(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】車両用浮力発生装置
(51)【国際特許分類】
A62B 99/00 20090101AFI20240925BHJP
B63C 9/00 20060101ALI20240925BHJP
B63C 9/15 20060101ALI20240925BHJP
B63C 9/18 20060101ALI20240925BHJP
B63C 9/13 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A62B99/00 C
B63C9/00 A
B63C9/15 100
B63C9/18 A
B63C9/18 C
B63C9/13 100
(21)【出願番号】P 2020146609
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0016103
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】車 東 垠
(72)【発明者】
【氏名】黄 珍 皓
(72)【発明者】
【氏名】李 尚 憲
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107472178(CN,A)
【文献】中国実用新案第207594862(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0130580(US,A1)
【文献】中国実用新案第202923868(CN,U)
【文献】登録実用新案第3175051(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 99/00
B63C 9/00-9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り外し可能に設置されたハウジングと、
前記ハウジングに設置され、膨張時に前記ハウジングの外部に展開されて広げられるチューブと、作動時に前記チューブが膨張するように膨張ガスを供給するガス供給器とからなる浮力発生部と、
前記ハウジングに設けられ、作動時に前記チューブが展開されて浮力によって水中から浮上する場合には搭乗者が前記チューブと一緒に浮上することができるようにする取っ手を備えるハンドル部と、を含
み、
搭乗者が前記ハンドル部をグリップして加える外力が前記ガス供給器へ伝達され、前記ガス供給器が膨張ガスを前記チューブへ供給することにより前記チューブが展開されることを特徴とする車両用浮力発生装置。
【請求項2】
前記ハンドル部は、搭乗者がグリップ時に圧力を加えると、外力が加わる方向に移動するトリガーを含み、前記トリガーの移動時に前記ガス供給器が連動して作動することを特徴とする請求項1に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項3】
前記トリガーには、前記トリガーが移動する方向に収縮した後に復元する弾性力を持つ弾性体が設けられ、搭乗者が前記トリガーをグリップすると、前記弾性体が収縮した後に復元して負圧を発生させ、負圧が前記ガス供給器へ伝達されて前記ガス供給器を作動させることを特徴とする
請求項2に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項4】
前記ハンドル部は、圧力が加わる方向に形態が変形する変形部を含み、前記トリガーに加わる圧力が前記変形部に伝達されると、前記変形部の体積が減少し、前記ガス供給器は、前記変形部の減少した体積に該当する圧力の伝達を受けて作動することを特徴とする
請求項2に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項5】
前記ハンドル部の内部には、前記変形部と前記ガス供給器との間に連結され、前記変形部によって発生した圧力を前記ガス供給器へ伝達する流路である圧力伝達部が形成されたことを特徴とする
請求項4に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項6】
前記圧力伝達部は、断面積の狭い微細管で形成され、前記トリガーに加えられた圧力よりも大きい力を前記ガス供給器へ伝達することを特徴とする
請求項5に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項7】
