(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】振動センサ
(51)【国際特許分類】
G01H 11/08 20060101AFI20240925BHJP
G01P 15/09 20060101ALI20240925BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240925BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20240925BHJP
【FI】
G01H11/08 Z
G01P15/09 D
H10N30/30
H10N30/88
(21)【出願番号】P 2019060233
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 益人
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】瓦井 秀憲
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-049925(JP,A)
【文献】特開2015-083794(JP,A)
【文献】特開2018-053748(JP,A)
【文献】特開2007-056754(JP,A)
【文献】特開2018-009870(JP,A)
【文献】特表平02-503952(JP,A)
【文献】特開2002-214249(JP,A)
【文献】特開平11-094677(JP,A)
【文献】実開昭57-118332(JP,U)
【文献】特開平07-218370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
F02D 41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のベースと、金属製のポールと、振動子とを備えた振動センサであって、
前記振動センサは、非共振型センサであり、
前記ポールは、大径部と、小径部と、支持面とを有しており、
前記大径部は、前記ベースに固定されており、且つ、前記ベースから上下方向において上方に延びており、
前記小径部は、前記大径部の上端から上方に延びており、
前記上下方向と直交する水平面において、前記小径部は、前記大径部の内側に位置しており、
前記支持面は、前記大径部の上面であり、前記水平面において、前記大径部の外周と前記小径部の外周との間に位置しており、
前記振動子は、圧電素子と、支持板とを備えており、
前記圧電素子及び前記支持板の夫々は、前記水平面において、中心孔が形成された円形状を有しており、
前記圧電素子は、前記支持板に支持されており、
前記小径部は、前記圧電素子の前記中心孔及び前記支持板の前記中心孔を前記上下方向に貫通しており、
前記圧電素子の前記
水平面における内周部及び前記支持板の前記
水平面における内周部は、前記支持面に向かって押し付けられて
おり、
前記圧電素子は、前記支持板の上面にのみ設けられている
振動センサ。
【請求項2】
請求項1記載の振動センサであって、
前記ベース及び前記ポールを前記上下方向に沿って上方から見ると、前記ポールは、前記ベースの内側に位置している
振動センサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の振動センサであって、
前記振動センサは、ナットを備えており、
前記小径部には、少なくとも部分的にネジが形成されており、
前記ナットは、前記小径部にねじ込まれており、
前記圧電素子の前記内周部及び前記支持板の前記内周部は、前記ナットと前記支持面との間に挟み込まれている
振動センサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の振動センサであって、
前記支持面と前記ベースとの間の前記上下方向における距離は、前記圧電素子の前記水平面における外径の0.25倍以上かつ2倍以内である
振動センサ。
【請求項5】
請求項3記載の振動センサであって、
前記大径部は、円柱形状を有している
振動センサ。
【請求項6】
請求項5記載の振動センサであって、
前記圧電素子の前記水平面における外径は、前記大径部の前記水平面における外径よりも大きく、且つ、前記大径部の前記外径の5倍以内である
振動センサ。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載の振動センサであって、
前記ナットの下端面は、前記水平面において環形状を有しており、
