(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】補体経路阻害剤及び血管新生阻害剤を含む融合タンパク質並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240925BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240925BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20240925BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240925BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240925BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240925BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240925BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240925BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240925BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/705
C07K14/71
C07K16/22
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K38/17
A61P27/02
C12N15/12
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2023501223
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 KR2021008681
(87)【国際公開番号】W WO2022010271
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0083536
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523005531
【氏名又は名称】カナプ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KANAPH THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チュン, ウ ドゥム
(72)【発明者】
【氏名】リュ, スミン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ドンゴン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジフン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ビョン チュル
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500811(JP,A)
【文献】特表2008-515999(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0071477(US,A1)
【文献】国際公開第2020/077169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンスーパーファミリーの補体受容体(CRIg)の細胞外ドメイ
ン、及び
血管内皮増殖因子(VEGF)に特異的に結合するタンパク質
を含む、融合タンパク質
であって、
構造式(I)又は(II):
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
からなり、
構造式(I)及び(II)において、
N’は前記融合タンパク質のN末端であり、
C’は前記融合タンパク質のC末端であり、
Xは前記CRIgの前記細胞外ドメインであり、
YはVEGFに特異的に結合する前記タンパク質であり、
前記リンカー(1)及び前記リンカー(2)はペプチドリンカーであり、
n及びmはそれぞれ独立的に0又は1である、融合タンパク質。
【請求項2】
前記
FcドメインがDANGバリエーション又はNGバリエーションを含む、請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記
Fcドメインが配列番号6、配列番号11又は配列番号76のアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
VEGFに特異的に結合する前記タンパク質が、VEGFに特異的に結合する抗体又はその
抗原結合断片
と、VEGF受容体の細胞外ドメイン
とを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記VEGF受容体がVEGF受容体1又はVEGF受容体2である、請求項
4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記VEGF受容体の細胞外ドメインが配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項
5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記リンカー(1)が配列番号15又は配列番号17のアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記リンカー(2)が配列番号16又は配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
構造式(I)からなる、請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
配列番号2、配列番号4、配列番号8及び配列番号10からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の2つの融合タンパク質が結合した、融合タンパク質二量体。
【請求項12】
ホモ二量体である、請求項
11に記載の融合タンパク質二量体。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項14】
配列番号24、配列番号26、配列番号30及び配列番号32からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項
13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項
13に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項16】
請求項
15に記載のベクターが導入された、形質転換細胞。
【請求項17】
請求項1に記載の融合タンパク質又は請求項
11に記載の融合タンパク質二量体を活性成分として含む、眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項18】
前記眼疾患が、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(GA)、脈絡膜血管新生(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病網膜症及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼ヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生並びに網膜血管新生からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項
17に記載の眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項19】
医薬的に許容可能な担体をさらに含む、請求項
17に記載の眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項20】
眼疾患の治療又は予防のための医薬の製造のための融合タンパク質又はその二量体の使用であって、
前記融合タンパク質は、CRIgの細胞外ドメイ
ン、及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含
み、構造式(I)又は(II):
N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
からなり、
構造式(I)及び(II)において、
N’は前記融合タンパク質のN末端であり、
C’は前記融合タンパク質のC末端であり、
Xは前記CRIgの前記細胞外ドメインであり、
YはVEGFに特異的に結合する前記タンパク質であり、
前記リンカー(1)及び前記リンカー(2)はペプチドリンカーであり、
n及びmはそれぞれ独立的に0又は1である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、補体経路阻害タンパク質及び血管新生阻害タンパク質を含有する融合タンパク質、並びにそれを使用して眼疾患、詳細には黄斑変性を治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]黄斑変性は、ブルッフ膜、脈絡膜、神経網膜及び/又は網膜色素上皮の異常と関係がある中心視野喪失を特徴とする疾患を指す。直径が約1/3~1/2cmである黄班は、網膜の中心に存在する。網膜より下に、線維組織中に包埋された血管の集まりである脈絡膜及び脈絡膜層の上に形成されている色素上皮(PE)が存在する。この場合、脈絡膜血管は栄養素を網膜に供給する。脈絡膜及びPEは眼の前部に見られる。
【0003】
[0003]黄斑変性の1種である加齢性黄斑変性症(AMD)は、視野の中心部の進行性視力喪失、色識別の変化並びに異常な暗順応及び感度の関係がある疾患である。AMDはおおまかに乾燥型又は湿潤型AMDとして分類される。乾燥型AMDは、読書、運転又は顔認識などの活動のために使用される優れた視力に必要とされる中心網膜又は黄班の萎縮性細胞死と関係がある。乾燥型AMDの患者の約10%~20%は、湿潤型AMDとして公知である2型AMDに進行する。
【0004】
[0004]疾患の発症の2つの形態における最も重大な危険因子は、加齢及び網膜色素上皮の後ろの異常な細胞外沈着物であるドルーゼンの沈着である。ドルーゼンはAMDと関係がある特徴的な沈着物である。ドルーゼンは、補体活性化因子、阻害剤、活性化特異的補体断片及び末端経路因子、例えば細胞膜侵襲複合体(MAC又はC5b-9)を含むことが公知である。さらに、湿潤型AMDは脈絡膜血管新生(CNV)と関係がある。新しい脈絡膜血管新生の発症機構はほとんど知られていないが、炎症、虚血及び血管新生因子の局所的生成などの因子が重要であると考えられる。
【0005】
[0005]一方、補体系は、微生物感染に対する先天免疫の重要な要素であり、通常は血清中に不活性状況で存在するタンパク質の集団を含む。これらのタンパク質は、古典的経路、レクチン経路及び代替経路を通じて活性化される。微生物の表面上の分子は、前述の経路を活性化して、C3転換酵素として公知であるプロテアーゼ複合体の形成を引き起こす。
【0006】
[0006]補体経路の活性化は、補体タンパク質、例えば、白血球走化性における炎症反応、マクロファージ、好中球、血小板、肥満細胞及び内皮細胞の活性化、増大した血管透過性、細胞溶解並びに組織損傷を媒介する、C3a及びC5a及びC5b-9細胞膜侵襲複合体(MAC)などのアナフィラトキシンのものを含めて、生物学的に活性な断片を生成する。さらに、眼疾患のいくつかは補体に関連していることが報告されている(特願第2007-536964号)。しかし、眼疾患、特に黄斑変性を効果的に治療するための薬物に対する必要性がこれまで増加しており、したがって、黄斑変性に対する治療剤の研究は依然として進行中である。
【発明の概要】
【0007】
[0007]したがって、眼疾患、特に黄斑変性を効果的に治療及び予防するための研究の結果として、本発明者らは補体関連経路及び血管新生促進経路を遮断する融合タンパク質を黄斑変性に対する治療剤として使用することができることを確認し、それによって、本発明を完成した。
【0008】
[0008]本発明の一態様は、免疫グロブリンスーパーファミリーの補体受容体(CRIg)の細胞外ドメイン又はその断片及び血管内皮増殖因子(VEGF)に特異的に結合するタンパク質を含有する融合タンパク質を提供する。
【0009】
[0009]本発明の別の態様は、2つの融合タンパク質が連結された融合タンパク質二量体を提供する。
【0010】
[0010]本発明のさらに別の態様は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0011】
[0011]本発明のさらに別の態様は、該ポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。
【0012】
[0012]本発明のさらになお別の態様は、該ベクターが導入された形質転換細胞を提供する。
【0013】
[0013]本発明のさらになお別の態様は、融合タンパク質又は融合タンパク質二量体を活性成分として含む、眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供する。
【0014】
[0014]本発明のさらになお別の態様は、眼疾患を治療するための融合タンパク質又はその二量体の使用であって、融合タンパク質がCRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含有する使用を提供する。
【0015】
[0015]本発明のさらになお別の態様は、眼疾患の治療又は予防のための医薬の製造のための融合タンパク質又はその二量体の使用であって、融合タンパク質がCRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含有する使用を提供する。
【0016】
[0016]本発明のさらになお別の態様は、眼疾患を治療及び/又は予防するための方法であって、融合タンパク質又はその二量体を対象に投与することを含み、融合タンパク質がCRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含有する方法を提供する。
【0017】
[0017]補体関連経路を阻害するためのタンパク質であり、CRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含有する融合タンパク質は、補体関連機構を効率的に阻害することができるだけでなく、血管新生も効率的に阻害することができる。したがって、補体系によって引き起こされる眼疾患及び血管新生によって引き起こされる眼疾患を効果的に治療又は予防することができる。したがって、黄斑変性、特に、乾燥型黄斑変性と湿潤型黄斑変性症の両方を効果的に治療するために、融合タンパク質を有効に使用することができる。
【0018】
