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特許7560253光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240925BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240925BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C09D11/30
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020020311
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2020132873
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019022899
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
(72)【発明者】
【氏名】明瀬 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】川端 潤
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122431(JP,A)
【文献】特表2016-514174(JP,A)
【文献】特開2018-188581(JP,A)
【文献】特開2016-079385(JP,A)
【文献】特開2015-163701(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145671(WO,A1)
【文献】特開2016-020457(JP,A)
【文献】特開2009-035650(JP,A)
【文献】特開2011-052107(JP,A)
【文献】特開2013-208807(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005453(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物と、(B)アルコキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(C)ヘキサンジオールアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種とを含み、
前記(B)成分は、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレートまたはプロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレートのうち、少なくとも2種を含み、
前記(A)成分の含有量は、インキ組成物中、3~18質量%であり、
前記(B)成分の含有量は、インキ組成物中、15~25質量%であり、
前記(C)成分の含有量は、インキ組成物中、30~60質量%である、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【請求項2】
さらに、(D)光重合開始剤を含む請求項1記載の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【請求項3】
さらに、(E)水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを含み、
前記(E)成分の含有量は、インキ組成物中、3~20質量%である、請求項1または2記載の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【請求項4】
さらに、(F)着色剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物に関する。より詳細には、本発明は、臭いが少なく、段ボールシート等に印刷することができ、かつ、耐摩擦性が優れ、段ボールシート等が折り曲げられた場合であっても折り曲げ耐性が優れた、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低臭気であり、かつ、耐摩擦性が優れ、段ボールシート等に印刷することを目的とした活性エネルギー線硬化型インキが知られている。特許文献1には、光重合開始剤とジアリルフタレート樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型インキが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-210975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインキは、臭気および段ボールシート等が折り曲げられた場合に折り曲げ耐性において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、臭いが少なく、段ボールシート等に印刷することができ、かつ、耐摩擦性が優れ、段ボールシート等が折り曲げられた場合であっても折り曲げ耐性が優れた、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果(A)分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物と、(B)アルコキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(C)ヘキサンジオールアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種とを所定量含む光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0007】
(1)(A)分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物と、(B)アルコキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(C)ヘキサンジオールアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種とを含み、前記(A)成分の含有量は、インキ組成物中、3~18質量%であり、前記(B)成分の含有量は、インキ組成物中、5~35質量%であり、前記(C)成分の含有量は、インキ組成物中、30~60質量%である、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【0008】