前記ナットの前記下端面の前記水平面における外径は、前記大径部の前記水平面における外径と等しい
振動センサ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の振動センサであって、
前記小径部は、円柱形状を有している
振動センサ。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の振動センサであって、
前記振動子は、ユニモルフ型圧電振動子である
振動センサ。
【請求項10】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の振動センサであって、
前記振動子は、バイモルフ型圧電振動子である
振動センサ。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかに記載の振動センサであって、
前記振動子は、錘を備えている
振動センサ。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれかに記載の振動センサを備えた測定機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を使用した振動センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、圧電素子を使用した加速度センサ(振動センサ)が開示されている。
【0003】
図10を参照すると、特許文献1の振動センサ90は、圧電素子からなる圧電振動子92と、金属板94と、ケース982と、基板984とを備えている。基板984は、上下方向においてケース982内部の底面988の上に固定されており、これにより、ケース982と共に支持部材98を構成している。金属板94は、上下方向と直交する所定方向に沿って延びるようにして支持部材98に取り付けられている。詳しくは、金属板94の所定方向における両端部は、基板984の上に固定されている。一方、金属板94の所定方向における中間部は、底面988から上方に離れて位置しており、底面988に沿って延びている。圧電振動子92は、金属板94の所定方向における中間部に固定されている。即ち、圧電振動子92は、支持部材98によって、両持ち梁状に支持されている。
【0004】
圧電振動子92には、電極924が設けられている。圧電振動子92は、支持部材98に加速度が加えられたとき、加速度の上下方向の成分に応じて上下方向に振動して撓み、金属板94と電極924との間に撓みに応じた電圧が生じる。金属板94と電極924との間に生じた電圧を測定することで、支持部材98に加えられた加速度を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の支持構造によれば、支持部材98が上下方向と直交する水平方向の両側に引っ張られたような場合、支持部材98が歪み、これにより、金属板94が上下方向に撓むおそれがある。この場合、金属板94と電極924との間に加速度に起因しないノイズ電圧が生じ、正しい加速度が検出できない。即ち、特許文献1の振動センサによれば、圧電素子の支持部材の歪に起因して測定電圧にノイズが生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、圧電素子の支持部材が歪んでもノイズが生じ難い振動センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の振動センサとして、
ベースと、ポールと、振動子とを備えた振動センサであって、
前記ポールは、大径部と、小径部と、支持面とを有しており、
前記大径部は、前記ベースに固定されており、且つ、前記ベースから上下方向において上方に延びており、
前記小径部は、前記大径部の上端から上方に延びており、
前記上下方向と直交する水平面において、前記小径部は、前記大径部の内側に位置しており、
前記支持面は、前記大径部の上面であり、前記水平面において、前記大径部の外周と前記小径部の外周との間に位置しており、
前記振動子は、圧電素子と、支持板とを備えており、
前記圧電素子及び前記支持板の夫々は、前記水平面において、中心孔が形成された円形状を有しており、
前記圧電素子は、前記支持板に支持されており、
前記小径部は、前記圧電素子の前記中心孔及び前記支持板の前記中心孔を前記上下方向に貫通しており、
前記圧電素子の前記水平方向における内周部及び前記支持板の前記水平方向における内周部は、前記支持面に向かって押し付けられている
振動センサを提供する。
【0009】
また、本発明は、第2の振動センサとして、第1の振動センサであって、
