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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ブレーキシステム緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20240925BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20240925BHJP
   F16F 9/08 20060101ALI20240925BHJP
   F15B 1/10 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B60T17/00 Z
F16J3/02 B
F16F9/08
F15B1/10
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020016002
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2020138727
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】10 2019 202 018.6
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】アンブロシ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】シュラー,ヴォルフガング
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-090074(JP,A)
【文献】米国特許第05655569(US,A)
【文献】独国特許出願公開第19948444(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0000740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00-17/22
F16J 3/00-3/06
F16F 9/00-9/58
F15B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧が印加されるべき第1の空間(20)と、圧縮性の媒体が中にある第2の空間(24)と、前記第1の空間(20)を前記第2の空間(24)から分離するための第1の分離部材(22)とを有するブレーキシステム緩衝装置(10)において、
前記ブレーキシステム緩衝装置(10)は、圧縮性の媒体が中にある第3の空間(28)と、前記第2の空間(24)を前記第3の空間(28)から分離するための第2の分離部材(26)とを有し、前記第2の空間(24)は前記第2の分離部材(26)に構成される通過部(50)によって前記第3の空間(28)と媒体導通式に接続され、前記第3の空間(28)ならびに前記第2の分離部材(26)とその前記通過部(50)は1つの一体的なコンポーネントによって構成され
前記第1の分離部材(22)は、その中心に配置される閉止部材(34)と、前記閉止部材(34)から外方に向かって延びるダイヤフラム折込部(36)により包囲されるダイヤフラム折込窪み(38)を有し、前記第2の分離部材(26)は、前記第1の分離部材(22)を保持するダイヤフラム保持装置(48)をもって、前記ダイヤフラム折込窪み(38)の中へ延びていることを特徴とするブレーキシステム緩衝装置。
【請求項2】
記ブレーキシステム緩衝装置(10)は、圧縮性の媒体が中にある前記第3の空間(28)と、前記第2の空間(24)を前記第3の空間(28)から分離するための前記第2の分離部材(26)とを有し、前記第2の空間(24)は前記第2の分離部材(26)に構成される前記通過部(50)によって前記第3の空間(28)と媒体導通式に接続され、前記第1の分離部材(22)は可動に、かつその際にその運動によって前記第2の分離部材(26)に支持されるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のブレーキシステム緩衝装置。
【請求項3】
前記第1の分離部材(22)はその運動によって前記第2の分離部材(26)に全面的に当接することを特徴とする、請求項2に記載のブレーキシステム緩衝装置(10)。
【請求項4】
前記第1の分離部材(22)の運動によって前記第2の空間(24)が前記通過部(50)に向かって同心的に縮小していくことを特徴とする、請求項2または3に記載のブレーキシステム緩衝装置(10)。
【請求項5】
前記第1の分離部材(22)の運動によって前記第2の空間(24)が完全に空になることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項に記載のブレーキシステム緩衝装置(10)。
【請求項6】
前記第2の分離部材(26)は前記第2の空間(24)の縦断面で見て円弧状に前記通過部(50)へと通じる分離部材内壁(46)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のブレーキシステム緩衝装置(10)。
【請求項7】
前記第1の分離部材(22)はダイヤフラム、好ましくは転動型ダイヤフラムを有するように構成されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のブレーキシステム緩衝装置(10)。
【請求項8】
前記第1の分離部材(22)は円形状を有するディスクとして少なくとも区域的に構成され、特に前記第1の分離部材(22)は前記円形状の中心点に対して同心的に配置された円形のダイヤフラム湾曲部(208;210)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のブレーキシステム緩衝装置(10)。
【請求項9】
前記第2の空間(24)は、前記第1の分離部材(22)に向き合うように配置されるとともにシェル形状を有するように構成された前記第2の分離部材(26)の分離部材内壁(46)によって区切られることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のブレーキシステム緩衝装置(10)。
【請求項10】
前記第3の空間(28)ならびに前記第2の分離部材(26)とその前記通過部(50)は1つのコンポーネントによって形成され、該コンポーネントによって同時に前記第1の分離部材(22)がハウジング(12)の中で保持されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のブレーキシステム緩衝装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧が印加されるべき第1の空間と、圧縮性の媒体が中にある第2の空間と、第1の空間を第2の空間から分離するための第1の分離部材とを有するブレーキシステム緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキシステム、特に液圧ブレーキシステムは、乗用車やトラックなどの車両の車両速度を減速させるための役目を果たす。このようなブレーキシステムの作動時にはさまざまな動的効果が発生し、特に、そこにある配管や空間での圧力変動が発生し、これらが振動ないし脈動につながり、それによって望ましくない騒音や揺れにつながる。このような振動を最小化するために、ないしはこのような振動時の緩衝作用を実現するために、以下においてダンパとも呼ぶブレーキシステム緩衝装置が、ブレーキシステムの1つまたは複数の取付場所で利用される。このようなダンパは、液圧が中で印加されるべき第1の空間を含んでいる。この空間は基本的に一種の容器である。圧力は基本的に、1つの面に対して作用する力の結果である。ダンパでは力が液圧式に、すなわち圧力のもとにある液体を通じて伝達される。
【0003】
液体ないし流体が中にある第1の空間と、通常はガスの形態の圧縮性の媒体が中にある第2の空間とに空間を分離する分離部材を有するダンパが知られている。ガスが中にある変形可能な容器の空間の容積は、周知のとおり、外部から高い圧力が当該容器に及ぼされると縮小する。同様に、第1の空間に液圧が印加されると、分離部材によって第2の空間の容積も縮小する。
【0004】
この圧力が再び弱まると、それに応じてガスおよびこれに伴って第2の空間の容積も再び増大する。すなわち第2の空間は、ガスばねとも呼ばれる空気圧ばねのように作用する。このガスばねがどれだけ柔らかく、または硬く緩衝をするかは、第2の空間のガス容積に依存して決まる。ガス容積が大きいほど、緩衝は柔らかくなる。
【0005】