このような構成によれば、得られる光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、低臭気である。また、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、段ボールシート等に印刷することができ、かつ、耐摩擦性が優れ、段ボールシート等が折り曲げられた場合であっても折り曲げ耐性が優れる。
【0009】
(2)前記(B)成分は、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含み、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、前記(B)成分中、30~100質量%である、(1)記載の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【0010】
このような構成によれば、得られる光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、より低臭気である。また、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、段ボールシート等に印刷することができ、かつ、耐摩擦性が優れる。
【0011】
(3)さらに、(D)光重合開始剤を含む、(1)または(2)記載の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【0012】
このような構成によれば、光源として紫外線(UV)、紫外線(発光ダイオード(LED))を用いる場合、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、硬化性が優れる。
【0013】
(4)さらに、(E)水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを含み、前記(E)成分の含有量は、インキ組成物中、3~20質量%である、(1)~(3)のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【0014】
このような構成によれば、得られる光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、より低臭気である。また、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、段ボールシート等に印刷することができ、低臭気であり、かつ、耐折れ曲げ性がより優れる。
【0015】
(5)さらに、(F)着色剤を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物。
【0016】
このような構成によれば、得られる光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、段ボールシート等に印刷することができ、低臭気であり、かつ、耐折れ曲げ性がより優れた各色のインキ組成物として有用である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、臭いが少なく、段ボールシート等に印刷することができ、かつ、耐摩擦性が優れ、段ボールシート等が折り曲げられた場合であっても折り曲げ耐性が優れた、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物>
本発明の一実施形態の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物(以下、インキ組成物ともいう)は、(A)分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物と、(B)アルコキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーと、(C)ヘキサンジオールアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種と、(D)光重合開始剤とを含む。(A)成分の含有量は、インキ組成物中、3~18質量%である。(B)成分の含有量は、インキ組成物中、5~35質量%である。(C)成分の含有量は、インキ組成物中、30~60質量%である。以下、それぞれについて説明する。
【0019】
((A)成分)
本実施形態のインキ組成物は、(A)成分として分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物を含む。
【0020】
分子内に2個の光重合性官能基と2個のアミノ基とを有するアクリル化アミン化合物は特に限定されない。一例を挙げると、アクリル化アミン化合物における光重合性官能基は、可視光または紫外線や電子線等の電離放射線を含む不可視光により重合反応し、分子間に架橋結合を形成し得る官能基が挙げられる。また、光重合性官能基は、光照射により直接活性化して光重合反応する狭義の光重合性官能基、光重合性官能基と光重合開始剤とを共存させて光照射した時に光重合開始剤から発生した活性種の作用により重合反応が開始、促進される広義の光重合性官能基のいずれも含まれる。
【0021】
光重合性官能基は、エチレン性二重結合等の光ラジカル重合反応性を有するもの、エポキシ基等の環状エーテル基等の光カチオン重合および光アニオン重合反応性を有するもの等である。これらの中でも、光重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。光重合性化合物は、2個の光重合性官能基が共に(メタ)アクリロイル基であり、また、アミン価が130~142KOHmg/gであることが好ましい。なお、本実施形態において、アミン価は固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(たとえば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM-900、BURET B-900、TITSTATIONK-900)、平沼産業(株)製)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値である。
【0022】
光重合性化合物は、2官能(メタ)アクリレートとアミン化合物とを反応させて得られるアクリル化アミン化合物であることが好ましい。2官能(メタ)アクリレートは、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、臭素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールアルキレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート等である。これらの中でも、2官能(メタ)アクリレートは、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0023】