前記変形部は、蛇腹管の形状であり、一端が前記トリガーに連結されてシールされ、他端は前記圧力伝達部に連結されてシールされることにより、前記変形部の減少した体積に該当する圧力が損失することなく前記圧力伝達部を介して前記ガス供給器へ伝達されることを特徴とする
請求項5に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項8】
前記ハンドル部は、前記ガス供給器と前記チューブとが連結される部位に臨界圧力超過の圧力を受けると、開放されてチューブへ膨張ガスを供給するクロージャーを含み、
前記ガス供給器が作動して膨張ガスを排出する場合、前記クロージャーが膨張ガスの圧力によって開放され、前記クロージャーを介して前記チューブに膨張ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項9】
前記ハンドル部は、前記ガス供給器の外側に、前記ガス供給器をシールする圧力伝達素子が設けられ、前記圧力伝達素子は、搭乗者が前記ハンドル部をグリップするときに加わる圧力を前記ガス供給器へ伝達して前記ガス供給器を作動させ、前記ガス供給器の内圧が
臨界圧力を超える場合、前記クロージャーが開放されることを特徴とする
請求項8に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項10】
一端が前記ハウジングに連結され、他端は車両のボディに連結され、前記チューブが展開されると前記ハウジングとの連結が解除される連結線をさらに含むことを特報とする請求項1に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項11】
前記連結線は、前記ハンドル部に連結され、搭乗者が前記ハンドル部をグリップするときに圧力によって前記ハウジングとの連結が解除されることを特徴とする
請求項10に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項12】
前記ハウジングの外側面には、前記チューブが膨張する場合、前記チューブが前記ハウジングを突き抜けて外部に展開される引裂き線(tear line)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項13】
前記ハウジングには照明モジュールが設けられ、車両の内部空間に設置された位置を視覚的に認識することができることを特徴とする請求項1に記載の車両用浮力発生装置。
【請求項14】
一端が前記ハウジングに連結され、他端は前記車両のボディに連結され、前記チューブが展開されると前記ハウジングとの連結が解除される連結線をさらに含み、
前記照明モジュールは電力を供給するバッテリーを含み、バッテリーは前記連結線に連結されて充電されることを特徴とする
請求項13に記載の車両用浮力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り外し可能に備えられ、浸水事故が発生すると、車両と分離され、搭乗者の簡単な操作で作動し、チューブが膨張して浮力を発生することにより、搭乗者を水面上に浮上させることができる車両用浮力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水上運送手段は、事故に備えて、気体が充填された様々な安全装置を備えている。例えば、船舶は、救命用チューブが備えられており、搭乗者が救命胴衣を着用した状態で搭乗して水に溺れた場合には水泳の未熟な人でも水面上に浮上することができる。しかし、車両が水深の深い川、湖、海などに浸水してしまう事故が発生した場合、緊急状況に適切な対処が難しいため人身事故につながるおそれがある。特に、車両に搭乗した搭乗者が救命胴衣を着て搭乗したり、車両に緊急状況のためのレスキューチューブを備えたりすることは極めて稀である。また、浸水事故が発生した場合、車体の重量によって、車両は水中に沈む。そのため、水泳の未熟な搭乗者の場合は、水面上に浮上できないため怪我または死亡する事故が発生するおそれがある。
【0003】