前記振動センサは、ナットを備えており、
前記小径部には、少なくとも部分的にネジが形成されており、
前記ナットは、前記小径部にねじ込まれており、
前記圧電素子の前記内周部及び前記支持板の前記内周部は、前記ナットと前記支持面との間に挟み込まれている
振動センサを提供する。
【0010】
また、本発明は、第3の振動センサとして、第1又は第2の振動センサであって、
前記振動センサは、非共振型センサである
振動センサを提供する。
【0011】
また、本発明は、第4の振動センサとして、第1から第3までのいずれかの振動センサであって、
前記支持面と前記ベースとの間の前記上下方向における距離は、前記圧電素子の前記水平面における外径の0.25倍以上かつ2倍以内である
振動センサを提供する。
【0012】
また、本発明は、第5の振動センサとして、第1から第4までのいずれかの振動センサであって、
前記大径部は、円柱形状を有している
振動センサを提供する。
【0013】
また、本発明は、第6の振動センサとして、第5の振動センサであって、
前記圧電素子の前記水平面における外径は、前記大径部の前記水平面における外径よりも大きく、且つ、前記大径部の前記外径の5倍以内である
振動センサを提供する。
【0014】
また、本発明は、第7の振動センサとして、第5又は第6の振動センサであって、
前記ナットの下端面は、前記水平面において環形状を有しており、
前記ナットの前記下端面の前記水平面における外径は、前記大径部の前記水平面における外径と等しい
振動センサを提供する。
【0015】
また、本発明は、第8の振動センサとして、第1から第7までのいずれかの振動センサであって、
前記小径部は、円柱形状を有している
振動センサを提供する。
【0016】
また、本発明は、第9の振動センサとして、第1から第8までのいずれかの振動センサであって、
前記振動子は、ユニモルフ型圧電振動子である
振動センサを提供する。
【0017】
また、本発明は、第10の振動センサとして、第1から第8までのいずれかの振動センサであって、
前記振動子は、バイモルフ型圧電振動子である
振動センサを提供する。
【0018】
また、本発明は、第11の振動センサとして、第1から第10までのいずれかの振動センサであって、
前記振動子は、錘を備えている
振動センサを提供する。
【0019】
また、本発明は、第1の測定機器として、第1から第11までのいずれかの振動センサを備えた測定機器を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧電素子を備えた振動子は、ベースに固定されて上方に延びるポールの支持面によって支持されており、ベースの歪が振動子に伝わり難い。加えて、本発明の振動子は、中心孔が形成された円板形状を有しており、振動子の内周部は、支持面に向かって押し付けられている。この構造によれば、ベースの歪に起因して、圧電素子が水平面と平行な第1水平方向において引っ張られたとしても、圧電素子は、水平面と平行且つ第1水平方向と直交する第2水平方向において圧縮される。この結果、ベースの歪に起因して生じうるノイズが相殺される。以上のように、本発明によれば、圧電素子の支持部材(ベース及びポール)が歪んでもノイズが生じ難い振動センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態による振動センサを示す斜視図である。
【
図2】
図1の振動センサを示す上面図である。ポールの隠れた大径部及びナットの隠れた下面の輪郭を破線で描画している。
【
図3】
図2の振動センサをIII-III線に沿って示す断面図である。ベースとポールとの間の境界、ポールの大径部と小径部との間の境界、及び、ポールの小径部と上端部との間の境界を破線で描画している。
【
図4】
図1の振動センサを示す分解斜視図である。圧電素子の内周部と外周部との間の輪郭を破線で描画している。
【
図5】
図5(A)は、本実施の形態の振動センサの振動子の振動による撓みを模式的に示す図である。
図5(B)は、比較例の振動センサの振動子の振動による撓みを模式的に示す図である。
【
図6】
図1の振動センサの変形例を示す斜視図である。
【
図7】
図1の振動センサの別の変形例を備えた測定機器を部分的に示す一部切り欠き斜視図である。
【
図8】
図7の測定機器の第1実施例による測定結果を示す図である。
【
図9】
図7の測定機器の第2実施例による測定結果を示す図である。
【
