IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コバードの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】食品成形装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A21C 9/08 20060101AFI20240925BHJP
   A21D 6/00 20060101ALI20240925BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240925BHJP
【FI】
A21C9/08 Z
A21D6/00
A23L5/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023083200
(22)【出願日】2023-05-19
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390013941
【氏名又は名称】株式会社コバード
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 博紀
(72)【発明者】
【氏名】吹上 透
【審査官】芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-116626(JP,A)
【文献】米国特許第05417989(US,A)
【文献】特開昭55-108234(JP,A)
【文献】特開2020-103282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 9/00 - 13/02
A21D 6/00 - 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵生地の表面に凹凸模様を形成して成形する食品成形装置であって、所定形状の発酵生地の表面に複数の突出部が形成された型部材を押し当てて凹部分を形成する模様形成部と、前記型部材を加熱する加熱部と、前記模様形成部を制御して前記型部材の前記突出部を発酵生地の表面に押し当てて前記凹部分を形成するように動作させるとともに前記加熱部を制御して前記凹部分の発酵による膨出作用を停止又は抑制するように加熱させる制御部とを備えており、前記模様形成部は、前記突出部に対応する開口部が形成されて前記突出部の周囲に開口部以外の生地押え部分が押圧して前記発酵生地を保持する生地押え部材を備えている食品成形装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記凹部分の発酵生地が固化して炭化しないように前記加熱部を制御する請求項1に記載の食品成形装置。
【請求項3】
凹凸模様が表面に形成されたシート状の前記発酵生地に内材を配置して凹凸模様が外面に表出するように包み込んで成形する成形部を備えている請求項1又は2に記載の食品成形装置。
【請求項4】
発酵生地の表面に凹凸模様を形成して成形する食品成形方法であって、複数の突出部が形成された型部材の突出部に対応する開口部が形成された生地押え部材を所定形状の発酵生地の表面に押し当て、前記生地押え部材により前記突出部の周囲に開口部以外の生地押え部分を押圧して前記発酵生地を保持した状態で加熱した前記型部材の前記突出部を押し当てて凹部分を形成するとともに加熱された凹部分の発酵による膨出作用を停止又は抑制し、前記凹部分以外の生地部分を発酵により膨出させて凸部分を形成することで表面に凹凸模様を成形する食品成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵生地の表面に対して加熱により模様付けして成形する食品成形装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パン生地等の発酵生地の表面に様々な模様付けして成形された食品が従来より提供されている。例えば、生地を帯状又は紐状に形成して巻き取ったり、別の食材に巻き付けることで、表面に凹凸状の模様を形成した成形品を得ることができる。
【0003】
こうした凹凸形状の模様を形成する成形方法としては、例えば、特許文献1には、偏平状の外皮材で内材を包むように封着する包被食品の成形方法であって、切断刃で外皮材にスリットを形成して内材Fを包み込み、包被食品の外周面にスリットを開いた開口を形成する成形方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、成形品の表面生地に放射状の襞模様を形成する襞模様形成部と、形成された襞模様の中心部分に捻りを加えるとともに捻り動作に合わせて表面生地を挟持して捻り成形する捻り形成部とを備え、食品の表面を襞模様状に成形する成形装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6811224号公報