ブレーキプロセスのときには車両運転者がブレーキペダルを踏み、その際にブレーキペダルがペダルストロークを進む。このペダルストロークは、ここで関連する第2の空間のガス容積と直接的に関連する。ガス容積が大きいほど、ペダルストロークも長くなる。このように、柔らかい緩衝というポジティブな効果には、大きいペダルストローク長というマイナスの効果が相反して存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、改善された緩衝特性を有する、ブレーキシステムで振動減衰をする装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、液圧が印加されるべき第1の空間と、圧縮性の媒体が中にある第2の空間と、第1の空間を第2の空間から分離するための第1の分離部材とを有するブレーキシステム緩衝装置が提供される。本発明によると、ブレーキシステム緩衝装置は、圧縮性の媒体が中にある第3の空間と、第2の空間を第3の空間から分離するための第2の分離部材とを有し、第2の空間は第2の分離部材に構成される通過部によって第3の空間と媒体導通式に接続され、第3の空間ならびに第2の分離部材とその通過部は1つの一体的なコンポーネントによって構成される。
【0008】
本発明の解決法により、2つの空間に下位区分されると同時にただ1つの一体的なコンポーネントから製作される、圧縮性の媒体を含む容積が創出される。このコンポーネントは低コストに製作することができ、好ましく組み立てることができる。それと同時にこのコンポーネントによって、求められる緩衝作用にとって好ましいばね特性曲線を保証する、比較的多くの圧縮性の容積が提供される。すなわち第3の空間は第2の空間と同じく、好ましくはガスおよび特別に好ましくは空気で構成される圧縮性の媒体を含む。第2の分離部材は第3の空間を第2の空間から分離するが、これら両方の空間はさしあたり媒体導通式の通過部によって接続されたままに保たれる。通過部ないし接続部は、単純な穴によって構成されるのが好ましい。
【0009】
さらに本発明によると、液圧が印加されるべき第1の空間と、圧縮性の媒体が中にある第2の空間と、第1の空間を第2の空間から分離するための第1の分離部材とを有する、特に上に述べた種類のブレーキシステム緩衝装置が創出される。このときブレーキシステム緩衝装置は、圧縮性の媒体が中にある第3の空間と、第2の空間を第3の空間から分離するための第2の分離部材とを有するように構成され、第2の空間は第2の分離部材に構成される通過部によって第3の空間と媒体導通式に接続され、第1の分離部材は可動に、かつその際にその運動によって第2の分離部材に支持されるように構成される。この本発明による解決法では、第2の分離部材が第1の分離部材のための行程制限部として作用する。このような行程制限によって第1の分離部材の運動が制約され、第1の分離部材は、第2の空間の中で事前定義された運動およびそれに伴って事前定義されたその容積の縮小が行われるように案内される。
【0010】
このような種類の本発明によるブレーキシステム緩衝装置では、第1の分離部材がその運動によって第2の分離部材に全面的に当接するのが好ましい。第2の分離部材への第1の分離部材の全面的な当接により、これら両方の分離部材の間に残留容積が残らないことが保証される。第2の空間は第1の分離部材のこのような運動のとき、すなわち第3の空間へと向かう方向への運動のとき完全に部分放出される。
【0011】
第1の分離部材の運動により、第2の空間が通過部に向かって同心的に縮小するのが好ましい。同心的な運動は、通過部の手前に唯一の残留容積が第2の空間の中に残り、これを通過部を通してさらに第3の空間の中に入るように移行させることができることを保証する。
【0012】
さらに第1の分離部材の運動により、第2の空間が完全に放出されるのが好ましい。第2の空間の全面的な放出により、その中には圧縮性の容積がなくなり、そこでは相応に本発明に基づいてそれ以上の緩衝は行われなくなる。それと同時に第1の分離部材が第2の分離部材に当接し、それに応じてそれ自体としても変形できなくなる。それに伴い、ブレーキシステム緩衝装置の緩衝作用全体が解消される。このようにして、その時点以降はブレーキシステムが付属のブレーキに直接的に作用することが保証される。
【0013】
第2の分離部材は、第2の空間の縦断面で見て通過部へと円弧状に通じる分離部材内壁を有するのが好ましい。円弧形状は、第1の分離部材が連続的かつ継続的に第2の分離部材に当接し、そのようにして、これら両方の分離部材の間にむだ容積が残ってそこに封入され得るのが防止されることをもたらす。
【0014】
第1の分離部材はダイヤフラム、好ましくは転動型ダイヤフラムを有するように構成されるのが好ましい。ダイヤフラムはここでは原則として、弾性的で可動の分離壁ないし分離部材として2つの空間を相互に気密に分離する封止部材であると理解される。特に転動型ダイヤフラムは、ループ内面ないしダイヤフラム頭部窪みの方向への片側での圧力負荷のみのために意図される。容積変化に対しては、無視できるほどわずかな固有剛性ないしわずかな抵抗しか弾性変形に抗して作用しない。すなわち転動型ダイヤフラムはその成型形状に基づき、本発明によるブレーキシステム緩衝装置のための分離部材として特別に良く適している。
【0015】
その代替または追加として、第1の分離部材は円形状を有するディスクとして少なくとも区域的に構成されるのも好ましく、特に第1の分離部材は円形状の中心点に対して同心的に配置された円形のダイヤフラム湾曲部を有する。このようなディスク状のダイヤフラムは穴の中に配置できるという利点があり、その際に同時に、第2の空間が中心点に対して中心に放出ないし縮小されることを保証する。
【0016】
第2の空間は、第1の分離部材に向かい合うように配置されてシェル形状を有するように構成された、第2の分離部材の分離部材内壁によって区切られるのが特別に好ましい。このように構成されたシェルが第1の分離部材のための支持部を形成し、この分離部材が連続的に進展するように、かつ特に全面的に当接することができる。
【0017】
第3の空間ならびに第2の分離部材とその通過部は1つのコンポーネントによって構成されるのが好ましく、該コンポーネントによって同時に第1の分離部材がハウジングの中で保持される。このような種類の一体的なコンポーネントにより、このようにして複数の機能を反映することができ、このコンポーネントは、同時に低コストに製作可能かつ組立可能である。このようなコンポーネントは3D印刷、射出成形、遠心鋳造、または吹付成形によって製作されるのが特別に好ましく、第3の空間はコンポーネントの中空空間として構成される。
【0018】
さらに、本発明によるブレーキシステム緩衝装置の好ましい発展例では、第1の分離部材とともに閉止部材が運動し、第1の空間の中で液圧が事前定義された圧力値に達するとただちに、該閉止部材によって通過部を閉止することができ、ないしは閉止される。閉止部材は単に、第1の分離部材の表面における面領域であるのが好ましい。この閉止部材は、そのために十分な液圧が第1の空間で印加されたときに初めて通過部を閉止する。具体的には、第1の分離部材は特に事前定義された圧力値を超えると、そのときに第2の分離部材に当接する程度まで変形する。すなわち第2の分離部材は、閉止部材のためのストッパを形成するのが好ましい。そして閉止される通過部に基づき、第3の空間が第2の空間から分断され、そのようにして、残りのダンパのためにそれ以上は利用できなくなる。事前定義された圧力値を上回るその後の緩衝作用については、第2の空間の媒体容積しか残されていない。この媒体容積は、第2の分離部材の方向に変形している第1の分離部材に基づいて比較的少ししかない。したがって本発明に基づくダンパは、比較的低い弾性と緩衝作用しか有さなくなる。第2の空間がそれ以上に容積をほとんど収容できないからである。しかしその際の好ましい効果は、ペダルストロークが、ないしはブレーキシステムのブレーキペダルのストロークが、車両運転者による操作時にさほど長くならないことにある。さらに第1の分離部材は通過部が閉止されているとき第2の空間の内壁に、第2の空間のほうを向いている第2の分離部材の側を含めて全面的に当接するのが特別に好ましく、それにより第2の空間が完全に消失し、ないしは小さな容積しか有さなくなる。その場合、ペダルストロークは事前定義された圧力値以降はまったく長くなることがない。それによって同じく消滅する緩衝作用は容認することができる。というのも緩衝に関連する圧力領域は、事前定義された圧力値よりも下にあるからである。すなわちこの圧力値は、緩衝に関連する圧力領域の上側の限界値をなすように選択ないし事前定義されるのが好ましい。このとき第2および第3の空間のそれぞれの容積は、関連する圧力領域と、ダンパの所望の弾性ないし緩衝作用とに合わせて調節されるのが好ましい。このような好ましい方式でダンパが、緩衝に関連する圧力領域における大きい媒体容積の高い弾性を、この圧力領域を上回る第1の空間により収容可能な容積の制限と結びつける。換言すると、ブレーキ液の押除けられる容積と、緩衝のために利用される媒体容積との間に直接的な依存性は成立しなくなる。このようにダンパは、短いペダルストロークで卓越した緩衝特性を提供する。この発展例のさらに別の利点は、閉鎖された第3の空間の圧力が、他の空間への通過部のない第2の空間の圧力よりも、すなわち従来技術における圧力よりも、明らかに低くなることにある。それによって望ましくない効果が低減される。一方では、圧力が低いときに第1の分離部材への浸透が削減され、他方では、圧力が低いときの媒体の温度がさほど高くならず、それによって第1の分離部材の材料老化が遅延される。
