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特許7560280医用画像処理装置、医用画像処理システム及び医用画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理システム及び医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20240925BHJP
   G16H 30/40 20180101ALI20240925BHJP
【FI】
A61B6/46 506Z
A61B6/46 506B
G16H30/40
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020111624
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010859
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 基裕
(72)【発明者】
【氏名】倉富 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】前濱 登美男
(72)【発明者】
【氏名】伊東 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 信夫
(72)【発明者】
【氏名】都丸 岳人
(72)【発明者】
【氏名】小島 訓
(72)【発明者】
【氏名】望月 明
(72)【発明者】
【氏名】小倉 智明
【審査官】清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-048685(JP,A)
【文献】特開2004-295184(JP,A)
【文献】特開2005-103055(JP,A)
【文献】特開2002-163633(JP,A)
【文献】特開2010-268820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0160122(US,A1)
【文献】特開2003-159262(JP,A)
【文献】特開2014-030556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の検査における第1の診断目的と、前記第1の検査において収集された医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と分野が異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する診断支援部と、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成し、当該リストを前記患者に通知する通知部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
前記診断支援部は、前記第2の診断目的に応じて、前記医用画像に対するコンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis:CAD)処理を行なうことにより、前記診断支援処理を実行する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記診断支援部は、前記第2の診断目的に応じて、前記医用画像に対する画像処理を行なって処理済み画像を生成し、生成した処理済み画像に対するCAD処理を行なうことにより、前記診断支援処理を実行する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記診断支援部は、前記医用画像の入力を受け付けて前記CAD処理の結果を出力するように機能付けられた学習済みモデルを用いて、前記診断支援処理を実行する、請求項2又は3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記診断支援部は、前記医用画像の入力を受け付けて前記処理済み画像を生成するように機能付けられた学習済みモデルを用いて、前記処理済み画像を生成し、生成した処理済み画像に対するCAD処理を行なうことにより前記診断支援処理を実行する、請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記診断支援部は、前記医用画像と、前記診断支援処理の結果に基づいて前記患者に対して行なわれた第2の検査の結果とを学習データとして用いて、前記学習済みモデルを更新する、請求項4又は5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記通知部は、前記診断支援処理の結果に基づいて前記医用画像上の病変が疑われる箇所にマーカを付した画像を生成し、当該画像を含んだレポートにより、前記患者及び前記ユーザの少なくとも一方に対して前記診断支援処理の結果を通知する、請求項1~6のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記診断支援処理の結果を表示させる表示制御部を更に備え、
前記通知部は、前記診断支援処理の結果を参照した第1のユーザから受け付けた入力操作に応じて前記診断支援処理の結果を示すレポートを作成し、前記患者、及び、前記第1の検査を実行したユーザであって前記第1のユーザと異なる第2のユーザの少なくとも一方に対して前記レポートを通知する、請求項1~7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記通知部は、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師を特定し、特定した病院又は医師に対して、前記患者の受診を予約する、請求項1~のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
第1の検査における第1の診断目的に応じて医用画像を収集する収集部と、
前記第1の診断目的と前記医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と分野が異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する診断支援部と、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成し、当該リストを前記患者に通知する通知部と
を備える、医用画像処理システム。
【請求項11】
第1の検査における第1の診断目的と、前記第1の検査において収集された医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と分野が異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行し、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成し、当該リストを前記患者に通知する
ことを含む、医用画像処理方法。
【請求項12】
第1の検査における第1の診断目的と、前記第1の検査において収集された医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する診断支援部と、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成し、当該リストを前記患者に通知する通知部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項13】
第1の検査における第1の診断目的と、前記第1の検査において収集された医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する診断支援部と、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師を特定し、特定した病院又は医師に対して、前記患者の受診を予約する通知部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項14】
