(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び超音波診断プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2018234081
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-10-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷田 晃央
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-55944(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116965(WO,A1)
【文献】特開2006-81901(JP,A)
【文献】特開2018-20107(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフレームの同一位置のそれぞれにおける反射波データのデータ列に対してフレーム方向でフィルタ処理を行って、
関心領域として設定された第1の領域における血流情報を収集する収集部と、
第1の流速値の範囲にて前記
第1の領域の血流情報を表示させる表示制御部と、
前記血流情報が表示される流速値の範囲を、前記第1の流速値の範囲から、第2の流速値の範囲に変更する指示を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記第2の流速値の範囲に基づいて、前記血流情報を収集する
関心領域を、前記第1の領域から、前記第2の流速値の範囲の血流情報が収集可能であり、かつ、
前記第1の領域において設定された注目部位が含まれる第2の領域に変更する変更部と、
を備え、
前記収集部は、前記第2の領域における血流情報を収集し、
前記表示制御部は、収集された
前記第2の領域の血流情報を前記第2の流速値の範囲にて表示させる、
超音波診断装置。
【請求項2】
前記変更部は、前記第1の流速値の範囲に基づく送受信時間と、前記第2の流速値の範囲に基づく送受信時間とを比較し、比較結果に応じて前記第2の領域を設定する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記変更部は、
関心領域の下端、
関心領域の方位方向の長さ、及び、
関心領域をスキャンする走査線の本数を含む前記第1の領域に関するパラメータのうち、少なくともいずれかを変更することにより、前記第2の領域を設定する、請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記受付部は、前記第1の領域に関するパラメータのうち、変更するパラメータに関する情報の入力を受け付ける請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記受付部は、
前記第1の領域における注目部位の指定に関する情報の入力を受け付ける、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記変更部は、前記第1の領域における形態情報をもとに、前記第1の領域に含まれる注目部位を検出する、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記変更部は、前記注目部位が前記第2の領域に含まれるような前記
関心領域の変更が可能か否かを判定し、
前記表示制御部は、前記
関心領域の変更が不可能であると判定された場合に警告を出力する、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記第1の領域を含む画像において、前記第2の領域の候補を示す情報を表示させる、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、複数の前記第2の領域の候補を示す情報を表示させ、
前記受付部は、当該複数の前記第2の領域のうちいずれかの選択を受け付ける、請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、前記第2の領域の候補を示す情報を表示させてから、一定の時間が経過するまでに前記第2の領域の変更を確定させる操作を受け付けなかった場合に、変更前の前記第1の領域を含む画像の表示を維持し、前記変更を確定させる操作を受け付けた場合に前記第2の領域を含む画像を表示する、請求項8又は9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記第2の領域の候補を示す情報を表示させてから、一定の時間が経過するまでに前記第2の領域の変更を取り消す操作を受け付けた場合に、変更前の前記第1の領域を含む画像の表示を維持し、前記変更を取り消す操作を受け付けなかった場合に前記第2の領域を含む画像を表示する、請求項8又は9に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記変更部は、前記受付部が前記第1の流速値の範囲を上げた前記第2の流速値の範囲を受け付けた場合、前記第1の領域の方位方向における幅を縮小して前記第2の領域を設定する、請求項1乃至11のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項13】
関心領域として設定された第1の領域に
おいて収集された血流情報を、第1の流速値の範囲にて表示させるステップと、
前記血流情報が表示される流速値の範囲を、前記第1の流速値の範囲から、第2の流速値の範囲に変更する指示を受け付けるステップと、
受け付けた前記第2の流速値の範囲に基づいて、前記血流情報を収集する
関心領域を、前記第1の領域から、前記第2の流速値の範囲の血流情報が収集可能であり、かつ、
前記第1の領域において設定された注目部位が含まれる第2の領域に変更するステップと、
前記第2の領域に
おいて収集された血流情報を、前記第2の流速値の範囲にて表示させるステップと、
をコンピュータに実行させる、超音波診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、超音波診断装置及び超音波診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、ドプラ(Doppler)効果に基づくドプラ法により、ドプラ用のスキャンが行われる領域における超音波の反射波から、注目部位における血流情報の生成及び表示を行う機能を備える。近年、血流を高速、高分解能、高フレームレートに映像化することにより、通常のドプラ法と比較して、動きの遅い組織に由来するクラッタ成分を大幅に抑制した血流情報を表示させる技術が知られている。また、スキャンが行われる領域の大きさ等、他のパラメータの変更を受け付けた場合においても、所望の流速値のスケールでの血流情報の表示を維持する技術が提案されている。
【0003】
超音波診断において、表示される流速値のスケールの変更が所望される場合がある。この際、スキャンが行われる領域の位置や大きさ等も合わせて変更しなければ、変更後の流速値のスケールで血流情報を表示できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、血流情報に表示される流速値のスケールの変更を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波診断装置は、収集部と、表示制御部と、受付部と、変更部とを備える。収集部は、複数のフレームの同一位置のそれぞれにおける反射波データのデータ列に対してフレーム方向でフィルタ処理を行って、注目部位を含む第1の領域における血流情報を収集する。表示制御部は、第1の流速値の範囲にて前記血流情報を表示させる。受付部は、前記血流情報が表示される流速値の範囲を、前記第1の流速値の範囲から、第2の流速値の範囲に変更する指示を受け付ける。変更部は、前記第2の流速値の範囲に基づいて、前記血流情報を収集するスキャン領域を、前記第1の領域から、前記注目部位が含まれる第2の領域に変更する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るドプラモード用の超音波走査の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、血流表示画面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、血流表示画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る血流表示画面及び受付画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る変更機能の処理の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る変更機能の処理の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る変更機能の処理の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係るスケール変更後の血流表示画面の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る警告表示の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例に係るROI選択画面の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、変形例に係るROI選択画面の別の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、変形例に係る変更機能の処理の一例を説明するための図である。
【
図15】
