(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
(21)【出願番号】P 2023211298
(22)【出願日】2023-12-14
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勉
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-27115(JP,A)
【文献】特開2022-176587(JP,A)
【文献】特開2022-6847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が第1の電源の第1の電圧極性の端子に接続された第1のコイルと、一端が前記第1のコイルの他端に接続された第1の能動素子および第2の能動素子と、前記第1の電源の第2の電圧極性の端子に他端が接続された第3の能動素子および第4の能動素子と、第1のトランスを含む第1のハーフブリッジ回路と、第2のトランスを含む第2のハーフブリッジ回路と、前記第1の電源から負荷に電力を供給させ、または、前記負荷の代わりの第2の電源から前記第1の電源に電力を回生させるように前記第1の前記第1のハーフブリッジ回路および前記第2のハーフブリッジ回路を制御する制御回路とを備え、
前記第1のハーフブリッジ回路は、
一端が前記第1の能動素子の他端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の一端および前記第2のトランスの1次側巻き線の一端に接続された第5の能動素子と、
一端が前記第5の能動素子の他端に接続され、他端が前記第3の能動素子の一端に接続された第6の能動素子と、
一端が前記負荷の第1の電圧極性の端子に接続され、他端が前記第1のトランスの2次側巻き線の一端に接続された第9の能動素子と、
一端が前記第1のトランスの2次側巻き線の一端に接続され、他端が前記第2のハーフブリッジ回路に接続された第10の能動素子と、
一端が前記第5の能動素子の一端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の他端に接続された第1のコンデンサと、
一端が前記第1のトランスの1次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第6の能動素子の他端に接続された第2のコンデンサと、
一端が前記第9の能動素子の一端に接続され、他端が前記第1のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第3のコンデンサと、
一端が前記第1のトランスの2次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第10の能動素子の他端に接続された第4のコンデンサと
を備え、
前記第2のハーフブリッジ回路は、
一端が前記第2の能動素子の他端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の一端および前記第2のトランスの1次側巻き線の一端に接続された第7の能動素子と、
一端が前記第7の能動素子の他端に接続され、他端が前記第4の能動素子の一端に接続された第8の能動素子と、
一端が前記第10の能動素子のソースに接続され、他端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第11の能動素子と、
一端が前記第11の能動素子の他端に接続され、他端が前記負荷の第2の電圧極性の端子に接続された第12の能動素子と、
一端が前記第7の能動素子の一端に接続され、他端が前記第2のトランスの1次側巻き線の他端に接続された第5のコンデンサと、
一端が前記第2のトランスの1次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第8の能動素子の他端に接続された第6のコンデンサと、
一端が前記第11の能動素子の一端に接続され、他端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第7のコンデンサと、
一端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第12の能動素子の他端に接続された第8のコンデンサと
を備える電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記第1の能動素子および前記第4の能動素子を同時に一端と他端との間が導通状態となるON状態または一端と他端との間が非導通状態となるOFF状態とするように、
前記第2の能動素子および前記第3の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、
前記第5の能動素子および前記第9の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、
前記第6の能動素子および前記第10の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、
前記第7の能動素子および前記第11の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、
前記第8の能動素子および前記第12の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、
前記第6の能動素子および前記第10の能動素子と、前記第1の能動素子および前記第4の能動素子とを交互にON状態またはOFF状態とするように
制御する請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第9の能動素子の一端と前記第12の能動素子の他端との間に接続された前記負荷に前記第1の電源から電力を供給する場合、前記第1のコイルに電力を蓄積する間、前記制御回路は、
前記第1の能動素子、前記第4の能動素子、前記第5の能動素子、前記第8の能動素子、前記第9の能動素子および前記第12の能動素子をON状態とし、
前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第6の能動素子、前記第7の能動素子、前記第10の能動素子および前記第11の能動素子をOFF状態とする
ように制御する請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第9の能動素子の一端と前記第12の能動素子の他端との間に接続された前記負荷に前記第1の電源から電力を供給する場合、前記第1のコイルに電力を蓄積する間、前記制御回路は、
前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第6の能動素子、前記第7の能動素子、前記第10の能動素子および前記第11の能動素子をON状態とし、
前記第1の能動素子、前記第4の能動素子、前記第5の能動素子、前記第8の能動素子、前記第9の能動素子および前記第12の能動素子をOFF状態とする
ように制御する請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第9の能動素子の一端と前記第12の能動素子の他端との間に接続された前記負荷に前記第1の電源から電力を供給する場合、前記第1のコイルから電力を放出する間、前記制御回路は、
前記第1の能動素子、前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第4の能動素子、前記第6の能動素子、前記第8の能動素子、前記第10の能動素子および前記第12の能動素子を一端と他端との間が導通状態となるON状態とし、前記第5の能動素子、前記第7の能動素子、前記第9の能動素子および前記第11の能動素子を一端と他端との間が非導通状態となるOFF状態とするように制御する
請求項2に記載の電源装置。
【請求項6】
第1の電圧極性の端子が前記第9の能動素子の一端に接続され、第2の電圧極性の端子が前記第12の能動素子の他端に接続された前記第2の電源から前記第1の電源に電力を回生する場合、前記第1のコイルに電力を蓄積する間、前記制御回路は、
前記第1の能動素子、前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第4の能動素子、前記第6の能動素子、前記第8の能動素子、前記第10の能動素子および前記第12の能動素子を一端と他端との間が導通状態となるON状態とし、前記第5の能動素子、前記第7の能動素子、前記第9の能動素子および前記第11の能動素子を一端と他端との間が非導通状態となるOFF状態とするように制御する
請求項2に記載の電源装置。
【請求項7】
第1の電圧極性の端子が前記第9の能動素子の一端に接続され、第2の電圧極性の端子が前記第12の能動素子の他端に接続された前記第2の電源から前記第1の電源に電力を回生する場合、前記第1のコイルから電力を放出する間、前記制御回路は、
前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第6の能動素子、前記第7の能動素子、前記第10の能動素子および前記第11の能動素子をON状態とし、
前記第1の能動素子、前記第4の能動素子、前記第5の能動素子、前記第8の能動素子、前記第9の能動素子および前記第12の能動素子をOFF状態とする
ように制御する請求項2に記載の電源装置。
【請求項8】
前記第1のハーフブリッジ回路は、
前記第5の能動素子の他端と前記第1のトランスの1次側巻き線の一端との間に両端が接続された第2のコイルと、
前記第9の能動素子の他端と前記第1のトランスの2次側巻き線の一端との間に両端が接続された第4のコイルと
をさらに備え、
前記第2のハーフブリッジ回路は、
前記第7の能動素子の他端と前記第2のトランスの1次側巻き線の一端との間に両端が接続された第3のコイルと、
前記第11の能動素子の他端と前記第2のトランスの1次側巻き線の一端との間に両端が接続された第5のコイルと
をさらに備える請求項1に記載の電源装置。
【請求項9】
前記第1のハーフブリッジ回路および前記第2のハーフブリッジ回路は、電流共振ハーフブリッジ回路である
請求項8に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力された交流電力または直流電力をスイッチングし、所望の電圧の直流電力を出力するスイッチング電源装置が知られている。このようなスイッチング電源装置のうち、入力側の電力と、出力側の電力との間がトランスにより絶縁されているものは、絶縁型スイッチング電源装置と呼ばれる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なお、上記先行技術文献の開示は、本書に引用をもって組み込まれる。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0005】
特許文献1に開示された絶縁型スイッチング電源装置においては、トランスの入力側の回路にチョークコイルが用いられる。チョークコイルが電力を蓄積している状態から電力を放出する状態に切り替わるときに、チョークコイルに直列に接続されたトランスの漏れインダクタンスにより、チョークコイルから放出される電流が制限されてしまう。これにより、スイッチング素子の両端にサージ電圧が発生するので、スイッチング素子を保護するためにサージ電圧抑制回路が必要とされる。さらに、この絶縁型スイッチング電源装置において、ON状態のスイッチング素子に流れる電流の波形は矩形であり、電流の波形が正弦波状である場合に比べて、スイッチング素子に発生する電力損失は大きくなる。
【0006】
本開示の目的は、スイッチング電源装置において、スイッチング素子に加わるサージ電圧を低く抑え、スイッチング素子に発生するスイッチング損失を少なくすることに寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の視点によれば、一端が第1の電源の第1の電圧極性の端子に接続された第1のコイルと、一端が前記第1のコイルの他端に接続された第1の能動素子および第2の能動素子と、前記第1の電源の第2の電圧極性の端子に他端が接続された第3の能動素子および第4の能動素子と、第1のトランスを含む第1のハーフブリッジ回路と、第2のトランスを含む第2のハーフブリッジ回路と、前記第1の電源から負荷に電力を供給させ、または、前記負荷の代わりの第2の電源から前記第1の電源に電力を回生させるように前記第1の前記第1のハーフブリッジ回路および前記第2のハーフブリッジ回路を制御する制御回路とを備える電源装置が提供される。前記第1のハーフブリッジ回路は、一端が前記第1の能動素子の他端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の一端および前記第2のトランスの1次側巻き線の一端に接続された第5の能動素子と、一端が前記第5の能動素子の他端に接続され、他端が前記第3の能動素子の一端に接続された第6の能動素子と、一端が前記負荷の第1の電圧極性の端子に接続され、他端が前記第1のトランスの2次側巻き線の一端に接続された第9の能動素子と、一端が前記第1のトランスの2次側巻き線の一端に接続され、他端が前記第2のハーフブリッジ回路に接続された第10の能動素子と、一端が前記第5の能動素子の一端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の他端に接続された第1のコンデンサと、一端が前記第1のトランスの1次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第6の能動素子の他端に接続された第2のコンデンサと、一端が前記第9の能動素子の一端に接続され、他端が前記第1のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第3のコンデンサと、一端が前記第1のトランスの2次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第10の能動素子の他端に接続された第4のコンデンサとを備える。