第1の検査における第1の診断目的に応じて医用画像を収集する収集部と、
前記第1の診断目的と前記医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する診断支援部と、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成し、当該リストを前記患者に通知する通知部と
を備える、医用画像処理システム。
【請求項15】
第1の検査における第1の診断目的に応じて医用画像を収集する収集部と、
前記第1の診断目的と前記医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する診断支援部と、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師を特定し、特定した病院又は医師に対して、前記患者の受診を予約する通知部と
を備える、医用画像処理システム。
【請求項16】
第1の検査における第1の診断目的と、前記第1の検査において収集された医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行し、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成し、当該リストを前記患者に通知する
ことを含む、医用画像処理方法。
【請求項17】
第1の検査における第1の診断目的と、前記第1の検査において収集された医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行し、
前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知し、更に、前記診断支援処理の結果に応じて前記患者に受診を推薦する病院又は医師を特定し、特定した病院又は医師に対して、前記患者の受診を予約する
ことを含む、医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理システム及び医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者は何か症状があって病院を訪れる場合が多い。また、病院では、患者の来院理由に応じて医用画像を収集し、収集した医用画像を用いて診断が行われる。例えば、患者が肩の痛みを訴えて来院した場合には肩を含む範囲についてX線画像が収集され、医師は、X線画像を参照しつつ患者の肩関節に異常がないかを確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2006-511882号公報
【文献】特許第4799251号明細書
【文献】特許第6275876号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、収集された医用画像をより有効に活用することである。ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の医用画像処理装置は、診断支援部と、通知部とを備える。診断支援部は、第1の検査における第1の診断目的と、前記第1の検査において収集された医用画像とに基づいて、前記第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する。通知部は、前記診断支援処理の結果を、前記第1の検査の対象となった患者及び前記第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る一連の処理を示す概略図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係る学習済みモデルの生成処理について説明するための図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係る学習済みモデルの生成処理について説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るX線診断装置及び医用画像処理装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、医用画像処理システム及び医用画像処理方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、医用画像処理装置30を含んだ医用画像処理システム1を例として説明する。例えば、医用画像処理システム1は、図1に示すように、医用画像診断装置10及び医用画像処理装置30を備える。医用画像診断装置10及び医用画像処理装置30は、ネットワークNWを介して接続される。なお、図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。
【0009】
医用画像診断装置10は、患者P1から医用画像を収集する装置である。例えば、医用画像診断装置10は、X線診断装置やX線CT(Computed Tomography)装置、超音波診断装置、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置等である。なお、図1においては医用画像診断装置10を1つ示すが、医用画像処理システム1は、医用画像診断装置10を複数含んでもよい。
【0010】
医用画像処理装置30は、医用画像診断装置10によって収集された医用画像に基づく各種の処理を実行する。例えば、医用画像処理装置30は、図1に示すように、入力インタフェース31と、ディスプレイ32と、メモリ33と、処理回路34とを有する。
【0011】
入力インタフェース31は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路34に出力する。例えば、入力インタフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース31は、医用画像処理装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像処理装置30とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路34へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース31の例に含まれる。
【0012】
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、後述する診断支援処理の結果を表示する。また、例えば、ディスプレイ32は、入力インタフェース31を介してユーザから各種の指示や設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ32は、デスクトップ型でもよいし、医用画像処理装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0013】
メモリ33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ33は、医用画像処理装置30に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、メモリ33は、医用画像診断装置10から取得した各種の画像を記憶する。なお、メモリ33は、医用画像処理装置30とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0014】
処理回路34は、制御機能34a、診断支援機能34b、通知機能34c及び表示制御機能34dを実行することで、医用画像処理装置30全体の動作を制御する。ここで、診断支援機能34bは、診断支援部の一例である。また、通知機能34cは、通知部の一例である。また、表示制御機能34dは、表示制御部の一例である。
【0015】
例えば、処理回路34は、制御機能34aに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、入力インタフェース31を介してユーザから受け付けた各種の入力操作に基づいて、診断支援機能34b、通知機能34c及び表示制御機能34dといった各種の機能を制御する。また、制御機能34aは、ネットワークNWを介したデータの送受信を制御する。