【文献】特許第6850956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、外皮材に部分的に開口したスリットにより凹凸形状の模様を形成するようにしており、開口したスリットより内材が漏出しやすいといった課題がある。また、特許文献2では、発酵生地に対して捻りを加えるためダメージを受けやすくなる点で検討の余地がある。
【0007】
また、帯状又は紐状に形成した生地を用いて成形することで、多様な形状に成形することが可能となるが、帯状又は紐状に形成することで生地にダメージを与えることになる。さらに、多様な形状に生地を変形することでも生地がダメージを受けるため、発酵によるボリューム感のある外観に成形しにくくなるといった課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、発酵生地に与えるダメージを抑えてボリューム感のある凹凸模様が表出した外観に効率よく成形することができる食品成形装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る食品成形装置は、発酵生地の表面に凹凸模様を形成して成形する食品成形装置であって、所定形状の発酵生地の表面に複数の突出部が形成された型部材を押し当てて凹部分を形成する模様形成部と、前記型部材を加熱する加熱部と、前記模様形成部を制御して前記型部材の前記突出部を発酵生地の表面に押し当てて前記凹部分を形成するように動作させるとともに前記加熱部を制御して前記凹部分の発酵による膨出作用を停止又は抑制するように加熱させる制御部とを備えており、前記模様形成部は、前記突出部に対応する開口部が形成されて前記突出部の周囲に開口部以外の生地押え部分が押圧して前記発酵生地を保持する生地押え部材を備えている。
【0010】
本発明に係る食品成形方法は、発酵生地の表面に凹凸模様を形成して成形する食品成形方法であって、複数の突出部が形成された型部材の突出部に対応する開口部が形成された生地押え部材を所定形状の発酵生地の表面に押し当て、前記生地押え部材により前記突出部の周囲に開口部以外の生地押え部分を押圧して前記発酵生地を保持した状態で加熱した前記型部材の前記突出部を押し当てて凹部分を形成するとともに加熱された凹部分の発酵による膨出作用を停止又は抑制し、前記凹部分以外の生地部分を発酵により膨出させて凸部分を形成することで表面に凹凸模様を成形する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記のような構成を有することで、所定形状の発酵生地の表面に加熱した型部材を押し当てて凹部分を形成して加熱された凹部分の発酵による膨出作用を停止又は抑制するようにしているので、発酵生地に与えるダメージを凹部分のみの局所的な部分に抑え、凹部分以外生地部分を発酵により膨出させることができ、全体としてボリューム感のある凹凸模様を表出した外観に効率よく成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態に関する概略正面図である。
図2】模様形成部に関する概略正面図である。
図3】型部材及び生地押え部材に関する説明図である。
図4】突出部がシート状の発酵生地に凹部分を形成する過程を示す説明図である。
図5】模様形成部の動作説明図である。
図6】模様形成部の動作説明図である。
図7】模様形成部の動作説明図である。
図8】模様形成部の動作説明図である。
図9】模様形成部の動作説明図である。
図10】模様形成部の動作説明図である。
図11】模様形成部の動作説明図である。
図12】模様形成部の動作説明図である。
図13】移動機構に関する一例を示す説明図である。
図14】封着機構に関する一例を示す説明図である。
図15】成形部による成形工程に関する説明図である。
図16】成形部による成形工程に関する説明図である。
図17】成形部による成形工程に関する説明図である。
図18】成形部による成形工程に関する説明図である。
図19】成形部による成形工程に関する説明図である。
図20】成形部による成形工程に関する説明図である。
図21】成形品に関する外観を撮影した画像である。
