(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】中空球状アルミナ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 7/30 20220101AFI20240925BHJP
【FI】
C01F7/30
(21)【出願番号】P 2024104097
(22)【出願日】2024-06-27
【審査請求日】2024-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399127625
【氏名又は名称】浅田化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】竹中 亜優菜
(72)【発明者】
【氏名】正井 利哉
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 太一
(72)【発明者】
【氏名】筒井 義也
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-129187(JP,A)
【文献】特開2023-068864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で、210~280℃の温度で乾燥造粒し、造粒物の揮発分を0~10%、嵩比重を0.2~0.7g/cm
3に制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて2~8時間焼成し、中空球状アルミナ粒子を得る第2の工程と、からなり、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl
2O
3換算で8~13質量%で含み、
得られた中空球状アルミナ粒子が、粒度分布測定において、D50が5~50μmであり、かつD90が200μm以下であり、内部が中空であり、かつ外部と貫通孔を持ち、比表面積が1~20m
2/gであり、結晶相がα相を示すことを特徴とする中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記中空球状アルミナ粒子は、医薬用部外品原料規格2021における酸化アルミニウム分析において、乾燥減量が4%以下、強熱減量が6%以下であり、嵩比重が0.4~0.7g/cm
3であることを特徴とする請求項1記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムのいずれかまたは両方と、水と、を混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、得られたゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られることを特徴とする請求項1または2記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程の乾燥造粒が、噴霧乾燥法であることを特徴とする請求項1または2記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第2の工程の焼成が、大気、窒素または不活性ガス中若しくは真空中で行われることを特徴とする請求項1または2記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空球状アルミナ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空のアルミナ粒子は各種方法で作製されている。例えば、特許第4271045号(特許文献1)および特許第4043805号(特許文献2)には、硝酸アルミニウムまたは酢酸アルミニウムに、クエン酸、アミノ酸及びリンゴ酸から選ばれる有機酸を含む原料水溶液に、超音波を照射し、液滴選別部から焼成炉に微小液滴を空気中で1200~1300℃に焼成することを特徴とする中空のアルミナ中空粒子の製造方法が開示されている。この方法で中空アルミナ粒子を得ようとすれば、液滴の投入量を制限する必要性があり、水溶液からα-アルミナを合成するためには、乾燥から焼成まで一連を炉内でする必要があり、装置が大型化し、生産性が悪くなる。
【0003】
特許文献3(特許第6316153号)には、アルミニウム塩水溶液をスプレーノズルで噴霧し、300~600℃の乾燥ゾーンおよび600~1600℃の熱分解ゾーンの両方を通過させる噴霧熱分解法で、γ-アルミナを主成分とする中空粒子を得、得られたγ-アルミナを主成分とする中空粒子を1000~1150℃に加熱することを特徴とするアルミナ中空粒子の製造方法が記載されている。300~600℃の乾燥ゾーンと、600~1600℃の熱分解ゾーンの2種類のゾーンを持つ炉内に噴霧熱分解でγアルミナを得るために装置が大型化することによる生産性が悪化する。また、γ-アルミナを更に1000~1150℃に加熱し、α相をもつ中空アルミナを作製するために工程が必要になり、工程が2段階になって、生産効率が悪く、焼成プロセスが2段階であるため、熱効率的に悪い。
【0004】
特許文献4(特許第6730045号)には、ベーマイトの凝集体及び擬ベーマイトの凝集体の内、少なくとも1つの凝集体を1200~1500℃の温度範囲で、1~20時間加熱することを特徴とする球状及び不定形状の内、少なくとも一方である摩擦材用αアルミナ粒子の製造方法が記載されている。この製造方法の場合、板状のベーマイト及び擬ベーマイトの凝集体を造粒し、1200~1500℃の温度で焼成する為、球状であっても中空体をつくることができない。
【0005】
特許文献5(特許第5568399号)には、比表面積が10~20m2/gの微粉アルミナ粉末のアルコールスラリーを火炎温度が1300~1650℃の火炎中に噴霧することを特徴とする球状アルミナ粒子の製造方法が開示されている。この製造方法では、超微粉アルミナ粉末のアルコールスラリーを火炎中に噴霧するので、中空粒子を得ることができなく、かつ超微粉アルミナ粉末を原料として使用するので、αアルミナ粉末同士を焼結させるためには、1300~1650℃という焼結温度を高くする必要があり、生産性が悪くなる。
【0006】
特許文献6(特許第7406444号)には、アルミナを主成分とする粗原料粒子材料を酸溶液中に浸漬して原料粒子材料にする第1酸洗工程と、前記原料粒子材料を溶融して急冷することで球状化した粗球状粒子材料にする溶融球状化工程と、前記粗球状粒子材料を酸溶液中に浸漬して球状粒子材料にする第2酸洗工程とを有する球状粒子材料の製造方法が記載されている。この製造方法では、第一酸洗工程および第二酸洗工程の内、少なくとも一方は高温環境下で実施する必要があり、硝酸、硫酸、フッ酸等に原料粒子材料を浸漬することを必須とするために、工程が煩雑になり、酸を大量に使用する必要あり、更に中空アルミナを作製できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4271045号
【文献】特許第4043805号
【文献】特許第6316153号
【文献】特許第6730045号
【文献】特許第5568399号
【文献】特許第7406444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
中空で球状のアルミナ粒子を、塩基性乳酸アルミニウム水溶液を用いて、造粒と焼成の2工程で容易に製造することができる方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は以下の態様を包含する:
[1]
塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で、210~280℃の温度で乾燥造粒し、造粒物の揮発分を0~10%、嵩比重を0.2~0.7g/cm3に制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて2~8時間焼成し、中空球状アルミナ粒子を得る第2の工程と、からなり、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl2O3換算で8~13質量%で含み、
