IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許7560259被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法
<>
  • 特許-被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法 図1
  • 特許-被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法 図2A
  • 特許-被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法 図2B
  • 特許-被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法 図3
  • 特許-被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法 図4
  • 特許-被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法 図5
  • 特許-被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20240925BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20240925BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01L31/04 420
H01L31/04 240
H01L21/66 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020037107
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021141178
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】淺谷 剛
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0213814(US,A1)
【文献】国際公開第2018/037672(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/111491(WO,A1)
【文献】特開2005-166705(JP,A)
【文献】特開2012-043747(JP,A)
【文献】特開平04-016756(JP,A)
【文献】特開昭52-087367(JP,A)
【文献】特開昭52-012566(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108807579(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
C23C 2/00-30/00
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に形成される被膜の良否判定を行う方法であって、
前記基材の表面における少なくとも一部には、前記被膜が形成されており、
前記基材を酸化条件下または硫化条件下にさらし、前記基材の表面の露出部分を変色させる変色工程と、
前記基材の表面を撮影して画像処理を行う画像処理工程と、
前記画像処理の結果に基づいて、前記被膜の良否判定を行う判定工程と、
前記判定工程の後に、前記基材を還元条件下にさらし、前記基材の表面の露出部分の変色を戻す復色工程と、
この順で備える、被膜良否判定方法。
【請求項2】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部に順に積層された第1半導体層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部に順に積層された第2半導体層および第2金属電極層とを備える裏面電極型の太陽電池において、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層と配線部材との間に形成される絶縁層の良否判定を行う方法であって、
前記半導体基板における、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の上の前記配線部材に対応する少なくとも一部には、前記絶縁層が形成されており、
前記半導体基板を酸化条件下または硫化条件下にさらし、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の露出部分を変色させる変色工程と、
前記半導体基板の前記一方主面側を撮影して画像処理を行う画像処理工程と、
前記画像処理の結果に基づいて、前記絶縁層の良否判定を行う判定工程と、
前記判定工程の後に、前記半導体基板を還元条件下にさらし、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の露出部分の変色を戻す復色工程と、
この順で備える、絶縁層良否判定方法。
【請求項3】
被膜を有する基材の製造方法であって、
前記基材における少なくとも一部に、前記被膜を形成し、
請求項1に記載の被膜良否判定方法を用いて、前記変色工程、前記画像処理工程、前記判定工程および前記復色工程を実施し、
前記判定工程において前記被膜が不良であると判定された場合、再度、前記被膜の形成を行う、
被膜を有する基材の製造方法。
