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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】固定部材
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20240925BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A47K3/28
B05B1/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020075197
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021171196
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】玉木 孝典
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-174773(JP,A)
【文献】特開2006-299071(JP,A)
【文献】特開2007-270579(JP,A)
【文献】実開昭64-044056(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/28
B05B 1/18
C09J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に給水路が形成された給水管と、前記給水管の先端に該給水管に対して首振り可能に接続された吐水ヘッドとを有する吐水部材に適用され、
前記吐水部材に取り付けられた状態で、前記給水管の外面と前記吐水ヘッドの外面とに当接して、前記給水管に対する前記吐水ヘッドの首振りを規制し、
半筒状の一対の半割部材で構成されていることを特徴とする固定部材。
【請求項2】
内部に給水路が形成された給水管と、前記給水管の先端に該給水管に対して首振り可能に接続された吐水ヘッドとを有する吐水部材に適用され、
前記吐水部材に取り付けられた状態で、前記給水管の外面と前記吐水ヘッドの外面とに当接して、前記給水管に対する前記吐水ヘッドの首振りを規制し、
前記給水管の先端部には、その外径寸法が小さくされた縮径部が設けられ、
前記吐水部材に取り付けられた状態で、前記縮径部の外面と前記吐水ヘッドの外面に当接して、前記給水管に対する前記吐水ヘッドの首振りを規制することを特徴とする固定部材。
【請求項3】
前記吐水部材に脱着可能に取り付けられる請求項1又は2に記載の固定部材。
【請求項4】
前記縮径部の外面には、その外径寸法が先端ほど小さくなる形状の支持側テーパ面が形成され、
前記吐水部材に取り付けられた状態で、前記支持側テーパ面に当接する固定側テーパ面が形成されていることを特徴とする請求項に記載の固定部材。
【請求項5】
前記支持側テーパ面及び前記固定側テーパ面は平面状に形成され、
前記吐水部材に取り付けられた状態での前記給水管の軸線に対する前記固定側テーパ面の傾斜角度は、前記給水管の軸線に対する前記支持側テーパ面の傾斜角度より小さいことを特徴とする請求項に記載の固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水管に対して首振り可能に接続された吐水ヘッドを有する吐水部材に取り付けられる固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、浴室やシャワールームの壁面には、湯水を混合して吐水する湯水混合栓に接続された給水管と、給水管の先端に接続されたシャワーヘッドとを有する吐水部材が取り付けられている。特許文献1には、シャワー給水管の先端に接続されたシャワーヘッドと、シャワーホースの先端に取り付けられたハンドシャワーとを有するシャワー装置に係る発明が記載されている。シャワーヘッドが接続されたシャワー給水管は、湯水混合栓から上方に延びるように浴室の壁面に固定されているとともに上部が鶴首状に曲げられており、シャワーヘッドは、シャワー給水管に対して三次元的に首振り可能に接続されている。これにより、使用者は、シャワーヘッドの向きを自在に変更することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-6615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、使用者によっては、シャワーヘッドを一定の方向に向くように固定して使用したいといった要望がある。例えば、シャワーヘッドを鉛直下方に向くように固定しておけば、シャワーヘッドの下に立ったままの状態で全身の汚れを洗い流すことができるため便利である。