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特許7560167スプリットリングおよびこれを備えた釣り用ルアー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】スプリットリングおよびこれを備えた釣り用ルアー
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/00 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
A01K85/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023077221
(22)【出願日】2023-05-09
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2023090892
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】513231661
【氏名又は名称】株式会社スタジオコンポジット
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】関口 一成
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3177420(JP,U)
【文献】特表2003-531591(JP,A)
【文献】特開2017-147942(JP,A)
【文献】特開2004-305053(JP,A)
【文献】特開平10-028492(JP,A)
【文献】特開平09-275863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0049900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルアーボディのアイにフックを着脱自在に取り付けるためのスプリットリングであって、
金属ワイヤを環状に二重または三重に重ね巻きにして楕円形または長円形に加工すると共に、そのワイヤの両端が前記楕円形または長円形の長径方向の一端部のカーブに沿うように位置していることを特徴とするスプリットリング。
【請求項2】
ルアーボディのアイにスプリットリングを介してフックを着脱自在に備えた釣り用ルアーであって、
前記スプリットリングは、金属ワイヤを環状に二重または三重に重ね巻きにして楕円形または長円形に加工すると共に、そのワイヤの両端が前記楕円形または長円形の長径方向の一端部のカーブに沿うように位置していることを特徴とする釣り用ルアー。
【請求項3】
請求項2に記載の釣り用ルアーにおいて、
前記フックは、それぞれ上端に環状の吊下部を備えた第1のフック部材と第2のフック部材とを、拡縮自在な連結体で束ねたツインフックであることを特徴とする釣り用ルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーフィッシングに用いる釣り用ルアーに係り、特にそのルアーボディとフックとを連結するためのスプリットリングおよびこれを備えた釣り用ルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にルアーフィッシングに用いる従来の釣り用ルアーは、図7および図8に示すように小魚などを模した疑似餌となるルアーボディ10に、1つまたは複数のフック20、20をそれぞれスプリットリング30を介して着脱自在に取り付けた構造となっている。このスプリットリング30は、例えば以下の特許文献1および2などに示すように一般に金属製のワイヤを約5~10mm程度の径でほぼ真円状に二重巻きにし、その先端同士を近接させてなるものである。
【0003】
そして、専用の工具などを用いてそのスプリットリング30の一端を開き、その開いた入口先端のワイヤをルアーボディ10のアイ11とフック20の環状の吊下部22に差し込んで回すことで両者をチェーン状に連結するようになっている。このようなスプリットリング30を用いることによってルアーボディ10やフック20の交換が容易にできると共に、ルアーボディ10に対してフック20が自由に動くことができるため、魚に引っかかりやすくなって釣果の向上に寄与することができる。
【0004】
また、最近ではこのようなほぼ真円状のスプリットリング30の他に、図9に示すような楕円形または長円形のスプリットリング30も登場してきている。この楕円形または長円形のスプリットリング30は、一方の径をそのままにしてそれと直交する他方の径を拡大したものであり、その形状故の特有のメリットが期待されている。
【0005】
すなわち、まずその形状を楕円形または長円形にすることにより、図10に示すような真円形のものよりもフック20をルアーボディ10から離すことができるため、フック20が魚の口奥まで飲み込まれて刺さりやすくなり、ファイト時のフックアウトを低く抑えることができる。次に、真円形のものは魚とのファイト時にそのリングの切れ目となるワイヤの入口箇所がルアーボディ10のアイ11あるいはフック20に位置した場合、その負荷がワイヤ1本からなるその入口箇所に集中して強度が低下するため、破損したり伸びたりすることがある。
【0006】
これに対し、楕円形または長円形のものは、図9に示すようにそのリングの切れ目となるワイヤの入口箇所がリングの側部(直線部分)のいずれかに位置しているため、常にワイヤ2本の部分からなる両端部分でルアーボディ10のアイ11およびフック20の力をそれぞれ受けとめることになる。これにより、真円形のものに比べて約2倍の強度を発揮することができるため、伸びや破断を回避することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-28492号公報