【0019】
列挙した技術的利点により、本発明によるブレーキシステム緩衝装置を装備した車両の顧客受け入れ性と市場機会を明らかに向上させることができる。
【0020】
第1の分離部材は閉止部材と一体的に構成されるのが好ましい。一体的にとは、2つの部材が、ここでは第1の分離部材と閉止部材が一体で、ないし1つの部品として成形されることを意味する。このことは、簡易な組立と安価な製造という利点がある。
【0021】
本発明の好ましい発展例では、第1の分離部材はエラストマーで、好ましくはエチレン-プロピレン-ジエン-ゴムで製作される。エラストマーは形状安定的であるが弾性変形可能なプラスチックである。したがって、このようなプラスチックは引張や圧縮負荷を受けたときに変形するが、その後に当初の変形していない形態に戻る。このようにエラストマーは本発明の意味における分離部材のために、たとえば上に説明した転動型ダイヤフラムのために、特別に良く適した素材である。エラストマーはその弾性を維持しなければならず、膨張しすぎても収縮しすぎてもならない。したがって封止されるべき媒体について、適切なエラストマーが使用されなければならない。略してEPDMとも呼ばれるエチレン-プロピレン-ジエン-ゴムはブレーキ媒体に対して耐性のあるエラストマーであり、したがって本発明によるブレーキシステム緩衝装置での使用に特別に適している。
【0022】
さらに本発明によると、事前定義される圧力値は0から30バールの間の値、好ましくは3から10バールの間の値、特別に好ましくは5バールに事前定義されるのが好ましい。ブレーキシステムがおよそ60バールの圧力を車両の付属のホイールに印加すれば、このことはホイールのブロックを確実に引き起こす。しかしブレーキシステムでの振動減衰ないし脈動減衰には、これよりも明らかに低い制限された圧力領域しか関連しない。約5バールの圧力値に達したとき、障害になる振動ないし脈動がすでに十分に減衰されている。したがって、圧力値をこのような値に規定するのが特別に好ましい。
【0023】
さらに通過部は、開気孔をもつ材料を有するように構成されるのが好ましい。材料が開気孔をもつのは、それが液体の侵入を妨げるがガスの吐出ないし貫通を許容する気孔を含んでいるときである。通気性の材料という表現も用いられる。気孔は第1の分離部材の当接後に、たとえば穴などの別の構成の通過部と同じように閉じられることになる。しかし開気孔をもつ材料の利点は、液体が第3の空間に侵入し得ないことにある。このようにブレーキシステムは、たとえば第1の分離部材が損傷したり非密閉になったとき、ブレーキシステムからのブレーキ液の漏出に対する追加の防護を有することになる。
【0024】
これに加えて、第2の分離部材に複数の通過部が設けられるのが好ましい。これらの通過部はブレーキプロセスのとき、第2の空間から第3の空間への媒体の迅速な再分配のために作用する。それにより、媒体容積全体の弾性をより良く使い尽くすことができる。
【0025】
別の好ましい実施形態では、第3の空間は第2の空間と1つの通過部によってそれぞれ媒体導通式に接続された複数の部分空間に下位区分される。複数の部分空間は、ただ1つの第3の空間を利用するのに比べて高い臨機応変さを可能にする。たとえば個々の部分空間への通過部が第1の分離部材によって順次閉止され、それによって緩衝作用が段階的に低下していき、事前定義された圧力値のときに全面的かつ唐突に低下するのではなくなるのが好ましい。さらに、各通過部を閉止したり再利用可能にすることで、可変の数の部分空間およびこれに伴って可変の媒体容積を利用可能である。このことは、関連する圧力領域と所望の弾性とに合わせた緩衝の適合化を容易にする。
【0026】
本発明において好ましくは、第3の空間は第2の分離部材とカバーとによって構成される。カバーは、本発明によるブレーキシステム緩衝装置を有するブレーキシステムのための閉止部として意図され、ブレーキシステムへの臨機応変なアクセスを可能にする。それにより、第2の分離部材の簡易な交換が可能である。さらに、これまでカバーと弾性的な分離部材との間の1つの空間だけを緩衝のために利用していたブレーキシステム緩衝装置に、第2の分離部材を後付けすることができる。
【0027】
上記を踏まえたうえで、第2の分離部材がカバーと第1の分離部材によって全面的に包囲される。それにより、第2および第3の空間がそこに含まれる媒体容積とともに追加的に封止される。さらに第2の分離部材の全面的な包囲は、これら3つのコンポーネントの組み合わせが、外見からはカバーと第1の分離部材のみからなる組み合わせと区別されないことを意味する。それにより第2の分離部材の構成が、他のブレーキシステムに左右されることがない。特にいっそう大きい媒体容積が必要とされるとき、ダンパから第2の分離部材を取り出すことさえ可能である。
【0028】
さらに、ブレーキシステム緩衝装置をいっそう効率的にする、または代替的な実施形態によって補完をする、その他の別の実施形態も好ましい。
【0029】
たとえば、第2および第3の空間に含まれる圧縮性の媒体はガスとして、特別に好ましくは空気として構成される。空気は容易に入手可能であり、コストなしに利用可能であり、圧縮可能であり、したがって本発明によるブレーキシステム緩衝装置での適用に卓越して適している。
【0030】
媒体容積ないし第2および第3の空間は、代替的かつ有利には、複数の旋削部品、冷間鍛造部品、または深絞り部品の組み合わせによって製作ないし創出される。旋削部品は円形の断面を有するコンポーネントであり、冷間鍛造部品は閉止コンポーネントであり、深絞り部品は車両のボデーコンポーネントである。すなわち、これらすべてのコンポーネントを自動車業界では容易に調達することができ、本発明によって新たな利用目的を得る。
【0031】
これに加えてブレーキシステム緩衝装置は、ビークルダイナミックコントロールおよび/または外力ブレーキシステムでの使用のために意図されるのが好ましい。ビークルダイナミックコントロールないしESPとも呼ばれるエレクトロニックスタビリティプログラムは、個々のホイールの的確な制動によって自動車のスリップを防止する、自動車のための電子制御式走行アシストシステムである。外力ブレーキシステムないし外力ブレーキ設備は、外部で生成される力によって操作される。たとえば電気油圧式に操作されるブレーキは、ポンプにより充填される液圧式の蓄圧器から操作エネルギーが来る外力ブレーキである。
【0032】
好ましい実施形態では、ブレーキシステム緩衝装置は、特に構造端部側と少なくとも1つの構造リブとを有する、第2の分離部材を支持して第3の空間を貫通するリブ構造を有する。このときリブ構造は、分離部材内壁に対して作用する圧力に対して第2の分離部材を支持するために、第1の分離部材と反対を向いている側で、ないしは分離部材外壁を備えている側で、第2の分離部材に配置されるのが好ましい。このようにして分離部材外壁は、リブ構造の第1の端部側を形成する。リブ構造のこれと向かい合う、ないしは第2の端部側は、好ましくは平坦に構成される構造端部側によって形成される。構造リブは支持をするリブ構造の支持部材であり、分離部材外壁から構造端部側まで延びる。リブ構造の支持機能に基づき、ブレーキシステム緩衝装置がそれ自体としていっそう安定する。さらに、第2の分離部材の材料がいっそう少ない負荷しか受けず、このことはその耐用寿命にプラスに働く。
【0033】
リブ構造は、リブ構造にさらなる安定性を与えるために、2つまたはそれ以上の構造リブを有するように構成されるのが好ましい。さらにリブ構造は、分離部材外壁の中央で始まり、これから屹立するようにリブ構造ないし構造端部側の第2の端部まで延びる、垂直の中空円柱を有するように構成されるのが好ましい。このとき中空円柱の中に構成される円柱中空空間は、第2の分離部材の通過部と媒体導通式に接続されるのが好ましい。ここで明文をもって指摘しておくと、第2の分離部材にある通過部はいかなるケースでもリブ構造によって閉じられることがあってはならない。
【0034】
構造リブは中空円柱の外側で始まって、その個所-以下において開始個所と呼ぶ-で、中空円柱の長さに相当する伸長ないしリブ深さを有する。この開始個所から構造リブは、径方向ないし噴射状に中空円柱から離れていくように延びるのが好ましく、それにより星形の構造が生じる。このとき各々の構造リブのリブ深さは、リブ構造の当接する端部側の形状に応じて変化する。すでに述べたとおり構造端部側は平坦であるのが好ましく、したがってリブ深さの変化を引き起こさない。それに対して分離部材外壁は多くの場合に起伏があり、ないしは三次元に構成される。その場合、それぞれのリブ深さは、変化させなければならず、ないしは分離部材外壁に応じて構成されていなければならない。それによってリブ構造の安定性がいっそう改善される。