得られた中空球状アルミナ粒子が、粒度分布測定において、D50が5~50μmであり、かつD90が200μm以下であり、内部が中空であり、かつ外部と貫通孔を持ち、比表面積が1~20m2/gであり、結晶相がα相を示すことを特徴とする中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[2]
前記中空球状アルミナ粒子は、医薬用部外品原料規格2021における酸化アルミニウム分析において、乾燥減量が4%以下、強熱減量が6%以下であり、嵩比重が0.4~0.7g/cm3であることを特徴とする[1]記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[3]
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムのいずれかまたは両方と、水と、を混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、得られたゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られることを特徴とする[1]または[2]記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[4]
前記第1の工程の乾燥造粒が、噴霧乾燥法であることを特徴とする[1]または[2]記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[5]
前記第2の工程の焼成が、大気、窒素または不活性ガス中若しくは真空中で行われることを特徴とする[1]または[2]記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明による中空球状アルミナ粒子は、αアルミナ由来の耐熱性、耐熱衝撃性、耐薬品性及び高温強度特性を持ち、中空かつ球状の特性が軽量性、断熱性、流動性等などに優れているため、樹脂、ゴム等への高機能配合材、電子材料関連の放熱用フィラー、電子部材の研磨用フィラー等への展開が期待される。また医薬用部外品原料規格2021に沿うように設計することで、化粧品配合剤やスクラブ等としての利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1で得られたアルミナ粒子のレーザー回折式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル社製マスターサイザー3000)で乾式測定した粒度分布のグラフである。
【
図2】実施例1で得られたアルミナ粒子のX線回折装置((株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定した結果を示す図である。
【
図3】比較例4で得られたアルミナ粒子のX線回折装置((株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定した結果を示す図である。
【
図4】電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子(株)製JSM-7001F)を用いて測定した実施例1のアルミナ粒子の100,000倍のSEM画像である。
【
図5】電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子(株)製JSM-7001F)を用いて測定した実施例1のアルミナ粒子の10,000倍のSEM画像である。
【
図6】電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子(株)製JSM-7001F)を用いて測定した実施例1のアルミナ粒子の25,000倍のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(用語の定義)
本明細書において、「中空」とは、粒子の内部に空隙があることを意味し、完全な球状の空間があることを意味していない。従って、アルミナ粒子の内部の一部に空隙あるいは空間が存在している。また、「貫通孔が存在する」とは、全部の粒子に貫通孔があるのではなく、粒子内部の空隙が粒子表面にまで続いていること意味する。本明細書において、「球状」とは、完全な球体を意味しているのではなく、表面には凹凸があるが、全体として球状のように見えること意味している。
【0013】
本発明では、塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で、210~280℃の温度で乾燥造粒し、造粒物の揮発分を0~10%、嵩比重を0.2~0.7g/cm3に制御した乾燥造粒物を形成する第1の工程と、第1の工程で得られた乾燥造粒物を1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて、2~8時間焼成し、アルミナ粒子を得る第2の工程と、からなり、前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl2O3換算で8~13質量%で含み、更に得られたアルミナ粒子が粒度分布測定において、D50が5~50μmであり、D90が200μm以下であり、内部が中空かつ外部と貫通孔を持ち、比表面積が1~20m2/gであり、医薬用部外品原料規格2021における酸化アルミニウム分析において、乾燥減量が4%以下、強熱減量が6%以下で、更に嵩比重が0.4~0.7g/cm3であり、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子の製造方法を提供できることを特徴とする。
【0014】
(原料)
本発明の中空球状アルミナ粒子の合成用に使用する原料としては、以下を選定することが必要である:
(I)塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%、およびシリコン(Si)を0~0.01質量%に制御されていること。
(II)塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、アルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、AlをAl2O3換算質量で8~13質量%を有するものであること。
(III)前記の塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、必要に応じて、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸カリウム溶液若しくはその両者の組み合わせと、水とを混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、そのゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られるものであること。
【0015】
本発明では、主要原料として塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%、およびシリコン(Si)を0~0.01質量%を含み、アルカリ金属量を制御し、塩基度、アルミニウム含有量を所定範囲に制御し、それを噴霧乾燥し、1050℃以上1200℃未満の温度で2~8時間焼成すること、および所定の粒度、比表面積、乾燥減量、強熱減量の規格を満たし、所定の嵩比重を満たす中空、球状かつ貫通孔を持つ中空球状アルミナ粒子を提供することが可能である。
【0016】
本発明は上記(I)、(II)、(III)に記載の材料を用い、下記の製造方法で製造するものである。
【0017】