【文献】意匠登録第1081013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したような楕円形または長円形のスプリットリング30は、そのリングの切れ目となるワイヤの入口箇所がリングの側部(直線部分)に位置しているため、水流による抵抗やルアーのアクションなどでフック20が逆向きにセットされてしまった際に、図11に示すようにフック20上端の吊下部22がそのリングの切れ目となる入口箇所(ワイヤ先端)に引っかかってしまい、正常な状態に戻り難いといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は水流による抵抗やルアーのアクションなどでフックが逆向きにセットされてしまった場合でも簡単に正常な状態に戻すことができる新規なスプリットリングおよびそれを備えた釣り用ルアーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明は、ルアーボディのアイにフックを着脱自在に取り付けるためのスプリットリングであって、金属ワイヤを環状に二重または三重巻きにして楕円形または長円形に加工すると共に、そのワイヤの両端が前記楕円形または長円形の端部に位置していることを特徴とするスプリットリングである。
【0011】
このような構成によれば、従来の楕円形または長円形のスプリットリングのようにそのリングの切れ目となる入口箇所(ワイヤ先端)がリングの側部(直線部分)に位置していないため、水流による抵抗やルアーのアクションなどでフックが逆向きにセットされてしまった場合でもその部分に引っかかることがなくなり、竿を振るだけで簡単に正常な状態に戻すことができる。
【0012】
第2の発明は、ルアーボディのアイにスプリットリングを介してフックを着脱自在に備えた釣り用ルアーであって、前記スプリットリングは、金属ワイヤを環状に二重または三重巻きにして楕円形または長円形に加工すると共に、そのワイヤの両端が前記楕円形または長円形の端部に位置していることを特徴とする釣り用ルアーである。このような構成によれば、第1の発明と同様に、水流による抵抗やルアーのアクションなどでフックが逆向きにセットされてしまった場合でもその部分に引っかかることがなくなり、竿を振るだけで簡単に正常な状態に戻すことができる。
【0013】
第3の発明は第2の発明において、前記フックは、それぞれ上端に環状の吊下部を備えた第1のフック部材と第2のフック部材とを、拡縮自在な連結体で束ねたツインフックであることを特徴とする釣り用ルアーである。このような2つのフック部材からなるツインフックの場合も竿を振るだけで簡単に正常な状態に戻すことができると共に、スプリットリングとフックの吊下部との接触箇所が、1つの吊下部しか有しないシングルフックや、1つの吊下部を共有するツインフックあるいはトリプルフックに比べて2箇所になるため、スプリットリングにかかる力が分散される。これにより、スプリットリンクの伸びや破断を回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の楕円形または長円形のスプリットリングのようにそのリングの切れ目となる入口箇所(ワイヤ先端)がリングの側部(直線部分)に位置していないため、水流による抵抗やルアーのアクションなどでフックが逆向きにセットされてしまった場合でもその部分に引っかかることがなくなり、竿を振ったり水流による抵抗だけで簡単に正常な状態に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る釣り用ルアー100の実施の一形態を示す側面図である。
図2図1中A方向からみた正面図である。
図3】(A)は本発明に係るスプリットリング40の実施の一形態を示す斜視図、(B)はその平面図である。
図4図2中A部を示す部分拡大図である。
図5】スプリットリング30,40によるフック保持力と引張り強さとの関係を示すグラフ図である。
図6】従来のトリプルフック50の一例を示す側面図である。
図7】従来の釣り用ルアーの一例を示す側面図である。
図8図5中A方向からみた正面図である。
図9】(A)は従来の長円形のスプリットリング30の一例を示す斜視図、(B)はその平面図である。
図10】(A)は従来の真円形のスプリットリング30の一例を示す斜視図、(B)はその平面図である。
図11】水流による抵抗やルアーのアクションでフック20が逆向きにセットされてしまった状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る釣り用ルアー100の実施の一形態を示したものである。図示するようにこの釣り用ルアー100は、魚形状をした疑似餌となるルアーボディ10の腹部および尾びれ部付近に設けられた環状のフックアイ11,11に、それぞれスプリットリング40,40を介してフック20,20を着脱自在に取り付けた構造となっている。
【0017】
このルアーボディ10は、実際の魚や小動物、昆虫などの形態を模したプラスチックや金属、ゴムなどで形成されており、その口元付近のラインアイ12に接続されたライン50に引っ張られるようにして水中または水面付近に位置して周囲の魚を引きつけるように機能する。なお、このルアーボディ10は、その尾びれ部分が中折れ式で左右に揺動するものもある。
【0018】
フック20は、図2に示すように第1フック部材21と第2フック部材22とを連結体23で束ねて構成されている。第1フック部材21は、炭素鋼などの高強度の針金からなっており、直線状の軸部21aの頂部に環状の吊下部31bを有していると共に、その下端部にはJ字形に湾曲した針先部21cが一体的に形成されている。一方、第2フック部材22も第1フック部材21と同様に、直線状の軸部22aの上端にリング状の吊下げ部32bを有していると共に、その下端部は第1フック部材21とは反対側にJ字形に湾曲した針先部22cが一体的に形成されている。
【0019】