【0035】
リブ構造は、少なくとも1つの接続通路によって媒体導通式に互いに接続された少なくとも2つの構造部分空間を形成するのが好ましい。これらの構造部分空間は、それぞれ少なくとも1つの構造リブと、分離部材外壁と、第3の空間を取り囲む別のコンポーネントとによって形成される。このコンポーネントは、上ですでに述べたとおり、カバーであるのが好ましい。このとき構造部分空間は、支持をするリブ構造が生じるように、またはリブ構造の支持効果がいっそう増強されるように配置されるのが好ましい。接続通路は、2つの構造空間を互いに分離する部材にある、好ましくは構造リブにある、開口部である。このようにして圧縮性の媒体は第2の空間から、分割された第3の空間の構造部分空間の各々へと達し、そのようにしてブレーキシステム緩衝装置のための最大の緩衝を発揮する。あるいはさらに、個々の構造部分空間の隔離によって、ないしは個々の接続通路の閉止によって-希望される限りにおいて-さらに低い緩衝度を調整可能でもある。
【0036】
好ましい実施形態について上で説明したように、リブ構造が中空円柱を有するように構成されるとき、接続通路がこの円柱中空空間を起点として構造部分空間の各々に通じているのが好ましい。このようにして、媒体の均等な伝搬およびこれに伴ってリブ構造のすべての領域の同じ強さの負荷を実現することができる。
【0037】
すでに上で述べたとおり、圧縮性の媒体は好ましくはガスとして、特別に好ましくは空気として構成される。したがって以下においては第3の空間を第2の空気室とも呼び、構造部分空間を空気部分室とも呼び、媒体容積を空気容積とも呼ぶ。それに応じて第2の空気室は、空気容積を収容する複数の接続された空気部分室によって置き換えられ、これらの空気部分室によってブレーキシステム緩衝装置の所望の段階的な緩衝を調整可能である。換言すると、提案される構造方式は、接続通路による空気室の接続についての構成可能性を提供する。
【0038】
さらに第2の分離部材は第2の空間を第3の空間から、ないしは第2の空気室から分離するために意図されるだけでなく、第1の分離部材のための保持機能ないし支持機能も果たすのが好ましい。第1の分離部材は、すでに上で述べたとおり、ダイヤフラムを有するように構成されるのが好ましい。したがって、第2の分離部材を以下においてはダイヤフラム支持コンポーネントとも呼ぶ。記載されているリブ構造により、それ自体として安定したダイヤフラム支持コンポーネントが生じ、これがさらに第3の空間ないしその分割の複数の構成可能性を提供する。さらに、ダイヤフラム支持コンポーネントの記載されている構成は、たとえば射出成形などのテクノロジーによって製作することができる、低コストな鋳型式のコンポーネントの利用を可能にする。
【0039】
別の好ましい実施形態では、リブ構造は、リブ構造を取り囲むように、かつ特に外套外壁ならびに外套内壁を有するように構成されたリブ外套を有する。リブ外套は、リブ構造を取り囲む、分離部材外壁から構造端部側まで延びる一種の中空円柱である。このとき外套外壁は第3の空間を取り囲むコンポーネントに当接する。外套内壁は、構造リブがそこまで延びるところの面を形成する。リブ外套により、リブ構造がいっそうコンパクトかついっそう安定的に構成される。
【0040】
リブ構造とリブ外套は一体的に構成されるのが好ましく、好ましくは第2の分離部材と一体的に構成される。一体的にとは、すでに述べたとおり複数の部材が、ここではリブ構造がリブ外套と、ならびに好ましくは第2の分離部材とも一体に成形され、ないしは1つの部品として成形されることを意味する。その際の利点は簡易な組立と安価な製造にある。
【0041】
さらに本発明によると、リブ外套は少なくとも1つの外套スリットを有するように構成されるのが好ましく、外套スリットは構造端部側から分離部材外壁の方向に延びるように配置されるのが好ましく、構造部分空間のうちの1つに向かってリブ外套を開くために意図される。すなわち外套スリットは、他のところでは全面的に閉じているリブ外套の切欠きを形成する。このような切欠きないし自由空間により、圧縮性の媒体の収容可能な容積が拡張され、それによってブレーキシステム緩衝装置の緩衝度が高くなる。さらに材料が節減される。
【0042】
さらに、リブ外套は少なくとも1つの係止部材を有するように構成されるのが好ましく、係止部材は外套外壁から屹立するように、かつ好ましくは構造端部側に配置されるのが好ましい。係止部材は、外套外壁を取り囲むコンポーネントの内部で切欠きに係止するために意図される突起またはフックである。このようにして係止部材は、第2の分離部材を第3の空間の中で固定するという可能性を提供する。それによってブレーキシステム緩衝装置が追加の安定性を獲得する。
【0043】
上記を踏まえたうえで、係止部材は2つの外套スリットに当接するように配置される。2つの外套スリットはそれぞれ係止部材に沿って直接案内され、それにより係止部材のための柔軟ないし押込可能な支持装置が形成される。このようにして、第2の分離部材をいっそう容易に組み付け、ないしは係止個所へと案内することができる。特に、第2の分離部材が非常に困難にしか変形可能でない材料で製作されている場合、形成される支持装置によってその組付が明らかに簡易化される。
【0044】
本発明に基づき好ましくは、ブレーキシステム緩衝装置は、コンポーネント内壁を有する、リブ外套を包囲するコンポーネントを有し、該コンポーネントではコンポーネント内壁が外套外壁を周回する凹部を有するように構成され、凹部は係止部材の係止のために意図される。このコンポーネントは、ブレーキシステム緩衝装置のカバーまたはハウジングであるのが好ましい。コンポーネント内壁、またはリブ外套もしくはその外套外壁に当接するコンポーネントの面は、外套外壁に配置された係止フックとともに、第2の分離部材ないしダイヤフラム支持コンポーネントと周囲に位置するコンポーネントとの、好ましくはカバーとの間の形状接合式の結合を形成する。凹部は上に説明した切欠きであるのが好ましい。凹部は周囲に位置するコンポーネントで周回するように構成されるが、それに対して、少なくとも1つの係止部材は単独で構成されるので、この形状接合式の結合はフレキシブルであり、係止部材に対して位置非依存的である。
【0045】
これに加えて構造端部側はコンポーネント内壁に当接するように配置されて、これに支持される。コンポーネント内壁への当接はリブ構造の支持効果を高めるとともに、コンポーネント内壁での、好ましくはカバーでの面押圧力を著しく低減する。それにより、ダイヤフラム支持コンポーネントないし第2の支持部材について、特に別個の金属などの非常に硬い材料に代えて、軟質および/または低コストの材料を使用可能である。好都合な鋳型式のコンポーネントも、ダイヤフラム支持コンポーネントとして適用可能である。
【0046】
好ましい実施形態では、第2の分離部材は射出成形によって、好ましくは粉末射出成形によって、特別に好ましくは金属粉末射出成形によって製作される。インジェクション成形あるいは射出成形法とも呼ばれる射出成形は、コンポーネントを製造するための製造方法であり、より厳密には成形方法である。その際には射出成形機によってそのつどの素材が液化され、圧力のもとで金型に射出される。PIM法-英語でPowder Injection Mouldingを表す-とも呼ばれる粉末射出成形は、金属またはセラミックからコンポーネントを製造するための成形方法である。したがって、MIM法-英語でMetal Injection Mouldingを表す-とも呼ばれる金属粉末射出成形は、特に金属のコンポーネントを製造するための成形方法である。このようなテクノロジーにより、第2の分離部材ないしダイヤフラム支持コンポーネントを非常に簡易かつ低コストに鋳型式のコンポーネントとして製造可能である。
【0047】
本発明の好ましい発展例では、ブレーキシステム緩衝装置は、緩衝をする容積を追加的に提供するために、第2の分離部材のリブ外套を包囲するように配置された第4の空間を有する。第4の空間は、リブ外套を包囲するコンポーネントが、好ましくはカバーが、いっそう小さく、ないしは短く構成されることによって具体化される。それに伴って第4の空間は、ブレーキシステム緩衝装置の内部で所要スペースを拡大することなく媒体容積を、好ましくは空気容積を追加的に収容するための別の分断可能なチャンバを形成する。利用可能な容積が大きいほど、ブレーキシステム緩衝装置はいっそう弾性的になり、それに伴い、脈動低減ないし緩衝に関していっそう有効になる。このように、提案されるこの解決法は追加費用とコストなしに機能最適化をする可能性を開く。
【0048】