【請求項4】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部に順に積層された第1半導体層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部に順に積層された第2半導体層および第2金属電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層と配線部材との間に形成される絶縁層を有する前記太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板における、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の上の前記配線部材に対応する少なくとも一部に、前記絶縁層を形成し、
請求項2に記載の絶縁層良否判定方法を用いて、前記変色工程、前記画像処理工程、前記判定工程および前記復色工程を実施し、
前記判定工程において前記絶縁層が不良であると判定された場合、再度、前記絶縁層の形成を行う、
絶縁層を有する太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜良否判定方法、絶縁層良否判定方法、被膜を有する基材の製造方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2には、バックコンタクト型の太陽電池セルにおける2つの極性の電極と配線部材との接続に関する技術が開示されている。特許文献1および2には、バックコンタクト型の太陽電池において、
・第1電極および第2電極に交差する第1配線および第2配線を有し、
・第1配線は、第1電極と交差する点で第1電極と接続され、第2電極と交差する点で絶縁層によって第2電極と絶縁され、
・第2配線は、第2電極と交差する点で第2電極と接続され、第1電極と交差する点で絶縁層によって第1電極と絶縁される、
ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-133567号公報
【文献】特開2015-159286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造の容易性の観点から、絶縁層の形成方法として、印刷法が用いられることがある。この場合、絶縁層が均一な膜に形成されないことがある。例えば、絶縁層に孔が発生することがある。すると、電極層と配線部材とに不所望な短絡が生じてしまう。
【0005】
そこで、製造プロセス中に、絶縁層が均一な膜に形成されているか、例えば絶縁層に孔が発生していないか(以下、絶縁層の被膜不良ともいう。)、を確認することが望まれる。
【0006】
この点に関し、プローブを使用して、絶縁層1つずつ、かつ各絶縁層の複数個所について、絶縁層の被膜不良を確認することが考えられる。しかし、この方法では、時間がかかる。更に、この方法では、絶縁層の被膜不良の有無を確認できるが、絶縁層の被膜不良の箇所を確認することが難しい。
【0007】
なお、このような問題は、種々の基材に種々の被膜を形成する種々の技術分野においても生じる。
【0008】
本発明は、製造プロセス中に、絶縁層の被膜不良の箇所を確認できる絶縁層良否判定方法、および絶縁層を有する太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、製造プロセス中に、被膜の被膜不良の箇所を確認できる被膜良否判定方法、および被膜を有する基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る被膜良否判定方法は、基材に形成される被膜の良否判定を行う方法であって、前記基材における少なくとも一部には、前記被膜が形成されており、前記基材を酸化条件下または硫化条件下にさらし、前記基材の露出部分を変色させる変色工程と、前記基材の表面を撮影して画像処理を行う画像処理工程と、前記画像処理の結果に基づいて、前記被膜の良否判定を行う判定工程と、を備える。
【0010】
本発明に係る絶縁層良否判定方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部に順に積層された第1半導体層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部に順に積層された第2半導体層および第2金属電極層とを備える裏面電極型の太陽電池において、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層と配線部材との間に形成される絶縁層の良否判定を行う方法であって、前記半導体基板における、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の上の前記配線部材に対応する少なくとも一部には、前記絶縁層が形成されており、前記半導体基板を酸化条件下または硫化条件下にさらし、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の露出部分を変色させる変色工程と、前記半導体基板の前記一方主面側を撮影して画像処理を行う画像処理工程と、前記画像処理の結果に基づいて、前記絶縁層の良否判定を行う判定工程と、を備える。
【0011】
本発明に係る他の被膜良否判定方法は、基材に形成される被膜の良否判定を行う方法であって、前記基材における少なくとも一部には、前記被膜が形成されており、前記基材を磁化条件下にさらし、砂鉄を付着させることにより、前記基材の露出部分を変色させる変色工程と、前記基材の表面を撮影して画像処理を行う画像処理工程と、前記画像処理の結果に基づいて、前記被膜の良否判定を行う判定工程と、を備える。