【0016】
また、例えば、処理回路34は、診断支援機能34bに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、医用画像診断装置10により収集された医用画像を用いた診断支援処理を実行する。また、例えば、処理回路34は、通知機能34cに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、診断支援機能34bによる診断支援処理の結果の通知を行なう。また、例えば、処理回路34は、表示制御機能34dに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、診断支援機能34bによる診断支援処理の結果をディスプレイ32に表示させる。なお、診断支援機能34b、通知機能34c及び表示制御機能34dによる処理については後述する。
【0017】
次に、医用画像診断装置10の一例として、図2に示すX線診断装置110について説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置110の構成の一例を示すブロック図である。例えば、X線診断装置110は、X線高電圧装置111と、X線管112と、X線絞り器113と、X線検出器114と、入力インタフェース115と、ディスプレイ116と、メモリ117と、処理回路118とを備える。
【0018】
X線高電圧装置111は、処理回路118による制御の下、X線管112に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置111は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管112に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管112が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0019】
X線管112は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管112は、X線高電圧装置111から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。
【0020】
X線絞り器113は、X線の照射範囲を絞り込むコリメータと、X線を調節するフィルタとを有する。例えば、コリメータは、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線管112が発生したX線を絞り込んで患者P1に照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管112のX線照射口付近に設けられる。また、フィルタは、患者P1に対する被曝線量の低減とX線画像の画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、患者P1に吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像のコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、患者P1へ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0021】
例えば、X線絞り器113は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路118による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えばX線絞り器113は、処理回路118から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、コリメータの絞り羽根の開度を調整して、患者P1に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器113は、処理回路118から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、患者P1に対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
【0022】
X線検出器114は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器114は、X線管112から照射されて患者P1を透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路118へと出力する。なお、X線検出器114は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0023】
入力インタフェース115は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路118に出力する。例えば、入力インタフェース115は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インタフェース115は、処理回路118と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース115は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置110とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路118へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース115の例に含まれる。
【0024】
ディスプレイ116は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ116は、X線画像や、後述する診断支援処理の結果を表示する。また、例えば、ディスプレイ116は、処理回路118による制御の下、ユーザの指示を受け付けるためのGUIを表示する。例えば、ディスプレイ116は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。なお、ディスプレイ116はデスクトップ型でもよいし、処理回路118と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0025】
メモリ117は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ117は、処理回路118によって収集されたX線画像を受け付けて記憶する。また、メモリ117は、処理回路118によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。なお、メモリ117は、X線診断装置110とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0026】
処理回路118は、制御機能118a、収集機能118b、診断支援機能118c及び表示制御機能118dを実行することで、X線診断装置110全体の動作を制御する。例えば、処理回路118は、制御機能118aに対応するプログラムをメモリ117から読み出して実行することにより、入力インタフェース115を介してユーザから受け付けた各種の入力操作に基づいて、収集機能118b、診断支援機能118c及び表示制御機能118d等の各種の機能を制御する。また、制御機能118aは、ネットワークNWを介したデータの送受信を制御する。
【0027】
