(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】積層体および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240925BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240925BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20240925BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 F
H05K7/20 R
H05K7/20 B
B32B7/025
(21)【出願番号】P 2020105463
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 知典
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 慎二
(72)【発明者】
【氏名】水野 克美
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-270748(JP,A)
【文献】特開2019-020001(JP,A)
【文献】特開平07-063487(JP,A)
【文献】特開2008-028163(JP,A)
【文献】特開平06-077368(JP,A)
【文献】特開2005-123265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に積層される絶縁層と、
前記絶縁層の前記ベース部側と反対側に積層され、中空の板状をなし、熱抵抗が前記絶縁層よりも小さい熱伝導部材と、
前記熱伝導部材の前記絶縁層側と反対側に積層される電子部品と、
を備え、
前記熱伝導部材は、
液体を保持する密閉された空間が形成され、前記電子部品への通電が可能
なベイパーチャンバーであり、
当該ベイパーチャンバーは、ウィック構造を形成する、
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記ベイパーチャンバーの内部には、柱状のカラムが複数設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ベース部は、ヒートシンクである、
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の積層体。
【請求項4】
ベース部に絶縁層を積層する第1積層ステップと、
前記絶縁層の前記ベース部側と反対側に、中空の板状をなし、熱抵抗が前記絶縁層よりも小さく、電子部品への通電が可能な熱伝導部材を積層する第2積層ステップと、
前記熱伝導部材の前記絶縁層側と反対側に前記電子部品を実装する実装ステップと、
を含
み、
前記熱伝導部材は、
液体を保持する密閉された空間が形成されるベイパーチャンバーであり、
当該ベイパーチャンバーは、ウィック構造を形成する、
ことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第2積層ステップは、
前記熱伝導部材の底部を構成する板状の第1の部材を前記絶縁層に積層し、
前記熱伝導部材の前記第1の部材以外の部分を構成する第2の部材を前記第1の部材に接合する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第2積層ステップは、前記第1積層ステップと同時に行われ、
前記絶縁層と前記熱伝導部材とが同時に形成される、
ことを特徴とする請求項4に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1および第2積層ステップは、オートクレーブを用いて行われる、
ことを特徴とする請求項6に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁層の片面に銅等の回路が積層され、この回路上に半導体チップ等が半田付けされる積層体が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この積層体には、半導体チップ等から発せられる熱を放熱するため、回路の半導体チップが実装される側と反対側にヒートシンクや放熱板が設けられる。
【0003】
図12は、従来の積層体の構成の一例を説明する図である。積層体100は、ヒートシンク111と、絶縁層112と、回路113と、チップ114とを備える。積層体100は、ヒートシンク111、絶縁層112、回路113、チップ114の順に積層され、チップ114において生じた熱が、回路113、絶縁層112を経由して、ヒートシンク111に伝わる。ヒートシンク111は、伝わった熱を、絶縁層112側と反対側の端部から外部に放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、積層体には、動作を安定化させたり、積層体の破損を防止したりするために、チップ114において生じた熱の放熱性を向上させることが望まれている。放熱性を向上させる手段としては、回路113を厚くすることが挙げられる。