(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】軟便保持用構造体及びそれを備える吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/537 20060101AFI20240925BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20240925BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240925BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240925BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20240925BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20240925BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20240925BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61F13/537 200
A61F13/534 100
A61F13/535 100
A61F13/535 200
A61F13/53 300
A61F13/512 100
A61F13/494 110
A61F13/475 110
A61F13/56 110
(21)【出願番号】P 2020127334
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武士俣 航平
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-072425(JP,A)
【文献】特開2019-080802(JP,A)
【文献】特開2006-181355(JP,A)
【文献】特表2013-532527(JP,A)
【文献】特開2015-173819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/537
A61F 13/534
A61F 13/535
A61F 13/53
A61F 13/512
A61F 13/494
A61F 13/475
A61F 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟便保持部と、該軟便保持部の厚み方向の両面を被覆する被覆シートとを有し、長手方向及びこれに直交する幅方向を有する軟便保持用構造体であって、
前記軟便保持部は、嵩高シートが複数層に積層された積層部と、前記長手方向又は前記幅方向において該積層部間に位置し、該軟便保持部の一方の面側に開口した凹部又は貫通部となっている単数又は複数の軟便拡散部とを有しており、
前記嵩高シートは、熱融着繊維を含むエアスルー不織布であり、構成繊維の繊維間距離が150μm以上600μm以下であり、該シートの密度が0.004g/cm
3以上0.06g/cm
3以下であり、
個々の前記軟便拡散部が、前記長手方向又は前記幅方向に沿った状態に配されており、
前記嵩高シートは、その厚み方向に沿って構成繊維の繊維間距離が異なっており、
前記軟便保持部の厚み方向の両面の一方側であって、前記積層部において前記被覆シートに隣接する前記嵩高シートは、繊維間距離が長い方の面が該被覆シートと対向している、軟便保持用構造体。
【請求項2】
前記被覆シートが、複数の開孔を有している、請求項
1に記載の軟便保持用構造体。
【請求項3】
前記積層部の坪量が100g/m
2以上500g/m
2以下である、請求項1
又は2に記載の軟便保持用構造体。
【請求項4】
前記積層部の容積が200000mm
3以上60000mm
3以下である、請求項1~
3の何れか1項に記載の軟便保持用構造体。
【請求項5】
前記嵩高シートは、前記被覆シートに比して親水度が高い、請求項1~
4の何れか1項に記載の軟便保持用構造体。
【請求項6】
前記軟便拡散部の幅が2mm以上15mm以下である、請求項1~
5の何れか1項に記載の軟便保持用構造体。
【請求項7】
前記嵩高シートは、構成繊維の繊度が互いに異なる複数の層で構成されている、請求項1~
6の何れか1項に記載の軟便保持用構造体。
【請求項8】
前記長手方向に延びる複数の前記軟便拡散部が前記幅方向に間欠的に配されているか、
又は複数の前記軟便拡散部が前記長手方向及び前記幅方向それぞれに間欠的に配されている、請求項1~
7の何れか1項に記載の軟便保持用構造体。
【請求項9】
他の吸収性物品又は衣類に着脱可能に固定する固定部を非肌対向面に有しており、
前記固定部は、繊維シートと係合可能な止着部又は粘着剤からなるずれ止め部である、請求項1~
8の何れか1項に記載の軟便保持用構造体。
【請求項10】
他の吸収性物品又は衣類に着脱可能に固定する固定部を非肌対向面に有しており、
前記固定部は、繊維シートと係合可能な止着部又は粘着剤からなるずれ止め部であり、且つ前記長手方向において前記積層部と重ならない位置に配されている、請求項1~
9の何れか1項に記載の軟便保持用構造体。
【請求項11】
請求項1~
8の何れか1項に記載の軟便保持用構造体と、吸水性繊維及び吸水性ポリマーを有する吸収体とを備え、該軟便保持用構造体と該吸収体とが積層した状態で一体化されている、吸収性物品。
【請求項12】
前記軟便保持用構造体の両側部に配された一対の防漏カフと、前記吸収体の両側部に配された一対の本体防漏カフとを備えており、
前記防漏カフの肌対向面側に、前記本体防漏カフが配されている、請求項
11に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟便保持用構造体及びそれを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
排泄液の移行性や着用者の肌へのフィット性等を考慮した、おむつ等の吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、被覆シートと、排泄液を透過する透過シートと、該透過シートの裏面側に配され該排泄液を保持する吸収要素とを備え、該吸収要素が、高吸収性ポリマー粒子を含む吸収体と、該吸収体を包む要素とで構成された、吸収性物品が記載されている。また、特許文献1には、吸収体を包む要素のうち、透過シート側の要素がエアスルー不織布で構成されていることが記載されている。
【0003】
また、本出願人は、先に、被覆シート及び裏面シート間に位置する液保持性の吸収性コアを備え、長手方向に2つ折り又は3つ折りにされている吸収性物品であって、該吸収性コアには、複数本の貫通又は非貫通の長手方向に延びるスリットが形成されており、該スリットは、少なくとも股下部において互いに連設されておらず、且つ、前記2つ折り又は3つ折りの折り位置と異なる位置にスリット幅の広い幅広部を有している、吸収性物品を提案した(特許文献2)。
【0004】
また、おむつのインナーとして併用される吸収性物品が知られている。例えば、特許文献3には、セルロース系半合成繊維の長繊維から構成された繊維集合体を有し、吸収性物品の肌面側に取り外し可能に配置して用いられる補助シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-346210号公報
【文献】特開2012-157380号公報
【文献】特開2016-059740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
おむつ等の吸収性物品が備える一般的な吸収体は、尿に比して高粘度の排泄物を吸収し難い。特に、固形分を含む軟便は、吸収体の内部に取り込まれ難い。これに起因して、吸収性物品に取り込みきれなかった軟便が、着用者の肌を広範囲に汚したり、該着用者の体圧等の影響で吸収性物品の外へ漏れ出たりすることがある。特許文献1及び3に記載の技術は、軟便に対応するものだが、吸収体に軟便を速やかに取り込む点が不十分であった。特許文献2は、軟便に対応するための技術を開示するものではない。
【0007】
したがって、本発明の課題は、軟便に対し優れた吸収性能が得られる軟便保持用構造体及びそれを備える吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軟便保持部と、該軟便保持部の厚み方向の両面を被覆する被覆シートとを有し、長手方向及びこれに直交する幅方向を有する軟便保持用構造体を提供するものである。
前記軟便保持部は、嵩高シートが複数層に積層された積層部と、前記長手方向又は前記幅方向において該積層部間に位置し、該軟便保持部の少なくとも一方の面側に開口した凹部又は貫通部となっている単数又は複数の軟便拡散部とを有していることが好ましい。
前記嵩高シートは、熱融着繊維を含むエアスルー不織布であり、且つ構成繊維の繊維間距離が150μm以上であることが好ましい。