前記第2のハーフブリッジ回路は、一端が前記第2の能動素子の他端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の一端および前記第2のトランスの1次側巻き線の一端に接続された第7の能動素子と、一端が前記第7の能動素子の他端に接続され、他端が前記第4の能動素子の一端に接続された第8の能動素子と、一端が前記第10の能動素子のソースに接続され、他端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第11の能動素子と、一端が前記第11の能動素子の他端に接続され、他端が前記負荷の第2の電圧極性の端子に接続された第12の能動素子と、一端が前記第7の能動素子の一端に接続され、他端が前記第2のトランスの1次側巻き線の他端に接続された第5のコンデンサと、一端が前記第2のトランスの1次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第8の能動素子の他端に接続された第6のコンデンサと、一端が前記第11の能動素子の一端に接続され、他端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第7のコンデンサと、一端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第12の能動素子の他端に接続された第8のコンデンサとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の視点によれば、スイッチング電源装置において、スイッチング素子に加わるサージ電圧を低く抑え、スイッチング素子に発生するスイッチング損失を少なくすることに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、絶縁型スイッチング電源装置の構成の一例を例示する図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態にかかる絶縁型スイッチング電源装置の構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、
図2に例示した絶縁型スイッチング電源装置の動作を例示するタイミングチャートである。
【
図4A】
図4Aは、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置の一実施例を示す図であって、
図3に示した期間Aにおける各スイッチング素子のON/OFF状態を例示する図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置の一実施例を示す図であって、
図3に示した期間Bにおける各スイッチング素子のON/OFF状態を例示する図である。
【
図4C】
図4Cは、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置の一実施例を示す図であって、
図3に示した期間Cにおける各スイッチング素子のON/OFF状態を例示する図である。
【
図4D】
図4Dは、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置の一実施例を示す図であって、
図3に示した期間Dにおける各スイッチング素子のON/OFF状態を例示する図である。
【
図5】
図5は、
図4A~
図4Dに例示した絶縁型スイッチング電源装置の動作を例示するタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、
図2および
図4A~
図4Dに示した本開示の一実施例にかかる絶縁型スイッチング電源装置の変形例を例示する図である。
【
図7】
図7は、
図2および
図4A~
図4Dに示した本開示の一実施例にかかる絶縁型スイッチング電源装置の変形例を例示する図である。
【
図8】
図8は、
図2および
図4A~
図4Dに示した本開示の一実施例にかかる絶縁型スイッチング電源装置の変形例を例示する図である。
【
図9】
図9は、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置の一実施例の構成要素の全部または一部の機能を実施しうる情報処理装置の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面の参照により、本開示の実施形態が説明されるであろう。ただし、以下に説明する実施形態により本開示は限定されない。なお、
図2~
図9およびこれらの説明において、同一または対応する要素には適宜、同一の符号および記号が付されている。一方、
図1およびその説明と、
図2~
図9およびこれらの説明との間では、符号および記号は統一されていない。さらに、図面は模式的であり、各要素の寸法の関係、各要素の比率および各処理の詳細などは、実施された場合の本開示においてとは異なりうることが留意されるべきである。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係および処理の詳細などが異なる部分が含まれていることがある。
【0011】
図1は、絶縁型スイッチング電源装置1の構成の一例を例示する図である。
図1に示すように、絶縁型スイッチング電源装置1は、交流電源101に1次側の回路が接続される。1次側の回路は、コンデンサ102,133、ダイオードブリッジ110、チョークコイル120、ダイオード131、放電用パワートランジスタ132、フルブリッジ回路140、負電源ライン162および制御装置180を備える。フルブリッジ回路140は、パワートランジスタ141~144を備え、制御装置180は第1の制御回路181および第2の制御回路182を備える。絶縁型スイッチング電源装置1の1次側の回路のフルブリッジ回路140および負電源ライン162は、トランス150の1次側巻き線に接続される。
【0012】
トランス150の2次側巻き線には、2次側の回路が接続される。2次側の回路において、トランス150の2次側巻き線の両端にはダイオード171,172のアノードが接続され、2次側巻き線の中点とグラウンドとの間にはコンデンサ170およびバッテリ190の正電極が接続される。絶縁型スイッチング電源装置1は、これらの構成要素により、交流電源101を整流し、平滑化して直流電圧とし、バッテリ190を充電する。
【0013】
絶縁型スイッチング電源装置1においては、チョークコイル120に電荷として蓄積された電力が放出されるときに、トランス150の1次側の漏れインダクタンスLleakにより電流が抑制されるので、チョークコイル120の両端にサージ電圧が発生する。このサージ電圧の対策のために、絶縁型スイッチング電源装置1においては、ダイオード131、放電用パワートランジスタ132およびコンデンサ133から構成されるスナバ回路が必要とされる。さらに、スナバ回路の放電用パワートランジスタ132を制御するために第1の制御回路181が必要とされる。
【0014】
パワートランジスタ141,143またはパワートランジスタ142,144が同時にON状態になるように制御が行われると、チョークコイル120には電力が蓄積される。従って、トランス150の1次側巻き線に電力が入力されず、電力は2次側巻き線に伝達されない。このように、絶縁型スイッチング電源装置1においては、フルブリッジ回路140が電力をスイッチングするたびに、トランス150の1次側巻き線から2次側巻き線に電力が伝達されない期間が生じてしまう。このため、トランス150の1次側巻き線から2次側巻き線に伝達される電力の電流の値(電流値)のピークが大きくなり、トランス150における電力の損失が大きくなる。
【0015】
また、フルブリッジ回路140のパワートランジスタ141,142,143,144それぞれに流れる電流の波形は矩形波の一部なので、フルブリッジ回路140によるスイッチングが行われるたびに電力の損失が生じる。フルブリッジ回路140およびトランス150における電力の損失を抑えるためには、トランス150の1次側に入力する電流の波形をサイン波に近付けることが望ましい。しかしながら、このためには、フルブリッジ回路140のスイッチングをPWM(Pulse Width Modulation)制御する必要が生じ、制御装置180によるフルブリッジ回路140に対するスイッチングのための制御は高速化されなければならない。
【0016】
一方、フルブリッジ回路140のスイッチングをPWM制御すると、トランス150の2次側において得られる電力の周波数は10Hz程度と低くなるので、バッテリ190などの負荷に対して供給される電力の電圧の変動が大きくなってしまう。このため、絶縁型スイッチング電源装置1から出力される電力の電圧変動を抑えるために、絶縁型スイッチング電源装置1にDC-DCコンバータを付加し、電圧を安定化する必要が生じることがある。
【0017】
フルブリッジ回路140に含まれるダイオードおよびダイオード171,172をトランジスタなどのスイッチング素子に置換し、これらを適切に制御することにより、バッテリ190に蓄えられた電力を交流電源101に回生できる。しかしながら、この場合には、ダイオード171,172と置き換えられたスイッチング素子のスイッチング動作をハードスイッチングとする必要があり、電力の損失が大きくなる。
【0018】
[実施形態]
以下、
図2および
図3を参照して本開示の実施形態にかかる絶縁型スイッチング電源装置2を説明する。
図2は、本開示の実施形態にかかる絶縁型スイッチング電源装置2の一構成例を例示する図である。
図3は、
図2に例示した絶縁型スイッチング電源装置2の動作を例示するタイミングチャートである。なお、本開示にかかる実施形態の一実施例は、
図4A~
図4Dおよび
図5をさらに参照して後述される。
図3などにおいては、電力はエネルギーと記載される。
図3の上部に示された文字A~Dは、それぞれ絶縁型スイッチング電源装置2における制御の期間を示す。
【0019】
図2に例示するように、絶縁型スイッチング電源装置2は、直流の電力が入力されて直流の電力を出力するDC-DCコンバータである。ただし、適宜の変更を加えることにより、絶縁型スイッチング電源装置2をAC―DCコンバータとすることは、下記一実施例に示すように当業者にとって自明のことであろう。
【0020】
以下の説明においては、スイッチング素子がnチャネルエンハンスメント型パワーMOSFETである場合が具体例とされる。ただし、絶縁型スイッチング電源装置2において、電源の極性を反対にすることによりpチャネルエンハンスメント型パワーMOSFETが用いられうることは当業者にとって自明であろう。また、絶縁型スイッチング電源装置2に適宜の変更を加えることにより、スイッチング素子としてバイポーラトランジスタおよびIGBTなど、MOSFET以外の任意の種類の能動素子が使用可能であることは当業者にとって自明であろう。
【0021】
まず、絶縁型スイッチング電源装置2の構成の一例を説明する。
図2に例示するように、絶縁型スイッチング電源装置2は、チョークコイルL1、スイッチング素子Q5,Q8,Q9,Q12、電流共振ハーフブリッジ回路20,22、力率改善/インバータ制御回路(不図示)および周波数制御回路(不図示)を備える。電流共振ハーフブリッジ回路20は、スイッチング素子Q6,Q7,Q13,Q14、コンデンサC1,C2,C5,C6、チョークコイルL2,L4およびトランスT1から構成される。電流共振ハーフブリッジ回路22は、スイッチング素子Q10,Q11,Q15,Q16、コンデンサC3,C4,C7,C8、チョークコイルL3,L5およびトランスT2から構成される。
【0022】
絶縁型スイッチング電源装置2に含まれるスイッチング素子Q5~Q12は、力率改善/インバータ制御回路46による制御に応じて、それぞれON状態(ドレインとソースとの間が導通した状態)またはOFF状態(ドレインとソースとの間が非導通になった状態)となる。
【0023】
絶縁型スイッチング電源装置2の直流電源Ei(第1の電源)の側(1次側)の回路は直流電源Eiの正電圧端子および負電圧端子と、トランスT1,T2の1次側との間に接続される。1次側の回路は、チョークコイルL1~L3と、コンデンサC1~C4と、スイッチング素子Q5~Q12と、トランスT1,T2の1次側巻き線とを備える。なお、絶縁型スイッチング電源装置2などの説明においては、磁気的に電力を蓄積する素子は「チョークコイル」と記載されるが、一般的には単に「コイル」とも呼ばれる。
【0024】
チョークコイルL1の一端は、直流電源Eiの正電圧端子に接続される。チョークコイルL1の他端は、電流共振ハーフブリッジ回路20のスイッチング素子Q5のドレイン(一端)および電流共振ハーフブリッジ回路22のスイッチング素子Q9のドレインに接続される。
【0025】
互いに接続されたスイッチング素子Q5(第1の能動素子)のソース(他端)およびスイッチング素子Q6(第5の能動素子)のドレインは第1のノードn1を形成する。ノードn1はコンデンサC1の一端に接続される。互いに接続されたスイッチング素子Q7(第6の能動素子)のソースおよびスイッチング素子Q8のドレインは第2のノードn2を形成する。ノードn2には、コンデンサC2の他端が接続される。
【0026】
互いに接続されたスイッチング素子Q6のソースおよびスイッチング素子Q7のドレインは第3のノードn3を形成する。ノードn3には、チョークコイルL2を介してトランスT1の1次側巻き線の一端が接続される。互いに接続されたコンデンサC1の他端およびコンデンサC2の一端は第4のノードn4を形成する。ノードn4は、トランスT1の1次側巻き線の他端に接続される。
【0027】
互いに接続されたスイッチング素子Q9(第2のスイッチング素子)のソースおよびスイッチング素子Q10(第7の能動素子)のドレインは第5のノードn5を形成する。ノードn5は、コンデンサC3の一端に接続される。互いに接続されたスイッチング素子Q11(第8の能動素子)のソースおよびスイッチング素子Q12(第4の能動素子)のドレインは第6のノードn6を形成する。ノードn6はコンデンサC4の他端に接続される。
【0028】