[0018]例示的実施形態は、添付の図面と併せて解釈される以下の説明からより詳細に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】C1.01、C1.02、C1.03、C1.04、C1.05及びC1.06のSDS-PAGEの結果を示す画像である。
【
図2】C1.03m、C1.04m及びアフリベルセプトのSDS-PAGEの結果を示す画像である。
【
図3】C1.01m、C1.02m、C1.06m及びC1.07mのSDS-PAGEの結果を示す画像である。
【
図4】ウサギC3、ウサギC3b、ラットC3及びラットC3bのSDS-PAGEの結果を示す画像である。
【
図5】融合タンパク質の模式図であり、CRIg-Fc(C1.01、左)、CRIg-Fc-VEGFバインダー(C1.02、中央)及びVEGFバインダー-Fc-CRIg(C1.04、右)を順次示す図である。
【
図6a】ビアコア(Biacore)解析によるヒトC3b及びヒトVEGF165へのC1.01及びC1.02の結合親和性を濃度によって示すグラフである。
【
図6b】ビアコア解析によるヒトC3b及びヒトVEGF165へのC1.01及びC1.02の結合親和性を濃度によって示すグラフである。
【
図7a】ビアコア解析によるマウスC3b及びヒトVEGF165へのC1.01m及びC1.02mの結合親和性を濃度によって示すグラフである。
【
図7b】ビアコア解析によるマウスC3b及びヒトVEGF165へのC1.01m及びC1.02mの結合親和性を濃度によって示すグラフである。
【
図8a】ELISAによるヒトC3bへのC1.01、C1.02、C1.03及びC1.04の結合親和性を示すグラフである。
【
図8b】ELISAによるヒトVEGF165へのアフリベルセプト、C1.02、C1.04及びC1.05の結合親和性を示すグラフである。
【
図8c】ELISAによるマウスC3bへのC1.01、C1.02及びC1.03の結合親和性を示すグラフである。
【
図8d】ELISAによるヒトC3b、ヒトC2及びヒトC4へのC1.02の結合親和性を示すグラフである。
【
図9a】動的光散乱解析によるC1.01の流体力学的半径を示すグラフである。
【
図9b】動的光散乱解析によるC1.02の流体力学的半径を示すグラフである。
【
図10】C1.02の濃度に応じた粘度を示すグラフである。
【
図11a】溶血解析(AH50)によるC1.01、C1.02及びC1.06の代替補体経路阻害効果を示すグラフである。
【
図11b】溶血解析(AH50)によるC1.02、C1.04、C1.04m及びC1.05の代替補体経路阻害効果を示すグラフである。
【
図11c】溶血解析(AH50)によるC1.01m、C1.02m、C1.06m及びC1.07mの代替補体経路阻害効果を示すグラフである。
【
図12a】溶血解析(CH50)によるC1.01、C1.02及びC1.06の古典的補体経路阻害効果を示すグラフである。
【
図12b】溶血解析(CH50)によるC1.02、C1.04、C1.04m及びC1.05の古典的補体経路阻害効果を示すグラフである。
【
図12c】溶血解析(CH50)によるC1.01m、C1.02m、C1.06m及びC1.07mの古典的補体経路阻害効果を示すグラフである。
【
図13】レポーター細胞を使用したアフリベルセプト、C1.01、C1.02、C1.05及びC1.06のVEGFシグナリング阻害効果を示すグラフである。
【
図14】創傷治癒アッセイ方法によるC1.01、C1.02及びC1.05のVEGFシグナリング阻害効果経路を示すグラフである。
【
図15a】ELISAによるC1.02へのヒト及びカニクイザルのC3bの結合能力並びにC1.06へのヒト及びカニクイザルのC3bの結合能力を示すグラフである。
【
図15b】ELISAによるC1.02へのヒト、ラット及びウサギのC3bの結合能力並びにC1.06へのヒト、ラット及びウサギのC3bの結合能力を示すグラフである。
【
図15c】ELISAによるC1.02へのヒト、カニクイザル、ラット及びウサギのVEGFの結合能力並びにC1.01へのヒト、カニクイザル、ラット及びウサギのVEGFの結合能力を示すグラフである。
【
図16a】脈絡膜血管新生のマウスモデルを誘導した直後(0日目)~誘導から7日後(7日目)まで各実験群の脈絡膜血管新生を蛍光眼底造影によって確認することによって得られた画像を示す。
【
図16b】脈絡膜血管新生のマウスモデルを誘導した直後(0日目)、誘導から3日後(3日目)及び誘導から7日後(7日目)の各実験群の体重を示すグラフである。
【
図16c】脈絡膜血管新生のマウスモデルを誘導した直後(0日目)~誘導から7日後(7日目)までの各実験群について脈絡膜血管新生の程度の定量化を示すグラフである。
【
図17】脈絡膜血管新生のウサギモデルを誘導してから7日後及び14日後の各実験群について脈絡膜血管新生の強度の定量化を示すグラフである。
【
図18a】脈絡膜血管新生のラットモデルを誘導した直後及び誘導から10日後の各実験群における脈絡膜血管新生の有無の定量化を示すグラフである。
【
図18b】脈絡膜血管新生のラットモデルを誘導した直後及び誘導から10日後の各実験群における血管漏出面積の定量化を示すグラフである。
【
図19】乾燥型黄斑変性のモデルの各実験群の外顆粒層(ONL)を示す画像(
図19のa~19のc)、外顆粒層の細胞数(
図19のd)、外顆粒層の面積(
図19のe)及び網膜のC3発現レベル(
図19のf)を示す図である。
【
図20a】硝子体内注射によって2,500μgのC1.02をウサギに投与した後の硝子体液中のC1.02の濃度を示すグラフである。
【
図20b】硝子体内注射によって2,500μgのC1.02をウサギに投与した後の眼房水中のC1.02の濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0054]CRIgの細胞外ドメインを含む融合タンパク質
[0055]本発明の一態様は、免疫グロブリンスーパーファミリーの補体受容体(CRIg)の細胞外ドメイン又はその断片及び血管内皮増殖因子(VEGF)に特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質を提供する。
【0021】
[0056]本明細書で使用される用語「CRIg」は、VSIG4遺伝子にコードされる補体受容体免疫グロブリンを指し、タンパク質Z39Igとも呼ばれる。CRIgは、4種の補体受容体の中の4型補体受容体に属する受容体であり、肝臓で食作用を行うクッパー細胞などのマクロファージの表面で発現している。CRIgは、免疫グロブリンドメインを含む細胞外領域に結合した膜タンパク質(内在性膜タンパク質)である。CRIgは補体断片C3b及びiC3bに結合し、人体に進入する細菌又は血液中の感染性細菌を認識し、食細胞によって排除するように機能する。
【0022】
[0057]CRIgは、CRIgのアイソフォーム又はスプライス形態を含む。アイソフォームはCRIgアイソフォーム1、2又は3を含む。スプライス形態はCRIg(L)又はCRIg(S)を含む。CRIg(L)はV及びC2型末端Igドメインを含み得、CRIg(S)はV型ドメインのみを含む。具体的には、CRIg(S)は配列番号20の配列を含み得る。
【0023】
[0058]CRIgの細胞外ドメインは、膜貫通ドメイン及び細胞質内ドメイン部分を除いた受容体の一部であってもよい。
【0024】
[0059]CRIgはCRIgの細胞外ドメインの断片を含み得る。CRIgの細胞外ドメインの断片は、CRIgの細胞外ドメインの活性と等しいか又は同様である活性を有する、切断形態を指す。具体的には、該断片は、C3b又はiC3bに結合することによって補体作用又は食作用を促進する活性を有する、CRIgの断片を指す。
【0025】
[0060]一実施形態では、CRIgは、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号74又は配列番号151のアミノ酸配列を含み得る。具体的には、ヒトCRIgは、配列番号19、配列番号20又は配列番号151のアミノ酸配列を含み得る、マウスCRIgは、配列番号21のアミノ酸配列を含み得る。さらに、マウスCRIgの細胞外ドメインは配列番号75のアミノ酸配列を含み得、ヒトCRIgの細胞外ドメインは配列番号22又は配列番号74のアミノ酸配列を含み得る。
【0026】
[0061]本明細書で使用される用語「血管内皮増殖因子(VEGF)」は、血管新生を刺激する細胞によって産生される血管内皮増殖因子を指す。VEGFは、血管内皮細胞を分裂及び増殖させ、且つ血管透過性を増大させることによって、血管新生に関与する、重要なシグナルタンパク質である。VEGFは、湿潤型AMDにおいて網膜の異常な血管増殖を刺激することが公知である。
【0027】
[0062]さらに、本明細書において、VEGF又はVEGFベースのタンパク質を、まとめて用語「VEGF」と呼ぶことがある。VEGFベースのタンパク質は、VEGFの活性と等しいか又は同様である活性を有することができる。ここで、「活性」は、例えば、VEGF受容体への特異的結合を指し得、この特異的結合は、当業者に既知の方法によって測定することができる。
【0028】
[0063]一実施形態では、VEGFベースのタンパク質は、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、胎盤増殖因子(PlGF)及び組換えVEGFからなる群から選択される1つ又は複数であってもよい。好ましくは、VEGFはVEGF-A若しくはB又はPlGFであってもよい。
【0029】
[0064]本明細書で使用される用語「胎盤増殖因子(PlGF)」は、染色体2p21-p16にコードされる膜貫通タンパク質を指す。PlGFはVEGFR-1に対する選択的リガンドとして作用し、且つ血管新生を促進することができる。PlGFは、VEGFのアミノ酸組成と40%以上の同一性を有する。一実施形態では、PlGFはPlGF-1又はPlGF-2であってもよい。
【0030】
[0065]本明細書で使用される用語「組換えVEGF」は、選択的エクソンスプライシングによって組み換えられたVEGFを指す。組換えVEGFは、アミノ酸の番号に従って、VEGF111、VEGF121、VEGF145、VEGF148、VEGF165、VEGF183、VEGF189又はVEGF206であってもよい。一実施形態では、組換えVEGFはVEGF165であってもよい。
【0031】
[0066]本明細書で使用される用語「VEGFに特異的に結合するタンパク質」は、VEGF又はVEGF受容体の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体を指す。
【0032】
[0067]本明細書で使用される用語「VEGF受容体」は、VEGFに結合する受容体を指す。この場合、VEGF受容体は、VEGF受容体1(VEGFR-1)、VEGF受容体2(VEGFR-2)及びVEGF受容体3(VEGFR-3)からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。VEGF受容体は、免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、細胞外ドメイン、及び細胞内で分離されたキナーゼドメインを含む。VEGF受容体はVEGFリガンドへの結合によって活性化され、その結果、二量体化又はリン酸化が生じ得る。一実施形態では、VEGF受容体はVEGF受容体1又は2であってもよい。
【0033】
[0068]本明細書で使用される用語「VEGF受容体の細胞外ドメイン」は、VEGFに結合する、VEGF受容体のドメインを指す。具体的には、VEGF受容体の細胞外ドメインは、VEGF受容体の膜貫通領域及び細胞質内領域を除いた、VEGFのリガンドを含む細胞外ドメイン部分を指す。
【0034】
[0069]さらに、VEGF受容体の細胞外ドメインは、VEGFに結合する、VEGF受容体の断片であってもよい。一実施形態では、VEGF受容体の断片は、VEGFが結合する領域である、VEGF受容体のドメインD1、D2若しくはD3又はこれらの組み合わせを含む。好ましくは、VEGF受容体の断片はD2及びD3を含み得る。
【0035】
[0070]一実施形態では、VEGF受容体の細胞外ドメインはVEGF受容体1又は2のD2及びD3ドメインを含む。さらに、VEGF受容体の細胞外ドメインは、VEGF-A、VEGF-B又はPlGFに結合して、血管新生を阻害することができる。この場合、VEGF受容体の細胞外ドメインの一実施形態は、配列番号14のアミノ酸配列を含み得る。さらに、VEGF受容体の細胞外ドメインは、配列番号14を含むVEGF受容体の細胞外ドメインの一部が切断されているか又は変化している形態であってもよい。
【0036】
[0071]本明細書で使用される用語「VEGFに特異的に結合する抗体」は、抗VEGF抗体とも呼ばれる、VEGF又はその断片に特異的に結合することによって抗原抗体反応を引き起こす抗体を指す。
【0037】
[0072]抗体は、VEGFと特異的な抗原抗体結合を形成することができる分子の総称である。さらに、抗体は、抗体がVEGFに特異的に結合することができる抗原結合ドメインを含む限り、任意の形態で使用することができる。抗体又はその断片は、抗原結合断片(Fab)、F(ab)2、単鎖可変断片(scFv)、二価scFv(di-scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体又はこれらのバリアントであってもよい。
【0038】
[0073]抗VEGF抗体はナノボディであってもよい。この場合、抗体は、配列番号49のCDR1、配列番号50のCDR2及び配列番号51のCDR3を含み得る。具体的には、抗体はBI-836880であってもよい。
【0039】
[0074]抗VEGF抗体は、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ラムシルマブ、ブロルシズマブ、ファリシマブ、KSI-301、バヌシズマブ、BI-836880、HuMab G6-31、B20-4.1、BAT-5906、ナビシキシズマブ、ジルパキマブ、hPV-19及びAT-001からなる群から選択されるいずれか1つの可変領域を含み得る。好ましくは、抗VEGF抗体は、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ブロルシズマブ、KSI-301、バヌシズマブ、BI-836880又はBAT-5906の可変領域を含み得る。
【0040】
[0075]この場合、アフリベルセプトは、血管においてVEGF-A及びPlGFを阻害する組換えヒト化融合タンパク質を指す。ここで、アフリベルセプトを眼球に直接注射することができる。ベバシズマブは、血管においてVEGF-Aを阻害して血管の増殖を阻害する血管新生阻害剤である抗体である。黄斑変性の治療の場合には、ベバシズマブを眼球に直接注射することができる。ラニビズマブは、血管新生を阻害することによって湿潤型黄斑変性症を治療する効果を有するFabである。ラムシルマブは、VEGF受容体2を阻害する血管新生媒介性物質又は抗体である。ブロルシズマブは、VEGF-Aに結合し、血管新生を阻害し、湿潤型黄斑変性症を治療するscFvである。ファリシマブは、VEGF-A及びアンジオポエチン-2を阻害する二重特異性抗体である。
【0041】