(製造方法)
(工程1)上記(I)および(II)の要件を満足する塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で210~280℃の温度で乾燥造粒し、造粒物の揮発分を0~10%、嵩比重を0.2~0.7g/cm3に制御した乾燥造粒物を形成すること。
(工程2)工程1で得られた乾燥造粒物をアルミナ製のるつぼや匣鉢等に入れて、焼成炉において、1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて、2~8時間焼成し、α相を示す中空球状アルミナ粒子を得る。
【0018】
以下、中空球状アルミナ粒子の製造に使用する原料と製造方法について、詳述する。
【0019】
(塩基性乳酸アルミニウム水溶液)
本発明で使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、以下の(I)~(III)の特性を有する:
(I)塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%、およびシリコン(Si)を0~0.01質量%に制御されていること。
(II)塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、アルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、AlをAl2O3換算質量で8~13質量%をふくむものであること。
【0020】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、上記(I)に記載するように、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%、およびシリコン(Si)を0~0.01質量%に制御されている。塩基性乳酸アルミニウム水溶液が含有するFe含有量、Ca含有量、Mg含有量、Si含有量が0.01質量%をこえると焼成時にアルミナ以外の異なる結晶相を形成することや着色等の不良を発生させる原因になる。Fe、Ca、MgおよびSiの含有量は、好ましくはそれぞれ0.007質量%以下、より好ましくは0.006質量%以下である。
【0021】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、上記(II)に記載するように、アルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量の量で含むことが必要である。より好ましくはアルカリ金属元素イオンを0.01~0.5質量%含むことが好ましい。アルカリ金属元素イオンが0.005質量%未満になるとアルカリ金属元素イオン量が少なすぎて、αアルミナへの相転移する温度が高くなり、1200℃未満ではαアルミナが生成しなくなる。一方、アルカリ金属元素イオンが1.2質量%を超えるとアルカリ金属元素イオンが多すぎて、αアルミナ以外のβアルミナ等が生成して、所望のαアルミナが得られなくなる。
【0022】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液に含有するアルカリ金属元素イオン種としてはナトリウム、カリウムから選ばれる1つ以上であることが必要である。
【0023】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、更に塩基度60~80%であり、AlをAl2O3換算質量で8~13質量%含有することが必要である。塩基度が60%未満になると乳酸分が多すぎて水への溶解性が悪化する課題がある。一方で80%を超えると不溶解の水酸化アルミニウムが析出し、液が白濁し、噴霧乾燥した際に中空の乾燥造粒体が得られなくなる課題がある。またAlをAl2O3換算質量で8質量%未満になると噴霧乾燥で乾燥した際に中空の乾燥造粒体が得られなくなる課題がある。一方で13質量%を超えるとAlの量が多すぎて、保管安定性が悪く、塩基性乳酸アルミニウム水溶液に析出物が発生し、噴霧乾燥に適さない課題がある。塩基性乳酸アルミニウム水溶液の塩基度は、好ましくは62~78%、より好ましくは64~76%である。「塩基度」は塩基で置換し得る価数の何%が埋まっているかを示す値であり、アルミニウムは3価であるので、2/3(3価の内2価)が使用されれば、66.66%(即ち、約67%)となることを意味し、JIS K1475の水道用液体ポリ塩化アルミニウムの塩基度の測定方法に準拠して測定される。塩基性乳酸アルミニウム水溶液のアルミニウム(Al)のAl2O3換算質量は、このましくは8.5~12.5質量%、より好ましくは9~12質量%である。AlのAl2O3換算質量は、アルミニウムの塩を用いるときに通常使用されるもので、Al2O3の質量に換算してアルミニウム量を特定する。
【0024】
本発明に使用する塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、上記(III)に記載する方法で得られるものであることが好ましい。具体的には、塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸カリウム溶液若しくはその両者の組み合わせと、水と、を混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、そのゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られる。もちろん、塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、上記(I)および上記(II)を満足すれば、どのような方法で得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液であっても良いが、上記(III)で得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液がより好適である。
【0025】
(中空球状アルミナ粒子の製造方法)
本発明の中空球状アルミナ粒子は、以下の工程1および工程2から製造される:
(工程1)上記(I)および(II)(必要に応じて上記(III))の塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で210~280℃の温度で乾燥造粒し、造粒物の揮発分を0~10%、嵩比重を0.2~0.7g/cm3に制御した乾燥造粒物を形成すること。
(工程2)工程1で得られた乾燥造粒物をアルミナ製のるつぼや匣鉢等に入れて、焼成炉において、1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて、2~8時間焼成し、α相を示す中空球状アルミナ粒子を得る。
【0026】
工程1では、塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で、210~280℃の温度で乾燥造粒氏、造粒物の揮発分を0~10%、嵩比重を0.20~0.7g/cm3に制御した乾燥造粒物を形成する。大気または不活性ガス中で乾燥造粒するに際し、不活性ガスは、希ガス(例えば、ヘリウム、ネオンまたはアルゴン)または窒素ガスがあげられる。通常は、大気中で行われる。乾燥温度は、210~280℃、好ましくは230~270℃である。210℃より少ない温度で乾燥造粒すると、乾燥物の水分量が多いため、乾燥状態で凝集物を発生しやすくなり、焼成後に独立の中空球状アルミナにならない欠点を有し、280℃を超える温度で乾燥造粒すると、塩基性乳酸アルミニウムの有機分の一部が酸化を起こし、乾燥物が茶変し、物性劣化し、焼成時に球状の形状が崩れる欠点を有する。ガス圧は、0.01MPaより小さいと圧力が不足し、球状の乾燥物が得られないため、焼成後も中空球状アルミナが得られない課題を有し、1MPaより高いと、圧力が高すぎて貫通孔が大きくなりすぎ、乾燥物が球状を保てず、焼成後も中空球状アルミナが得られなくなる欠点を有する。ガス圧は、好ましくは0.1~0.8MPa、より好ましくは0.2~0.7MPaである。