図22】焼成された成形品に関する外観を撮影した画像である。
図23】焼成された成形品の切断面を撮影した画像である。
図24】生地玉状の発酵生地に模様形成して成形する食品成形装置に関する概略正面図である。
図25】型部材及び生地押え部材に関する説明図である。
図26】生地玉状の発酵生地に関する模様形成部の動作説明図である。
図27】生地玉状の発酵生地に関する模様形成部の動作説明図である。
図28】生地玉状の発酵生地に関する模様形成部の動作説明図である。
図29】生地玉状の発酵生地に関する模様形成部の動作説明図である。
図30】生地玉状の発酵生地に関する模様形成部の動作説明図である。
図31】成形品に関する外観を撮影した画像である。
図32】焼成された成形品に関する外観を撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る食品成形装置に関する概略正面図である。この例では、シート状の発酵生地に凹凸模様を付与した後内材を包み込んで成形する食品成形装置である。食品成形装置1は、シート状の発酵生地の表面に型部材を押し当てて凹部分を形成する模様形成部2と、型部材を加熱する加熱部3と、模様形成部2を制御して型部材を発酵生地の表面に押し当てて凹部分を形成するように動作させるとともに加熱部3を制御して凹部分の発酵による膨出作用を停止又は抑制するように加熱させる制御部100と、凹凸模様が表面に形成されたシート状の発酵生地に内材を配置して凹凸模様が外面に表出するように包み込んで成形する成形部10とを備えている。
【0015】
シート状の発酵生地は、事前に圧延装置等(図示せず)によりシート状に形成されており、模様形成部2では、搬送コンベヤ4により搬入されるようになっている。また、搬送コンベヤ4の下流側には搬送コンベヤ5が配置されており、模様形成部2において凹凸模様を形成した発酵生地が搬送コンベヤ5に移送されて成形部10へ搬送されるようになっている。
【0016】
この例では、シート状の発酵生地の上面に凹部分が形成されるようになっているため、反転部11によりシート状の発酵生地を反転した後搬送コンベヤ5に載置されるようになっている。反転部11は、シート状の発酵生地を斜め上方に移送する移送コンベヤからなり、所定の高さに移送されたシート状の発酵生地を搬送コンベヤ5の搬送面に向かって反転させながら落下するように設定されている。
【0017】
シート状の発酵生地は、凹部分が下面に形成された状態で、シャトルコンベヤ40により成形部10に搬入されて、内材吐出部20により内材が所定量吐出されて発酵生地の上面に配置された後、封着部30により発酵生地の周縁部を寄せ集めて内材を包み込むように封着して外面に凹凸模様が表出するように成形され、成形部10の下方に配置された搬送コンベヤ41に成形品が載置されて搬出されるようになっている。
【0018】
図2は、模様形成部2に関する概略正面図である。模様形成部2は、支持フレーム(図示せず)に取り付けられたベース板200の上面にエアシリンダ201が支持固定されており、エアシリンダ201には上下方向に進退動作する駆動ロッド202が設けられている。駆動ロッド202の下端部には、型部材203が支持固定されており、取付部材203の下面には、複数の突出部203aが配置されて下方に向かって突出するように取り付けられている。
【0019】
型部材203の周辺部には、複数個所に貫通孔が形成されてそれぞれに支持ロッド204が上下動可能に挿着されている。複数の支持ロッド204は、上端部にストッパが設けられて貫通孔から脱落しないようになっており、下端部が薄板状の生地押え部材205の周縁部に固定され、複数の支持ロッド204により生地押え部材205が支持されるようになっている。
【0020】
支持ロッド204の周囲にはコイルバネ部材206が外装されており、コイルバネ部材206は、型部材203と生地押え部材205との間に圧縮状態で取り付けられており、生地押え部材205を下方に向かって常時付勢するようになっている。
【0021】
エアシリンダ201を駆動させて駆動ロッド202を上下方向に進退動作させることで、型部材203の突出部203a及び生地押え部材205が上下動するようになっている。
【0022】
ベース板の下面には、エアシリンダ210が取り付けられており、エアシリンダ210には上下方向に進退動作する駆動ロッド211が設けられている。駆動ロッド211の下端部には支持板212が取り付けられており、支持板212の下方にはエアチャック213が支持固定されている。エアチャック213には、水平方向に互いに接近離反動作する一対のアーム部材215が設けられており、一対のアーム部材215の下端部には一対の型片部材216が支持固定されている。