互いに接続されたスイッチング素子Q10のソースおよびスイッチング素子Q11のドレインは第7のノードn7を形成する。ノードn7はチョークコイルL3を介してトランスT2の1次側巻き線の一端に接続される。互いに接続されたコンデンサC3の他端およびコンデンサC4の一端は第8のノードn8を形成する。ノードn8はトランスT2の1次側巻き線の他端に接続される。
【0029】
絶縁型スイッチング電源装置2の負荷LoまたはバッテリBAT(第2の電源)の側(2次側)の回路はトランスT1,T2の2次側と負荷LoまたはバッテリBATとの間に接続される。2次側の回路は、トランスT1,T2の2次側巻き線と、チョークコイルL4,L5と、コンデンサC5~C8と、スイッチング素子Q13~Q16とを備える。なお、負荷LoまたはバッテリBATの正電圧端子(+;第1の電圧極性)と負電圧端子(―;第2の電圧極性)との間にはコンデンサC9が接続されうる。
【0030】
コンデンサC13のドレインおよびコンデンサC5の一端は、コンデンサC9の一端および負荷LoまたはバッテリBATの正電圧端子に接続される。互いに接続されたスイッチング素子Q13のソースおよびスイッチング素子Q14のドレインは第9のノードn9を形成する。ノードn9は、チョークコイルL4を介してトランスT1の2次側巻き線の一端に接続される。
【0031】
互いに接続されたコンデンサC5の他端およびコンデンサC6の一端は第10のノードn10を形成する。ノードn10は、トランスT1の2次側巻き線の他端に接続される。互いに接続されたスイッチング素子Q14のソースおよびコンデンサC6の他端は、第11のノードn11を形成する。ノードn11は電流共振ハーフブリッジ回路22に接続される。
【0032】
スイッチング素子Q15のドレインおよびコンデンサC7の一端はノードn11に接続される。互いに接続されたスイッチング素子Q15のソースおよびスイッチング素子Q16のドレインは第12のノードn12を形成する。ノードn12はチョークコイルL5を介してトランスT2の2次側巻き線の一端に接続される。互いに接続されたコンデンサC7の他端およびコンデンサC8のドレインは第13のノードn13を形成する。ノードn13はトランスT2の2次側巻き線の他端に接続される。スイッチング素子Q16のソースおよびコンデンサC8の他端は、コンデンサC9の他端および負荷LoまたはバッテリBATの負電圧端子に接続される。
【0033】
以下、
図2および
図3を参照して絶縁型スイッチング電源装置2が直流電源Eiから電気機器などの負荷Loに電力を供給する場合の動作を説明する。なお、この説明においては、負荷Loの両端子の極性は問題とされない。
【0034】
図3に示すように、スイッチング素子Q5,Q12は、力率改善/インバータ制御回路(
図2において不図示)により同時にON状態またはOFF状態になるように制御される。スイッチング素子Q6,Q13は、力率改善/インバータ制御回路により同時にON状態またはOFF状態になるように制御される。スイッチング素子Q7,Q14は、力率改善/インバータ制御回路により同時にON状態またはOFF状態になるように制御される。スイッチング素子Q8,Q9は、力率改善/インバータ制御回路により同時にON状態またはOFF状態になるように制御される。スイッチング素子Q10,Q15は、力率改善/インバータ制御回路により同時にON状態またはOFF状態になるように制御される。スイッチング素子Q11,Q16は、力率改善/インバータ制御回路により同時にON状態またはOFF状態になるように制御される。一方、力率改善/インバータ制御回路によりスイッチング素子Q6,Q13と、スイッチング素子Q7,Q14とは交互にON状態またはOFF状態になるように制御される。
【0035】
まず、直流電源Eiから負荷Loに電力を供給する場合の絶縁型スイッチング電源装置2の動作を説明する。直流電源Eiから負荷Loに電力を供給する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Aにあると、力率改善/インバータ制御回路は、スイッチング素子Q1~Q4に整流を行わせるための制御を行い、さらに、スイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、絶縁型スイッチング電源装置2のスイッチング素子Q5,Q6,Q11,Q12,Q13,Q16はON状態とされ、スイッチング素子Q7,Q8,Q9,Q10,Q14,Q15はOFF状態とされる(
図4Aも参照のこと)。
【0036】
期間Aにおいて、電流は、直流電源Eiの正電圧端子から、チョークコイルL1、スイッチング素子Q5,Q6、スイッチング素子Q11,Q12を介して直流電源Ei負電圧端子に流れる。これにより、チョークコイルL1の一端には直流電源Eiの正電圧端子と同等の電圧が印加されて電流値Iinの電流が流れ、チョークコイルL1は電力を蓄積する。
【0037】
また、コンデンサC1の両端の間には、スイッチング素子Q6、チョークコイルL2およびトランスT1の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC1に蓄積されていた電力は、トランスT1の1次側巻き線から2次側巻き線に伝達される。伝達された電力は、チョークコイルL4、スイッチング素子Q13を介してコンデンサC5,C9に電荷として蓄積され、負荷Loに供給される。一方、コンデンサC4の両端の間には、トランスT2の1次側巻き線、チョークコイルL3およびスイッチング素子Q11,Q12を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC4に蓄積されていた電力はトランスT2の2次側巻き線に伝達される。伝達された電力は、さらに、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q16を介してコンデンサC8,C9に蓄積され、負荷Loに供給される。
【0038】
直流電源Eiから負荷Loに電力を供給する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Aから期間Bに移行すると、
図3に示すように、力率改善/インバータ制御回路はQ5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q5,Q6,Q8,Q9,Q10,Q12,Q13,Q15はON状態とされ、スイッチング素子Q7,Q11,Q14,Q16はOFF状態とされる。つまり、スイッチング素子Q8,Q9,Q10,Q15はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q11,Q16はON状態からOFF状態とされる。
【0039】
チョークコイルL1の他端と直流電源Eiの負電圧端子とは、スイッチング素子Q5、コンデンサC1,C2およびスイッチング素子Q8を介して接続され、これらには電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に蓄積されていた電力がコンデンサC1に蓄積される。同様に、チョークコイルL1の他端と直流電源Eiの負電圧端子とは、スイッチング素子Q9、コンデンサC3,C4およびスイッチング素子Q12を介して接続され、これらには電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に蓄積されていた電力がコンデンサC3に蓄積される。以上説明したように、期間AにおいてチョークコイルL1に蓄積された電力は期間Bにおいて放出され、コンデンサC1,C3に蓄積される。
【0040】
コンデンサC1の両端の間には、スイッチング素子Q6、チョークコイルL2およびトランスT1の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC1に蓄積された電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。さらに、トランスT1の2次側巻き線に伝達された電力は、チョークコイルL4およびスイッチング素子Q13を介してコンデンサC5に蓄積される。コンデンサC6,C7,C8には既に電力が蓄積されており、蓄積された電力により、コンデンサC5の両端の電圧差は、コンデンサC6,C7,C8の両端の電圧差と同じになる。従って、コンデンサC5に電力が蓄積されると、この電力は、コンデンサC5、C6,C7,C8からコンデンサC9および負荷Loに供給される。
【0041】
また、コンデンサC3の両端の間には、スイッチング素子Q10、チョークコイルL3およびトランスT2の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC3に蓄積された電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。さらに、トランスT1の2次側巻き線に伝達された電力は、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q15を介してコンデンサC7に蓄積される。コンデンサC5,C6,C8には既に電力が蓄積されており、蓄積された電力により、コンデンサC7の両端の電圧差はコンデンサC5,C6,C8の両端の電圧差と同じになる。従って、コンデンサC7に電力が蓄積されると、この電力は、コンデンサC5、C6,C7,C8からコンデンサC9および負荷Loに供給される。
【0042】
直流電源Eiから負荷Loに電力を供給する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Bから期間Cに移行すると、力率改善/インバータ制御回路はQ5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q7,Q8,Q9,Q10,Q14,Q15,Q16はON状態となり、スイッチング素子Q5,Q6,Q10,Q11,Q12,Q13はOFF状態となる。つまり、スイッチング素子Q7,Q14はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q6,Q13,Q5,Q12はON状態からOFF状態とされる(
図4Cも参照のこと)。チョークコイルL1は、スイッチング素子Q6,Q6,Q11,Q12を介して直流電源Eiの負電圧端子と直流的に接続され、チョークコイルL1に電流値Iinの電流が流れ、チョークコイルL1には電力が蓄積される。
【0043】
コンデンサC2の一端と他端との間には、トランスT1の1次側巻き線、チョークコイルL2、スイッチング素子Q7を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC2に蓄積されていた電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。伝達された電力は、コンデンサC6、スイッチング素子Q14、チョークコイルL4を介してコンデンサC6に蓄積される。コンデンサC5,C7,C8には既に電力が蓄積されており、蓄積された電力によりコンデンサC6の両端の電圧差は、コンデンサC5,C7,C8の両端の電圧差と同じになる。従って、コンデンサC6に電力が蓄積されると、この電力は、コンデンサC5、C6,C7,C8からコンデンサC9および負荷Loに供給される。
【0044】
コンデンサC3の一端と他端との間には、スイッチング素子Q10、チョークコイルL3およびトランスT2の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC3に蓄積されていた電力はトランスT2の2次側巻き線に伝達される。これにより、伝達された電力は、トランスT2の2次側巻き線からチョークコイルL5、スイッチング素子Q15を介してコンデンサC7にされる。コンデンサC5、C6、C8には既に電力が蓄積されており、蓄積された電力によりコンデンサC7の両端の電圧差はコンデンサC5、C6、C8の両端の電圧差と同じになる。従って、コンデンサC7に電力が蓄積されると、この電力は、コンデンサC5、C6,C7,C8からコンデンサC9および負荷Loに供給される。
【0045】
直流電源Eiから負荷Loに電力を供給する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Cから期間Dに移行すると、力率改善/インバータ制御回路はQ5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q5,Q7,Q8,Q9,Q11,Q14,Q16はON状態とされ、Q6,Q10,Q13,Q15はOFF状態とされる。つまり、スイッチング素子Q5,Q11,Q12,Q16はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q10,Q15はON状態からOFF状態とされる(
図4Dも参照のこと)。
【0046】
チョークコイルL1は直流電源Eiの負電圧端子から直流的に切り離される。一方、チョークコイルL1の他端と直流電源Eiの負電圧端子とは、スイッチング素子Q5、コンデンサC1,C2およびスイッチング素子Q8を介して接続され、これらに電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に蓄積されていた電力がコンデンサC2に蓄積される。
【0047】
同様に、チョークコイルL1の他端と直流電源Eiの負電圧端子とは、スイッチング素子Q9、コンデンサC3,C4およびスイッチング素子Q12を介して接続され、これらに電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に蓄積されていた電力がコンデンサC3に蓄積される。以上説明したように、期間AにおいてチョークコイルL1に蓄積された電力は期間Bにおいて放出され、コンデンサC1,C3に蓄積される。
【0048】
コンデンサC1の一端と他端との間に、スイッチング素子Q6、チョークコイルL2およびトランスT1の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC3に蓄積された電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。さらに、トランスT1の2次側巻き線に伝達された電力は、チョークコイルL4およびスイッチング素子Q13を介してコンデンサC5,C9に蓄積され、負荷Loに供給される。