[0076]KSI-301は、湿潤型黄斑変性症を治療する効果を有する抗体である。バヌシズマブは、VEGF-A及びアンジオポエチン-2を阻害する二重特異性ヒト化モノクローナル抗体である。BI-836880は、VEGF及びアンジオポエチン-2を阻害するヒト化二重特異性ナノボディである。G6-31は、ヒトVEGFを阻害するFab断片である。B20-4.1は、ヒトVEGFを阻害するscFv断片である。
【0042】
[0077]BAT-5906は、湿潤型黄斑変性症を治療する効果を有する抗体である。ナビシキシズマブは抗DLL4/VEGF二重特異性抗体である。ジルパキマブは抗DLL4/VEGF二重特異性抗体であり、ABT-165とも称される。hPV-19はVEGFに対する抗体であり、抗血管新生促進及び抗腫瘍活性を有する。AT-001は、ヒトVEGF受容体3を阻害して血管新生を阻害する抗体である。
【0043】
[0078]一実施形態では、抗VEGF抗体はBI-836880の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は配列番号49のCDR1、配列番号50のCDR2及び配列番号51のCDR3を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0044】
[0079]一実施形態では、抗VEGF抗体はベバシズマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号77のHCDR1、配列番号78のHCDR2及び配列番号79のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号80のLCDR1、配列番号81のLCDR2及び配列番号82のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0045】
[0080]一実施形態では、抗VEGF抗体はラニビズマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号83のHCDR1、配列番号84のHCDR2及び配列番号85のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号86のLCDR1、配列番号87のLCDR2及び配列番号88のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0046】
[0081]一実施形態では、抗VEGF抗体はラムシルマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号89のHCDR1、配列番号90のHCDR2及び配列番号91のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号92のLCDR1、配列番号93のLCDR2及び配列番号94のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0047】
[0082]一実施形態では、抗VEGF抗体はファリシマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号101のHCDR1、配列番号102のHCDR2及び配列番号103のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号104のLCDR1、配列番号105のLCDR2及び配列番号106のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0048】
[0083]一実施形態では、抗VEGF抗体はKSI-301の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号107のHCDR1、配列番号108のHCDR2及び配列番号109のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号110のLCDR1、配列番号111のLCDR2及び配列番号112のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0049】
[0084]一実施形態では、抗VEGF抗体はバヌシズマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号113のHCDR1、配列番号114のHCDR2及び配列番号115のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号116のLCDR1、配列番号117のLCDR2及び配列番号118のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0050】
[0085]一実施形態では、抗VEGF抗体はBAT-5906の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号119のHCDR1、配列番号120のHCDR2及び配列番号121のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号122のLCDR1、配列番号123のLCDR2及び配列番号124のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0051】
[0086]一実施形態では、抗VEGF抗体はナビシキシズマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号125のHCDR1、配列番号126のHCDR2及び配列番号127のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号128のLCDR1、配列番号129のLCDR2及び配列番号130のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0052】
[0087]一実施形態では、抗VEGF抗体はジルパキマブの可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号131のHCDR1、配列番号132のHCDR2及び配列番号133のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号134のLCDR1、配列番号135のLCDR2及び配列番号136のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0053】
[0088]一実施形態では、抗VEGF抗体はhPV-19の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号137のHCDR1、配列番号138のHCDR2及び配列番号139のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号140のLCDR1、配列番号141のLCDR2及び配列番号142のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0054】
[0089]一実施形態では、抗VEGF抗体はAT-001の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号143のHCDR1、配列番号144のHCDR2及び配列番号145のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号146のLCDR1、配列番号147のLCDR2及び配列番号148のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0055】
[0090]一実施形態では、抗VEGF抗体は、配列番号36の重鎖及び配列番号37の軽鎖;配列番号38の重鎖及び配列番号39の軽鎖;配列番号40の重鎖及び配列番号41の軽鎖;配列番号43の重鎖及び配列番号44の軽鎖;配列番号45の重鎖及び配列番号46の軽鎖;配列番号47の重鎖及び配列番号48の軽鎖;配列番号64の重鎖及び配列番号65の軽鎖;配列番号66の重鎖及び配列番号67の軽鎖;配列番号68の重鎖及び配列番号69の軽鎖;配列番号70の重鎖可変領域及び配列番号71の軽鎖可変領域;又は配列番号72の重鎖可変領域及び配列番号73の軽鎖可変領域を含み得る。
【0056】
[0091]抗VEGF抗体の断片は単鎖可変断片(scFv)であってもよい。この場合、scFvは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結された形態を指す。具体的には、配列番号95のCDR1、配列番号96のCDR2、配列番号97のCDR3、配列番号98のCDR4、配列番号99のCDR5及び配列番号100のLCDR6を含むscFv可変領域を含み得る。さらに、scFvは配列番号42のアミノ酸配列を含み得る。この場合、scFvの一実施形態はブロルシズマブであってもよい。
【0057】
[0092]抗VEGF抗体はHuMab G6-31又はB20-4.1の可変領域を含み得る。具体的には、該抗体は、配列番号52のHCDR1、配列番号53のHCDR2及び配列番号54のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号55のLCDR1、配列番号56のLCDR2及び配列番号57のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。さらに、抗体は、配列番号58のHCDR1、配列番号59のHCDR2及び配列番号60のHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号61のLCDR1、配列番号62のLCDR2及び配列番号63のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0058】
[0093]VEGFに特異的に結合する抗体は、限定されないが、当業者に既知の抗体を指し得る。別の実施形態では、米国特許第9,527,925号、米国特許第8,268,314(B2)号又は米国特許出願公開第2019-0167790号に開示されている抗VEGF抗体又はその断片を抗体として使用することができる。
【0059】
[0094]CRIgの細胞外ドメイン又はその断片とVEGFに特異的に結合するタンパク質とをリンカーによって連結することができる。
【0060】
[0095]さらに、CRIgの細胞外ドメイン又はその断片と免疫グロブリン断片とをリンカーによって連結することができる。リンカーは2つのタンパク質を連結する。リンカーの一実施形態は、1~50個のアミノ酸、アルブミン若しくはその断片又は免疫グロブリンのFcドメインを含み得る。この場合、免疫グロブリンのFcドメインは、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含むが、重鎖及び軽鎖の可変領域並びに免疫グロブリンの軽鎖定常領域1(CH1)を含まないタンパク質を指す。免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgE、IgD又はIgMであってもよく、好ましくはIgG1であってもよい。本明細書のFcドメインは、ヒンジ領域を除いて、CH2及びCH3ドメインを含む領域を指し得る。
【0061】
[0096]さらに、融合タンパク質は構造式(I)又は(II)からなってもよい。
[0097]N’-X-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-Y-C’(I)
[0098]N’-Y-[リンカー(1)]n-Fcドメイン-[リンカー(2)]m-X-C’(II)
[0099]構造式(I)及び(II)において、
[00100]N’は融合タンパク質のN末端であり、
[00101]C’は融合タンパク質のC末端であり、
[00102]XはCRIgの細胞外ドメイン又はその断片であり、
[00103]YはVEGFに特異的に結合するタンパク質であり、
[00104]リンカー(1)及びリンカー(2)はペプチドリンカーであり、
[00105]n及びmはそれぞれ独立的に0又は1である。
【0062】
[00106]VEGF、CRIgの細胞外ドメイン又はその断片に特異的に結合するタンパク質及びFcドメインは上記の通りである。Fcドメインは、免疫グロブリンのFc重鎖のCH2及びCH3領域を含み得る。さらに、免疫グロブリンのFcドメインは、野生型Fcドメインだけでなく、Fcドメインバリアントであってもよい。さらに、本明細書で使用される用語「Fcドメインバリアント」は、野生型Fcドメインのものと異なるグリコシル化パターンを有し得るか、又は野生型Fcドメインと比較してグリコシル化が増加した、野生型Fcドメインと比較してグリコシル化が減少した、若しくは脱グリコシル化されている形態であり得るFcドメインを指す。さらに、グリコシル化されていないFcドメインも含まれる。Fcドメイン又はこれらのバリアントは、宿主の培養条件又は遺伝子操作を通じて、調整された数のシアル酸、フコシル化及びグリコシル化を有し得る。
【0063】
[00107]さらに、免疫グロブリンのFcドメインのグリコシル化を従来の方法、例えば、化学的方法、酵素的方法及び微生物を使用する遺伝子工学的方法によって修飾することができる。さらに、Fcドメインバリアントは、免疫グロブリンIgG、IgA、IgE、IgD又はIgMのFc領域が混合された形態であってもよい。さらに、Fcドメインバリアントは、Fcドメインのいくつかのアミノ酸が他のアミノ酸で置換されている形態であってもよい。
【0064】
[00108]本明細書で使用される用語「Fcドメインバリアント」は、野生型Fcドメインのグリコシル化を変化させることによって形成されるバリアント、Fcドメイン間の配列が混合されているFcドメイン又は野生型Fcドメインのいくつかのアミノ酸を欠失させる、変化させる、置換する及び/又は付加することによって形成されるバリアントを指す。野生型Fcドメインのいくつかのアミノ酸を欠失させる、変化させる、置換する及び/又は付加することによって形成されるバリアントは、当業者に既知の方法によって調製することができる。一実施形態では、Fcドメインバリアントは、野生型Fcドメインのいくつかのアミノ酸配列を置換及び/又は付加することによって形成することができる。
【0065】
[00109]置換及び/又は付加によって導入される「アミノ酸」は、リジン(K)、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)及びバリン(V)からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0066】
[00110]Fcドメインバリエーションは、抗体の活性又は機能を調節するためであり得る。一実施形態では、Fcドメインバリエーションは、抗体のエフェクター機能又は細胞毒性活性を調節するためであり得る。
【0067】
[00111]一実施形態では、FcドメインバリアントはDANGバリエーション又はNGバリエーションを含み得る。さらに、Fcドメインバリアントは、IgG1 Fcドメインの265番目の配列がDからAに置換されているバリアント、297番目の配列がNからG又に置換されているバリアント又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0068】