【0012】
本発明に係る他の絶縁層良否判定方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部に順に積層された第1半導体層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部に順に積層された第2半導体層および第2金属電極層とを備える裏面電極型の太陽電池において、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層と配線部材との間に形成される絶縁層の良否判定を行う方法であって、前記半導体基板における、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の上の前記配線部材に対応する少なくとも一部には、前記絶縁層が形成されており、前記半導体基板を磁化条件下にさらし、砂鉄を付着させることにより、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の露出部分を変色させる変色工程と、前記半導体基板の前記一方主面側を撮影して画像処理を行う画像処理工程と、前記画像処理の結果に基づいて、前記絶縁層の良否判定を行う判定工程と、を備える。
【0013】
本発明に係る被膜を有する基材の製造方法は、前記基材における少なくとも一部に前記被膜を形成し、上記の被膜良否判定方法を用いて、前記変色工程、前記画像処理工程および前記判定工程を実施する。
【0014】
本発明に係る他の被膜を有する基材の製造方法は、前記基材における少なくとも一部に前記被膜を形成し、上記の被膜良否判定方法を用いて、前記変色工程、前記画像処理工程、前記判定工程および前記復色工程を実施し、前記判定工程において前記被膜が不良であると判定された場合、再度、前記被膜の形成を行う。
【0015】
本発明に係る絶縁層を有する太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部に順に積層された第1半導体層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部に順に積層された第2半導体層および第2金属電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層と配線部材との間に形成される絶縁層を有する前記太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板における、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の上の前記配線部材に対応する少なくとも一部に、前記絶縁層を形成し、上記の絶縁層良否判定方法を用いて、前記変色工程、前記画像処理工程および前記判定工程を実施する。
【0016】
本発明に係る他の絶縁層を有する太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側の一部に順に積層された第1半導体層および第1金属電極層と、前記半導体基板の前記一方主面側の他の一部に順に積層された第2半導体層および第2金属電極層とを備える裏面電極型の太陽電池であって、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層と配線部材との間に形成される絶縁層を有する前記太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板における、前記第1金属電極層または前記第2金属電極層の上の前記配線部材に対応する少なくとも一部に、前記絶縁層を形成し、上記の絶縁層良否判定方法を用いて、前記変色工程、前記画像処理工程、前記判定工程および前記復色工程を実施し、前記判定工程において前記絶縁層が不良であると判定された場合、再度、前記絶縁層の形成を行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造プロセス中に、絶縁層の被膜不良の箇所を確認することができる。また、本発明によれば、製造プロセス中に、被膜の被膜不良の箇所を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図2A図1の太陽電池におけるIIA-IIA線断面図である。
図2B図1の太陽電池におけるIIB-IIB線断面図である。
図3】本実施形態に係る太陽電池における絶縁層の被膜不良について説明するための図である。
図4】本実施形態に係る絶縁層良否判定方法のフローチャートである。
図5図4に示す絶縁層良否判定方法における変色工程について説明するための図である。
図6図4に示す絶縁層良否判定方法における変色工程について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0020】
(太陽電池)
図1は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図2Aは、図1の太陽電池におけるIIA-IIA線断面図であり、図2Bは、図1の太陽電池におけるIIB-IIB線断面図である。図1図2Aおよび図2Bに示す太陽電池1は、裏面電極型(バックコンタクト型、裏面接合型ともいう。)の太陽電池である。
【0021】