水上用救命装置は、気体の浮力を利用して水中から浮上することができる簡単な構造を持つ。しかし、これらの従来の浮力発生装置は、水上運送手段用に開発されており、車両に適した車両用浮力発生装置は未だ存在していない。特に、車両を搭乗する搭乗者が救命胴衣などの保護装備を着用することを車両に適用するには多くの困難が存在する。したがって、頻繁に発生する浸水事故に備え、未来型都市に発生する可能性のある都市洪水に備えるために、車両に適した世界初の車両用浮力発生装置であって、浸水事故の発生時にレスキューチューブ機能を有する車両用浮力発生装置が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、車両に備えられ、浸水事故の発生時に車両と分離可能で、簡単な操作でチューブを膨張させて、浮力により搭乗者を水面上に浮上させることができる車両用浮力発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用浮力発生装置は、車両に取り外し可能に設置されたハウジングと、前記ハウジングに設置され、膨張時に前記ハウジングの外部に展開されて広げられるチューブと、作動時に前記チューブが膨張するように膨張ガスを供給するガス供給器とからなる浮力発生部と、前記ハウジングに設けられ、作動時に前記チューブが展開されて浮力によって水中から浮上する場合には搭乗者が前記チューブと一緒に浮上することができるようにする取っ手を備えるハンドル部と、を含むことを特徴とする。
【0006】
搭乗者が前記ハンドル部をグリップして加える外力が前記ガス供給器へ伝達され、前記ガス供給器が膨張ガスを前記チューブへ供給することにより前記チューブが展開されることを特徴とする。
【0007】
前記ハンドル部は、搭乗者がグリップ時に圧力を加えると、外力が加わる方向に移動するトリガーを含み、前記トリガーの移動時に前記ガス供給器が連動して作動することを特徴とする。
【0008】
前記トリガーには、前記トリガーが移動する方向に収縮した後に復元する弾性力を持つ弾性体が設けられ、搭乗者が前記トリガーをグリップすると、前記弾性体が収縮した後に復元して負圧を発生させ、負圧が前記ガス供給器へ伝達されて前記ガス供給器を作動させることを特徴とする。
【0009】
前記ハンドル部は、圧力が加わる方向に形態が変形する変形部を含み、前記トリガーに加わる圧力が前記変形部に伝達されると、前記変形部の体積が減少し、前記ガス供給器は、前記変形部の減少した体積に該当する圧力の伝達を受けて作動することを特徴とする。
【0010】
前記ハンドル部の内部には、前記変形部と前記ガス供給器との間に連結され、前記変形部によって発生した圧力を前記ガス供給器へ伝達する流路である圧力伝達部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
前記圧力伝達部は、断面積の狭い微細管で形成され、前記トリガーに加えられた圧力よりも大きい力を前記ガス供給器へ伝達することを特徴とする。
【0012】
前記変形部は、蛇腹管の形状であり、一端が前記トリガーに連結されてシールされ、他端は前記圧力伝達部に連結されてシールされることにより、前記変形部の減少した体積に該当する圧力が損失することなく前記圧力伝達部を介して前記ガス供給器へ伝達されることを特徴とする。
【0013】
前記ハンドル部は、前記ガス供給器と前記チューブとが連結される部位に臨界圧力超過の圧力を受けると、開放されてチューブへ膨張ガスを供給するクロージャーを含み、前記ガス供給器が作動して膨張ガスを排出する場合、前記クロージャーが膨張ガスの圧力によって開放され、前記クロージャーを介して前記チューブに膨張ガスを供給することを特徴とする。
【0014】
前記ハンドル部は、前記ガス供給器の外側に、前記ガス供給器をシールする圧力伝達素子が設けられ、前記圧力伝達素子は、搭乗者が前記ハンドル部をグリップするときに加わる圧力を前記ガス供給器へ伝達して前記ガス供給器を作動させ、前記ガス供給器の内圧が臨界圧力を超える場合、前記クロージャーが開放されることを特徴とする。
【0015】
一端が前記ハウジングに連結され、他端は車両のボディに連結され、前記チューブが展開されると前記ハウジングとの連結が解除される連結線をさらに含むことを特報とする。
【0016】
前記連結線は、前記ハンドル部に連結され、搭乗者が前記ハンドル部をグリップするときに圧力によって前記ハウジングとの連結が解除されることを特徴とする。
【0017】
前記ハウジングの外側面には、前記チューブが膨張する場合、前記チューブが前記ハウジングを突き抜けて外部に展開される引裂き線(tear line)が設けられることを特徴とする。
【0018】
前記ハウジングには照明モジュールが設けられ、車両の内部空間に設置された位置を視覚的に認識することができることを特徴とする。
【0019】