個々の前記軟便拡散部が、前記長手方向又は前記幅方向に沿った状態に配されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記軟便保持用構造体を備えた吸収性物品を提供するものである。
前記吸収性物品は、吸水性繊維及び吸水性ポリマーを有する吸収体を備え、前記軟便保持用構造体と該吸収体とが積層した状態で一体化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軟便に対し優れた吸収性能を有する軟便保持用構造体及びそれを備える吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の軟便保持用構造体の一実施形態である軟便取りパッドを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す軟便取りパッドの伸長状態を肌対向面側から視た平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す軟便保持部の幅方向に沿う断面図であって、該軟便保持部における作用効果を示す概念図である。
【
図5】
図5は、着用状態における軟便保持部の幅方向に沿う断面図である。
【
図6】
図6(a)~(e)は、本発明に斯かる積層部及び軟便拡散部のバリエーションを示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の軟便保持用構造体を備える吸収性物品の他の実施形態を示す図であって、伸長状態における平面図である。
【
図9】
図9(a)及び(b)は、凹部からなる軟便拡散部を有する軟便保持部の
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の軟便保持用構造体の一実施形態である軟便取りパッド1aが示されている。本発明の軟便保持用構造体は、軟便を保持する部材として、おむつ等の他の吸収性物品とともに用いられる。
図1に示す軟便取りパッド1aは、他の吸収性物品の肌対向面(内面)に重ねて使用される。このように、他の吸収性物品と併用される部材であって、軟便の取り込みや保持に好適に用いられるものを、以下、軟便取りパッド1aともいう。
【0013】
本明細書において、吸収性物品や、他の吸収性物品と併用される部材における「肌対向面」は、吸収性物品、これと併用される部材、又はこれらの構成部材(例えば吸収体や軟便保持部)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側である。また、吸収性物品や、他の吸収性物品と併用される部材における「非肌対向面」は、吸収性物品、これと併用される部材、又はこれらの構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側である。
本明細書において「着用時」又は「着用状態」とは、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
【0014】
本実施形態の軟便取りパッド1aは、
図2に示すように、平面視において長方形状を有しており、長手方向X及び該長手方向Xと直交する幅方向Yを有している。軟便取りパッド1aの長手方向Xは、着用時において、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる前後方向に対応する。
軟便取りパッド1aは、伸長状態において、その長手方向Xの中央に位置する中間部Cと、該中間部Cの長手方向Xの両側に位置する前方部A及び後方部Bとを有している。「伸長状態」とは、
図2に示すように、軟便取りパッド1aが具備する各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
本実施形態の軟便取りパッド1aは、前方部Aが着用者の腹側を向くように用いられてもよいが、後方部Bが着用者の腹側を向くように用いられていてもよい。
【0015】
本実施形態の軟便取りパッド1aは、
図1に示すように、長手方向X全体が湾曲するように、幅方向Yに延びる折り目16に沿って屈曲する。軟便取りパッド1aは、斯かる折り目16のうち長手方向Xの最も外方側に位置する2本の折り目16によって、前方部A、中間部C、及び後方部Bに区分される。また、中間部Cには、該中間部Cの長手方向Xの長さを2等分し、且つ幅方向Yに沿って延びる折り目16aが形成されている。
折り目16は、後述する積層部11を一方の面側から圧搾することにより形成されている。
【0016】
本実施形態の軟便取りパッド1aは、軟便保持用構造体4と、一対の防漏カフ6,6とを備えている。
軟便保持用構造体4は、軟便保持部10と、該軟便保持部10の厚み方向の両面を被覆する被覆シート2a,2bとを有している。本実施形態の被覆シート2a,2bは、軟便保持用構造体4の肌対向面を被覆する第1シート2aと、軟便取りパッド1aの非肌対向面、即ち軟便保持用構造体4の非肌対向面を被覆する第2シート2bとを含んで構成されている。第2シート2bは、第1シート2aとは別体のシートである。本実施形態の第1シート2a及び第2シート2bは、軟便保持部10の長手方向Xの両端部それぞれから長手方向X外方に延出しており、その延出部どうしが接着剤等を介して接合されている。これら延出部どうしの接合箇所を被覆シート間接合部5ともいう(
図1参照)。
【0017】
本実施形態において第1シート2aと第2シート2bとは別体のシートである。第1シート2a及び第2シート2bの何れか一方は、軟便保持部10の長手方向Xに沿う両側縁から幅方向Yの外方に延出し、その延出した部分が、第1シート2a及び第2シート2bの他方と重なって、該他方を被覆していてもよい。この場合、第1シート2aと、第2シート2bとは、互いに重なり合う部分において接着剤等の公知の接合手段によって接合されていてもよい。
また、被覆シート2は一枚のシートから構成されていてもよい。この場合、一枚のシートが軟便保持部10の厚み方向の両面の何れか一方を被覆するとともに、該シートが軟便保持部10の長手方向Xに沿う両側縁から幅方向Yの外方に延出し、その延出した部分が、該軟便保持部10の他方の面側に巻き掛けられて、該他方の面を被覆する。
本実施形態の軟便保持部10と被覆シート2の肌対向面とは部分的に接合されている。軟便保持部10と被覆シート2との接合は、接着剤等の公知の接合手段によって接合できる。
【0018】
本実施形態の軟便取りパッド1aは、
図1~
図3に示すように、軟便保持用構造体4の長手方向Xに沿う両側部に、着用者の肌側に向かって起立する一対の防漏カフ6,6が設けられている。防漏カフ6は、軟便保持部10の長手方向X、幅方向Yそれぞれと直交する厚み方向Zにおいて第1シート2a側を基端とし、着用者の肌側に自由端をなすように起立するものである。防漏カフ6は、カフ形成用シート6bと、該カフ形成用シート6bの幅方向Y内方において長手方向Xに沿って伸長状態で配された弾性部材6aとから構成されている(
図3参照)。斯かる防漏カフ6では、弾性部材6aが軟便保持部10の長手方向Xの略全長に伸長状態で延在しており、該弾性部材6aの収縮によって防漏カフ6の幅方向Y内方端、すなわち自由端が着用者の肌側に向かって起立する。
本実施形態の防漏カフ6,6は、
図3に示すように、カフ形成用シート6bが幅方向Yにおいて軟便保持用構造体4の外方へ延出して、その延出した部分が第2シート2bにより被覆された面側に巻き掛けられ、且つ該第2シート2bと接合されている。
【0019】
本実施形態の軟便取りパッド1aは、防漏カフ6,6が配された面、すなわち軟便保持部10の第1シート2aにより被覆された面を肌対向面に、該軟便保持部10の第2シート2bにより被覆された面を非肌対向面にして用いられる。
軟便保持用構造体4は、防漏カフ6,6を備えていない場合、軟便保持部10の両面のうち第1シート2aにより被覆された面を肌対向面として用いてもよく、第2シート2bにより被覆された面を非肌対向面として用いてもよい。
【0020】
本実施形態の軟便取りパッド1aは、
図1及び
図2に示すように、固定部7を非肌対向面に有している。固定部7は、軟便取りパッド1aを他の吸収性物品又はショーツ等の衣類に重ねて使用する際、軟便取りパッド1aを他の吸収性物品又は衣類に着脱可能に固定する。この固定部7を有することにより、軟便取りパッド1aを他の吸収性物品上又は衣類上に重ねて使用する際、該軟便取りパッド1aを該他の吸収性物品又は該衣類に着脱可能に固定させることができ、着用時において軟便取りパッド1aがずれることをより抑制することができる。
【0021】
固定部7は、不織布等の繊維シートと係合可能な止着部又は粘着剤からなるずれ止め部とすることができる。
止着部は、繊維シートの表面を構成する繊維と係合可能な係合突起を有している。係合突起の形状は特に制限されず、フック形、錨形、鉤形等の形状とすることができる。止着部として、例えばメカニカルファスナーのオス部材を用いることができる。