アミン化合物は、ベンジルアミン、フェネチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、n-ペンチルアミン、イソペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン等の単官能アミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、メンタンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシルノメタン、イソフォロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、スピロアセタール系ジアミン等の多官能アミン化合物等である。また、アミン化合物は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の高分子量タイプの多官能アミン化合物であってもよい。
【0024】
上記アクリル化アミン化合物は、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートとアミン化合物とを反応させて得られる化合物であることが好ましい。具体的には、アクリル化アミン化合物は、CN371(サートマー社製)、EB7100(EBECRYL 7100、サイテック社製)、Agi008(DSM社製)等である。
【0025】
(A)成分の含有量は、インキ組成物中、3質量%以上であればよく、6質量%以上であることが好ましい。また、(A)成分の含有量は、インキ組成物中、18質量%以下であればよく、15質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の含有量が3質量%未満である場合、インキ組成物は、硬化性が劣る傾向がある。一方、(A)成分の含有量が18質量%を超える場合、インキ組成物は、保存安定性および吐出安定性が低下する傾向がある。
【0026】
((B)成分)
本実施形態のインキ組成物は、(B)成分としてアルコキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む。アルコキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、(メタ)アクリルモノマーは、臭気の少ない各種単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能(メタ)アクリレートモノマー、4官能以上の多官能アクリレートモノマー等である。環境面からは、バイオマス由来のアルコキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。
【0027】
具体的には、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、バイオマス由来のラウリルアクリレート、バイオマス由来の1,10-デカンジオールジアクリレート等が例示できる。
【0028】
(B)成分の含有量は、インキ組成物中、5質量%以上であればよく、15質量%以上であることが好ましい。また、(B)成分の含有量は、インキ組成物中、35質量%以下であればよく、25質量%以下であることがより好ましい。(B)成分の含有量が5質量%未満である場合、インキ組成物は、耐折り曲げ性が劣る傾向がある。一方、(B)成分の含有量が35質量%を超える場合、インキ組成物は、耐摩擦性が劣る傾向がある。
【0029】
本実施形態のインキ組成物は、(B)成分として、上記した多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。(B)成分として多官能(メタ)アクリレートが含まれる場合、多官能(メタ)アクリレートの含有量は、(B)成分中、30質量%以上であることが好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートの含有量は、(B)成分中、100質量%であってもよい。多官能(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、耐摩擦性が優れるという利点がある。
【0030】
((C)成分)
本実施形態のインキ組成物は、(C)成分として、耐摩擦性および臭気の点より、ヘキサンジオールアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0031】
(C)成分の含有量は、インキ組成物中、30質量%以上であることが好ましい。また、(C)成分の含有量は、インキ組成物中、60質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の含有量が30質量%未満である場合、インキ組成物は、硬化性、耐摩擦性が劣る傾向がある。一方、(C)成分の含有量が60質量%を超える場合、インキ組成物は、耐折れ曲げ性が劣る傾向がある。
【0032】
((D)成分)
本実施形態のインキ組成物は、(D)成分として、光重合開始剤を好適に含む。光重合開始剤は特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤は、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等である。このような光重合開始剤は市販されており、たとえばBASF社からイルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア184、イルガキュア379、イルガキュア819、TPO等の商品名で、Lamberti社からDETX等の商品名で入手することができる。光重合開始剤は、併用されてもよい。
【0033】
(D)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光源として紫外線(UV)、紫外線(発光ダイオード(LED))を用いる場合は、(D)成分の含有量は、インキ組成物中、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。また、(D)成分の含有量は、インキ組成物中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、充分な硬化性、内部硬化性および低コストとなり得る。なお、光源として電子線を用いる場合は、(D)成分は添加されなくてもよい。
【0034】
(増感剤)