一端が前記ハウジングに連結され、他端は前記車両のボディに連結され、前記チューブが展開されると前記ハウジングとの連結が解除される連結線をさらに含み、前記照明モジュールは電力を供給するバッテリーを含み、バッテリーは前記連結線に連結されて充電されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両用浮力発生装置は、車両に設置されるので、浸水事故の発生時に搭乗者の簡単な操作によって作動して浮力を提供して浸水事故の状況で搭乗者を水面上に浮上させることができ、事故を予防することができるという効果がある。また、搭乗者がハンドル部を把持しながら、発生する圧力を効果的に伝達する構造を備えており、製作及び使用が容易で、製造コストが低く、すべての車両に適用できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による車両用浮力発生装置の斜視図である。
【
図2】本発明による車両用浮力発生装置の内部を示す図である。
【
図3】本発明による車両用浮力発生装置が車両に露出した状態を示す図である。
【
図4】本発明による車両用浮力発生装置が作動する様子を示す図である。
【
図5】本発明による車両用浮力発生装置の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は様々な形態で実施でき、本明細書の実施態様に限定されるものではない。以下、添付図面を参照して、本発明の車両用浮力発生装置を説明する。各図面に示された同一の参照符号は、同一の部材を示す。
【0023】
本発明は、車両が浸水した場合、搭乗者が水中から水面上に浮上することができるように浮力を提供する車両用浮力発生装置に関する発明である。既存の救命浮力発生装置とは異なり、世界で初めて車両に内蔵されたもので、浸水事故の発生時に搭乗者の緊急脱出を支援して人身事故を予防することができる装置である。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態で、車両用浮力発生装置の斜視図である。
図1を参照すると、車両用浮力発生装置は、ハウジング100、浮力発生部200、及びハンドル部300(符号300は
図2参照)で構成される。ハウジング100は、本発明の車両用浮力発生装置の外観を構成し、車両に取り外し可能に設置できる。ハウジング100は、車両の室内空間または車体に設置されているが、浸水事故が発生した場合には、搭乗者が使用できるように外部に露出する。車両は、浸水を検知するレインセンサー、停電センサーなどを含むことができる。平常時にハウジング100が搭乗者に露出した状態で形成されると、室内空間の活用に制限があるので、ハウジング100は、平常時には車両に保管されているが、前記センサーによって、車両が浸水したことを検知すると、搭乗者が容易に使用できるようにハウジング100が露出するように構成される。
【0025】
浮力発生部200は、作動の際に水中で浮力を提供して搭乗者が水面上に浮き上がることができるように浮力を発生させる構成である。浮力発生部200はハウジング100の内部に設置される。浮力発生部200は、チューブ210及びガス供給器220で構成される。
【0026】
チューブ210は、平常時にはハウジング100に折り畳まれた状態で設けられているが、膨張ガスが供給されて膨張すると、ハウジング100の外部に展開されて広げられることにより、浮力を提供する。チューブ210が膨張する場合、ハウジング100を突き抜けて外部に露出するように、ハウジング100の外側には、破れやすい縫い目のような展開部位が形成される。
【0027】
ガス供給器220は、内部に膨張ガスを保管して作動時にチューブ210に膨張ガスを供給する構成である。膨張ガスは、高圧で圧縮されてガス供給器220に保管され、チューブ210が急速に展開できる。ガス供給器220は、膨張ガスが漏れないようにシールされなければならず、膨張ガスをチューブ210へ供給するために一側がチューブ210と連結されるように構成される。ガス供給器220は、外力によって体積が減少すると、内部の膨張ガスの圧力が増加して、チューブ210へ膨張ガスを排出する方式で作動する。
【0028】
ハンドル部300は、ハウジング100に設けられ、搭乗者が水中から浮き上がることができるように取っ手を提供する構成である。搭乗者が把持しやすい形態で構成され、水中で搭乗者が手で把持すると、浮力発生部200から発生する浮力によって搭乗者が水面上に浮き上がる。図示の如く、ハンドル部300は、中空の形状をし、搭乗者が把持しやすい形態を有することが好ましい。
【0029】
図2は、本発明の車両用浮力発生装置の内部を示す図である。