また、例えば、処理回路118は、収集機能118bに対応するプログラムをメモリ117から読み出して実行することにより、患者P1からX線画像を収集する。例えば、収集機能118bは、X線高電圧装置111を制御し、X線管112に供給する電圧を調整することで、X線管112から患者P1に対して照射されるX線量やオン/オフを制御する。また、収集機能118bは、X線絞り器113の動作を制御し、コリメータが有する絞り羽根の開度を調整することで、患者P1に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、収集機能118bは、X線絞り器113の動作を制御し、フィルタの位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。また、収集機能118bは、X線検出器114から受信した検出信号に基づいてX線画像を生成し、生成したX線画像をメモリ117に格納する。なお、収集機能118bは、生成したX線画像について各種画像処理を行なってもよい。例えば、収集機能118bは、生成したX線画像に対して、画像処理フィルタによるノイズ低減処理や散乱線補正を実行する。
【0028】
また、例えば、処理回路118は、メモリ117から診断支援機能118cに相当するプログラムを読み出して実行することにより、X線画像を用いた診断支援処理を実行する。また、例えば、処理回路118は、メモリ117から表示制御機能118dに対応するプログラムを読み出して実行することにより、診断支援機能118cによる診断支援処理の結果をディスプレイ116に表示させる。
【0029】
以上、医用画像処理システム1の一例について説明した。かかる構成の下、医用画像処理装置30における処理回路34は、収集された医用画像をより有効に活用することを可能とする。
【0030】
以下、医用画像の収集及び使用の一例について、図3を用いて説明する。図3は、第1の実施形態に係る一連の処理を示す概略図である。なお、図3においては、ステップS1に示すように、肩の痛みを訴える患者P1が来院したケースについて説明する。
【0031】
来院した患者P1に対しては、まず、第1の検査が行われる。例えば、患者P1が肩の痛みを訴えている場合には、ステップS2に示すように、整形外科において来院理由に応じた診断が行われる。
【0032】
具体的には、患者P1が整形外科を受診した際、医師等のユーザは患者P1から症状についてのヒアリングを行なう。ここで、診断のためにX線画像が必要であると判断した場合、ユーザは、X線診断装置110を用いて、患者P1の肩を含むX線画像を収集する。例えば、収集機能118bは、入力インタフェース115を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて患者P1に対する胸部レントゲンを実行し、X線画像I1を収集する。
【0033】
次に、診断支援機能118cは、X線画像I1に基づく診断支援処理を実行する。例えば、診断支援機能118cは、肩関節を観察しやすくなるように、X線画像I1におけるウィンドウ値(Window Level)やウィンドウ幅(Window Width)を調整して、X線画像I11を生成する。また、例えば、診断支援機能118cは、X線画像I11に対するコンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis:CAD)処理を実行し、X線画像I11において骨折等の病変が疑われる箇所にマーカを付したX線画像I111を生成する。
【0034】
次に、表示制御機能118dは、診断支援機能118cによる診断支援処理の結果をディスプレイ116に表示させる。例えば、表示制御機能118dは、X線画像I11やX線画像I111等のX線画像をディスプレイ116に表示させる。なお、診断支援機能118cによる診断支援処理については省略することとしてもよい。この場合、表示制御機能118dは、収集されたX線画像I1をディスプレイ116に表示させる。そして、ユーザは、ディスプレイ116に表示されたX線画像を参照して患者P1の肩関節に病変が生じていないかを確認し、診断を行なうことができる。
【0035】
なお、収集されたX線画像I1は、一般に、メモリ117又は外部装置において一定期間保管された後に破棄される。即ち、収集されたX線画像I1は、患者P1の来院理由に応じて行なわれる検査の診断目的で使用された後に、適宜破棄される。これに対し、医用画像処理装置30は、収集されたX線画像I1を用いた各種の処理を更に行なって、X線画像I1をより有効に活用する。
【0036】
以下、第1の検査における診断目的については、第1の診断目的とも記載する。例えば、図3に示す場合、肩の痛みの原因となっている肩関節の病変を特定することが、第1の診断目的となる。また、第1の診断目的と異なる診断目的については、第2の診断目的とも記載する。即ち、医用画像処理装置30は、第1の診断目的での使用に加えて、X線画像I1を第2の診断目的でも使用することにより、X線画像I1をより有効に活用する。
【0037】
具体的には、X線診断装置110における制御機能118aは、図3のステップS3に示すように、ネットワークNWを介して、X線画像I1を医用画像処理装置30に対して送信する。ここで、ネットワークNWは、院内で閉じたローカルネットワークにより構成されてもよいし、インターネットを介したネットワークでもよい。即ち、X線診断装置110と医用画像処理装置30とは、同一施設内に設置されてもよいし、異なる施設に設置されてもよい。
【0038】
次に、図3のステップS4に示すように、来院理由と異なる診断が行われる。例えば、上述したように、X線画像I1に基づいて、肩関節の病変を特定するための診断が既に行われている。しかしながら、X線画像I1には、肩関節の病変以外の病変が含まれている可能性がある。例えば、胸部レントゲン検査により収集されたX線画像I1には、肩関節に加えて肺が含まれており、肺がんや肺結核、気胸といった病変が現れている可能性がある。そこで、医用画像処理装置30は、肺がん等の有無を判定するための診断支援処理を実行する。なお、「肺がんの有無を判定すること」、「肺結核の有無を判定すること」及び「気胸の有無を判定すること」は、第2の診断目的の一例である。
【0039】
例えば、診断支援機能34bは、まず、第2の診断目的に応じたCADを取得する。例えば、診断支援機能34bは、メモリ33に格納された複数のCADの中から、胸部のX線画像に対して適用できるCADを抽出する。また、診断支援機能34bは、抽出したCADのうち、X線画像I1に対して既に使用されているCADを除外する。即ち、診断支援機能34bは、抽出したCADのうち、第1の診断目的に応じたCADを除外する。以下では一例として、肺がんの有無を判定するためのCADc1、肺結核の有無を判定するためのCADc2、及び、気胸の有無を判定するためのCADc3が抽出された場合について説明する。
【0040】
なお、診断支援機能34bによる診断支援処理については、機械学習の手法で行なうこととしてもよい。この点は後述する。
【0041】
次に、診断支援機能34bは、X線画像I1に対する画像処理を行なってX線画像I12を生成し、生成したX線画像I12にCADc1を適用する。一例を挙げると、診断支援機能34bは、肺を観察しやすくなるようにX線画像I1におけるウィンドウ値やウィンドウ幅を調整して、X線画像I12を生成する。また、一例を挙げると、診断支援機能34bは、肺を観察しやすくなるようにX線画像I1におけるウィンドウ値やウィンドウ幅を調整するとともに、X線画像I1から骨を除去する処理を行なうことにより、X線画像I12を生成する。そして、診断支援機能34bは、X線画像I12及びCADc1を用いて、CAD処理を実行する。同様に、診断支援機能34bは、X線画像I1に対する画像処理を行なってX線画像I13を生成し、生成したX線画像I13にCADc2を適用する。同様に、診断支援機能34bは、X線画像I1に対する画像処理を行なってX線画像I14を生成し、生成したX線画像I14にCADc3を適用する。
【0042】
次に、通知機能34cは、診断支援機能34bによる診断支援処理の結果の通知を行なう。例えば、通知機能34cは、図3のステップS5に示すように、診断支援機能34bによる診断支援処理の結果に基づいてレポートR1を生成し、生成したレポートR1を患者P1にフィードバックする。
【0043】
一例を挙げると、通知機能34cは、図3に示すように、肺がんの疑いがあることを記載したレポートR1を生成する。ここで、レポートR1においては、肺がんの疑いがあることをテキストで表示してもよいし、画像で表示してもよい。一例を挙げると、通知機能34cは、CADc1を用いたCAD処理の結果に基づいて、X線画像I12において肺がんが疑われる箇所にマーカを付したX線画像I121を生成し、X線画像I121を含んだレポートR1を生成する。