しかしながら、回路113の厚さを厚くすると、熱応力によって積層体の耐久性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐久性の低下を抑制しつつ、チップにおいて生じた熱の放熱性を向上することができる積層体および積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る積層体は、ベース部と、前記ベース部に積層される絶縁層と、前記絶縁層の前記ベース部側と反対側に積層され、中空の板状をなし、熱抵抗が前記絶縁層よりも小さい熱伝導部材と、前記熱伝導部材の前記絶縁層側と反対側に積層される電子部品と、を備え、前記熱伝導部材は、前記電子部品への通電が可能である、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る積層体は、上記発明において、前記熱伝導部材には、液体を保持する密閉された空間が形成される、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る積層体は、上記発明において、前記熱伝導部材は、ベイパーチャンバーである、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る積層体は、上記発明において、前記ベース部は、ヒートシンクである、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る積層体の製造方法は、ベース部に絶縁層を積層する第1積層ステップと、前記絶縁層の前記ベース部側と反対側に、中空の板状をなし、熱抵抗が前記絶縁層よりも小さく、電子部品への通電が可能な熱伝導部材を積層する第2積層ステップと、前記熱伝導部材の前記絶縁層側と反対側に前記電子部品を実装する実装ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る積層体の製造方法は、上記発明において、前記第2積層ステップは、前記熱伝導部材の底部を構成する板状の第1の部材を前記絶縁層に積層し、前記熱伝導部材の前記第1の部材以外の部分を構成する第2の部材を前記第1の部材に接合する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性の低下を抑制しつつ、チップにおいて生じた熱の放熱性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る積層体の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係る積層体の製造方法を示す図(その1)である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施の形態に係る積層体の製造方法を示す図(その2)である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施の形態に係る積層体の製造方法を示す図(その3)である。
【
図5】
図5は、従来の積層体における回路の厚さと熱抵抗との関係の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施の形態に係る積層体の温度分布の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、従来の積層体の温度分布の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、回路に用いる材料ごとの応力について説明する図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係る積層体の製造方法を示す図(その1)である。
【
図10】
図10は、変形例1に係る積層体の製造方法を示す図(その2)である。
【
図11】
図11は、変形例2に係る積層体の構成を示す図である。
【
図12】
図12は、従来の積層体の構成の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合があり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0016】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る積層体の構成を示す図である。
図1に示す積層体1は、ヒートシンク11と、絶縁層12と、ベイパーチャンバー13と、チップ14とを備える。積層体1は、ヒートシンク11、絶縁層12、ベイパーチャンバー13、チップ14の順に積層されてなる。チップ14は、例えば半導体チップ等の電子部品であり、使用時に熱源となる。
【0017】
ヒートシンク11は、一端側から伝わった熱を、他端側から外部に放出する。ヒートシンク11は、板状をなして絶縁層12が積層される第1部分11aと、第1部分11aから絶縁層12側と反対側に向けて櫛状をなして延びる第2部分11bとを有する。ヒートシンク11は、ベース部に相当する。
【0018】
絶縁層12は、絶縁性を有する材料を用いて形成され、ヒートシンク11の一端側の表面を覆う。なお、絶縁層12に求められる絶縁性が確保できれば、ヒートシンク11の一端側の表面の一部のみを覆う構成としてもよい。
【0019】
ベイパーチャンバー13は、中空の板状をなし、内部に作動液が収容される。作動液は、例えば水や、低沸点の液体である。ベイパーチャンバー13の内壁には、ウィック構造が形成される。また、ベイパーチャンバー13の内部には、柱状をなすカラム131が設けられる。ベイパーチャンバー13では、熱によって内部の液体が気化し、内部を移動する。内部の気体は、熱源から離れて冷やされると、液体に戻る。液体は、毛細管を介して熱源側に戻る。ベイパーチャンバー13では、上述したような液体の気化、液化を繰り返すことによって、熱源が発した熱を他の部材に伝える。なお、ベイパーチャンバー13の厚さや、カラム131の数を調整することによって、当該ベイパーチャンバー13の熱特性および強度を調整できる。
【0020】
また、ベイパーチャンバー13は、例えば導電性の材料を用いて形成される。このため、ベイパーチャンバー13は、チップ14を実装する回路として機能する。ベイパーチャンバー13は、チップ14を実装する回路パターンに応じた形状に、絶縁層12上に形成され、チップ14と外部機器との間に流れる電流の通電が可能である。ベイパーチャンバー13は、チップ14と外部機器との間における電気信号を伝送する。なお、電気信号の伝送には、給電用の信号の伝送を含む。ベイパーチャンバー13は、熱伝導部材に相当する。