【0023】
エアシリンダ210を駆動することで駆動ロッドが上下方向に進退動作して一対の型片部材216が上下動するとともに、エアチャック213を駆動することで一対のアーム部材215が接近離反動作して一対の型片部材216が水平方向に接近離反動作を行うようになっている。
【0024】
図3は、型部材203及び生地押え部材205に関する説明図である。図3(a)は、生地押え部材205の平面図を示している。この例では、シート状の生地を一対の型片部材216により円形に型打ちするようになっているため、それに合わせて生地押え部材205も円板状に形成されている。
【0025】
生地押え部材205には、突出部203aがそれぞれ通過可能な開口部207が形成されており、後述するように、突出部203aの周囲に開口部207以外の生地押え部分が押圧して発酵生地を保持した状態で型打ち動作が行われるようになる。
【0026】
図3(b)は、型部材203の底面図を示している。型部材203は、生地押え部材205とほぼ同径の円板状の本体部に、所定幅の金属板からなる複数の突出203aが模様形状に対応して立設するように支持固定されている。突出部203aは、上側の側端部が本体部の下面に固定され、下側の側端部が型面に形成されており、本体部の下面から生地押え部材205の開口部207まで延設される幅に設定されている。突出部203aの下側の側端部の端面は、形成する模様に対応して細幅でライン状に形成された型面となっている。
【0027】
型部材203の本体部には、温度センサ208及び棒状のヒータ209が内蔵されており、温度センサ208及びヒータ209は、制御部100に接続されて加熱制御されるようになっている。ヒータ209を通電加熱することで、型部材203の本体部が加熱されて本体部から熱伝導により突出部203aが加熱状態に設定される。突出部203aの上縁部は、形成する模様に対応して端面が細幅でライン状に形成されて、模様付けするための型面となっている。
【0028】
図3(c)は、型部材203に生地押え部材205を取り付けた状態を示す正面図である。型部材203の下面に突設された複数の支持ロッド204の下端に生地押え部材205が取り付けられており、型部材203に対して生地押え部材205が上下動可能となっており、生地押え部材205が上昇することで生地押え部材205から突出部203aが下方に突出するようになる。下方に突出する突出部203aが発酵生地に押し当てられ、凹部分が形成されて模様付けが行われる。
【0029】
図4は、突出部203aがシート状の発酵生地Fに凹部分を形成する過程を示す説明図である。突出部203aは、ヒータ209が所定温度に発熱した状態で熱伝導により加熱状態となっている(図4(a))。型部材203が下降して突出部203aの下端面の型面203bを生地Fに押し込んでいくと、型面203bが生地Fの表面に押し当てられて生地Fを押し退けるように内部に入り込んでいき(図4(b))、厚さの薄くなった状態で型面203bが圧接された状態となる。
【0030】
型面203bが圧接されて薄くなった生地部分Bには、加熱された突出部203aからの伝熱により温度が上昇するようになる。発酵生地内のイースト菌等の発酵菌は、約40℃から不活性化し始め60℃以上で完全に死滅し、また発酵により生成されるグルテン等のタンパク質は65℃以上で凝固することが知られている。そのため、生地部分Bが高温により発酵菌が不活性化してタンパク質の凝固が進むように加熱制御することで、生地部分Bの発酵による膨出作用を停止又は抑制することができる(図4(c))。
【0031】
また、生地部分B以外の生地部分へ加熱による膨出作用への影響が及ばないようにするとともに生地部分Bが固化しても炭化しないようにすることが必要となるため、突出部203aの加熱温度を調整するとともに型面203bの圧接時間を調整する。
【0032】
生地部分Bへの加熱処理を行った後、突出部203aを上昇させることで、生地部分Bは厚さが薄い状態のままで凹部分が形成されるようになる(図4(d))。
【0033】
型部材203の型面は、形成する模様に応じて形成することができ、上述したように、ライン状のマークの他に、ドット状又は面状といった様々な形状のマークに対応する型面を適宜組み合わせて所望の凹凸模様を形成することが可能である。また、型部材をローラ状に成形して表面に型面を突出させるように形成して、発酵生地の表面に型部材を回動させながら型面を発酵生地に押し当てて凹凸模様に模様付けすることもできる。