[00112]一実施形態では、Fcドメインは、配列番号6、配列番号11及び配列番号76からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を有し得る。Fcドメインは、配列番号28又は配列番号33のポリヌクレオチド配列にコードされ得る。
【0069】
[00113]ペプチドリンカー(1)は、5~80個の連続したアミノ酸、20~60個の連続したアミノ酸、25~50個の連続したアミノ酸又は30~40個のアミノ酸からなり得る。一実施形態では、ペプチドリンカー(1)は30個のアミノ酸からなり得る。さらに、ペプチドリンカー(1)は、少なくとも1つのシステインを含み得る。具体的には、1つ、2つ又は3つのシステインを含み得る。さらに、ペプチドリンカー(1)は免疫グロブリンのヒンジに由来し得る。一実施形態では、ペプチドリンカー(1)は、配列番号15又は17のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであってもよい。
【0070】
[00114]ペプチドリンカー(2)は、1~50個の連続したアミノ酸、3~30個の連続したアミノ酸又は5~15個のアミノ酸からなり得る。一実施形態では、ペプチドリンカー(2)は(G4S)nである(ここで、nは1~10の整数である)。この場合、(G4S)nのnは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってもよい。一実施形態では、ペプチドリンカー(2)は、配列番号16又は18のアミノ酸配列からなるペプチドリンカーであってもよい。
【0071】
[00115]好ましくは、融合タンパク質は構造式(I)からなり得る。
【0072】
[00116]一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2、配列番号4、配列番号8及び配列番号10からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含み得る。
【0073】
[00117]別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号2、配列番号4、配列番号8及び配列番号10からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。この場合、同一性は、例えば、相同性パーセント及び相同性比較ソフトウェア、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)から提供されるBlastNソフトウェアによって、決定することができる。
【0074】
[00118]融合タンパク質二量体
[00119]本発明の別の態様は、CRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む2つの融合タンパク質が連結されている二量体を提供する。
【0075】
[00120]この場合、二量体を構成する融合タンパク質の間の連結は、リンカー中に存在するシステインを通じて、ジスルフィド結合によって形成され得るが、これに限定されない。二量体を構成する融合タンパク質は同じであってもよいが、互いに異なっていてもよい。好ましくは、二量体はホモ二量体であってもよい。
【0076】
[00121]融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
[00122]本発明のさらに別の態様は、CRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0077】
[00123]一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号8又は配列番号10と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は少なくとも約100%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0078】
[00124]一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号24、配列番号26、配列番号30及び配列番号32からなる群から選択されるいずれか1つの塩基配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は少なくとも約100%の同一性を有し得る。
【0079】
[00125]ポリヌクレオチドは、シグナル配列又はリーダー配列をコードする核酸をさらに含み得る。本明細書で使用される用語「シグナル配列」は、標的タンパク質の分泌を導くシグナルペプチドを指す。シグナルペプチドは宿主細胞で翻訳され、次いで切断される。具体的には、シグナル配列は、小胞体(ER)膜を横断したタンパク質の輸送を起こすアミノ酸配列である。
【0080】
[00126]シグナル配列のそのような特徴は当技術分野で周知であり、シグナル配列は16~30個のアミノ酸残基を典型的に含むが、前述の数のアミノ酸残基よりも多くの又は少ないアミノ酸残基を含み得る。典型的なシグナルペプチドは、3領域:塩基性N末端領域;中央疎水性領域;及びより極性のC末端領域からなる。中央疎水性領域は、未成熟ポリペプチドの輸送中に膜脂質二重層を介してシグナル配列を固定する4~12個の疎水性残基を含む。
【0081】
[00127]開始後、シグナル配列は、シグナルペプチダーゼとして一般に公知である細胞酵素によってERの内腔で切断される。この場合、シグナル配列は、組織プラスミノーゲン活性化(tPa)、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(HSV gDs)のシグナル配列又は成長ホルモン分泌シグナル配列であってもよい。好ましくは、哺乳動物などを含めた高等真核細胞で使用される分泌シグナル配列を使用することができる。さらに、シグナル配列として、野生型シグナル配列を使用することができるか、又は宿主細胞で高発現頻度のコドンで置換されたシグナル配列を使用することができる。
【0082】
[00128]融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを保有するベクター
[00129]本発明のさらに別の態様は、前述のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0083】
[00130]ベクターは、宿主細胞に導入され、宿主細胞ゲノム中に組み換えられ、挿入され得る。或いは、ベクターは、エピソームとして自発的に複製することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸手段と理解される。ベクターとしては、直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター及びこれらの類似体が挙げられる。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスが挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0084】
[00131]具体的には、ベクターは、プラスミドDNA、ファージDNAなどであってもよく、商業的に開発されたプラスミド(pUC18、pBAD、pIDTSAMRT-AMPなど)、大腸菌(Escherichia coli)由来のプラスミド(pYG601BR322、pBR325、pUC118、pUC119など)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(pUB110、pTP5など)、酵母由来のプラスミド(YEp13、YEp24、YCp50など)、ファージDNA(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAPなど)、動物ウイルスベクター(レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスなど)又は昆虫ウイルスベクター(バキュロウイルスなど)であってもよい。ベクターは宿主細胞に応じて異なるタンパク質発現レベル及び修飾を示すので、目的に最も適した宿主細胞を選択及び使用することが好ましい。
【0085】
[00132]本明細書で使用される標的タンパク質の「遺伝子発現」又は「発現」という用語は、DNA配列の転写、mRNA転写物の翻訳及び融合タンパク質生成物又はその断片の分泌を意味すると理解される。有用な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen、Carlsbad)又はそのバリアントであり得る。発現ベクターは、哺乳動物細胞で標的遺伝子の連続的な転写を促進するためのヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター及び転写後にRNAの定常レベルを増加させるためのウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列を含み得る。
【0086】
[00133]融合タンパク質を発現する形質転換細胞
[00134]本発明のさらになお別の態様は、前述のベクターが導入された形質転換細胞を提供する。
【0087】
[00135]形質転換細胞の宿主細胞の例としては、原核細胞、真核細胞及び哺乳動物植物、昆虫、真菌又は細胞起源の細胞を挙げることができるが、これらの例に限定されない。原核細胞の例として、大腸菌を使用することができる。さらに、真核細胞の例として、酵母を使用することができる。さらに、哺乳動物細胞として、CHO細胞、F2N細胞、CSO細胞、BHK細胞、Bowes黒色腫細胞、HeLa細胞、911細胞、AT1080細胞、A549細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞などを使用することができるが、本発明はこれらに限定されない。当業者に公知の哺乳類宿主細胞として使用することができる任意の細胞をすべて使用することができる。
【0088】
[00136]さらに、発現ベクターを宿主細胞に導入する場合、CaCl2沈殿法、ジメチルスルホキシド(DMSO)と呼ばれる還元物質をCaCl2沈殿法で使用することによって効率が高められるHanahan法、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、細胞質融合法、炭化ケイ素繊維を使用する撹拌法、アグロバクテリウム媒介性形質転換法、PEG、デキストラン硫酸、リポフェクタミンを使用する形質転換法、及び乾燥/阻害媒介性形質転換法などを使用することができる。
【0089】
[00137]上記のように、治療剤として融合タンパク質の特性を最適化するために、又は他の目的のために、当業者に公知の方法を介して宿主細胞のグリコシル化関連遺伝子を操作することによって、融合タンパク質のグリコシル化パターン(例えば、シアル酸、フコシル化及びグリコシル化)を調整することができる。
【0090】
[00138]融合タンパク質を生成するための方法
[00139]本発明のさらになお別の態様は、融合タンパク質又はその二量体を生成するための方法であって、形質転換細胞を培養することを含み、融合タンパク質がCRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む方法を提供する。
【0091】
[00140]生成方法は、i)形質転換細胞を培養して培養された培地を得ること、及びii)融合タンパク質又はその二量体を培養された培地から収集することを含み得る。
【0092】
[00141]形質転換細胞を培養するための方法は、当技術分野で広く既知である方法を使用して行うことができる。具体的には、培養は、バッチプロセス又はフェドバッチ若しくは反復フェドバッチプロセスで連続的に行うことができる。
【0093】
[00142]融合タンパク質又はその二量体の使用
[00143]本発明のさらになお別の態様は、融合タンパク質又は2つの融合タンパク質が結合した融合タンパク質二量体を活性成分として含む、眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物を提供する。
【0094】
[00144]融合タンパク質及び融合タンパク質二量体は上記の通りである。
【0095】
[00145]本明細書で使用される用語「眼疾患」は、眼が疾患の部位である疾患の総称であり得る。眼疾患は、補体活性若しくは血管新生によって誘発されるか若しくは悪化する眼疾患、又は主な疾患症状として過剰な血管新生を含む眼疾患を指し得る。眼疾患は、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(GA)、脈絡膜血管新生(CNV)、ブドウ膜炎、糖尿病網膜症及び他の虚血関連網膜症、糖尿病黄斑浮腫、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼ヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生並びに網膜血管新生からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0096】
[00146]CRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質は上記の通りである。
【0097】
[00147]医薬組成物の好ましい投薬量は、患者の状態及び体重、疾患の重症度、薬物形態並びに投与の経路及び継続期間に応じて変動するが、当業者が適切に選択することができる。本発明による眼疾患を治療又は予防するための医薬組成物中の活性成分は、活性成分が眼疾患を治療する活性を示すか、又は特に、黄斑変性に対して治療効果を示すことができる限り、使用、剤形、調合目的などに従って任意の量(有効量)で含めることができるが、典型的な有効量は、組成物の総重量に基づいて、0.001wt%~20.0wt%の範囲内で決定されるであろう。本明細書で使用される用語「有効量」は、眼疾患の状況を改善又は治療する効果、特に、黄斑変性の状況を改善又は治療する効果を誘導することができる活性成分の量を指す。そのような有効量は、当業者の通常の能力内で実験的に決定することができる。
【0098】
[00148]本明細書で使用される用語「治療」は、本用語が療法的治療と予防的治療の両方を含むという意味で使用することができる。この場合、予防は、対象の病態又は疾患を緩和する又は低減させることを意味するように使用することができる。一実施形態では、用語「治療」は、ヒトを含めた哺乳動物で疾患を治療するための投与又は適用の任意の形態を含む。さらに、本用語は、疾患又は疾患の進行を阻害又は緩徐化することを含み、且つ部分的若しくは完全に疾患を緩和するために、損なわれたか若しくは失われた機能を回復させるか若しくは修復する;非効率的なプロセスを刺激する;又は重大な疾患を緩和する意味を含む。
【0099】
[00149]バイオアベイラビリティなどの薬物動態パラメーター及びクリアランス速度などの根底にあるパラメーターも有効性に影響を及ぼす可能性がある。したがって、「増強された有効性」(例えば、有効性の向上)は、向上した薬物動態パラメーター及び向上した有効性に起因する可能性があり、実験動物又はヒト対象においてクリアランス速度及び眼疾患の治療又は改善などのパラメーターを比較することによって、測定することができる。
【0100】