【0027】
工程1の乾燥造粒は、一般的に噴霧乾燥で行われることが多いが、噴霧乾燥にこだわらない。使用可能な乾燥造粒方法は、噴霧乾燥、流動層、噴霧凍結乾燥が挙げられる。
【0028】
工程1で得られた乾燥造粒物は、揮発分を0~10%、嵩比重を0.2~0.7g/cm3に制御する。揮発分は、10%を超えると、乾燥が不十分で、乾燥物の水分量が多いため、乾燥状態で凝集物を発生しやすくなり、焼成後に独立の中空球状アルミナにならない欠点を有する。揮発分は0であるのが好ましい。乾燥造粒物は、嵩比重0.20~0.7g/cm3、好ましくは0.25~0.65g/cm3、より好ましくは0.3~0.6g/cm3である。嵩比重が0.2g/cm3より小さいと、中空度が大きくなり、外殻部の厚みが薄くなるため、中空球状アルミナ粒子の強度が低下する欠点を有し、0.70g/cm3より大きいと、造粒時の中空度が小さくなり、外殻部の厚みが大きくなるため、変形しやすくなり、球状形状ができにくくなる欠点を有する。揮発分はエー・アンド・デイ製加熱乾式水分計MX50を用いて、105℃で30分の条件で測定する。嵩比重は、質量を体積で割った値である。本発明の実施例では、1mmの目開きの篩通しをした粉体を0.1質量%の精度で秤量した約40gの試料(M)を100mlのメスシリンダー(最小メモリ単位1ml)に入れ、表面を軽くならし、ゆるみ嵩体積(V0)を読み取り、嵩比重:M/V0(g/cm3)を算出している。揮発分は造粒時の温度と送液速度により調整することができ、嵩比重は、噴霧造粒時のエアー圧力で制御することができる。
【0029】
本発明の中空球状アルミナ粒子の製造方法の工程2では、工程1で得られた乾燥造粒物をアルミナ製のるつぼや匣鉢等に入れて、焼成炉において1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて、2~8時間焼成して、α相を示す中空球状アルミナ粒子を得る。工程1で乾燥造粒したものを1050℃以上1200℃未満の温度で、2~8時間焼成する。焼成温度が1050℃未満だと焼成が不十分になり、αアルミナ以外の結晶相が残る。一方で焼成温度が1200℃を超えると耐熱対策を施した焼成炉必要になり、生産性が悪化する。焼成時間も、2時間未満だと焼成が不十分になり、αアルミナ以外の結晶相が残る課題がある。一方で8時間を超えると生産性が悪化する課題がある。
【0030】
工程2の焼成における焼成において、るつぼ、匣鉢に入れて焼成する焼成炉は、バッチ炉、昇降炉、プッシャー炉、コンベア炉のいずれかであることが望ましい。ロータリーキルンや落下式急速焼成炉等で焼成すると焼成中の衝突で形状が崩れたり、凝集物を発生させたりして、中空球状アルミナ粒子を得られなくなる課題がある。
【0031】
工程2の焼成における雰囲気は、所定の焼成設定温度、設定時間で焼成を実施した際に有機分が消失することや所望のアルミナ結晶系が適切に形成されるのであれば、大気、窒素中、真空中、不活性ガス中等のいずれを選定しても問題ない。雰囲気が不適であると焼成中に有機分が十分に気化せず、残留炭素として粒子に残り、欠陥となることや結晶相を所望のように形成できず、欠陥になる課題がある。
【0032】
(中空球状アルミナ粒子)
本発明の中空球状アルミナ粒子は、上記の工程1および工程2により製造される。この方法で得られた中空球状アルミナ粒子は、粒度分布測定において、D50が5~50μmであり、かつD90が200μm以下であり、内部が中空であり、かつ外部と貫通孔を持ち、比表面積が1~20m2/gであり、結晶系(結晶相とも言う)がα相を示す。
【0033】
粒度分布はレーザー回折式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル社製マスターサイザー3000)で乾式測定することにより得られる。
図1には、実施例1のアルミナ粒子の粒度分布結果を示している。粒度分布において、D50は、母集団の半分がこの値より下にある直径という意味で、D90は母集団の90%がこの値より下にあるという意味である。
図1に示すように実施例1のアルミナ粒子の粒度分布はD50が6μmで、D90が100μm未満であることが確認できている。D50が5μm未満になると粉体の流動性が悪くなり、取り扱いが難しくなり、D50が50μm以上になると使用用途が狭くなる。更にD90が200μmを超えると使用用途が狭くなる。粒度分布において、本発明のアルミナ粒子は、好ましくはD50が5.5~45μmであり、より好ましくは6~35μmである。D90は好ましくは60~120μmで、より好ましくは70~90μmである。
【0034】
本発明の製造方法で得られたアルミナ粒子は、内部が中空であり、かつ外部との間に貫通孔を有するものが多い。「中空」および「貫通孔」は、用語の定義に記載されているように、完全に球状の中空を意味していないが、例えば実施例1のアルミナ粒子の電子顕微鏡写真を
図5および
図6に示しているように、かなり球状の空洞を有している場合もあるが、そうではなくいろいろな形態の空隙が1またはそれ以上ある場合も含まれる。貫通孔も必ずしも存在するわけではなく、単に内部の空隙と外部が何らかの空洞でつながっている場合も含まれる。本発明のアルミナ粒子は、「球状」も用語の定義に述べたように、完全な球状ではなく、球状に見える程度である。
【0035】
本発明の製造方法で得られた中空球状アルミナ粒子は、比表面積が1~20m2/gであり、結晶系がα相を示す。比表面積は、ある物体について単位質量当たりの表面積または単位体積当たりの表面積のことであるが、本発明では、比表面積は自動比表面積測定装置((株)島津製作所製Gemini7 2390)にてN2で測定し、BET法で解析したデータを用いる。本発明のアルミナ粒子の比表面積が、1m2/gより小さいと、比表面積が小さすぎて、分散剤等を用いた表面処理をする際に吸着サイトが少ない為、表面処理が難しくなる欠点を有し、20m2/gより大きいと、アルミナ表面にN2の吸着量が多すぎて、αアルミナとしての結晶成長が不十分である欠点を有する。本発明の中空球状アルミナ粒子の比表面積は、好ましくは3~15m2/g、より好ましくは5~13m2/gである。結晶系は、本発明の中空球状アルミナ粒子では、α型である。本発明では、アルミナ粒子の他の結晶系であるγ型等が混じることは想定していない。結晶系はX線回折装置(具体的には、(株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定したものを主として用いる。
【0036】
本発明の中空球状アルミナ粒子は、好ましくは、医薬用部外品原料規格2021における酸化アルミニウム分析において、乾燥減量が4%以下、強熱減量が6%以下であり、嵩比重が0.4~0.7g/cm3である。
【0037】
医薬用部外品原料規格2021における乾燥減量とは原料約1gをガラス製シャーレに精密天秤で量りとり(A)、105℃設定の熱風循環式乾燥機にて、2時間乾燥を行い、室温までデシケータ内で自然放冷を行い、再度精密天秤で重量を測定(B)し、以下の式(i)で計算し、4.0%以下であれば合格とする。
(B - A)/A ×100 ・・・(i)
本発明の中空球状アルミナ粒子において、乾燥減量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下である。
【0038】
医薬用部外品原料規格2021における強熱減量とは、原料約1gをアルミナ製るつぼに精密天秤で量りとり(C)、850℃設定の電気炉に投入し、30分加熱を行った後、室温まで自然放冷し、再度精密天秤で重量を量りとり(D)以下の式(ii)で計算し、6.0%以下であれば合格とする。
(C - D)/C ×100 ・・・(ii)