図15は、変形例に係る変更確認画面の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、変形例に係る変更確認画面の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照して、超音波診断装置及び超音波診断プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
【0010】
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の概要について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103と、装置本体100とを有する。超音波プローブ101、入力装置102、及びディスプレイ103は、装置本体100と通信可能に接続される。なお、被検体Pは、超音波診断装置1の構成に含まれない。
【0011】
超音波プローブ101は、超音波の送受信を行う。例えば、超音波プローブ101は、複数の圧電振動子を有する。これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101が有する複数の圧電振動子は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。例えば、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
【0012】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
なお、第1の実施形態に係る超音波プローブ101は、被検体Pを2次元で走査する1Dアレイプローブであっても、被検体Pを3次元で走査するメカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブであっても適用可能である。
【0014】
入力装置102は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等の装置に対応する。入力装置102は、超音波診断装置1の操作者(不図示)からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0015】
ディスプレイ103は、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
【0016】
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。
図1に示す装置本体100により生成される超音波画像データは、2次元の反射波信号に基づいて生成される2次元の超音波画像データであっても、3次元の反射波信号に基づいて生成される3次元の超音波画像データであってもよい。
【0017】
装置本体100は、
図1に例示するように、送受信回路110と、Bモード処理回路120と、ドプラ処理回路130と、画像生成回路140と、画像メモリ150と、内部記憶回路160と、処理回路170とを備える。送受信回路110、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130、画像生成回路140、画像メモリ150、内部記憶回路160、及び処理回路170は、互いに通信可能に接続される。
【0018】
送受信回路110は、後述する処理回路170の指示に基づいて、超音波プローブ101が行う超音波送受信を制御する。送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定の繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0019】
なお、送受信回路110は、後述する処理回路170の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0020】
また、送受信回路110は、アンプ回路、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延回路、加算器、直交検波回路等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路により受信遅延時間が与えられた反射波信号の加算処理を行う。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0021】
そして、直交検波回路は、加算器の出力信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(以下、IQ信号と記載する)を反射波データとして、バッファ111に格納する。なお、直交検波回路は、加算器の出力信号を、RF(Radio Frequency)信号に変換した上で、バッファ111に格納してもよい。IQ信号や、RF信号は、位相情報が含まれる信号(受信信号)となる。なお、以下において、送受信回路110が出力する反射波データを、受信信号と記載する場合がある。
【0022】
ここで、バッファ111は、送受信回路110が生成した反射波データ(IQ信号)を一時的に記憶するバッファである。具体的には、バッファ111は、数フレーム分のIQ信号、又は、数ボリューム分のIQ信号を記憶する。例えば、バッファ111は、FIFO(First-In/First-Out)メモリであり、所定フレーム分のIQ信号を記憶する。そして、例えば、バッファ111は、新たに1フレーム分のIQ信号が送受信回路110にて生成された場合、生成時間が最も古い1フレーム分のIQ信号を破棄して、新たに生成された1フレーム分のI/Q信号を記憶する。なお、バッファ111は、送受信回路110、Bモード処理回路120、及びドプラ処理回路130とそれぞれ通信可能に接続される。
【0023】
なお、送受信回路110は、1回の超音波ビームの送信により得られる各圧電振動子の反射波信号から複数の受信フォーカスの反射波データを生成することができる。すなわち、送受信回路110は、並列同時受信処理を行うことが可能な回路である。なお、第1の実施形態は、送受信回路110が並列同時受信処理を実行できない場合であっても適用可能である。
【0024】
Bモード処理回路120及びドプラ処理回路130は、送受信回路110が反射波信号から生成した反射波データに対して、各種の信号処理を行う信号処理部である。Bモード処理回路120は、バッファ111から読み出した反射波データ(IQ信号)に対して、対数増幅、包絡線検波処理、対数圧縮などを行って、多点の信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。なお、Bモードデータは、形態情報の一例である。
【0025】
なお、Bモード処理回路120は、フィルタ処理により、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。このBモード処理回路120のフィルタ処理機能を用いることにより、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)や、ティッシュハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)等のハーモニックイメージングを実行可能である。
【0026】
また、このBモード処理回路120のフィルタ処理機能を用いることにより、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、ティッシュハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)を実行可能である。
【0027】
また、CHIやTHIのハーモニックイメージングを行う際、Bモード処理回路120は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法が行われる。AM法、PM法及びAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回行う。これにより、送受信回路110は、各走査線で複数の反射波データ(受信信号)を生成し出力する。そして、Bモード処理回路120は、各走査線の複数の反射波データ(受信信号)を、変調法に応じた加減算処理することで、ハーモニック成分を抽出する。そして、Bモード処理回路120は、ハーモニック成分の反射波データ(受信信号)に対して包絡線検波処理等を行って、Bモードデータを生成する。
【0028】
ドプラ処理回路130は、バッファ111から読み出した反射波データを周波数解析することで、走査範囲内にある移動体のドプラ効果に基づく運動情報を抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、ドプラ処理回路130は、移動体の運動情報として、平均速度、平均分散値、平均パワー値等を、複数のサンプル点それぞれで推定したドプラデータを生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。本実施形態に係るドプラ処理回路130は、血流の運動情報(血流情報)として、血流の平均速度、血流の平均分散値、血流の平均パワー値等を、複数のサンプル点それぞれで推定したドプラデータを生成する。
【0029】
上記のドプラ処理回路130の機能を用いて、本実施形態に係る超音波診断装置1は、カラーフローマッピング法(CFM:Color Flow Mapping)とも呼ばれるカラードプラ法を実行可能である。CFM法では、超音波の送受信が複数の走査線上で複数回行われる。そして、CFM法では、同一位置のデータ列に対してMTI(Moving Target Indicator)フィルタを掛けることで、静止している組織、或いは、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制して、血流に由来する信号を抽出する。そして、CFM法では、この血流信号から血流の速度、血流の分散、血流のパワー等の血流情報を推定する。後述する画像生成回路140は、推定結果の分布を、例えば、2次元でカラー表示した超音波画像データ(カラードプラ画像データ)を生成する。そして、ディスプレイ103は、カラードプラ画像データを表示する。なお、ドプラ処理回路130は、血流情報を収集する収集部の一例である。収集部としてのドプラ処理回路130は、複数のフレームの同一位置のそれぞれにおける反射波データのデータ列に対してフレーム方向でフィルタ処理を行って、血流情報を収集する。