しかし、特許文献1に記載されるシャワー装置では、シャワーヘッドを鉛直下方に向くように位置調整しても、使用中にシャワーヘッドに触れたりすると、その位置が変化してしまう場合がある。使用中に吐水の向きが意図せず変化することになり、使い勝手が悪いといった問題があった。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、吐水部材の使い勝手を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の固定部材は、内部に給水路が形成された給水管と、前記給水管の先端に該給水管に対して首振り可能に接続された吐水ヘッドとを有する吐水部材に適用され、前記吐水部材に取り付けられた状態で、前記給水管の外面と前記吐水ヘッドの外面とに当接して、前記給水管に対する前記吐水ヘッドの首振りを規制する。
【0007】
上記の構成によれば、固定部材を吐水部材に取り付けることにより、固定部材が給水管と吐水ヘッドの双方に当接して、給水管に対する吐水ヘッドの首振りが規制される。これにより、使用中に吐水の向きが変化してしまうことが抑制されて、吐水部材の使い勝手が向上する。また、固定部材を取り付けるだけであるため、首振り可能な吐水ヘッドを容易に固定することができる。なお、給水管は、例えば金属製の硬質な給水管だけでなく、シャワーホースのような軟質な給水管も含む。
【0008】
上記の構成において、固定部材は、前記吐水部材に脱着可能に取り付けられることが好ましい。
上記の構成によれば、吐水ヘッドの首振りを規制したいときには固定部材を取り付け、吐水ヘッドの首振りを許容したいときには固定部材を取り外すことができる。使用場所、使用目的等に応じて吐水ヘッドの状態を選択することができる。吐水部材の使い勝手が向上する。
【0009】
上記の構成において、固定部材は、半筒状の一対の半割部材で構成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、固定部材を容易に組み付けることができる。
【0010】
上記の構成において、前記給水管の先端部には、その外径寸法が小さくされた縮径部が設けられ、固定部材は、前記吐水部材に取り付けられた状態で、前記縮径部の外面と前記吐水ヘッドの外面に当接して、前記給水管に対する前記吐水ヘッドの首振りを規制することが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、固定部材は給水管の先端部に設けられた縮径部の外面に当接する。そのため、固定部材が給水管の基端側へ移動することが規制され、固定部材の固定状態が安定する。
【0012】
上記の構成において、前記縮径部の外面には、その外径寸法が先端ほど小さくなる形状の支持側テーパ面が形成され、固定部材には、前記吐水部材に取り付けられた状態で、前記支持側テーパ面に当接する固定側テーパ面が形成されていることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、支持側テーパ面と固定側テーパ面との当接により、一対の半割部材が給水管の先端側へ押し付けられる。そのため、固定部材は、給水管の先端に接続された吐水ヘッドの外面に強固に固定される。
【0014】
上記の構成において、前記支持側テーパ面及び前記固定側テーパ面は平面状に形成され、前記吐水部材に取り付けられた状態での前記給水管の軸線に対する前記固定側テーパ面の傾斜角度は、前記給水管の軸線に対する前記支持側テーパ面の傾斜角度より小さいことが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、固定部材を取り付ける際に半割部材で締め付けると、固定側テーパ面が支持側テーパ面側に押し付けられ、半割部材で締め付ける際の力が、半割部材を吐水ヘッド側に押し付ける力となって作用し易い。そのため、半割部材が吐水ヘッドに対して強く押しつけられ、供給管に対して吐水ヘッドがしっかりと固定される。給水管に対する吐水ヘッドの首振りを、より強固に規制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吐水部材の使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】吐水部材としてのオーバーヘッドシャワー付き水栓の斜視図であり、(a)はオーバーヘッドシャワー付き水栓の全体図、(b)はシャワーヘッド及び給水管を斜め上方から見た部分拡大図。
図2】シャワーヘッド及び給水管の断面図であり、図1(b)のβ‐β線断面図。