【0044】
また、通知機能34cは、診断支援機能34bによる診断支援処理の結果について、医用画像処理装置30のユーザからコンサルを受けることとしてもよい。例えば、まず、表示制御機能34dは、診断支援機能34bによる診断支援処理の結果をディスプレイ32に表示させる。一例を挙げると、表示制御機能34dは、肺がんが疑われる箇所にマーカを付したX線画像I121を、ディスプレイ32に表示させる。ここで、ユーザは、X線画像I121におけるマーカが適当か否かを検討し、マーカが適当でない場合には、X線画像I121におけるマーカを修正するための入力操作を行なう。或いは、マーカが適当である場合には、マーカが適当であると判断した旨の情報を付加するための入力操作を行なう。そして、通知機能34cは、ユーザから受け付けた入力操作に応じて、レポートR1を生成する。
【0045】
なお、医用画像処理装置30のユーザは、X線診断装置110のユーザと同一であってもよいし、異なる人物であってもよい。即ち、ステップS2の診断を行なったユーザと、診断支援機能34bによる診断支援処理の結果についてコンサルを行なうユーザとは同一であってもよいし、異なる人物であってもよい。
【0046】
また、通知機能34cは、診断支援処理の結果の通知を、デジタルの手法で行なってもよいし、アナログの手法で行なってもよい。例えば、通知機能34cは、電子メールや、患者P1が所持する端末にインストールされたアプリケーションを介して、レポートR1の通知を行なうことができる。或いは、通知機能34cは、レポートR1をプリントアウトした書面を、患者P1の自宅や職場に送付することにより、レポートR1の通知を行なうことができる。
【0047】
また、通知機能34cは、診断支援処理の結果を、患者P1以外の者に通知してもよい。例えば、通知機能34cは、第1の検査を実行したユーザに対して、レポートR1を通知することとしてもよい。ここで、ユーザは、レポートR1を参照し、レポートR1の内容を患者P1に知らせるべきか否かを判断することができる。なお、一般に、第1の検査が実行された病院では患者P1の連絡先を把握しており、ユーザは、患者P1に対して適宜連絡を行なうことができる。
【0048】
診断支援処理の結果の通知を受けた患者P1は、診断支援処理の結果に応じて追加の検査を受けることができる。以下では、診断支援処理の結果に基づいて患者P1に対して行なわれる検査を、第2の検査とも記載する。例えば、肺がんの疑いがある旨のレポートR1を参照した患者P1は、図3のステップS6に示すように、呼吸器科を受診して第2の検査を受けることができる。なお、ステップS1において受診した整形外科とステップS6において受診した呼吸器科とは同じ病院であってもよいし、異なる病院であってもよい。
【0049】
なお、通知機能34cは、診断支援処理の結果の通知を行なう際、更に、患者P1に受診を推薦する病院のリストを作成し、作成したリストを患者P1に通知してもよい。例えば、通知機能34cは、肺がんの疑いがある旨のレポートR1に基づいて、肺がんに関する検査を実行可能な病院のリストを作成し、患者P1に通知する。なお、通知機能34cは、かかるリストを、レポートR1に含めることとしてもよい。これにより、患者P1は、第2の検査を受けるためにいずれの病院を選択すればよいかを容易に判断することができる。
【0050】
ここで、通知機能34cは、地域の病院を優先的にリストに含めることができる。例えば、通知機能34cは、患者P1の住所や勤務地等の情報に基づいて、患者P1が通院しやすい病院を優先的にリストに追加する。また、第1の検査が実行された病院は、少なくとも一度来院をしていることから患者P1にとって通いやすい病院である場合が多く、その近隣の病院も患者P1にとって通いやすい場合が多い。そこで、通知機能34cは、第1の検査が実行された病院の近隣の病院を優先的にリストに含めることとしてもよい。更に、通知機能34cは、肺がんに関する治療実績に基づいて、リスト中の病院について優先度を付してもよい。
【0051】
また、通知機能34cは、患者P1に受診を推薦する医師のリストを作成し、作成したリストを患者P1に通知してもよい。例えば、通知機能34cは、肺がんの疑いがある旨のレポートR1に応じて、肺がんに関する専門医のリストを作成する。ここで、通知機能34cは、地域の病院に勤務する医師を優先的にリストに含めることができる。また、通知機能34cは、肺がんに関する治療実績に基づいて、リスト中の医師について優先度を付してもよい。
【0052】
また、通知機能34cは、診断支援処理の結果に応じて、患者P1に受診を推薦する病院又は医師を特定し、特定した病院又は医師に対して、患者P1の受診を予約してもよい。即ち、通知機能34cは、第2の検査の予約を行なってもよい。通知機能34cによる予約の処理は、患者P1が希望する場合にのみ行なうこととしてもよいし、自動で行なうこととしてもよい。これにより、通知機能34cは、第2の検査を実行するまでの各種手続きを簡略化することができる。
【0053】
図3のステップS7に示すように、第2の検査では、レポートR1に応じた診断が行われる。例えば、レポートR1に肺がんの疑いがある旨が記載されている場合には、第2の検査として、肺の詳細検査が行われる。一例を挙げると、第2の検査では、患者P1の肺のX線CT画像を用いた画像診断や、細胞診等の病理診断が行われ、医師による確定診断が行われる。このような第2の検査による詳細検査結果により、患者P1は、病変がある場合にはこれを早期発見することができる。また、第2の検査を行なう際、医師は、レポートR1を参照することができるため、患者P1から医師への説明負担を軽減することができる。
【0054】
次に、診断支援機能34bによる診断支援処理を機械学習の手法で行なう場合について、図4Aを用いて説明する。図4Aは、第1の実施形態に係る学習済みモデルの生成処理について説明するための図である。なお、図4Aにおいては、学習済みモデルがニューラルネットワーク(Neural Network)により構成されるものとして説明する。
【0055】
また、診断支援機能34bによる診断支援処理を機械学習の手法で行なう場合、第2の検査を実行した病院は、図3のステップS8に示すように、詳細検査結果を医用画像処理装置30に対して送信する。また、医用画像処理装置30は、第2の検査の結果を取得して学習データとして使用する。
【0056】
例えば、診断支援機能34bは、メモリ33から、X線画像の入力を受け付けてCAD処理の結果を出力するように機能付けられた学習済みモデルM1を取得する。学習済みモデルM1は、後述する手法で診断支援機能34bが生成したものであってもよいし、外部装置において生成されたものであってもよい。
【0057】
次に、診断支援機能34bは、図4Aに示すように、第1の検査において患者P1から収集されたX線画像I1を学習済みモデルM1(ニューラルネットワーク)に対して入力する。また、学習済みモデルM1は、診断結果を出力する。例えば、学習済みモデルM1は、X線画像I1に対する画像処理を行なって処理済み画像を生成し、処理済み画像に対するCAD処理を行なって、CAD処理の結果を出力する。一例を挙げると、学習済みモデルM1は、上述したCADc1、CADc2及びCADc3に相当するCAD処理を行なってその結果を出力する。
【0058】
次に、通知機能34cは、診断支援処理の結果(診断結果)を患者P1に対して通知する。次に、診断結果に基づいて患者P1に対する第2の検査が行われ、詳細検査結果が医用画像処理装置30に対して送信される。そして、診断支援機能34bは、X線画像I1と詳細検査結果とに基づいて、学習済みモデルM1の生成処理を実行する。換言すると、診断支援機能34bは、図4Aに示すように、学習済みモデルM1を更新(アップデート)する。
【0059】
ここで、ニューラルネットワークとは、層状に並べた隣接層間が結合した構造を有し、情報が入力層側から出力層側に伝播するネットワークである。例えば、診断支援機能34bは、上述した学習データを用いて多層のニューラルネットワークについて深層学習(ディープラーニング)を実行することで、学習済みモデルM1を生成する。なお、多層のニューラルネットワークは、例えば、入力層と、複数の中間層(隠れ層)と、出力層とにより構成される。