【0034】
図5から図12は、模様形成部の動作説明図である。各図(a)は、生地Fに対する型片部材216の動作を平面視で説明する図面であり、各部(b)は、模様形成部の要部の動作を正面視で説明する図面である。
【0035】
図5では、模様形成部は、一対の型片部材216が互い離間して開いた状態で待機位置に上昇した初期設定の状態となっており、シート状の生地Fが搬送コンベヤで移送されて、生地押え部材205の下方に対向する位置に位置決めされる。型部材203は、ヒータ209が発熱して所定温度に加熱された状態に設定されている。
【0036】
図6では、模様形成部は、型片部材216が下降して搬送コンベヤの搬送面に接地した状態に設定されて、生地Fを型片部材216で囲まれた状態となる。図7では、型片部材216が互いに接近するように水平方向に移動して両端部が密着した状態となり、生地Fを円形に整形するとともに生地押え部材205とほぼ一致する位置となるように位置調整を行う。
【0037】
図8では、駆動ロッド202が下方に移動し、型部材203の下側に設けられた突出部203a及び生地押え部材205が下降して生地押え部材205が生地Fの上面に当接した状態に設定される。生地押え部材205は、型部材203に接触した状態とはなっていないので、加熱状態とはなっておらず、当接の際に型部材203から生地Fに熱的な影響が及ぶことはない。
【0038】
図9では、駆動ロッド202がさらに下方に移動し、支持ロッド204が型部材203から突出してコイルバネ部材206が圧縮されるようになり、生地押え部材205が生地Fに対して圧接した状態となる。
【0039】
そして、突出部203aが生地押え部材205の開口部に進入していき、突出部203aは、下端面である型面が生地Fの表面に押し当てられて生地Fに入り込んでいくようになる。そして、生地Fの厚さを薄くした圧接状態に設定され、型面が圧接した生地部分を加熱するようになる。
【0040】
型面が圧接した生地部分は、加熱処理によりイースト菌等の発酵菌及びグルテン等のタンパク質が影響を受けて固化し、発酵による膨出作用が停止又は抑制された状態に設定される。
【0041】
図10では、駆動ロッド202が上昇して型部材203が上昇して生地Fから離間するが、生地押え部材205が生地Fを押さえつけているため、突出部203aに引きずられて模様付けされた形状が崩れることはない。図11では、駆動ロッド202がさらに上昇して生地押え部材205が生地Fから離間した状態となり、待機位置に設定される。図12では、型片部材216が互いに離間して開いた状態になるとともに上昇して初期設定の状態に戻り、凹凸模様が形成された生地Fは次の反転工程に移送される。
【0042】
成形部10は、模様付けされた生地上に内材を吐出する内材吐出部20及び内材が配置された生地の周縁部を寄せ集めて内材と包み込むように封着する封着部30を備えている。
【0043】
内材吐出部20は、内材を貯留するホッパ21及びベーンポンプ等を介して筒状の吐出部材22に接続する供給パイプ23を備えており、供給パイプ23は吐出部材22の内部に連通するようになっている。吐出部材22は、駆動機構24により上下方向に移動動作を行うようになっており、吐出部材22を下降させて内材を吐出する際に生地を押し込むように窪ませる吐出動作を行う。駆動機構24は、例えば、吐出部材22に固定されたアーム部材を筐体内に配置されたガイド部材に沿ってモータ等により上下動させるようになっている。
【0044】
吐出部材22の内部には、下端部が開口した吐出口を開閉する開閉部材(図示せず)が内挿されており、吐出部材22の上方に取り付られたエアシリンダ25により開閉部材を吐出部材22の内部で上下動させて吐出部材22の下端に開口した吐出口より所定量の内材を生地上に吐出するようになっている。
【0045】
封着部30は、生地の周縁部を複数の封着部材により封着する封着機構31と、封着機構31の上側に配置されて複数の動作部材により生地の周縁部を寄せ集める移動機構32とを備えている。また、封着機構31の下側には、吐出部材22により押し込まれた生地を支持する支持機構33を備えており、支持機構33は、搬送コンベヤ41の搬送ベルトの下面に配置された支持部材を上下動させて成形品を支持するとともに搬送ベルトに載置して成形品を移送させるようになっている。
【0046】