[00150]本明細書で使用される用語「治療有効量」又は「医薬的有効量」は、標的疾患を予防又は治療するのに有効な化合物又は組成物の量を指し、医学的治療に適用可能な合理的な利益/危険比で疾患を治療するのに十分であり、且つ副作用を引き起こさない量も指す。有効量のレベルは、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物活性、薬物に対する感受性、投与方法、投与時間、投与経路、排出速度、治療期間、組み合わせ又は同時に使用される薬物及び医療分野で周知の他の因子を含めた因子に従って、決定することができる。一実施形態では、治療有効量は、眼疾患を治療するのに有効な薬物の量を指す。
【0101】
[00151]この場合、医薬組成物は医薬的に許容可能な担体をさらに含み得る。医薬的に許容可能な担体は、担体が患者への送達に適した非有害物質である限り、いかなる担体であってもよい。蒸留水、アルコール、脂肪、ワックス及び不活性な固体を担体として含有することができる。医薬的に許容可能な補助剤(バッファー又は分散剤)も医薬組成物中に含有することができる。
【0102】
[00152]具体的には、医薬組成物は活性成分に加えて医薬的に許容可能な担体を含み、当技術分野で公知の従来の方法によって、投与経路に従って非経口剤形で調製することができる。ここで、表現「医薬的に許容可能な」は、活性成分の活性を阻害せず、且つ適用(処方)標的が適合可能なものを越えた毒性がないことを意味する。
【0103】
[00153]医薬組成物が非経口剤形で調製される場合、医薬組成物は、適切な担体とともに、当技術分野で公知の方法に従って、注射、経皮投与薬剤、鼻吸入剤又は坐剤の形態で製剤化することができる。注射として製剤化される場合、滅菌水、エタノール、ポリオール、例えば、グリセロール若しくはプロピレングリコール又はこれらの混合物を適切な担体として使用することができ、好ましくは、リンゲル溶液、トリエタノールアミン含有リン酸緩衝食塩水(PBS)、等張液、例えば、注射用無菌水又は5%デキストロースなどを使用することができる。医薬組成物の製剤は当技術分野で既知であり、具体的には、[Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、1995)]などを参照することができる。本文献は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0104】
[00154]医薬組成物の好ましい投薬量は、患者の状態、体重、性別若しくは年齢、患者の重症度又は投与経路に従って、1日あたり0.01μg/kg~10g/kgの範囲又は0.01mg/kg~1g/kgの範囲であってもよい。投与は1日1回行うことができるか又は分割して数回行うことができる。そのような投薬量は、いかなる態様においても本発明の範囲を限定するとして理解されるべきではない。
【0105】
[00155]医薬組成物を適用する(処方する)ことができる対象は哺乳動物及びヒトであり、特に好ましくはヒトである。本出願の医薬組成物は、活性成分に加えて、眼疾患、特に黄斑変性を治療する効果があることが公知である任意の化合物又は天然抽出物をさらに含み得る。
【0106】
[00156]本発明のさらになお別の態様は、眼疾患を治療するための融合タンパク質又はその二量体の使用であって、融合タンパク質がCRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む使用を提供する。
【0107】
[00157]本発明のさらになお別の態様は、眼疾患の治療又は予防のための医薬の製造のための融合タンパク質又はその二量体の使用であって、融合タンパク質がCRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含有する使用を提供する。
【0108】
[00158]本発明のさらになお別の態様は、眼疾患を治療及び/又は予防するための方法であって、融合タンパク質又はその二量体を対象に投与することを含み、融合タンパク質がCRIgの細胞外ドメイン又はその断片及びVEGFに特異的に結合するタンパク質を含む方法を提供する。
【0109】
[00159]融合タンパク質、二量体及び眼疾患は、上記の通りである。この場合、対象は、眼疾患を罹患する対象であってもよい。さらに、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。
【0110】
[00160]融合タンパク質又は融合タンパク質二量体の投与経路、投薬量及び投与頻度に関して、対象への投与は、患者の状態及び副作用の有無及び最適な投与方法に従って、様々な様式及び量で行うことができ、投薬量及び投与頻度は、当業者が適切な範囲内で選択することができる。さらに、融合タンパク質又は融合タンパク質二量体は、治療される疾患に対して公知の治療効果を有する他の薬物若しくは生理活性物質と組み合わせて投与することができるか、又は他の薬物との配合製剤の形態で製剤化することができる。
【0111】
[00161]一実施形態では、融合タンパク質は補体経路、食作用及び/又は血管新生を阻害することができる。したがって、湿潤型又は乾燥型黄斑変性などの眼疾患に対して融合タンパク質を効果的に使用することができる。特に、CRIgの細胞外ドメイン又はその断片とVEGFに特異的に結合するタンパク質を組み合わせた場合、これらのうちの1つを含む場合と比較して、高い効果があり、相乗効果もあることが確認された。したがって、融合タンパク質は、補体経路及び血管新生を効果的に阻害することによって、乾燥型及び湿潤型黄斑変性症を効果的に治療することができる。
【実施例】
【0112】
[00162]以下に、以下の実施例を参照して本発明をより詳細に記載する。ここで、以下の実施例は、本発明を例示的に記載するためだけであり、本発明の範囲を限定しない。
【0113】
[00163]調製実施例1.CRIgを含有する融合タンパク質の調製
【0114】
【0115】
[00165]C1.01(配列番号1)は、ヒトCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~283)、リンカー及びDANG変異(D265A、N297G)によってエフェクター機能が除去されているヒトIgG1 Fcからなる。
【0116】
[00166]C1.02(配列番号2)は、ヒトCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~283)、リンカー、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカー及びアフリベルセプトのVEGF結合領域からなる。
【0117】
[00167]C1.03(配列番号3)は、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカー及びヒトCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~283)からなる。
【0118】
[00168]C1.04(配列番号4)は、アフリベルセプトのVEGF結合領域、リンカー、ヒトIgG1 Fc DANG、リンカー及びヒトCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~283)からなる。
【0119】
[00169]C1.05(配列番号5)は、アフリベルセプトのVEGF結合領域、リンカー及びヒトIgG1 Fc DANGからなる。
【0120】
[00170]C1.06(配列番号6)は、ヒトIgG1 Fc DANGからなる。
【0121】
[00171]C1.01m(配列番号7)は、マウスCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~187)、リンカー及びDANG変異(D265A、N297G)によってエフェクター機能が除去されているマウスIgG2a Fcからなる。
【0122】
[00172]C1.02m(配列番号8)は、マウスCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~187)、リンカー、マウスIgG2a Fc DANG、リンカー及びアフリベルセプトのVEGF結合領域からなる。
【0123】
[00173]C1.03m(配列番号9)は、マウスIgG2a Fc DANG、リンカー及びマウスCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~187)からなる。
【0124】
[00174]C1.04m(配列番号10)は、アフリベルセプトのVEGF結合領域、リンカー、マウスIgG2a Fc DANG、リンカー及びマウスCRIgタンパク質の細胞外ドメイン領域(20~187)からなる。
【0125】
[00175]C1.06m(配列番号11)は、マウスIgG2a Fc DANGからなる。
【0126】
[00176]C1.07m(配列番号12)は、マウスIgG2a Fc DANG、リンカー及びアフリベルセプトのVEGF結合領域からなる。
【0127】
[00177][配列番号1]hu CRIg-hu IgG1 Fc DANG
[00178]RPILEVPESVTGPWKGDVNLPCTYDPLQGYTQVLVKWLVQRGSDPVTIFLRDSSGDHIQQAKYQGRLHVSHKVPGDVSLQLSTLEMDDRSHYTCEVTWQTPDGNQVVRDKITELRVQKLSVSKPTVTTGSGYGFTVPQGMRISLQCQARGSPPISYIWYKQQTNNQEPIKVATLSTLLFKPAVIADSGSYFCTAKGQVGSEQHSDIVKFVVKDSSKLLKTKTEAPTTMTYPLKATSTVKQSWDWTTDMDGYLGETSAGPGKSLPGGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYGSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0128】
[00179][配列番号2]hu CRIg-hu IgG1 Fc DANG-VEGFバインダー
[00180]RPILEVPESVTGPWKGDVNLPCTYDPLQGYTQVLVKWLVQRGSDPVTIFLRDSSGDHIQQAKYQGRLHVSHKVPGDVSLQLSTLEMDDRSHYTCEVTWQTPDGNQVVRDKITELRVQKLSVSKPTVTTGSGYGFTVPQGMRISLQCQARGSPPISYIWYKQQTNNQEPIKVATLSTLLFKPAVIADSGSYFCTAKGQVGSEQHSDIVKFVVKDSSKLLKTKTEAPTTMTYPLKATSTVKQSWDWTTDMDGYLGETSAGPGKSLPGGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYGSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGGGGGSGGGGSSDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEK
【0129】
[00181][配列番号3]hu IgG1 Fc DANG-hu CRIg
[00182]DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYGSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGGGGGSGGGGSRPILEVPESVTGPWKGDVNLPCTYDPLQGYTQVLVKWLVQRGSDPVTIFLRDSSGDHIQQAKYQGRLHVSHKVPGDVSLQLSTLEMDDRSHYTCEVTWQTPDGNQVVRDKITELRVQKLSVSKPTVTTGSGYGFTVPQGMRISLQCQARGSPPISYIWYKQQTNNQEPIKVATLSTLLFKPAVIADSGSYFCTAKGQVGSEQHSDIVKFVVKDSSKLLKTKTEAPTTMTYPLKATSTVKQSWDWTTDMDGYLGETSAGPGKSLPG
【0130】
[00183][配列番号4]VEGFバインダー-hu IgG1 Fc DANG-hu CRIg
[00184]SDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEKGGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYGSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGGGGGSGGGGSRPILEVPESVTGPWKGDVNLPCTYDPLQGYTQVLVKWLVQRGSDPVTIFLRDSSGDHIQQAKYQGRLHVSHKVPGDVSLQLSTLEMDDRSHYTCEVTWQTPDGNQVVRDKITELRVQKLSVSKPTVTTGSGYGFTVPQGMRISLQCQARGSPPISYIWYKQQTNNQEPIKVATLSTLLFKPAVIADSGSYFCTAKGQVGSEQHSDIVKFVVKDSSKLLKTKTEAPTTMTYPLKATSTVKQSWDWTTDMDGYLGETSAGPGKSLPG
【0131】
[00185][配列番号5]VEGFバインダー-hu IgG1 Fc DANG
[00186]SDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEKGGGGSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYGSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0132】
[00187][配列番号6]hu IgG1 Fc DANG
[00188]SVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVAVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYGSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0133】
[00189][配列番号7]mu CRIg-mu IgG2a Fc DANG
[00190]HPTLKTPESVTGTWKGDVKIQCIYDPLRGYRQVLVKWLVRHGSDSVTIFLRDSTGDHIQQAKYRGRLKVSHKVPGDVSLQINTLQMDDRNHYTCEVTWQTPDGNQVIRDKIIELRVRKYNPPRINTEAPTTLHSSLEATTIMSSTSDLTTNGTGKLEETIAGSGRNLPGGGGSEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVAVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYGSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
【0134】
[00191][配列番号8]mu CRIg-mu IgG2a Fc DANG-VEGFバインダー
