像中の床に表された円形の視点位置VP1は、平面図W1の右下に表された視点位置VP1に対応している。
ユーザが、いずれかのカメラのアイコンをクリック等して選択すると、視点位置が移動する。ユーザ画像において床に描かれた円形の視点位置VP1を選択してもよい。視点位置VP2を選択した場合の画像を図5に示す。
【0043】
図5は、ユーザに表示される画像例(2)を示す説明図である。左上に示した平面図W1から、図4において視点位置VP2を選択し、壁の方を視た状態の画像であることが分かる。
壁には、ディスプレイが描かれており、動画MVが自動的に無音で再生されており、展示会としての臨場感を持たせている。ユーザが、アイコンIC1をクリックすると、動画MVが拡大して音声付きで再生される。動画をユーザ画像全体に再生してもよい。
その横には、パネルが展示されている。ユーザが、パネルの下のアイコンIC2をクリックすると、パネルが拡大表示される。ユーザが、アイコンIC3をクリックすると、資料をダウンロードすることができる。
【0044】
ユーザが、出展者に対して、案内の申込を行うためのアイコンを用意してもよい。ユーザが、このアイコンをクリックすると、ユーザはオペレータと閉じたコミュニケーションにより文字、音声などで案内を受けることができる。案内の申込を行い、オペレータが応じた時点で、図4に示した案内者Gの画像が現れるようにしてもよい。
逆に、オペレータがユーザに対して、案内を申し出るようにしてもよい。出展者用端末200の画面に、ユーザを呼び出すためのアイコンを設ければよい。オペレータがアイコンを操作してユーザを呼び出すと、ユーザ画面に、呼び出されていることを示すアイコンが表示され、これにユーザが応答することでオペレータと接続されるようにしてもよい。オペレータと接続された時点で、図4に示した案内者Gの画像が現れるようにしてもよい。
【0045】
C.案内者の位置:
図6は、案内者の位置の設定を示す説明図である。本実施例では、案内者を表示する位置は、ブース内で予め設定されている。こうすることで、案内者が、ブース内の展示物と干渉するといった不具合を容易に回避することができる利点がある。
案内者の位置は、任意に決めることができるが、本実施例では、常に1体の案内者がユーザ画像に現れるように設定した。
図示する通り、ユーザは、視点位置P1~P5を移動可能であるとする。また、視点位置P1~P5において、それぞれ視界V1~V5を視認可能であるとする。案内者の位置G1~G5は、それぞれの視界V1~V5内に一つずつ任意の場所に設定すればよい。視界V1と視界V2は一部が重なっているから、位置G12に案内者を置き、位置G1、G2を省略してもよい。以上の設定により、視点P1~P4においては、視界V1~V4に1体だけ案内者が表示されることになる。ユーザがオペレータとコミュニケーションをとるとき、このように案内者を表示することにより、ユーザに臨場感を与えることができる。また、案内者を位置G1~G4に常に表示させていたとしても、ユーザには1体しか視認できないため、違和感を与えない。ユーザが視界V1~V4内で視線を移動させることによって案内者が一時的にユーザ画像から消える状態が生じたとしても差し支えない。
【0046】
視点V5については、視界V5内には位置G5の案内者は1体しか表示されていないが、その遠方には、位置G1~G4の案内者が表示される可能性がある。このように遠方の案内者は、視点位置P5のユーザに違和感を与えるものではないから、そのまま表示させても差し支えない。また、視界内に複数の案内者が表示される可能性がある場合は、視界V5内の位置G5のみに案内者を表示し、その他の位置G1~G4の案内者は表示させないようにしてもよい。
【0047】
D.仮想空間選択処理:
以下、仮想展示を実現するためのフローチャートについて説明する。
図7は、仮想空間選択処理のフローチャートである。ユーザがブースを訪問したときに、仮想空間割当データ(図2参照)を生成する処理である。主として仮想空間割当部111(図1参照)が実行する処理であり、ハードウェア的には主としてサーバ100が実行する処理である。
本実施例では、ユーザは、出展者リストまたはブースリストから訪問先の出展者またはブースを選択することで、そのブースを訪問することができる。また、仮想空間内を移動しながら種々のブースを視て回り、所望のブース内に移動することによって、ブースを訪問することもできる。
仮想空間選択処理では、サーバ100は、ユーザからの出展者またはブースの指定の有無を確認する(ステップS10)。指定された場合には、それに従って、仮想空間割当データを生成する(ステップS13)。
指定されていない場合は、サーバ100は、仮想空間内のユーザの位置情報を入力し(ステップS11)、いずれかの出展者ブース内にいるか否かを判断する(ステップS12)。
出展者ブース内にいる場合には、ユーザがそのブースを訪問しているものと判断し、仮想空間割当データを生成する(ステップS13)。出展者ブース内にいない場合には、ステップS10以降の処理を繰り返す。