太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。以下では、半導体基板11の主面のうちの受光する側の主面を受光面とし、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の主面(一方主面)を裏面とする。
【0022】
第1領域7は、帯状の形状をなし、Y方向(第2方向)に延在する。同様に、第2領域8は、帯状の形状をなし、Y方向に延在する。第1領域7と第2領域8とは、Y方向に交差するX方向(第1方向)に交互に設けられている。
【0023】
太陽電池1は、半導体基板11の受光面側に順に積層されたパッシベーション層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の一部(第1領域7)に順に積層されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)に順に積層されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。また、太陽電池1は、第1電極層27に対応する第1コンタクト41および第1絶縁層51と、第2電極層37に対応する第2コンタクト42および第2絶縁層52とを備える。
【0024】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。なお、半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板であってもよい。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0025】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0026】
パッシベーション層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。パッシベーション層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。パッシベーション層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。パッシベーション層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料を主成分とする材料で形成される。パッシベーション層13,23,33は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0027】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側およびパッシベーション層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0028】
第1導電型半導体層25は、パッシベーション層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。一方、第2導電型半導体層35は、パッシベーション層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。すなわち、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35は、帯状の形状をなし、Y方向に延在する。第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とは、X方向に交互に並んでいる。第2導電型半導体層35の一部は、隣接する第1導電型半導体層25の一部の上に重なっていてもよい(図示省略)。
【0029】
第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型の半導体層である。
【0030】
第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型の半導体層である。なお、第1導電型半導体層25がn型の半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型の半導体層であってもよい。
【0031】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に積層された第1透明電極層28と第1金属電極層29とを有する。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された第2透明電極層38と第2金属電極層39とを有する。すなわち、第1金属電極層29および第2金属電極層39は、帯状の形状をなし、Y方向に延在する。第1金属電極層29と第2金属電極層39とは、X方向に交互に設けられている。
【0032】
第1透明電極層28および第2透明電極層38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0033】
第1金属電極層29および第2金属電極層39は、金属材料または磁化可能な材料で形成される。金属材料としては、例えば、Ag、Cu、Alおよびこれらの合金等が用いられる。第1金属電極層29および第2金属電極層39は、例えば、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成されてもよい。また、磁化可能な材料としては、鉄、ケイ素鉄、パーマロイ等の軟磁性材料が用いられる。
【0034】