図10】特許文献1の加速度センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施の形態による振動センサ10は、金属製の支持部材12と、振動子40と、ナット50とを備えている。振動子40は、ナット50によって支持部材12に押し付けられつつ、支持部材12に支持されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、振動子40が支持部材12に支持されている限り、ナット50は、必要に応じて設ければよい。一方、振動センサ10は、上述した部材に加えて、更に別の部材を備えていてもよい。
【0023】
本実施の形態による振動センサ10は、測定装置80(
図7参照)のような電子機器の部品として使用可能である。振動センサ10を搭載した電子機器に振動や衝撃が加わると、電子機器に加速度が生じ、これにより、振動センサ10の振動子40が撓む。振動センサ10は、振動子40の撓みを電圧に変換して出力するベンディング型のセンサである。振動センサ10が出力した電圧を測定することで、電子機器に生じた加速度を検出でき、これにより加えられた振動や衝撃を検出できる。
【0024】
図1から
図4までを参照すると、本実施の形態の支持部材12は、金属からなり、高い剛性を有している。即ち、支持部材12は、加速度を受けたときに歪み難い。この構造により、振動子40には、加速度に応じた撓みが生じ易い。但し、支持部材12の材料は、金属に限られない。例えば、支持部材12が十分な剛性を有している限り、支持部材12は、樹脂からモールド成型してもよい。
【0025】
振動センサ10は、金属製のベース20と、金属製のポール30とを備えている。本実施の形態において、ベース20及びポール30の夫々は、支持部材12の一部である。換言すれば、ベース20とポール30とは、互いに一体に形成されており、互いに固定されている。但し、本発明は、これに限られない。ポール30がベース20に固定されている限り、ベース20とポール30とは、互いに別体に形成されていてもよい。
【0026】
本実施の形態のベース20は、上下方向(Z方向)と直交する水平面(XY平面)と平行に延びる平板であり、XY平面において矩形形状を有している。但し、本発明は、これに限られず、ベース20の形状は、必要に応じて様々に変形可能である。
【0027】
図3及び
図4を参照すると、本実施の形態のポール30は、大径部32と、支持面(上面)34と、小径部36と、上端部38とを有している。ポール30は、ベース20からZ方向において上方に(+Z方向に沿って)直線状に延びている。
【0028】
詳しくは、大径部32は、上端324と、下端322とを有している。上端324及び下端322は、Z方向における大径部32の両端に夫々位置している。大径部32は、下端322においてベース20に固定されており、且つ、ベース20から上端324まで真直ぐ上方に延びている。小径部36は、上端364と、下端362とを有している。上端364及び下端362は、Z方向における小径部36の両端に夫々位置している。小径部36は、下端362において大径部32の上端324に固定されており、且つ、大径部32の上端324から上端364まで真直ぐ上方に延びている。
【0029】
本実施の形態のポール30には、上端部38が設けられている。上端部38は、小径部36の上端364から真直ぐ上方に延びている。但し、本発明は、これに限られず、上端部38は、必要に応じて設ければよい。
【0030】
図2から
図4までを参照すると、大径部32は、XY平面における外周326を有しており、小径部36は、XY平面における外周366を有している。本実施の形態において、大径部32は、円柱形状を有しており、外周326は、円筒形状を有している。また、小径部36は、円柱形状を有しており、外周366は、円筒形状を有している。大径部32のXY平面における中心点の位置と、小径部36のXY平面における中心点の位置とは、互いに一致している。
【0031】
上述の構造により、ポール30は、大径部32及び小径部36のXY平面における中心点を中心とする径方向において、同じ力に対して同様に歪む。但し、本発明は、これに限られない。例えば、大径部32及び小径部36の夫々のXY平面における形状は、多角形であってもよい。また、大径部32及び小径部36の夫々のXY平面におけるサイズは、Z方向における位置によって異なっていてもよい。
【0032】
XY平面における小径部36のサイズは、XY平面における大径部32のサイズよりも小さい。加えて、XY平面において、小径部36は、大径部32の内側に位置している。この構造により、小径部36と大径部32との間には、大径部32の上面34が形成されている。大径部32の上面34は、XY平面と平行な平面であり、Z方向において大径部32の上端324に位置している。大径部32の上面34は、振動子40を支持する支持面34として機能する。即ち、支持面34は、大径部32の上面34であり、XY平面において、大径部32の外周326と小径部36の外周366との間に位置している。