以上の処理により、ユーザごとに固有の仮想空間を割り当てることができる。ユーザがグループを設定している場合は、いずれかのユーザから指示された場合(ステップS10)、またはいずれかのユーザが出展者ブース内にいる場合(ステップS12)に、グループ内の全てのユーザがブースを訪問するものとして、仮想空間割当データを生成すればよい。
【0048】
なお、上記説明では、現実の展示会でユーザが会場を視て回りながら、ブースを訪れるかのように、仮想空間内をユーザが自由に移動しながらブースを訪れる態様を想定した。本実施例は、必ずしも仮想空間内でユーザが自由に移動できる態様に限定されるものではない。かかる場合には、図7におけるステップS11(ユーザの位置情報の入力)、ステップS12(出展者ブース内にいるか否かの判断)を省略してもよい。ユーザが、ブースを指定していないとき(ステップS10)、サーバ100は、予め決められた場所の仮想空間割当データを生成するようにしてもよい。
【0049】
E.ユーザ画像生成処理:
図8は、ユーザ画像生成処理のフローチャートである。図3で示した透視投影を行うことによりユーザ画像を生成する処理である。主としてユーザ用表示制御部131(図1参照)が実行する処理であり、ハードウェア的には主としてサーバ100が実行する処理である。
処理を開始するとサーバ100は、ユーザの位置情報、視界情報を入力する(ステップS21)。
そして、案内者の位置を設定する(ステップS22)。案内者の位置は、図6で説明した通りブース内で予め設定されている。ステップS22では、この中から表示対象となる位置を選択する。設定された位置の全てに案内者を表示する場合には、ステップS22の処理は省略してもよい。
サーバ100は、透視投影によりユーザ画像を生成する(ステップS23)。生成したユーザ画像は、ユーザ端末に送信される。
また、オペレータがユーザに案内を行っている場合には(ステップS24)、生成したユーザ画像を出展者端末にも送信する(ステップS25)。
こうすることで、オペレータは、ユーザが視認している画像と同じ画像を見ることができる。現実の空間では、案内者は、ユーザがどこを視ているかによって、ユーザの興味関心に応じた案内を行うことができるが、仮想空間においては、これが難しい。しかし、本実施例によれば、ユーザ画像をオペレータが確認できるため、オペレータは、その画像からユーザの興味関心を推し量り、案内を行うことが可能となる。
なお、案内中か否かの判断(ステップS24)の処理を省略し、常にユーザ画像を出展者端末に送信するようにしてもよい。
以上の処理は、仮想展示システムを利用している間、繰り返し実行される。
【0050】
なお、出展者端末へのユーザ画像の表示は、ユーザの位置情報、視界情報に基づいて、ユーザ画像と同様の方法により生成してもよい。しかし、この方法では、計算タイミングのずれなどによって、出展者端末に表示される画像と、ユーザ画像との同期が実現されない場合がある。本実施例では、上述のように、生成されたユーザ画像を出展者端末でも利用することにより、容易かつ確実に、ユーザ端末と出展者端末で表示されるユーザ画像の同期を実現している。
【0051】
図9は、視点変更処理のフローチャートである。ユーザがブース内を移動したり、視線を動かしたりする処理である。主としてプッシュ型案内部124(図1参照)が実行する処理であり、ハードウェア的には主としてサーバ100が実行する処理である。
処理を開始すると、サーバ100は、オペレータがユーザを案内することについて、ユーザが同意しているかを確認する(ステップS31)。例えば、ユーザに対して、同意するか否かを尋ねる画面を出力し、回答してもらうようにしてもよい。また、オペレータがユーザに口頭で確認して同意を得られた場合には、その旨、オペレータがサーバ100に指示するようにしてもよい。さらに、ブース内の所定の視点位置にいるときは、無条件に同意する扱いとしてもよい。
同意していない場合には(ステップS31)、サーバ100は、ユーザ端末から位置情報、視界情報の指示を入力する(ステップS33)。この指示は、例えば、ユーザ端末のタッチパネルを利用して入力することができる。また、ユーザが装着しているゴーグルの動きなどによって入力可能としてもよい。
一方、ユーザが案内に同意している場合には(ステップS31)、サーバ100は、出展者端末から位置情報、視界情報の指示を入力する(ステップS32)。この指示は、例えば、出展者端末のキーボード、マウスなどを利用して入力することができる。また、オペレータが装着しているゴーグルの動きなどによって入力可能としてもよい。この場合は、ユーザの意思と関係なく、オペレータがユーザの位置情報、視界情報を決めることになる。位置情報または視界情報の一方のみをオペレータが指示可能としてもよい。