本発明の中空球状アルミナ粒子において、乾燥減量は、好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.0%以下である。
【0039】
本願における中空球状アルミナ粒子は、嵩比重が0.4~0.7g/cm3が好ましい。より好ましくは0.5~0.65g/cm3である。嵩比重が0.4未満になると外皮が薄くなりすぎて、中空球状アルミナ粒子として保形できない。一方、嵩比重が0.7g/cm3を超えると外皮が厚くなりすぎて、中空球状アルミナ粒子としての機能を果たさなくなる。嵩比重は、質量を体積で割った値であるが、具体的には1mmの目開きの篩通しをした粉体を0.1質量%の精度で秤量した約40gの試料(M)を100mlのメスシリンダー(最小メモリ単位1ml)に入れ、表面を軽くならし、ゆるみ嵩体積(V0)を読み取り、嵩比重:M/V0(g/cm3)を算出している。
【0040】
(実施例)
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。実施例中、特に支持しない限り、%や部などは質量に基づく。
【0041】
(実施例1)
容量10Lのジャケット付きGL(内壁をガラスライニングした)攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0042】
次に、得られた水酸化アルミニウムゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作 業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム水溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度70.2%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.005質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0043】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(造粒物の揮発分4.3%および嵩比重0.35g/cm3)をピーク焼成条件1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施し、アルミナ粒子を得た。
【0044】
得られたアルミナ粒子の粒度分布を測定し、D50およびD90を決定し、表1に記載した。粒度分布はレーザー回折式粒度分布計(マルバーン・パナリティカル社製マスターサイザー3000)で乾式測定した。
図1に実施例1の粒度分布結果を示した。D50は、母集団の半分がこの値より下にある直径という意味で、D90は母集団の90%がこの値より下にあるという意味である。
図1に示すように実施例1のアルミナ粒子の粒度分布はD50が6μmで、D90が100μm未満であることが確認できた。
【0045】
表1には、塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒物の揮発分および嵩比重を記載した。揮発分はエー・アンド・デイ製加熱乾式水分計MX50を用いて、105℃で30分の条件で測定した。嵩比重は、下記のアルミナ粒子の嵩比重を測定する方法と同様の方法で測定した。また、表1には、得られたアルミナ粒子の比表面積(m
2/g)、嵩比重(g/cm
3)、結晶系、乾燥減量(質量%)、強熱減量(質量%)および不純物であるナトリウム(Na)、カリウム(K),カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)および鉄(Fe)の含有量も記載した。比表面積は自動比表面積測定装置((株)島津製作所製Gemini7 2390)にてN
2で測定し、BET法で解析したデータを示す。嵩比重は、質量を体積で割った値であるが、具体的には1mmの目開きの篩通しをした粉体を0.1質量%の精度で秤量した約40gの試料(M)を100mlのメスシリンダー(最小メモリ単位1ml)に入れ、表面を軽くならし、ゆるみ嵩体積(V
0)を読み取り、嵩比重:M/V
0(g/cm
3)を算出した。結晶系(結晶相)は、X線回折装置((株)リガク製MiniFlex)にて、Cuターゲットにてθ/2θ法で測定した結果を基に表1に記載した。
図2には実施例1で得られたアルミナ粒子の結晶系の測定結果を示した。乾燥減量および強熱減量は医薬用部外品原料規格2021の酸化アルミニウムの測定方法に準拠して実施した結果を表1に示す。Na、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量は、卓上走査電子顕微鏡(SEM:日本電子(株)製JCM-7000)を用い、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を用いて測定を実施した。
【0046】
上記実施例1のアルミナ粒子の
図2のX線回折結果より、実施例1のアルミナ粒子はαアルミナができていることが確認された。
【0047】
図4、
図5および
図6には、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子(株)製JSM-7001F)を用いて測定した実施例1のアルミナ粒子のSEM画像である。
図4は100,000倍のSEM画像であり、αアルミナの微結晶が集合して、中空球状アルミナの外皮を形成していることが確認される。
図5の実施例1のアルミナ粒子の10,000倍のSEM像より、中空球状アルミナ粒子が貫通孔を持つことが確認される。
図6に示す実施例1のアルミナ粒子の25,000倍のSEM写真より、中空球状アルミナが中空であることが確認できる。従って、実施例1で得られたアルミナ粒子は、中空球状アルミナ粒子であると、確認できた。
【0048】
(実施例2)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0049】
次に、得られた水酸化アルミニウムゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作 業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次に、マントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで、塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度70.2%、ナトリウムイオン0.01質量%、Si:0.005質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0050】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分5.2%および嵩比重0.39g/cm3)をピーク焼成条件1150℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施し、アルミナ粒子を得た。
【0051】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表1に記載した。FE-SEMの画像やX線回折画像は載せていないが、アルミナ粒子がα結晶系を有し、かつ中空球状であることを確認した。
【0052】