さらに、第2の分離部材はリブ外套を取り囲む、リング外側縁部を有する載置リングを有するように構成され、載置リングは第4の空間の中へ突入するように、かつ第1の分離部材に当接するように配置される。このとき載置リングはリング外套の外套外壁に固定的に当接し、これから径方向へ、好ましくは第4の空間のサイズが最大限許容する程度まで延びる。リング外側縁部は載置リングを外方に向かって区切り、第4の空間の内壁に当接するのが好ましい。第1の分離部材への、好ましくはダイヤフラムへの、載置リングの当接する配置によって第4の空間が第1の分離部材の方向に区切られ、その際に第1の分離部材が支持ないし安定化される。このことは、ブレーキシステム緩衝装置全体の安定性にも寄与する。さらに、第2の分離部材ないしダイヤフラム支持コンポーネントが、第1の分離部材の、好ましくはダイヤフラムの、外側で周回する密閉領域の載置面を形成することになる。さらに、第2の分離部材は載置リングと一体的に構成されるのが好ましい。一体的にとは、すでに上で述べたとおり、2つの部材が一体で、ないしは1つの部品として成形されることを意味し、簡易な組立と安価な製造という利点が得られる。
【0049】
本発明の別の好ましい発展例では、載置リングを支持する少なくとも1つのリングリブが載置リングに配置される。すなわちリングリブは、好ましくは載置リングにだけでなく、リング外套の外套外壁および/または第4の空間の内壁にも当接するように配置される、担持ないし支持をする部材である。それによって載置リングが追加的に安定化される。
【0050】
上記を踏まえたうえで、載置リングに2つまたはそれ以上のリングリブが配置されるのが好ましく、これらによって第4の空間が少なくとも2つのリング部分空間に分割される。このときリング部分空間は、第2のリングリブ、第4の空間の内壁、リング外套の外套外壁、および載置リングによってそれぞれ構成されるのが好ましい。このときリング部分空間は、第4の空間を包囲するコンポーネントにある、好ましくはハウジングにある、変化しないインターフェース穴を外側の径方向の区切りのために利用するいわゆるチャンバである。すなわちこの第2の分離部材の新規の構成はその円周に、緩衝のさらなる増強と調整可能性のために利用可能である追加のリング部分空間を構成し、好ましくは空気室を構成する。
【0051】
別の実施形態では、リングリブは外套外壁の上でそれぞれ外套内壁の上の構造リブに向かい合って配置される。リングリブが構造リブの一種の延長部を形成するこのような配置は、第2の分離部材のための追加の安定性をもたらし、さらにはその製造を簡易化する。
【0052】
外套スリットは、第3の空間を第4の空間と媒体導通式に接続するように配置されるのが好ましい。このような配置により、外套スリットは、第3の空間の構造部分空間と第4の空間のリング部分空間との間の接続通路として作用する。換言すると、周囲に位置する個々のチャンバの容積が、係止部材に、好ましくは係止フックに構成される長手方向スリットによって構成される一方、リブ構造の内側に位置する容積が、好ましくは空気容積がこの係止部材に接続される。このようにして、圧縮性の媒体が構造部分空間からリング部分空間へと到達し、そのようにして、ブレーキシステム緩衝装置のための最大の緩衝を発揮する。あるいは、さらに個々のリング部分空間を遮蔽することで、ないしは個々の外套スリットを閉止することで、-希望される限りにおいて-低い緩衝度を調整可能である。
【0053】
本発明において好ましくは、少なくとも1つのリングリブは外套外壁から載置リングのリング外壁まで延びるように配置される。このような配置は第4の空間を有効に活用し、載置リングに非常に高い安定性を与え、それぞれのリング部分空間の間の封止を可能にする。
【0054】
本発明の別の好ましい発展例では、リブ外套を包囲するコンポーネントはコンポーネント外壁を有し、コンポーネント外壁はハウジング内壁に密封式に当接する。リブ外套を包囲するコンポーネントは、すでに上に述べたとおりカバーであるのが好ましい。このような好ましい実施形態では、ブレーキシステム緩衝装置の密閉性が外部に対してハウジングとカバーの間で構成される。このようにして、ブレーキシステム緩衝装置の密閉性が特別に持続的に保証される。第1または第2の部分部材のようにブレーキプロセスのときに負荷を受けるいずれのコンポーネントも、密閉性のために寄与しなくてよいからである。
【0055】
リブ外套を包囲するコンポーネントは、好ましくはカバーは、第2の分離部材のリングリブがカバーに係合ないし係止されるように構成、配置されるのが特別に好ましい。それにより、このコンポーネントが追加的にブレーキシステム緩衝装置に固定ないし固着される。さらに、このようにしてそれぞれのリング部分空間がより良く相互に封止される。
【0056】
さらにハウジング内壁は、リブ外套を包囲するコンポーネントが圧入によりハウジングへ挿入されることによって、コンポーネント外壁に密閉式に当接するのが好ましい。圧入は、結合されるべき各部分が統合の際に実質的に弾性的にのみ変形し、摩擦接合式の結合によって不慮に外れることが防止される方法である。摩擦接合式の結合は、互いに結合されるべき各面に対する法線力を前提条件とする。その相互の変位は、静止摩擦によって惹起される反力を上回らない限りにおいて防止される。
【0057】
圧入は圧入取付部によって行われるのが好ましい。すなわち、リブ外套を包囲するコンポーネントが、好ましくはカバーが、圧入取付器として構成されていなければならない。圧入取付部の圧入はセルフクリンチ技術とも呼ばれる。圧入取付部ないしセルフクリンチングファスナーは、金属板、基板、延性ないし変形可能な材料の開口部などに溶接や追加取付器なしで取付可能である、セルフクランプ式ないし自動閉止式の取付部材である。
【0058】
本発明の別の好ましい発展例では、第2の分離部材のダイヤフラム保持装置はビード状および/またはトランペット状に外方に向かって拡張していくように構成される。第1の分離部材がそれによってハウジング内壁にいっそう固定的かつ密閉式に固定される。さらにそのようにして、第2の分離部材の方向への閉止部材とダイヤフラム折込部の運動がより良く案内され、ならびに、第2の分離部材の分離部材内壁への第1の分離部材の形状接合式の当接が促進される。
【0059】
次に、本発明に基づく解決法の実施例について、添付の模式的な図面を参照しながら詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明によるブレーキシステム緩衝装置の第1の実施例である。
図2】第1の液圧が印加されたときの図1のブレーキシステム緩衝装置である。
図3】第2の液圧が印加されたときの図1のブレーキシステム緩衝装置である。
図4】ブレーキシステム緩衝装置での圧力と収容容積の依存性に関する特性曲線を示すグラフである。
図5】本発明に基づくブレーキシステム緩衝装置の第2の実施例である。
図6】本発明に基づくブレーキシステム緩衝装置の第3の実施例である。
図7図6の詳細部VIIである。
図8】本発明に基づくブレーキシステム緩衝装置の第3の実施例である。
図9図8の詳細部IXである。
図10】本発明に基づくブレーキシステム緩衝装置の第4の実施例である。
図11図11のブレーキシステム緩衝装置の分離部材を示す前側からの斜視図である。
図12図11のブレーキシステム緩衝装置の分離部材を示す後側からの斜視図である。
図13図10のブレーキシステム緩衝装置による緩衝プロセスの第1の部分である。
図14図10のブレーキシステム緩衝装置による緩衝プロセスの第2の部分である。
図15図10のブレーキシステム緩衝装置による緩衝プロセスの第3の部分である。
図16図10のブレーキシステム緩衝装置のコンポーネントを示す斜視断面図である。
図17図10のブレーキシステム緩衝装置の組立の第1のステップである。
図18図10のブレーキシステム緩衝装置の組立の第2のステップである。
図19図10のブレーキシステム緩衝装置の組立の第3のステップである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1には、ハウジング12とカバー14とを有するブレーキシステム緩衝装置10が示されている。ハウジング12には引込配管16が配置されており、そこでは本例では液圧が印加されておらず、バツ印のついた矢印18でそのことが図示されている。引込配管16は第1の空間20に連通し、これに第1の分離部材22が、本例では転動型ダイヤフラムが後続している。第1の空間20から見て第1の分離部材22の後方に第2の空間24があり、これに第2の分離部材26が後続しており、観察方向で見て第2の分離部材26の後方に第3の空間28がある。
【0062】
詳細には、これらの空間20,24,28と分離部材22,26は以下のような様相を呈する。第1の空間20は、ハウジング内壁30と、以下において転動型ダイヤフラムと呼ぶ第1の分離部材22の第1の分離部材内壁32とによって包囲される。分離部材22の中心に、かつこれと一体的に構成されて、閉止部材34が配置されており、これから分離部材22がさらに外方に向かってダイヤフラム折込部36まで延びている。ダイヤフラム折込部36の内部に、ないしはこれにより包囲されて、ダイヤフラム折込窪み38がある。ダイヤフラム折込部36に後続して、分離部材22は、ハウジング12の連結枠42を取り囲むダイヤフラムカラー40まで延びている。転動型ダイヤフラムとして構成される分離部材22は、その分離部材内壁32の一部をもってハウジング内壁30に密閉式に当接し、第1の分離部材外壁44をもって第2の空間24のほうを向く。第2の空間24は、第1の分離部材外壁44と、第2の分離部材26の第2の分離部材内壁46とで包囲されている。