サーバは、同意の有無に応じて、それぞれユーザの位置情報、視界情報を設定し、この処理を終了する。これらの情報は、ユーザ画像の生成(図4)に用いられる。
【0052】
上述した視点変更処理によれば、オペレータによる案内に同意していない場合、ユーザは自分の意思で視点位置(図4参照)、視界情報を選択して、自由にブース内を閲覧することができる。オペレータによる案内に同意している場合は、あたかもオペレータがユーザを連れて案内するかのように、ブース内を移動して案内を行うことができる。例えば、ユーザが求める情報の展示場所をオペレータが案内する場合、口頭で仮想空間内の場所を案内するよりも、簡便かつ速やかに案内ができる利点がある。また、ユーザとの会話に基づいて、オペレータがユーザに対して積極的に展示内容を案内する場合にも有用である。
【0053】
上述の処理においては、オペレータが対応できない場合などに、サーバ100が、予め用意された指示データに基づいて自動的に案内を行うようにしてもよい。例えば、上記処理において、オペレータの指示に基づいて位置情報、視界情報を入力する処理(ステップS32)に代えて、仮想データ記憶部101などに予め用意された指示データに基づいて、ユーザの位置情報、視界情報を入力するようにすればよい。例えば、時系列で位置情報、視界情報の指示データを用意しておくことにより、ユーザを順次、移動させ、視界方向を変えながら案内を行うことができる。
案内の際には、予め用意された音声データを再生するようにしてもよい。また、パネルの拡大表示や動画の再生、資料のダウンロードなども自動的に行うようにしてもよい。
【0054】
F.動画再生処理:
図10は、動画再生処理のフローチャートである。図5で動画再生のアイコンIC1をユーザがクリックしたときに実行される処理である。主として出展者用表示制御部121(図1参照)が実行する処理であり、ハードウェア的には主としてサーバ100が実行する処理である。
動画再生が指示されると、サーバ100は、指示された動画データを再生する(ステップS41)。再生した動画データは、ユーザ端末で閲覧できる。本実施例では、ストリーミングでの再生となっており、サーバ100からユーザ端末300に対して、動画データを順次、送信すると、ユーザ端末300がそれを受け取り、バッファに蓄積しながら、順次再生することになる。なお、動画データは、図5に示したユーザ画像内のディスプレイMVで再生してもよいし、動画再生用のウィンドウをユーザ端末300に表示してもよい。
ステップS41では、ユーザ端末300における動画の再生と合わせて、サーバ100は、出展者端末200にも動画の再生を行う。出展者端末200への動画の再生も、ユーザ端末300と同様、ストリーミングでの再生となる。出展者端末200に表示される画像を、ユーザ端末300に表示される画像と同期させるためには、ユーザ端末300で再生されている画像データをネットワークNE経由で出展者端末200に送信する方法も考えられる。しかし、この方法は、トラフィックが膨大となること、および通信に伴う遅れにより、完全な同期は実現しにくいというデメリットがある。従って、本実施例では、この方法は採用せず、それぞれストリーミングで再生するものとした。
【0055】
しかし、ストリーミングで再生する場合は、出展者端末200とユーザ端末300で再生のタイミングがずれるおそれがある。そこで、本実施例では、所定のタイミングで間欠的に両者の同期を図るものとした。同期をとるタイミングは、本実施例では1秒としたが、動画の再生に生じるずれの大きさを考慮しながら、違和感なく同期を実現できる程度の範囲で任意に決めればよい。
サーバ100は、同期タイミングであると判断される場合は(ステップS42)、出展者の動画再生位置をユーザの動画再生位置に同期させる処理を行う(ステップS43)。出展者側をユーザ側に同期させるのは、ユーザが視聴する動画に違和感を与えないようにするためである。
サーバ100は、以上の処理を動画の再生が終了、またはユーザから終了を指示されるまで繰り返し実行する(ステップS44)。
【0056】
図10(b)に同期処理(ステップS43)の概要を示した。上側には、ユーザ端末で再生される動画の各フレームを時系列で示した。図示する通り、フレームF1~F11が順次再生される。フレームF5、F10が同期タイミングにおいて再生されているフレームを表しているものとする。
下側には、出展者端末で再生される動画の各フレームを時系列で示した。図の例では、ユーザ端末と動画の再生タイミングにずれが生じ、ユーザ端末でフレームF5が再生されている時点で、出展者端末では、未だフレームF5は再生されていない。そこで同期処理として、次のフレームF6を同期させて再生する。この場合、出展者端末では、フレームF5の再生を省くのである。
その後、両者の再生タイミングにずれが生じ、今度は、ユーザ端末でフレームF10が再生されている時点で、出展者端末では、既にフレームF11も再生されている。そこで同期処理として、次のフレームF11を同期させて再生する。この場合、出展者端末では、フレームF11をもう一度、再生することになる。