本実施形態の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物には、さらに、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性を促進するために、400nm以上の主に紫外線の波長域で光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応の増感機能が発現する光増感剤(化合物)を併用使用することができる。なお、上記「400nm以上の波長の光により増感機能が発現する」とは、400nm以上の波長域で光吸収特性を有することをいう。このような増感剤を用いることで、本実施形態のインキ組成物は、LED硬化性を促進され得る。
【0035】
上記光増感剤は、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等であり、好ましくは、チオキサントン系増感剤である。光増感剤は、併用されてもよい。具体的には、光増感剤は、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤等である。市販品の代表例は、アントラセン系増感剤としては、DBA、DEA(川崎化成工業(株)製)、チオキサントン系増感剤としては、DETX、ITX(LAMBSON社製)等である。
【0036】
光増感剤が含まれる場合、光増感剤の含有量は、インキ組成物中、0を超え、5.0質量%以下であることが好ましい。光増感剤の含有量が5.0質量%を超える場合、インキ組成物は、光増感剤を配合することによる効果が向上しにくく、過剰添加となる傾向がある。
【0037】
なお、光増感剤として、チオキサントン系増感剤を含む場合、インキ組成物は、黄色に変色しやすい。そのため、インキ組成物は、顔料に基づく色(本来の色相)より黄味がかった色相になるため、色毎にチオキサントン系増感剤の含有量を適宜決めることが好ましい。具体的には、色味の変化の影響を受けやすいホワイトインキ組成物およびクリアーインキ組成物では、インキ組成物は、光増感剤とてして、チオキサントン系増感剤を含まないことが好ましい。また、マゼンタインキ組成物、シアンインキ組成物では、光重合性化合物としてビニルアミド化合物を併用使用しているので、黄色に変色した硬化塗膜が退色し、色相の変化が問題となりやすい。そのため、光増感剤は、色相に問題が生じない範囲で使用することが好ましい。また、ブラックインキ組成物、およびイエローインキ組成物は、変色があっても色相に影響しにくく、かつ、光重合性が他の色相より乏しいことから、光重合開始剤として、チオキサントン系増感剤を併用使用することが好ましい。
【0038】
((E)成分)
本実施形態のインキ組成物は、(E)成分として、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを好適に含む。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、水酸基を有するアクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等である。これらの中でも、水酸基を有するモノマーは、臭気という観点から、臭気の少ない(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーは、併用されてもよい。
【0039】
(E)成分が含有される場合、(E)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、(E)成分の含有量は、インキ組成物中、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。また、(E)成分の含有量は、インキ中、20質量%以下であることが好ましい。(E)成分の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、より低臭気である。また、インキ組成物は、段ボールシート等に印刷し、かつ、段ボールシート等が折り曲げられた場合であっても折り曲げ耐性がより優れる。
【0040】
((F)成分)
本実施形態のインキ組成物は、(F)成分として着色剤を好適に含む。着色剤を含有させることにより、インキ組成物は、各色のインキ組成物を作製することができる。
【0041】
着色剤は特に限定されない。一例を挙げると、着色剤は、従来使用されている顔料、染料を特に制限なく使用でき、有機顔料または無機顔料等の顔料であることが好ましい。着色剤は、併用されてもよい。
【0042】
有機顔料は、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等である。
【0043】
無機顔料は、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、群青、紺青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料等である。
【0044】
本実施形態のインキ組成物の代表的な色相ごとの顔料の具体例は、以下のとおりである。イエロー顔料は、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等であり、C.I.Pigment Yellow 150、155、180、213等であることが好ましい。
【0045】
マゼンタ顔料は、C.I.Pigment Red 5、7、12、19、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等であり、C.I.Pigment Red 122、202、Pigment Violet 19等であることが好ましい。
【0046】
シアン顔料は、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等であり、C.I.Pigment Blue 15:4等であることが好ましい。
【0047】
ブラック顔料は、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等である。
【0048】
ホワイト顔料は、酸化チタン、酸化アルミニウム等であり、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理された酸化チタン等であることが好ましい。
【0049】
着色剤の含有量は、インキ組成物中、1質量%以上であることが好ましい。また、着色剤の含有量は、インキ組成物中、20質量%以下であることが好ましい。着色剤の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、得られる印刷物の画像品質が適切となり、かつ、粘度特性が優れる。
【0050】
((G)成分)
本実施形態のインキ組成物は、(G)成分として、ビニルモノマーを含んでもよい。ビニルモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、ビニルモノマーは、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等である。