【0022】
ずれ止め部は、粘着剤を軟便取りパッド1aの非肌対向面に塗布することで形成することができる。粘着剤としては、従来、吸収性物品に使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができるが、主に天然ゴム類似の基本構造を有する合成ゴム系のブロック共重合体を用いることが好ましい。そのようなブロック共重合体としては、例えばスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。
【0023】
軟便保持部10は、軟便保持用構造体4において軟便を吸収し、且つ保持する部位である。軟便保持部10は、
図2に示すように、嵩高シート12が複数層に積層された積層部11と、該積層部11間に位置する複数の軟便拡散部14とを有している。本実施形態の軟便保持部10は、複数の長手方向Xに延びる積層部11が幅方向Yに間欠的に配されており、該積層部11間に長手方向Xに延びる軟便拡散部14が配されている。すなわち、幅方向Yにおいて積層部11と軟便拡散部14とが交互に配されている。
本実施形態の軟便保持部10は複数の軟便拡散部14を備えているが、単数の軟便拡散部14を備えていてもよい。
【0024】
本実施形態の積層部11は、複数枚の嵩高シート12が重なった積層構造を有している。これに代えて、積層部11は、1枚の嵩高シート12が幾重にも折り返された積層構造を有していてもよい。
本実施形態の積層部11において嵩高シート12は、厚み方向に対向する部分どうしが接合部13を介して接合されている。この嵩高シート12どうしの接合には、接着剤等の公知の接合手段を用いることができる。
【0025】
本実施形態の軟便拡散部14は、軟便保持部10を貫通する貫通部となっている。これに代えて、軟便拡散部14は、軟便保持部10の一方の面側に開口した凹部となっていてもよい。例えば、軟便拡散部14は、軟便保持部10の肌対向面側に開口した凹部となっていてもよい。斯かる場合、軟便拡散部14は有底の凹部となり、該凹部の底部は積層部11間に連続した嵩高シート12によって形成される。
軟便拡散部14では、軟便保持部10の厚み方向Zに沿って、積層部11における嵩高シート12の積層構造が露出している。換言すると、積層部11は、軟便保持部10の厚み方向Zに沿って、嵩高シート12の積層構造が露出した積層端面を有している。
【0026】
嵩高シート12は、後述する構成を備えることで、軟便を捕捉することを意図したシートである。軟便の捕捉性をより向上させる観点から、嵩高シート12は、エアスルー不織布であることが好ましい。「エアスルー不織布」とは、所定温度以上の流体、例えば気体や水蒸気を、不織布の前駆体である繊維ウエブ又は不織布に吹き付ける工程(エアスルー工程)を経て製造された不織布をいう。斯かる流体の吹き付けは、熱風等の流体が繊維ウエブ又は不織布を貫通する、いわゆるエアスルー方式(貫通方式)で行われる。エアスルー不織布には、斯かるエアスルー方式による熱処理工程のみで製造される不織布のみならず、他の方法で作製された不織布に該熱処理工程を付加して製造した不織布、あるいはエアスルー工程の後に何らかの工程を行って製造した不織布が包含される。
【0027】
嵩高シート12は、熱の作用によって互いに融着する熱融着繊維を含んでいる。嵩高シート12は、熱融着繊維を含むエアスルー不織布であるので、構成繊維どうしが融着した複数の融着点を有しており、該複数の融着点が三次元的に分散している。
熱融着繊維は、熱可塑性樹脂を原料とした熱可塑性繊維である。熱可塑性樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
嵩高シート12に含まれる熱融着繊維の好ましい一例として、低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる複合繊維が挙げられる。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる複合繊維としては、芯鞘型の複合繊維が好ましく、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。芯鞘型の複合繊維としては、芯成分が同芯芯鞘型複合繊維や、偏芯芯鞘型複合繊維が挙げられる。これら複合繊維の具体例としては、特開平9-296325号公報や特許2759331号公報等に記載のものが挙げられる。後述する軟便保持部10への軟便の取り込み性をより向上させる観点から、嵩高シート12が含む熱融着繊維は、偏芯芯鞘型複合繊維であることが好ましい。
【0029】
嵩高シート12は、上述した熱融着繊維に加えて、他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維としては、非熱融着繊維、例えばセルロース繊維などの天然系や半天然系の繊維等が挙げられる。
【0030】
嵩高シート12は、構成繊維の繊維間距離が150μm以上である。軟便保持部10への軟便の取り込み性をより向上させる観点から、嵩高シート12における構成繊維の繊維間距離は、好ましくは170μm以上、より好ましくは200μm以上であり、また好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下であり、また好ましくは170μm以上600μm以下、より好ましくは200μm以上550μm以下である。
嵩高シート12の構成繊維の繊維間距離は、熱融着繊維を含む構成繊維の繊維間距離である。繊維間距離は以下の方法により測定される。
【0031】
<繊維間距離の測定方法>
不織布、紙等の繊維集合体の繊維間距離は、Wrotnowskiの仮定に基づく下記式(1)により求められる。下記式(1)は一般に、繊維集合体の繊維間距離を求める際に用いられる。Wrotnowskiの仮定の下では、繊維は円柱状であり、それぞれの繊維は交わることなく規則正しく並んでいる。
先ず、下記式(1)により、嵩高シートにおける繊維間距離を算出する。下記式(1)で用いる厚みt、坪量W、繊維の樹脂密度ρ及び繊維径Dは、軟便保持部における任意の複数の測定点における測定値の平均値である。
厚みt(mm)は以下の方法にて測定する。先ず、測定対象のシートを長手方向50mm×幅方向50mmに切断し該シートの切断片を作製する。ただし、測定対象のシートとしてこの大きさの切断片を作製できない場合は、可能な限り大きな切断片を作製する。次に、この切断片を平板上に載せ、その上に平板上のガラス板を載せ、ガラス板を含めた荷重が49Paになるようにガラス板上に重りを均等に載せた上で、該切断片の厚みを測定する。測定環境は温度20±2℃、相対湿度65±5%とする。測定機器にはマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-1000)を用いる。当該測定機器を用いて、前記切断片の切断面の拡大写真を得る。この拡大写真を撮影する際、既知の寸法のものを同時に写しこむ。次に、前記切断片の切断面の拡大写真にスケールを合わせ、該切断片の厚みを測定する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を、嵩高シートの厚みtとする。
【0032】
坪量W(g/m2)は、測定対象のシートを所定の大きさ(例えば12cm×6cmなど)にカットし、質量測定後に、その質量測定値を、該所定の大きさから求まる面積で除することで求められる(「坪量W(g/m2)=質量÷所定の大きさから求められる面積」)。この測定を4回繰り返し、その平均値を坪量とする。
繊維の樹脂密度ρ(g/cm3)は、密度勾配管を使用して、JIS L1015化学繊維ステープル試験方法に記載の密度勾配管法の測定方法に従い測定する(URLはhttp://kikakurui.com/l/L1015-2010-01.html、書籍ならJISハンドブック繊維-2000、(日本規格協会)のP.764~765に記載)。
繊維径Dの測定方法は、後述の<繊維径の測定方法>に従う。
【0033】
【0034】
<繊維径の測定方法>
測定対象のシートを剃刀(例えばフェザー安全剃刃株式会社製片刃)で切断し、平面視四角形形状(8mm×4mm)の測定片を得る。この測定対象の切断の際には、その切断によって形成される測定片の切断面の構造が、切断時の圧力などによって破壊されないように注意する。好ましい測定対象の切断方法として、測定対象の切断に先立って、測定対象を液体窒素中に入れて十分に凍結させ、しかる後切断する方法が挙げられる。紙両面テープ(ニチバン株式会社製ナイスタックNW-15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E-1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は30秒とする。測定片の切断面を、日立製作所株式会社製S-4000型電界放射型走査電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察する。嵩高シートの構成繊維について、繊維の長手方向に対する幅方向の長さを10本測定し、その平均値を繊維径とする。