【0030】
MTIフィルタとしては、通常、バタワース型のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタや、多項式回帰フィルタ(Polynomial Regression Filter)等、係数が固定されたフィルタが用いられる。一方、本実施形態に係るドプラ処理回路130は、MTIフィルタとして、入力信号に応じて係数を変化させる適応型のMTIフィルタを用いる。具体的には、本実施形態に係るドプラ処理回路130は、適応型のMTIフィルタとして、「Eigenvector Regression Filter」と呼ばれているフィルタを用いる。以下、固有ベクトルを用いた適応型MTIフィルタである「Eigenvector Regression Filter」を、「固有ベクトル型MTIフィルタ」と記載する。
【0031】
固有ベクトル型MTIフィルタは、相関行列から固有ベクトルを計算し、計算した固有ベクトルから、クラッタ成分抑制処理に用いる係数を計算する。この方法は、主成分分析や、カルーネン・レーベル変換(Karhunen-Loeve transform)、固有空間法で使われている手法を応用したものである。
【0032】
固有ベクトル型MTIフィルタを用いる第1の実施形態に係るドプラ処理回路130は、同一位置(同一サンプル点)の連続した反射波データのデータ列から、走査範囲の相関行列を計算する。例えば、ドプラ処理回路130は、相関行列の固有値及び当該固有値に対応する固有ベクトルを計算する。そして、ドプラ処理回路130は、例えば、各固有値の大きさに基づいて各固有ベクトルを並べた行列のランクを低減した行列を、クラッタ成分を抑制するフィルタ行列として計算する。ここで、ドプラ処理回路130は、例えば、予め設定された値、或いは、操作者が指定した値により、低減される主成分の数、すなわち、ランクカット数の値を決定する。しかし、心臓や血管等、拍動により移動速度が時間により変化する組織が走査範囲内に含まれる場合、ランクカット数の値は、固有値の大きさから適応的に決定されることが好適である。すなわち、ドプラ処理回路130は、相関行列の固有値の大きさに応じて、低減する主成分の数を変更する。本実施形態では、ドプラ処理回路130は、固有値の大きさに応じて、低減するランク数を変更する。
【0033】
ドプラ処理回路130は、フィルタ行列を用いて、同一位置(同一サンプル点)の連続した反射波データのデータ列から、クラッタ成分が抑制され、血流に由来する血流信号が抽出されたデータ列を出力する。ドプラ処理回路130は、出力したデータを用いた自己相関演算等の演算を行って、血流情報を推定し、推定した血流情報をドプラデータとして出力する。
【0034】
画像生成回路140は、Bモード処理回路120及びドプラ処理回路130が生成したデータから超音波画像データを生成する。画像生成回路140は、Bモード処理回路120が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路140は、ドプラ処理回路130が生成した2次元のドプラデータから血流情報が映像化された2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。画像生成回路140は、ドプラ画像データとして、血流情報がカラーで表示されるカラードプラ画像データを生成したり、1つの血流情報がグレースケールで表示されるドプラ画像データを生成したりする。
【0035】
ここで、画像生成回路140は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成回路140は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路140は、スキャンコンバート以外に、種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像生成回路140は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0036】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路140が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像生成回路140は、スキャンコンバート処理前の2次元超音波画像データから、表示用の2次元超音波画像データを生成する。
【0037】
更に、画像生成回路140は、Bモード処理回路120が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行うことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路140は、ドプラ処理回路130が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行うことで、3次元ドプラ画像データを生成する。
【0038】
更に、画像生成回路140は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行う。画像生成回路140が行うレンダリング処理としては、例えば、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行ってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成回路140が行うレンダリング処理としては、例えば、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。
【0039】
画像メモリ150は、画像生成回路140が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ150は、Bモード処理回路120やドプラ処理回路130が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ150が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路140を経由して表示用の超音波画像データとなる。また、画像メモリ150は、送受信回路110が出力した反射波データを記憶することも可能である。
【0040】
内部記憶回路160は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶回路160は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶回路160が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部装置へ転送することができる。また、内部記憶回路160は、外部装置から図示しないインターフェースを経由して転送されたデータを記憶することも可能である。
【0041】
処理回路170は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路170は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶回路160から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130及び画像生成回路140の処理を制御する。また、処理回路170は、画像メモリ150や内部記憶回路160が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ103にて表示するように制御する。
【0042】
例えば、処理回路170は、送受信回路110を介して超音波プローブ101を制御することで、超音波走査の制御を行う。通常、CFM法では、血流像データであるカラードプラ画像データとともに、組織像データであるBモード画像データを表示する。かかる表示を行うため、処理回路170は、第1走査範囲内の血流情報を取得する第1超音波走査を超音波プローブ101に実行させる。第1超音波走査は、例えば、ドプラモードでカラードプラ画像データを収集するための超音波走査である。また、処理回路170は、第1超音波走査とともに、第2走査範囲内の組織形状の情報を取得する第2超音波走査を超音波プローブ101に実行させる。第2超音波走査は、例えば、BモードでBモード画像データを収集するための超音波走査である。
【0043】
また、処理回路170は、第1受付機能171と、第2受付機能172と、変更機能173と、表示制御機能174とを実行する。ここで、処理回路170の構成要素である第1受付機能171、第2受付機能172、変更機能173、及び表示制御機能174が実行する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で内部記憶回路160に記録されている。処理回路170は、各プログラムを内部記憶回路160から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。すなわち、第1受付機能171は、処理回路170が第1受付機能171に対応するプログラムを内部記憶回路160から読み出し実行することで、実現される機能である。また、第2受付機能172は、処理回路170が第2受付機能172に対応するプログラムを内部記憶回路160から読み出し実行することで、実現される機能である。また、変更機能173は、処理回路170が変更機能173に対応するプログラムを内部記憶回路160から読み出し実行することで、実現される機能である。また、表示制御機能174は、処理回路170が表示制御機能174に対応するプログラムを内部記憶回路160から読み出し実行することで、実現される機能である。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路170は、