[00192]HPTLKTPESVTGTWKGDVKIQCIYDPLRGYRQVLVKWLVRHGSDSVTIFLRDSTGDHIQQAKYRGRLKVSHKVPGDVSLQINTLQMDDRNHYTCEVTWQTPDGNQVIRDKIIELRVRKYNPPRINTEAPTTLHSSLEATTIMSSTSDLTTNGTGKLEETIAGSGRNLPGGGGSEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVAVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYGSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGGGGGSGGGGSSDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEK
【0135】
[00193][配列番号9]mu IgG2a Fc DANG-mu CRIg
[00194]EPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVAVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYGSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGGGGGSGGGGSHPTLKTPESVTGTWKGDVKIQCIYDPLRGYRQVLVKWLVRHGSDSVTIFLRDSTGDHIQQAKYRGRLKVSHKVPGDVSLQINTLQMDDRNHYTCEVTWQTPDGNQVIRDKIIELRVRKYNPPRINTEAPTTLHSSLEATTIMSSTSDLTTNGTGKLEETIAGSGRNLPG
【0136】
[00195][配列番号10]VEGFバインダー-mu IgG2a Fc DANG-mu CRIg
[00196]SDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEKGGGGSEPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVAVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYGSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGGGGGSGGGGSHPTLKTPESVTGTWKGDVKIQCIYDPLRGYRQVLVKWLVRHGSDSVTIFLRDSTGDHIQQAKYRGRLKVSHKVPGDVSLQINTLQMDDRNHYTCEVTWQTPDGNQVIRDKIIELRVRKYNPPRINTEAPTTLHSSLEATTIMSSTSDLTTNGTGKLEETIAGSGRNLPG
【0137】
[00197][配列番号11]mu IgG2a Fc DANG
[00198]APNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVAVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYGSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
【0138】
[00199][配列番号12]mu IgG2a Fc DANG-VEGFバインダー
[00200]EPRGPTIKPCPPCKCPAPNLLGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVAVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYGSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGGGGGSGGGGSSDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEK
【0139】
[00201][配列番号13]アフリベルセプト
[00202]SDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEKDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0140】
[00203]調製実施例2.ヒトタンパク質(C1.01~C1.06及びアフリベルセプト)並びにマウスタンパク質(C1.03m及びC1.04m)の調製
【0141】
[00204]調製実施例2.1.ベクター構築及びプラスミドマキシプレップ
[00205]表2及び3は、以下のとおり使用した試薬及び機器を列挙する。
【0142】
【0143】
【0144】
[00208]合成DNA断片をPCRによって増幅し、PCR産物をゲルによって精製した。pTT5ベクターを制限酵素EcoRI及びBamHIで切断し、次いで、ゲルによって精製した。インフュージョンキットを使用して、各PCR産物及び直鎖状ベクターをライゲーションした。生成したベクターでECOS101 DH5αコンピテントセルを形質転換し、100μg/mlのアンピシリンを含む2×YT寒天プレート上でこれを培養した。すべての操作プロセスは、標準的な形質転換プロトコールに従って行った。コロニーPCRによって陽性の組換え体を確認し、組換えプラスミドに対して配列検証シークエンシングを行った。単一コロニーを選択し、100μg/mlのアンピシリンを含む5mLの2×YT培地に種菌(spawn)を播種した。振盪しながら37℃で8時間培養した。
【0145】
[00209]その後、200mLの2×YT選択培地に1:1,000の比で種菌を希釈した。振盪しながら37℃で16時間培養した。4℃及び4,700rpmで10分間の遠心分離によって細菌細胞を収集した。細菌ペレットを12mLのRES-EFバッファーに再懸濁した。続いて、12mLのLYS-EFバッファーを加え、密閉したチューブを勢いよく反転させて完全に混合し、それに続いて、室温で5分間培養した。12mLのNEU-EFバッファーを可溶化液に加え、チューブを勢いよく反転させて、急速且つ完全に混合した。
【0146】
[00210]ヌクレオボンド(NUCLEOBOND)(登録商標)エクストラ(XTRA)カラムフィルターに可溶化液を注入する前に、フィルターの目詰りを防止するために、可溶化液チューブを3回反転させることによって沈殿物の均一な懸濁液を調製した。続いて、NUCLEOBOND(登録商標)カラムフィルター及びヌクレオボンド(登録商標)エクストラカラムを10mLのフィルター洗浄バッファーFIL-EFで洗浄した。カラムを反転させることによってヌクレオボンド(登録商標)Xtraカラムフィルターを取り外すか又は除去した。ヌクレオボンド(登録商標)エクストラカラムを90mLの洗浄バッファーENDOで洗浄した。
【0147】
[00211]ヌクレオボンド(登録商標)エクストラカラムを45mLの洗浄バッファーWASH-EFで洗浄した。プラスミドDNAを15mLの溶出バッファーELUで溶出した。溶出液を50mLの遠心チューブに収集した。10.5mLの室温のイソプロパノールを加えて、溶出したプラスミドDNAを沈殿させた。ボルテックスした後、混合物を2分間放置した。
【0148】
[00212]その後、5mLの70%エタノールをペレットに加えた。ピペットチップを使用して、エタノールを慎重且つ完全にチューブから除去した。室温(20℃~25℃)でペレットを乾燥させた。次いで、1,000μlのH2OでDNAペレットを溶解した。
【0149】
[00213]調製実施例2.2.細胞トランスフェクション及びタンパク質発現
[00214]表4は、以下のとおり使用した材料及び試薬を列挙する。
[00215]
【表4】
【0150】
[00216]完全培地を含有する293F種株を130rpm、37℃及び8%CO2で、インキュベーターシェーカー中で維持した。0.3×106細胞/ml~0.4×106細胞/mlの密度で細胞を培養し、2~3日ごとに培地を交換した。トランスフェクションの24時間前に、新しく継代培養された293F細胞を2.6×106細胞/mlで調製した。調製した細胞を130rpm、37℃及び8%CO2で、インキュベーターシェーカー中で培養した。トランスフェクションの当日に、新鮮な培地を使用して、細胞の密度を5.0×106細胞/mlに調整した。調整は、3Lシェーカーフラスコ中で1Lの全量で行った。0.4mgのHCプラスミド及び0.6mgのLCプラスミドを50mlのOPTI MEM Iで希釈し、これを0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、2mgのPEIを50mlのOPTI MEM Iで希釈して、トランスフェクション試薬を調製した。
【0151】
[00217]希釈したPEIをDNA混合物に加え、次いで、直ちに混合した。続いて、室温で15分間培養した。2.6×106細胞/mlで調製した293F細胞にDNA-PEI混合物を加えた。次いで、130rpm、37℃及び8%CO2で、インキュベーターシェーカー中で24時間細胞を連続培養した。トランスフェクション後24時間目に、10%ペプトンを1/20の培養培地に加え、その結果、終濃度が0.5%になった。次いで、130rpm、37℃及び8%CO2で、インキュベーターシェーカー中で細胞を連続培養した。細胞の密度/生存率を毎日測定し、トランスフェクションから2~5日後の期間にわたって記録した。トランスフェクションから7日後に、又は細胞生存率が70%未満の時に、精製のために細胞を収集した。
【0152】
[00218]調製実施例2.3.タンパク質精製
[00219]表5~7は、以下のとおり、タンパク質精製に使用した試薬、各バッファーの組成及び機器を示す。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
[00223]マブセレクトシュア(Mabselect sure)カラムを使用してタンパク質を精製した。具体的には、4℃及び2,000×gで20分間の遠心分離によって、上清を収集した。続いて、ザルトポア(Sartopore)2フィルターで上清を濾過した。バッファーAで平衡化した5mlマブセレクトシュア(MabSelect Sure)カラムに浄化した上清をロードした。次いで、A280吸光度がベースラインに達するまでバッファーAでカラムを洗浄した。カラムを10CVのバッファーBで洗浄した。カラムを10CVのバッファーAで洗浄した。結合したタンパク質を6CVのバッファーC溶出し、1/6量のバッファーDを加えて溶出液を中和し、SDS-PAGE解析及びSEC-HPLC解析を行った。
【0157】
[00224]その後、HICカラムを通してタンパク質を精製した。次いで、バッファーEに対して4℃で一晩タンパク質を透析した。バッファーEで平衡化したHICカラムに上清をロードした。次いで、A280吸光度がベースラインに達するまで、バッファーEでカラムを洗浄した。勾配溶出(10CVのバッファーF、0%~40%)を通して、結合したタンパク質を溶出した。結合したタンパク質を2CVの100%バッファーFで溶出し、SDS-PAGE解析を行った。
【0158】
[00225]タンパク質を精製した後、タンパク質を一か所に収集し、次いで、最終バッファーに対して4℃で一晩透析した。続いて、SDS-PAGE解析及びSEC-HPLC解析を行った。
【0159】
[00226]したがって、
図1及び2に示すように、SDS-PAGEによって、精製されたC1.01、C1.02、C1.03、C1.04、C1.05、C1.06、C1.03m、C1.04m及びアフリベルセプトが確認された。
【0160】
[00227]調製実施例3.マウス融合タンパク質(C1.01m、C1.02m、C1.06m及びC1.07m)の調製
【0161】
[00228]調製実施例3.1.タンパク質の調製
[00229]表8は、以下のとおり使用した材料及び試薬を示す。
【表8】
【0162】
[00231]タンパク質配列に対応するDNA断片をGenewizにおいて合成した(番号80-383034849)。対応するDNA断片をPCRによって増幅し、直鎖状にしたpcDNA3.3発現ベクターを使用して導入した。シークエンシングによってそれらの構築を検証し、次いで、大規模なプラスミド調製プロセスによって、細胞トランスフェクションを行うのに十分な量のDNAを得た。
【0163】
[00232]最初に、95%以上が2Lの細胞培養培地中で生存するExpi293F細胞を2.94×106細胞/mLで調製した。プラスミドDNA及びエクスピフェカタミン(EXPIFECTAMINE)(商標)293試薬をOpti-MEM中に最初に希釈し、次いで、混合し、細胞培養培地に加えた。150rpmの撹拌速度で、プラットフォームシェーカー中で細胞培養を行った。温度は37℃で維持し、CO2の濃度は8%で維持した。トランスフェクション後18~20時間目に、エンハンサー1及びエンハンサー2を細胞培養培地に加えた。
【0164】
[00233]6日間の細胞培養後、4,000rpm、25℃で10分間細胞を遠心分離した。精製及びゲル電気泳動のために上清を収集した。ニューページ(NUPAGE)(商標)4%~12%ビス-トリスタンパク質ゲル(ThermoFisher)の説明書に従って、SDS-PAGEゲルに上清をロードした。タンパク質の分子量を測定するために、タンパク質試料とともにページャールーラー(PAGERULER)(商標)未染色タンパク質ラダー(ThermoFisher)を使用した。各タンパク質の残りの上清は、その後の精製プロセスで使用した。
【0165】
[00234]以下のようにタンパク質精製を行った。具体的には、プロテインAカラムをマブセレクトシュア樹脂とともに予めパッケージ化した。細胞培養培地をロードする前に、0.1Mトリス(pH7.0)でカラムを平衡化した。細胞培養培地をロードした後、カラムを0.1Mトリス(pH7.0)で洗浄し、次いで、0.1Mグリシン(pH3.5)で溶出した。0.1Mトリス(pH9.0)を加えることによって、溶出液を中和した。続いて、PBSバッファー(Sangon Biotech、B548117-0500)中で試料を透析した。
【0166】
[00235]試料をロードする前に、SECカラム(GE lifesciences、スーパーデックス200インクリーズ10/300)をPBSで平衡化した。ロードした後、試料をPBSで溶出し、クロマトグラフィーを通して収集した。それらの各ピークを解析するためにSDS-PAGEを行った。配合バッファー(10mMリン酸ナトリウム、0.3~0.4M NaCl、pH6.8)中で各試料を透析した。
【0167】
[0236]CHTカラムをCHT樹脂(Bio-rad、MPC(商標)セラミックヒドロキシフルオロアパタイト)とともに予めパッケージ化し、バッファーA(10mMリン酸ナトリウム、30mM NaCl、pH6.8)で平衡化してから試料をロードした。ロードした後、カラムを30%バッファーB(10mMリン酸ナトリウム、1M NaCl、pH6.8)で溶出し、次いで、30%~90%の直線勾配 バッファーB及び最終的な100%のバッファーBで溶出した。SDS-PAGEで溶出液を特徴づけし、配合バッファー(10mMリン酸ナトリウム、0.3~0.4M NaCl、pH6.8)中で試料を透析した。最終的なタンパク質を0.2μmのフィルターで濾過し、1.5mLチューブのそれぞれに0.5mLの量で無菌的に分注した。
【0168】
[00237]したがって、
図3に示すように、SDS-PAGEによって、精製されたC1.01m、C1.02m、C1.06m及びC1.07mが確認された。