第1コンタクト41および第1絶縁層51は、第1金属電極層29上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第2コンタクト42および第2絶縁層52は、第2金属電極層39上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。
【0035】
また、第1絶縁層51および第2コンタクト42は、X方向(第1方向)に延在する第1直線X1上に配置されている。第2絶縁層52および第1コンタクト41は、X方向(第1方向)に延在する第1直線X1と異なる第2直線X2上に配置されている。第1直線X1および第2直線X2は、第1金属電極層29および第2金属電極層39と交差し、Y方向(第2方向)に交互に並んでいる。
【0036】
第1絶縁層51は、第1金属電極層29の表面および側面、および第1透明電極層28の側面を覆う。同様に、第2絶縁層52は、第2金属電極層39の表面および側面、および第2透明電極層38の側面を覆う。
【0037】
第1絶縁層51のY方向(第2方向)の幅および第2コンタクト42のY方向の幅は、第1配線部材91の幅よりも大きい。同様に、第2絶縁層52のY方向(第2方向)の幅および第1コンタクト41のY方向の幅は、第2配線部材92の幅よりも大きい。例えば、第1絶縁層51および第2絶縁層52の幅、および第1コンタクト41および第2コンタクト42の幅は、1mm以上50mm以下である。これによれば、配線部材接続時のアライメントのクリアランスを確保することができる。
【0038】
第1絶縁層51および第2絶縁層52の材料としては、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等が挙げられる。また、例えばスクリーン印刷によって塗布し、焼成することができるエポキシ樹脂系またはレジンエステル系などの熱硬化性樹脂を用いることもできる。これらの樹脂に対して、印刷性向上または耐薬品性向上の目的で、シリカまたはタルクなどの無機系の粒子を混合してもよい。
【0039】
第1コンタクト41および第2コンタクト42の材料としては、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金等が用いられる。第1金属電極層29および第2金属電極層39は、例えば、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成されてもよい。
【0040】
図1に示すように、第1配線部材91は、第1直線X1に沿ってX方向(第1方向)に延在する。同様に、第2配線部材92は、第2直線X2に沿ってX方向(第1方向)に延在する。すなわち、第1配線部材91および第2配線部材92は、第1金属電極層29および第2金属電極層39と交差し、Y方向(第2方向)に交互に並んでいる。
【0041】
第1配線部材91は、第2コンタクト42によって第2金属電極層39に電気的に接続され、第1絶縁層51によって第1金属電極層29と電気的に絶縁される。同様に、第2配線部材92は、第1コンタクト41によって第1金属電極層29に電気的に接続され、第2絶縁層52によって第2金属電極層39と電気的に絶縁される。
【0042】
第1配線部材91と第2配線部材92とのY方向の中心間隔(ピッチ)は、第1金属電極層29と第2金属電極層39とのX方向の中心間隔(ピッチ)よりも大きい。例えば、第1配線部材91と第2配線部材92との中心間隔(ピッチ)は、5mm以上50mm以下である。これによれば、金属電極層を流れる電流経路を短くすることができ、電極抵抗に起因する出力ロスを低減することができ、太陽電池セルの発電効率を向上することができる。
【0043】
第1配線部材91および第2配線部材92としては、公知のタブ線等が挙げられる。
【0044】
ここで、製造の容易性の観点から、第1絶縁層51および第2絶縁層52、および第1コンタクト41および第2コンタクト42の形成方法として、印刷法が用いられることがある。この場合、図3に示すように、第1絶縁層51または第2絶縁層52が均一な膜に形成されないことがある。例えば、第1絶縁層51または第2絶縁層52に孔55が発生することがある。すると、第1金属電極層29と第1配線部材91とに、または第2金属電極層39と第2配線部材92とに、不所望な短絡が生じてしまい、モジュール化の際にリーク原因になる。
【0045】
また、絶縁層の印刷、コンタクトの印刷の順に行われるが、コンタクトの印刷後では、絶縁層の再印刷が難しい。そのため、絶縁層の印刷後であってコンタクトの印刷前に(製造プロセス中に)、絶縁層が均一な膜に形成されているか、例えば絶縁層に孔が発生していないか(以下、絶縁層の被膜不良ともいう。)、を確認する必要がある。
【0046】
この点に関し、コンタクトの印刷前に、プローブを使用して、絶縁層1つずつ、かつ各絶縁層の複数個所について、絶縁層の被膜不良を確認することが考えられる。しかし、この方法では、時間がかかる。更に、この方法では、絶縁層の被膜不良の有無を確認できるが、絶縁層の被膜不良の箇所を確認することが難しい。
【0047】
そこで、本実施形態では、製造プロセス中に、絶縁層の被膜不良の箇所を確認できる絶縁層の良否判定方法を提供する。また、本実施形態では、絶縁層の被膜不良の箇所の確認後に、絶縁層の再印刷が可能な状態に復元し、製造プロセスに戻すことができる絶縁層の良否判定方法を提供する。
【0048】
(第1実施形態)