図1の処理回路170内に示された各機能を有することとなる。第1受付機能171、第2受付機能172、変更機能173、及び表示制御機能174が実行する各処理機能については、後述する。
【0044】
また、上記の実施形態においては、単一の処理回路170にて、上述した各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0045】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、内部記憶回路160にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0046】
ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、血流を高速、高分解能、高フレームレートに映像化することにより、通常のドプラ法と比較してクラッタ成分を大幅に抑制した血流情報を得るドプラモード用の超音波走査を実行する。具体的には、第1の実施形態で行なわれる第1超音波走査は、複数の走査線で形成される走査範囲での超音波送受信により、同一位置の反射波データを複数フレームにわたって収集可能な走査形態を繰り返すことで、実行される。より具体的には、第1の実施形態で行なわれる第1超音波走査は、複数の走査線で形成される走査範囲での超音波送受信を各走査線で1回とする走査形態を繰り返すことで、実行される。かかる走査形態は、通常のBモードで行なわれる第2超音波走査と同じ走査形態であり、フレームレートを向上させるためにCFM法で行なわれている走査形態と同じ走査形態である。
【0047】
図2は、第1の実施形態に係るドプラモード用の超音波走査の一例を示す図である。
図2に示す例では、超音波診断装置1の処理回路170は、第2超音波走査として第2走査範囲を分割した複数の分割範囲それぞれの超音波走査を、第1超音波走査の間に時分割で超音波プローブ101に実行させる。換言すると、処理回路170は、第1超音波走査の間に第2超音波走査の一部分を行い、数フレーム分の第1超音波走査を行う期間で、1フレーム分の第2超音波走査を完結させる。かかる走査形態により、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、第1超音波走査と第2超音波走査とで超音波送受信条件を独立に設定可能となる。例えば、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、第2超音波走査をTHI法に基づく条件で実行させることができる。すなわち、第2超音波走査は、上述したフィルタ処理によりTHIを行うための超音波送受信条件で実行することができる。また、第2超音波走査は、上述したAM法、PM法、AMPM法、又は差音成分を用いた方法等、1本の走査線に対して複数レートの超音波送信を行う映像化法に基づくTHIを行うための超音波送受信条件で実行することができる。
【0048】
図2を用いて、上記の処理の一例について説明する。例えば、処理回路170は、操作者からの指示や、初期設定された情報等に基づいて、第2走査範囲を4つの分割範囲(第1分割範囲~第4分割範囲)に分割する。なお、
図2に示す「B」は、Bモード用の送受信条件を用いて超音波走査(第2超音波走査)が行われている範囲を示している。また、
図2に示す「D」は、カラードプラモード用の送受信条件を用いて超音波走査(第1超音波走査)が行われている範囲を示している。例えば、
図2に示す「D」は、上記の高フレームレート法で行われる超音波走査が行われている範囲となる。すなわち、
図2に例示する第1超音波走査は、一般的なカラードプラ法のように、超音波を同一方向に複数回送信して、複数回反射波を受信するのではなく、各走査線で超音波送受信を1回行っている。処理回路170は、第1超音波走査として、第1走査範囲を形成する複数の走査線それぞれで1回ずつ超音波送受信を行い、複数フレーム分の反射波を用いて血流情報を取得する方法(高フレームレート法)に基づく超音波走査を実行させる。
【0049】
まず、処理回路170は、第2超音波走査として第1分割範囲の超音波走査を実行させ(
図2の(1)を参照)、第1走査範囲(1フレーム分)の第1超音波走査を実行させる(
図2の(2)を参照)。そして、処理回路170は、第2超音波走査として第2分割範囲の超音波走査を実行させ(
図2の(3)を参照)、第1走査範囲(1フレーム分)の第1超音波走査を実行させる(
図2の(4)を参照)。そして、処理回路170は、第2超音波走査として第3分割範囲の超音波走査を実行させ(
図2の(5)を参照)、第1走査範囲(1フレーム分)の第1超音波走査を実行させる(
図2の(6)を参照)。そして、処理回路170は、第2超音波走査として第4分割範囲の超音波走査を実行させ(
図2の(7)を参照)、第1走査範囲(1フレーム分)の第1超音波走査を実行させる(
図2の(8)を参照)。このように、処理回路170は、複数の分割範囲それぞれの第2超音波走査を、第1超音波走査の間に時分割で実行させる。なお、
図2の(9)~(16)の超音波走査は、(1)~(8)の超音波走査の繰り返しに対応するので、説明を省略する。
【0050】
ここで、処理回路170は、第1超音波走査が行われる間隔を等間隔とする。すなわち、第1走査範囲の「ある走査線」上の「点X」は、
図2の(2)、(4)、(6)、(8)、(10)、(12)、(14)、及び(16)の第1超音波走査で1回ずつ走査されるが、その走査間隔は、一定の時間「T」となるように制御される。具体的には、処理回路170は、第2超音波走査で行われる各分割走査に要する時間を同一として、第1超音波走査が行われる間隔を等間隔とする。例えば、処理回路170は、
図2の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)、(13)、及び(15)で行われる第2超音波走査の分割走査に要する時間が同じ時間となるように制御する。処理回路170は、第2走査範囲を分割した各分割範囲の大きさや、走査線数、走査線密度及び深度等を同一とする。
【0051】
図2に示す例では、組織像データは、第2走査範囲全体に対応する第1分割範囲「B」~第4分割範囲「B」の第2超音波走査が行われるごとに生成される。例えば、
図2の(7)までの第2超音波走査が行われると、(1)の第1分割範囲「B」、(3)の第2分割範囲「B」、(5)の第3分割範囲「B」、及び(7)の第4分割範囲「B」の情報に基づいて、第2走査範囲全体の組織像データが生成される。また、
図2の(9)までの第2超音波走査が行われると、(9)の第1分割範囲「B」、(3)の第2分割範囲「B」、(5)の第3分割範囲「B」、及び(7)の第4分割範囲「B」の情報に基づいて、第2走査範囲全体の組織像データが生成される。また、
図2の(11)までの第2超音波走査が行われると、(9)の第1分割範囲「B」、(11)の第2分割範囲「B」、(5)の第3分割範囲「B」、及び(7)の第4分割範囲「B」の情報に基づいて、第2走査範囲全体の組織像データが生成される。このように、処理回路170は、各分割範囲「B」の第2超音波走査が行われるごとに、各分割範囲「B」の組織像データを更新する。なお、1本の走査線に対して複数レートの超音波送信を行う映像化法に基づくTHIを行う場合は、1フレーム分の受信信号を得るための超音波送信回数が増えるため、通常のBモード撮影や、フィルタ処理によりTHIを行う場合と比較して、第2走査範囲の分割数を増やす必要がある。例えば、PM法を行う場合、第2走査範囲は、4分割から8分割に変更される。
【0052】
また、移動体情報の画像(血流画像等)は、複数のフレームの同じ位置のそれぞれにおける反射波データのデータ列に対するフィルタ処理(例えば、固有ベクトル型MTIフィルタを用いたフィルタ処理)により生成される。ここで、1つの移動体情報を出力するために用いられるデータ列のデータ長は、任意に設定(変更)可能である。更に、前の時相の移動体情報を出力するために用いられるデータ列と、次の時相の移動体情報を出力するために用いられるデータ列とを重複させることが可能であり、この重複数も任意に設定(変更)可能である。
【0053】
例えば、
図2において、データ列のデータ長が「4」に設定され、表示されるフレーム間におけるデータ列の重複数が「2」に設定される場合について説明する。かかる場合、例えば、
図2の(8)までの第1超音波走査が行われると、(2)の位置X1、(4)の位置X2、(6)の位置X3、及び(8)の位置X4のデータ列に対してフィルタ処理を行うことで、第1フレームの位置Xの移動体情報が生成される。そして、走査範囲内の各位置について移動体情報を生成することで、第1フレームの移動体情報が生成される。また、
図2の(12)までの第1超音波走査が行われると、(6)の位置X3、(8)の位置X4、(10)の位置X5、及び(12)の位置X6のデータ列に対してフィルタ処理を行うことで、第2フレームの位置Xの移動体情報が生成される。そして、走査範囲内の各位置について移動体情報を生成することで、第2フレームの移動体情報が生成される。また、
図2の(16)までの第1超音波走査が行われると、(10)の位置X5、(12)の位置X6、(14)の位置X7、及び(16)の位置X8のデータ列に対してフィルタ処理を行うことで、第3フレームの位置Xの移動体情報が生成される。そして、走査範囲内の各位置について移動体情報を生成することで、第3フレームの移動体情報が生成される。このように、処理回路170は、第1超音波走査が重複数「2」に対応する回数行われるごとに、データ長「4」のデータ列に対してフィルタ処理を行って、各フレームの移動体情報を生成する。
【0054】