【0035】
嵩高シート等の測定対象の構成部材は、ホットメルト接着剤をコールドスプレーや液体窒素で固化させ、吸収性物品における他の構成部材から丁寧に剥がすことで、該吸収性物品から取り出す。斯かる手段は本明細書の他の測定においても共通である。
【0036】
本実施形態において、個々の軟便拡散部14は軟便保持部10の長手方向X全長に延在している。このように、個々の軟便拡散部14は、長手方向Xに沿った状態に配されていてもよく、幅方向Yに沿った状態に配されていてもよい。
また、軟便拡散部14が幅方向Yに沿った状態に配されている場合、該軟便拡散部14が、軟便取りパッド1aの折り目16を形成していてもよい。
【0037】
本実施形態の軟便取りパッド1aは、着用時に、着用者の便排泄部に対向するように、他の吸収性物品上に配されて使用される。本実施形態の軟便取りパッド1aは、尿を透過させる一方、軟便を捕捉する。軟便取りパッド1aを透過した尿は、該軟便取りパッド1aの非肌対向面側に配された他の吸収性物品に吸収される。
尿に比して高粘度である軟便は、一般的なおむつ等の吸収性物品に排泄された場合、吸収され難く、排泄された箇所に滞留し易い。吸収性物品に排泄された軟便は、着用者の体圧によって吸収性物品の表面上に拡がって、着用者の肌を広範囲に汚す虞がある他、該吸収性物品の外へ漏れ出る虞がある。さらに、軟便は、個人差や体調等によってその粘度が大きく変化するので、高粘度の軟便であっても速やかに取り込み可能な吸収性物品が望まれている。
本発明者は、嵩高シート12が複数層に積層された積層部11と、該積層部11間に位置する軟便拡散部14とを有する軟便保持部10に、軟便が速やかに吸収されることを見出した。この理由について、本発明者の考察を以下に説明する。先ず、軟便Fが第1シート2aを通過して軟便保持部10における軟便拡散部14に移動すると、軟便Fが、軟便拡散部14に沿って長手方向X又は幅方向Yに拡散されるとともに、該軟便Fが軟便拡散部14と長手方向X又は幅方向Yに隣接する積層部11の積層端面に至る。この積層部11において積層端面は、該積層部11の肌対向面とともに、軟便Fの取り込み部位となる(
図4参照)。即ち、積層部11における積層端面及び肌対向面それぞれに接触した軟便は、嵩高シート12からなる積層部11内に取り込まれる。このようにして、本実施形態の軟便取りパッド1aは、積層部11の厚み方向において非肌対向面側に配された嵩高シート12も軟便Fの取り込み部位として効率的に活用することができる。したがって、本実施形態の軟便取りパッド1aは、積層部11において軟便Fが取り込まれる面積を大きく確保することができ、これに起因して軟便Fを急速に取り込むことができる。
しかも、積層部11を形成する嵩高シート12は、構成繊維の繊維間距離が大きいので、嵩高シート12どうしの間に取り込まれた軟便は、嵩高シート12の内部に容易に取り込まれる。
さらに、嵩高シート12は、熱融着繊維を含むエアスルー不織布であるので、構成繊維どうしが融着した融着点によって嵩高シート12の厚みが維持され易い。これに起因して嵩高シート12内において軟便を保持する空間が維持されるので、構成繊維間に軟便による目詰まりが生じ難く、多量の軟便を嵩高シート12内に保持することができる。
このように、本実施形態の軟便保持用構造体4を備える軟便取りパッド1aでは、軟便拡散部14によって拡散させた軟便を、積層した嵩高シート12によって速やかに取り込み且つ保持するので、多量の軟便であっても、あるいは高粘度の軟便であっても優れた吸収性能が得られる。
【0038】
また、軟便保持部10は、凹部又は貫通部からなる軟便拡散部14を複数有しているので、該軟便拡散部14を屈曲点として、軟便保持部10を湾曲することができ、着用者の肌へのフィット性を向上させることができる。例えば、着用者の股間部に軟便取りパッド1aを配した状態で着用した場合、
図5に示すように、軟便保持部10を該股間部の形状に応じて湾曲させることができる。
【0039】
積層部11は、嵩高シート12からなる層が積層するほど、該嵩高シート12間に軟便を取り込み易く、また軟便を保持する空間をより確保することができると考えられる。軟便の取り込み性及び保持性をより両立させる観点から、積層部11における嵩高シート12の積層数は、好ましくは1層以上6層以下、より好ましくは2層以上5層以下である。
【0040】
積層部11において対向する層間、すなわち嵩高シート12間は、
図3に示すように、接合部13において部分的に接合されている。積層部11の保形性をより確実に確保する観点から、接合部13は、軟便拡散部14が延びる方向と同じ方向に沿って線状をなしていることが好ましい。接合部13は、接着剤等の公知の接合手段によって形成することができる。例えば、接合部13は、ホットメルト接着剤等の接着剤を、長手方向Xに延びるように塗布することで形成することができる。「線状の接合部」には、塗布部と非塗布部とが混在するように形成された形態が含まれる。斯かる形態には、スパイラル状のように、非塗布部を有することで所定の方向に一定の幅を有する形態も含まれる。
接着剤を用いて接合部13を形成する場合、積層部11において対向する層間において、接着剤を1本の直線状又は波線状に塗布してもよく、塗布部と非塗布部とが混在するように間欠に塗布してもよい。接着剤塗布の例として、スパイラル状、オメガ状、カーテン状、ストライプ状等が挙げられる。
【0041】
軟便の取り込み性及び保持性をより両立させる観点から、積層部11の厚みT1(
図3参照)は、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上であり、また好ましくは40mm以下、より好ましくは35mm以下であり、また好ましくは5mm以上40mm以下、より好ましくは10mm以上35mm以下である。
【0042】
上記と同様の観点から、嵩高シート12の厚み(図示せず)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、また好ましくは15mm以下、より好ましくは13mm以下であり、また好ましくは1mm以上15mm以下、より好ましくは2mm以上13mm以下である。嵩高シート12の厚みは、積層部11の各層の厚みである。嵩高シート12を幾重にも折り返すことで積層部11が形成されている場合、嵩高シート12の厚みは、これを展開した上で測定する。当該シートの厚みは、非接触式レーザー変位計(例えば、KEYENCE社製レーザーヘッドLK-2100、変位計RV 3-55 R)を用いて測定する。厚み測定時の圧力は0.5g/cm2とする。測定は5回行い、その平均値を嵩高シート12の厚みとする。
【0043】
軟便の保持容量をより確実に確保する観点から、積層部11の坪量は、好ましくは100g/m2以上、より好ましくは120g/m2以上であり、また好ましくは500g/m2以下、より好ましくは450g/m2以下、さらに好ましくは400g/m2以下であり、また好ましくは100g/m2以上500g/m2以下、より好ましくは120g/m2以上450g/m2以下、さらに好ましくは120g/m2以上400g/m2以下である。
上記と同様の観点から、嵩高シート12の坪量は、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上であり、また好ましくは100g/m2以下、より好ましくは90g/m2以下であり、また好ましくは30g/m2以上100g/m2以下、より好ましくは40g/m2以上90g/m2以下である。
上記と同様の観点から、嵩高シート12の密度は、0.004g/cm3以上であることが好ましく、0.005g/cm3以上であることがさらに好ましく、またその上限は0.06g/cm3以下であることが好ましく、0.03g/cm3以下であることがさらに好ましい。嵩高シート12の密度は、嵩高シート12の坪量を嵩高シート12の厚みで除することによって算出される。
【0044】
上記と同様の観点から、積層部11の容積は、好ましくは200000mm3以上、より好ましくは250000mm3以上であり、また好ましくは60000mm3以下、より好ましくは55000mm3以下であり、また好ましくは20000mm3以上60000mm3以下、より好ましくは25000mm3以上55000mm3以下である。積層部11の容積は、軟便保持部10における積層部11全体の容積である。
【0045】
積層部11の容積は以下の方法により求める。
