(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ナツグミの果実抽出物を有効成分として含有する前立腺肥大症予防及び治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20240925BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240925BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240925BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240925BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240925BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240925BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240925BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240925BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 5/28 20060101ALI20240925BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240925BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P13/08
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/08
A61K9/02
A61P43/00 105
A61P5/28
A23L33/105
A61K131:00
(21)【出願番号】P 2023518949
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2020018651
(87)【国際公開番号】W WO2022065601
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0123441
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514041454
【氏名又は名称】ジョンナム バイオインダストリー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ギュ オク
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒョ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オ,ギョ ニョ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,チョル ウン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハク ソン
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-523307(JP,A)
【文献】特開2016-216369(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1904321(KR,B1)
【文献】Antioxidants,2020年,9(5), 436,pp.1-17
【文献】J Med Food.,2007年,10(1),pp.126-133
【文献】The Prostate,2009年,69,pp.1404-1410
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナツグミ(Elaeagnus multriflora Thunb.)
の果実抽出物を有効成分として含むことを特徴とする前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物。
【請求項2】
ナツグミ(Elaeagnus multriflora Thunb.)の果実抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物を製造する方法であって、前記ナツグミ
の果実を、水、炭素数1~4のアルコール及びそれらの組合せからなる群から選ばれるいずれか一つ
の溶媒を用いて抽出する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項3】