【0033】
図1、
図3及び
図4を参照すると、振動子40は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等の圧電体からなる圧電素子42と、金属製の支持板44と、電極48とを備えている。圧電素子42は、Z方向において一様に分極処理されている。電極48は、圧電素子42の上面(+Z側の面)に銀ペースト等の導電性材料を塗布して形成されている。圧電素子42は、支持板44に支持されている。本実施の形態によれば、圧電素子42の下面(-Z側の面)は、導電接着剤等の固定剤によって、支持板44の上面に強固に固定されて支持されている。但し、圧電素子42と支持板44とが、1つの振動子40として一体に振動する限り、圧電素子42の支持方法は、本実施の形態に限られない。
【0034】
圧電素子42及び支持板44の夫々は、円板形状を有している。詳しくは、圧電素子42は、XY平面において、円形の中心孔422が形成された円形状を有しており、支持板44は、XY平面において、円形の中心孔442が形成された円形状を有している。本実施の形態において、圧電素子42の中心孔422は、XY平面において、圧電素子42の中心に位置しており、支持板44の中心孔442は、XY平面において、支持板44の中心に位置している。圧電素子42の中心孔422のXY平面におけるサイズは、支持板44の中心孔442のXY平面におけるサイズと等しい。また、振動子40において、圧電素子42のXY平面における中心点の位置と、支持板44のXY平面における中心点の位置とは、互いに一致している。
【0035】
上述の構造により、振動子40がZ方向に沿った加速度を受けると、XY平面における中心点を中心とする径方向において同じ位置にある振動子40の部位は、同様に振動する。但し、本発明は、これに限られない。例えば、圧電素子42の中心孔422及び支持板44の中心孔442の夫々のXY平面における形状は、多角形であってもよい。また、圧電素子42の中心孔422のXY平面におけるサイズは、支持板44の中心孔442のXY平面におけるサイズと異なっていてもよい。
【0036】
図3及び
図4を参照すると、振動子40は、ポール30の小径部36に取り付けられている。詳しくは、小径部36のXY平面における外径は、圧電素子42の中心孔422及び支持板44の中心孔442のXY平面における直径以下である。小径部36は、圧電素子42の中心孔422及び支持板44の中心孔442をZ方向に貫通しており、圧電素子42の上面を越えて上方に突出している。小径部36のXY平面における中心点の位置と、振動子40のXY平面における中心点の位置とは、互いに一致している。また、振動子40の下面は、ポール30の支持面34と接触している。
【0037】
本実施の形態において、ポール30の小径部36には、少なくとも部分的にネジ368が形成されている。また、本実施の形態のナット50には、小径部36のネジ368に対応するネジ58が形成されている。ナット50は、小径部36にねじ込まれており、これにより、振動子40を支持面34に押し付けている。
【0038】
詳しくは、圧電素子42は、XY平面において中心孔422の周辺に位置する内周部424と、XY平面において内周部424の外側に位置する外周部426とを有している。支持板44は、XY平面において中心孔442の周辺に位置する内周部444と、XY平面において内周部444の外側に位置する外周部446とを有している。
【0039】
圧電素子42の内周部424及び支持板44の内周部444は、支持面34の真上に位置している。この配置により、圧電素子42の内周部424及び支持板44の内周部444は、ナット50と支持面34との間に挟み込まれており、Z方向において互いに押し付けられている。換言すれば、圧電素子42のXY平面における内周部424及び支持板44のXY平面における内周部444は、支持面34に向かって押し付けられている。一方、圧電素子42及び支持板44のXY平面における外径は、ポール30の大径部32のXY平面における外径よりも大きい。即ち、圧電素子42は、支持板44に支持されつつ、XY平面において大径部32から張り出している。
【0040】