軟便保持部10から積層部11を取り出し、長さA(mm)、幅B(mm)、及び厚みT1(mm)を測定する。厚みT1は、積層部11を平板上に載せ、その上に平板上のガラス板を載せ、ガラス板を含めた荷重が49Paになるようにガラス板上に重りを均等に載せた上で、該積層部11の厚みT1を測定する。測定環境は温度20±2℃、相対湿度65±5%とする。測定機器にはマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-1000)を用いて、積層部11の側面(軟便拡散部14と対向する面)の画像(拡大画像)を得る。積層部11の側面が、マイクロスコープの観察視野に入りきらない程大きい場合は、マイクロスコープよりも低倍率の光学系と撮像素子との組み合わせで画像を取得する。画像を撮影する際、既知の寸法(スケール)のものを同時に写しこむ。次に、積層部11の側面の画像にスケールを合わせ、該積層部11の厚みを測定する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を、積層部の厚みT1とする。
次いで、前述した<繊維間距離の測定方法>と同様の方法によって、積層部11の坪量W(g/m2)と繊維の樹脂密度ρ(g/cm3)とを求める。
そして、坪量Wの単位を「g/mm2」、繊維の樹脂密度ρの単位を「g/mm3」に換算した上で、下記式(2)により、積層部11の容積を求める。
容積(mm3)=(A×B×T1)-(A×B×C×W/ρ)・・・(2)
A=長さ(長手方向Xの長さ)
B=幅(幅方向Yの長さ)
T1=厚み
W=坪量(g/mm2)
ρ=繊維の樹脂密度(g/mm3)
【0046】
軟便の保持容量をより確実に確保する観点から、軟便保持用構造体4における積層部11の寸法は以下の範囲内であることが好ましい。本明細書において「幅」とは幅方向Yにおける長さを意味する。
軟便保持部10における積層部11の合計幅は、軟便保持部10の幅W(
図2参照)に対して好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上であり、また好ましくは99%以下、より好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下であり、また好ましくは70%以上99%以下、より好ましくは75%以上95%以下、さらに好ましくは75%以上90%以下である。
個々の積層部11の幅W3(
図2参照)は、軟便保持部10の幅W(
図2参照)に対して好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、また好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下であり、また好ましくは5%以上40%以下、より好ましくは10%以上35%以下、さらに好ましくは10%以上30%以下である。
個々の積層部11の幅W3(
図2参照)は、好ましくは10mm以上、より好ましくは12mm以上であり、また好ましくは50mm以下、より好ましくは45mm以下、さらに好ましくは40mm以下であり、また好ましくは10mm以上50mm以下、より好ましくは12mm以上45mm以下、さらに好ましくは12mm以上40mm以下である。
【0047】
軟便の拡散性をより向上させる観点から、軟便保持用構造体4における軟便拡散部14の寸法は以下の範囲内であることが好ましい。
軟便保持部10における軟便拡散部14の合計幅は、軟便保持部10の幅W(
図2参照)に対して好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、また好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下であり、また好ましくは5%以上30%以下、より好ましくは10%以上25%以下、さらに好ましくは10%以上20%以下である。
個々の軟便拡散部14の幅W1(
図2参照)は、軟便保持部10の幅W(
図2参照)に対して好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上であり、また好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下であり、また好ましくは1%以上10%以下、より好ましくは2%以上8%以下、さらに好ましくは2%以上6%以下である。
個々の軟便拡散部14の幅W1(
図2参照)は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、また好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下、さらに好ましくは9mm以下であり、また好ましくは2mm以上15mm以下、より好ましくは3mm以上12mm以下、さらに好ましくは3mm以上9mm以下である。
【0048】
被覆シート2a,2bから軟便保持部10への軟便の移行性をより向上させる観点から、嵩高シート12は、被覆シート2a,2bに比して親水度が高いことが好ましく、肌対向面側に配される被覆シート2aに比して親水度が高いことがより好ましい。親水度は、例えば特開2015-142721号公報の記載の方法に従って、測定対象の部材又は部位から採取した繊維の水との接触角に基づき判断される。具体的には、親水度が高いことは接触角が小さいことと同義であり、親水度が低いことは接触角が大きいことと同義である。
上記と同様の観点から、嵩高シート12の前記接触角は、被覆シート2a,2bの前記接触角よりも値が小さいことが好ましい。その場合、嵩高シート12と被覆シート2a,2bとの接触角の差は、特に制限されないが、軟便の移行性をより向上させる観点から、好ましくは10度以上、より好ましくは20度以上である。
【0049】
軟便の移行性をより向上させる観点から、嵩高シート12の前記接触角は、好ましくは80度以下、より好ましくは70度以下である。
被覆シート2a,2bの前記接触角は、特に制限されないが、上記と同様の観点から、嵩高シート12の前記接触角よりも大きいことが好ましい。例えば、被覆シート2a,2bが親水性不織布である場合、該被覆シート2a,2bの前記接触角は、好ましくは90度以下、より好ましくは80度以下である。
【0050】
嵩高シート12の親水度を、被覆シート2a,2bの親水度よりも高くする観点から、嵩高シート12は、親水性の熱融着繊維を含んでいることが好ましい。親水性の熱融着繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル繊維等の、本来的に親水性の熱可塑性繊維でもよく、あるいは疎水性の熱可塑性繊維に親水化処理を施したものでもよく、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。後者の「親水化処理された熱可塑性繊維」としては、例えば、親水化剤が練り込まれた熱可塑性繊維、表面に親水化剤が付着した熱可塑性繊維、プラズマ処理が施された熱可塑性繊維等が挙げられる。親水化剤としては、衛生品用途に使用される一般的な親水化剤、例えば通常の界面活性剤等を用いることができる。「親水性」とは、繊維の水との接触角が90度未満となるものである。
【0051】
後述する軟便の取り込みをより速やかに行う観点から、嵩高シート12における親水性繊維の含有量は、嵩高シート100質量部中、好ましくは60質量部以上、より好ましくは80質量部以上である。
【0052】
エアスルー不織布からなる嵩高シート12は、その厚み方向に沿って構成繊維の繊維間距離が異なっていることがある。この理由は、繊維ウエブ又は不織布に気体や水蒸気を吹き付けてエアスルー不織布を製造する際、エアスルー不織布における気体や水蒸気が吹き付けられる面側が、その反対に位置する面側よりも繊維間距離が長くなることによる。
嵩高シート12が厚み方向に沿って構成繊維の繊維間距離が異なっている場合、軟便の取り込み性をより向上させる観点から、被覆シート2a,2bと隣接する嵩高シート12は、繊維間距離が長い方の面が該被覆シート2a,2bと対向していることが好ましい。
【0053】
嵩高シート12が厚み方向に沿って構成繊維の繊維間距離が異なっている場合、該嵩高シート12をその厚み方向に二等分すると、構成繊維の繊維間距離が長い方の領域と、短い方の領域とに区分される。これら両領域のうち、構成繊維の繊維間距離が短い方の領域における該繊維間距離が150μm以上であることが好ましい。斯かる構成により軟便の取り込み性をより向上させることができる。
上記と同様の観点から、前記両領域のうち、構成繊維の繊維間距離が短い方の領域と、該繊維間距離が長い方の領域との該繊維間距離の差は、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上であり、また好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは120μm以下であり、また好ましくは30μm以上180μm以下、より好ましくは50μm以上150μm以下、さらに好ましくは50μm以上120μm以下である。斯かる繊維間距離の差は、嵩高シート12をその厚み方向に二等分して2つの領域に区分し、これら両領域それぞれにおける繊維間距離を測定する点以外は、前述した<繊維間距離の測定方法>と同様の方法により測定される。
【0054】