このように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、血流を高分解能、高フレームレートに映像化することにより、通常のドプラ法と比較してクラッタ成分を大幅に抑制した血流画像を得る高フレームレート法に基づく超音波走査を実行する。すなわち、超音波診断装置1は、走査範囲を形成する各走査線で1回ずつ超音波送受信を行う第1超音波走査の間に、各分割範囲の第2超音波走査を時分割で実行することにより、血流画像及び組織像を高分解能かつ高フレームレートで生成する。また、超音波診断装置1は、複数フレームの同じ位置のデータ列に対して固有ベクトル型MTIフィルタを用いたフィルタ処理を行うことにより、クラッタ成分を大幅に抑制した血流画像を生成する。
【0055】
超音波診断装置1は、生成される血流画像を表示する際、観察可能な血流量の流速値の範囲を示すスケールを設定する。なお、以下において、観察可能な血流量の流速値の範囲を示すスケールを、単に「流速値のスケール」と表記する場合がある。
図3及び
図4は、血流表示画面の一例を示す図である。
図3は、例えば、表示される血流量の流速値のスケールを上げる、すなわち、より高速の血流画像を視認しやすくするような変更を受け付けた場合の画面の遷移を示す。また、
図4は、例えば、表示される血流量の流速値のスケールを下げる、すなわち、より低速の血流画像を視認しやすくするような変更を受け付けた場合の画面の遷移を示す。なお、以下において、ドプラデータ用の運動情報のスキャンが行われる領域を「スキャン領域」と表記する場合がある。また、血流情報は、スキャン領域において収集されるので、スキャン領域は血流情報の表示領域に対応する。なお、
図3及び
図4に示す画面は、例えば
図1に示すディスプレイ103に表示される。
【0056】
第1の実施形態に係る超音波診断装置1による、ドプラモード用の超音波走査においては、例えば、診断しようとする注目部位を含むスキャン領域が、関心領域(Region Of Interest:ROI)として設定される。例えば、頸部の動脈瘤を注目部位とする場合、頸部が関心領域として設定される。また、心臓の弁を注目部位とする場合、心臓の一部が関心領域として設定される。
図3上段の画面(A)は、組織像10上に表示されるROI11に含まれる血流を示す画像を含む。
図3上段の画面(A)において、ROI11は、注目部位AA1を含む。なお、
図4上段の画面(A)は、
図3上段の画面(A)と同一の画像である。
【0057】
ROI11には、血流が検出された位置に対して、その流速値に対応する画素値が割り当てられている。
図3上段の画面(A)のROI11において検出された流速値のスケールは、スケール12によって示されている。なお、
図3上段の画面(A)は、流速値のスケールが±1.5[cm/s]である場合の画面の一例を示す。また、流速値の符号は、血流の方向に対応する。
【0058】
図3及び
図4に示すように、表示される血流量の流速値は、画素値に対応する。
図3の画面(A)のスケール12は、流速が遅い場合、すなわち低い流速値は、暗い画素値に対応し、流速が速い場合、すなわち高い流速値は、明るい画素値に対応することを示す。
【0059】
例えば、±1.5[cm/s]の流速値のスケールによって血流画像に割り当てられていた画素値は、
図3下段の画面(B)のスケール14に示すような±3.3[cm/s]の流速値のスケールでは暗い画素値の方へシフトしてしまい、判別が難しくなる。逆に、±1.5[cm/s]の流速値のスケールによって血流画像に割り当てられていた画素値は、
図4の画面(B)のスケール22に示すような±0.9[cm/s]の流速値のスケールでは明るい画素値の外側へシフトしてしまい、判別が難しくなる。このため、予め設定した流速値のスケールを超える流速の血流画像を判別する際には、流速値のスケールの設定を変更することが望ましい。
【0060】
ドプラモード用の超音波走査において、表示される血流量の流速値のスケールは、PRFと密接に関係する。表示される血流量の流速値のスケールを上昇させたい場合、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、例えば、±1.5[cm/s]のスケールの血流が表示されている場合において、
図3下段の画面(B)に示すように±3.3[cm/s]のスケールの血流を表示させたい場合は、PRFを上昇させる必要がある。逆に、表示される血流量の流速値のスケールを低下させたい場合、例えば、±1.5[cm/s]のスケールの血流が表示されている場合において、
図4下段の画面(B)に示すように±0.9[cm/s]のスケールの血流を表示させたい場合は、PRFを低下させる必要がある。
【0061】
また、PRFは、1フレーム分の走査にかかる時間に対応する。1フレーム分の走査にかかる時間(以下「FT」と表記する場合がある)は、例えば、走査線ごとの送受信時間(以下「T」と表記する場合がある)と、スキャン領域に含まれる走査線の数(以下「Rnum」と表記する場合がある)とに基づき、以下のような数式により算出される。
【0062】
FT=T×Rnum ・・・ (1)
【0063】
例えば、
図4下段の画面(B)に示すように、ROIの下端を深さ方向(下方向)に移動させると、PRFの変更前における走査線ごとの第1送受信時間(以下、「T1」と表記する場合がある)よりも、変更後における走査線ごとの第2送受信時間(以下、「T2」と表記する場合がある)が長くなる。この場合において、走査線の数(Rnum)が変更されなければ、式(1)により算出される1フレーム分の走査にかかる時間(FT)が長くなる。この場合において、ROIのアスペクト比を維持する場合、ROIの上端もROIの下端と同様に移動する、すなわち、ROI全体が深さ方向(下方向)に移動する。
【0064】
また、T1とT2とが変わらない場合においても、走査線の数(Rnum)を変更することにより、1フレーム分の走査にかかる時間(FT)は変化する。例えば、
図3下段の画面(B)に示すように、ROIの方位方向(Lateral方向、幅方向)の長さを狭めると、ROIの方向に含まれる走査線の数(Rnum)が少なくなる。なお、
図3下段の画面(B)に示す例においては、ROIの深さ方向の大きさが維持されることにより、ROIのアスペクト比が変更される。
【0065】
また、例えば、ROIの方位方向の長さが変わらない場合においても、走査条件に含まれる走査線の数(密度)を減らすと、ROIの方向に含まれる走査線の数(Rnum)が少なくなる。このように、走査線の数が減少すると、式(1)により算出される1フレーム分の走査にかかる時間(FT)は短くなる。この場合、ROIの方位方向の大きさ、深さ方向の位置、及びアスペクト比のいずれも変わらない。
【0066】
このように、PRFは、ROIの方位方向の長さ(関心領域の大きさ)、深さ方向の位置(深度)、及び走査線の密度(ラスタ密度)等のパラメータに影響される。パラメータとPRFとの関係は、後に詳しく説明する。
【0067】
しかしながら、上記のドプラモード用の超音波走査では、例えば、所望の流速値のスケールで血流情報を表示しようとする際に、スキャンが行われる領域内に所望の注目部位が含まれなくなる場合があった。例えば、
図3下段の画面(B)に示す、流速値のスケールを上げた場合のROI13は、ROIの方位方向の長さを狭めることにより、注目部位AA1の右端よりも、ROI13の左端の方が右側に来ている。同様に、例えば、
図4の画面(B)に示す、流速値のスケールを下げた場合のROI21は、ROIのアスペクト比を維持しようとする場合、ROIが深さ方向(下方向)に移動されたことにより、注目部位AA1の下端よりも、ROI21の上端が深くなっている。流速値のスケールを変更する場合において、所望の注目部位が関心領域に含まれるように、他のパラメータを調整することは容易ではない。
【0068】
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、流速値のスケールを変更した場合においても、注目部位における血流情報を表示するために、以下の各処理機能を実行する。すなわち、超音波診断装置1は、流速値のスケールを変更する指示を受け付けるとともに、受け付けた流速値のスケールに基づいて、スキャン領域を注目部位が含まれる領域に変更する。
【0069】
図1の説明に戻る。第1の実施形態に係る処理回路170は、第1受付機能171と、第2受付機能172と、変更機能173と、表示制御機能174とを実行する。
【0070】
第1受付機能171は、血流情報の表示において、表示される流速値のスケールを設定する設定指示、及び設定された流速値のスケールを変更する変更指示を受け付ける。例えば、第1受付機能171は、入力装置102の操作に応じて、表示される流速値のスケールを上下可能なUI(User Interface)を提供する。なお、第1受付機能171及び第2受付機能172は、受付部の一例である。
【0071】
一例として、入力装置102として、超音波診断装置1の操作パネル上のつまみ(不図示)を用いる場合を説明する。この場合、第1受付機能171には、つまみの回転方向と表示される流速値のスケールの上下とが対応付けられ、つまみの回転量と流速値のスケールの変化量とが対応付けられている。例えば、
図3上段の画面(A)のスケール12に示す状態において、操作者が、流速値のスケールを±1.5[cm/s]から上げる方向につまみを回転させると、第1受付機能171は、つまみの回転量に応じて流速値のスケールを上げる。例えば、
図3上段の画面(A)のスケール12に示す状態において、操作者がつまみを±3.3[cm/s]の位置に回転させることにより、
図3下段の画面(B)のスケール14に示すように、流速値のスケールを上げる。また、流速値のスケールを下げる方向に操作者がつまみを回転させると、第1受付機能171は、つまみの回転量に応じて流速値のスケールを下げる。例えば、
図3上段の画面(A)のスケール12に示す状態において、操作者が、流速値のスケールを±1.5[cm/s]から下げる方向につまみを回転させると、第1受付機能171は、
図4下段の画面(B)のスケール22に示すように、流速値のスケールを下げる。なお、第1受付機能171によって提供されるUIは、上記の例に限定されるものではなく、操作者の指示によってパラメータを変更するための如何なる技術が適用されてもよい。例えば、第1受付機能171は、つまみに限らず、ボタン(不図示)やタッチパネル(不図示)等の操作によって流速値のスケールを変更してもよい。