図5(A)を参照すると、振動子40のXY平面における中心部は、ポール30によって支持されている一方、振動子40のうちXY平面においてポール30から張り出した部位は、Z方向において振動可能である。即ち、振動子40は、ポール30によって、Z方向(分極方向)に撓むことができるように支持されている。
【0041】
詳しくは、振動センサ10が加速度を受けると、振動子40は加速度に比例する慣性力を受ける。例えば、振動センサ10に分極方向(Z方向)の加速度が加えられると、振動子40のうちXY平面においてポール30から張り出した部位が分極方向に撓む。この結果、振動子40の電極48と支持板44に、それぞれ逆符号の電荷が生じる。即ち、電極48と支持板44との間に、加速度に比例した電圧(検出電圧VD)が生じる。生じた検出電圧VDは、導電線(図示せず)を経由して増幅回路(図示せず)に入力される。増幅回路によって増幅された電圧(出力信号)を測定することで、振動センサ10に加えられた加速度を検出できる。
【0042】
振動子40は、振動センサ10に加えられた加速度の周波数が共振周波数と一致するか又は共振周波数に近い場合、加速度の大きさが僅かであっても大きく撓む。換言すれば、振動子40は、共振周波数及び共振周波数の近傍において大きく撓み、これにより大きな検出電圧VDを生じる。一方、振動子40は、共振周波数よりも十分に低い周波数帯域において、加速度の周波数に係らず、加速度の大きさに略比例した検出電圧VDを生じる。本実施の形態の振動センサ10は、振動子40の共振周波数よりも十分に低い周波数帯域で使用される非共振型センサである。本実施の形態の振動センサ10が使用される周波数帯域は、基準周波数(例えば、157Hz)における検出電圧VDと比べて所定範囲内にある検出電圧VDが得られる範囲である。
【0043】
以上の説明から理解されるように、振動センサ10が使用可能な周波数帯域を広くするという観点から、振動子40の共振周波数は、高いほうが好ましい。例えば、振動子40の共振周波数は、振動センサ10が使用される周波数帯域の上限値の3倍以上であることが好ましい。但し、振動子40の共振周波数が高くなると、振動子40の検出電圧VDが小さくなり易い。従って、振動子40の共振周波数は、所定の範囲内にあることが好ましい。
【0044】
図3を参照すると、本実施の形態によれば、圧電素子42を備えた振動子40は、ベース20に固定されて上方に延びるポール30の支持面34によって支持されており、ベース20の歪が振動子40に伝わり難い。即ち、検出電圧VDに、ベース20の歪に起因するノイズが生じ難い。
【0045】
加えて、本実施の形態の振動子40は、中心孔422,442が形成された円板形状を有しており、振動子40の内周部424,444は、支持面34に向かって押し付けられている。この構造によれば、ベース20の歪に起因して、圧電素子42がXY平面と平行な第1水平方向(例えば、X方向)において引っ張られたとしても、圧電素子42は、XY平面と平行且つ第1水平方向と直交する第2水平方向(例えば、Y方向)において圧縮される。この結果、ベース20の歪に起因して検出電圧VDに生じうるノイズが相殺される。
【0046】
以上のように、本発明によれば、圧電素子42の支持部材12(ベース20及びポール30)が歪んでもノイズが生じ難い振動センサ10を提供できる。
【0047】
図5(B)を参照すると、仮に、支持板44が上下に挟み込まれており、圧電素子42が上下に挟み込まれていない場合、ポール30が加速度を受けると、支持板44は、ポール30近傍の部位を変曲点として撓みやすい。この結果、加速度に起因した撓みが圧電素子42に生じ難くなり、これにより、検出電圧VDが小さくなる。一方、
図5(A)を参照すると、本発明によれば、圧電素子42が支持板44と共に上下に挟み込まれているため、加速度に起因した撓みが圧電素子42に生じ易く、これにより、検出電圧VDが十分に大きくなる。即ち、振動センサ10の検出感度が高くなる。
【0048】
図3を参照すると、本実施の形態によれば、圧電素子42及び支持板44がナット50と支持面34との間に挟み込まれ、これにより、支持面34に押し付けられて固定されている。この構造によれば、振動センサ10の検出感度を高くし易い。但し、本発明は、これに限られない。例えば、圧電素子42及び支持板44は、ナット50を使用することなく、締め具(図示せず)によって支持面34に押し付けられて固定されていてもよい。
【0049】
図2及び
図3を参照すると、本実施の形態のナット50は、下端面52を有している。ナット50の下端面52は、XY平面と平行な平面であり、XY平面において環形状を有している。また、ナット50の下端面52のXY平面における外径は、ポール30の大径部32のXY平面における外径と等しい。