図2を参照すると、ハンドル部300は、トリガー310、圧力伝達部330、変形部320及び弾性体340を含み、浮力発生部200には、圧力伝達素子240とクロージャー230が形成される。車両用浮力発生装置は、搭乗者がハンドル部300をグリップすることにより作動する。搭乗者が手でハンドル部300をグリップすると、グリップ(gripping)による圧力がガス供給器220へ伝達される。ガス供給器220は、前記圧力によって作動して膨張ガスをチューブ210へ供給し、これによりチューブ210が展開されて浮力を発生させる。
【0030】
ハンドル部300にはトリガー310が設けられ、トリガー310には弾性体340が形成される。トリガー310は、搭乗者が加える圧力方向に移動することができ、
図2において上下に移動する。トリガー310が移動しながら、ガス供給器220が連動して作動する。弾性体340は、トリガー310が移動する方向に外力を受けると収縮し、弾性力によって復元できる。よって、搭乗者が手でトリガー310をグリップすると、トリガー310が移動しながら弾性体340が収縮する。弾性体340によって収縮した後に、元の状態に復元する力である弾性力が発生するが、復元力が負圧を発生させる。負圧がガス供給器220へ伝達されると、ガス供給器220が収縮して作動し、膨張ガスをチューブ210へ供給する。このようにトリガー310と弾性体340の簡単な構成で、チューブ210を展開させることができるので、製作及び使用が容易であるという利点がある。
【0031】
ハンドル部300は変形部320をさらに含む。変形部320は、圧力を受けると、その方向に形態が変形するか或いはその方向に移動する。変形部320が変形する場合には、トリガー310に加わる圧力が伝達されると、変形部320の体積が減少し、減少する体積に該当する圧力がガス供給器220へ伝達される。前記圧力を受けると、ガス供給器220は、体積が縮小され、内部の膨張ガスの圧力が増加し、チューブ210へ排出できる。
【0032】
また、ハンドル部300は圧力伝達部330をさらに含む。圧力伝達部330は、変形部320とガス供給器220との間に連結され、変形部320によって発生した圧力をガス供給器220へ伝達する。圧力伝達部330は、圧力を効果的に伝達するために、断面積の狭い微細管で形成できる。これは、圧力が一定である場合、流体の断面積が狭くなると力が増加する原理を利用して、ガス供給器220に強い力を提供する。ガス供給器220は、強い力によって収縮し、内部の膨張ガスの圧力が増加してチューブ210へ膨張ガスを供給する。よって、搭乗者が緊急の状況で、トリガー310に小さな力を加えるだけで、ガス供給器220が容易に作動する。そのため、事故を予防できるという利点がある。微細管は、断面積がハンドル部300の断面積よりも小さく、且つ力を伝達するのに十分な程度に形成される。
【0033】
変形部320は、蛇腹管の形状を有する。変形部320の一端はトリガー310に連結されてシールされ、変形部の他端は圧力伝達部330に連結されてシールされる。すなわち、変形部320の両端はトリガー310と圧力伝達部330にシールされる。変形部320をシールして、トリガー310が移動する変位が変形部320の変形量として全て反映され、トリガー310に加わる圧力が圧力伝達部330を介してガス供給器220へ伝達される。圧力を損失することなく伝達して搭乗者が小さな圧力を加えても、ガス供給器220が作動し、緊急状況下で容易に利用することができる。
【0034】
また、浮力発生部200はクロージャー230をさらに含む。クロージャー230は、ガス供給器220とチューブ210とが連結される部位に設けられ、一定の臨界圧力を超える圧力を受けると、開放されて膨張ガスがチューブ210へ排出される。ガス供給器220が作動して膨張ガスの圧力が増加すると、膨張ガスの排出圧がクロージャー230の臨界圧力を超えて、クロージャー230が開放される。膨張ガスは、クロージャー230を介してチューブ210に流入して展開され、搭乗者に浮力を提供することができる。
【0035】
また、ハンドル部300は圧力伝達素子240をさらに含む。圧力伝達素子240は、搭乗者がハンドル部300に加える圧力をガス供給器220へ伝達する機能を行う。圧力伝達素子240は、ガス供給器220の外側に設けられ、平常時にはガス供給器220をシールする。搭乗者がハンドル部300をグリップする場合、搭乗者が加える圧力は、圧力伝達素子240へ伝達される。圧力伝達素子240は、圧力を受けてガス供給器220を外側から加圧して内圧を増加させることにより、クロージャー230が開放されて、チューブ210へ膨張ガスを供給する。または、圧力伝達素子240の材質がフレキシブル(flexible)な材質からなり、ガス供給器220に連結され、搭乗者が加える圧力でガスがガス供給器220の内部へ流入するように構成できる。圧力伝達素子240によってガス供給器220の内圧が増加し、内圧がクロージャー230の臨界圧力を超えると、クロージャー230が開放されることにより浮力を発生させる。