【0072】
第2受付機能172は、血流情報を表示させる際の条件に関する指示を受け付ける。例えば、第2受付機能172は、後に説明するように、入力装置102の操作に応じて、注目部位の名称や位置など、注目部位を設定するための情報の入力を受付可能なUIを提供する。また、第2受付機能172は、後に説明するように、入力装置102の操作に応じて、ROIの大きさ、ROIの位置、ROI内の走査線(ラスタ)の数(密度)、超音波の送信周波数等、ROIを設定するための任意のパラメータを変更可能なUIを提供してもよい。そして、第2受付機能172は、受け付けた指示に基づいて、注目部位及びROIを設定する。
【0073】
第2受付機能172は、例えば、
図5下段に示すような受付画面を表示させる。
図5は、第1の実施形態に係る血流表示画面及び受付画面の一例を示す図である。
図5上段の画面(a)は、例えば、注目部位AA2として心臓の弁を含む、心臓がROI51として設定された血流表示画面である。
図5上段の画面(a)に示すROI51は、Bモード画像で示される心臓部分の組織像50上に表示される。
図5上段の画面(a)は、例えば、流速値のスケールが「±1.5[cm/s]」であることを示すスケール52をさらに含む。また、
図5下段の画面(b)は、例えば、画面(a)に対応する、注目部位AA2の名称又は位置の指定を受け付けるための受付画面である。
図5下段の画面(b)は、右心房(RA)、右心室(RV)、左心房(LA)、左心室(LV)等の心臓の各部位に関する情報を含む。
【0074】
図5下段の画面(b)は、例えば、操作者による、注目部位AA2の名称の選択を受け付けるプルダウンメニューPM1を含む。
図5下段の画面(b)は、例えば、プルダウンメニューPM1において、「僧房弁」が選択された場合を示す。この場合において、第2受付機能172は、例えば、公知の画像処理技術により、選択された部位に対応する注目部位AA2を、
図5上段の画面(a)に示すBモード画像上で特定してもよい。
【0075】
第2受付機能172が操作者による指示を受け付けるための構成はこれに限られず、例えば、部位の名称を示すフリーワードや座標の入力を受け付け、入力に対応する注目部位を特定するような構成であってもよい。また、
図5下段の画面(b)に示すように、受付画面は、例えば、操作者による、注目部位AA2の位置を特定するための指示を受け付けるカーソルC1を含んでもよい。この場合において、第2受付機能172は、操作者による注目部位の指定を直接受け付けてもよく、また、予め特定された注目部位AA2に対するドラッグ&ドロップ操作等により、注目部位AA2を移動させる指示をさらに受け付けてもよい。
【0076】
変更機能173は、第1受付機能171が変更指示を受け付けた場合に、変更指示に応じて流速値のスケールを変更し、変更した流速値のスケールに応じて、ROIに関する他のパラメータを変更する。変更機能173は、ROIに関する他のパラメータを変更する際、変更後のROIに、注目部位が含まれるように、変更後のパラメータを設定する。なお、変更機能173は、変更部の一例である。また、変更後のROIは、第2の領域の一例である。
【0077】
変更機能173は、まず、第1受付機能171が変更指示を受け付けると、例えば
図5上段の画面(a)に示すような注目部位AA2の位置を特定する。また、変更機能173は、変更前の流速値のスケールにおけるPRFに対応する1フレーム分の走査にかかる時間(以下において、「FT1」と表記する場合がある)と、変更後の流速値のスケールにおけるPRFに対応する1フレーム分の走査にかかる時間(以下において、「FT2」と表記する場合がある)とを比較する。そして、変更機能173は、FT1とFT2との比較結果に基づいて、注目部位AA2が含まれるようなROIを設定する。
【0078】
FT1とFT2との比較について、
図6乃至
図9を用いて説明する。
図6乃至
図8は、第1の実施形態に係る変更機能の処理の一例を説明するための図である。
図9は、第1の実施形態に係るスケール変更後の血流表示画面の一例を示す図である。
図6乃至
図8には、超音波走査にかかる各種のパラメータの変更を例示する。また、
図9は、
図6乃至
図8に示す変更後の各パラメータに対応する血流表示画面を例示する。
【0079】
図6では、例えば、
図5上段の画面(a)に示すROI51に含まれる注目部位AA2に表示される血流量の流速値のスケール(±1.5[cm/s])を、
図9上段の画面(a)のスケール53に示すように、「±0.9[cm/s]」に下げる指示が行われた場合を説明する。
図6の上段に示すように、流速値のスケールを下げる指示が行われる前には、超音波プローブ101は、例えば、ROI51内の各走査線に対して、第1送受信時間(T1)で、超音波の送受信を行っている。そして、第1受付機能171が流速値のスケールを下げる指示を受け付けると、変更機能173は、FT1とFT2との比較を行う。この場合、変更機能173は、FT2をFT1よりも長くするために、走査線ごとの第1送受信時間(T1)を、第2送受信時間(T2)に変更する。そして、変更機能173は、走査線ごとの送受信時間した走査条件を送受信回路110、Bモード処理回路120、及びドプラ処理回路130へ送り、その走査条件による超音波走査を実行させる。
【0080】
これにより、
図6の上段に示すROI51が、
図6の下段に示すROI54に変更されるので、
図5上段の画面(a)が、
図9上段の画面(a)のように変更される。この結果、変更後のROI54においても、
図6の下段及び
図9上段の画面(a)に示すように、注目部位AA2が含まれる。
【0081】
次に、
図7では、例えば、
図5上段の画面(a)に示すROI51に含まれる注目部位AA2に表示される血流量の流速値のスケール(±1.5[cm/s])を、
図9中段の画面(b)のスケール55に示すように、「±3.3[cm/s]」に上げる指示が行われた場合を説明する。
図6に示す例と同様に、
図7の上段においても、流速値のスケールを上げる指示が行われる前には、超音波プローブ101は、
図5上段の画面(a)に示すROI51内の各走査線に対して、第1送受信時間(T1)で超音波の送受信を行っている。そして、第1受付機能171が流速値のスケールを上げる指示を受け付けると、変更機能173は、FT1とFT2との比較を行う。この場合、変更機能173は、FT2をFT1よりも短くするために、ROIの方位方向の大きさ(幅)を縮小する。この際、変更機能173は、縮小されるROIが、注目部位AA2を含むように、ROIの方位方向の大きさ(幅)を設定する。なお、この場合において、走査線ごとの送受信時間(T)は変更しないものとするが、ROIの方位方向の大きさの縮小に伴い、走査線の数(Rnum)は減少する。これにより、式(1)により算出されるFT2は、変更前のFT1よりも小さくなる。そして、変更機能173は、ROIの方位方向の大きさ(幅)を縮小した走査条件を送受信回路110、Bモード処理回路120、及びドプラ処理回路130へ送り、その走査条件による超音波走査を実行させる。
【0082】
これにより、
図7の上段に示すROI51が、
図7の下段に示すROI56に変更されるので、
図5上段の画面(a)が、
図9中段の画面(b)のように変更される。この結果、変更後のROI56においても、
図7の下段及び
図9中段の画面(b)に示すように、注目部位AA2が含まれる。
【0083】
図8では、例えば、
図5上段の画面(a)に示すのROI51に含まれる注目部位AA2に表示される血流量の流速値のスケール(±1.5[cm/s])を、
図9下段の画面(c)のスケール59に示すように、「±5.0[cm/s]」に上げる指示が行われた場合を説明する。この場合、変更機能173は、
図7で説明した、流速値のスケールを「±3.3[cm/s]」に上げる場合よりも、さらにFT2を大幅に短縮させる必要がある。
【0084】
この場合において、
図8中段の(b)に示すように走査線ごとの第2送受信時間(T2)を、第1送受信時間(T1)より短くする場合、注目部位AA2のうち少なくとも一部が、変更後のROI57に含まれなくなる。また、
図8中段の(c)に示すようにROIの方位方向の大きさ(幅)を縮小する場合、例えばラスタ密度を変更せずに走査線の本数を12本から6本に削減する場合も、注目部位AA2のうち少なくとも一部が、変更後のROI57’に含まれなくなる。さらに、走査線の数を削減することによりROI56の方位方向の大きさを変えずに流速値のスケールを上げようとすると、走査線の本数が変更前の半分になるため、十分な画質を担保されなくなる場合がある。
【0085】
そこで、変更機能173は、
図8下段の(d)に示すように、ROIの方位方向の大きさ(幅)を縮小するとともに、走査条件に含まれる走査線の密度を減らすことで、流速値のスケールを上げた後も、第2送受信時間(T2)を維持する(第1送受信時間(T1)と同程度に保つ)。図示の例では、変更機能173は、ROIの方位方向の大きさ(幅)を、注目部位AA2の全体を含む範囲で小さくする。すなわち、縮小後のROI58の幅は、
図8中段の(c)に示す変更後のROI57’よりは大きい。また、変更機能173は、変更後のROI58に含まれる走査線の数を12本から6本に減らしている。すなわち、変更後のROI58においては、ラスタ密度は低下しているが、ROI56の方位方向の大きさを維持する場合よりは高いラスタ密度が維持されることにより、十分な画質が担保される。そして、変更機能173は、方位方向の大きさと走査線の密度との両方を削減した走査条件を送受信回路110、Bモード処理回路120、及びドプラ処理回路130へ送り、その走査条件による超音波走査を実行させる。これにより、ROIの位置又は大きさを変更するだけではFT2を削減しきれない場合であっても、流速値のスケールの変更指示を上げることができる。
【0086】
ここで、変更後の走査線の数を算出する処理を具体的に説明する。変更機能173は、まず、走査線の数を維持すると仮定した場合の不足分の送受信時間を、下記の式(2)によって算出する。なお、式(2)において、ΔTは不足分の送受信時間を表し、T1は第1送受信時間を表し、T2は第2送受信時間を表す。また、Rnum1は、流速値のスケールを上げる指示を受け付ける前の走査線の数を表す。