前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物が、ナツグミの果実抽出物を、体重1Kg当たりの1日用量として0.1~2000mgの量で含むことを特徴とする、請求項1に記載の前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物。
【請求項4】
前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、経皮剤、坐剤又は滅菌注射溶液として剤形化され
ていることを特徴とする、請求項
1に記載の前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記
果実抽出物は、テストステロンで誘導した前立腺がん細胞株(LNcap)の増殖又はテストステロンで誘導した前立腺重量の増加、前立腺特異抗原(PSA)、アンドロゲン受容体(AR)及び5アルファ還元酵素-2の生成、を抑制する活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物。
【請求項6】
ナツグミ(Elaeagnus multriflora Thunb)
の果実抽出物を有効成分として含むことを特徴とする、前立腺肥大症予防又は改善用機能性食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナツグミの果実抽出物を有効成分として含有する前立腺肥大症予防及び治療用組成物に関する。より具体的には、天然原料であるナツグミ(Elaeagnus multriflora Thunb.)の果実を使って毒性及び副作用無しで安全に使用できる前立腺肥大症予防及び治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺肥大症(Benign prostatic hyperplasia,BPH)は前立腺疾患の一つで、様々な原因によって尿道周囲の前立腺の体積が増加して尿道を圧迫し、このため、小便の排出減少などの症状が発生する疾患である。
【0003】
最近では、BPHは、男性における下部尿路症状として総称される訴えとして定義されており、頻尿(8回以上/日)、夜間尿、緊迫尿(強くて突然の尿意)、切迫尿(小便が我慢できない)、遅延尿(小便の排出が遅延される)、断絶尿(小便の流れが中途で切れる)、排尿時に力を入れなければならない現象などの膀胱排出障害を含む。前立腺肥大の原因としては、男性ホルモンであるテストステロン(testosterone)とジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone,DHT)が関連していると知られている。
【0004】
前立腺肥大症の薬物治療剤は、大きく、アルファ遮断剤とアンドロゲン抑制剤(5アルファ還元酵素抑制剤)とに分類される。アルファ遮断剤は、前立腺尿道の圧力と緊張を下げる薬物であり、テラゾシン(terazosin)、ドキサゾシン(doxazosin)、タムスロシン(tamsulosin)、アルフゾシン(alfuzosin)などがあるが、めまい症、無気力症、頭痛、視野障害などの副作用が報告されている。アンドロゲン抑制剤は、5-アルファ還元酵素を抑制して前立腺の肥大を防ぐ薬物で、フィナステリド(finasteride)とデュタステリド(dutasteride)などがあるが、性機能関連副作用が報告されている。
【0005】
一方、ナツグミ(Elaeagnus multriflora Thunb.)は概して、庭に植えてその果実を食べる程度の庭園樹として知られているが、伝統的には、漢方では実と葉、幹、根を全て薬料として使用してきた。ナツグミは韓国各地に自生するElaeagnus属の植物で、チェリー・エラエアグナス又はホソバナツグミとも呼ばれ、生薬名は木半夏と知られている。しばしば、韓国では家ボダイジュ、チャムダンボダイジュとも呼び、若枝は赤褐色の鱗状毛に覆われている。外形はボダイジュに似ているが、夏に実を結ぶことからナツグミと名付けられ、主に煎じ薬として服用する。
【0006】
葉は、互生で、長さ3~10cmの長い楕円形で、両端が狭くて鋭く、鋸歯はない。前面には、若葉には鱗状毛があるが次第に消えるし、背面には白い鱗状毛と茶色の鱗状毛が混ざっているのが特徴である。花は4~5月に淡黄色に咲くが、1~2個ずつ葉の脇に生える。花に白色と茶色の鱗状毛がある。花房は下方が急に狭くなって子房を包み、先端が4つに岐れ、4個の雄蕊と1個の雌蕊があり、7月に長さ1.5cm程度の長い楕円形の核果が付き、垂れ下がって赤く熟する。樹冠は落葉灌木の形で、高さ2~3mまで育つ。
【0007】
アキグミ(Elaeagnus umbellata Thunberg)と外形的に似ているが、アキグミは小枝に白い鱗状毛が多く、実は長さ1cm未満と小さい点からナツグミと区別される。ナツグミは、<益生養術大全>によれば、主に循環系疾病を治め、腫毒、打撲傷、風痺、風湿、行気、行血に効能があると知られている。
【0008】