【0060】
一例を挙げると、診断支援機能34bは、まず、患者P1に関するX線画像I1及び詳細検査結果を含む学習用データセットを生成する。なお、これまで患者P1についてのみ述べたが、診断支援機能34bは、患者P1を含む複数の患者から学習データを収集し、X線画像及び詳細検査結果の組を多数含んだ学習用データセットを生成することができる。
【0061】
次に、診断支援機能34bは、X線画像を入力側データとしてニューラルネットワークに入力する。ここで、ニューラルネットワークにおいては、入力層側から出力層側に向かって一方向に隣接層間でのみ結合しながら情報が伝播し、出力層からは、入力されたX線画像に基づくCAD処理の結果が出力される。一例を挙げると、X線画像I1が入力された際、ニューラルネットワークにおいては、X線画像I1から処理済み画像が生成され、処理済み画像に対して各種のCAD処理が行なわれる。なお、入力層側から出力層側に向かって一方向に情報が伝播するニューラルネットワークについては、畳み込みニューラルネットワーク(Convlutional Neural Network:CNN)とも呼ばれる。
【0062】
診断支援機能34bは、入力側データを入力した際にニューラルネットワークが好ましい結果を出力することができるよう、ニューラルネットワークのパラメータを調整することで、学習済みモデルM1を生成する。例えば、診断支援機能34bは、ニューラルネットワークから出力されるCAD処理の結果と、詳細検査結果(第2の検査の結果)とを比較し、これらの間の差が閾値を下回るまで、ニューラルネットワークのパラメータを調整しながら処理を繰り返す。これにより、診断支援機能34bは、X線画像の入力を受け付けてCAD処理の結果を出力するように機能付けられた学習済みモデルM1を生成することができる。また、診断支援機能34bは、生成した学習済みモデルM1をメモリ33に記憶させる。
【0063】
上述した通り、診断支援機能34bは、学習済みモデルM1を用いて診断支援処理を実行し、更に、学習済みモデルM1の生成処理を行なうことができる。従って、診断支援機能34bは、患者が来院し、第1の検査及び第2の検査が行われるごとに学習済みモデルM1をアップデートし、診断支援処理の精度を次第に向上させることができる。
【0064】
なお、これまで、X線画像I1に対する画像処理を行なって処理済み画像を生成し、生成した処理済み画像に対するCAD処理を行なうものとして説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではない。即ち、診断支援機能34bは、画像処理のステップを省略し、X線画像I1(元データ)に対するCAD処理を行なうこととしてもよい。この点は、学習済みモデルM1を用いて診断支援処理を実行する場合についても同様である。
【0065】
また、図4Aにおいては、少なくともCAD処理を実行する学習済みモデルM1について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、診断支援機能34bは、X線画像の入力を受け付けて処理済み画像を生成するように機能付けられた学習済みモデルM2を用いて診断支援処理を実行することとしてもよい。以下、学習済みモデルM2について、図4Bを用いて説明する。図4Bは、第1の実施形態に係る学習済みモデルの生成処理について説明するための図である。
【0066】
例えば、診断支援機能34bは、メモリ33から、X線画像の入力を受け付けて処理済み画像を出力するように機能付けられた学習済みモデルM2を取得する。学習済みモデルM2は、後述する手法で診断支援機能34bが生成したものであってもよいし、外部装置において生成されたものであってもよい。
【0067】
次に、診断支援機能34bは、図4Bに示すように、第1の検査において患者P1から収集されたX線画像I1を学習済みモデルM2(ニューラルネットワーク)に対して入力する。また、学習済みモデルM2は、X線画像I1に対する画像処理を行なって処理済み画像を生成する。例えば、学習済みモデルM2は、上述したX線画像I12、X線画像I13及びX線画像I14に相当する処理済み画像を生成する。
【0068】
次に、診断支援機能34bは、学習済みモデルM2を用いて生成した処理済み画像に対するCAD処理を実行する。例えば、診断支援機能34bは、学習済みモデルM2を用いて生成した処理済み画像に対して、上述したCADc1、CADc2及びCADc3等の各種CAD処理を実行する。
【0069】
次に、通知機能34cは、診断支援処理の結果(診断結果)を患者P1に対して通知する。次に、診断結果に基づいて患者P1に対する第2の検査が行われ、詳細検査結果が医用画像処理装置30に対して送信される。そして、診断支援機能34bは、X線画像I1と詳細検査結果とに基づいて、学習済みモデルM2の生成処理を実行する。換言すると、診断支援機能34bは、図4Bに示すように、学習済みモデルM2をアップデートする。
【0070】
一例を挙げると、診断支援機能34bは、まず、患者P1に関するX線画像I1及び詳細検査結果を含む学習用データセットを生成する。また、診断支援機能34bは、X線画像I1を入力側データとしてニューラルネットワークに入力する。ここで、ニューラルネットワークにおいては、入力層側から出力層側に向かって一方向に隣接層間でのみ結合しながら情報が伝播し、出力層からは、入力されたX線画像I1に基づく処理済み画像が出力される。そして、診断支援機能34bは、入力側データを入力した際にニューラルネットワークが好ましい結果を出力することができるよう、ニューラルネットワークのパラメータを調整することで、学習済みモデルM2を生成する。
【0071】
一例を挙げると、ニューラルネットワークの出力層からは、X線画像I1におけるウィンドウ値やウィンドウ幅を調整した処理済み画像が出力される。また、一例を挙げると、ニューラルネットワークの出力層からは、X線画像I1から骨を除去した処理済み画像が出力される。ここで、診断支援機能34bは、ニューラルネットワークから出力された処理済み画像に対してCADc1、CADc2及びCADc3等の各種CAD処理を実行する。また、診断支援機能34bは、CAD処理の結果と、詳細検査結果(第2の検査の結果)とを比較し、これらの間の差が閾値を下回るまで、ニューラルネットワークのパラメータを調整しながら処理を繰り返す。
【0072】
即ち、画像処理がより適切に行なわれているほどCAD処理の精度も向上するところ、診断支援機能34bは、より適切な画像処理を行なうことができるように、ニューラルネットワークを学習させる。これにより、診断支援機能34bは、X線画像の入力を受け付けて処理済み画像を出力するように機能付けられた学習済みモデルM2を生成することができる。また、診断支援機能34bは、生成した学習済みモデルM2をメモリ33に記憶させる。
【0073】
上述した通り、診断支援機能34bは、学習済みモデルM2を用いて処理済み画像を生成し、生成した処理済み画像に対するCAD処理を行ない、更に、学習済みモデルM2の生成処理を行なうことができる。従って、診断支援機能34bは、患者が来院し、第1の検査及び第2の検査が行われるごとに学習済みモデルM2をアップデートし、画像処理の精度を次第に向上させることができる。例えば、診断支援機能34bは、学習済みモデルM2をアップデートするごとに、X線画像におけるウィンドウ値やウィンドウ幅の調整や、骨の除去処理についての精度を向上させることができる。
【0074】
なお、これまで、学習済みモデルM1及び学習済みモデルM2が畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により構成されるものとして説明したが、診断支援機能34bは、全結合ニューラルネットワークや、再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)等の他種のニューラルネットワークにより学習済みモデルM1及び学習済みモデルM2を構成してもよい。
【0075】