【0087】
ΔT=T1×Rnum1-T2×Rnum1 ・・・ (2)
【0088】
続いて、変更機能173は、不足分の送受信時間(ΔT)が何本の走査線に対応するかを、下記の式(3)によって算出する。なお、式(3)において、Rnum2は、不足分の送受信時間(ΔT)で送受信可能な走査線の数を表す。
【0089】
Rnum2=ΔT/T1 ・・・ (3)
【0090】
そして、変更機能173は、流速値のスケールを変更した後の走査線の数を、下記の式(4)によって算出する。なお、式(4)において、Rnum3は、流速値のスケールを変更した後の走査線の数を表す。
【0091】
Rnum3=Rnum1-Rnum2 ・・・ (4)
【0092】
これにより、
図8の上段に示すROI56が、
図8の下段に示すROI58に変更されるので、
図9中段の画面(b)が、
図9下段の画面(c)のように変更される。なお、ROI58の方位方向の大きさは、ROI56から縮小されているが、ROI58の深さ方向の位置は、ROI56から変更されていない。この結果、変更後のROI58においても、
図8の下段及び
図9下段の画面(c)に示すように、十分な画質を担保しつつ、注目部位AA2の全体が含まれる。
【0093】
なお、変更機能173は、流速値のスケールを変更する場合において、スケールの変更に応じてROIを変更した場合に、注目部位を含むようなROIを設定することができるか否かを判定してもよい。変更機能173は、いずれのROIの変更によっても、注目部位を含むようなROIを設定することができない場合、流速値のスケールの変更を認めないような構成であってもよい。この場合において、変更機能173は、流速値のスケールの変更を認めないことについての警告を出力させてもよい。
図10は、第1の実施形態に係る警告表示の一例を示す図である。
図10に示すようなメッセージを含む画面は、例えば表示制御機能174により出力される。なお、メッセージは、警告の一例である。
【0094】
図10は、例えば、スケール61に示すような流速値のスケールが±5.0[cm/s]である状態において、流速値のスケールを上げようとする変更が認められない場合に出力される警告表示である。
図10に示されるように、ROI62の方位方向の大きさ(幅)、及び、深さ方向の位置のいずれを変更した場合においても、変更後のROIは、注目部位AA2の少なくとも一部を含まなくなる。また、
図10において、例えば、ROI62に含まれる走査線の数を削減した場合に、十分な画質が担保されなくなる場合を示す。
図10に示す警告表示は、例えば、「指定のスケールでは表示できません」というメッセージを含む。
【0095】
注目部位を含むようなROIを設定することができるか否かを判定する場合、超音波診断装置1において、変更機能173は、次のように処理を実行する。例えば、変更機能173は、流速値のスケールを上げる指示が行われた場合において、変更後のROIと注目部位との位置関係を特定する。例えば、
図9中段の画面(b)のROI54に含まれる注目部位AA2に表示される血流量の流速値のスケールを上げる指示が行われた場合、
図9中段に示すように走査線ごとの第2送受信時間(T2)を、第1送受信時間(T1)より短くする場合も、
図7に示すようにROIの方位方向の大きさ(幅)を縮小する場合も、注目部位AA2のうち少なくとも一部が、変更後のROI57に含まれなくなる。この場合において、例えば、変更機能173は、
図9下段に示すように走査条件に含まれる走査線の数を減らした場合に、十分な画質が担保されるか否かをさらに判定する。例えば、変更機能173は、走査線の数(若しくは密度)の閾値を記憶しており、走査条件に含まれる走査線の数が閾値以下となるか否かを判定することとしてもよい。変更機能173は、例えば、走査条件に含まれる走査線の数を減らした場合に十分な画質が担保されない場合、流速値のスケールの変更を認めないと判定する。
【0096】
表示制御機能174は、設定又は変更された流速値のスケールに基づいて、血流情報の表示を制御する。なお、表示制御機能174は、表示制御部の一例である。例えば、表示制御機能174は、画像生成回路140から、3次元ドプラ画像データに含まれる、座標ごとの血流の速度に関する情報を逐次取得する。また、表示制御機能174は、第1受付機能171から、設定された流速値のスケールに関する情報を取得する。表示制御機能174は、第2受付機能172から、設定された注目部位やROIに関する各パラメータを取得する。そして、表示制御機能174は、取得した座標ごとの血流の速度に関する情報を、取得した流速値のスケールに対応する画素値に変換する。表示制御機能174は、取得した各パラメータにより特定されるROIにおいて、変換された画素値を含む血流画像を表示させる。
【0097】
また、例えば、表示制御機能174は、第1受付機能171から、流速値のスケールの変更に関する情報を取得すると、取得した座標ごとの血流の速度に関する情報を、取得した変更後の流速値のスケールに対応する画素値に変換する。また、表示制御機能174は、変更機能173から、注目部位やROIに関する各パラメータの変更に関する情報を取得する。そして、表示制御機能174は、取得した座標ごとの血流の速度に関する情報を、取得した流速値のスケールに対応する画素値に変換する。表示制御機能174は、取得した各パラメータを用いて、ROIを変更する。そして、表示制御機能174は、変更後のROIにおいて、変換された画素値を含む血流画像を表示させる。
【0098】
なお、表示制御機能174は、変更機能173から、流速値のスケールの変更を認めないことについての警告の出力を受けた場合、
図10に示すようなメッセージを含む画面を表示させてもよい。
【0099】
次に、第1の実施形態に係る超音波診断装置による処理の流れについて説明する。
図11は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
図11に示す処理手順は、例えば、ドプラモード用の超音波走査を開始する旨の開始指示を操作者から受け付けた場合に開始される。
【0100】
ステップS101において、処理回路170は、ドプラモード用の超音波走査を開始する旨の開始指示を受け付けたか否かを判定する。ここで、ドプラモード用の超音波走査を開始する旨の開始指示を受け付けると、処理回路170は、ステップS102以降の処理を開始する。なお、ステップS101が否定される場合には、ステップS102以降の処理は開始されず、処理回路170の各処理機能は待機状態である。
【0101】
ステップS101が肯定されると、ステップS102において、第2受付機能172は、注目部位を検出する。次に、ステップS103において、第1受付機能171は、流速値のスケールを設定する。次に、ステップS110において、第2受付機能172は、ROIを設定する。次に、ステップS111において、処理回路170は、ドプラモード用の超音波走査を実行する。例えば、処理回路170は、送受信回路110、Bモード処理回路120、及びドプラ処理回路130等を制御することで、超音波走査の制御を行う。
【0102】
ステップS112において、処理回路170は、画像を表示する。例えば、処理回路170は、ドプラモード用の超音波走査によって収集した反射波データに基づき、画像生成回路140によって生成された画像をディスプレイ103に表示する。具体的には、処理回路170は、組織像を表示するとともに、組織像10上の指定された領域(ROI)に血流画像を重畳表示する。
【0103】
ステップS120において、第1受付機能171は、流速値のスケールの変更を受け付けたか否かを判定する。ここで、流速値のスケールの変更を受け付けると、変更機能173は、ステップS130以降の処理を実行する。なお、ステップS120が否定される場合には、ステップS190の処理へ移行する。
【0104】
ステップS120が肯定されると、ステップS130において、変更機能173は、変更後の流速値のスケールは、表示可能な範囲内であるか否かを判定する。ここで、表示可能な範囲内であると判定されると、変更機能173は、ステップS140以降の処理を実行する。なお、ステップS130が否定される場合には、ステップS131において、表示制御機能174は、例えば
図10に示すようなメッセージを表示させる。その後、ステップS190の処理へ移行する。
【0105】
ステップS140において、変更機能173は、流速値のスケールを変更する。次に、ステップS150において、変更機能173は、ROIを移動させるか否かを判定する。ここで、ROIを移動させる場合、ステップS151において、変更機能173は、ROIを、例えば深さ方向に移動する。その後、ステップS190の処理へ移行する。
【0106】
ステップS150が否定されると、ステップS160において、変更機能173は、ROIのサイズを変更させるか否かを判定する。ここで、ROIのサイズを変更させる場合、変更機能173は、ステップS161において、変更機能173は、ROIのサイズを、例えばROIの方位方向に変更させる。その後、ステップS190の処理へ移行する。
【0107】
ステップS160が否定されると、ステップS162において、変更機能173は、ROIのラスタ密度を変更させる。その後、ステップS190の処理へ移行する。
【0108】
ステップS190において、処理回路170は、ドプラモード用の超音波走査を終了する旨の終了指示を受け付けたか否かを判定する。ここで、ドプラモード用の超音波走査を終了する旨の終了指示を受け付けると、処理回路170は、
図11の処理手順を終了する。なお、ステップS190が否定される場合には、ステップS111の処理へ移行する。
【0109】