封着機構31と移動機構32との間にはシート状の受け部材34を取り付けることができる。受け部材34は、中央部分に開口が形成されており、投入された生地が載置されて開口内に生地の中央部分を吐出部材22により押し込むようになっている。受け部材34の開口の形状は、成形品の形状に合わせて形成されており、例えば、円形に成形する場合には円形の開口に形成し、二つ折りに成形する場合には略楕円形の開口に形成すればよい。そして、受け部材34の上側に載置された生地の周縁部を封着機構31及び移動機32により寄せ集めて内材を包み込むように封着する。
【0047】
図13は、移動機構32に関する一例を示す説明図である。この例では、回動する複数の動作部材320により生地の周縁部を寄せ集めるようにしており、図13(a)は、動作部材320が開く方向に回動した状態を示しており、図13(b)は、動作部材320が閉じる方向に回動した状態を示している。
【0048】
移動機構32は、リング状のフレーム部材321に等間隔で複数の回転部材322が配置されて回転軸を中心に回転可能に取り付けられており、回転部材322の間にはリンク部材323が連結されている。回転部材322の1つには駆動ロッド324が接続されており、駆動ロッド324をモータ等により進退動作することですべての回転部材322が同期して回転するようになっている。
【0049】
動作部材320は、周方向に等間隔で配置された6つの回転部材322に接続固定されており、回転部材322の回転に伴って回動することで開閉動作を行うようになっている。動作部材320が閉じる方向に動作することで、動作部材320の先端部が中心に集まるようになり、後述するように生地の周縁部を寄せ集めるように動作するようになる。
【0050】
図14は、封着機構31に関する一例を示す説明図である。この例では、一対の封着部材311を進退動作させて互いに接近離間させることで生地を二つ折りにした形状で封着動作を行うようになっており、図14(a)は、封着部材311が離間した状態を示しており、図14(b)は、封着部材311が接近して封着動作を行う状態を示している。
【0051】
封着機構31は、リング状のフレーム部材312に平行に配置された4つの回転部材313が回転軸を中心に回転可能に取り付けられており、回転部材313の間にはリンク部材314が連結されている。回転部材313の1つには駆動ロッド315が接続されており、駆動ロッド315をモータ等により進退動作することですべての回転部材313が同期して回転するようになっている。対向配置された一対の回転部材313には、一対の揺動レバー316が接続固定されており、回転部材313の回転に伴って揺動レバー316が回動するようになっている。
【0052】
封着部材311は、フレーム部材312に固定された支持レール部材318に進退可能に取り付けられたガイド部材317の端部に固定されており、ガイド部材317には揺動レバー316の先端部が連結されている。そして、揺動レバー316の回動動作に連動してガイド部材317が進退動作するようになっており、一対のガイド部材317の進退動作により一対の封着部材311が接近離間するように動作する。
【0053】
封着部材311の封着面は、二つ折りに形成された生地の周縁部に合わせて封着部分を形成するように形状が設定されている。
【0054】
図15から図20は、成形部による成形工程に関する説明図である。各図では、成形部に関する生地Fの搬送方向側からみた拡大図を示しているが、理解を容易にするために、吐出部材22、移動機構32の動作部材320、封着機構31の封着部材311及び支持機構33の支持部材330の動作を中心に説明し、それ以外の構成を省略している。
【0055】
図15では、吐出部材22は、上昇した待機位置に設定されており、その下方にシャトルコンベヤ40により下面に模様付けされた生地Fが搬送される。生地Fは、右図の底面図で示すように、ライン状のマークMを複数組み合わせて凹凸模様が形成されており、マークMの部分が凹部分となっている。
【0056】
動作部材320は開いた状態に設定されており、封着部材311は互いに前進して吐出部材22の下端部の吐出部の外径よりもわずかに幅広の隙間が空いた状態に設定されている。
【0057】
図16では、動作部材320が閉じる方向に動作して生地Fの周縁部に当接して位置調整を行う。そして、吐出部材22が下降して下端部が生地Fに当接し、吐出部材22がさらに下降して生地Fとともに封着部材311の間に押し込むようになる。
【0058】
図17では、動作部材320が閉じる方向に動作して生地Fが封着部材311の間にスムーズに落ち込むように生地Fの周縁部を寄せ集め、支持部材330が上昇して封着部材311の下面側に接近した位置に設定される。こうした生地Fの押込み動作により生地Fは二つ折りに形成されるようになる。
【0059】