【0063】
第2の分離部材26は、ダイヤフラム保持装置48からダイヤフラム折込窪み38の中へと延びている。第2の分離部材26の中央に、第2の空間24を第3の空間28と接続する通過部50が配置されている。このとき通過部50は、第2の分離部材内壁46、第2の分離部材26、および第2の分離部材外壁52を通って延びている。第3の空間28は、第2の分離部材外壁52と、カバー14のカバー内壁54とによって包囲されている。
【0064】
ブレーキシステム緩衝装置10の図示している初期状態のとき、ブレーキ媒体が中にある第1の空間20では、当初は液圧が印加されていない。エラストマーから製作される分離部材22は、このときには実質的に基本形状になっている。このときこの分離部材はハウジング内壁30に当接して、第1の空間20が第2の空間24に対して気密に封止されるようになっており、第2の空間24にはガスがあり、ここでは特に空気がある。このガスは、通過部50によって第2の空間24と接続された第3の空間28にもある。このように、これら両方の空間24,28は、緩衝のために利用可能な共通のガス容積を形成する。このガス容積の弾性が高くなることに基づき、減速をするとき、ないしは第1の空間20に液圧が印加されるとき、改善された緩衝作用が実現される。
【0065】
第1の空間20で液圧が印加されると、分離部材22は、第2の空間24のガス容積が縮小するように変形する。このとき閉止部材34が、第2の空間24の中に入るように動く。緩衝に関連する圧力領域よりも上方に規定される特定の液圧を超えると、閉止部材34が第2の分離部材26の第2の分離部材内壁46に当接して、第3の空間28への通過部50を閉止する。このとき第2の分離部材26はストッパのように作用する。分離部材22ないしその閉止部材34が第2の分離部材26に当接して通過部50を閉止するブレーキシステム緩衝装置10の状態が、図2図3に示されている。
【0066】
閉止される通過部50に基づき、第3の空間28が第2の空間24から分離されることになり、それにより、これ以後の緩衝のために利用できるのは第2の空間24に残っているガス容積だけとなる。弾性と緩衝作用はわずかしかなくなる。第2の空間24は容積をほとんど収容できなくなっているからである。このような作用は意図的なものである。そのようにして、ブレーキシステムと結合されているブレーキペダルのストロークもそれ以上はさほど長くならないからである。図3に示すブレーキシステム緩衝装置10の状態では、分離部材22と第2の分離部材26は隙間なく、ないしは全面的に互いに当接しており、その結果、第2の空間24は完全に消滅し、ないしはもはや容積を有さない。このケースでは、ブレーキペダルのストロークは変化しなくなっている。
【0067】
第1の空間20に印加される液圧が低下すると、ただちに分離部材22が再び初期状態ないし初期位置へと戻るように動く。
【0068】
図2は、図1のブレーキシステム緩衝装置10を示しているが、第1の空間20に第1の液圧が印加された状態で示しており、そのことが引込配管16の領域の矢印56によって図示されている。
【0069】
すでに述べたとおり、閉止部材34はこのとき第2の分離部材26の第2の分離部材内壁46に当接して、第3の空間28への通過部50を閉止する。したがってそれ以上の緩衝に利用可能なのは、第2の空間24に残っている容積だけとなる。図2の図面では、主としてダイヤフラム保持装置48を中心とする領域が示されている。緩衝とブレーキプロセスに対する作用については、図1に関する記述ですでに詳細に述べたところであり、したがってここではあらためて説明しない。
【0070】
図3には、図1のブレーキシステム緩衝装置10が示されているが、第1の空間20に第2の液圧が印加された状態で示しており、そのことが引込配管16の領域の矢印58によって図示されている。
【0071】
すでに述べたとおり、閉止部材34はこのとき第2の分離部材26の第2の分離部材内壁46に当接して、第3の空間28への通過部50を閉止する。それに加えて、分離部材22と第2の分離部材26が隙間なく互いに当接しており、その結果、第2の空間24は容積をもはや有していない。これと結びついた緩衝とブレーキプロセスに対する作用については、図1に関する記述ですでに詳細に述べたところであり、したがってここではあらためて説明しない。
【0072】
図4は、このような種類のブレーキシステム緩衝装置での圧力60と収容容積62の間の依存性に関わるグラフを示している。ここで圧力60はx軸、収容容積62はy軸に図示されている。グラフの座標原点を起点として、第1の特性曲線64と第2の特性曲線66が延びている。さらにこのグラフは、x軸と交差する垂直方向の破線68と、y軸と交差する水平方向の破線70を示している。
【0073】
第1の特性曲線64は、緩衝のために利用できる媒体の少ない容積を有するブレーキシステム緩衝装置について、圧力と収容容積の間の依存性を示している。この特性曲線64については、ここでは簡略に図1の第2の空間24の容積が想定されている。
【0074】
第1の特性曲線64の上方に延びる第2の特性曲線66は、これに比べて緩衝のために利用できる媒体の大きい容積を有するブレーキシステム緩衝装置について、圧力と収容容積の間の依存性を示している。ここでは簡略に特性曲線66について、図1の第2および第3の空間24,28を合計した容積が想定されている。
【0075】
x軸と交差する垂直方向の破線により、このような種類のブレーキシステムでの脈動緩衝に関連する圧力領域の上限をなす、事前定義された圧力値68が表されている。すなわちこの関連する圧力領域は、座標原点から破線まで延びている。
【0076】
y軸と交差する水平方向の破線により、本発明に基づくブレーキシステム緩衝装置10についての容積ストッパ70が表されている。この容積ストッパは、ほぼ図1の第2の空間24の容積である。
【0077】
第2および第3の空間24,28のそれぞれの容積を適宜設計することで、関連する圧力領域およびこの圧力領域での所望の弾性ないし緩衝作用に合わせてブレーキシステム緩衝装置10が適合化される。図4のグラフに示すように最善の適合化がなされれば、破線68,70が特性曲線66と1つの点で交差する。
【0078】
図5には、転動型ダイヤフラムとして構成された第1の分離部材22が第1の分離部材外壁44をもって向いている領域においてのみ図1のものと相違するブレーキシステム緩衝装置10が示されている。分離部材22それ自体、および分離部材22が第1の分離部材内壁32をもって向いている領域は図1のものと全面的に一致しており、ここではあらためて説明しない。
【0079】
図1のブレーキシステム緩衝装置10との主要な相違は、図1の第3の空間28および付属の通過部50に代えて、ブレーキシステム緩衝装置10が、この図5では、通過部74を有する第1の部分空間72と、第2の通過部78を有する第2の部分空間76とを有していることにある。ここでは両方の部分空間72,76は分離壁80によって隔てられている。図1とのさらに別の相違は、この図5では第2の分離部材26がハウジング内壁30まで延びてカバー14をこれから隔てているという点にある。
【0080】
その他すべての構成要件は図1のものに相当する。たとえば第2の空間24はここでも第1の分離部材外壁44と、第2の分離部材26の第2の分離部材内壁46とで包囲されている。同じく第2の分離部材26は、ここでもダイヤフラム保持装置48をもって分離部材22のダイヤフラム折込窪み38の中に延びている。さらに部分空間72,76は分離壁80のほか、図1の第3の空間28のように、第2の分離部材外壁52とカバー14のカバー内壁54とによって包囲されている。
【0081】
機能形態は、ここでも図1のブレーキシステム緩衝装置10の場合に類似する。第1の空間20で液圧が印加されると、ここでも分離部材22が変形して、第2の空間24のガス容積が縮小するようになっている。このとき閉止部材34が第2の空間24の中に入るように動き、理想的には関連する圧力領域の上限に相当する特定の液圧を超えると第2の分離部材26に当接して、部分空間72,76への通過部74,78を閉止する。
【0082】
第1の空間20で印加される液圧が低下すると、転動型ダイヤフラムとして構成された分離部材22が再びその初期状態ないし初期位置に戻る。それによって通過部74,78が再び開放されて、部分空間72,76が再び第2の空間24と接続される。
【0083】