(実施例3)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0053】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作 業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時 間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度70.2%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.005質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0054】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度220℃、出口温度95℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分6.0%および嵩比重0.45g/cm3)をピーク焼成条件1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施し、アルミナ粒子を得た。
【0055】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表1に記載した。FE-SEM画像やX線回折画像は載せていないが、アルミナ粒子がα結晶系を有し、かつ中空球状であることを確認した。
【0056】
(実施例4)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1531.6gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量20.0重量%、Na2O換算Na量18.9%)1559.0gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0057】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは1920gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを 加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.9質量%、塩基度71.5%、ナトリウムイオン 0.05重量%、Si:0.0052質量%、Ca:0.0040質量%、Mg:0.0006質量%、Fe:0.0012質量%)を作製した。
【0058】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分4.9%および嵩比重0.42g/cm3)をピーク焼成条件1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施し、アルミナ粒子を得た。
【0059】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表1に記載した。FE-SEM画像やX線回折画像は載せていないが、アルミナ粒子がα結晶系を有し、かつ中空球状であることを確認した。
【0060】
(実施例5)
容量1Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水153.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)190.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量20.0重量%、Na2O換算Na量18.9%)155.9gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液500gを得た。
【0061】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を5回繰り返した。得られた洗浄ゲルは195gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.7g、次いで水道水156.6gを 加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で1.5時 間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.6質量%、塩基度72.4%、ナトリウムイオン0.02重量%、Si:0.0041質量%、Ca:0.0043質量%、Mg:0.0008質量%、Fe:0.0017質量%)を作製した。
【0062】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分5.7%および嵩比重0.37g/cm3)をピーク焼成条件1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施し、α相を示すアルミナ粒子を得た。
【0063】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表2に記載した。FE-SEM画像やX線回折画像は載せていないが、アルミナ粒子がα結晶系を有し、かつ中空球状であることを確認した。
【0064】
(実施例6)
容量1Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水153.1gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)190.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量20.0重量%、Na2O換算Na量18.9%)153.9g、アルミン酸カリウム粉末2gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液500gを得た。次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を5回繰り返した。得られた洗浄ゲルは195gであった。
【0065】
次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.7g、次いで水道水156.6gを加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で5時 間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度72.4%、ナトリウムイオン0.02重量%、カリウムイオン0.01重量%、Si:0.0047質量%、Ca:0.0050質量%、Mg:0.0006質量%、Fe:0.0011質量%)を作製した。
【0066】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分5.8%および嵩比重0.44g/cm3)をピーク焼成条件1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施し、アルミナ粒子を得た。
【0067】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表2に記載した。FE-SEM画像やX線回折画像は載せていないが、アルミナ粒子がα結晶系を有し、かつ中空球状であることを確認した。
【0068】
(実施例7)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3 換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0069】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作 業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで本発明の塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度70.2%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.0050質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0070】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、アトマイザーを用いて18000rpmで造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分7.4%および嵩比重0.51g/cm3)をピーク焼成条件 1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施し、中空球状アルミナ粒子を得た。