また、診断支援機能34bは、ニューラルネットワーク以外の機械学習手法により、学習済みモデルM1及び学習済みモデルM2を生成してもよい。例えば、診断支援機能34bは、ロジスティック(Logistic)回帰分析、非線形判別分析、サポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ナイーブベイズ(Naive Bayes)等のアルゴリズムを用いて機械学習を行ない、学習済みモデルM1及び学習済みモデルM2を生成することとしても構わない。
【0076】
次に、X線診断装置110及び医用画像処理装置30による処理の手順の一例を、図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係るX線診断装置110及び医用画像処理装置30の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【0077】
ステップS101は、処理回路118の収集機能118bに対応する。ステップS102は、処理回路118の表示制御機能118dに対応する。ステップS103は、処理回路118の制御機能118aに対応する。ステップS104、ステップS105、ステップS111及びステップS112は、処理回路34の診断支援機能34bに対応する。ステップS106は、処理回路34の表示制御機能34dに対応する。ステップS107、ステップS108、ステップS109及びステップS110は、処理回路34の通知機能34cに対応する。
【0078】
まず、処理回路118は、第1の検査において、患者P1からX線画像I1を収集する(ステップS101)。次に、処理回路118は、収集したX線画像I1をユーザに提示する(ステップS102)。なお、処理回路118は、ステップS102において、収集したX線画像I1をそのままディスプレイ116に表示させてもよいし、X線画像I1に基づく診断支援処理の結果をディスプレイ116に表示させてもよい。ここで、X線診断装置110のユーザは、第1の診断目的に応じた診断を実行する。例えば、患者P1が肩の痛みを訴えて来院した場合、ユーザは、X線画像I1を参照して患者P1の肩関節に病変が生じていないかを確認し、診断を行なう。
【0079】
次に、処理回路34は、X線画像I1を医用画像処理装置30に送信する(ステップS103)。また、処理回路34は、X線画像I1に基づくCADを実行する(ステップS104)。具体的には、処理回路34は、第1の診断目的とX線画像I1とに基づいて、第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じたCADを実行する。例えば、第1の検査において肩関節の病変を特定するための診断が行われていた場合、処理回路34は、肺がんや肺結核、気胸等に関するCADを実行する。なお、処理回路34は、X線画像I1に対する画像処理を実行し、処理済み画像についてCAD処理を実行することしてもよい。また、処理回路34は、学習済みモデルM1又は学習済みモデルM2を用いて、画像処理やCADを実行することとしても構わない。
【0080】
次に、処理回路34は、CAD処理の結果について、ユーザによる確認(コンサル)を受けるか否かを判定する(ステップS105)。ユーザによる確認を受ける場合(ステップS105肯定)、処理回路34は、CAD処理の結果をディスプレイ32に表示させる(ステップS106)。また、ステップS106の後、又は、ユーザによる確認を受けない場合(ステップS105否定)、処理回路34は、レポートR1を作成する(ステップS107)。例えば、ステップS106の後、処理回路34は、ユーザから受け付けた入力操作に応じてレポートR1を作成する。
【0081】
次に、処理回路34は、レポートR1を患者P1に対して送信する(ステップS108)。ここで、処理回路34は、患者P1に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成し、作成したリストを併せて患者P1に通知することとしてもよい。また、処理回路34は、予約を行なうか否かを判定する(ステップS109)。予約を行なう場合(ステップS109肯定)、処理回路34は、レポートR1に応じて患者P1に受診を推薦する病院又は医師を特定し、特定した病院又は医師に対して予約を実行する(ステップS110)。
【0082】
ステップS110の後、又は、予約を行なわない場合(ステップS109否定)、処理回路34は、詳細検査結果を受診したか否かを判定する(ステップS111)。即ち、処理回路34は、第2の検査の結果を受診したか否かを判定する。詳細検査結果を受信した場合(ステップS111肯定)、処理回路34は、X線画像I1と詳細検査結果とを学習データとして用いて、学習済みモデルM1又は学習済みモデルM2を更新する(ステップS112)。そして、ステップS112の後、又は、詳細検査結果を受信しなかった場合(ステップS111)、処理回路34は、処理を終了する。
【0083】
上述したように、第1の実施形態によれば、診断支援機能34bは、第1の検査における第1の診断目的と、第1の検査において収集されたX線画像I1とに基づいて、第1の診断目的と異なる第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する。また、通知機能34cは、診断支援処理の結果を、第1の検査の対象となった患者P1及び第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知する。従って、第1の実施形態に係る医用画像処理装置30は、X線画像I1について、第1の診断目的のみならず第2の診断目的でも使用して、より有効に活用することができる。
【0084】
また、一般に、医師はそれぞれが専門分野を有する。例えば、整形外科の医師であれば、肩の痛みを訴える患者P1に対しては、肩関節に着目した診断を行なう。しかしながら、肩に痛みがある場合でもその原因が肩にあるとは限らない。かかる場合、整形外科を何度受診しても痛みは軽減されず、患者にとってはストレスとなり、病院側にとっても負担が増加することとなる。これに対し、第1の実施形態によれば、医用画像処理装置30は、医師の専門分野に関わらずに痛みの原因を検出することができ、患者及び病院の負担を軽減することができる。例えば、医師にとっては、読影の負担が軽減される。また、ひいては、医療費も削減されることとなる。
【0085】
また、上述したように、第1の実施形態によれば、通知機能34cは、診断支援処理の結果に応じて患者P1に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成して通知したり、受診を推薦する病院又は医師の予約を行なったりすることができる。即ち、医用画像処理装置30は、専門の異なる複数の病院や医師を連携させて、患者P1の診断に向けることができる。これにより、各医師は、自らの専門分野に集中して診断を行なうことができるようになり、診断の効率を向上させることができる。
【0086】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、肩の痛みを訴える患者P1に対して第1の検査が行われたケースを例として説明した。これに対し、第2の実施形態では、腹部の痛みを訴える患者P2に対して第1の検査が行われるケースについて説明する。第2の実施形態に係る医用画像処理システム1は、図1及び図2に示した医用画像処理システム1と同様の構成を有する。以下、第1の実施形態において説明した点については、図1及び図2と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0087】
例えば、腹部の痛みを訴える患者P2が内科を受診した際、医師等のユーザは患者P2から症状についてのヒアリングを行なう。ここで、診断のためにX線画像が必要であると判断した場合、ユーザは、X線診断装置110を用いて、患者P2の腹部を含むX線画像I2を収集する。
【0088】