【0021】
ヒートシンク11およびベイパーチャンバー13は、純銅、耐熱銅、アルミニウム等を用いて形成される。特に、ベイパーチャンバー13は、高い熱伝導性、かつ高い導電性を有する材料が用いられることが好ましい。
【0022】
積層体1のチップ14を駆動すると、その駆動によって熱が発生する。発生した熱は、ベイパーチャンバー13に伝わり、その熱によってベイパーチャンバー13内の液体が気化する。気体は低温側(ここでは絶縁層12側)に移動し、熱を絶縁層12に伝えた後、再び液体に戻り、毛細管現象により熱源側に移動する。絶縁層12に伝わった熱は、ヒートシンク11の第1部分11aに伝わり、第2部分11bから外部に放出される。
【0023】
続いて、積層体1の製造方法について、
図2~
図4を参照して説明する。
図2~
図4は、本発明の一実施の形態に係る積層体の製造方法を示す図である。
【0024】
まず、ヒートシンク11に絶縁層12を形成する(
図2参照)。絶縁層12は、絶縁層12を構成する材料をヒートシンク11に転写することによって形成される。転写は、プレス機によるプレスが挙げられる。なお、オートクレーブによる一体成型によって絶縁層12を形成してもよい。
【0025】
その後、絶縁層12に、ベイパーチャンバー13を転写する(
図3参照)。ベイパーチャンバー13の形成は、絶縁層12と同様に、転写の他、オートクレーブを用いて行ってもよい。
【0026】
ベイパーチャンバー13を絶縁層12上に形成後、ベイパーチャンバー13上にチップ14を実装する(
図4参照)。なお、オートクレーブを用いてベイパーチャンバー13を形成する場合、ベイパーチャンバー13とチップ14とを同時に形成することができる。
【0027】
チップ14を実装後、ベイパーチャンバー13内に作動液を注入する。以上説明した工程を経て、
図1に示す積層体1が作製される。なお、作動液は、ベイパーチャンバー13にチップ14を実装する前に、ベイパーチャンバー13内に作動液を注入してもよい。
【0028】
続いて、本実施の形態1に係る積層体1と、従来の積層体(積層体100)の熱特性について、
図5~
図8を参照して説明する。
図5は、従来の積層体における回路の厚さと熱抵抗との関係の一例を示す図である。ここでは、従来の積層体の構成として、
図12に示す積層体100を例にして説明する。
【0029】
積層体100において、ヒートシンク111(熱伝導率390W/(mK))の厚さを5.0mm、絶縁層112(熱伝導率8W/(mK))の厚さを0.12mm、回路113とチップ114とを接合するはんだ(熱伝導率49W/(mK))の厚さを0.2mm、チップ14(熱伝導率85W/(mK))の厚さを0.1mmとし、回路113の厚さを変えて熱抵抗をシミュレーションした。なお、厚さは、積層方向の長さを示す。また、各部材を積層方向からみたサイズは、ヒートシンク111が30mm×30mm、絶縁層112が20mm×20mm、回路113が20mm×20mm、はんだが10mm×10mm、チップ114が10mm×10mmに設定した。回路113は、銅により形成されるものとする(熱伝導率390W/(mK))。
なお、熱抵抗Rは、チップ14、114の温度をTmax、ヒートシンク11の第1部分11aと第2部分11bとの境界の温度をTmin、熱流量をQとし、下式(1)により求めた。ここでは、Q=40Wとする。
R=(Tmax-Tmin)/Q ・・・(1)
【0030】
回路113の厚さと、熱抵抗との関係から、厚さが3mm程度において、熱抵抗が最小(熱抵抗R≒0.188K/W)となることが分かる。このため、積層体100の回路113の厚さを3.0mm、積層体1におけるベイパーチャンバー13(熱伝導率5000W/(mK))の厚さを3mmとして、従来の積層体(積層体100)と、本実施の形態に係る積層体1との熱特性を比較する。上式(1)より、積層体1の熱抵抗は、0.104K/Wとなった。
【0031】
図6は、本発明の一実施の形態に係る積層体の温度分布の一例を示す図である。
図7は、従来の積層体の温度分布の一例を示す図である。
図6および
図7は、積層方向からみた際の、各積層体の温度分布をみても分かるように、各部材の厚さを揃えた場合において、本願発明に係る積層体1の方が、従来の積層体と比して温度が低い。
【0032】
上式(1)および温度分布より、本願発明に係る積層体1の方が、従来の積層体と比して、積層体(チップ)に与えられた熱が、ヒートシンク側へ効率的に伝達されるといえる。さらに、積層体1の絶縁層12の熱伝導率を2.5W/(mK)とした場合、上式(1)より、熱抵抗は0.184K/Wとなり、絶縁層12の熱伝導率を積層体100の絶縁層112よりも低くしても、低い熱抵抗が得られる。なお、積層体100において、絶縁層112の熱伝導率を100W/(mK)とした場合、上式(1)より、熱抵抗は0.145K/Wとなる。また、絶縁層112中のフィラーを増加して熱伝導性を向上させることができるが、絶縁性や接着強度が低下するおそれがある。
積層体1は、厚さを厚くしたり、絶縁層12中のフィラーを増加させたりすることなく、従来構造では達成困難なレベルまで、熱抵抗を低減することができる。
【0033】
図8は、回路に用いる材料ごとの応力について説明する図である。
図8は、ヒートシンク11、111の材料を銅、アルミニウムに変えたときの応力(MPa)を示す。応力は、ヤング率や線膨張係数をパラメータとして入力して熱応力解析によって求められる。なお、ヤング率は、ヒートシンクを117000MPa(銅)、70310MPa(アルミニウム)、ベイパーチャンバー13を81900MPa、回路113を117000MPa、はんだを40000MPa、チップを190000MPaとした。また、線膨張係数は、ヒートシンクを1.65×10