【0169】
[00238]調製実施例3.2.タンパク質の特徴づけ
[00239]ナノドロップ(Nano Drop)を使用して、タンパク質の濃度を280nmで測定した。SDS-PAGE及びHPLC-SECによって、タンパク質の純度を確認した。
【0170】
[00240]15μLの精製したタンパク質及び5μLの4×ローディングバッファーを混合し、混合物を5分間ボイルすることによって、SDS-PAGE試料を調製した。NuPAGEビス-トリスミニゲルの4%~12%ゲルに15μLの混合した試料をロードした。SEC-HPLC解析を進めるために、HPLCシステム1260インフィニティIIのTSKゲルG3000SWxlカラムに80μLの精製したタンパク質をロードし、ランニングバッファーとして、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び150mM塩化ナトリウムを使用した。
【0171】
[00241]調製実施例4.ウサギ及びラットのC3及びC3bの精製
【0172】
[00242]調製実施例4.1.ウサギ及びラットのC3の精製
[00243]表9~11は、以下のとおり、ウサギ及びラットのC3の精製に使用した試薬、各バッファーの組成及び装置を示す。
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
[00247]タンパク質精製より前に、高分子量物質を血漿から除去するステップを行った。血漿の体積を測定し、次いで、粉末化塩結晶の10%(重量/体積の比)Na2SO4(無水)をタンパク質溶液に撹拌しながらゆっくりと加えた。続いて、4℃で2時間撹拌した。ソルボール(Sorvall)超遠心機を使用して4℃及び26,892×gで30分間遠心分離を行った後、上清を得て、その体積を測定した。得られた上清を5LのDEAEバッファーAに対して透析し、2時間後に、5Lの新しい溶液と交換した。最良の結果のために、4℃で一晩透析を行った。透析が完了したかどうかを確認するために、透析物の体積、A280及び伝導率を測定した。溶液が濁っていたか又は沈殿していた場合、4℃及び4,000×gで15分間遠心分離を行って、沈殿物を除去した。透析物を0.2μmのフィルターで濾過し、精製が進行するまで、氷上で保存した。
【0177】
[00248]陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーの順序でタンパク質精製を行った。透析物をロードする前に、DEAEカラム(GE healthcare、ハイプレップ(HIPREP)(商標)DEAEファストフロー16/10)をバッファーA(10mM KH2PO4、5mM EDTA、1mMベンズアミジン、pH7.8)で平衡化した。ロードした後、カラムをバッファーAで洗浄し、0%~50%の直線勾配バッファーB(10mM KH2PO4、5mM EDTA、1mMベンズアミジン、1M NaCl、pH7.8)で溶出した。溶出液の画分をSDS-PAGEによって解析し、C3を含む画分を収集し、それらのA280を測定した。得られた溶出物質を2LのモノS(Mono S)バッファーA(50mMリン酸ナトリウム)中で4℃で2時間透析した。
【0178】
[00249]モノSカラム(GE healthcare、モノS(MОNО S)(登録商標)5/50GL)をバッファーA(50mMリン酸ナトリウム)で平衡化してから透析物をロードした。DEAE溶出液をロードした後、カラムをバッファーAで洗浄し、0%~35%直線勾配バッファーB(50mMリン酸ナトリウム、1M NaCl、pH5.5)で溶出した。溶出物質の画分をSDS-PAGEによって解析し、中心に位置するピーク画分をプールし、それらのA280を測定した。
【0179】
[00250]試料をロードする前に、SECカラム(GE lifesciences、スーパーデックス200インクリーズ10/300)をPBSで平衡化した。ロードした後、試料をPBSで溶出し、クロマトグラフィーを通して収集した。それらの各ピークを解析するためにSDS-PAGEを行った。中心に位置するピークC3画分をプールし、それらのA280を測定した。
【0180】
[00251]調製実施例4.2.ウサギ及びラットのC3bの精製
[00252]0.5mg/mLのPBSで希釈することによってC3を調製した。0.4μM B因子、0.05μM D因子及び5mM MgCl2を加え、生成物を25℃で30分間培養することによって、C3をC3bに変換した。スーパーデックス200(60mL)ゲル濾過カラムを通して、C3bをさらに精製した。続いて、ウサギC3、ウサギC3b、ラットC3及びラットC3bのSDS-PAGE解析及びSEC-HPLC解析を行った。
【0181】
[00253]したがって、
図4に示すように。ウサギC3、ウサギC3b、ラットC3及びラットC3bが精製されたことが確認された。
【0182】
[00254]実験実施例1.融合タンパク質の結合力の測定
【0183】
[00255]実験実施例1.1.ビアコア表面プラスモン共鳴(SPR)解析技法
[00256]融合タンパク質の結合力を測定するために、ビアコア8K(GE Healthcare、29129951)装置を使用して、調製した融合タンパク質の物理的な特性を解析した。
【0184】
[00257]表12は、以下のとおり使用した材料及び試薬を示す。
[00258]
【表12】
【0185】
[00259]実験実施例1.2.CM5センサーチップへの抗ヒト免疫グロブリンG(Fc)抗体の固定化
[00260]100mLの10×HBS-EP+バッファーと900mLのミリQ(Milli-Q)水を混合することによって、1Lの1×HBS-EP+バッファーを調製した。50mM NHSと200mM EDCを1:1の比で420秒間混合した後、10μL/分の流速でCM5チップを活性化した。約10,000RUの固定化レベルに到達させるために、25μg/mLの抗ヒト免疫グロブリンG(Fc)抗体(pH5.0のアセテート)を10μL/mlの速度で400秒間注入した。1Mエタノールアミン(pH8.5)を10μL/分の速度で420秒間注入することによって、残りの活性化エステル基をブロックした。ベースラインを安定化するために、センサーチップを10μL/分の速度で16時間1×HBS-EP+で洗浄した。
【0186】
[00261]実験実施例1.3.結合動態の測定
[00262]ベースラインを安定化するために、試料ステップ及び再生ステップからなるスタートアップサイクルを3回行った。試料ステップ:1×HBS-EP+バッファーを30μL/分の流速で120秒間フローセルに注入し、その後に、120秒間の切断フェーズ及び30秒間の安定化フェーズを続けた。再生ステップ:10mMグリシン(pH1.5)を30μL/分の速度で30秒間フローセルに注入し、その後に、30秒間の安定化ステップを続けた。
【0187】
[00263]その後、結合動態の測定を以下の様式で行った。
【0188】
[00264]1×HBS-EP+バッファーを使用して、C3bの原液を50nMに希釈した。1×HBS-EP+バッファーを使用して、ヒトVEGF165を5nMに希釈した。次いで、50nM及び5nMの溶液を0.78125nM及び0.078125nMに希釈した。試料ステップでは、希釈した抗原を30μL/分の速度でフローセルに注入した。2つの0nM抗原(1×HBS-EP+バッファー)を使用し、参照シグナルから除去した。180秒間の結合及び400秒間の分離を行った。分離の時間の後、60秒間の安定化ステップを行った。再生ステップでは、10mMグリシン(pH1.5)を30μL/分の速度で30秒間フローセルに注入し、その後に、60秒間の安定化ステップを続けた。
【0189】
[00265]実験実施例1.4.解析及び結果
[00266]試料値から参照及び0nM値を引いた後、ビアコアインサイトソフトウェア(Biacore Insight Evaluation Software)(バージョン2.0.15.12933)及び曲線当てはめのための1:1結合モデルを使用して、結合動態を計算した。
【0190】
[00267]表13は、以下のとおり試験物質の結合親和性を示す。
[00268]
【表13】
【0191】
[00269]ヒトC3b及びヒトVEGF165へのC1.01及びC1.02の結合親和性並びにマウスC3b及びヒトVEGF165へのC1.01m及びC1.02mの結合親和性をビアコア解析によって測定した。
【0192】
[00270]したがって、表13及び
図6a、6b及び7a、7bに示すように、ヒト及びマウスのC1.01及びC1.02の両方がC3bへの高い結合親和性を有すること、並びにヒト及びマウスのC1.02がヒトVEGF165への高い結合親和性を有することが確認された。
【0193】
[00271]実験実施例2.酵素結合免疫吸着測定アッセイ(ELISA)による補体タンパク質及びVEGFへの融合タンパク質の結合親和性の測定
[00272]一実施形態による融合タンパク質二量体によって補体経路が阻害されるかどうかを確認するために、C1.01、C1.02、C1.03、C1.04及びC1.01m~C1.03mがC3bタンパク質に結合するかどうかを酵素結合免疫吸着測定アッセイによって解析した。
【0194】
[00273]具体的には、ヒトC3bタンパク質をプレートに固定化し、C1.01、C1.02、C1.03及びC1.04並びに対照としてのhIgG1をそれらに結合させた。次に、抗ヒト免疫グロブリンG抗体及び抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗体を順次それらに結合させた。さらに、マウスC3bタンパク質をプレートに固定化し、マウスCRIgを含むC1.01m~C1.03mマウスC3bに結合させた。
【0195】
[00274]したがって、
図8aに示すように、CRIgを含むC1.01、C1.02、C1.03及びC1.04が濃度依存的にヒトC3bに結合することが確認された。さらに、
図8cに示すように、マウスCRIgを含むC1.01m~C1.03mも濃度依存的にマウスC3bに結合することが確認された。
【0196】
[00275]一実施形態による融合タンパク質が抗VEGF作用を有するかどうかを確認するために、融合タンパク質とヒトVEGF165タンパク質が結合するかどうかを酵素結合免疫吸着測定アッセイによって解析し、ヒトVEGF165へのアフリベルセプト、C1.02、C1.04及びC1.05の結合親和性をELISAによって測定した。
【0197】
[00276]具体的には、ヒトVEGF165タンパク質をプレートに固定化し、C1.02、C1.04及びC1.05及びアフリベルセプト及び対照としてのhIgG1をそれらに結合させた。次に、抗ヒト免疫グロブリンG抗体及び抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗体を順次それらに結合させた。
【0198】
[00277]したがって、
図8bに示すように、酵素結合免疫吸着測定アッセイによる測定の結果として、抗VEGFを有するアフリベルセプト、C1.02、C1.04及びC1.05が濃度依存的にヒトVEGF165に結合することが確認された。
【0199】
[00278]一実施形態による融合タンパク質が代替経路のC3bに結合して代替経路を阻害するが、古典的経路のヒトC2又はC4タンパク質に結合せず、それにより古典的経路を阻害しないことを確認するために、一実施形態による融合タンパク質C1.01とヒトCb3、C2及びC4タンパク質が結合するかどうかをELISAによって解析した。
【0200】
[00279]具体的には、ヒトCb3、C2又はC4タンパク質をプレートに固定化し、C1.02をそれらに結合させた。次に、抗ヒト免疫グロブリンG抗体及び抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗体を順次それらに結合させた。
【0201】
[00280]したがって、
図8dに示すように、C1.02はC3bに結合するが、C2及びC4に結合しないことが確認された。
【0202】
[00281]実験実施例3.動的光散乱(DLS)解析
[00282]VEGFバインダーが含まれるかどうかに従って融合タンパク質の流体力学的半径を測定するために、C1.01及びC1.02の流体力学的半径を動的光散乱方法によって解析した。
【0203】
[00283]具体的には、C1.01及びC1.02を12,000×gで10分間遠心分離し、上清を96ウェルプレートに加え、それに続いて、DLS解析機器としてゼータサイザー(Zetasizer)APS(Marlvern)を使用して25℃で測定した。
【0204】
[00284]表14は、以下のとおり、C1.01及びC1.02の流体力学的半径を示す表である。
[00285]
【表14】
【0205】
[00286]したがって、表14及び
図9a及び9bに示すように、VEGFバインダーを含むC1.02の流体力学的半径は、VEGFバインダーがないC1.01よりも長く測定されることが確認された。
【0206】
[00287]実験実施例4.C1.02の粘度の測定
[00288]濃度によってC1.02の粘度を測定するために、マイクロ粘度計(m-VROC、RheoSence)及びvROC-mB05(RheoSence)チップを使用して、33、65及び130mg/mlのC1.02の粘度を測定した。さらに、対照として、134mg/mlのヒト血清アルブミンの粘度も測定した。
【0207】
[00289]表15は、以下のとおり、測定された粘度を示す。
[00290]
【表15】
【0208】
[00291]したがって、表15及び
図10に示すように、C1.02の粘度は、その濃度が高まるにつれて高まることが確認された。
【0209】
[00292]実験実施例5.溶血解析による代替補体経路阻害効果の解析
[00293]表16は、以下のとおり使用した試薬を示す表である。
[00294]
【表16】
【0210】
[00295]一実施形態による融合タンパク質が代替補体経路を阻害することを確認するために、C1.01、C1.02、C1.04、C1.01m、C1.02m及びC1.04mの溶血解析(AH50)を行った。
【0211】
[00296]具体的には、400×gで10分間の遠心分離を使用して3mLのウサギ赤血球をTBSで洗浄し、このプロセスを2回繰り返した後、400×gで10分間の遠心分離を使用してウサギ赤血球をGVB EGTAバッファーで再度洗浄した。次に、GVB EGTAバッファーを使用してウサギ赤血球の濃度を1×109細胞/mLに調整した。
【0212】
[00297]感作赤血球によってAH50を解析するために、9%のヒトC1q枯渇血清を96ウェルプレートに加えた(50μL/ウェル)。さらに、C1.01、C1.02、C1.01m及びC1.02mを様々な濃度で処理した。4℃で30分間培養した後、ウサギ赤血球を加えた(2×106細胞/ウェル、50μL/ウェル)。37℃で1.5時間培養し、600×gで10分間遠心分離を行った。110μLの上清を収集した後、そのOD415値を測定した。
【0213】
[00298]C1.01、C1.02、C1.04、C1.01m、C1.02m及びC1.04mの代替補体経路阻害効果をAH50溶血解析によって確認した。
【0214】
[00299]したがって、表16及び
図11a~11cに示すように、C1.01、C1.02、C1.04、C1.01m、C1.02m及びC1.04mが代替補体経路による溶血作用を濃度依存的に阻害することが確認された。