【0071】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表2に記載した。FE-SEM画像やX線回折画像は載せていないが、アルミナ粒子がα結晶系を有し、かつ中空球状であることを確認した。
【0072】
(比較例1)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0073】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを 加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度70.2%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.0050質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0074】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度150℃、出口温度65℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分12.5%および嵩比重0.90g/cm3)をピーク焼成条件1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施し、アルミナ粒子を得た。
【0075】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表3に記載した。X線回折画像は載せていないが、アルミナ粒子がα結晶系を有することを確認した。しかし、比較例1では噴霧乾燥時の乾燥が不十分であるため、焼成時に凝集体が発生し、粒度分布のD50が530μmの大きな値を示す。
【0076】
(比較例2)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0077】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作 業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを 加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度70.2%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.0050質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0078】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分4.4%および嵩比重0.45g/cm3)をピーク焼成条件800℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施して、アルミナ粒子を得た。
【0079】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表3に記載した。比較例2では最後の焼成条件が800℃で5時間であり、結晶系がγアルミナになっていて、αアルミナの単相になっていない。
【0080】
(比較例3)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウムゲル溶液5000gを得た。
【0081】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作 業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを 加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度70.2%、ナトリウムイオン 0.01重量%、Si:0.0050質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0082】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分4.3%および嵩比重0.47g/cm3)をピーク焼成条件1050℃で1時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施した。
【0083】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表3に記載した。比較例3では最後の焼成条件が1050℃で1時間であり、焼成時間が不足していて、X線回折画像は載せていないがαアルミナとγアルミナの混合アルミナになっていて、αアルミナの単相になっていない。
【0084】
(比較例4)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0085】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水152.1gを加えて30分間撹拌して255.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)34.7g、塩化カルシウム10.0g投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.2質量%、塩基度70.5%、ナトリウムイオン0.01重量%、Si:0.0050質量%、Ca:1.2質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0086】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分4.6%および嵩比重0.50g/cm3)をピーク焼成条件1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施した。
【0087】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表3に記載した。
図3に比較例4のX線回折結果を示す。
図1とピークパターンが異なっていて、アルミニウムとカルシウムの複合酸化物が生成していることが確認された。また、表3のエネルギー分散蛍光X線評価結果においても、Ca値が高く出ている。
【0088】
(比較例5)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0089】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、得られた洗浄ゲルは2430gであった。洗浄ゲルを加水して、追加洗浄なしで次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを 加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)39.7gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度70.2%、ナトリウムイオン1.7重量%、Si:0.0050質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製し、
【0090】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体(揮発分7.5%および嵩比重0.54g/cm3)をピーク焼成条件 1100℃×5時間でアルミナ坩堝に入れて焼成を実施した。