次に、図4および図5を用いて、第1実施形態に係る太陽電池における絶縁層の良否判例方法、およびその絶縁層の良否判例方法を用いた太陽電池の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係る絶縁層良否判定方法のフローチャートであり、図5は、図4に示す絶縁層良否判定方法における変色工程について説明するための図である。
【0049】
まず、第1金属電極層29上の第1直線X1上に、すなわち第1金属電極層29上の第1配線部材91に対応する一部に、第1絶縁層51が形成され、第2金属電極層39上の第2直線X2上に、すなわち第2金属電極層39上の第2配線部材92に対応する一部に、第2絶縁層52が形成された半導体基板11を準備する。
【0050】
次に、半導体基板11を酸化条件下または硫化条件下にさらす。これにより、図5に示すように、第1金属電極層29の露出部分29A、または第2金属電極層39の露出部分39Aを変色させる(変色工程S1)。これにより、金属電極層の露出部分が絶縁層に対して視覚的に識別可能となる。
【0051】
上述したように、第1金属電極層29および第2金属電極層39の材料としては、Ag、Cu等が挙げられる。また、上述したように、第1絶縁層51および第2絶縁層52の材料としては、SiO等の無機材料やエポキシなどの有機材料が挙げられる。
【0052】
「酸化条件下にさらす」とは、オゾン(O)水溶液に浸漬すること、オゾンガス中に投入すること等の、酸化雰囲気下にさらすことが挙げられる。また、「酸化条件下にさらす」とは、空気中にて加熱することが挙げられる。
【0053】
「硫化条件下にさらす」とは、HSガスや水溶液にさらすこと、S(硫黄)の蒸気にさらすこと等の、硫化雰囲気下にさらすことが挙げられる。
【0054】
例えば、第1金属電極層29および第2金属電極層39の材料がAgである場合、酸化反応により、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所における露出されたAgは黒色化される(4Ag+O2→2AgO)。一方、SiO等の第1絶縁層51および第2絶縁層52は変色されない。
【0055】
また、例えば、第1金属電極層29および第2金属電極層39の材料がAgである場合、硫化反応により、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所における露出されたAgは黒色化される(2Ag+S→AgS)。一方、SiO等の第1絶縁層51および第2絶縁層52は変色されない。
【0056】
次に、例えばカメラ等の公知の撮像装置を用いて、半導体基板11の裏面を撮影する。この際、撮影する方向は、裏面の正面のみでもよいし、裏面に対して異なる二方向以上であってもよい。裏面に対して例えばX方向に45度傾けた異なる二方向から撮影することで、電極の側面の情報をより細かく確認できる。そして、例えばDSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される公知の画像処理装置を用いて、撮影した画像の画像処理を行う(画像処理工程S2)。
【0057】
次に、画像処理の結果に基づいて、第1絶縁層51または第2絶縁層52の良否判定を行う(判定工程S3)。例えば、変色(例えば、上述したように黒色化)された箇所29A,39Aに基づいて、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所を確認する。
【0058】
第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所の確認は、ディスプレイ等の表示装置に表示された画像処理の結果を目視にて行ってもよい。或いは、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所の確認は、例えばDSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される装置を用いて自動的に行ってもよい。
【0059】
次に、半導体基板11を還元条件下にさらす。これにより、第1金属電極層29の露出部分29A、または第2金属電極層39の露出部分39Aの変色を戻す(復色工程S4)。
【0060】
上述したように、変色工程が酸化の場合、「還元条件下にさらす」とは、水素(H)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、または炭化水素(CH、Cなど)ガス中に導入すること等の、還元雰囲気下にさらすことが挙げられる。この場合、半導体基板を加熱しながら還元雰囲気下にさらしてもよい。また、「還元条件下にさらす」とは、空気中にて加熱すること(例えば、200度)が挙げられる。
【0061】
また、変色工程が硫化の場合、「還元条件下にさらす」とは、水素(H)ガス、一酸化炭素(CO)ガス中に導入すること等の、還元雰囲気下にさらすことが挙げられる。この場合、半導体基板を加熱しながら還元雰囲気下にさらしてもよい。
【0062】
この復色工程が行われることにより、半導体基板を製造プロセスに戻すことができる。
例えば、判定工程において、絶縁層の被膜不良の箇所が確認されなかった良品を、次工程のコンタクト形成工程に進める。
【0063】
一方、例えば、判定工程において、絶縁層の被膜不良の箇所が確認された不良品を、再度絶縁層形成工程に戻す。これにより、絶縁層の被膜不良の箇所を改善した後、次工程のコンタクト形成工程に進める。また、絶縁膜形成においてスクリーン印刷のような印刷版を使用する場合、複数のサンプルを測定し、絶縁層の被膜不良の箇所が複数のサンプルで共通している場合は、印刷版の不良であることが予想される。なお、印刷版以外ではリソグラフィーのフォトマスクなどマスクを使うプロセスでも同じようにマスクの不良であることが予想できる。このように印刷版またはマスクの不良を素早く特定できると、製造プロセスの歩留まり向上につながる。