図18では、吐出部材22内に供給パイプ23から内材Gが所定量供給されて、吐出部材22内の開閉部材を下降させて供給された内材Gを生地Fに向かって押し出すように吐出する。内材Gの吐出動作に合わせて吐出部材22を上昇させ、二つ折りされた生地Fの内部に内材Gを配置して支持部材330の上面に載置された状態にする。そして、封着部材311の封着面が生地Fの周縁部に対向した位置に配置される。
【0060】
図19では、吐出部材22は上昇して元の待機位置に戻るとともに封着部材311が互いに接近して閉じる方向に動作し、二つ折りされた生地Fの周縁部を挟み込んで狭圧するようになり、封着動作が行われる。
【0061】
図20では、封着部材311が互いに離間する方向に移動して開いた状態となり、支持部材330が下降して搬送コンベヤ41により搬送されるようになる。その後成形品Hは、反転されて封着部分が底面になるように仕上げられる。
【0062】
図21は、成形品に関する外観を撮影した画像である。ライン状に形成された凹部分が表面に表出して凹凸模様を形成しており、凹部分は、厚さが薄くなって加熱処理され、発酵による膨出作用が停止又は抑制されるようになっている。
【0063】
成形品は、後工程において発酵処理及び焼成処理が行われ、図22に示すように、凹部分以外の生地部分が発酵により膨出して凸部分が形成されて焼成されるのに対し、凹部分は発酵による膨出作用が生じないため、厚さが薄い状態のまま焼成される。図23は、焼成された成形品の切断面を撮影した画像である。膨出されない凹部分は細幅で薄い断面となっているのに対し、凹部分以外では発酵により膨出した凸部分の断面となっており、凹凸模様が形成された焼成品において生地部分のダメージを最小限に抑えてボリューム感のある形状に仕上げることが可能となっている。
【0064】
上述した実施形態では、シート状の発酵生地に凹凸模様を形成して成形しているが、生地玉状の発酵生地に凹凸模様を形成して成形することも可能である。
【0065】
図24は、生地玉状の発酵生地に模様形成して成形する食品成形装置に関する概略正面図である。食品成形装置1’は、模様形成部2’、模様形成部2’に生地玉状の発酵生地を搬入する搬送コンベヤ4’及び搬送コンベヤ4’の下流側に配置されて模様付けされた成形品を移送する搬送コンベヤ5を備えている。
【0066】
模様形成部2’は、生地押え部材及び型部材以外は上述の模様形成部2と同様の構成を備えており、詳細については説明を省略する。
【0067】
図25は、模様形成部2’において使用する型部材及び生地押え部材に関する説明図である。図25(a)は、生地押え部材205’の平面図を示している。この例では、生地押え部材205’は、生地玉状の発酵生地のサイズ及び形状に合わせても円板状に形成されている。
【0068】
生地押え部材205’には、型部材203’の突出部203a’がそれぞれ通過可能な開口部207’が形成されており、後述するように、突出部203a’の周囲に開口部207’以外の生地押え部分が押圧して発酵生地を保持した状態で型打ち動作が行われるようになる。
【0069】
図25(b)は、型部材203’の底面図を示している。型部材203’は、生地押え部材205’とほぼ同径の円板状の本体部に、帯状の金属板からなる複数の突出203a’が模様形状に対応して立設するように支持固定されている。突出部203a’は、上側の側端部が本体部の下面に固定され、下側の側端部が型面に形成されており、本体部の下面から生地押え部材205’の開口部207’まで延設される幅に設定されている。突出部203a’の下側の側端部の端面は、形成する模様に対応して細幅でライン状に形成された型面となっている。
【0070】
型部材203’の本体部には、型部材203と同様に、温度センサ208及び棒状のヒータ209が内蔵されており、温度センサ208及びヒータ209は、制御部(図示せず)に接続されて加熱制御されるようになっている。ヒータ209を通電加熱することで、型部材203’の本体部が加熱されて本体部から熱伝導により突出部203a’が加熱状態に設定される。
【0071】
図25(c)は、型部材203’に生地押え部材205’を取り付けた状態を示す正面図である。型部材203’の下面に突設された複数の支持ロッド204’の下端に生地押え部材205’が取り付けられており、型部材203’に対して生地押え部材205’が上下動可能となっており、生地押え部材205’が上昇することで生地押え部材205’から突出部203a’が下方に突出するようになる。下方に突出する突出部203a’の型面が発酵生地に押し当てられ、凹部分が形成されて模様付けが行われる。