図6は、カバー14の置き換えに関して、および特に第2の分離部材26の構成に関して、図1に示すものと相違するブレーキシステム緩衝装置10を示している。図6のそれ以外のコンポーネントは図1のものに一致し、ここではあらためて説明しない。図示しているブレーキシステム緩衝装置10の状態では、引込配管16で液圧18が第1の空間20に印加されておらず、その結果、第1の分離部材22が図1と同じく通常形態ないし初期形態にあることだけを述べておく。図1のカバー14の代わりに、図6ではコンポーネント外壁84とコンポーネント内壁86とを備えるコンポーネント82が用いられる。このコンポーネント82は、ここでも同じくカバーとして利用可能である。ここではコンポーネント82は第1の分離部材22に当接して、第2の分離部材26がコンポーネント82と第1の分離部材22とによって全面的に取り囲まれるようになっている。コンポーネント内壁86は、ここでは第1の分離部材22から最大の距離で配置された、第2の分離部材26を周回する凹部88を有している。コンポーネント外壁84は、ハウジング30ないしそのハウジング内壁30に当接する。
【0084】
第2の分離部材26は、分離部材内壁46の側では図1の第2の分離部材26と実質的に同様に構成されている。ここでの相違は、ダイヤフラム保持装置48がダイヤフラム折込窪み38の内部でトランペット状ないしビード状に外方に向かって、ないしはハウジング内壁30の方向に拡張するように構成されるという点のみにあり、ここではこれを外側湾曲90と呼ぶ。分離部材外壁52の側では、第2の分離部材26はリブ構造92を有していて、このリブ構造は分離部材外壁52から構造端部側94まで延び、そのようにして第3の空間28全体を貫通する。リブ構造92は第2の分離部材26と一体的に構成されており、さらに、外套内壁98と外套外壁100とを備えるリブ外套96によって包囲される。リブ外套96は、分離部材外壁52から、より厳密にはダイヤフラム保持装置48から構造端部側94まで延びている。外套外壁100には、構造端部側94に隣接して、凹部88の中で係止されるように配置された複数の係止部材が配置されており、ここでは係止部材102および104だけが見えている。
【0085】
リブ構造92の中央の内部に、円柱中空空間108を有する中空円柱106が配置されており、この中空円柱は、通過部50が円柱中空空間108へと通じるように分離部材外壁52に付設されている。中空円柱106からは複数の構造リブがリブ外套96ないしその外套内壁98まで延びており、そのうちここでは構造リブ110および112だけが見えている。構造リブ110,112は第3の空間28をリング外套96の内部で複数の構造部分空間に下位区分し、そのうちここには構造部分空間114および116だけが見えている。構造空間は、ここには接続通路118,120,122および124だけが見えている接続通路によって円柱中空空間108と接続されている。このとき接続通路118,120,122,124は構造端部側94に配置されている。
【0086】
ここに示すブレーキシステム緩衝装置10は、その基本的な機能形態に関して、図1のブレーキシステム緩衝装置10に匹敵している。ここでもたとえばコンポーネント82が図1のカバー14と同じく、第1の分離部材22に安定化をするように当接する。この図6に示すブレーキシステム緩衝装置10では、緩衝度の段階的な調整もさらに可能にするリブ構造92の支持機能と、ここではカバーとして構成されるコンポーネント82での第2の分離部材26の係止式の定着とがこれに加わる。この支持効果は、リブ構造92のすべてのコンポーネントが分離部材外壁52から構造端部側94まで延びることによって実現され、構造端部側はコンポーネント内壁86に当接する。緩衝度の調整は、構造部分空間114,116への接続通路118,120,122,124のうちの1つまたは複数を閉止することで実行可能である。コンポーネント82での係止式の定着は、係止部材102,104によって行われる。コンポーネント82へ第2の分離部材26が挿入されるとき、ないしは第2の分離部材26にコンポーネント82が外嵌されるとき、係止部材102,104が内方に向かって、すなわちリブ外套96の中へと押し込まれる。構造端部側94がコンポーネント内壁86に達するとただちに係止部材102,104が、そのために設けられたコンポーネント82の凹部88に係合する。
【0087】
図7には、図6に示す第2の分離部材26が構造端部側94を見る視点から斜視図として示されている。したがって、リブ構造92を特別に良く見ることができる。ここには外側湾曲90と外套外壁100も、いっそう明らかに見て取ることができる。構造リブ110および112のほか、中空円柱106からリブ外套96ないしその外套内壁98まで延びる、別の構造リブ126,128,130および132も示されている。構造リブ110,112,126,128,130,132の間に構造部分空間114,116,134,136,138,140が配置されており、接続通路118,120,122,124,142,144によって円柱中空空間108と接続されている。外套外壁100の上の構造端部側94には係止部材102および104のほか、別の係止部材146,148,150,152も示されている。これらの係止部材102,104,146,148,150,152の各々が、複数の外套スリット154,156,158,160,162,164,166,168,170,172,174,176のうちの2つに当接するように配置されており、外套スリット154,156,158,160,162,164,166,168,170,172,174,176は構造端部側94から外側湾曲90の方向に延びている。
【0088】
ここに新たに示す各コンポーネントのうち、たとえば別の係止部材146,148,150,152のように図6に示すものと呼称上の呼び方に関して同じであるものは、機能も同じものを有している。したがって、そのようなコンポーネントはその機能に関してあらためて説明しない。完全に新たに見えている、したがってその機能性に関してまだ説明していないのは、外套スリット154,156,158,160,162,164,166,168,170,172,174,176である。これらは第3の空間28の追加の容積を提供するという目的を果たすだけではない。特に外套スリット154,156,158,160,162,164,166,168,170,172,174,176は、リブ外套96を構造端部側94の視点から分割して、係止部材102,104,146,148,150,152が隔てられるようにしている。第2の分離部材26の材料の柔軟性に応じて、係止部材102,104,146,148,150,152のうちの1つが配置されるリブ外套96の領域を、程度の差こそあれ若干内方に向かって押圧することができる。それにより、図6に関して説明した第2の分離部材26および/またはコンポーネント82の組付けが大幅に簡易化される。
【0089】
図8は、コンポーネント82と第2の分離部材26の構成に関して図6に示すものと相違するブレーキシステム緩衝装置10を示している。すなわち、ここでも引込配管16は第1の空間20に液圧18を印加していない。図6とは異なり、コンポーネント82はそのコンポーネント外壁84とコンポーネント内壁86とをもって、この図8においては第1の分離部材22にまで達するのではない。それにより、第2の分離部材26ないしそのリブ外套96を周回する第4の空間178が構成されている。第2の分離部材26は、ここではリブ外套96を周回する載置リング180を有しており、これと一体的に構成される。載置リング180はリング外側縁部182を有しており、第4の空間178の中に突入して第1の分離部材22に当接し、さらにはリング外側縁部182をもってハウジング12ないしハウジング内壁30で終わるようになっている。このように第4の空間178は、ハウジング12、コンポーネント82、および第2の分離部材26ないしリブ外套96、および第2の分離部材26の載置リング180によって包囲ないし構成されている。
【0090】
第4の空間178は、ここでは2つのリングリブ184および186だけが示されている複数のリングリブによって、ここではリング部分空間188および190だけが示されている複数のリング部分空間に分割されている。このときリング部分空間188,190は、-図7および図9にのみ示す-外套スリット154,154,166,168によって、構造部分空間114,116と媒体導通式に接続されている。図8のその他のすべてのコンポーネントと詳細は図6のものに対応しており、ここではあらためて記述しない。
【0091】
ここに示すブレーキシステム緩衝装置10は、その基本的な機能形態に関しては図6のブレーキシステム緩衝装置10に匹敵する。ただしコンポーネント82は、ここでは第1の分離部材22に安定化をするように当接していない。この役割を担うのは、ここでは第2の分離部材26の載置リング180である。コンポーネント82が小さく、ないしは短くなることで生じている第4の空間178を追加の容積として利用することができ、それにより、ブレーキシステム緩衝装置10のいっそう高い緩衝度が達成される。第4の空間178が複数のリング部分空間188,190に分割されることで、緩衝度をここでも段階付け可能である。さらに、第4の空間178を分割するリングリブ184,186がコンポーネント82に対して載置リング180を支持する。