【0049】
また、コンデンサC3の一端と他端との間には、スイッチング素子Q10、チョークコイルL3およびトランスT2の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC3に蓄積された電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。さらに、トランスT1の2次側巻き線に伝達された電力は、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q15を介してコンデンサC7,C9に蓄積され、負荷Loに供給される。
【0050】
絶縁型スイッチング電源装置2は、以上説明した期間A~Dにおける動作を繰り返すことにより、直流電源Eiから負荷Loに電力を供給する。
【0051】
図3に示した絶縁型スイッチング電源装置2の動作によれば、チョークコイルL1からコンデンサC1,C2,C3,C4に制限なしに電流が流れ、電荷として蓄積される。従って、チョークコイルL1の両端におけるサージ電圧の発生が抑制され、サージ電圧抑制回路は不要とされる。
【0052】
上述した電流共振ハーフブリッジ回路20において、スイッチング素子Q6,Q7は交互にデューティ比50%でON状態およびOFF状態とされるように制御されうる。このような制御により、スイッチング素子Q6,Q7は両方とも同時にON状態とされることはない。また、上述した電流共振ハーフブリッジ回路22において、スイッチング素子Q10,Q11もまた、交互にデューティ比50%でON状態およびOFF状態とされるように制御され、これらの両方が同時にON状態とされることはない。
【0053】
このような制御により、スイッチング素子Q10,Q11は両方とも同時にON状態とされたりOFF状態とされたりすることはない。上述したスイッチング素子Q6,Q7,Q10,Q11に対する制御により、直流電源Eiから負荷Loへの電力の供給が最適化され、絶縁型スイッチング電源装置2の効率が向上し、負荷Loに生じる電圧値Voが安定する。
【0054】
さらに、絶縁型スイッチング電源装置2においては、コンデンサC1,C2,C5,C6、チョークコイルL2、トランスT1およびチョークコイルL4は共振回路を形成する。また、コンデンサC3,C4,C7,C8、チョークコイルL3、トランスT2およびチョークコイルL5、コンデンサC7、C8は共振回路を形成する。これらの共振回路の共振周波数を一致させ、絶縁型スイッチング電源装置2におけるスイッチング周波数を、この共振周波数に合わせることにより、これらの共振回路を流れる電流の波形は正弦波状になる。
【0055】
従って、スイッチング素子Q6,Q7,Q10,Q11を、電流共振ハーフブリッジ回路20,22に形成された共振回路の共振周波数でスイッチングすると、これらのスイッチング素子を流れる電流の波形もまた正弦波状となり、これらの素子におけるスイッチングに起因する損失が低減される。一方、スイッチング素子Q6,Q7,Q10,Q11を、これらの共振回路から大きく離れた周波数でスイッチングすると、これらのスイッチング素子を流れる電流の波形は矩形波状となり、これらの素子におけるスイッチングに起因する損失は大きくなる。以上説明したように、スイッチング素子それぞれをON状態またはOFF状態とするスイッチング周波数を、電流共振ハーフブリッジ回路20,22に形成された共振回路の共振周波数とすることにより、絶縁型スイッチング電源装置2の効率がさらに向上し、負荷Loに生じる電圧値Voもさらに安定する。
【0056】
次に、
図2および
図3を参照して、電力を供給しうるバッテリBATから電力を直流電源Ei側に回生する場合の絶縁型スイッチング電源装置2の動作を説明する。なお、
図2に示すように、この説明においては、負荷Loの代わりに、例えば充放電可能なバッテリBATが絶縁型スイッチング電源装置2の2次側の回路に接続される。
【0057】
バッテリBATの一端は正電圧端子(+)であり電流共振ハーフブリッジ回路20のスイッチング素子Q13のドレインおよびコンデンサC5の一端に接続される。バッテリBATの他端は負電圧端子(―)であり、スイッチング素子Q16のソースおよびコンデンサC8の他端に接続される。例えば、バッテリBATは、直流電源Eiから絶縁型スイッチング電源装置2により電力を供給されて充電される。なお、
図3に示すように、チョークコイルL1は、期間Aが始まるより前に電力を蓄積している。
【0058】
バッテリBATから直流電源Eiに電力を供給して回生する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Aにあると、力率改善/インバータ制御回路はスイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、絶縁型スイッチング電源装置2のスイッチング素子Q5,Q6,Q11,Q12,Q13,Q16はON状態とされ、スイッチング素子Q7,Q8,Q9,Q10,Q14,Q15はOFF状態とされる(
図4Aも参照のこと)。
【0059】
バッテリBATの正電圧端子から負電圧端子に、スイッチング素子Q13、チョークコイルL4、トランスT1の2次側巻き線、コンデンサC6,C7、トランスT2の2次側巻き線、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q16を介して電流が流れる。これにより、トランスT1の2次側巻き線から1次側巻き線に、トランスT1の1次側巻き線数と2次側巻き線数の比に応じた電圧の電力が伝達される。同様に、トランスT2の2次側巻き線から1次側巻き線に、トランスT2の1次側巻き線数と2次側巻き線数の比に応じた電圧の電力が伝達される。
【0060】
トランスT1の1次側巻き線に伝達された電力はチョークコイルL2およびスイッチング素子Q6を介してコンデンサC1に蓄積される。また、トランスT2の1次側巻き線に伝達された電力はチョークコイルL3およびスイッチング素子Q11を介してコンデンサC4に蓄積される。
【0061】
上述したように、チョークコイルL1は期間Aより前に電力を蓄積しており、チョークコイルL1の一端と他端との間には、直流電源Eiの正電圧端子、直流電源Eiの負電圧端子、スイッチング素子Q5,Q6,Q11,Q12を介して電流が流れる。以上説明した絶縁型スイッチング電源装置2の動作により、チョークコイルL1に蓄積されていた電力が放出されて直流電源Eiに供給され、回生される。
【0062】
バッテリBATから直流電源Eiに電力を供給して回生する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Aから期間Bに移行すると、力率改善/インバータ制御回路はスイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q5,Q6,Q8,Q9,Q10,Q12,Q13,Q15はON状態とされ、スイッチング素子Q7,Q11,Q14,Q16はOFF状態とされる。つまり、スイッチング素子Q8,Q9,Q10,Q15はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q11,Q16はON状態からOFF状態とされる(
図4Bも参照のこと)。
【0063】
バッテリBATの正電圧端子から、スイッチング素子Q13、チョークコイルL4、トランスT1の2次側巻き線、コンデンサC6、スイッチング素子Q15、チョークコイルL15、トランスT2の2次側巻き線およびコンデンサC8を介してバッテリBATの負電圧端子に電流が流れる。トランスT1の1次側には、トランスT1の1次側巻き線数と2次側巻き線数との比に応じた電圧の電力が伝達される。
【0064】
伝達された電力は、チョークコイルL2およびスイッチング素子Q6を介してコンデンサC1に蓄積される。トランスT2の1次側には、トランスT2の1次側巻き線数と2次側巻き線数との比に応じた電圧の電力が伝達される。伝達された電力は、チョークコイルL3およびスイッチング素子Q10を介してコンデンサC3に蓄積される。
【0065】
コンデンサC1の一端と他端との間には、スイッチング素子Q5、チョークコイルL1、直流電源Eiの正電圧端子、直流電源Eiの負電圧端子、スイッチング素子Q8およびコンデンサC2を介して電流が流れる。また、コンデンサC3の一端と他端との間には、スイッチング素子Q9、チョークコイルL1、直流電源Eiの正電圧端子、直流電源Eiの負電圧端子、スイッチング素子Q12およびコンデンサC4を介して電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に電流が流れ、チョークコイルL1に電力が蓄積されるとともに、コンデンサC1,C3に蓄積された電力が直流電源Eiに供給され、回生される。
【0066】
バッテリBATから直流電源Eiに電力を供給して回生する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Bから期間Cに移行すると、力率改善/インバータ制御回路はスイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q7,Q8,Q9,Q10,Q14,Q15はON状態となり、スイッチング素子Q5,Q6,Q10,Q11,Q12,Q13はOFF状態となる。つまり、スイッチング素子Q7,Q14はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q6,Q13,Q5,Q12はON状態からOFF状態とされる(
図4Cも参照のこと)。
【0067】
バッテリBATの正電圧端子からコンデンサC3、トランスT1の2次側巻き線、チョークコイルL4、スイッチング素子Q14,Q15、チョークコイルL5、トランスT2の2次側巻き線およびスイッチング素子Q8を介してバッテリBATの負電圧端子に電流が流れる。これにより、トランスT1の2次側巻き線およびトランスT2の2次側巻き線から、トランスT1の1次側巻き線およびトランスT2の1次側巻き線に、トランスT1,T2の1次側巻き線数と2次側巻き線数との比に応じた電圧の電力が伝達される。
【0068】
トランスT1の1次側巻き線において、コンデンサC2、スイッチング素子Q7およびチョークコイルL2に電流が流れ、トランスT1の1次側巻き線に伝達された電力はコンデンサC2に蓄積される。また、トランスT2の1次側巻き線において、チョークコイルL3、スイッチング素子Q10およびコンデンサC3に電流が流れ、トランスT2の1次側巻き線に伝達された電力は、コンデンサC3に蓄積される。
【0069】
チョークコイルL1の一端と他端との間には、直流電源Eiの正電圧端子、直流電源Eiの負電圧端子、スイッチング素子Q4、Q7,Q8,Q9,Q10を介して電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に蓄積されていた電力が放出され、直流電源Eiに供給されて回生される。
【0070】
バッテリBATから直流電源Eiに電力を供給して回生する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Cから期間Dに移行すると、力率改善/インバータ制御回路はスイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q5,Q7,Q8,Q9,Q11,Q14,Q16はON状態とされ、Q6,Q10,Q13,Q15はOFF状態とされる。つまり、スイッチング素子Q5,Q11,Q12,Q16はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q10,Q15はON状態からOFF状態とされる(
図4Dも参照のこと)。
【0071】
バッテリBATの正電圧端子から、コンデンサC5、トランスT1の2次側巻き線、チョークコイルL4、スイッチング素子Q14、コンデンサC7、トランスT2の2次巻き線、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q16を介してバッテリBATの負電圧端子に電流が流れる。これにより、トランスT1の2次側巻き線およびトランスT2の2次側巻き線から、トランスT1の1次側巻き線およびトランスT2の1次側巻き線に、トランスT1,T2の1次側巻き線数と2次側巻き線数との比に応じた電圧の電力が伝達される。
【0072】
さらに、トランスT1の1次側巻き線の他端からコンデンサC2、スイッチング素子Q7およびチョークコイルL2を介してトランスT1の1次側巻き線の一端まで電流が流れ、コンデンサC2に電力が蓄積される。また、トランスT2の1次側巻き線の他端から、コンデンサC4、スイッチング素子Q11およびチョークコイルL3を介してトランスT1の1次側巻き線の一端まで電流が流れ、コンデンサC4に電力が蓄積される。
【0073】
以上説明したようにコンデンサC1,C2,C3,C4に電力が蓄積され、コンデンサC1,C2,C3,C4に蓄積された電力により、スイッチング素子Q5,Q8,Q9,Q12、チョークコイルL1、直流電源Eiの正電圧端子、直流電源Eiの負電圧端子およびスイッチング素子Q8,Q12の間に電流が流れる。これにより、バッテリBATから電力が直流電源Eiに供給され、回生されるとともに、チョークコイルL1に電力が蓄積される。
【0074】
絶縁型スイッチング電源装置2は、以上説明した期間A~Dにおける動作を繰り返すことにより、バッテリBATに蓄積された電圧値Voの電力を、直流電源Eiに供給し、回生する。
【0075】
なお、