伝統的に知られているこのようなナツグミのような天然物の効能を研究し、副作用がほとんどなく、疾病の予防及び回復に役立つ物質を開発しようと努力してきたが、未だ、ナツグミの薬学的価値や生理活性機能性に対する関連情報は足りない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
天然原料であるナツグミの果実抽出物を用いて毒性及び副作用無しで安全に使用できる前立腺肥大症予防又は治療用組成物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ナツグミ抽出物を有効成分として含み、前記抽出物は、水又は炭素数1~4の低級アルコール又はそれらの組合せから選ばれる溶媒に可溶である抽出物であることを特徴とする、前立腺肥大症予防又は治療用組成物を提供する。
【0011】
本願発明の前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物は、ナツグミの果実抽出物を0.1~2000mg/kg/体重/1日の量で含んで提供されてよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、経皮剤、坐剤又は滅菌注射溶液として剤形化可能である。
【0012】
本願発明のナツグミ抽出物は、テストステロンで誘導した前立腺がん細胞株(LNcap)の増殖又はテストステロンで誘導した前立腺重量増加、前立腺特異抗原(PSA)、アンドロゲン受容体(AR)及び5アルファ還元酵素-2の生成を抑制する活性を有することを特徴とする、前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ナツグミの果実抽出物を有効成分とする前立腺肥大症予防又は治療用組成物であり、天然のナツグミを資源とし、毒性や副作用無しで安全に前立腺肥大症の予防又は治療用組成物及び健康機能性食品組成物として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】テストステロンによる前立腺上皮細胞株(LNCap)の増殖に対するナツグミの果実抽出物の抑制効果を示すグラフである。
【0015】
【
図2】テストステロンによる前立腺上皮細胞株(LNCap)において前立腺特異酵素(5α-reductase 2)、アンドロゲン受容体(AR)及び前立腺特異抗原(PSA)のタンパク質発現に及ぼす影響を示す図である。
【0016】
【
図3】テストステロンで誘導した前立腺肥大症ラットモデルにおいてナツグミの果実抽出物処理による前立腺組織肥大抑制効果を示すグラフである。
【0017】
【
図4】テストステロンで誘導した前立腺肥大症ラットモデルにおいてナツグミの果実抽出物が前立腺組織における5-アルファ還元酵素含有量に及ぼす影響を示すグラフである。
【0018】
【
図5】テストステロンで誘導した前立腺肥大症ラットモデルにおいてナツグミの果実抽出物が前立腺組織における前立腺特異抗原(PSA)含有量に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図6】ナツグミ(
Elaeagnus multriflora Thunb)及び本発明の実施により得られたナツグミ抽出物の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ナツグミの果実抽出物を有効成分として含有する前立腺肥大症予防又は治療用組成物に関し、具体的な実施例及び比較例を用いて本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。
【0020】
1.ナツグミ抽出物製造
【0021】
1.1 ナツグミの果実抽出物の製造
【0022】
ナツグミの果実抽出物は、水又は炭素数1~4の低級アルコール又はそれらの組合せから選ばれるいずれか一つの溶媒を用いて抽出できる。具体的には、水分を除去して乾燥したナツグミの果実100gに蒸留水1Lを添加し、還流抽出器で3時間100℃で加熱、抽出した。濾紙(ワットマン#41)を用いて濾過し、減圧及び濃縮した。
【0023】
濃縮された熱水抽出物は凍結乾燥器(freeze dryer)を用いて-50℃で48時間凍結乾燥させた。以上の方法により、前記熱水抽出物は、抽出溶媒によって、ナツグミの果実熱水抽出物12.4g(12.4%)を得、下記実験例の試料とした。
【0024】
1.2 ナツグミの極性溶媒、非極性溶媒可溶分画物の製造
【0025】
前記段階のナツグミ熱水抽出物は、有機溶媒を用いて次のように分画した。
【0026】
1.2.1 ヘキサン可溶性分画分離
【0027】
ナツグミ抽出物12.4gを5Lの蒸留水に完全に溶解させた後に分画漏斗に入れ、ヘキサン5Lを添加してヘキサン不溶性層(水層)とヘキサン可溶性層とに分離した。また、ヘキサン不溶性層(水層)を対象に同一工程を3回反復してヘキサン不溶性分画及び可溶性分画を収集した。
【0028】
1.2.2 クロロホルム可溶性分画分離
【0029】
