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  • 特許-乳化物の生成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】乳化物の生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240925BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240925BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/06
A61K8/73
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023154087
(22)【出願日】2023-09-21
【審査請求日】2024-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521128775
【氏名又は名称】C&H株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】橋本 翔太
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-130050(JP,A)
【文献】特表2023-503103(JP,A)
【文献】特開2023-020034(JP,A)
【文献】特開2020-105119(JP,A)
【文献】Ryan Gibson,CBD For Cosmetics: Pickering Emulsion for CBD Stability within your Cosmetics Formulations,[online],2022年05月15日,https://www.linkedin.com/pulse/cbd-cosmetics-pickering-emulsion-stability-within-your-ryan-gibson,第1頁, 図面
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/33-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/327
A61P 1/00-43/00
A23D 7/00- 9/06
C09K 23/00-23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNFの水分散液を生成する分散液生成ステップと、
オイルにカンナビノイド類で構成された脂溶性物質を溶解させる溶解ステップと、
前記分散液生成ステップで生成した前記水分散液に、前記溶解ステップで前記脂溶性物質を溶解した前記オイルを添加し、攪拌する乳化物生成ステップと、を備える、界面活性剤を用いない、乳化物の生成方法。
【請求項2】
前記乳化物生成ステップの後に水溶性成分を添加する水溶性成分添加ステップを更に備える、請求項に記載の乳化物の生成方法。
【請求項3】
前記オイルは、前記脂溶性物質の濃度が5%~60%であるホホバオイルであり、
前記水分散液における、前記CNFの濃度が0.8~1.6重量パーセントである、請求項1に記載の乳化物の生成方法。
【請求項4】
前記オイルは、前記脂溶性物質の濃度が5%のホホバオイルであり、
前記水分散液における、前記CNFの濃度が0.8重量パーセントである、請求項1に記載の乳化物の生成方法。
【請求項5】
前記オイルは、前記脂溶性物質の濃度が60%のホホバオイルであり、
前記水分散液における、前記CNFの濃度が1.6重量パーセントである、請求項1に記載の乳化物の生成方法。
【請求項6】
前記オイルは、ホホバオイル、アルガンオイル、オリーブオイル、アボガドオイル、カメリアオイル、グレープシードオイル、米胚芽オイル、ザクロオイル、アーモンドオイル、ひまし油、ブロッコリーオイル、マカダミアナッツオイル、ローズヒップオイル、ラズベリーオイル、ヤング-オイル、スクワランオイル、ミネラルオイルの少なくとも1つで構成される請求項1に記載の乳化物の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化物などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、カンナビノイド添加製剤などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-109849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、界面活性剤や安定化剤を用いる必要があり、処方が複雑となっていた。
【0005】
したがって本発明の目的は、簡単にカンナビノイド類を含む脂溶性物質の乳化物、及び当該乳化物の生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乳化物は、CBDとCBGとCBNとCBCとCBDVの少なくとも1つを含むカンナビノイド類で構成された脂溶性物質を溶解したオイルと、CNFの水分散液と、を含み、界面活性剤を用いずに生成される。
【0007】
カンナビノイド類を含む乳化物を生成することが可能になる。