【0051】
これらの中でも、ビニルモノマーは、臭気の少ないトリエチレングリコールジビニルエーテル等であることが好ましい。
【0052】
(G)成分が含有される場合、(G)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、(G)成分の含有量は、インキ組成物中、1質量%以上であることが好ましい。また、(G)成分の含有量は、インキ組成物中、20質量%以下であることが好ましい。(G)成分の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、より低臭気である。また、インキ組成物は、段ボールシート等に印刷し、かつ、段ボールシート等が折り曲げられた場合であっても折り曲げ耐性がより優れる。
【0053】
また、本実施形態のインキ組成物は、性能が低下しない範囲で、臭気の少ない光重合性化合物を含有させることができる。
【0054】
(任意成分)
本実施形態のインキ組成物は、任意成分として、必要に応じて、種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤が配合されてもよい。任意成分は、たとえば、表面調整剤、光安定化剤、表面処理剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等である。
【0055】
・表面調整剤
本実施形態のインキ組成物は、表面調整剤を好適に含む。表面調整剤は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤は、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレン系表面調整剤等である。アセチレンジオール系表面調整剤は、ダイノール607、ダイノール609、EXP-4001、EXP-4300、オルフィンE1010(日信化学工業(株)製)等である。シリコーン系界面活性剤は、BYK-307、333、347、348、349、345、378、3455(ビックケミー社製)等である。フッ素系界面活性剤は、F-410、444、553(DIC社製)、FS-65、34、35、31、30(デュポン社製)等である。
【0056】
表面調整剤が含有される場合において、表面調整剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤の含有量は、インキ組成物の表面張力が25~40mN/mとなる量であることが好ましく、インキ組成物中に0.1~1.5質量%であることがより好ましい。
【0057】
・重合禁止剤
重合禁止剤は特に限定されない。一例を挙げると、重合禁止剤は、N-CH3タイプ、N-Hタイプ、N-ORタイプ等のヒンダードアミン、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン系等の重合禁止剤である。
【0058】
・消泡剤
消泡剤は、シリコーン系消泡剤、プルロニック系消泡剤等である。
【0059】
インキ組成物全体の説明に戻り、本実施形態のインキ組成物は、25℃における粘度が、30mPa・s以下であることが好ましく、20mPa・s以下であることがより好ましい。インキ組成物は、必要に応じて粘度調整剤等が配合される。なお、本実施形態において、粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を用いて、25℃で測定することができる。
【0060】
<インキ組成物の調製方法>
本実施形態のインキ組成物を調製する方法は特に限定されない。一例を挙げると、インキ組成物は、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して分散混合して調製し得る。
【0061】
<印刷物の製造方法>
次に、本実施形態のインキ組成物を用いて印刷物を製造する方法について説明する。
【0062】
本実施形態の印刷物の製造方法は、上記したインキ組成物を、インクジェット方式にて基材に印刷する工程を含む。
【0063】
基材は特に限定されない。一例を挙げると、基材は、各樹樹脂基材、紙、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布等である。本実施形態のインキ組成物は、基材に印刷された後に、基材が折り曲げられる場合であっても、優れた折り曲げ耐性を示す。そのため、インキ組成物は、基材が段ボールシート等の折り曲げられる用途に使用される基材である場合に、特に好適に使用される。
【0064】
基材がCライナー、Kライナー等の段ボールシートである場合、インキ組成物は、段バールシートに対して直接付与されてもよく、段ボールシートにプライマー層を設けたり、コロナ放電処理等を施した後に、付与されてもよい。すなわち、近年、環境に配慮するために、段ボールシートは、古紙や再生紙等が利用される場合がある。段ボールシートとしてKライナーを使用する場合は、表面の凹凸が粗く、色合いが不鮮明であり、印字した際にインキの浸透性が高い。そのため、段ボールシートにインキ組成物が印字されると、下地であるライナー原紙の茶色が印刷品質の低下の原因となりやすい。特に、印刷部分に下地の色が発現すると、インクジェット画像がくすんで見え、印刷物の見栄えが損なわれ得る。このような段ボールシートに対し、上記凹凸等を解消するために、プライマー層が適宜設けられる。
【0065】
プライマー層は、段ボールシートを構成するライナー原紙の白色度や色味等を調整し、下地の白色度を高めること等を目的として設けられる。プライマー層は、顔料および接着剤を含むプレコート剤を塗布することにより形成され得る。
【0066】
顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、二酸化チタン(アナターゼ、ルチル)のほか、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、無定形シリカ、クレー等の体質顔料が挙げられる。また、白色顔料の含有量はプレコート剤100質量部中20~85質量部が好ましく、より好ましくは20~80質量部である。
【0067】
本実施形態において、段ボールのプレコート剤に使用されるバインダー樹脂は、水性樹脂であることが好ましい。水性樹脂は、天然樹脂、合成樹脂等であることが好ましく、澱粉誘導体、カゼイン、シェラック、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系およびマレイン酸系樹脂等がより好ましい。より具体的には、水性樹脂は、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそのアルキルエステル、あるいはスチレン等を主なモノマー成分として共重合した水性アクリル系樹脂、水性スチレン-アクリル樹脂、水性スチレン-マレイン酸樹脂、水性スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等が好適に用いられる。バインダー樹脂の含有量は、プレコート剤100質量部中1~25質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。