図3】固定部材が取り付けられた状態のシャワーヘッド及び給水管の図であり、(a)は斜視図、(b)は部分断面図。
図4】固定部材の分解斜視図。
図5】(a)~(c)は固定部材を取り付ける際の作用について説明する模式図。
図6】(a)~(c)は固定部材及びオーバーヘッドシャワー付き水栓の変更例について説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を具体化した実施形態の固定部材30について説明する。本実施形態の固定部材30は、吐水部材としてのオーバーヘッドシャワー付き水栓1に取り付けられて使用される。
【0019】
まず、オーバーヘッドシャワー付き水栓1について説明する。
図1(a)に示すように、オーバーヘッドシャワー付き水栓1は、浴室の洗い場の壁面Wに取り付けられている。オーバーヘッドシャワー付き水栓1は、湯水を混合して吐水する湯水混合栓2と、湯水混合栓2からの湯水を吐水するハンドシャワー3及びオーバーヘッドシャワー4と、切換ハンドル5を備えている。切換ハンドル5には、図示しない切換弁が内蔵されており、切換ハンドル5の操作によって、ハンドシャワー3からの吐水とオーバーヘッドシャワー4からの吐水のいずれかを選択可能とされている。
【0020】
図1(a)及び(b)に示すように、オーバーヘッドシャワー4は、切換ハンドル5から上方へ延びる給水管10と、給水管10の先端に取り付けられた吐水ヘッドとしてのシャワーヘッド20を備えている。給水管10は、その基端側で壁面Wに固定されており、略コ字状に曲げられた先端側が壁面Wから前方へ突出している。シャワーヘッド20は、上面視長方形状に形成され、鉛直下方を指向する給水管10の先端に取り付けられている。オーバーヘッドシャワー4は、シャワーヘッド20が給水管10の先端に対して三次元的に首振り可能に接続された吐水部材である。
【0021】
図2に示すように、給水管10の内部には、湯水混合栓2から供給された湯水を流通させる給水路Cが形成されている。給水管10は、外径形状がそれぞれ異なる本体部11、縮径部12、及び球面部13を備えている。本体部11は、給水管10のほぼ全長に亘って設けられ、縮径部12及び球面部13は、給水管10の先端部に設けられている。本体部11は、給水管10の軸方向に外径寸法が変化しない円筒状に形成されている。
【0022】
縮径部12は、本体部11の先端側に設けられて本体部11より外径寸法が小さく形成されており、先端側の縮径本体部14と、基端側のテーパ部15で構成されている。縮径本体部14は、給水管10の軸方向に外径寸法が変化しない円筒状に形成されており、テーパ部15は、先端ほど外径寸法が小さくなるように形成されている。テーパ部15の外面は、径方向断面が平面状のテーパ面15aとして形成されている。テーパ面15aは、請求項で言う支持側テーパ面である。テーパ面15aの傾斜角度θ1は特に限定されないが、本実施形態の給水管10では、給水管10の軸線Nに対して約60゜をなすような平面として形成されている(図5(a)参照)。球面部13は、給水管10の先端に設けられて、外面形状が球状に形成されている。
【0023】
図2及び図3(b)に示すように、シャワーヘッド20は、袋ナット21、カバー22、シャワーヘッド本体23、パッキン24、フェイスパッキン25、及びシャワーフェイス26を備えている。
【0024】
シャワーヘッド本体23は略長方形板状に形成され、その中央には上方へ突出するように円筒状の接続筒27が突設されている。接続筒27の外面には雄ネジ部27aが螺設されており、接続筒27の内部には、その内面形状が球面部13の外面形状に沿う被覆部材28が内装されている。
【0025】
カバー22は、シャワーヘッド本体23を上方から覆う部材であり、略長方形板状に形成されている。カバー22の中央には挿通孔22aが形成されている。挿通孔22aにはシャワーヘッド本体23の接続筒27が挿通されて、カバー22から上方へ突出している。
【0026】
袋ナット21は、円筒状に形成されている。その外径寸法はカバー22の挿通孔22aの開口径より大きい。袋ナット21の上面には、給水管10の縮径本体部14の外径寸法より大きい開口径の円形の孔21aが貫設されている。袋ナット21の内面には雌ネジ部21bが螺設されている。袋ナット21の雌ネジ部21bは、カバー22の挿通孔22aから突出した接続筒27の雄ネジ部27aに螺合している。これにより、シャワーヘッド本体23にカバー22及び袋ナット21が組み付けられている。
【0027】