上述してきたように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、流速値のスケールを変更する指示を受け付けた場合、変更後のROIに注目部位が含まれるように、ROIの各パラメータを変更する。このため、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、血流情報に表示される流速値のスケールの変更を容易にすることができる。これによれば、例えば、超音波診断装置1は、医師が異なる流速の血流を診断に用いる場合に、医師が所望する流速の血流画像を提供する際に、注目部位がROIから逸脱することを抑制することができる。
【0110】
(変形例)
上述した各実施形態では、超音波診断装置1及び超音波診断装置1が実行する方法について詳細に説明したが、実施形態はこれに限らず、超音波診断システム、方法、集積回路等の各種の形態で実施することもできる。
【0111】
例えば、変更機能173が、流速値のスケールの変更に応じて変更するROIのパラメータ、例えば、方位方向の長さ、深さ方向の位置、ラスタ密度等を決定する構成について説明したが、実施の形態はこれに限られない。例えば、表示制御機能174は、変更後のROIの候補を複数表示させ、ROIをどのように変更するか、すなわちROIのどのパラメータを変更するかの指示を受け付けるような画面を表示させてもよい。
図12は、変形例に係るROI選択画面の一例を示す図である。
図12に示すように、ROI選択画面は、例えば、操作者による、ROIのパラメータの選択を受け付けるプルダウンメニューPM2を含む。
図12は、例えば、プルダウンメニューPM2において、ROIの「深度」が選択された場合を示す。この場合においては、
図12に示すROI30が、深さ方向に移動したROI32に変更される。同様に、例えば、プルダウンメニューPM2において、ROIの「幅」が選択された場合においては、
図12に示すROI30が、方位方向(幅方向)に拡大したROI31に変更される。
【0112】
なお、
図12では、変更されるROIのパラメータの種類が異なる複数のROIの候補を表示させる構成を示したが、これに限られず、同一のパラメータを変更した複数のROIの候補を表示させてもよい。
図13は、変形例に係るROI選択画面の別の一例を示す図である。
図13に示すROI選択画面は、変更前のROI11と、ROI11の方位方向の大きさを変更した複数のROIの候補71乃至75を含む。この場合において、
図13に示すROI選択画面は、操作者が、カーソルC2を用いてROIの候補71乃至75のうちいずれか1つをクリックする操作により、変更後のROIの候補の選択を受け付けるような構成であってもよい。なお、変更前のROI11は、第2の領域の一例である。
【0113】
なお、
図13に示すROI選択画面は、同一の大きさのROIの候補を複数含むが、これに限られず、最大範囲から最小範囲まで、大きさの異なる複数のROIの候補を含んでもよい。また、
図13に示すROI選択画面は、カーソルC2を用いたドラッグ&ドロップ操作により、変更後のROIの大きさ、位置等を特定するための指示を受け付けるような構成であってもよい。これにより、操作者が、直感的な操作により、変更後のROIの候補を移動させ、又は変更後のROIの候補のサイズを変更させることができる。
【0114】
また、上記の各実施形態においては、変更機能173が、ROIの方位方向の大きさ、及び、深さ方向の位置のうち、いずれか1つのみを変更する構成について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、変更機能173が、ROIの方位方向の大きさと、深さ方向の位置との両方を変更するような構成であってもよく、また、ROIの深さ方向の位置と、ラスタ密度との両方を変更するような構成であってもよい。
図14は、変形例に係る変更機能の処理の一例を説明するための図である。
図14に示すように、変更後のROI41は、ROI21の方位方向の大きさを縮小させるとともに、ROI21の深さ方向の位置も上方向に移動している。このように、変更機能173が、ROIの2つ以上のパラメータを同時に変更させるような構成であってもよい。これにより、例えば、ROIのアスペクト比及び中心位置を維持したまま、流速値のスケールを変化させることができる。
【0115】
また、上記の各実施形態においては、流速値のスケールの変更に伴い、ROIが変更される構成について説明したが、例えば、変更後のROIに注目部位が含まれなくなる場合等、流速値のスケールを変更すると操作者の希望する条件を満たさなくなる場合がある。そこで、表示制御機能174が、流速値のスケールを変更した場合のROIをプレビュー表示する変更確認画面を出力し、操作者による操作に基づいて、変更後のROIを表示させるか否かを決定するような構成であってもよい。
【0116】
図15は、変形例に係る変更確認画面の一例を示す図である。
図15は、例えば、
図3上段の画面(A)に示す流速値のスケール「±1.5[cm/s]」で血流を表示する画面において、流速値のスケールを「±3.3[cm/s]」に上げる場合の変更後のROIの候補19をプレビュー表示させる画面である。
図15に示すように、変更確認画面においては、変更前のROI11が実線で示されるとともに、変更後のROIの候補19が破線で示される。
図15に示す変更確認画面において、変更後のROIの候補19は、例えば、変更前のROI11の方位方向の大きさを縮小したものである。また、
図15に示す変更確認画面は、変更後の流速値のスケール「±3.3[cm/s]」を示すスケール15を含む。さらに、
図15に示す変更確認画面は、確定ボタンB1と、確定ボタンが押されなければ変更を取り消す旨のメッセージM1とを含む。
図15に示す変更確認画面において、例えば、所定の時間(例えば3秒)以内に確定ボタンB1が操作されない場合、変更後のROIの候補19による表示がキャンセルされ、変更前のROI11による表示が継続される。
【0117】
図15では、操作者による操作によりROIの変更が確定する構成を示したが、これに限られず、操作者による操作があった場合に、ROIの変更がキャンセルされるような構成であってもよい。
図16は、変形例に係る変更確認画面の別の一例を示す図である。
図16は、例えば、
図4上段の画面(A)に示す流速値のスケール「±1.5[cm/s]」で血流を表示する画面において、流速値のスケールを「±0.9[cm/s]」に下げる場合の変更後のROIの候補33をプレビュー表示させる画面である。
図16に示す変更確認画面において、変更後のROIの候補33は、例えば、変更前のROI11を深さ方向(下方向)に移動したものである。また、
図16に示す変更確認画面は、変更後の流速値のスケール「±0.9[cm/s]」を示すスケール23を含む。さらに、
図16に示す変更確認画面は、取消ボタンB2と、取消ボタンが押されなければ変更を確定する旨のメッセージM1とを含む。
図16に示す変更確認画面において、例えば、所定の時間(3秒)以内に取消ボタンB2が操作された場合、変更後のROIの候補33による表示がキャンセルされ、変更前のROI11による表示が継続される。
【0118】
このように、表示制御機能174は、
図15及び
図16に示すような変更確認画面を表示させることにより、変更後のROIの候補が操作者の希望する条件を満たさない場合にも、変更前の表示に容易に復帰させることができる。なお、
図15及び
図16に示すような変更確認画面には変更後の流速値のスケールが表示されているが、例えば、変更前の流速値のスケールをさらに表示させるような構成であってもよい。
【0119】
また、上記の各実施形態においては、注目部位として、頸部の動脈瘤や心臓の弁を例示したが、実施形態はこれに限られない。例えば、リウマチなど、表皮・整形領域において超音波診断を行う場合、手や足の指の関節等を注目部位としてもよい。例えば、同じ深さで広い幅を観察したい表皮・整形領域では、流速値のスケールを下げる際に、ROIを方位方向に広げることができるので、臨床的に有用である。また、胎児診断等、移動する注目部位を追尾するような構成であってもよい。
【0120】
また、注目部位の全体が含まれなければROIの変更を認めない構成について説明したが、注目部位の一部だけでも含まれる場合はROIの変更を認めるような構成であってもよい。また、運動情報は、血流以外の移動体に関する情報であってもよい。
【0121】
また、表示制御機能174は、
図10に示すような警告表示を行う際に、設定可能な範囲で流速値のスケールを変更するか否かを確認するようなメッセージを表示させてもよい。例えば、表示制御機能174は、流速値のスケールを±5.5[cm/s]に上げようとする変更が認められない場合において、「表示可能なスケール(±5.2cm/s)に上げますか?」というようなメッセージを表示させてもよい。表示制御機能174は、当該メッセージに対応する流速値のスケールの変更の指示が行われた場合に、変更後の流速値のスケールによる血流情報を表示させてもよい。
【0122】
なお、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0123】
また、上記の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0124】
また、上記の実施形態で説明した超音波診断方法は、予め用意された超音波診断プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この超音波診断方法は、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この超音波診断方法は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0125】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、血流情報に表示される流速値のスケールの変更を容易にすることができる。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0127】
1 超音波診断装置
100 装置本体
130 ドプラ処理回路
170 処理回路
171 第1受付機能
172 第2受付機能
173 変更機能
174 表示制御機能