前記両領域は、繊維間距離が異なるので、構成繊維の密度も異なっている。これに起因して、前述した<繊維間距離の測定方法>における嵩高シートの切断片の切断面において、構成繊維の多さ(密集度)が異なる2つの領域が観察される。具体的には、構成繊維が多い領域が「構成繊維の繊維間距離が短い方の領域」であり、構成繊維が少ない領域が「構成繊維の繊維間距離が長い方の領域」である。これら2領域は、肉眼でも識別可能である。
【0055】
嵩高シート12内への軟便の取り込み性及び保持性をより両立させる観点から、嵩高シート12は、構成繊維の繊度が互いに異なる複数の層で構成されていることが好ましい。このような嵩高シート12として、例えば、繊度が大きい方の構成繊維からなる層と、繊度が小さい方の構成繊維からなる層とが積層してなるシートが挙げられる。斯かる嵩高シート12では、繊度が大きい方の構成繊維からなる層から軟便をより容易に取り込ませることができ、繊度が小さい方の構成繊維からなる層に取り込んだ軟便をより安定して保持させることができる。
【0056】
上記と同様の観点から、嵩高シート12が、構成繊維の繊度が大きい方の層と、該繊度が小さい方の層とを有する場合、各層における構成繊維の繊度は以下の範囲内であることが好ましい。嵩高シート12が3層以上の層構造からなり、且つ構成繊維の繊度が3種類以上である場合、「構成繊維の繊度が大きい方の層」は「構成繊維の繊度が最も大きい層」に読み替え、且つ「構成繊維の繊度が小さい方の層」は「構成繊維の繊度が最も小さい層」に読み替えて、以下の好ましい範囲を適用することとする。
構成繊維の繊度が大きい方の層と該繊度が小さい方の層との該繊度の差は、好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは0.7dtex以上であり、また好ましくは7.0dtex以下、より好ましくは6.5dtex以下、さらに好ましくは6.0dtex以下であり、また好ましくは0.5dtex以上7.0dtex以下、より好ましくは0.7dtex以上6.5dtex以下、さらに好ましくは0.7dtex以上6.0dtex以下である。
構成繊維の繊度が大きい方の層における該繊度は、好ましくは2.5dtex以上、より好ましくは3.0dtex以上であり、また好ましくは10.0dtex以下、より好ましくは9.0dtex以下、さらに好ましくは8.0dtex以下であり、また好ましくは2.5dtex以上10.0dtex以下、より好ましくは3.0dtex以上9.0dtex以下、さらに好ましくは3.0dtex以上8.0dtex以下である。
構成繊維の繊度が小さい方の層における該繊度は、好ましくは1.2dtex以上、より好ましくは1.7dtex以上であり、また好ましくは4.0dtex以下、より好ましくは3.5dtex以下、さらに好ましくは3.0dtex以下であり、また好ましくは1.2dtex以上4.0dtex以下、より好ましくは1.7dtex以上3.5dtex以下、さらに好ましくは1.7dtex以上3.0dtex以下である。
【0057】
軟便の取り込み性をより向上させる観点から、嵩高シート12が、繊度が大きい方の構成繊維からなる層と、繊度が小さい方の構成繊維からなる層とを有する場合、繊度が大きい方の構成繊維からなる層が積層部11の肌対向面を形成していることが好ましい。
【0058】
構成繊維の繊度が互いに異なる複数の層で構成された嵩高シート12は、繊度が互いに異なる繊維ウエブを積層した積層ウエブに、エアスルー方式による熱処理を行うことで得られる。
【0059】
上記と同様の観点から、嵩高シート12が、その厚み方向において構成繊維の繊度が同じである場合、該構成繊維の繊度は、好ましくは2.5dtex以上、より好ましくは3.0dtex以上であり、また好ましくは10.0dtex以下、より好ましくは9.0dtex以下、さらに好ましくは8.0dtex以下であり、また好ましくは2.5dtex以上10.0dtex以下、より好ましくは3.0dtex以上9.0dtex以下、さらに好ましくは3.0dtex以上8.0dtex以下である。
【0060】
本実施形態の軟便取りパッド1aは、前述したように非肌対向面に固定部7を有している。着用時において軟便取りパッド1aの位置ずれをより抑制する観点から、固定部7は、長手方向Xにおいて積層部11と重ならない位置に配されていることが好ましい。斯かる構成は、特に軟便取りパッド1aが一対の防漏カフ6,6を備えている場合に、該防漏カフ6の長手方向Xに沿う収縮に伴って前記の固定が外れることを抑制するのに有効である。
本実施形態の軟便取りパッド1aは、積層部11よりも長手方向X外方に配されている。より具体的には、軟便保持部10の長手方向Xの両端部それぞれから該長手方向X外方に延出した第2シート2bの部分に配されている(
図1及び
図2参照)。
【0061】
上述した実施形態において、積層部11及び軟便拡散部14それぞれは、長手方向Xにおける軟便保持部10の全長に延在するものであったが、積層部11及び軟便拡散部14の形態はこれに限定されない。例えば、
図6(a)~(e)に示すように、積層部11及び軟便拡散部14それぞれは、長手方向Xにおける軟便保持部10の全長に延在していなくともよい。
図6(a)及び(b)に示す軟便保持部10a,10bでは、長手方向Xに延びる軟便拡散部14が幅方向Yに間欠的に配されており、該軟便拡散部14の長手方向X外方において、積層部11が軟便保持部10aの幅方向Y全長に連続している。
図6(a)に示す軟便保持部10aは、同じ幅及び長さを有する複数の軟便拡散部14が幅方向Yに等間隔で配されている。
図6(b)に示す軟便保持部10bは、同じ長さを有し、且つ幅が互いに異なる複数の軟便拡散部14を有している。
図6(c)~(e)に示す軟便保持部10c,10d,10eでは、複数の軟便拡散部14が長手方向X及び幅方向Yそれぞれに間欠的に配されており、該軟便拡散部14間において積層部11が連続している。
図6(c)に示す軟便保持部10cでは、長手方向Xに間欠的に並んだ軟便拡散部14の横列が幅方向Yに等間隔で並んでおり、幅方向Yに隣り合う該横列どうしは、長手方向Xにおける軟便拡散部14の配置位置が互いに一致している。
図6(d)及び(e)に示す軟便保持部10d,eでは、長手方向Xに間欠的に並んだ軟便拡散部14の横列が幅方向Yに等間隔で並んでおり、幅方向Yに隣り合う該横列どうしは、軟便拡散部14の配置位置が、長手方向Xに半ピッチ分ずれている。即ち、
図6(d)及び(e)に示す軟便保持部10d,eでは、複数の軟便拡散部14が千鳥格子状に分散配置されている。
以上のように、軟便拡散部14は、幅方向Yにおける積層部11間に位置してもよく、長手方向X及び幅方向Yそれぞれにおける積層部11間に位置してもよい。また、積層部11は、軟便拡散部14によって分断されている部分を有していてもよく、軟便拡散部14間で連続している部分を有していてもよい。
【0062】
軟便保持部10へ軟便をより容易に取り込ませる観点から、被覆シート2a,2bは、複数の開孔を有していることが好ましく、肌対向面側に配される第1シート2aが、複数の開孔を有していることがより好ましい。斯かる「開孔」は、不織布等のシートにおける構成繊維間に存在する不定形の開孔と区別される。複数の開孔は、被覆シート2a,2bの平面視において散点状に形成されていることが好ましい。
上記と同様の観点から、被覆シート2a,2bにおける開孔の大きさ、即ち開口幅は、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下であり、また好ましくは1mm以上10mm以下、より好ましくは3mm以上8mm以下である。開孔加工には、例えば、カッターロールとアンビルロールとを備えた切断装置であって、カッターロールの外周面に、開孔の輪郭に対応する形状の切断刃を有するもの等を用いることができる。
【0063】
被覆シート2a,2bには、当該技術分野において従来用いられている液透過性のシートを特に制限なく用いることができる。液透過性シートは、公知の各種製法により製造された単層又は多層構造の不織布、開孔フィルム等を用いることができる。例えばティッシュペーパー等の紙、親水性不織布(親水化した不織布、親水性繊維を含む不織布等)、及び開孔を有する不織布等の繊維シート、並びに開孔フィルム等が挙げられる。開孔を有する不織布は、親水性不織布であってもよく、親水性不織布以外の撥水性不織布であってもよい。撥水性不織布は、前述した水との接触角が90度超の構成繊維からなる不織布、又は該構成繊維を50質量%超含む不織布である。
本実施形態においては、軟便保持部10の肌対向面に配される第1シート2aが液透過性シートである。
また、軟便保持部10の非肌対向面に配される第2シート2bが液透過性シートである。
本実施形態の第1シート2a及び第2シート2bの各形成材料は、同一の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
第1シート2a及び第2シート2bが液透過性シートであることで、尿が軟便保持用構造体4を透過する。
【0064】