【0072】
図26から図30は、生地玉状の発酵生地に関する模様形成部の動作説明図である。各図(a)は、生地F’に関する平面図であり、各部(b)は、模様形成部の要部の動作を正面視で説明する図面である。
【0073】
図26では、模様形成部2’は、型部材203’及び生地押え部材205’が待機位置に上昇した初期設定の状態となっており、平面視円形状に形成された生地F’が搬送コンベヤにより生地押え部材205’の下方に対向する位置に位置決めされる。型部材203は、ヒータ209が発熱して所定温度に加熱された状態に設定されている。
【0074】
図27では、駆動ロッド202が下方に移動し、型部材203’の下側に設けられた突出部203a’及び生地押え部材205’が下降して生地押え部材205’が生地Fの上面に当接した状態に設定される。生地押え部材205’は、型部材203’に接触した状態とはなっていないので、加熱状態とはなっておらず、当接の際に型部材203’から生地F’に熱的な影響が及ぶことはない。
【0075】
図28では、駆動ロッド202がさらに下方に移動し、支持ロッド204’が型部材203’から突出して生地押え部材205が生地F’に対して圧接した状態となる。突出部203a’は、生地押え部材205’の開口部207’に進入していき、下端面である型面が生地F’の表面に押し当てられて生地F’に入り込んでいくようになる。そして、生地F’の厚さを薄くした圧接状態に設定され、型面が圧接した生地部分を加熱するようになる。
【0076】
型面が圧接した生地部分は、加熱処理によりイースト菌等の発酵菌及びグルテン等のタンパク質が影響を受けて部分的に固化し、発酵による膨出作用が停止又は抑制された状態に設定される。型面が圧接した生地部分は凹部分に形成され、凹部分に対応するライン状のマークMを複数組み合わせて凹凸模様が表出するようになる。
【0077】
図29では、駆動ロッド202が上昇して型部材203’が上昇して生地F’から離間するが、生地押え部材205’が生地Fを押え付けているため、突出部203a’に引きずられて模様付けされた形状が崩れることはない。
【0078】
図30では、駆動ロッド202がさらに上昇して生地押え部材205’が生地F’から離間した状態となり、待機位置に設定される。生地F’の表面に凹凸模様が形成された成形品H’は、搬送コンベヤにより次の工程に移送される。
【0079】
図31は、成形品に関する外観を撮影した画像である。ライン状に形成された凹部分が表面に表出して凹凸模様を形成しており、凹部分は、厚さが薄くなって加熱処理され、発酵による膨出作用が停止又は抑制されるようになっている。
【0080】
成形品は、後工程において発酵処理及び焼成処理が行われ、図32に示すように、凹部分以外の生地部分が発酵により膨出して焼成されるのに対し、凹部分は発酵による膨出作用が抑制されるため、窪んだ状態で焼成される。そのため、凹部分に対応した部分が外面に表出した凹凸模様の焼成品を成形することができる。したがって、凹部分のみの最小限のダメージに抑えて成形することができるので、凹部分以外の生地部分が発酵により十分に膨出してボリューム感のある成形品に仕上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
F・・・生地、G・・・内材、H・・・成形品、M・・・マーク、1・・・食品成形装置、2・・・模様形成部、3・・・加熱部、4・・・搬送コンベヤ、5・・・搬送コンベヤ、10・・・成形部、11・・・反転部、20・・・内材吐出部,30・・・封着部、40・・・シャトルコンベヤ、41・・・搬送コンベヤ、100・・・制御部、202・・・駆動ロッド、203・・・型部材、203a・・・突出部、205・・・生地押え部材
【要約】
【課題】本発明は、発酵生地に与えるダメージを抑えてボリューム感のある凹凸模様が表出した外観に効率よく成形することができる食品成形装置及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】食品成形装置1は、発酵生地の表面に凹凸模様を形成して成形する食品成形装置であって、所定形状の発酵生地の表面に型部材を押し当てて凹部分を形成する模様形成部2と、型部材を加熱する加熱部3と、模様形成部2を制御して型部材を発酵生地の表面に押し当てて凹部分を形成するように動作させるとともに加熱部3を制御して凹部分の発酵による膨出作用を停止又は抑制するように加熱させる制御部100とを備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32