【0068】
本実施形態のプレコート剤で使用できる水性媒体は、水または水と水混和性溶剤との混合物が挙げられる。水混和性溶剤は、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類等である。具体的には、水混和性溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プルピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等である。
【0069】
本実施形態で使用されるプレコートには、上記に示した成分以外に、必要に応じて造膜剤、顔料分散剤または顔料分散樹脂、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤等の種々の添加剤を適宜選択して使用することができる。
【0070】
これら各種材料を使用してプレコート剤を製造する方法は特に限定されない。一例を挙げると、プレコート剤を製造する方法は、白色顔料、水性バインダー樹脂、水、必要に応じて水混和性溶剤、および顔料分散剤または顔料分散樹脂を混合して混練し、さらに、添加剤、水、必要に応じて水混和性溶剤、および所定の材料の残りを添加、混合する方法が一般的である。
【0071】
なお、本実施形態のプレコート剤は、上記の各成分を必要量混合し、ホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、3本ロールミルやビーズミル等の分散機にて混合、分散することにより容易に得ることが出来る。
【0072】
プライマー層が設けられる場合、プライマー層の厚み(プレコート剤の塗布量)は特に限定されない。プライマー層は、固形分塗布量が0.1~5g/m2の範囲あることが好ましい。プライマー層の厚み(プレコート剤の塗布量)が上記範囲内であることにより、段ボールシートは、白色度や色味が適切に調整されやすい。
【0073】
インキ組成物の説明に戻り、インキ組成物を硬化する方法は特に限定されない。一例を挙げると、インキ組成物は、基材に吐出された後、光を照射することにより硬化することができる。光を照射する光源は特に限定されない。一例を挙げると、光源は、紫外線、電子線、可視光線、発光ダイオード(LED)等である。
【0074】
具体的には、基材への吐出は、上記インキ組成物をインクジェット方式用のプリンター装置のプリンターヘッドに供給し、このプリンターヘッドから基材に塗膜の膜厚が1~20μmとなるように吐出することにより行うことができる。光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗工されたインキ組成物に光を照射することにより行うことができる。
【0075】
以上、本実施形態のインキ組成物によれば、低臭気である。また、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、段ボールシート等に印刷することができ、かつ、耐摩擦性が優れ、段ボールシート等が折り曲げられた場合であっても折り曲げ耐性が優れる。
【実施例
【0076】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0077】
使用した原料および調製方法を以下に示す。
<着色剤>
PV19
PV23
PY150
PB15:4
PB7
PO13
PG7
<顔料分散剤>
PB822:味の素ファインテクノ(株)製
<光重合性化合物>
(A)アクリル化アミン化合物:
分子内に2個の光重合性官能基および2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物のオリゴマー(CN371:サートマー社製)
(B)アルコキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー:
エチルカルビトールアクリレート(SR256、サートマー社製)
エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR454、サートマー社製)
プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003、サートマー社製)
(C):
3-メチル-1.5-ペンタンジオールジアクリレート:(A)成分、(商品名:ライトアクリレートMPD-A、共栄社化学(株)製)
ジプロピレングリコールジアクリレート:(A)成分、(商品名:DPGDA、ダイセル・オクネシス社製
ヘキサンジオールジアクリレート:(A)成分、(商品名:ビスコート#230、大阪有機化学工業(株)製)
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(商品名:Miramer M210、東洋ケミカルズ(株)製)
(E)水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー:
4-ヒドロキシブチルアクリレート(商品名:4-HBA、大阪有機化学工業(株)製)
<(D)光重合開始剤>
TPO:2,4,6-trimethylbenzoyl diphenyl phosphine oxide(LAMBERTI社製)
<増感剤>
DETX:2,4-ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
<重合禁止剤>
MEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル)
HQ(ヒドロキノン)
<レベリング剤>
BYK-331(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、BYK Chemie社製)
【0078】
(光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物)
顔料と顔料分散剤と光重合性化合物とを表1の配合組成(質量%)となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させてコンクベースを得た。得られたコンクベースを用いて、光重合開始剤と増感剤と重合禁止剤とレベリング剤とを表1の配合組成(質量%)となるように配合し、実施例1~15および比較例1~5の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物を得た。