上述した実施形態における軟便取りパッド1aの製造方法について説明する。先ず、複数枚の一方向に長い嵩高シート12を重ね、この重ね合わせによって対向するシートどうしを前記接着剤によって接合し、嵩高シート12の積層体を形成する。斯かる積層体が積層部11となる。前記「対向するシートどうし」とは、積層部11を形成する各層となる部分である。この積層部11を複数作製した後、これら積層部の長手方向が一致するように間隔を空けて配置することにより、積層部11と軟便拡散部14とを有する軟便保持部10が得られる。得られた軟便保持部10の一方の面側に第1シート2aを、該軟便保持部10の他方の面側に第2シート2bをそれぞれ配して、軟便保持部10の表面を被覆シート2a,2bによって被覆する。これにより、軟便保持用構造体4が得られる。この軟便保持用構造体4における第1シート2aが配された面に、防漏カフ6,6を設けることで、軟便取りパッド1aが得られる。
【0065】
軟便拡散部14が、軟便保持部10の一方の面側に開口した凹部となっている場合、積層部11よりも平面方向に連続した嵩高シート12を一枚又は複数枚用意し、該連続した嵩高シート12と積層部11とを重ね合わせることで、前記凹部からなる軟便拡散部14を形成することができる。斯かる場合、前記連続した嵩高シート12が軟便拡散部14の底部を形成する。
【0066】
次に、本発明の軟便保持用構造体を備える吸収性物品の他の実施形態(第2実施形態)について、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7及び
図8に示すおむつ1bについては、
図1~
図5に示す第1実施形態の吸収性物品(軟便取りパッド1a)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前述した実施形態についての説明が適宜適用される。
【0067】
図7には伸長状態のおむつ1bの平面図が示されている。本実施形態のおむつ1bは、軟便保持用構造体4と、吸水性繊維33及び吸水性ポリマー31を有する吸収体24とを備えている。おむつ1bにおいて、吸収体24の肌対向面側には、軟便保持用構造体4が配置されている。本実施形態のおむつ1bは、表面シート23及び裏面シート25を備え、さらにこれら両シート23,25間に位置する吸収体24及び軟便保持部10を備えている。軟便保持部10の厚み方向の両面のうち肌対向面は、被覆シート2aである表面シート23によって被覆されており、該軟便保持部10の非肌対向面側は別の被覆シート2bによって被覆されている。軟便保持用構造体4は、吸収体24の肌対向面側、より具体的には後述する上側吸収体35aの肌対向面側コアラップシート27a上に配置されている。
【0068】
おむつ1bは、着用時に、着用者の腹側に配される腹側部A1と、着用者の背側に配される背側部B1と、該腹側部A1及び該背側部B1の間に位置する股下部C1とを有している。おむつ1bは、腹側部A1から股下部C1を介して背側部B1に延びる方向に対応する縦方向X1及び該縦方向X1と直交する横方向Y1を有している。おむつ1bの縦方向X1は、軟便保持用構造体4の長手方向Xと一致し、おむつ1bの横方向Y1は、軟便保持用構造体4の幅方向Yと一致している。おむつ1bは、横方向Y1の長さを2等分して縦方向X1に延びる縦中心線CLに対してほぼ左右対称の形状を有している。
【0069】
本実施形態のおむつ1bは、縦方向X1において股下部C1付近に括れた部分を有し、腹側部A1及び背側部B1は、該括れた部分よりも広い幅を有している。また、背側部B1は、腹側部A1よりも広い幅を有している。
【0070】
おむつ1bは、表面シート23が肌対向面を形成しており、裏面シート25が非肌対向面を形成している。
表面シート23は、第1実施形態の軟便保持用構造体4における第1シート2aが、軟便保持部10の肌対向面の長手方向X及び幅方向Yそれぞれに延出したものであり、該軟便保持部10の肌対向面とともに、吸収体24において該軟便保持用構造体4と重なっていない部分の肌対向面を被覆している。また、表面シート23は、軟便保持用構造体4の縦方向X1に沿う両側縁から横方向Y1の外方に延出している。この延出部が、厚み方向Zに沿う軟便保持用構造体4の側部に配されていることによって、軟便保持用構造体4の側方表面が被覆されている。
吸収体24の非肌対向面側に配された裏面シート25は、吸収体24の非肌対向面の全域を被覆し、さらに吸収体24の長手方向Xに沿う両側縁それぞれから幅方向Yの外方に延出する延出部を有している。裏面シート25は、この延出部において、公知の接合手段によって後述するサイドシート26bと接合されている。公知の接合手段としては、例えば、接着剤、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等が挙げられる。
【0071】
吸収体24は、
図8に示すように、2層構造を有し、上側吸収体35aと、下側吸収体35bとを有している。上側吸収体35a及び下側吸収体35bはそれぞれ、尿等の体液の主たる吸液部位であり、該体液を吸収して保持する機能を有する吸収性コア30と、該吸収性コア30を被覆するコアラップシート27a,27b,27cとを有している。吸収性コア30は、吸水性繊維33及び吸水性ポリマー31を含んで構成されている。上側吸収体35aにおいて吸収性コア30は、その肌対向面の全域が、肌対向面側コアラップシート27aによって被覆されており、且つ非肌対向面の全域が、非肌対向面側コアラップシート27bによって被覆されている。下側吸収体35bにおいて吸収性コア30は、1枚のコアラップシート27cによって被覆されている。当該コアラップシート27cは、吸収性コア30の縦方向X
1に沿う両側縁から横方向Y
1の外方に延出し、その延出部が、吸収性コア30の上方に巻き上げられて、該吸収性コア30の肌対向面全域を被覆している。これらコアラップシート27a,27b,27cと吸収性コア30は、接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0072】
上側吸収体35a及び下側吸収体35bは、吸収性コア30が厚み方向Zに貫通する複数の非積繊部37を有している。上側吸収体35aにおける非積繊部37は、下側吸収体35bにおける非積繊部37と重なっている(
図8参照)。
【0073】
本実施形態のおむつ1bでは、
図7に示すように、吸収体24の縦方向X
1に沿う左右両側部に、少なくとも股下部C
1において着用時に着用者の肌側に向かって起立する一対の本体防漏カフ26,26が設けられている。本体防漏カフ26は、厚み方向Zにおいて表面シート23側を基端とし、着用者の肌側に自由端をなすように起立するものであり、その自由端には縦方向X
1に沿って弾性部材26aが伸長状態で配されている(
図8参照)。弾性部材26aは、少なくとも股下部C
1の縦方向X
1の全長に延び、本実施形態ではさらに、腹側部A
1及び背側部B
1それぞれの股下部C
1寄りの部分にも延びている。
一対の本体防漏カフ26,26それぞれは、弾性部材26aに加え、前記基端及び前記自由端を形成する1枚のサイドシート26bを含んで構成されている。当該サイドシート26bは、
図8に示すように、横方向Y
1において吸収体24の外方へ延出して、裏面シート25と接合されている。また、当該サイドシート26bは、軟便保持用構造体4の両側部に設けられた防漏カフ6を形成するカフ形成用シート6bの肌対向面上に配され、該カフ形成用シート6bと接着剤等を介して接合されている。
【0074】
本実施形態のおむつ1bにおいて、軟便保持用構造体4の肌対向面には、一対の防漏カフ6,6が設けられている。斯かる防漏カフ6は、おむつ1bの厚み方向Zにおいて軟便保持用構造体4と、本体防漏カフ26との間に配されている。即ち、防漏カフ6の肌対向面側に、本体防漏カフ26が配されている。
前記防漏カフ6は、該防漏カフ6を形成する弾性部材6a及びカフ形成用シート6bが、おむつ1bの縦方向X
1の略全長に延在している。防漏カフ6における弾性部材6aは、軟便保持用構造体4が配された領域にのみ伸縮性が発現されるように、長手方向Xにおける該領域の全長に伸長状態で配されている。すなわち、前記弾性部材6aは、軟便保持用構造体4が配された領域よりも長手方向X外方においては、非伸長状態で配されている。これにより、本実施形態の一対の防漏カフ6,6は、軟便保持用構造体4が配された領域において、着用者の肌側に自由端をなすように起立する。
図7においては、防漏カフ6における弾性部材6aのうち伸長状態で配された部分のみを図示している。
【0075】
おむつ1bは、上述した
図1~5に示す軟便取りパッド1aと同様に、該おむつ1bが具備する軟便保持用構造体4において軟便を速やかに吸収することができる。さらにおむつ1bは、軟便保持用構造体4の非肌対向面側に吸収体24を備えているので、他の吸収性物品を併用することなく、おむつ1bを単体で用いることができる。おむつ1bにおいて、例えば尿が排泄された場合、該尿は、表面シート23及び軟便保持用構造体4を透過して、吸収体24に吸収される。一方、軟便が排泄された場合、該軟便は、表面シート23を通過して、軟便保持用構造体4の内部に保持される。