乳化前のオイルと比べて、乳化物は、水分散液を介して、脂溶性物質に含まれるカンナビノイド類を体内に浸透させやすい。
【0008】
CNFは、油滴表面に吸着し、安定な油滴を生成するピッカリングエマルジョン効果を得ることが出来る。
このため、界面活性剤を用いずに、簡単に脂溶性物質を含む乳化物を生成することが出来る。
また、CNFのうち、ピッカリングエマルジョンの生成に用いられないものは、ネットワーク構造によって水中での油滴の安定化に寄与するので、安定化剤を必要としない。
また、CNFは体内に浸透せずに、塗布面に残るが、微細なので視認出来ない。
【0009】
通常の水よりも揮発しにくく、保湿性が高く、脂溶性物質に含まれるカンナビノイド類を体内に浸透させやすい。このため、脂溶性物質に含まれるカンナビノイド類を体内に浸透させつつ、CNFの保水効果により、保湿効果が得られやすい。
【0010】
好ましくは、前記CNFは、セルロースを、化学的処理若しくは生物的合成による精製処理を行って、単離したものであり、3~10nmの繊維径を有する。
【0011】
機械的に解繊する形態に比べて、繊維径が細く均一なネットワーク構造を有するCNFを生成することが可能になる。
【0012】
さらに好ましくは、前記水分散液における、前記CNFの濃度は、0.8~1.6重量パーセントである。
【0013】
また、好ましくは、前記オイルは、植物オイル、炭化水素油の少なくとも一方で構成される。
【0014】
人体の皮膚などに触れて悪影響を及ぼしにくい。
【0015】
さらに好ましくは、前記乳化物は、人体の皮膚に塗布する化粧水として用いられる。
【0016】
乳化前のオイルと比べて、乳化物はオイルの添加量を任意の値に設定することが出来る。このため、化粧水として使用する場合、脂溶性物質に含まれるカンナビノイド類の皮膚への浸透効果を維持しつつ、塗布後のべたつきなどの不快感を軽減することが出来る。
【0017】
本発明に係る界面活性剤を用いない乳化物の生成方法は、CNFの水分散液を生成する分散液生成ステップと、オイルに脂溶性物質を溶解させる溶解ステップと、前記分散液生成ステップで生成した前記水分散液に、前記溶解ステップで前記脂溶性物質を溶解した前記オイルを添加し、攪拌する乳化物生成ステップと、を備える。
【0018】
好ましくは、当該生成方法は、前記乳化物生成ステップの後に水溶性成分を添加する水溶性成分添加ステップを更に備える。
【0019】
乳化物の生成後に当該水溶性成分を添加することによって、当該水溶性成分と乳化物との相互作用を軽減出来、安定した乳化物が得られやすい。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、簡単にカンナビノイド類を含む脂溶性物質の乳化物、及び当該乳化物の生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態におけるオイルと水分散液の構成図である。
図2】本実施形態における乳化物の構成図である。
図3】本実施形態における生成方法の手順を示すフローチャートである。
図4】蒸発により減少する液体の残存率の時間変化を、CNFの水分散液と水とで比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する(図1図3参照)。
なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。また、各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが出来る。
【0023】
なお、図1図2では、乳化物1を構成する物質を説明するために、実際には視認出来ない部材(脂溶性物質11、CNF21)を丸印などで示している。
【0024】
(乳化物1)
本実施形態における乳化物1は、脂溶性物質11を溶解したオイル13と、CNF(セルロースナノファイバー)21の水分散液23を混合・攪拌して生成されたものである。
【0025】
(脂溶性物質11)
脂溶性物質11は、CBD(カンナビジオール)を主とするカンナビノイド類で構成される。
脂溶性物質11は、CBDに限定するものではなく、CBG(カンナビゲロール)、CBN(カンナビノール)、CBC(カンナビクロメン)、CBDV(カンナビディバリン)など、他のカンナビノイド類で構成されてもよい。
【0026】
(オイル13)
オイル13は、カンナビノイド類で構成された脂溶性物質11を溶解させるオイル、例えば、ホホバオイル、アルガンオイル、オリーブオイル、アボガドオイル、カメリアオイル、グレープシードオイル、米胚芽オイル、ザクロオイル、アーモンドオイル、ひまし油、ブロッコリーオイル、マカダミアナッツオイル、ローズヒップオイル、ラズベリーオイル、ヤング-オイルなどの植物オイル、スクワランオイル、ミネラルオイルなどの炭化水素油の少なくとも1つで構成される。
オイル13における脂溶性物質11の濃度は、60%以内に調整されるのが望ましい
【0027】
(CNF21、水分散液23)
CNF21は、セルロースを、化学的処理若しくは生物的合成による精製処理を行って単離したものである。
ここでいう化学的処理は、TEMPO酸化法、リン酸エステル化法、亜リン酸エステル化法、カルボキシルメチル化法、ザンデート化法、スルホン化法、酵素加水分解法、酸加水分解法、イオン液体選択溶解法のいずれかを含む。