図3を参照すると、この構造により、圧電素子42の内周部424及び支持板44を、支持面34とナット50の下端面52とによって均等な力で挟み込むことができる。この結果、安定した高い検出感度が得られ、且つ、検出電圧VDに生じうるノイズを、より小さくできる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、ナット50の下端面52のXY平面における外径は、ポール30の大径部32のXY平面における外径と異なっていてもよい。
【0050】
前述したように、本実施の形態の支持部材12は、金属からなり、高い剛性を有している。例えば、支持部材12が弾力がある樹脂からなる場合、支持面34が弾性変形し易くなり、これにより、振動子40の共振周波数が低くなり易い。振動子40の共振周波数が低くなると、振動センサ10が使用可能な周波数帯域が狭くなる。加えて、支持部材12が樹脂からなる場合、ポール30がXY平面において弾性変形し易くなり、これにより、検出電圧VDにノイズが生じるおそれがある。即ち、振動センサ10の検出精度が劣化するおそれがある。加えて、支持部材12が弾力がある樹脂からなる場合、支持部材12全体がダンパーとして機能し、これにより、検出電圧VDが低下するおそれがある。以上の理由により、支持部材12は、金属製であることが好ましい。但し、充分に高い剛性が得られるような場合、支持部材12の材料は、金属に限られない。
【0051】
支持面34とベース20との間のZ方向における距離DSは、ポール30の大径部32のXY平面における外径DLの0.25倍以上かつ2倍以内であることが好ましい。距離DSが外径DLの0.25倍よりも小さい場合、ベース20の歪に起因するノイズが大きくなる。一方、距離DSが外径DLの2倍よりも大きい場合、ポール30がXY平面において弾性変形し易くなると共に、振動子40にZ方向の撓みモードとは異なる振動モードが生じ易くなる。この結果、検出電圧VDが低下したり、検出精度が劣化するおそれがある。
【0052】
仮に、圧電素子42のXY平面における外径DPが、ポール30の大径部32のXY平面における外径DL以下の場合、圧電素子42は撓まない。一方、外径DPが僅かでも外径DLよりも大きい場合、圧電素子42は撓む。但し、外径DPが外径DLの5倍よりも大きい場合、ポール30が弾性変形したり、振動子40にZ方向の撓みモードとは異なる振動モードが生じるおそれがある。従って、ノイズを抑制しつつ十分に高い検出電圧を得るという観点から、圧電素子42のXY平面における外径DPは、大径部32のXY平面における外径DLよりも大きく、且つ、大径部32の外径DLの5倍以内であることが好ましい。
【0053】
圧電素子42の外径DPに加えて振動子40の厚さ(Z方向におけるサイズ)を変化させることによって、振動子40の共振周波数を調整できる。従って、振動子40を設計する際には、振動子40の厚さも考慮することで、設計の自由度が向上する。
【0054】
本実施の形態の振動子40は、ユニモルフ型圧電振動子である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、振動子40は、バイモルフ型圧電振動子であってもよい。
【0055】
本実施の形態は、既に説明した変形例に加えて、以下に説明するように、更に様々に変形可能である。
【0056】
図6を
図1と比較すると、変形例による振動センサ10Aは、振動センサ10と同じベース20、ポール30、振動子40及びナット50に加えて、錘60を備えている。錘60は、接着剤等の固定剤によって振動子40に固定されている。錘60を設けることで、振動子40の撓みを大きくし、これにより振動センサ10Aの検出感度を高めることができる。本変形例において、錘60は、圧電素子42の外周部426の上面に固定されている。但し、本発明は、これに限られず、錘60は、必要に応じて、必要な部位に取り付ければよい。
【0057】
図7を参照すると、測定装置80は、振動センサ10Bを備えた測定機器である。即ち、別の変形例による振動センサ10Bは、測定装置80の部品である。測定装置80は、振動センサ10Bに加えて、金属製のケース82と、回路基板84とを備えている。振動センサ10B及び回路基板84は、ケース82の内部に取り付けられている。回路基板84には、増幅回路(図示せず)等の様々な電子部品(図示せず)が搭載されている。
【0058】
図7を