シャワーフェイス26は、シャワーヘッド本体23を下方から覆う部材であり、略長方形状に形成されている。シャワーフェイス26の周縁部は、上方に曲げられており、シャワーヘッド本体23の周縁部がシャワーフェイス26の周縁部に内嵌されている。シャワーフェイス26は、シャワーヘッド本体23の上側から、シャワーフェイス26に形成されたネジ溝にビス29を捻じ込むことによって、シャワーヘッド本体23に組み付けられている。シャワーフェイス26がシャワーヘッド本体23に組み付けられることにより、シャワーヘッド本体23との間には、給水路Cと連通する供給空間Sが形成される。シャワーフェイス26には、複数の貫通孔26aが形成されている。
【0028】
フェイスパッキン25は略長方形板状に形成されており、散水孔25bが貫設された散水部25aが複数形成されている。フェイスパッキン25は、パッキン24とともに、シャワーヘッド本体23とシャワーフェイス26との間に形成された供給空間Sに組み付けられている。フェイスパッキン25に形成された散水部25aは、シャワーフェイス26に形成された貫通孔26aに嵌め込まれてシャワーフェイス26の下方に突出している。
【0029】
オーバーヘッドシャワー4では、給水管10の給水路Cから供給された湯水はシャワーヘッド20の供給空間Sに流入し、フェイスパッキン25に形成された散水孔25bから吐水される。シャワーヘッド20は、給水管10の球面部13がシャワーヘッド本体23の接続筒27内に嵌め込まれ、その上面から袋ナット21が組み付けられていることにより、給水管10の先端に接続されている。シャワーヘッド20が接続された給水管10は、袋ナット21の孔21aに縮径本体部14が位置している。孔21aは、縮径本体部14の外径寸法より大きい開口径で貫設されており、接続筒27の内部には、その内面形状が球面部13の外面形状に沿う被覆部材28が内装されている。これにより、固定部材30が取り付けられていないオーバーヘッドシャワー4では、シャワーヘッド20は、給水管10の球面部13に対して三次元的に首振り可能に接続されている。
【0030】
次に、固定部材30について説明する。
図3(a)及び(b)に示すように、オーバーヘッドシャワー4には、固定部材30が脱着可能に取り付けられる。固定部材30は、金属材料で略円筒状に形成され、その下面が、シャワーヘッド20の袋ナット21の上面に接するような状態で取り付けられる。固定部材30が取り付けられることにより、シャワーヘッド20は給水管10に対する三次元的な首振りが規制される。
【0031】
図4に示すように、固定部材30は、半円筒状の一対の半割部材31と、一対の半割部材31を脱着可能に接続する接続部材としての一対のネジ37を備えている。ここで、一対の半割部材31は、同一形状、同一大きさの同一部材として構成されているため、以下では図4の上側に示された半割部材31に基づいて説明する。
【0032】
半割部材31は、外径寸法及び内径寸法が上下方向に変化しない大径部32と、外径寸法が上下方向変化せず、内径寸法が下方ほど小さくなるテーパ部33と、内径寸法が大径部32より小さく、外径寸法及び外径寸法が上下方向に変化しない小径部34が、上下方向に一体に連設された形状をなしている。図4に示す半割部材31の端面31aにおける二点鎖線は、大径部32、テーパ部33、小径部34を便宜上区別するためのものである。
【0033】
図3(b)に示すように、大径部32、テーパ部33、及び小径部34の外径寸法は、袋ナット21の外径寸法より少し大きい。また、大径部32の内径寸法は、給水管10の本体部11の外径寸法とほぼ等しいか僅かに大きく、小径部34の内径寸法は、給水管10の縮径本体部14の内径寸法とほぼ等しいか僅かに大きい。
【0034】
図4に示すように、テーパ部33の内面には、径方向断面が平面状のテーパ面33aが形成されている。テーパ面33aは、請求項で言う固定側テーパ面である。半割部材31の軸線に対するテーパ面33aの傾斜角度θ2(図5(a)参照)、つまり、固定部材30をオーバーヘッドシャワー4に取り付けた状態での給水管10の軸線Nに対するテーパ面33aの傾斜角度θ2は、給水管10のテーパ面15aの傾斜角度θ1より少し小さく形成されている。具体的には、テーパ面15aの傾斜角度θ1より2~10゜程度小さく形成されていることが好ましい。本実施形態の固定部材30では、固定部材30がオーバーヘッドシャワー4に取り付けられた状態での給水管10の軸線Nに対する傾斜角度θ2が約55゜をなすような平面として形成されている。
【0035】