ここでいう生物的合成は、バクテリア等を用いた生物的合成法を含む。
当該精製処理により、本実施形態におけるCNF21の繊維径は、3~10nmに調整されるのが望ましい。
水分散液23には、分散した状態のCNF21が含まれる。
水分散液23におけるCNF21の濃度は、0.8~1.6重量パーセントに調整されるのが望ましい。
【0028】
CNF21の濃度は、オイルの種類、当該オイルの添加量、生成した乳化物1で求められる質感などに応じて調整するのが望ましい。
例えば、60%のホホバオイルに対しては、CNF21の濃度が1.6重量パーセントの水分散液23を用いることで、均一で弾力のある乳化物1を生成出来る。
また、5%のホホバオイルに対しては、CNF21の濃度が0.8重量パーセントの水分散液23を用いることで、さらりとした感触の乳化物1を生成出来る。
【0029】
(乳化物1の生成手順)
乳化物1は、CNF21の水分散液23に、脂溶性物質11を溶解したオイル13を添加し、機械的に攪拌することにより生成される。
すなわち、乳化物1の生成方法は、CNF21の水分散液23を生成する分散液生成ステップS1と、オイル13に脂溶性物質11を溶解させる溶解ステップS2と、水分散液23に脂溶性物質11を溶解したオイル13を添加し、攪拌する乳化物生成ステップS3とを備える。
攪拌は、攪拌羽根付きの攪拌機などの攪拌装置30により行われる。
油滴の微細化を進行させるため、攪拌機の回転速度を速くするのが望ましい。
ただし、攪拌装置30は、超音波によるもの、高圧ホモジナイザーなどで構成されてもよいし、これらを組み合わせたもので構成されてもよい。
【0030】
水溶性成分の添加(水溶性成分添加ステップS4)は、乳化物1が生成された後に行われるのが望ましい。
また、カンナビノイド類以外の有効成分としてグリチル酸ジカリウム、ビタミンC誘導体、クエン酸などのイオン性の成分を添加する場合、CNF21の構造は、純粋なセルロース構造を有するものが好ましい。ここで言う「純粋なセルロース構造」は、カルボキシメチル化したCNF21など、側鎖に電荷を有せず、化学改変されていないセルロース構造である。
【0031】
(カンナビノイド類で構成された脂溶性物質11を用いることの効果)
カンナビノイド類を含む乳化物1を生成することが可能になる。
乳化前のオイル13と比べて、乳化物1はオイル13の添加量を任意の値に設定することが出来る。このため、化粧品として使用する場合、脂溶性物質11に含まれるカンナビノイド類の皮膚への浸透効果を維持しつつ、塗布後のべたつきなどの不快感を軽減することが出来る。
【0032】
(CNF21を用いることの効果)
CNF21は、油滴表面に吸着し、安定な油滴を生成するピッカリングエマルジョン効果を得ることが出来る。
このため、界面活性剤を用いずに、簡単に脂溶性物質11を含む乳化物1を生成することが出来る。
また、CNF21のうち、ピッカリングエマルジョンの生成に用いられないものは、ネットワーク構造によって水中での油滴の安定化に寄与するので、安定化剤を必要としない。
また、CNF21は体内に浸透せずに、塗布面に残るが、微細なので視認出来ない。
【0033】
(CNF21の水分散液23を用いることの効果)
通常の水よりも揮発しにくく、保湿性が高く、脂溶性物質11に含まれるカンナビノイド類を体内に浸透させやすい。このため、脂溶性物質11に含まれるカンナビノイド類を体内に浸透させつつ、CNF21の保水効果により、保湿効果が得られやすい(図4参照)。図4は、加熱による蒸発で減少する液体の残存率の時間変化を、CNF21の水分散液23と水とで比較したものである。具体的には、当該残存率は、約50gの水と、CNF21の水分散液23とを、それぞれ50mLビーカーに充填し、85℃のホットプレート上で同時に加熱し、重量変化を測定して得られたものである。水と比べて、CNF21の水分散液23の液体残存率が高いことが示される。
【0034】
(化学的処理などにより、CNF21を生成することの効果)
機械的に解繊する形態に比べて、繊維径が細く均一なネットワーク構造を有するCNF21を生成することが可能になる。
【0035】
(オイル13として、オリーブオイルなどが用いられることの効果)
人体の皮膚などに触れて悪影響を及ぼしにくい。
【0036】
(乳化物生成ステップS3の後に水溶性成分添加ステップS4を行うことの効果)
乳化物1の生成後に当該水溶性成分を添加することによって、当該水溶性成分と乳化物1との相互作用を軽減出来、安定した乳化物1が得られやすい。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 乳化物
11 脂溶性物質
13 オイル
21 CNF(セルロースナノファイバー)
23 水分散液
30 攪拌装置
【要約】
【課題】 簡単にカンナビノイド類を含む脂溶性物質の乳化物、及び当該乳化物の生成方法を提供する。
【解決手段】 乳化物は、CBDとCBGとCBNとCBCとCBDVの少なくとも1つを含むカンナビノイド類で構成された脂溶性物質を溶解したオイルと、CNFの水分散液と、を含み、界面活性剤を用いずに生成される。前記CNFは、セルロースを、化学的処理若しくは生物的合成による精製処理を行って、単離したものであり、3~10nmの繊維径を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4