【0091】
塩基性乳酸アルミニウム水溶液の乾燥造粒体の揮発分および嵩比重を実施例1と同様に測定し表1に記載した。また、得られたアルミナ粒子の粒度分布のD50およびD90、比表面積、嵩比重、結晶系、乾燥減量および強熱減量並びにNa、K、Ca、Si、MgおよびFeの含有量を実施例1と同様に測定し、結果を表4に記載した。比較例5では塩基性乳酸アルミニウム溶液のNa量が多すぎるため、アルミナ粒子がαアルミナ単独になっていないことが確認された。
【0092】
(比較例6)
容量10Lのジャケット付きGL攪拌釜を用いて、まずジャケットに5℃の冷却水循環を行う。次に、釜内に水道水1429.8gを加えて撹拌しながら、塩化アルミニウム水溶液(Al2O3換算Al量10.0重量%、塩基度2.4%)1909.4gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al2O3換算Al量23.0重量%、Na2O換算Na量18.0%)1660.8gを同時に添加し、水酸化アルミニウ ムゲル溶液5000gを得た。
【0093】
次に、得られたゲル溶液に関して遠心脱水機を用いて脱水し、水を加水し撹拌を行う作業を7回繰り返した。得られた洗浄ゲルは2190gであった。次にマントルヒータに設置した容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを用いて、得られた洗浄ゲル103.2g、次いで水道水157.1gを加えて30分間撹拌して260.3gのスラリーを得た。次に、得られたスラリーに乳酸(乳酸90%)70gを投入し、100℃で3時間加熱撹拌を行ったのち、徐冷することで塩基性乳酸アルミニウム溶液300g(Al2O3換算Al量8.8質量%、塩基度45%、ナトリウムイオン 0.01重量%、Si:0.0050質量%、Ca:0.0048質量%、Mg:0.0007質量%、Fe:0.0015質量%)を作製した。
【0094】
得られた塩基性乳酸アルミニウム水溶液を噴霧乾燥(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、ガス圧:0.45MPaの圧量でノズルを用いて造粒乾燥を実施し、捕集した乾燥造粒体をピーク焼成条件1100℃で5時間アルミナ坩堝に入れて焼成を実施した。
【0095】
比較例6は塩基性乳酸アルミニウムの塩基度が60%~80%の下限よりも低いため、保管安定性が悪く、噴霧乾燥中に液中に結晶析出が発生し、ノズル部のつまりを発生させ、噴霧乾燥が適正にできなくなることが確認された。表4には、そのことを記載している。尚、表1~4中、「n.d.」は測定できないことを意味する。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
表1および表2に示すように、実施例1~実施例7に示す中空球状アルミナ粒子は、いずれもα-アルミナを示し、粒度分布測定においてD50が5~50μm、D90が200μm以下であることが確認された。また乾燥減量が4質量%以下、強熱減量が6質量%以下であり、嵩比重が0.4~0.7g/cm3であることが確認された。また、これらの中空球状アルミナ粒子は、エネルギー分散型蛍光X線で元素分析を行った際に、アルカリ金属元素イオン(NaおよびK)を0.005~1.2質量%の範囲で含み、Ca、Mg、SiおよびFeの濃度が検出されないことが確認された。
【0101】
表3に示すように、比較例1は噴霧乾燥時の乾燥が不十分である(揮発分が高い)ため、焼成時に凝集体が発生し、粒度分布のD50が530μmの大きな値を示すことが確認された。比較例2および比較例3は、焼成条件が適正でないため、結晶系がそれぞれγアルミナ、αアルミナ+γアルミナとなっており、αアルミナ単相になっていないことが確認された。比較例4はCaの含有量が多すぎるため、アルミニウムとカルシウムの複合酸化物が生成しており、αアルミナ単相になっていないことが確認された。表4に示すように比較例5は、Naが多すぎるために焼成した際にαアルミナと共にβアルミナが生成し、αアルミナ単相になっていないことが確認された。
【0102】
本発明は、以下の態様も提案している。
[1]
塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で、210~280℃の温度で乾燥造粒し、造粒物の揮発分を0~10%、嵩比重を0.2~0.7g/cm3に制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて2~8時間焼成し、中空球状アルミナ粒子を得る第2の工程と、からなり、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、鉄(Fe)を0~0.01質量%、カルシウム(Ca)を0~0.01質量%、マグネシウム(Mg)を0~0.01質量%およびシリコン(Si)を0~0.01質量%の量で含有し、かつアルカリ金属元素イオンを0.005~1.2質量%の量で含み、塩基度60~80%であり、アルミニウムをAl2O3換算で8~13質量%で含み、
得られた中空球状アルミナ粒子が、粒度分布測定において、D50が5~50μmであり、かつD90が200μm以下であり、内部が中空であり、かつ外部と貫通孔を持ち、比表面積が1~20m2/gであり、結晶相がα相を示すことを特徴とする中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[2]
前記中空球状アルミナ粒子は、医薬用部外品原料規格2021における酸化アルミニウム分析において、乾燥減量が4%以下、強熱減量が6%以下であり、嵩比重が0.4~0.7g/cm3であることを特徴とする[1]記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[3]
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液が、塩化アルミニウム溶液と、アルミン酸ナトリウムおよびアルミン酸カリウムのいずれかまたは両方と、水と、を混合して、水酸化アルミニウムのゲル化物を形成し、得られたゲル化物を水洗した後、水を加えて水酸化アルミニウムスラリーを得、次に乳酸を添加して反応させることによって得られることを特徴とする[1]または[2]記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[4]
前記第1の工程の乾燥造粒が、噴霧乾燥法であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
[5]
前記第2の工程の焼成が、大気、窒素または不活性ガス中若しくは真空中で行われることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の中空球状アルミナ粒子の製造方法。
【要約】
【課題】中空で球状のアルミナ粒子を、塩基性乳酸アルミニウム水溶液を用いて、造粒と焼成の2工程で容易に製造することができる方法の提供。
【解決手段】 本発明は、塩基性乳酸アルミニウム水溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で、210~280℃の温度で乾燥造粒し、造粒物の揮発分を0~10%、嵩比重を0.2~0.7g/cm
3に制御した中空の乾燥造粒物を形成する第1の工程と、
第1の工程で得られた乾燥造粒物を1050℃以上1200℃未満の温度範囲内の焼成温度にて2~8時間焼成し、中空球状アルミナ粒子を得る第2の工程と、からなり、
前記塩基性乳酸アルミニウム水溶液は、不純物が少ない特定の物であり、得られた中空球状アルミナ粒子は、粒度分布測定において、D50が5~50μmであり、かつD90が200μm以下であり、結晶相がα相を示す中空球状アルミナ粒子の製造方法を提供する。
【選択図】
図1