【0064】
以上説明したように、第1実施形態の絶縁層の良否判定方法、およびその絶縁層の良否判定方法を用いた太陽電池の製造方法によれば、半導体基板11を酸化条件下または硫化条件下にさらし、第1金属電極層29または第2金属電極層39の露出部分を変色させ(変色工程S1)、半導体基板11の裏面を撮影して画像処理を行い(画像処理工程S2)、画像処理の結果に基づいて第1絶縁層51または第2絶縁層52の良否判定を行う(判定工程S3)。これにより、製造プロセス中に、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所を確認することができる。
【0065】
また、第1実施形態の絶縁層の良否判定方法、およびその絶縁層の良否判定方法を用いた太陽電池の製造方法によれば、判定工程の後に、半導体基板11を還元条件下にさらし、第1金属電極層29または第2金属電極層39の露出部分の変色を戻す(復色工程S4)。これにより、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所の確認後に、第1絶縁層51または第2絶縁層52の再印刷が可能な状態に復元し、製造プロセスに戻すことができる。これにより、歩留まりを向上させることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、図4および図6を用いて、第2実施形態に係る太陽電池における絶縁層の良否判例方法、およびその絶縁層の良否判例方法を用いた太陽電池の製造方法について説明する。
【0067】
まず、上述同様に、第1金属電極層29上の第1直線X1上に、すなわち第1金属電極層29上の第1配線部材91に対応する一部に、第1絶縁層51が形成され、第2金属電極層39上の第2直線X2上に、すなわち第2金属電極層39上の第2配線部材92に対応する一部に、第2絶縁層52が形成された半導体基板11を準備する。
【0068】
次に、半導体基板11を磁化条件下にさらす。これにより、図6に示すように、第1金属電極層29の露出部分29A、または第2金属電極層39の露出部分39Aを磁化させる。そして、第1金属電極層29の露出部分29A、または第2金属電極層39の露出部分39Aに砂鉄を付着させることにより、第1金属電極層29の露出部分29A、または第2金属電極層39の露出部分39Aを変色(例えば、砂鉄の黒色化)させる(変色工程S1)。これにより、金属電極層の露出部分が絶縁層に対して視覚的に識別可能となる。なお、絶縁層と砂鉄との色が識別困難である場合、予め砂鉄に、絶縁層と異なる色の塗料を塗っておいてもよい。
【0069】
上述したように、第1金属電極層29および第2金属電極層39の材料としては、磁化可能な材料、具体的には鉄、ケイ素鉄、パーマロイ等の軟磁性材料が挙げられる。また、上述したように、第1絶縁層51および第2絶縁層52の材料としては、SiO等が挙げられる。
【0070】
「磁化条件下にさらす」とは、磁場(磁界)雰囲気下にさらすことが挙げられる。
【0071】
次に、上述同様に、例えばカメラ等の公知の撮像装置を用いて、半導体基板11の裏面を撮影する。この際、上述したように、撮影する方向は、裏面の正面のみでもよいし、裏面に対して異なる二方向以上であってもよい。そして、例えばDSP、FPGA等の演算プロセッサで構成される公知の画像処理装置を用いて、撮影した画像の画像処理を行う(画像処理工程S2)。
【0072】
次に、上述同様に、画像処理の結果に基づいて、第1絶縁層51または第2絶縁層52の良否判定を行う(判定工程S3)。例えば、変色(例えば、上述したように黒色化)された箇所29A,39Aに基づいて、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所を確認する。
【0073】
次に、半導体基板11を消磁条件下にさらす。これにより、第1金属電極層29の露出部分29A、または第2金属電極層39の露出部分39Aの磁化が消磁される。そして、第1金属電極層29の露出部分29A、または第2金属電極層39の露出部分39Aの砂鉄を例えばエアブロー等により除去することにより、第1金属電極層29の露出部分29A、または第2金属電極層39の露出部分39Aの変色を戻す(復色工程S4)。
【0074】
「消磁条件下にさらす」とは、半導体基板を加熱することによる熱消磁や、コイルと交流電源を用いた交流消磁などの消磁雰囲気下にさらすことが挙げられる。
【0075】
この復色工程が行われることにより、半導体基板を製造プロセスに戻すことができる。
例えば、判定工程において、絶縁層の被膜不良の箇所が確認されなかった良品を、次工程のコンタクト形成工程に進める。
【0076】
一方、例えば、判定工程において、絶縁層の被膜不良の箇所が確認された不良品を、再度絶縁層形成工程に戻す。これにより、絶縁層の被膜不良の箇所を改善した後、次工程のコンタクト形成工程に進める。また、上述したように、絶縁膜形成においてスクリーン印刷のような印刷版を使用する場合、複数のサンプルを測定し、絶縁層の被膜不良の箇所が複数のサンプルで共通している場合は、印刷版の不良であることが予想される。また、印刷版以外ではリソグラフィーのフォトマスクなどマスクを使うプロセスでも同じようにマスクの不良であることが予想できる。このように印刷版またはマスクの不良を素早く特定できると、製造プロセスの歩留まり向上につながる。