半割部材31には、水平方向に延びるように2箇所のネジ孔35、36が形成されている。ネジ孔35、36は、半割部材31の端面31aに対して垂直に延びるように形成されている。半割部材31の端面31aを正面視した場合に右側に位置するネジ孔35は、半割部材31の側壁を貫通することなく端面31aから凹設されている。ネジ孔35の内周面には雌ネジ部35aが螺設されている。左側に位置するネジ孔36は、半割部材31の側壁を貫通して端面31aと側面31bとを連通している、ネジ孔36の側面31b側の部分には、ネジ37を螺合する際に、ネジ37のネジ頭37aが当接するネジ座36aが形成されている。一対の半割部材31の端面31a同士を当接し、それぞれのネジ孔36からネジ37を挿入して、ネジ37の雄ネジ部37bとネジ孔35内の雌ネジ部35aとを螺合させることにより、一対の半割部材31が組み付けられて円筒状の固定部材30となる。
【0036】
次に、固定部材30の作用について説明する。
図3(b)に示すように、固定部材30は、一対の半割部材31の下面をオーバーヘッドシャワー4の袋ナット21の上面に当接させた状態で、ネジ孔36、35内にネジ37を挿入、螺合することにより給水管10の先端部に取り付け固定される。半割部材31の大径部32の内径寸法は、給水管10の本体部11の外径寸法とほぼ等しいか僅かに大きいため、ネジ37を締め込んでいくと、大径部32の内面が給水管10の本体部11の外面に当接する。半割部材31の小径部34の内径寸法は、給水管10の縮径本体部14の内径寸法とほぼ等しいか僅かに大きいため、小径部34の内面が給水管10の縮径本体部14の外面に当接する。
【0037】
図5(a)に示すように、半割部材31のテーパ面33aの給水管10の軸線Nに対する傾斜角度θ2は、給水管10のテーパ面15aの給水管10の軸線Nに対する傾斜角度θ1より少し小さい。そのため、図5(b)に示すように、ネジ37の締め込みに連れて、半割部材31のテーパ面33aが、給水管10のテーパ面15aの基端側の角部に当たる。半割部材31を締め付ける力Aは、テーパ面33aに沿って作用する力Bとなり、半割部材31には、袋ナット21側へ押されるような力が作用する。これにより、図5(c)に示すように、半割部材31の下面は袋ナット21の上面に強く押し付けられる。
【0038】
固定部材30における大径部32の内面、テーパ部33のテーパ面33a、小径部34の内面は、それぞれ給水管10の外面としての本体部11の外面、テーパ部15のテーパ面15a、縮径本体部14の外面に当接する当接面として機能する。また、固定部材30の下面は、シャワーヘッド20の外面としての袋ナット21の上面に当接する当接面として機能する。固定部材30は、給水管10の外面と吐水ヘッドとしてのシャワーヘッド20の外面とに当接して、給水管10に対するシャワーヘッド20の首振りを規制する。
【0039】
本実施形態の固定部材30によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)オーバーヘッドシャワー4に取り付けられた固定部材30は、給水管10の外面とシャワーヘッド20の袋ナット21の上面に当接して、給水管10に対するシャワーヘッド20の三次元的な首振りを規制している。そのため、オーバーヘッドシャワー4の使用中に吐水の向きが変化してしまうことが抑制され、オーバーヘッドシャワー4の使い勝手が向上する。
【0040】
(2)固定部材30は、一対のネジ37での固定により脱着可能に取り付けられている。そのため、必要に応じて取り付けたり外したりすればよく、シャワーヘッドの取り付け状態を適宜選択することができる。オーバーヘッドシャワー4の使い勝手が向上する。
【0041】
(3)給水管10の先端部には、本体部11より外径寸法が小さくされた縮径部12が設けられており、固定部材30の小径部34が縮径本体部14の外面とシャワーヘッド20の袋ナット21の上面に当接している。給水管10の外径寸法が本体部11より小さい縮径部12の外面に固定部材30が当接しているため、固定部材30が給水管10の基端側へ移動することが規制される。これにより、固定部材30の固定状態が安定する。
【0042】
(4)固定部材30は、半円筒状の一対の半割部材31により構成されており、半割部材31の端面31a同士を当接させることで円筒状に形成される。そのため、給水管10に対して容易に組み付けることができる。
【0043】
(5)一対の半割部材31は、同一形状、同一大きさの同一部材として構成されている。そのため、2つの異なる部材で構成されている場合に比べて、その製造が容易であり、コスト的にも有利である。また、ネジ37も1種類で済むため部材点数を少なくすることができる。
【0044】
(6)給水管10の縮径部12にはテーパ部15が形成され、テーパ部15には、その外径寸法が先端ほど小さくなるテーパ面15aが形成されている。また、固定部材30には、オーバーヘッドシャワー4に取り付けられた状態でテーパ面15aに当接するテーパ面33aが形成されている。そのため、固定部材30を組み付ける際に、一対の半割部材31を給水管10の先端側へ向けて押し付けることができる。これにより、固定部材30を強固に固定することができる。