このように、同期タイミングにおいて、ユーザ端末における動画の再生位置を取得し、これを出展者端末における動画の再生位置に反映させるのである。こうすることにより、両者の動画再生に若干のずれが生じることは許容しながらも、違和感が生じない程度にその再生を同期させることが可能となる。
【0057】
G.情報提供処理:
図11は、情報提供処理のフローチャートである。ブースを訪問した履歴などの情報を出展者に提供する処理である。主として情報提供部123(図1参照)が実行する処理であり、ハードウェア的には主としてサーバ100が実行する処理である。
処理を開始すると、サーバ100は、出展者のブースを訪問した訪問者リストを作成する(ステップS51)。そして、全訪問者について、訪問時の情報を集計する(ステップS52)。例えば、ブースの滞在時間、資料のダウンロードの有無やその種類、オペレータによる案内を行った時間などを集計することができる。この他の情報を集計してもよい。
【0058】
サーバは、これらの情報に基づいてユーザごとの関心度ポイントを算出する(ステップS53)。関心度ポイントとは、出展者の商品またはサービスに対するユーザの関心度を表す指標である。例えば、ステップS52で集計した種々の情報ごとに、所定の演算式などによってポイント化し、その合計によって関心度ポイントを求めるようにしてもよい。また、ステップS52で集計した種々の情報と、ユーザとの商談の成立結果などを学習データとして機械学習を行わせて得られる学習モデルを利用して関心度ポイントを算定してもよい。関心度ポイントの算出を省略してもよいし、その他の分析を行うようにしてもよい。
【0059】
サーバは、こうして得られた集計結果を出力する(ステップS54)。図中に出力例を示した。この例では、集計結果を一覧表の形式で出力しているが、これに限らず種々の形式をとることができる。また、集計結果を、何らかのキーでソートして出力してもよい。
こうして得られる集計結果は、出展者のマーケティング、営業活動に活用することができる。また、ブースの構成や資料の改善に活用することもできる。
【0060】
H.効果および変形例:
以上で説明した実施例の仮想展示システムによれば、ユーザ画像を確認しながら案内を行うことができ、ユーザの興味関心に沿った案内が実現できる。また、ユーザの位置や視線方向をオペレータがコントロールすることにより、効果的な案内を実現することもできる。
以上で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、一部を省略したり組み合わせたりして構成してもよい。また、本発明は、仮想空間で展示会を開催するシステム以外にも種々の変形例を構成可能である。
例えば、ブースに代えて観光地の景色などを仮想展示として構成すれば、仮想空間内で観光を行うシステムとして構成することができる。この他にも、美術館、博物館など種々の仮想展示を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、仮想空間をユーザに展示するために利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 サーバ
101 仮想データ記憶部
102 ユーザデータ記憶部
103 出展者データ記憶部
104 資料データ記憶部
111 仮想空間割当部
112 データ管理部
113 送受信部
121 出展者用表示制御部
122 案内情報入力部
123 情報提供部
124 プッシュ型案内部
131 ユーザ用表示制御部
132 位置設定部
133 視界情報入力部
134 資料配付部
200 出展者端末
201 ゴーグル
211 送受信部
212 入出力部
213 アプリケーション
300 ユーザ端末
301 ゴーグル
311 送受信部
312 入出力部
313 アプリケーション
【要約】
【課題】 仮想空間における仮想展示において、案内者とユーザとのコミュニケーションを円滑にする。
【解決手段】 仮想空間IM0に出展者が仮想のブースIM1を出展できる仮想展示システムを構築する。ユーザは、各ブースを移動しながら展示を閲覧することができるが、ユーザが移動できる位置は、視点位置VP1、VP2のようにブース内の規定された位置に限られる。それぞれの視点位置で、仮想空間を透視投影することにより、ユーザ端末には、ブースの展示などが3次元的に表されたユーザ画像が表示される。また、出展者端末にも、ユーザ画像がそのまま表示される。
こうすることにより、出展者のオペレータは、ユーザが何を見ているかを踏まえて、ユーザとの会話をすることができるため、ユーザの興味関心に沿った案内を行うことができる。
【選択図】 図4

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11