【0079】
(段ボール基材)
Kライナー、Cライナー
【0080】
(プレコート剤)
平均粒子径0.05μmの炭酸カルシウム45質量部、酸価170mgKOH/gのスチレンマレイン酸樹脂(固形分25%)25質量部、水の30質量部をビーズミルで分散させ炭酸カルシウムの45%スラリーを得た。炭酸カルシウムの45%スラリーの80質量部、酸価170mgKOH/gのスチレン-マレイン酸樹脂(固形分25%)20質量部を混合撹拌し、プレコート剤を得た。
【0081】
(Kライナーへのプレコート剤の塗布)
上記で調整したプレコート剤を、0.1mmメアバーを用いて、塗布量が約4g/m2の塗布量となるようにKライナーに塗布を行った。次いで、プレコート剤塗布面の乾燥を、熱風乾燥により間行った。
【0082】
<光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物および印刷物の評価>
実施例1~15および比較例1~5の光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物を用いて、以下の評価方法および評価基準にしたがって、インキ組成物の粘度、保存安定性、臭気、吐出安定性、印刷物の臭気、硬化性、耐折れ曲げ性および耐摩擦性を評価した。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
(光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物の粘度の測定)
光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物の粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で測定した。
【0085】
(保存安定性)
光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物をガラス瓶に採り、密栓して70℃で7日間保存した後の状態を、下記評価基準に従って評価した。
○:光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、増粘、沈降物が共に認められなかった。
△:光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、軽く振ると元に戻る程度の増粘や沈降物が認められた。
×:光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物は、強く振っても元に戻らない程度の増粘や沈降物が認められる。
【0086】
(臭気)
光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物の臭気を下記評価基準に従って評価した。
○:臭気が低かった。
×:臭気が高かった。
【0087】
(吐出安定性)
25℃の雰囲気温度下に、インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置と、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物とを24時間置き、インクジェット記録装置および光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物の温度を25℃とした。その後、25℃で、インキ組成物を用いてプレコートを塗布したKライナー、Cライナー上に、連続的に印刷(印字)して、吐出安定性を以下の評価基準にしたがって評価した。
○:インキ組成物は、印刷の乱れがなく、安定して吐出できた。
△:インキ組成物は、印刷の乱れが若干あったが、ほぼ安定して吐出できた。
×:インキ組成物は、印刷の乱れがあったか、または、安定して吐出できなかった。
【0088】
(硬化性)
25℃の雰囲気温度下に、インクジェット記録装置と、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物インキ組成物とを24時間置き、インクジェット記録装置および光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物の温度を25℃とした。その後、25℃で、光硬化型インクジェット印刷用インキ組成物を用いてプレコートを塗布したKライナー、Cライナー上に、連続的に印刷(印字)した後、フォセオン・テクノロジー社製UV-LED光ランプにて、ランプとインキの塗布面との距離2cm下で、UV積算光量180mJ/cm2で硬化させた。得られた硬化性塗膜を綿棒でこすり、下記評価基準に従ってその取られ具合により硬化性を評価した。
○:取られがなかった。
△:わずかに取られがあった。
×:取られがあった。
【0089】
(臭気)
プレコートを塗布したKライナー、Cライナー上にインキ組成物を印字し、硬化性塗膜の臭気を評価した。
○:臭気が低かった。
×:臭気が高かった。
【0090】
(耐折り曲げ性)
プレコートを塗布したKライナー、Cライナー上にインキ組成物を印字し、印字された資料を90℃折り曲げ、下記評価基準に沿って評価した。
○:折り曲げた際に、塗膜に罫線割れや細かなクラックが生じなかった。
△:折り曲げた際に、細かなクラックが生じた。
×:折り曲げた際に、罫線割れを生じた。
【0091】
(耐摩擦性)
上記硬化性の評価において得られた硬化膜について、学振型堅牢度試験機((株)大栄
科学精器製作所製)を用いて、晒し布で500g×200回塗膜を擦ったときの、プレコートを塗布したKライナー、Cライナーからの硬化膜の取られ具合を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:硬化膜の取られが無かった。
△:硬化膜の表面に傷があった。
×:硬化膜が取られ、シートがみえた。
【0092】
表1に示されるように、本発明の実施例1~15のインキ組成物を用いた場合、インキ組成物は、保存安定性が優れ、低臭気であり、吐出安定性がよかった。また、これらのインキ組成物を用いて得られた印刷物は、低臭気であり、硬化性が優れ、耐折れ曲げ性および耐摩擦性が優れた。
【0093】
一方、(A)成分の含有量が少なかった比較例1のインキ組成物を用いて得られた印刷物は、硬化性および耐摩擦性が劣った。(A)成分の含有量が多かった比較例2のインキ組成物は、保存安定性が劣り、このインキ組成物を用いて得られた印刷物は、耐摩擦性が劣った。(B)成分の含有量が少なかった比較例3のインキ組成物を用いて得られた印刷物は、耐折り曲げ性および耐摩擦性が劣った。(B)成分の含有量が多かった比較例4のインキ組成物を用いて得られた印刷物は、耐摩擦性が劣った。(C)成分の含有量が多かった比較例5のインキ組成物を用いて得られた印刷物は、耐折り曲げ性が劣った。