-5/K(銅)、2.38×10
-5/K(アルミニウム)、ベイパーチャンバー13を1.65×10
-5/K、回路113を1.65×10
-5/K、はんだを2.30×10
-5/K、チップを3.90×10
-6/Kとした。絶縁層のヤング率および線膨張係数は、温度依存性を考慮して実測データを用いた。
【0034】
図8に示すように、応力は、銅製およびアルミニウム製のいずれも、本発明の積層体の方が小さくなった。特に、軽量化および低価格化するために好まれるアルミニウムのような線膨張係数の大きい材質の場合、その応力低減効果は大きい。具体的な応力の値(MPa)は以下の通りとなる。
従来構造 本発明構造
銅製のヒートシンク 冷却時 9.40 9.39
加熱時 33.89 33.79
アルミニウム製ヒートシンク 冷却時 173.05 149.92
加熱時 196.41 184.64
このことから、本願発明のヒートシンク11は、従来の積層体と比して、熱応力を低減することができるといえる。
【0035】
以上説明した本発明の実施の形態では、積層体1における回路部にベイパーチャンバー13を採用し、該ベイパーチャンバー13が、チップへの通電と、チップ14において生じた熱の、絶縁層12への伝達とを行うようした。積層体1は、ベイパーチャンバー13が中空構造のため、加熱・冷却時の膨張・収縮を緩和して、熱応力を低減できる。また、積層体1は、従来の積層体より放熱効果が大きく、温度変化(上昇)を抑えることができる。本実施の形態によれば、上記の構成とすることによって、耐久性の低下を抑制しつつ、チップにおいて生じた熱の放熱性を向上することができる。
【0036】
(変形例1)
次に、上述した実施の形態の変形例1について説明する。変形例1に係る積層体は、上述した実施の形態に係る積層体1と同じ構成である。変形例1は、積層体1の製造方法が、実施の形態と異なる。以下、変形例1に係る積層体1の製造方法について、
図9を参照して説明する。
図9および
図10は、変形例1に係る積層体の製造方法を示す図である。
【0037】
まず、ヒートシンク11に絶縁層12を形成する(
図2参照)。その後、ベイパーチャンバー13の一部を構成する金属板13aを絶縁層12上に転写する(
図9参照)。この金属板13aの絶縁層12側と反対側の表面には、ウィック構造が形成される。金属板13aは、ベイパーチャンバー13の底部を構成し、第1の部材に相当する。
【0038】
その後、ベイパーチャンバー13の他部を構成する部材13bを、金属板13aに接合し、ベイパーチャンバー13を作成する(
図10参照)。部材13bは、皿状をなし、内部にはウィック構造やカラムが形成され、第2の部材に相当する。
【0039】
その後は、実施の形態と同様にして、ベイパーチャンバー13を絶縁層12上に形成後、ベイパーチャンバー13上にチップ14を実装する(
図4参照)。チップ14を実装後、ベイパーチャンバー13内に作動液を注入する。以上説明した工程を経て、
図1に示す積層体1が作製される。なお、チップ14を実装した部材13bを金属板13aに接合するようにしてもよい。
【0040】
変形例1に係る製造工程によって作製された積層体1においても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、変形例1に係る製造工程では、金属板13aを絶縁層12上に形成した後、部材13bを接合してベイパーチャンバー13を形成するため、ベイパーチャンバー13を絶縁層12上に形成する際の荷重等によってベイパーチャンバー13の内部空間の形状が変形することを、一層確実に抑制できる。
【0042】
(変形例2)
次に、上述した実施の形態の変形例2について、
図11を参照して説明する。
図11は、変形例2に係る積層体の構成を示す図である。変形例2に係る積層体1Aは、上述した積層体1のヒートシンク11に代えてベース部15を備える。ベース部15は、例えば、金属を用いて形成される。ベース部15は、積層体1Aにおける放熱性の観点から、熱伝導性が高い材料を用いて形成されることが好ましい。熱伝導性が高い材料としては、例えば、純銅、耐熱銅、アルミニウム等の金属が挙げられる。積層体1Aの製造方法は、積層体1の製造方法と同様である。積層体1の製造方法において、ヒートシンク11をベース部15に読みかえればよい。ベース部15は、積層体1Aの強度を補強する。さらに、ベース部15は、熱伝導性が高い材料によって形成されていれば、絶縁層12から伝わる熱を外部に効率的に放出することができる。
【0043】
変形例2に係る積層体1Aは、従来の積層体100のヒートシンク111を板状のベース部に代えた構成と比して、耐久性の低下を抑制しつつ、放熱性を向上することができる。
【0044】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、上述した実施の形態では、回路としてベイパーチャンバー13を用いる例について説明したが、内部に液体を保持する密閉された空間が形成され、熱交換を促すものであれば適用可能であり、例えばベイパーチャンバー13に代えてヒートパイプや、ヒートパイプを埋設した金属板を用いてもよい。また、高い放熱特性が求められる箇所に、回路としてベイパーチャンバー13を採用し、その他の箇所は、従来の銅製の回路にすることができる。
【0045】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0046】
以上説明したように、本発明に係る積層体および積層体の製造方法は、耐久性の低下を抑制しつつ、チップにおいて生じた熱の放熱性を向上するのに好適である。
【符号の説明】
【0047】
1、1A 積層体
11 ヒートシンク
12 絶縁層
13 ベイパーチャンバー
14 チップ
15 ベース部