ヘキサン不溶性分画(水層)にクロロホルム5Lを加えて混ぜた後にクロロホルム可溶性分画及び不溶性分画を分離し、クロロホルム不溶性層(水層)を対象に同一工程を3回反復してクロロホルム不溶性分画及び可溶性分画を収集した。
【0030】
1.2.3 酢酸エチル可溶性分画分離
【0031】
クロロホルム不溶性分画(水層)に酢酸エチル5Lを加えて混ぜた後に酢酸エチル可溶性分画及び不溶性分画を分離し、酢酸エチル不溶性層(水層)を対象に同一工程を3回反復して酢酸エチル不溶性分画及び可溶性分画を収集した。
【0032】
1.2.4 ブタノール可溶性分画分離
【0033】
酢酸エチル不溶性分画(水層)にブタノール5Lを加えて混ぜた後にブタノール可溶性分画及び不溶性分画を分離し、ブタノール不溶性層を対象に同一工程を3回反復してブタノール不溶性分画及び可溶性分画を収集した。
【0034】
1.2.5 水層分画分離
【0035】
ナツグミ抽出物12.4gを5Lの蒸留水に完全に溶解させた後に分画漏斗に入れ、前記ヘキサン可溶性層、クロロホルム可溶性層、酢酸エチル可溶性層、及びブタノール可溶性層を分画分離後に濃縮し、残っている有機溶媒を除去して水分画を収集した。
【0036】
このようなナツグミ熱水抽出及び分画物収集過程によって製造されたナツグミ熱水抽出物12.4gでヘキサン可溶性分画、クロロホルム可溶性分画、酢酸エチル可溶性分画及びブタノール可溶性分画を減圧濃縮後に凍結乾燥させて得られた分画物を試料として使用した。
【0037】
2.ナツグミの果実抽出物の細胞毒性確認
【0038】
本発明のナツグミの果実抽出物の効果を確認するに先立ち、細胞毒性を示さない上にも効果を奏し得る適切な濃度を決定するために細胞毒性検査を行った。
【0039】
ナツグミの果実抽出物の細胞毒性を確認するために、前立腺癌細胞に抽出物を処理した後、細胞生存率を確認した。前立腺癌細胞株であるLNCaP細胞(韓国細胞株銀行21740)を、10%FBS(fetal bovine serum)、1%ペニシリン及びストレプトマイシンが添加されたRPMI-1640(Gibco)培地で37℃、5% CO2条件下で培養した。
【0040】
前記培養細胞を96ウェルプレートに1×10
5cell/wellの濃度で分注して培養し、12時間後に、前記<実施例1>で製造した抽出物をそれぞれ0、50、100、200μg/mlの濃度で処理した。24時間培養後に、EZCytox溶液を各ウェル当たり10ulずつ添加し、ELISA readerを用いて450nmで吸光度を測定して毒性を確認した。
図1に示すように、ナツグミの果実抽出物は細胞毒性がないことを確認した。
【0041】
3.ナツグミの果実抽出物のPSA、AR及び5α-reductase 2発現抑制効果確認
【0042】
前立腺癌細胞にテストステロン(Testosterone)とナツグミの果実抽出物を処理した後、前立腺特異抗原(PSA)、アンドロゲン受容体(AR)、前立腺特異酵素(5α-reductase 2)のタンパク質発現を確認し、ナツグミの果実抽出物が前立腺肥大症疾患に効果があるかを確認した。LNCaP細胞を6ウェルプレートに1×105cells/wellの濃度で分注して37℃で培養した。
【0043】
24時間後、細胞にテストステロン1μMを処理し、同時に、前記製造した熱水抽出物を0、50、100、200μg/ml濃度で処理し、24時間培養後に回収した。陽性対照群(BPH)としては、抽出物は処理せず、テストステロン1μMのみを処理した。対照群(Fina)としては、抽出物の代わりに前立腺肥大症治療剤であるフィナステリド(Finasteride)10μMをテストステロン1μMと共に処理した。無処理群を陰性対照群(Control)とした。培養後に回収した細胞に、RIPAバッファ(50mM Tris-HCl、pH 8.0、150mM塩化ナトリウム含有、1% NP-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、及び0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、プロテアーゼ抑制剤カクテル含有)を処理してタンパク質を分離した。
【0044】
分離されたタンパク質はタンパク質分析キット(Bio-Rad protein assay kit,Bio-Rad,USA)で定量し、定量したタンパク質を10% ポリアクリルアミドゲルでSDS-PAGEを行い、PVDFメンブレインにタンパク質を転写した。
【0045】
その後、PVDFメンブレインを5%スキームミルク(skim milk)に1時間程度反応させて表面の非特異的結合タンパク質を除去し、1次抗体である抗AR抗体、抗PSA抗体、抗5α-reductase 2抗体、そして抗β-actin抗体を用いて4℃で一晩反応させた。その後、2次抗体を常温で1時間処理し、ECLキット(Thermo scientific、米国)を用いてAR、PSA及び5α-reductase 2のタンパク質発現程度を確認した。