【0092】
図9には、図8に示す第2の分離部材26が斜視図として示されている。リブ外套96の外側湾曲90と外套外壁100も同じく再び明らかに見ることができる。図9で焦点となるのは、特に、載置リング180とそのリング外側縁部182、および載置リング180に配置されたリングリブであり、そのうちここではリングリブ184および186のほか、さらに別のリングリブ192,194,196も示されている。構造端部側94のリブ構造92は、ここに示す斜視図では良く見ることができないが、図7のリブ構造92に対応する。構造端部側94から載置リング180の方向に延びるリブ外套96にある外套スリット156,158,160,162および164を良く見ることができる。載置リング180とリングリブ184,186,192,194,196は外套外壁100の上で、リングリブ184,186,192,194,196が載置リングから屹立しているところよりも、外套スリット156,158,160,162,164が載置リング180の近くまで達するように配置されている。そのようにしてのみ、ここではリング部分空間188および190のほかに別のリング部分空間198,200,202,204も図示されているリング部分空間が、-図7にのみ示す-構造部分空間114,116,134,136,138,140と媒体導通式に接続される。
【0093】
ここに新たに示す各コンポーネントのうち、たとえば別のリングリブ192,194,196のように図8に示すものと呼称上の呼び方に関して同じであるものは、機能も同じものを有している。したがって、そのようなコンポーネントはその機能に関してあらためて説明しない。ここで再び新たに見えている、したがってその機能に関して図8でまだ説明していないのは、外套スリット154,156,158,160,162,164である。図7に示す他の外套スリット166,168,170,172,174,176は、この実施形態については図示していない。しかし第2の分離部材26は対称に構成されているので、見えるように図示されている各コンポーネントを参照すれば全体像を推測することができる。さらに図8および図9を参照してこれとの組み合わせで、リング部分空間188,190,198,200,202,204が外套スリット154,156,158,160,162,164によって、リブ外套96の内部でリング構造92と接続されていることを推測することができる。
【0094】
図10には、ハウジング12とカバー14とを有するブレーキシステム緩衝装置10のさらに別の変形例が示されている。ハウジング12には、やはり矢印56によって図示されている液圧が印加される引込配管16が同じく配置されている。引込配管16は、ここでは転動型ダイヤフラムである第1の分離部材22が後続する第1の空間20に連通している。第1の空間20から見て第1の分離部材22の後方に、第2の分離部材26が後続する第2の空間24があり、観察方向で見て第2の分離部材26の後方に第3の空間28がある。このときカバー14と第2の分離部材26は、3D印刷法によって製作される一体的なコンポーネントとして構成される。このコンポーネントの中で、横断面が円形かつ縦断面が実質的に菱形の中空空間の形態の第3の空間28が構成される。
【0095】
第1の空間20は、ハウジング内壁30と、第1の分離部材22の第1の分離部材内壁32とで包囲されている。分離部材22は、円形と中心点206とを有するディスクとして構成される。中心点206に対して同心的に、分離部材22のこのように円形でディスク形のダイヤフラムに、第1のダイヤフラム湾曲部208と、その内部に第2のダイヤフラム湾曲部210とが構成されている。ダイヤフラム湾曲部208は円形であり、かつ図10に示す縦断面図で見て第2の分離部材26に向かって凸面状に湾出している。第2のダイヤフラム湾曲部210も同じく円形であるが、縦断面で見て第2の分離部材26に向かって凹面上に湾入している。それに伴い、このような種類の第1の分離部材22は、縦断面図で見て引込配管16のほうを向くダイヤフラム折込窪み38を有している(図11および図12も参照)。
【0096】
ダイヤフラム湾曲部208は外側で、図1のブレーキシステム緩衝装置10でも設けられるようなダイヤフラム保持装置48に直接的に当接する。分離部材22はこのダイヤフラム保持装置48を外側で取り囲み、そこでダイヤフラムカラー40によって第2の分離部材26の周りに巻きつく。このように転動型ダイヤフラムとして構成される分離部材22は、その分離部材内壁32の一部分をもってハウジング内壁30に密閉式に当接するとともに、第1の分離部材外壁44をもって第2の空間24のほうを向く。第2の空間24は同じく第1の分離部材外壁44と、第2の分離部材26の第2の分離部材内壁46とによって包囲される。この分離部材内壁46は、図10の縦断面図で見て円弧状に通過部50へと通じており、ここではシェル形状212を有している。
【0097】
第2の分離部材26の中心部に、第2の空間24を第3の空間28と接続する通過部50が同じく配置されている。このとき通過部50は第2の分離部材内壁46、第2の分離部材26、および第2の分離部材外壁52を通過する。第3の空間28は、第2の分離部材外壁52とカバー14のカバー内壁54とによって包囲されている。
【0098】
図13に示すブレーキシステム緩衝装置10の初期状態では、同じくブレーキ媒体が中にある第1の空間20では当初は液圧が印加されていない。エラストマーから製作される分離部材22は、このとき実質的にその基本形状になっている。このときこの分離部材はハウジング内壁30に当接して、第1の空間20が第2の空間24に対して気密に封止されるようになっており、第2の空間24の中には、ここでは特に空気であるガスがある。このガスは、通過部50によって第2の空間24と接続された第3の空間28にもある。このように、これら両方の空間24,28は緩衝のために利用可能な共同のガス容積を形成する。このガス溶液の弾性が高くなることに基づき、制動時ないし第1の空間20への液圧の印加時に、同じく改善された緩衝作用が実現される。
【0099】
第1の空間20に液圧が印加されると、分離部材22は、第2の空間24のガス容積が縮小するように変形する。このとき閉止部材34が第2の空間24の中に入るように動いて、その運動により第2の空間24が通過部50に向かう方向へ連続的に縮小されるようになっている。このとき第1のダイヤフラム湾曲部208が、第2の分離部材26の分離部材内壁46に向かう方向へさらに凸面状に湾曲して、その分離部材外壁44をもってこの分離部材内壁46に当接する。第1の分離部材22のこのような種類の運動により、第2の空間24が通過部50に向かって同心的に縮小していき、分離部材内壁46と分離部材外壁44との間で空気ないしガスの封入が起こることはない(図13および図14参照)。
【0100】
緩衝に関連する圧力領域よりも上方で規定される特定の液圧を超えると、第1の分離部材22が第2の分離部材26の第2の分離部材内壁46へ全面的に当接し、その際に第3の空間28への通過部50も閉止する(図15参照)。このとき第2の分離部材26はやはりストッパのように、ないしは支持部のように作用する。そして第2の空間24が完全に空になり、第3の空間28も閉止される。こうして利用できる緩衝作用はほぼゼロないしゼロになる。このような作用は意図的なものである。ブレーキシステムと接続されているブレーキペダルのストロークも、それ以上はさほど長くならないからである。
【0101】
図17から図19には、このような種類のブレーキシステム緩衝装置の組立が明示されている。この組立では、まず上に挙げたカバー14と第2の分離部材26からなる一体的なコンポーネントの上に第1の分離部材22が装着される。このとき第2の分離部材26の外側縁部とそのダイヤフラム保持装置48とに、転動型ダイヤフラムとして構成される第1の分離部材22が被される。それに伴って第2の空間24が作製される。こうして部品14,26および22から作製されたモジュールが、ハウジング12に構成された段差のある穴214に挿入される。それに伴い、穴214の内部で分離部材22の手前に第1の空間20が作製される。コンポーネント14,26および22の挿入と同時に、第1の分離部材22が圧着面216でハウジング12へ流体密閉式に当接し、ならびにカバー14がその外側円周にある圧着面218でハウジング12の中へ定置に圧入される。
【符号の説明】
【0102】
10 ブレーキシステム緩衝装置
12 ハウジング
20 第1の空間
22 第1の分離部材
24 第2の空間
26 第2の分離部材
28 第3の空間
46 分離部材内壁
50 通過部
208;210 ダイヤフラム湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19