【0036】
また、本発明の車両用浮力発生装置は、他端が車両のボディに連結され、チューブ210が展開されるとハウジング100との連結が解除される連結線400をさらに含む。浮力発生装置が失われないように連結線400がハウジング100と車両とを連結しているが、浸水状況の発生時に連結線400が分離されて搭乗者が使用できる。浮力発生装置が露出した状態で設けられると、意図せぬ外力によって誤作動して必要な状況で作動しない危険が発生するおそれがある。よって、連結線400は、浮力発生装置が車両に搭載されており、必要な状況でのみ搭乗者に露出するようにする。
【0037】
また、連結線400は、ハンドル部300に連結されて搭乗者がハンドル部300をグリップすると、圧力によってハウジング100との連結が解除されるように構成できる。よって、搭乗者は、緊急状況の際にハンドル部300をグリップすると、ハウジング100と車両が分離されるので、水面上に浮き上がることができる。ハンドル部300と連結線400は、物理的な構造で連結され、構造的に連結または分離されてもよく、電気的に接続されて電気信号によって連結または分離が可能であってもよい。
【0038】
また、ハウジング100の外側面には、チューブ210が膨張して外部に露出するようにする引裂き線(tear line)が設けられる。引裂き線は、弱い縫い目のように内部で一定レベル以上の力が作用すると破れやすくなり、チューブ210がハウジング100を突き抜けて外部に展開されることを容易にする。
【0039】
図示してはいないが、ハウジング100は照明モジュールをさらに含むことができる。照明モジュールは、発光装置を含むことにより、暗いところで光を出すことにより、搭乗者に視覚的な信号を提供することができる。浸水事故が曇りの日や夜に発生した場合、搭乗者が浮力発生装置の搭載位置を見つけ難い状況が発生するおそれがある。したがって、照明モジュールによって搭乗者が浮力発生装置の搭載位置を容易に把握できるため、事故を予防するという利点がある。また、照明モジュールは、上述した浸水を検知したセンサーと電気的に接続され、浸水が検知されると光を発光するように構成することもできる。浸水状況で自動的に光を発光して搭乗者が容易に使用できるようにする。照明モジュールは、連結線400によって充電できるように構成できる。照明モジュールに電力を供給するバッテリーが備えられ、バッテリーは連結線400に連結されて充電されるように構成できる。
【0040】
図3は本発明の車両用浮力発生装置が車両に露出した状態を示す図であり、
図4は本発明の車両用浮力発生装置が作動する様子を示す図であり、
図5は本発明の車両用浮力発生装置の使用状態を示す図である。
図3乃至
図5を参照して、本発明の車両用浮力発生装置が使用される状況を説明する。
【0041】
図3に示すように、本発明の浮力発生装置は、平常時には車両に搭載されているが、車両が浸水した状況が発生した場合には、搭乗者が容易に利用できるように露出する。このとき、連結線400を備えた場合、連結線400によって一端が車両に連結された状態で露出することができる。
図4を参照すると、搭乗者がハンドル部300を手で掴んでグリップすると、連結線400が分離される。連結線400が分離されることにより、ハウジング100と車両が分離され、グリップによって、上述したメカニズムで浮力発生部200が作動してチューブ210が展開される。チューブ210に膨張ガスが流入して展開されると、浮力が発生する。よって、
図5に示すように、搭乗者がハンドル部300を手で掴んでチューブ210と一緒に水面に浮上する。これにより、浸水事故の発生状況で搭乗者の人身事故が予防できる。
【0042】
以上、本発明の浮力発生装置を図示して説明したが、多様な改良及び変更を加え得ることは自明であろう。
【符号の説明】
【0043】
100 ハウジング
200 浮力発生部
210 チューブ
220 ガス供給器
230 クロージャー
240 圧力伝達素子
300 ハンドル部
310 トリガー
320 変形部
330 圧力伝達部
340 弾性体
400 連結線