【0076】
本実施形態のおむつ1bは、
図8に示すように、軟便保持用構造体4が吸収体24の肌対向面上に配されている。軟便保持用構造体4の位置ずれを抑制する観点から、軟便保持用構造体4と吸収体24とが積層した状態で一体化されていることが好ましい。軟便保持用構造体4と吸収体24とは、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段で一体化することができる。
【0077】
本実施形態のおむつ1bは、
図7に示すように、軟便保持用構造体4がおむつ1bの少なくとも股下部C
1の中央よりも縦方向X1において背側部B
1側に配されている。これにより、おむつ1bに排泄された軟便を容易に取り込むことができる。斯かる効果をより確実に奏させる観点から、軟便保持用構造体4は、縦方向X
1において股下部C
1の中央と、背側部B
1の中央との間に配置されていることが好ましい。
【0078】
軟便をより確実に保持する観点から、おむつ1bにおける軟便保持部10は、以下の寸法を具備することが好ましい。
軟便保持部10の縦方向X
1の長さL5(
図7参照)は、吸収体24の同方向X
1の長さL10(
図7参照)を基準(100%)として、好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上であり、また好ましくは85%以下、より好ましくは75%以下であり、また好ましくは15%以上85%以下、より好ましくは25%以上75%以下である。
軟便保持部10の縦方向X
1の長さL5(
図7参照)は、好ましくは100mm以上、より好ましくは150mm以上であり、また好ましくは400mm以下、より好ましくは350mm以下であり、また好ましくは100mm以上400mm以下、より好ましくは150mm以上350mm以下である。
軟便保持部10の横方向Y
1の長さW5(
図7参照)は、吸収体24の同方向Y
1の長さW10(
図7参照)基準(100%)として、好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上であり、また好ましくは85%以下、より好ましくは75%以下であり、また好ましくは35%以上85%以下、より好ましくは45%以上75%以下である。吸収体24の横方向Y
1の長さW10は、同方向Yにおける最大長さである。
軟便保持部10の横方向Y
1の長さW5(
図7参照)は、好ましくは100mm以上、より好ましくは120mm以上であり、また好ましくは200mm以下、より好ましくは180mm以下であり、また好ましくは100mm以上200mm以下、より好ましくは120mm以上180mm以下である。
【0079】
おむつ1bの各構成部材の形成材料について説明する。表面シート23は、上述した液透過性シートを用いることができる。裏面シート25としては、おむつ等の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができる。裏面シート25としては、液不透過性シートが好ましく、具体的には、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等が挙げられ、該樹脂フィルムは透湿性でもよい。なお、裏面シート25に関し、液不透過性とは、液を全く通さない性質と、少量ではあるが液を通す性質(液難透過性)との両方を含む概念である。裏面シート25は撥水性を有していてもよい。サイドシート26bとしては液不透過性シートが好ましく、例えば、液不透過性の不織布を用いることができる。コアラップシート27a,27b,27cとしては、液透過性シートを用いることができる。
【0080】
吸収体24に含まれる吸水性材料としては、この種の吸収性物品の吸収体において使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば吸水性繊維33及び吸水性ポリマー31が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。吸水性繊維33としては、本来的に親水性の繊維でもよく、あるいは疎水性繊維を親水化処理した繊維でもよいが、前者の繊維が特に好ましい。本来的に親水性の繊維としては、天然系の繊維、セルロース系の再生繊維又は半合成繊維が好ましい例として挙げられ、好ましいものとして、パルプ、レーヨンを例示できる。パルプには、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプなどの木材パルプの他に、木綿パルプ、藁パルプなどの非木材パルプなどがあるが、特に制限されない。また、セルロース繊維の分子内及び/又は分子間を架橋させた架橋セルロース繊維、木材パルプをマーセル化処理して得られるような嵩高性のセルロース繊維を用いてもよい。吸水性ポリマー31としては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでもよい。粒子状の吸水性ポリマーの形状は特に限定されず、例えば、球状、塊状、俵状、不定形状であり得る。吸水性ポリマーは、典型的には、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を主体とする。
【0081】
本実施形態のおむつ1bの製造方法を説明する。先ず、裏面シート25、吸収体24、第2シート2b、軟便保持部10をこの順で重ねて配置する。吸収体24及び第2シート2b、並びに第2シート2b及び軟便保持部10は、互いにホットメルト接着剤等の公知の接合手段で固定されていることが好ましい。次いで、前記軟便保持部10の肌対向面と、吸収体24の肌対向面とを表面シート23で被覆し、軟便保持部10と表面シート23とを接着剤等で固定する。次いで、軟便保持部10の長手方向に沿う両側部に一対の防漏カフ6,6を配し、この防漏カフ6のカフ形成用シート6bと、軟便保持部10上の表面シート23とを接合する。また、カフ形成用シート6bにおける軟便保持部10から縦方向X1及び横方向Y1に延出した部分と、吸収体24の肌対向面とを接合する。これにより、裏面シート25、吸収体24、軟便保持用構造体4、及び一対の防漏カフ6,6を備える複合体が得られる。次いで、前記複合体の縦方向X1に沿う両側部に一対の本体防漏カフ26,26を配し、該複合体における裏面シート25や防漏カフ6に該本体防漏カフ26のサイドシート26bを接着剤等で固定する。このようにして、おむつ1bが得られる。
【0082】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されない。
例えば、上述した第1実施形態の軟便取りパッド1aは、他の吸収性物品のインナーとして併用される部材であるが、該他の吸収性物品としては、展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、失禁パッド等が挙げられる。
【0083】
また、軟便拡散部14は、軟便保持部10の少なくとも一方の面側に開口した凹部となっている場合、該軟便拡散部14は、軟便保持部10の厚み方向両面の一方側に形成されていてもよく〔
図9(a)参照〕、該両面それぞれに形成されていてもよい〔
図9(b)参照〕。
図9(a)に示す軟便取りパッド1cでは、積層部11を形成する嵩高シート12のうち、該積層部11の厚み方向両面の一方側を形成する嵩高シート12aが平面方向に連続しており、該連続した嵩高シート12aが軟便拡散部14である凹部の底部を形成している。
図9(b)に示す軟便取りパッド1dでは、積層部11を形成する嵩高シート12のうち、該積層部11の厚み方向両面を形成する嵩高シート12よりも同方向内方側に位置する嵩高シート12bが平面方向に連続しており、該連続した嵩高シート12が軟便拡散部14である凹部の底部を形成している。
【0084】
また、上述した第2実施形態において、おむつ1bは、縦方向X1において股下部C1付近に括れた部分を有し、腹側部A1及び背側部B1は、該括れた部分よりも広い幅を有していたが、おむつ1bは、平面視形状が長方形等の四角形であってもよい。
また、上述した第2実施形態において、吸収体24は、上側吸収体35a及び下側吸収体35bが重なった2層構造を有していたが、単層構造を有していてもよい。
また、上述した第2実施形態において、おむつ1bは、軟便保持部10の肌対向面を被覆する被覆シート2aである表面シート23を具備していたが、該被覆シート2aとともに、該被覆シート2aとは別体の表面シート23を具備していてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1a 軟便取りパッド
1b おむつ
2a,2b 被覆シート
10 軟便保持部
11 積層部
12 嵩高シート
13 接合部
14 軟便拡散部
23 表面シート
24 吸収体
25 裏面シート
X 長手方向
Y 幅方向
Z 厚み方向