【0046】
図2に示すように、対照群に比べてナツグミの果実抽出物を100及び200μg/mlで単独処理した細胞群において優れたAR及びPSAのタンパク質発現抑制効果が確認された。また、ナツグミの果実抽出物を200μg/mlで単独処理した細胞群において5α-reductase 2タンパク質発現抑制効果があることを確認した。
【0047】
4.前立腺肥大症動物作製及び前立腺重量測定
【0048】
9週齢(体重330g以下)の雄SDネズミを1週間順化飼育した後、プロピオネート(testosterone propionate,TP)3mg/kgの容量をとうもろこしオイルに溶かして皮下に4週間注射し、前立腺肥大症を誘導した。
【0049】
TP注入の1時間前に、前記1.で製造したナツグミの果実熱水抽出物を50、100、200mg/kgで4週間経口投与したし、陽性対照群として、前立腺肥大症治療に用いられている5α-還元酵素抑制剤であるフィナステリド(Finasteride;5mg/kg)は10mg/kgの容量で同方法で投与した。
【0050】
実験開始日から1週の間隔で総5回体重を測定し、最終投薬及び処理が終わった翌日にラットを犠牲させた後、各群(正常群;NC、前立腺肥大症誘発群;BPH、前立腺肥大症誘発群+フィナステリド投与群;BPH+Fina、前立腺肥大症誘発群+ナツグミの果実抽出物;BPH+ナツグミの果実抽出物50、100、200mg/kg)から前立腺を摘出し、その重さを測定した。前立腺増殖抑制効果の計算式は次の通りである。
【0051】
前立腺増殖抑制効果(%)=100-{(ナツグミの果実抽出物投与群又は陽性対照群前立腺重量-正常群前立腺重量)*100/(陰性対照群前立腺重量-正常群前立腺重量)}
【0052】
図3に示すように、TPで前立腺肥大症を誘発した群(BPH)に比べて、ナツグミの果実抽出物の投与群(BPH+ナツグミの果実)で前立腺の重量が有意に減少することを確認した、
【0053】
5.アルファ還元酵素測定
【0054】
犠牲されたラットの前立腺組織は生理食塩水で1回洗浄し、4倍のリン酸緩衝生理食塩水pH 7.4(Gibco,USA)を入れてWise Stir homogenizer(Daihan Scientific,Korea)で1分間均質化を行った。前立腺組織均質液は、4℃、5,000rpmで5分間遠心分離(Micro 17TR,Hanil Science,Korea)して上澄液を分離し、5-アルファ還元酵素ELISAキット(Mybiosource,USA))を用いて5-アルファ還元酵素を測定した。
【0055】
図4に示すように、ナツグミの果実抽出物50、100及び200μg/mlを単独処理した群において、前立腺組織の肥大過程で核心的な役割を担う5-アルファ還元酵素の活性が抑制されることが確認できた。
【0056】
6.前立腺特異抗原(Prostate Specific Antigen)測定
【0057】
犠牲されたラットの前立腺組織は生理食塩水で1回洗浄し、4倍のリン酸緩衝生理食塩水pH 7.4(Gibco,USA)を入れてWise Stir homogenizer(Daihan Scientific,Korea)で1分間均質化を行った。前立腺組織均質液は4℃、5,000rpmで5分間遠心分離(Micro 17TR,Hanil Science,Korea)して上澄液を分離した。PSA ELISAキット(Mybiosource,USA))を用いて特異抗原(Prostate Specific Antigen,PSA)を測定した。
【0058】
図5に示すように、前立腺組織によって増加する前立腺特異抗原(Prostatic Specific Antigen;PSA)に対する活性をELISAで確認した結果、ナツグミの果実抽出物50、100及び200μg/mlを単独処理した群において前立腺特異抗原の活性抑制効果があることが確認できた。
【0059】
図6は、ナツグミ(
Elaeagnus multriflora Thunb)及び本発明の実施により得られたナツグミ抽出物の写真である。ナツグミ及び果実を還流抽出器で100℃で3時間加熱、抽出し、濾紙で濾過し、減圧及び濃縮してナツグミ(
Elaeagnus multriflora Thunb)抽出物を得た。これを用いて散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、経皮剤、坐剤又は滅菌注射溶液として剤形化された前立腺肥大症予防又は治療用薬学組成物及び機能性食品が製造できた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、ナツグミの果実抽出物を有効成分とする前立腺肥大症予防又は抑制用組成物であり、テストステロンで誘導した前立腺がん細胞株(LNcap)及び前立腺肥大症ラットモデルにおいて証明されたように優れた前立腺肥大症予防又は抑制効果を有し、産業上の利用可能がある。