図3に示した絶縁型スイッチング電源装置2の動作においては、制御により電流共振ハーフブリッジ回路20のスイッチング素子Q5,Q6は、それぞれ交互にデューティ比50%でON状態またはOFF状態とされ、これらの両方が同時にON状態にならない。同様に、電流共振ハーフブリッジ回路22のスイッチング素子Q10,Q11は、交互にデューティ比50%でON状態またはOFF状態とされ、これらの両方が同時にON状態にならない。従って、絶縁型スイッチング電源装置2においては、スイッチング素子Q5,Q6の両方がON状態になった場合に生じる電力の損失、および、スイッチング素子Q10,Q11の両方がON状態になった場合に生じる電力の損失は生じない。従って、絶縁型スイッチング電源装置2において発生する損失が低減される。
【0076】
[実施例]
以下、
図4A~
図4Dおよび
図5をさらに参照して、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置3の一実施例を説明する。
図4Aは、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置3の一実施例を例示する図であって、
図3に示した期間Aにおける各スイッチング素子のON/OFF状態を例示する図である。
図4Bは、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置3の一実施例を示す図であって、
図3に示した期間Bにおける各スイッチング素子のON/OFF状態を例示する図である。
図4Cは、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置3の一実施例を示す図であって、
図3に示した期間Cにおける各スイッチング素子のON/OFF状態を例示する図である。
図4Dは、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置3の一実施例を示す図であって、
図3に示した期間Dにおける各スイッチング素子のON/OFF状態を例示する図である。
図5は、
図4A~
図4Dに例示した絶縁型スイッチング電源装置3の動作を例示するタイミングチャートである。
図4A~
図4Dに示すように、絶縁型スイッチング電源装置3の電流共振ハーフブリッジ回路20,22は、直流電源Eiの代わりに全波整流回路40に接続される。さらに、絶縁型スイッチング電源装置3は、力率改善/インバータ制御回路46、周波数制御回路44および電流検出回路を備える。
【0077】
全波整流回路40は、交流電源Viに接続され、交流電源Viから供給される交流電力を全波整流するブリッジを構成するスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4を備える。全波整流回路40において、スイッチング素子Q1のソースおよびスイッチング素子Q2のドレインは交流電源Viの一端に接続され、スイッチング素子Q3のソースおよびスイッチング素子Q4のドレインは交流電源Viの他端に接続される。スイッチング素子Q1,Q3のドレインはチョークコイルL1の一端に接続される。スイッチング素子Q2,Q4のソースは、電流共振ハーフブリッジ回路20のスイッチング素子Q8および電流共振ハーフブリッジ回路22のスイッチング素子Q12のソースに接続される。
【0078】
周波数制御回路44は、負荷LoまたはバッテリBATの正電圧端子の電圧値Voが規定された値になるように基準周波数信号fswの周波数を調整し、力率改善/インバータ制御回路46に出力する。
【0079】
力率改善/インバータ制御回路46は、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4それぞれのゲートに制御信号(不図示)を出力し、スイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4それぞれを、
図5に示すようにON状態またはOFF状態とする。力率改善/インバータ制御回路46には、交流電源Viの両端の電圧値が入力される(不図示)。力率改善/インバータ制御回路46は、交流電源Viの一端が正電圧であり、他端が負電圧である場合に、スイッチング素子Q1,Q4をON状態とし、スイッチング素子Q2,Q3をOFF状態とする。また、交流電源Viの一端が負電圧であり、他端が正電圧である場合に、スイッチング素子Q2,Q3をON状態とし、スイッチング素子Q1,Q4をOFF状態とする。力率改善/インバータ制御回路46は、全波整流回路40に対してこのような制御を行うことにより、全波整流回路40に交流電源Viから供給された交流電力の全波整流を行わせる。このような力率改善/インバータ制御回路46の制御の結果、全波整流回路40から出力される電力の電圧の波形は、正弦波の電源電圧の負電圧の部分を正電圧に折り返した全波整流波形となる。
【0080】
力率改善/インバータ制御回路46には、上述した基準周波数信号fswおよび交流電源Viの両端の電圧値に加え、全波整流回路40により整流された電力の電圧値、電流検出回路により検出されたスイッチング素子Q2,Q4のソースとスイッチング素子Q8,Q12との間を流れる電流値が入力される。
【0081】
また、力率改善/インバータ制御回路46には、スイッチング素子Q2,Q4のソースとスイッチング素子Q8,Q12のソースとの間を流れる電流値が入力される。スイッチング素子Q2,Q4のソースとスイッチング素子Q8,Q12との間を流れる電流の値は、チョークコイルL1に流れる電流値Iinに等しい。さらに、力率改善/インバータ制御回路46には、コンデンサC1の電圧値Vc1とコンデンサC2の電圧値Vc2との加算値(Vc1+Vc2)、および、コンデンサC3の電圧値Vc3とコンデンサC4の電圧値Vc4との加算値(Vc3+Vc4)が入力される。
【0082】
力率改善/インバータ制御回路46は、これらの入力に基づいて、電流共振ハーフブリッジ回路20,22に含まれるスイッチング素子Q5~Q16それぞれのゲートに対して制御信号Q5G~Q16Gそれぞれを出力する。力率改善/インバータ制御回路46は、制御信号Q5G~Q16Gによりスイッチング素子Q5~Q16それぞれをON状態またはOFF状態とし、基準周波数信号fswの周波数をPWM制御のスイッチング周波数とするスイッチングを行わせ、交流電源Viから供給された電力を、電圧値Voの電力に変換して負荷LoまたはバッテリBATに供給する。
【0083】
具体的には、力率改善/インバータ制御回路46は、電流共振ハーフブリッジ回路20,22に含まれるスイッチング素子Q5~Q16を制御し、チョークコイルL1に流れる電流の波形が、全波整流回路40の全波整流電力の電圧の波形と同じになるようにし、負荷LoまたはバッテリBATに供給される電力の力率を改善する。また、力率改善/インバータ制御回路46は、入力された加算値(Vc1+Vc2),(Vc3+Vc4)が、予め決められた値(既定値)となるように安定化する。力率改善のための制御ループは数kHz程度であるのに対して、加算値(Vc1+Vc2),(Vc3+Vc4)に対する制御ループの周波数は10Hz程度と低い。このように、加算値(Vc1+Vc2),(Vc3+Vc4)を安定化すると、電流共振ハーフブリッジ回路20,22全体としての動作が安定する。
【0084】
以下、絶縁型スイッチング電源装置3の動作を説明する。なお、
図3を参照して説明する絶縁型スイッチング電源装置3の動作は、直流電源Eiを全波整流回路40に置換した場合の絶縁型スイッチング電源装置2(
図2)の動作と同じである。
【0085】
図5に示すように、力率改善/インバータ制御回路46は、基準周波数信号fswに同期してスイッチング素子Q6,Q7それぞれを、オン状態のデューティ比が50%になるように交互にON状態またはOFF状態とする。また、力率改善/インバータ制御回路46は、同様に、スイッチング素子Q10,Q11それぞれを、オン状態のデューティ比が50%になるように交互にON状態またはOFF状態とする。
【0086】
特に、力率改善/インバータ制御回路46は、スイッチング素子Q6,Q7が同時にON状態にならないように、また、スイッチング素子Q10,Q11が同時にON状態にならないように、これらのスイッチング素子Q6,Q7,Q10,Q11に対する制御を行う。なお、力率改善/インバータ制御回路46は、スイッチング素子Q6,Q7,Q10,Q11の制御において、スイッチング素子Q6,Q7の両方をOFF状態とするデッドタイムを設けてよく、また、スイッチング素子Q10,Q11の両方をOFF状態とするデッドタイムを設けてよい。
【0087】
力率改善/インバータ制御回路46は、スイッチング素子Q6,Q7およびスイッチング素子Q10,Q11に対してPWM制御を行い、スイッチング素子Q6,Q7によるスイッチングとスイッチング素子Q10,Q11によるスイッチングとの位相差を制御する。力率改善/インバータ制御回路46が、スイッチング素子Q6,Q11をON状態とし、Q5,Q10をOFF状態とすると、チョークコイルL1に電力が蓄積される。一方、力率改善/インバータ制御回路46が、スイッチング素子Q5,Q10をON状態とし、Q6,Q11をOFF状態とすると、チョークコイルL1に蓄積された電力が電流共振ハーフブリッジ回路20,22に供給される。
【0088】
力率改善/インバータ制御回路46は、チョークコイルL1に電力が蓄積される時間とチョークコイルL1から電流共振ハーフブリッジ回路20,22に電力が供給される時間の比を制御することにより、チョークコイルL1に流れる電流の電流値Iinおよび負荷LoまたはバッテリBATの電圧値Voを規定値とする。つまり、力率改善/インバータ制御回路46は、スイッチング素子Q6,Q11をON状態とし、スイッチング素子Q5,Q10をOFF状態とする時間と、スイッチング素子Q6,Q11をON状態とし、スイッチング素子Q5,Q10をOFF状態とする時間との比を制御することにより、電流値Iinおよび電圧値Voを調整し、規定値とする。
【0089】
まず、全波整流回路40から負荷Loに電力を供給する場合の絶縁型スイッチング電源装置3の動作を説明する。全波整流回路40から負荷Loに電力を供給する場合において、絶縁型スイッチング電源装置3の動作が
図3に示す期間Aにあると、力率改善/インバータ制御回路46は、
図4Aおよび
図5に示すようにスイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、絶縁型スイッチング電源装置3のスイッチング素子Q5,Q6,Q11,Q12,Q13,Q16はON状態とされ、スイッチング素子Q7,Q8,Q9,Q10,Q14,Q15はOFF状態とされる。
【0090】
期間Aにおいて、電流は、全波整流回路40の正電圧端子から、チョークコイルL1、スイッチング素子Q5,Q6、スイッチング素子Q11,Q12を介して全波整流回路40の負電圧端子に流れる。これにより、チョークコイルL1の一端には全波整流回路40の正電圧端子と同等の電圧が印加されて電流値Iinの電流が流れ、チョークコイルL1は電力を蓄積する。
【0091】
また、コンデンサC1の一端と他端との間には、スイッチング素子Q6、チョークコイルL2およびトランスT1の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC1に蓄積されていた電力は、トランスT1の1次側巻き線から2次側巻き線に伝達される。伝達された電力は、チョークコイルL4、スイッチング素子Q13を介してコンデンサC5,C9に電荷として蓄積され、負荷Loに供給される。一方、コンデンサC4の一端と他端との間には、トランスT2の1次側巻き線、チョークコイルL3およびスイッチング素子Q11,Q12を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC4に蓄積されていた電力はトランスT2の2次側巻き線に伝達される。伝達された電力は、さらに、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q16を介してコンデンサC8,C9に蓄積され、負荷Loに供給される。
【0092】
全波整流回路40から負荷Loに電力を供給する場合において、絶縁型スイッチング電源装置3の動作が
図3に示す期間Aから期間Bに移行すると、
図4Bおよび
図5に示すように、力率改善/インバータ制御回路46はQ5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q5,Q6,Q8,Q9,Q10,Q12,Q13,Q15はON状態とされ、スイッチング素子Q7,Q11,Q14,Q16はOFF状態とされる。つまり、スイッチング素子Q8,Q9,Q10,Q15はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q11,Q16はON状態からOFF状態とされる。
【0093】
コンデンサC1の両端の間には、スイッチング素子Q6、チョークコイルL2およびトランスT1の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC1に蓄積された電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。さらに、トランスT1の2次側巻き線に伝達された電力は、チョークコイルL4およびスイッチング素子Q13を介してコンデンサC5に蓄積される。コンデンサC6,C7,C8には既に電力が蓄積されており、蓄積された電力により、コンデンサC5の両端の電圧差は、コンデンサC6,C7,C8の両端の電圧差と同じになる。従って、コンデンサC5に電力が蓄積されると、この電力は、コンデンサC5、C6,C7,C8からコンデンサC9および負荷Loに供給される。
【0094】
また、コンデンサC3の両端の間には、スイッチング素子Q10、チョークコイルL3およびトランスT2の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC3に蓄積された電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。さらに、トランスT1の2次側巻き線に伝達された電力は、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q15を介してコンデンサC7に蓄積される。コンデンサC5,C6,C8には既に電力が蓄積されており、蓄積された電力により、コンデンサC7の両端の電圧差はコンデンサC5,C6,C8の両端の電圧差と同じになる。従って、コンデンサC7に電力が蓄積されると、この電力は、コンデンサC5、C6,C7,C8からコンデンサC9および負荷Loに供給される。