図1と比較すると、本変形例による振動センサ10Bは、振動センサ10と僅かに異なる構造を有しており、振動センサ10と同様に機能する。詳しくは、振動センサ10Bは、振動センサ10と同じ振動子40とナット50とを備えており、振動センサ10の支持部材12と異なる支持部材12Bを備えている。支持部材12Bは、振動センサ10の支持部材12と同様に金属からなり、振動センサ10のベース20と異なるベース20Bと、振動センサ10と同じポール30とを有している。即ち、振動センサ10Bは、ベース20Bと、ポール30とを備えている。ベース20Bは、ケース82の底部に圧入されてケース82に固定されている。ポール30の大径部32は、ベース20Bに固定されており、且つ、ベース20BからZ方向において上方に延びている。振動センサ10Bは、上述の相違点を除き、振動センサ10と同じ構造を有している。
【0059】
図7を参照すると、振動センサ10Bの圧電素子42の電極48及び支持板44の下面は、導電線88を経由して、回路基板84の増幅回路(図示せず)に接続されている。電極48と支持板44との間に生じた検出電圧VD(
図3参照)は、導電線88を経由して増幅回路(図示せず)に入力される。増幅回路によって増幅された電圧(出力信号)を測定することで、測定装置80が受けた加速度を検出でき、これにより、測定装置80に加えられた振動や衝撃を検出できる。
【0060】
本変形例におけるケース82は、想定される加速度によっては殆ど歪まないような高い剛性を備えた材料により形成されている。加えて、ケース82がXY平面と平行な方向に引っ張られて歪んだ場合でも、振動センサ10Bは、この歪みによる影響を殆ど受けない。本変形例によれば、小型化可能であり且つノイズに強い測定装置80が得られる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明による振動センサについて、具体的な実施例によって説明する。
【0062】
図7に示される測定装置80の第1実施例及び第2実施例を作製し、ベース20Bが歪んだときのノイズ及び加速度に対する感度を測定した。第1実施例及び第2実施例において、大径部32の外径DL(
図3参照)は4mmであり、支持面34(
図3参照)とベース20Bとの間の距離DS(
図3参照)は、2mmだった。小径部36の外径、圧電素子42の中心孔422(
図3参照)の直径、及び、支持板44の中心孔442(
図3参照)の直径は、いずれも2mmだった。圧電素子42の厚さ(Z方向におけるサイズ)は、0.2mmであり、支持板44の厚さ(Z方向におけるサイズ)は、0.4mmだった。
【0063】
第1実施例において、圧電素子42の外径DP(
図3参照)を6mmとし、支持板44の外径DPを6mmと10mmとの間の範囲内で1mmずつ変えて、増幅回路(図示せず)の出力信号を測定した。このとき、ベース20Bが水平方向の両側に引っ張られて歪んだときのノイズ及び測定装置80に加えられた加速度に対する感度を測定した。測定結果を、
図8に示す。同様に、第2実施例において、圧電素子42の外径DPと支持板44の外径DPとを等しくし、6mmと10mmとの間の範囲内で1mmずつ変えて、増幅回路の出力信号を測定した。このとき、ベース20Bが水平方向の両側に引っ張られて歪んだときのノイズ及び測定装置80に加えられた加速度に対する感度を測定した。測定結果を、
図9に示す。
【0064】
図8及び
図9から理解されるように、第1実施例及び第2実施例の振動センサ10Bは、加速度に対する高い感度を有しており、且つ、充分に低いノイズレベルを有している。特に、支持板44及び圧電素子42の外径DP(
図3参照)を、支持面34(
図3参照)とベース20Bとの間の距離DS(
図3参照)に対して大きくすることで、加速度に対する感度を向上させ、且つ、ノイズレベルを低くできる。但し、支持板44及び圧電素子42の外径DP(
図3参照)を大きくすると、共振周波数が低くなる。従って、支持板44及び圧電素子42の外径DPは、支持面34とベース20Bとの間の距離DSに対して5倍を超えないことが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
10,10A,10B 振動センサ
12,12B 支持部材
20,20B ベース
30 ポール
32 大径部
322 下端
324 上端
326 外周
34 支持面(上面)
36 小径部
362 下端
364 上端
366 外周
368 ネジ
38 上端部
40 振動子
42 圧電素子
422 中心孔
424 内周部
426 外周部
44 支持板
442 中心孔
444 内周部
446 外周部
48 電極
50 ナット
52 下端面
58 ネジ
60 錘
80 測定装置
82 ケース
84 回路基板
88 導電線