この第1フック部材21と第2フック部材22とを束ねる連結体23は、ほぼ直線状をした各軸部21a、22aとほぼ同じ長さをしたチューブから構成されている。この連結体23の材質としては、適度な強度を有しつつ変形可能で復元性のある材料、例えばシリコンゴムや電気絶縁材料などとして用いられているポリオレフィン、フッ素系ポリマー、熱可塑性エラストマーなどから構成されている。
【0020】
このフック20をルアーボディ10のフックアイ11に取り付けるためのスプリットリング40は、図2および図3に示すようにリングを一方向(上下方向)に延ばした楕円形または長円形となっており、その一端(上端)がフックアイ11に係合すると共に、他端(下端)がフック20を構成する第1フック部材21と第2フック部材22の環状の吊下部21b、22bとそれぞれ係合してフック20を吊り下げようにしてチェーン状に連結するようになっている。
【0021】
このスプリットリング40も従来のものと同様に炭素鋼などの高強度のワイヤ(金属線)を小径約5mm、長径約10mm程度の楕円形または長円形のリング状に二重巻きにし、そのワイヤ両端をその一端部付近で近接させてなるものである。すなわち、本発明に係るスプリットリング40は、図に示したような従来の楕円形または長円形のものと同じ大きさ、形状、材質からなっているが、そのリングの切れ目となるワイヤの入口箇所(ワイヤ両端)がリングの側部(直線部分)ではなく、図3に示すように敢えて楕円形または長円形の一端部に位置させたものである。
【0022】
本発明のスプリットリング40はこのような構造により、前述したように楕円形または長円形特有の効果が得られることはもちろん、従来のようにリングの切れ目となるワイヤの入口箇所(ワイヤ両端)がリングの側部(直線部分)に位置しないため、その部分に凹凸がなくなり、水流による抵抗やルアーのアクションなどでフック20が逆向きにセットされてしまった場合でもその部分にフック20の吊下部21b、22bが引っかかることがなくなる。これによってフック20が逆向きにセットされてしまった場合でも単に竿を振るだけで簡単に、あるいは水流の抵抗などによる小さな力でそのフック20を図2に示すような正常な位置に戻すことができる。
【0023】
一方、本発明のスプリットリング40にあっては、図2に示すようにその一端がワイヤ1本の状態となり、その部分にフックアイ11またはフック20の吊下部21b、22bが係合することになる。そのため、従来の楕円形または長円形のものに比べれば、破断強度がやや劣るが従来の真円形のものよりは遙かに優れた強度を発揮できる。
【0024】
すなわち、このスプリットリング40の引張り強度の確認試験を行った結果、図5に示すように従来の真円形のものはフック20を強く引っ張るとある荷重点a(例えば20kg)でそのワイヤの両端が左右に開き始め、その後一気に開いてフック保持力が急激に低下する。これに対し、本発明のスプリットリング40はそれよりも大きい荷重点b(例えば25kg)でそのワイヤが引っ張り方向に伸び始めるものの、そのワイヤの両端が左右に開くことなく、長手方向にゆっくりと伸びていく。この結果、フック保持力もゆっくりと低下するために破断によるフックアウトを回避することができる。
【0025】
また、このフック20として図2に示すような第1フック部材21と第2フック部材22とからなるツインフック20を用いれば、より確実にスプリットリング40の伸びや破断を回避することができる。すなわち、このようなツインフック20の場合は、スプリットリング40とフック20の吊下部21b、22bとの接触箇所が、1つの吊下部しか有しないシングルフックや1つの吊下部を共有するツインフックあるいはトリプルフックに比べて2箇所になるため、そのスプリットリング40にかかる力が分散される。これにより、応力集中がなくなってスプリットリング40の伸びや破断をより確実に回避することができる。
【0026】
また、リングの切れ目となるワイヤの入口箇所(ワイヤ両端)を楕円形または長円形の一端部に位置させたことにより、ツインフックの2つの吊下部21b、22bにスプリットリング40を装着し易い(吊下部21b、22bを同時に装着し易い)といった効果もも発揮する。すなわち、通常の真円形の場合、カーブ(R)がキツくて一方の1つめの吊下部21bにスプリットリング40を通すと2つめの吊下部22bにスプリットリング40を通すときに、スプリットリング40の切れ目の先端が外に出ようとして2本同時に通すのにコツが必要となる。
【0027】
また、入り口が側面にある楕円形の場合も2つの吊下部21b、22bにスプリットリングを入れる際に、最初は直線で入れやすが、その直線部分が本発明に係るスプリットリング40の半分しか直線箇所が無くて、直ぐにRの箇所に成ってしまうため、ツインフックの様に吊下部21b、22bが2つあるツインフックでは直線部分が短くて同様にコツが必要となる。これに対し、本発明に係るスプリットリング40ではフック入り口のRも小さく、そしてその後の直線も長いため、ツインフックの様に2本同時に入れるには、もっとも適した形状となる。その結果、スムーズに引っかかりなくツインフックの2本の吊下部21b、22bにスプリットリング40を装着できるため、スプリットリング40の破損や伸び、変形を確実に回避することができる。
【0028】
なお、本実施の形態ではツインフック20を用いた例で説明したが、1つの吊下部しか有しないシングルフックや1つの吊下部と軸に複数のフックを備えたツインフックや図6に示すようなトリプルフック60の場合も同様な作用・効果が得られることはもちろんである。
【符号の説明】
【0029】
10…ルアーボディ
11…フックアイ
12…ラインアイ
20…フック
22,21b、22b…吊下部
23…連結体
30…従来のスプリットリング
40…本発明に係るスプリットリング
60…従来のトリプルフック
100…釣り用ルアー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11