【0045】
(7)給水管10側のテーパ面15aと固定部材30側のテーパ面33aは、ともに平面状であり、給水管10の軸線Nに対するテーパ面33aの傾斜角度θ2は、給水管10の軸線Nに対するテーパ面15aの傾斜角度θ1より小さい。そのため、半割部材31の下面が袋ナット21の上面に強く押しつけられ、給水管10に対してシャワーヘッド20をしっかりと固定することができる。
【0046】
(8)固定部材30は、給水管10の軸周り方向の全周に亘って給水管10の外面に当接し、袋ナット21の上面全体と当接している。そのため、給水管10に対するシャワーヘッド20の三次元的な首振りを、全ての方向に対して規制することができる。
【0047】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・上記実施形態では、オーバーヘッドシャワー4は三次元的に首振り可能に構成されているが、二次元的に首振り可能なものに固定部材30を適用してもよい。
・固定部材30を適用する吐水部材としては、オーバーヘッドシャワー4に限定されない。湯水の給水路が内部に形成された給水管に、湯水を吐水する吐水ヘッドが首振り可能に接続された吐水部材であればよい。
【0049】
・上記実施形態では、固定部材30は脱着可能に取り付けられているが、取外しができなくてもよい。
・固定部材30は金属材料で形成されていなくてもよく、その材質は特に限定されない。樹脂製であってもよい。
【0050】
・固定部材30の形状は円筒形状でなくてもよい。例えば、外面形状が四角形状等の多角形状でもよく、不定形状でもよい。
・固定部材30がテーパ部33及び小径部34を備えておらず、大径部32のみで構成されていてもよい。この場合、大径部32の内径寸法を、固定部材30を給水管10に取り付けてネジ37の締め込んだときに、大径部32が給水管10の本体部11の外面を強く挟持することができるような大きさに形成しておけばよい。これにより、大径部32のみで構成されていても、固定部材30が給水管10の軸線N方向に移動することが規制され、固定部材30の下面と袋ナット21の上面との当接状態が維持される。
【0051】
・固定部材30は、一対の半割部材31に分割されていなくてもよい。一つの部材として形成されていてもよい。例えば、弾性のある樹脂材料で平面視C形状に形成し、その弾性力を利用して給水管10及びシャワーヘッド20に組み付けて、それぞれの外面に当接させるようにしてもよい。
【0052】
・一対の半割部材31は、同一形状、同一大きさの同一部材として構成されていなくてもよい。
・固定部材30は二分割された部材でなく、例えば、三分割、四分割された部材で構成されていてもよい。また、三分割、四分割された部材が互いに異なる形状であってもよい。
【0053】
・固定部材30は、給水管10のすべての外面、すなわち、本体部11の外面、テーパ部15のテーパ面15a、及び縮径本体部14の外面のすべてに当接していなくてもよく、少なくともいずれかの面と当接して、シャワーヘッド20の首振りを規制するようにしてもよい。
【0054】
・給水管10の形状は、上記実施形態のものに限定されない。例えば、図6(a)に示すように、縮径部12がテーパ部15を備えておらず、縮径部12全体が縮径本体部14であってもよい。この場合、固定部材30がテーパ部33を備えておらず、大径部32と小径部34のみで形成されていればよい。小径部34の上面が給水管10の本体部11の下面に当接することで、固定部材30の基端側への移動が規制される。また、図6(b)に示すように、縮径部12が縮径本体部14を備えておらず、縮径部12全体がテーパ部15であってもよい。この場合、固定部材30のテーパ面33aは、給水管10のテーパ面15aに当接するような形状であればよい。
【0055】
・給水管10のテーパ面15aは、径方向断面が平面状に形成されていなくてもよい。例えば、図6(c)に示すように、径方向断面が曲面状に形成されていてもよい。この場合、固定部材30のテーパ面33aは、給水管10のテーパ面15aに当接するような曲面形状であればよい。
【符号の説明】
【0056】
1…オーバーヘッドシャワー付き水栓(吐水部材)
4…オーバーヘッドシャワー(吐水部材)
10…給水管
12…縮径部
15a…テーパ面(支持側テーパ面)、
20…シャワーヘッド(吐水ヘッド)
30…固定部材
31…半割部材
33a…テーパ面(固定側テーパ面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6