【0095】
直流電源Eiから負荷Loに電力を供給する場合において、絶縁型スイッチング電源装置2の動作が
図3に示す期間Bから期間Cに移行すると、力率改善/インバータ制御回路はQ5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q7,Q8,Q9,Q10,Q14,Q15,Q16はON状態となり、スイッチング素子Q5,Q6,Q10,Q11,Q12,Q13はOFF状態となる。つまり、スイッチング素子Q7,Q14はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q6,Q13,Q5,Q12はON状態からOFF状態とされる(
図4Cも参照のこと)。チョークコイルL1は、スイッチング素子Q6,Q6,Q11,Q12を介して直流電源Eiの負電圧端子と直流的に接続され、チョークコイルL1に電流値Iinの電流が流れ、チョークコイルL1には電力が蓄積される。
【0096】
コンデンサC2の一端と他端との間には、トランスT1の1次側巻き線、チョークコイルL2、スイッチング素子Q7を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC2に蓄積されていた電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。伝達された電力は、コンデンサC6、スイッチング素子Q14、チョークコイルL4を介してコンデンサC6に蓄積される。コンデンサC5,C7,C8には既に電力が蓄積されており、蓄積された電力によりコンデンサC6の両端の電圧差は、コンデンサC5,C7,C8の両端の電圧差と同じになる。従って、コンデンサC6に電力が蓄積されると、この電力は、コンデンサC5、C6,C7,C8からコンデンサC9および負荷Loに供給される。
【0097】
コンデンサC3の一端と他端との間には、スイッチング素子Q10、チョークコイルL3およびトランスT2の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC3に蓄積されていた電力はトランスT2の2次側巻き線に伝達される。これにより、伝達された電力は、トランスT2の2次側巻き線からチョークコイルL5、スイッチング素子Q15を介してコンデンサC7にされる。コンデンサC5、C6、C8には既に電力が蓄積されており、蓄積された電力によりコンデンサC7の両端の電圧差はコンデンサC5、C6、C8の両端の電圧差と同じになる。従って、コンデンサC7に電力が蓄積されると、この電力は、コンデンサC5、C6,C7,C8からコンデンサC9および負荷Loに供給される。
【0098】
全波整流回路40から負荷Loに電力を供給する場合において、絶縁型スイッチング電源装置3の動作が
図3に示す期間Cから期間Dに移行すると、
図4Dおよび
図5に示すように、力率改善/インバータ制御回路46はQ5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q5,Q7,Q8,Q9,Q11,Q14,Q16はON状態とされ、Q6,Q10,Q13,Q15はOFF状態とされる。つまり、スイッチング素子Q5,Q11,Q12,Q16はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q10,Q15はON状態からOFF状態とされる。
【0099】
チョークコイルL1は全波整流回路40の負電圧端子から直流的に切り離される。一方、チョークコイルL1の他端と全波整流回路40の負電圧端子とは、スイッチング素子Q5、コンデンサC1,C2およびスイッチング素子Q8を介して接続され、これらに電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に蓄積されていた電力がコンデンサC2に蓄積される。同様に、チョークコイルL1の他端と全波整流回路40の負電圧端子とは、スイッチング素子Q9、コンデンサC3,C4およびスイッチング素子Q12を介して接続され、これらに電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に蓄積されていた電力がコンデンサC3に蓄積される。以上説明したように、期間AにおいてチョークコイルL1に蓄積された電力は期間Bにおいて放出され、コンデンサC2,C3に蓄積される。
【0100】
コンデンサC1の一端と他端との間には、スイッチング素子Q6、チョークコイルL2およびトランスT1の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC3に蓄積された電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。さらに、トランスT1の2次側巻き線に伝達された電力は、チョークコイルL4およびスイッチング素子Q13を介してコンデンサC5,C9に蓄積され、負荷Loに供給される。
【0101】
また、コンデンサC3の一端と他端との間には、スイッチング素子Q10、チョークコイルL3およびトランスT2の1次側巻き線を介して電流が流れる。これにより、コンデンサC3に蓄積された電力はトランスT1の2次側巻き線に伝達される。さらに、トランスT1の2次側巻き線に伝達された電力は、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q15を介してコンデンサC7,C9に蓄積され、負荷Loに供給される。
【0102】
絶縁型スイッチング電源装置3は、以上説明した期間A~Dにおける動作を繰り返すことにより、交流電源Viから負荷Loに電力を供給する。
【0103】
次に、
図3、
図4A~
図4Dを参照して、負荷Loが電力供給可能なバッテリBATに代えられた場合に、バッテリBATから交流電源Viに電力を供給して回生する場合の絶縁型スイッチング電源装置3の動作を説明する。なお、
図4Aなどに示すように、この説明においては、例えば、負荷Loの代わりに充放電可能なバッテリBATが絶縁型スイッチング電源装置3の2次側の回路に接続される。
【0104】
バッテリの一端は正電圧端子(+)であり電流共振ハーフブリッジ回路20のスイッチング素子Q13のドレインおよびコンデンサC5の一端に接続される。また、バッテリの他端は負電圧端子(―)であり、スイッチング素子Q16のソースおよびコンデンサC8の他端に接続される。例えば、バッテリBATは、直流電源Eiから絶縁型スイッチング電源装置3により電力を供給されて充電される。なお、
図3に示すように、チョークコイルL1は、期間Aが始まるより前に電力を蓄積している。
【0105】
バッテリBATから直流電源Eiに電力を供給して回生する場合において、絶縁型スイッチング電源装置3の動作が
図3に示す期間Aにあると、
図4Aおよび
図5に示すように、力率改善/インバータ制御回路46は、整流動作のためにスイッチング素子Q1~Q4を制御し、さらに、スイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、絶縁型スイッチング電源装置3のスイッチング素子Q5,Q6,Q11,Q12,Q13,Q16はON状態とされ、スイッチング素子Q7,Q8,Q9,Q10,Q14,Q15はOFF状態とされる。
【0106】
バッテリBATの正電圧端子から負電圧端子に、スイッチング素子Q13、チョークコイルL4、トランスT1の2次側巻き線、コンデンサC6,C7、トランスT2の2次側巻き線、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q16を介して電流が流れる。これにより、トランスT1の2次側巻き線から1次側巻き線に、トランスT1の1次側巻き線数と2次側巻き線数の比に応じた電圧の電力が伝達される。同様に、トランスT2の2次側巻き線から1次側巻き線に、トランスT2の1次側巻き線数と2次側巻き線数の比に応じた電圧の電力が伝達される。
【0107】
トランスT1の1次側巻き線に伝達された電力はチョークコイルL2およびスイッチング素子Q6を介してコンデンサC1に蓄積される。また、トランスT2の1次側巻き線に伝達された電力はチョークコイルL3およびスイッチング素子Q11を介してコンデンサC4に蓄積される。
【0108】
上述したように、チョークコイルL1は期間Aより前に電力を蓄積しており、チョークコイルL1の一端と他端との間には、全波整流回路40の正電圧端子、全波整流回路40のスイッチング素子Q1、交流電源Vi、全波整流回路40のスイッチング素子Q4、全波整流回路40の負電圧端子、スイッチング素子Q5,Q6,Q11,Q12を介して電流が流れる。以上説明した絶縁型スイッチング電源装置3の動作により、チョークコイルL1に蓄積されていた電力が放出されて交流電源Viに供給され、回生される。
【0109】
バッテリBATから交流電源Viに電力を供給して回生する場合において、絶縁型スイッチング電源装置3の動作が
図3に示す期間Aから期間Bに移行すると、
図4Bおよび
図5に示すように、力率改善/インバータ制御回路46は、整流動作のためにスイッチング素子Q1~Q4を制御し、さらに、スイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q5,Q6,Q8,Q9,Q10,Q12,Q13,Q15はON状態とされ、スイッチング素子Q7,Q11,Q14,Q16はOFF状態とされる。つまり、スイッチング素子Q8,Q9,Q10,Q15はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q11,Q16はON状態からOFF状態とされる。
【0110】
バッテリBATの正電圧端子から、スイッチング素子Q13、チョークコイルL4、トランスT1の2次側巻き線、コンデンサC6、スイッチング素子Q15、チョークコイルL15、トランスT2の2次側巻き線およびコンデンサC8を介して負電圧端子に電流が流れる。トランスT1の1次側には、トランスT1の1次側巻き線数と2次側巻き線数との比に応じた電圧の電力が伝達される。
【0111】
伝達された電力は、チョークコイルL2およびスイッチング素子Q6を介してコンデンサC1に蓄積される。トランスT2の1次側には、トランスT2の1次側巻き線数と2次側巻き線数との比に応じた電圧の電力が伝達される。伝達された電力は、チョークコイルL3およびスイッチング素子Q10を介してコンデンサC3に蓄積される。
【0112】
コンデンサC1の一端と他端との間には、スイッチング素子Q5、チョークコイルL1、全波整流回路40の正電圧端子、全波整流回路40のスイッチング素子Q1、交流電源Vi、全波整流回路40のスイッチング素子Q4、全波整流回路40の負電圧端子、スイッチング素子Q8およびコンデンサC2を介して電流が流れる。また、コンデンサC3の一端と他端との間には、スイッチング素子Q9、チョークコイルL1、全波整流回路40の正電圧端子、全波整流回路40のスイッチング素子Q1、交流電源Vi、全波整流回路40のスイッチング素子Q4、全波整流回路40の負電圧端子、スイッチング素子Q12およびコンデンサC4を介して電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に電流が流れ、チョークコイルL1に電力が蓄積されるとともに、コンデンサC1,C3に蓄積された電力が交流電源Viに供給され、回生される。
【0113】
バッテリBATから交流電源Viに電力を供給して回生する場合において、絶縁型スイッチング電源装置3の動作が
図3に示す期間Bから期間Cに移行すると、
図4Cおよび
図5に示すように、力率改善/インバータ制御回路46は、整流動作のためにスイッチング素子Q1~Q4を制御し、さらに、スイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q7,Q8,Q9,Q10,Q14,Q15はON状態となり、スイッチング素子Q5,Q6,Q10,Q11,Q12,Q13はOFF状態となる。つまり、スイッチング素子Q7,Q14はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q6,Q13,Q5,Q12はON状態からOFF状態とされる。
【0114】
バッテリBATの正電圧端子からコンデンサC3、トランスT1の2次側巻き線、チョークコイルL4、スイッチング素子Q14,Q15、チョークコイルL5、トランスT2の2次側巻き線およびスイッチング素子Q8を介してバッテリBATの負電圧端子に電流が流れる。これにより、トランスT1の2次側巻き線およびトランスT2の2次側巻き線から、トランスT1の1次側巻き線およびトランスT2の1次側巻き線に、トランスT1,T2の1次側巻き線数と2次側巻き線数との比に応じた電圧の電力が伝達される。
【0115】
トランスT1の1次側巻き線において、コンデンサC2、スイッチング素子Q7およびチョークコイルL2に電流が流れ、トランスT1の1次側巻き線に伝達された電力はコンデンサC2に蓄積される。また、トランスT2の1次側巻き線において、チョークコイルL3、スイッチング素子Q10およびコンデンサC3に電流が流れ、トランスT2の1次側巻き線に伝達された電力は、コンデンサC3に蓄積される。
【0116】
チョークコイルL1の一端と他端との間には、全波整流回路40の正電圧端子、全波整流回路40に含まれるスイッチング素子Q1、交流電源Vi、全波整流回路40のスイッチング素子Q4、全波整流回路40の負電圧端子、スイッチング素子Q4、Q7,Q8,Q9,Q10を介して電流が流れる。これにより、チョークコイルL1に蓄積されていた電力が放出され、交流電源Viに供給され、回生される。
【0117】
バッテリBATから交流電源Viに電力を供給して回生する場合において、絶縁型スイッチング電源装置3の動作が
図3に示す期間Cから期間Dに移行すると、
図4Dおよび