【0215】
[00300]実験実施例6.溶血解析による古典的補体経路阻害効果の解析
[00301]
表17は、以下のとおり使用した試薬を示す表である。
【表17】
【0216】
[00302]一実施形態による融合タンパク質二量体が古典的補体経路を阻害しないことを確認するために、C1.01、C1.02、C1.04、C1.05、C1.06、C1.01m、C1.02m、C1.04m、C1.06m及びC1.07mの溶血解析(CH50)を行った。
【0217】
[00303]具体的には、ヒツジ赤血球をTBS中で400×gで10分間遠心分離し、このプロセスを2回繰り返した後、1mLの20%ヒツジ赤血球及び溶血素を4℃で30分間インキュベートした。続いて、400×gで10分間の遠心分離を使用してヒツジ赤血球をTBSで洗浄し、このプロセスを2回繰り返した後、400×gで10分間の遠心分離を使用してヒツジ赤血球をGVB++バッファーで洗浄した。次に、GVB++バッファーを使用して、感作ヒツジ赤血球の濃度を1×109細胞/mLに調整した。
【0218】
[00304]感作赤血球によってCH50を解析するために、3%又は4.5%のヒトB因子枯渇血清を96ウェルプレートに加え(50μL/ウェル)、次いで、C1.01、C1.02、C1.06、C1.01m、C1.02m、C1.06m及びC1.07mを様々な濃度で処理した。4℃で30分間培養した後、感作ヒツジ赤血球を加えた(2.5×106細胞/ウェル、50μL/ウェル)。37℃で30分間培養した。600×gで10分間遠心分離を行い、110μLの上清を収集し、次いで、そのOD415値を測定した。
【0219】
[00305]したがって、表16及び
図12a~12cに示すように、C1.01、C1.02、C1.04、C1.05、C1.06、C1.01m、C1.02m、C1.04m、C1.06m及びC1.07mはすべて古典的補体経路による溶血作用を阻害しないことが確認された。
【0220】
[00306]実験実施例7.VEGFレポーター細胞を使用した、融合タンパク質の有効性解析
[00307]一実施形態による融合タンパク質がVEGFタンパク質を効果的に阻害するかどうかを確認するために、VEGF及びVEGF受容体への結合が阻害されるかどうかを解析した。
【0221】
[00308]レポーター細胞を使用して、アフリベルセプト、C1.01、C1.02、C1.05及びC1.06のVEGFシグナリング阻害効果を確認した。具体的には、VEGFが結合すると、受容体媒介性シグナリングによって発光性の光を生成するVEGFレポーター細胞(GA3001、Promega、USA)を使用して、発光の程度を介して、アフリベルセプト、C1.02及びC1.05がVEGF及びVEGF受容体への結合を阻害するかどうかを解析した。
【0222】
[00309]したがって、
図13に示すように、アフリベルセプト、C1.02及びC1.05がVEGFによる受容体媒介性シグナリングを濃度依存的に阻害することが確認された。
【0223】
[00310]実験実施例8.融合タンパク質による創傷治癒アッセイの評価
[00311]融合タンパク質二量体の創傷治癒能力阻害効果を介して、一実施形態による融合タンパク質二量体がVEGFタンパク質を効果的に阻害するかどうかを確認した。
【0224】
[00312]具体的には、細胞ベースの創傷治癒アッセイ方法によって、C1.01、C1.02及びC1.05のVEGFシグナリング経路阻害効果を確認した。成人網膜色素上皮細胞株-19(ARPE-19)を解析に使用した。10%ウシ胎仔血清(FBS)を使用して、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/F12培地中で、ARPE-19細胞を培養した。ARPE-19細胞(80,000細胞/ウェル)を24ウェルプレートで一晩培養した。翌日、それぞれのウェルを一様に傷つけ、次いで、VEGF(6ng/ml)並びにC1.01、C1.02及びC1.05(35nM)を培養培地に加え、24時間後に、各融合タンパク質の創傷治癒阻害能力を解析した。
【0225】
[00313]したがって、
図14に示すように、C1.02は、対照と比較して創傷治癒を有意に阻害すること(p=0.0031)、並びにこの効果は、C1.01(p=0.0146)及びC1.05(p=0.0482)と比較して有意であることが確認された。
【0226】
[00314]実験実施例9.種交差反応性試験
[00315]一実施形態による融合タンパク質二量体の種交差反応性を確認するために、C1.02が他の種に由来するC3b及びVEGFに結合するかどうかをELISAによって解析した。
【0227】
[00316]C1.02へのヒト及びカニクイザルのC3bの結合能力、C1.06へのヒト及びカニクイザルのC3bの結合能力、C1.02へのヒト、カニクイザル、ラット及びウサギのVEGFの結合能力、並びにC1.01へのヒト、カニクイザル、ラット及びウサギのVEGFの結合能力をELISAによって確認した。具体的には、ヒト、カニクイザル、ラット又はウサギのC3b又はVEGFをプレートに固定化し、C1.01、C1.02又はC1.06をそれらに結合させた。次に、抗ヒト免疫グロブリンG抗体及び抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗体を順次それらに結合させた。
【0228】
[00317]したがって、
図15a~15cに示すように、C1.02は、カニクイザル、ウサギ及びラットのC3b及びVEGFへの結合を介して、種交差反応性を有することが確認された。
【0229】
[00318]実験実施例10.湿潤型黄斑変性症についてのマウス動物モデルを使用した有効性評価
[00319]湿潤型黄斑変性症(湿潤型加齢性黄斑変性症)に対する一実施形態による融合タンパク質の治療効果を確認するために、マウス動物モデルで脈絡膜血管新生を誘導し、次いで、一実施形態による融合タンパク質二量体を眼球に直接注射し、効果を解析した。
【0230】
[00320]マウスで脈絡膜血管新生表現型を誘導するために、誘導前にスペクトルドメイン光干渉断層撮影(Envisu R2200 SD-OCTシステム;Bioptigen,Inc.、USA)によって、マウスに構造的な異常があるかどうかを確認した。
【0231】
[00321]次に、ダイオードレーザー(OcuLight TX-緑色532nmレーザー;Iridex Corporate、USA)を使用してマウスの右眼のブルッフ膜を貫通することによって、3つの脈絡膜血管新生を誘導した(0日目)。脈絡膜血管新生の誘導後、スペクトルドメイン光干渉断層撮影及び蛍光眼底造影(HRA2 FAシステム;Heidelberg Engineering GmbH、Germany)を使用して、モデルが首尾よく誘導されたかどうかを確認した。
【0232】
[00322]誘導の直後に、C1.02m(350μM;48.3μg/μl、2μl)、アフリベルセプト(アイリーア(Eylea);350μM;40.0μg/μl、2μl)又はビヒクル対照(2μl)を硝子体内注射によって注射した。スペクトルドメイン光干渉断層撮影及び蛍光眼底造影システムを使用して、脈絡膜血管新生の誘導の直後(0日目)及び誘導から7日後(7日目)にインビボイメージングを行った。蛍光眼底造影システムの写真中の各脈絡膜血管新生について、血管漏出があった場合1ポイントをスコア化し、血管漏出がない場合0ポイントをスコア化した、次いで、病変確率を計算した。例えば、100%の表記は、3つの脈絡膜血管新生で観察された血管漏出を意味する。
【0233】
[00323]したがって、
図16a~16cに示すように、投与の7日後に、C1.02m群はアフリベルセプト群と同様の保護効果を有し、ビヒクル群と比較して、有意な保護効果を有することが確認された。
【0234】
[00324]実験実施例11.湿潤型黄斑変性症についてのウサギ動物モデルを使用した有効性評価
[00325]湿潤型黄斑変性症(湿潤型加齢性黄斑変性症)に対する一実施形態による融合タンパク質の治療効果を確認するために、ウサギ動物モデルで脈絡膜血管新生を誘導し、次いで、一実施形態による融合タンパク質を眼球に直接注射し、効果を解析した。
【0235】
[00326]6個の脈絡膜血管新生を誘導したことを除いて実験実施例10の前述の方法と同様の方法によって、ウサギで脈絡膜血管新生を誘導することにより、湿潤型黄斑変性症についてのウサギモデルを調製した。脈絡膜血管新生の誘導の直後に、C1.01(350μM;38.45μg/μl、50μl)、アフリベルセプト(350μM;40μg/μl、50μl)又はビヒクル対照(50μl)を硝子体内注射によって注射した。蛍光眼底造影システムを使用して、脈絡膜血管新生の誘導の直後(0日目)、誘導から7日後(7日目)及び誘導から14日後(14日目)にインビボイメージングを行った。脈絡膜血管新生中のフルオレセイン強度を測定することによって、血管漏出を測定した。
【0236】
[00327]したがって、
図17に示すように、投与の7日後に、C1.01群はアフリベルセプト群と同様の保護効果を有し、ビヒクル群と比較して有意な保護効果を有することが確認された。
【0237】
[00328]実験実施例12.湿潤型黄斑変性についてのラット動物モデルを使用した有効性評価
[00329]湿潤型黄斑変性症に対する一実施形態による融合タンパク質の治療効果を確認するために、ラット動物モデルで脈絡膜血管新生を誘導し、次いで、一実施形態による融合タンパク質を眼球に直接注射し、効果を解析した。
【0238】
[00330]4つの脈絡膜血管新生を誘導したことを除いて実験実施例10の前述の方法と同様の方法によって、ラットで脈絡膜血管新生を誘導することにより、湿潤型黄斑変性症についてのラットモデルを調製した。脈絡膜血管新生の誘導の直後に、C1.02(350μM;54.93μg/μl、5μl)、アフリベルセプト(350μM;40μg/μl、5μl)又はビヒクル対照(5μl)を硝子体内注射によって注射し、次いで、蛍光眼底造影システム及びスペクトルドメイン光干渉断層撮影を使用して、0日目及び10日目にインビボイメージングを行った。イメージングによって、誘導直後及び誘導から10日後の脈絡膜血管新生の有無及び血管漏出面積を定量化し、これらを示す。
【0239】
[00331]したがって、
図18a及び18bに示すように、投与の10日後に、脈絡膜血管新生の数及び血管漏出面積が有意にC1.02群で低減し、その結果、C1.02群はアフリベルセプト群と同様の保護効果を有し、ビヒクル群と比較して有意な保護効果を有することが確認された。
【0240】
[00332]実験実施例13.乾燥型黄斑変性についてのマウス動物モデルを使用した有効性評価
[00333]乾燥型黄斑変性(乾燥型加齢性黄斑変性症)に対する一実施形態による融合タンパク質の治療効果を確認するために、マウス動物モデルで乾燥型黄斑変性を誘導し、次いで、一実施形態による融合タンパク質を眼球に直接注射し、効果を解析した。
【0241】
[00334]最初に、20mg/kgのヨウ素酸ナトリウム(NaIO3)を8週齢のC57BL/6マウスに尾静脈注射によって投与することによって、乾燥型黄斑変性についてのマウス動物モデルを誘導した。
【0242】
[00335]モデルを誘導した後、C1.02m(260μM;36.1μg/μl、1.5μl)又はビヒクル対照(1.5μl)を硝子体内注射によって0日目及び7日目に投与した。モデルを誘導してから2週後に、実験動物を安楽死させ、次いで、眼を摘出し、4℃で24時間ダビットソン溶液中で固定した。続いて、固定した試料を30%ショ糖溶液中で4℃で3日間保存した。OCT化合物(カタログ番号4583、Sakura)中で試料を凍結し、次いで、これを20μmの厚さにスライスした。スライスした組織において、免疫蛍光を使用して、C3(カタログ番号MA1-40046、Thermofisher)タンパク質を染色し、DAPI(カタログ番号H-1200、Vector Laboratories)染色方法を使用して、外顆粒層(ONL)を染色した。共焦点顕微鏡(LSM700;Zeiss、Germany)を使用して、染色した試料を解析した。具体的には、乾燥型黄斑変性のモデルの各実験群の外顆粒層(ONL)、外顆粒層の細胞数、外顆粒層の面積及び網膜のC3発現レベルを測定した。
【0243】
[00336]したがって、
図19のa~19のfに示すように、細胞数及び外顆粒層の面積の測定において、網膜変性症は、ビヒクル群と比較してC1.02m群で有意に阻害されることが確認された。さらに、C3の発現は、非AMD群と比較してビヒクル群で有意に増加しており、C3の発現は、C1.02m群で有意に減少していることが確認された。
【0244】
[00337]実験実施例14.C1.02の薬物動態プロファイルの解析
[00338]一実施形態による融合タンパク質二量体の薬物動態プロファイルを解析するために、15匹のニュージーランドホワイトウサギを3匹のウサギからなる5つの群(G01~G05)にグループ化した。グループ化した後、2,500μgのC1.02(50μl/眼)を硝子体内注射によって投与した。
【0245】
[00339]薬物動態プロファイルを解析するための試料を得るために、最初に、ウサギの静脈から0.5mlの血液を毎時間収集した。得られた血液試料から血漿を分離し、次いで、これを-60℃で凍結保存した。さらに、硝子体液(0.2ml)及び眼房水(0.2ml)を毎時間得て、次いで、これらを-60℃で凍結保存した。
【0246】
[00340]表18は、以下のとおり、ウサギの群、対象及び収集時間によって、得られたウサギ試料を示す。
[00341]
【表18】
【0247】
[00342]酵素結合免疫吸着測定アッセイ(ELISA)を使用して、血漿、硝子体液及び眼房水中のC1.02の濃度を測定した。測定値を用いて非コンパートメント薬物動態解析を行うことによって、薬物動態パラメーターを得た。表19は、以下のとおり、非コンパートメント薬物動態解析によって得られた薬物動態パラメーターを示す。
【0248】
【0249】
[00344]以下の表20は、硝子体内注射によって2,500μgのC1.02をウサギに投与した後の硝子体液中のC1.02の濃度を示す表である。RB#は動物の番号を示し、BQLは「定量化限界未満」を示し、NDは「未決定」を示す。
【0250】
【0251】
[00346]以下の表21は、硝子体内注射によって2,500μgのC1.02をウサギに投与した後の眼房水中のC1.02の濃度を示す表である。RB#は動物の番号を示し、BQLは「定量化限界未満」を示し、NDは「未決定」を示す。
【0252】
【0253】
[00348]以下の表22は、硝子体内注射によって2,500μgのC1.02をウサギに投与した後の血漿中のC1.02の濃度を示す表である。RB#は動物の番号を示し、BQLは「定量化限界未満」を示し、NDは「未決定」を示す。
【0254】
【0255】
[00350]硝子体内注射によって2,500μgのC1.02をウサギに投与した後の硝子体液及び眼房水中のC1.02の濃度を測定した。
【0256】
[00351]したがって、表20~22及び
図20a及び20bに示すように、硝子体内注射によって2,500μgのC1.02を投与した場合、硝子体液中の半減期は226時間であり、眼房水中の半減期は114時間であることが確認された。血漿では有意な濃度が観察されなかったので、血漿において薬物動態プロファイル解析は不可能であった。
【配列表】