次に、診断支援機能118cは、X線画像I2に基づく診断支援処理を実行する。例えば、診断支援機能118cは、X線画像I2に対するCAD処理を実行し、X線画像I12に描出された消化管のうち穿孔が疑われる箇所にマーカを付したX線画像I21を生成する。次に、表示制御機能118dは、X線画像I21をディスプレイ116に表示させる。或いは、表示制御機能118dは、収集されたX線画像I2をそのままディスプレイ116に表示させてもよい。そして、ユーザは、ディスプレイ116に表示されたX線画像を参照して、患者P2の消化管における穿孔の有無を検討し、診断を行なう。また、制御機能118aは、X線画像I2を医用画像処理装置30に送信する。
【0089】
次に、診断支援機能34bは、X線画像I2に基づいて、第2の診断目的に応じた診断支援処理を実行する。例えば、診断支援機能34bは、消化管の穿孔を判定するCAD以外のCADであって、腹部のX線画像に対して適用可能なCADを取得し、取得したCADを用いたCAD処理を実行する。かかるCADの例としては、例えば、胆石を検出するCAD、腎嚢胞を検出するCAD等が挙げられる。また、診断支援機能34bは、上述した学習済みモデルM1又は学習済みモデルM2を用いて、X線画像I2に基づく診断支援処理を実行することとしても構わない。
【0090】
次に、通知機能34cは、診断支援処理の結果を、患者P2、又は、患者P2に対する第1の検査を実行したユーザの少なくとも一方に対して通知する。例えば、通知機能34cは、診断支援機能34bによる診断支援処理の結果に基づいてレポートR2を生成し、生成したレポートR2を患者P2にフィードバックする。なお、通知機能34cは、レポートR2について、医用画像処理装置30のユーザからコンサルを受けることとしてもよい。また、通知機能34cは、患者P2に受診を推薦する病院又は医師のリストを作成し、作成したリストを患者P2に通知してもよい。また、通知機能34cは、患者P2に受診を推薦する病院又は医師を特定し、特定した病院又は医師に対して、患者P2の受診を予約してもよい。
【0091】
次に、診断支援処理の結果に基づいて、患者P2に対する第2の検査が実行される。例えば、X線画像I2から腎嚢胞が検出された場合、腎臓に対する詳細検査が行われる。これにより、患者P2は、腎臓における病変を早期発見することができる。また、診断支援機能34bは、第2の検査の結果を受信した場合、X線画像I2と、第2の検査の結果とを学習データとして用いて、学習済みモデルM1又は学習済みモデルM2の更新を行なうことができる。
【0092】
(第3の実施形態)
さて、これまで第1~第2の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0093】
例えば、図1においては、医用画像診断装置10と医用画像処理装置30とが別体であるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医用画像診断装置10が備えるコンソールが、医用画像処理装置30として機能する場合であってもよい。一例を挙げると、X線診断装置110の処理回路118が、上述した診断支援機能34b、通知機能34c、表示制御機能34dといった機能を実行する場合であってもよい。
【0094】
或いは、診断支援機能34b、通知機能34c、表示制御機能34dといった各種の機能を有する処理回路が、複数の装置に分散して配置されていてもよい。例えば、上述した診断支援機能34bを医用画像処理装置30の処理回路34が実行し、通知機能34cをX線診断装置110の処理回路118が実行する場合であってもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、第1の検査において収集された医用画像として、X線画像I1及びX線画像I2について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第1の検査においてX線CT画像や、超音波画像、MR画像、SPECT画像、PET画像等が収集された場合においても、同様に適用が可能である。また、例えば、第1の検査において透視像が収集された場合においても、同様に適用が可能である。なお、透視像とは、収集と並行して表示される医用画像である。
【0096】
なお、第1の検査においては、収集された医用画像の全体が使用されない場合がある。例えば、X線CT画像等の3次元画像が収集された場合、第1の検査において医師が参照するのは、レンダリング処理等を行なって生成された2次元画像である。かかる2次元画像は、3次元画像に基づいて多数生成することが可能であり、その全てについて医師が読影を行なうことは容易ではない。
【0097】
ここで、診断支援機能34bは、医用画像のうち、第1の検査において使用されなかった部分について診断支援処理を実行してもよい。例えば、診断支援機能34bは、第1の検査において収集されたX線CT画像に基づいて、第1の検査において生成されなかった位置又は角度の2次元画像を生成し、生成した2次元画像に対するCAD処理を行なうこととしてもよい。或いは、診断支援機能34bは、X線CT画像(元データ)に対するCAD処理を行なうこととしてもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、第2の検査の結果として、医師による確定診断について説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、第2の検査の結果は、第2の検査におけるCAD処理の結果であってもよい。また、診断支援機能34bは、第1の検査において収集された医用画像と、第2の検査におけるCAD処理の結果とを学習データとして用いて、学習済みモデルM1又は学習済みモデルM2を更新してもよい。
【0099】
例えば、図3において、ステップS4では、肩関節に関する診断を目的として収集されたX線画像I1を用いたCAD処理により、肺がんの有無が判定される。一方で、ステップS7では、肺がんに関する診断を目的として収集された医用画像を用いたCAD処理により、肺がんの有無が判定される。このため、ステップS7におけるCAD処理の結果は、ステップS4におけるCAD処理の結果と比較して高精度である。以上より、診断支援機能34bは、ステップS7におけるCAD処理の結果を正解データとして用いて、学習済みモデルM1又は学習済みモデルM2を更新することができる。
【0100】
或いは、診断支援機能34bは、第1の検査を受けた後の患者の症状の推移に基づいて、学習済みモデルM1又は学習済みモデルM2を更新することもできる。例えば、図3に示した通り肺がんの疑いがある旨のレポートR1が通知された場合においても、患者P1が第2の検査を受診しないケースが想定される。かかる場合、診断支援機能34bは、患者P1が実際に肺がんを発症したか否かを正解データとして用いて、学習済みモデルM1又は学習済みモデルM2を更新することができる。
【0101】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0102】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0103】
また、上述した実施形態で説明した医用画像処理方法は、予め用意された医用画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医用画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医用画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0104】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、収集された医用画像をより有効に活用することができる。
【0105】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0106】
1 医用画像処理システム
110 X線診断装置
118 処理回路
118a 制御機能
118b 収集機能
118c 診断支援機能
118d 表示制御機能
30 医用画像処理装置
34 処理回路
34a 制御機能
34b 診断支援機能
34c 通知機能
34d 表示制御機能
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5