図5に示すように力率改善/インバータ制御回路46は、整流動作のためにスイッチング素子Q1~Q4を制御し、さらに、スイッチング素子Q5~Q16の状態を制御する。これにより、力率改善/インバータ制御回路46はQ5~Q16の状態を制御する。これにより、スイッチング素子Q5,Q7,Q8,Q9,Q11,Q14,Q16はON状態とされ、Q6,Q10,Q13,Q15はOFF状態とされる。つまり、スイッチング素子Q5,Q11,Q12,Q16はOFF状態からON状態とされ、スイッチング素子Q10,Q15はON状態からOFF状態とされる。
【0118】
バッテリBATの正電圧端子から、コンデンサC5、トランスT1の2次側巻き線、チョークコイルL4、スイッチング素子Q14、コンデンサC7、トランスT2の2次巻き線、チョークコイルL5およびスイッチング素子Q16を介してバッテリBATの負電圧端子に電流が流れる。これにより、トランスT1,T2の2次側巻き線から、トランスT1,T2の1次側巻き線に、トランスT1,T2の1次側巻き線数と2次側巻き線数との比に応じた電圧の電力が伝達される。
【0119】
さらに、トランスT1の1次側巻き線の他端からコンデンサC2、スイッチング素子Q7およびチョークコイルL2を介してトランスT1の1次側巻き線の一端まで電流が流れ、コンデンサC2に電力が蓄積される。また、トランスT2の1次側巻き線の他端から、コンデンサC4、スイッチング素子Q11およびチョークコイルL3を介してトランスT1の1次側巻き線の一端まで電流が流れ、コンデンサC4に電力が蓄積される。
【0120】
以上説明したようにコンデンサC1,C2,C3,C4に電力が蓄積され、コンデンサC1,C2,C3,C4に蓄積された電力により、スイッチング素子Q5,Q8,Q9,Q12、チョークコイルL1、全波整流回路40の正電圧端子、全波整流回路40のスイッチング素子Q1、交流電源Vi、全波整流回路40のスイッチング素子Q4、全波整流回路40の負電圧端子およびスイッチング素子Q8,Q12の間に電流が流れる。これにより、バッテリBATから電力が交流電源Viに供給され、回生されるとともに、チョークコイルL1に電力が蓄積される。
【0121】
絶縁型スイッチング電源装置3は、以上説明した期間A~Dにおける動作を繰り返すことにより、バッテリBATに蓄積された電圧値Voの電力を、交流電源Viに供給し、回生する。
【0122】
周波数制御回路44は、負荷LoまたはバッテリBATの電圧値Voに基づいて、負荷LoまたはバッテリBATの電圧値Voが予め決められた値(規定値)となるように基準周波数信号fswの周波数を調整する。このように周波数が調整された基準周波数信号fswは、力率改善/インバータ制御回路46に対して出力され、力率改善/インバータ制御回路46は、電流共振ハーフブリッジ回路20,22におけるスイッチング周波数とする。さらに、力率改善/インバータ制御回路46には、基準周波数信号fswで、全波整流回路40により整流された電力の電圧値およびチョークコイルL1に流れる電力の電流値Iinが入力される。さらに、力率改善/インバータ制御回路46は、基準周波数信号fswで、コンデンサC1,C2の両端の電圧値(VC1+VC2)およびコンデンサC3,C4の両端の電圧値(VC3+VC4)が入力される。
【0123】
力率改善/インバータ制御回路46は、全波整流回路40により整流された交流電源Viの波形の位相と、電流値Iinの波形の位相とが同じになるように、スイッチング素子Q6,Q7,Q10,Q11それぞれがON状態またはOFF状態になるタイミングを制御する。また、力率改善/インバータ制御回路46は、電圧値(VC1+VC2),(VC3+VC4)が規定値になるように、スイッチング素子Q6,Q7,Q10,Q11それぞれがON状態またはOFF状態になるタイミングを制御する。
【0124】
バッテリBATから交流電源Viに電力を回生する場合には、周波数制御回路44は、チョークコイルL2,L4、コンデンサC1,C2,C5、C6およびトランスT1により形成される共振回路の共振周波数と同じ周波数の基準周波数信号fswを生成する。力率改善/インバータ制御回路46は、
図5に示すように、チョークコイルL1の電流値Iinの波形の位相と、全波整流回路40の正電圧端子の電圧値の波形の位相とを合わせるようにスイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10,Q11,Q12それぞれをON状態またはOFF状態とする。チョークコイルL1の電流値Iinの波形の位相と、全波整流回路40の正電圧端子の電圧値の波形の位相とを合わせることにより、絶縁型スイッチング電源装置3が負荷LoまたはバッテリBATに供給する電力の力率が改善される。
【0125】
絶縁型スイッチング電源装置2,3により達成される技術的効果をさらに説明する。絶縁型スイッチング電源装置2,3のような絶縁型スイッチング電源装置は、トランスにより電源側(1次側)の回路と負荷LoまたはバッテリBATの側(2次側)の回路とを絶縁する構成をとる。このような絶縁型スイッチング電源装置においては、チョークコイルとトランスの1次側とが接続される。このような構成においては、電源から負荷Loに電力を供給する場合にも、バッテリBATに電力を供給して充電する動作を行う場合にも、チョークコイルとトランスの1次側巻き線との間で電力が伝達されるときに、トランスの1次側に生じる漏れインダクタンスに起因して、チョークコイルに流れる電流値が制限されてしまう。このように、チョークコイルに流れる電流値が制限された結果として、チョークコイルにサージ電圧が発生してしまう。従って、一般的な絶縁側スイッチング電源装置においては、スイッチング素子にサージ電圧が加わらないように、スイッチスナバ回路などのサージ抑制回路が必要とされる。
【0126】
一方、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置2,3は、チョークコイルL1と直列にコンデンサC1,C2,C3,C4が接続される構成をとる。このような構成においては、電源から負荷Loに電力を供給する動作を行う場合においても、バッテリBATから電源に電力を回生する動作を行う場合においても、チョークコイルL1とコンデンサC1,C2,C3,C4との間で、制限なく電流が流れうる。従って、チョークコイルL1におけるサージ電圧の発生が抑制されうる。
【0127】
さらに、コンデンサC1,C2,C5,C6、チョークコイルL2、トランスT1およびチョークコイルL4は共振回路を形成するので、電流共振ハーフブリッジ回路20は共振回路を含む。また、コンデンサC3,C4,C7,C8、チョークコイルL3、トランスT2およびチョークコイルL5、コンデンサC7、C8は共振回路を形成するので、電流共振ハーフブリッジ回路22もまた共振回路を含む。
【0128】
電流共振ハーフブリッジ回路20,22において形成された共振回路の共振周波数を同じとし、これらの共振回路に、共振周波数と同じ周波数の基準周波数信号fswでスイッチングされた電力が供給されるようにすると、電源から負荷Loに電力を供給する動作を行う場合にも、バッテリBATから電源に電力を回生する動作を行う場合にも、スイッチング素子Q5~Q16に流れる電流の波形は、矩形よりも立ち上がりが遅い正弦波状となる。スイッチング素子Q5~Q16に流れる電流の波形が矩形波状である場合に比べて、スイッチング素子Q5~Q16に流れる電流の波形が正弦波状である場合の方が、これらスイッチング素子Q5~Q16において発生する損失が少なくなる。
【0129】
また、力率改善/インバータ制御回路46は、全波整流回路40の正電圧端子の電圧値と、チョークコイルL1の電流値Iinと、コンデンサC1の電圧値Vc1とコンデンサC2の電圧値Vc2との加算値(Vc1+Vc2)、および、コンデンサC3の電圧値Vc3とコンデンサC4の電圧値Vc4との加算値(Vc3+Vc4)の入力を受ける。加算値(Vc1+Vc2),(Vc3+Vc4)の波形の周波数は、例えば10Hz程度である。力率改善/インバータ制御回路46は、入力されたこれらの加算値に基づいて、電源から負荷Loに電力を供給する動作を行う場合にも、バッテリBATから電源に電力を回生する動作を行う場合にも、チョークコイルL1の電流値Iinの波形と、全波整流回路40の正電圧端子の電圧値の波形との位相が合うように、スイッチング素子Q5~Q16それぞれをON状態またはOFF状態とするタイミングを制御する。また、力率改善/インバータ制御回路46は、これらの加算値(Vc1+Vc2),(Vc3+Vc4)の波高値を規定値にして安定化するように、スイッチング素子Q5~Q16それぞれをON状態またはOFF状態とするタイミングを制御する。
【0130】
電流共振ハーフブリッジ回路20に形成された共振回路の共振周波数は、トランスT1の巻き線のインダクタンス、チョークコイルL2,L4のインダクタンス、および、コンデンサC1,C2,C5,C6の容量値を調整することにより、調整可能である。また、電流共振ハーフブリッジ回路22に形成された共振回路の共振周波数もまた、トランスT2の巻き線のインダクタンス、チョークコイルL3,L5のインダクタンス、および、コンデンサC3,C4,C7,C8の容量値を調整することにより、調整可能である。つまり、電流共振ハーフブリッジ回路20,22に形成された共振回路の共振周波数を調整することは容易であり、従って、この共振周波数を基準周波数信号fswの周波数に合わせることは容易である。また、この反対に、基準周波数信号fswの周波数を、電流共振ハーフブリッジ回路20,22に形成された共振回路の共振周波数に合わせることもできる。従って、基準周波数信号fswの周波数の選択の幅は広く、また、電流共振ハーフブリッジ回路20,22に含まれるチョークコイルおよびコンデンサの容量値の選択の幅も広い。
【0131】
[変形例]
以下、絶縁型スイッチング電源装置2,3の変形例を説明する。
図6~
図8は、
図2および
図4A~
図4Dに示した本開示の一実施例にかかる絶縁型スイッチング電源装置2,3の変形例を例示する図である。
【0132】
図6に例示するように、絶縁型スイッチング電源装置4は、電流共振ハーフブリッジ回路24,26を備える。電流共振ハーフブリッジ回路24は、スイッチング素子Q6のソースとトランスT1の1次側巻き線の一端との間にコンデンサC10を挿入した構成をとる。また、電流共振ハーフブリッジ回路26は、スイッチング素子Q10のソースとトランスT2の1次側巻き線の一端との間にコンデンサC11を挿入した構成をとる。このようにコンデンサC11,C12それぞれをスイッチング素子Q6,Q10のソースとトランスT1,T2の1次側の一端との間に挿入することにより、絶縁型スイッチング電源装置4の動作は絶縁型スイッチング電源装置2,3よりも安定になる。
【0133】
図7に例示するように、絶縁型スイッチング電源装置5は、電流共振ハーフブリッジ回路28,30を備える。電流共振ハーフブリッジ回路28は、絶縁型スイッチング電源装置3の電流共振ハーフブリッジ回路20のスイッチング素子Q5のソースおよびスイッチング素子Q6のドレインと、スイッチング素子Q7のソースおよびスイッチング素子Q8のドレインとの間にコンデンサC12を追加した構成をとる。電流共振ハーフブリッジ回路30は、電流共振ハーフブリッジ回路22のスイッチング素子Q9のソースおよびスイッチング素子Q10のドレインと、スイッチング素子Q11のソースおよびスイッチング素子Q12のドレインとの間にコンデンサC13を追加した構成をとる。
【0134】
言い換えると、絶縁型スイッチング電源装置5は、絶縁型スイッチング電源装置3において直列接続されたコンデンサC1,C2に、並列にコンデンサC12を追加し、直列接続されたコンデンサC3,C4に並列にコンデンサC13を追加した構成をとる。以上説明したように、絶縁型スイッチング電源装置3にコンデンサC10,C11を追加した絶縁型スイッチング電源装置4の電流共振ハーフブリッジ回路28,30の共振周波数は低くなり、その動作は絶縁型スイッチング電源装置3の動作よりも安定する。
【0135】
図8に例示するように、絶縁型スイッチング電源装置6は、絶縁型スイッチング電源装置3の電流共振ハーフブリッジ回路20,22をハーフブリッジ回路32,34により置換し、周波数制御回路44を省いた構成をとる。ハーフブリッジ回路32,34は、絶縁型スイッチング電源装置3の電流共振ハーフブリッジ回路20,22からチョークコイルL2~L5を省いた構成をとる。電流共振ハーフブリッジ回路32,34には、電流共振ハーフブリッジ回路20,22と同様に共振回路が形成される。しかしながら、チョークコイルL2~L5が省かれており、共振周波数は固定とされ、周波数制御回路44によるスイッチング周波数の制御は不要とされる。従って、絶縁型スイッチング電源装置5の構成は絶縁型スイッチング電源装置3よりも簡単であり、その制御も簡略化されうる。
【0136】
以上説明したように、なお、力率改善/インバータ制御回路46および周波数制御回路44による電流共振ハーフブリッジ回路20,22などの制御は、情報処理装置7において実行されるプログラムにより実現されうる。一方、これらの構成要素は、専用のハードウェアにより実現されても、ハードウェアと情報処理装置7において実行されるソフトウェア(プログラム)との適宜の組み合わせにより実現されてよい。
【0137】
[本開示の実施例の実施に用いられうる情報処理装置]
なお、本開示の実施例にかかる絶縁型スイッチング電源装置3,4の力率改善/インバータ制御回路46および周波数制御回路44の制御のための処理の全部または一部は、以下に説明する情報処理装置(コンピュータ)7により実施されうる。
図9は、本開示にかかる絶縁型スイッチング電源装置の一実施例の構成要素の全部または一部の機能を実施しうる情報処理装置7の構成を例示する図である。
図9に例示するように、情報処理装置7は、バスを介して情報を入出力可能に相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)700、主記憶装置702、補助記憶装置704およびインタフェース(IF;Interface)706を備える。ただし、情報処理装置7は、