【0077】
以上説明したように、第2実施形態の絶縁層の良否判定方法、およびその絶縁層の良否判定方法を用いた太陽電池の製造方法によれば、半導体基板11を磁化条件下にさらし、第1金属電極層29または第2金属電極層39の露出部分に砂鉄を付着させることにより、第1金属電極層29または第2金属電極層39の露出部分を変色させ(変色工程S1)、半導体基板11の裏面を撮影して画像処理を行い(画像処理工程S2)、画像処理の結果に基づいて第1絶縁層51または第2絶縁層52の良否判定を行う(判定工程S3)。これにより、製造プロセス中に、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所を確認することができる。
【0078】
また、第2実施形態の絶縁層の良否判定方法、およびその絶縁層の良否判定方法を用いた太陽電池の製造方法によれば、判定工程の後に、半導体基板11を消磁条件下にさらし、砂鉄を除去することにより、第1金属電極層29または第2金属電極層39の露出部分の変色を戻す(復色工程S4)。これにより、第1絶縁層51または第2絶縁層52の被膜不良の箇所の確認後に、第1絶縁層51または第2絶縁層52の再印刷が可能な状態に復元し、製造プロセスに戻すことができる。これにより、歩留まりを向上させることができる。
【0079】
なお、第2実施形態の絶縁層の良否判定方法は、磁場(磁界)に対して耐性を有する素子に好適である。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、太陽電池における絶縁層の良否判定方法、およびその絶縁層の良否判定方法を用いた太陽電池の製造方法について説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、種々の基材に形成された種々の被膜の良否判定、およびその被膜の良否判定を用いた基材の製造にも適用可能である。例えば、
・半導体素子の製造において、基材の金属めっき前の保護膜(絶縁性の被膜)の良否判定(めっきしてからでは遅いため)、
・異種金属コートのタブ線(配線部材)の製造(CuコアにAgコート、或いはAgコアにCuコートなど)において、金属コア(基材)の金属コート(金属の被覆)の良否判定(配線部材の抵抗値だけでは被覆率はわからないため)、
にも適用可能である。
【0081】
例えば、基材における少なくとも一部に形成された被膜の良否判定方法において、基材を酸化条件下または硫化条件下にさらし、基材の露出部分を変色させ(変色工程)、基材の表面を撮影して画像処理を行い(画像処理工程)、画像処理の結果に基づいて、被膜の良否判定を行ってもよい(判定工程)。また、被膜を有する基材の製造方法において、基材における少なくとも一部に被膜を形成した後、上記の被膜良否判定方法を用いて、変色工程、画像処理工程および判定工程を実施してもよい。これにより、製造プロセス中に、被膜の被膜不良の箇所を確認することができる。
【0082】
また、この被膜の良否判定方法において、判定工程の後に、基材を還元条件下にさらし、基材の露出部分の変色を戻してもよい(復色工程)。これにより、被膜の被膜不良の箇所の確認後に、被膜の再印刷が可能な状態に復元し、製造プロセスに戻すことができる。これにより、歩留まりを向上させることができる。すなわち、被膜を有する基材の製造方法において、判定工程の後に、上記の復色工程を実施し、判定工程において被膜が不良であると判定された場合、再度、被膜の形成を行なってもよい。
【0083】
また、例えば、基材における少なくとも一部に形成された被膜の良否判定方法において、基材を磁化条件下にさらし、基材の露出部分に砂鉄を付着させることにより、基材の露出部分を変色させ(変色工程)、基材の表面を撮影して画像処理を行い(画像処理工程)、
画像処理の結果に基づいて、被膜の良否判定を行ってもよい(判定工程)。また、被膜を有する基材の製造方法において、基材における少なくとも一部に被膜を形成した後、上記の被膜良否判定方法を用いて、変色工程、画像処理工程および判定工程を実施してもよい。これにより、製造プロセス中に、被膜の被膜不良の箇所を確認することができる。
【0084】
また、この被膜の良否判定方法において、判定工程の後に、基板を消磁条件下にさらし、砂鉄を除去することにより、基材の露出部分の変色を戻してもよい(復色工程)。これにより、被膜の被膜不良の箇所の確認後に、被膜の再印刷が可能な状態に復元し、製造プロセスに戻すことができる。これにより、歩留まりを向上させることができる。すなわち、被膜を有する基材の製造方法において、判定工程の後に、上記の復色工程を実施し、判定工程において被膜が不良であると判定された場合、再度、被膜の形成を行なってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 太陽電池
7 第1領域
8 第2領域
11 半導体基板
13,23,33 パッシベーション層
15 光学調整層
25 第1導電型半導体層
27 第1電極層
28 第1透明電極層
29 第1金属電極層
29A 露出部分
35 第2導電型半導体層
37 第2電極層
38 第2透明電極層
39 第2金属電極層
39A 露出部分
41 第1コンタクト
42 第2コンタクト
51 第1絶縁層
52 第2絶縁層
55 孔
91 第1配線部材
92 第2配線部材
X1 第1直線
X2 第2直線
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6