図9に示した以外のハードウェア構成要素を含んでもよく、情報処理装置7の構成は、
図9に示した構成に限定されない。
【0138】
CPU700は、情報処理装置7により実行され、力率改善/インバータ制御回路46および周波数制御回路44の処理に必要とされるプログラムに含まれる指示命令を実行する。主記憶装置702は、例えばRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶素子を備え、CPU700がプログラムを実行するために用いるデータを一時的に記憶する。
【0139】
補助記憶装置704は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置を含み、CPU700が実行するプログラムなどを中長期的に記憶する。なお、補助記憶装置704に記憶されたプログラムは、磁気記憶媒体、CDおよびDVDなどの非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non―transitory computer―readable medium)に記憶された製品として提供され、流通されうる。
【0140】
IF装置706は、チョークコイルL1に流れる電流値Iinを測定する電流センサ、コンデンサC3,C4の電圧などを測定する電圧センサ、および、基準周波数信号fswを発生する発振回路(不図示)などとの間の情報の入出力のためのインタフェースを提供する。
【0141】
以上説明したように、絶縁型スイッチング電源装置3,4の力率改善/インバータ制御回路46および周波数制御回路44による制御処理は、情報処理装置7において実行されるプログラムにより実現されうる。一方、これらの構成要素は、専用のハードウェアにより実現されても、ハードウェアと情報処理装置7において実行されるソフトウェア(プログラム)との適宜の組み合わせにより実現されてよい。
【0142】
本願において以下の形態が可能であるが、これらに限定されない。
[付記1]
一端が第1の電源の第1の電圧極性の端子に接続された第1のコイルと、一端が前記第1のコイルの他端に接続された第1の能動素子および第2の能動素子と、前記第1の電源の第2の電圧極性の端子に他端が接続された第3の能動素子および第4の能動素子と、第1のトランスを含む第1のハーフブリッジ回路と、第2のトランスを含む第2のハーフブリッジ回路と、前記第1の電源から負荷に電力を供給させ、または、前記負荷の代わりの第2の電源から前記第1の電源に電力を回生させるように前記第1の前記第1のハーフブリッジ回路および前記第2のハーフブリッジ回路を制御する制御回路とを備える電源装置。前記第1のハーフブリッジ回路は、一端が前記第1の能動素子の他端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の一端および前記第2のトランスの1次側巻き線の一端に接続された第5の能動素子と、一端が前記第5の能動素子の他端に接続され、他端が前記第3の能動素子の一端に接続された第6の能動素子と、一端が前記負荷の第1の電圧極性の端子に接続され、他端が前記第1のトランスの2次側巻き線の一端に接続された第9の能動素子と、一端が前記第1のトランスの2次側巻き線の一端に接続され、他端が前記第2のハーフブリッジ回路に接続された第10の能動素子と、一端が前記第5の能動素子の一端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の他端に接続された第1のコンデンサと、一端が前記第1のトランスの1次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第6の能動素子の他端に接続された第2のコンデンサと、一端が前記第9の能動素子の一端に接続され、他端が前記第1のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第3のコンデンサと、一端が前記第1のトランスの2次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第10の能動素子の他端に接続された第4のコンデンサとを備える。前記第2のハーフブリッジ回路は、一端が前記第2の能動素子の他端に接続され、他端が前記第1のトランスの1次側巻き線の一端および前記第2のトランスの1次側巻き線の一端に接続された第7の能動素子と、一端が前記第7の能動素子の他端に接続され、他端が前記第4の能動素子の一端に接続された第8の能動素子と、一端が前記第10の能動素子のソースに接続され、他端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第11の能動素子と、一端が前記第11の能動素子の他端に接続され、他端が前記負荷の第2の電圧極性の端子に接続された第12の能動素子と、一端が前記第7の能動素子の一端に接続され、他端が前記第2のトランスの1次側巻き線の他端に接続された第5のコンデンサと、一端が前記第2のトランスの1次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第8の能動素子の他端に接続された第6のコンデンサと、一端が前記第11の能動素子の一端に接続され、他端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続された第7のコンデンサと、一端が前記第2のトランスの2次側巻き線の他端に接続され、他端が前記第12の能動素子の他端に接続された第8のコンデンサとを備える。
[付記2]
前記制御回路は、前記第1の能動素子および前記第4の能動素子を同時に一端と他端との間が導通状態となるON状態または一端と他端との間が非導通状態となるOFF状態とするように、前記第2の能動素子および前記第3の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、前記第5の能動素子および前記第9の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、前記第6の能動素子および前記第10の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、前記第7の能動素子および前記第11の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、前記第8の能動素子および前記第12の能動素子を同時にON状態またはOFF状態とするように、前記第6の能動素子および前記第10の能動素子と、前記第1の能動素子および前記第4の能動素子とを交互にON状態またはOFF状態とするように制御する電源装置。
[付記3]
前記第9の能動素子の一端と前記第12の能動素子の他端との間に接続された前記負荷に前記第1の電源から電力を供給する場合、前記第1のコイルに電力を蓄積する間、前記制御回路は、前記第1の能動素子、前記第4の能動素子、前記第5の能動素子、前記第8の能動素子、前記第9の能動素子および前記第12の能動素子をON状態とし、前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第6の能動素子、前記第7の能動素子、前記第10の能動素子および前記第11の能動素子をOFF状態とするように制御する電源装置。
[付記4]
前記第9の能動素子の一端と前記第12の能動素子の他端との間に接続された前記負荷に前記第1の電源から電力を供給する場合、前記第1のコイルに電力を蓄積する間、前記制御回路は、前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第6の能動素子、前記第7の能動素子、前記第10の能動素子および前記第11の能動素子をON状態とし、前記第1の能動素子、前記第4の能動素子、前記第5の能動素子、前記第8の能動素子、前記第9の能動素子および前記第12の能動素子をOFF状態とするように制御する電源装置。
[付記5]
前記第9の能動素子の一端と前記第12の能動素子の他端との間に接続された前記負荷に前記第1の電源から電力を供給する場合、前記第1のコイルから電力を放出する間、前記制御回路は、前記第1の能動素子、前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第4の能動素子、前記第6の能動素子、前記第8の能動素子、前記第10の能動素子および前記第12の能動素子を一端と他端との間が導通状態となるON状態とし、前記第5の能動素子、前記第7の能動素子、前記第9の能動素子および前記第11の能動素子を一端と他端との間が非導通状態となるOFF状態とするように制御する電源装置。
[付記6]
第1の電圧極性の端子が前記第9の能動素子の一端に接続され、第2の電圧極性の端子が前記第12の能動素子の他端に接続された前記第2の電源から前記第1の電源に電力を回生する場合、前記第1のコイルに電力を蓄積する間、前記制御回路は、前記第1の能動素子、前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第4の能動素子、前記第6の能動素子、前記第8の能動素子、前記第10の能動素子および前記第12の能動素子を一端と他端との間が導通状態となるON状態とし、前記第5の能動素子、前記第7の能動素子、前記第9の能動素子および前記第11の能動素子を一端と他端との間が非導通状態となるOFF状態とするように制御する電源装置。
[付記7]
第1の電圧極性の端子が前記第9の能動素子の一端に接続され、第2の電圧極性の端子が前記第12の能動素子の他端に接続された前記第2の電源から前記第1の電源に電力を回生する場合、前記第1のコイルから電力を放出する間、前記制御回路は、前記第2の能動素子、前記第3の能動素子、前記第6の能動素子、前記第7の能動素子、前記第10の能動素子および前記第11の能動素子をON状態とし、前記第1の能動素子、前記第4の能動素子、前記第5の能動素子、前記第8の能動素子、前記第9の能動素子および前記第12の能動素子をOFF状態とするように制御する。
[付記8]
前記第1のハーフブリッジ回路は、前記第5の能動素子の他端と前記第1のトランスの1次側巻き線の一端との間に両端が接続された第2のコイルと、前記第9の能動素子の他端と前記第1のトランスの2次側巻き線の一端との間に両端が接続された第4のコイルとをさらに備え、前記第2のハーフブリッジ回路は、前記第7の能動素子の他端と前記第2のトランスの1次側巻き線の一端との間に両端が接続された第3のコイルと、前記第11の能動素子の他端と前記第2のトランスの1次側巻き線の一端との間に両端が接続された第5のコイルとをさらに備える電源装置。
[付記9]
前記第1のハーフブリッジ回路および前記第2のハーフブリッジ回路は、電流共振ハーフブリッジ回路である電源装置。
本開示の付記にかかる各形態の組み合わせ、または、各視点、実施形態に記載された各要素の任意の組み合わせ(一部要素の非選択も含む)は、本開示の基本的コンセプトに応じて、当業者により随時なされうることはいうまでもない。
【0143】
なお、引用した上記特許文献などの開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。全ての開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、全ての開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素などを含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本開示は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想に従って当業者であればなしうるであろう各種変形、修正を含むことはもちろんである。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記特許文献の開示事項は、必要に応じ、本開示の趣旨に則り、本開示の一部として、その一部または全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0144】
1~6 絶縁型スイッチング電源装置
20,22,24,26,28,30,32,34 電流共振ハーフブリッジ回路
32,34 ハーフブリッジ回路
40 全波整流回路
44 周波数制御回路
46 力率改善/インバータ制御回路
7 情報処理装置
700 CPU
702 主記憶装置
704 補助記憶装置
706 IF装置
Q1~Q4 スイッチング素子
Q5 スイッチング素子(第1の能動素子)
Q6 スイッチング素子(第5の能動素子)
Q7 スイッチング素子(第6の能動素子)
Q8 スイッチング素子(第3の能動素子)
Q9 スイッチング素子(第2の能動素子)
Q10 スイッチング素子(第7の能動素子)
Q11 スイッチング素子(第8の能動素子)
Q12 スイッチング素子(第4の能動素子)
Q13 スイッチング素子(第9の能動素子)
Q14 スイッチング素子(第10の能動素子)
Q15 スイッチング素子(第11の能動素子)
Q16 スイッチング素子(第12の能動素子)
C1~C8 コンデンサ(第1~第8のコンデンサ)
L1 チョークコイル
L2~L5 チョークコイルL(第2~第5のコイル)
n1~n13 ノード
T1,T2 トランス
Ei 直流電源
Vi 交流電源
Lo 負荷
BAT バッテリ
【要約】
【課題】スイッチング電源装置において、スイッチング素子に印加されるサージ電力の電圧を低く抑え、損失を少なくすることに寄与する。
【解決手段】絶縁型スイッチング電源装置3は、チョークコイルL1と、スイッチング素子Q5,Q8,Q9,Q12と、電流共振ハーフブリッジ回路20,22と、力率改善/インバータ制御回路46と、周波数制御回路44とを備える。周波数制御回路44は、電流共振ハーフブリッジ回路20,22の共振周波数と同じ周波数の基準周波数信号fswを生成する。力率改善/インバータ制御回路46は、電流共振ハーフブリッジ回路20,22に含まれるスイッチング素子を制御し、電源Viの電力を負荷Loに供給し、逆に、バッテリBATから電力を電源Viに回生する。
【選択図】
図4A