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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】樹脂組成物とその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/20 20060101AFI20240925BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240925BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240925BHJP
   C08F 210/14 20060101ALI20240925BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C08L23/20
C08L101/00
C08K3/04
C08F210/14
C08J5/18 CES
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020151338
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2021147606
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020045378
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小椎尾 健次
(72)【発明者】
【氏名】何 家成
(72)【発明者】
【氏名】清澤 真弓
(72)【発明者】
【氏名】植草 貴行
(72)【発明者】
【氏名】中村 友哉
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014129(JP,A)
【文献】特開2004-217689(JP,A)
【文献】特開2010-196012(JP,A)
【文献】特開2009-074072(JP,A)
【文献】特開2015-007216(JP,A)
【文献】特開2016-183207(JP,A)
【文献】特開2014-210869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)と炭素数2以上5以下のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)とを含み、下記要件(d)~(g)を満たす4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン重合体(-1)80.0~99.9質量部と
カーボンナノチューブである炭素系フィラー(B)0.1~20.0質量部(前記共重合体(A-1)前記炭素系フィラー(B)の合計を100質量部とする)とを含み、下記要件(a)~(c)を満たすことを特徴とする樹脂組成物(X):
要件(a);-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδがピーク値となる温度が、0℃以上60℃以下である。
要件(b);-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδのピーク値が、0.5以上5.0以下である。
要件(c);表面抵抗率が10^14Ω以下である。
要件(d);前記共重合体(A-1)は、前記構成単位(i)と前記構成単位(ii)との合計を100モル%として、前記構成単位(i)55~90モル%と、前記構成単位(ii)10~45モル%とを含む。
要件(e);前記共重合体(A-1)は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(Tm)が160℃以下であるか、または示差走査熱量計によって融点が測定されない。
要件(f);前記共重合体(A-1)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδがピーク値となる温度が、15℃以上45℃以下である。
要件(g);前記共重合体(A-1)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδのピーク値が、0.6以上5.0以下である。
【請求項2】
前記共重合体(A-1)に含まれる前記構成単位(ii)を導く炭素数2以上5以下のα-オレフィンがプロピレンである、請求項1に記載の樹脂組成物(X)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物(X)を含む成形体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の樹脂組成物(X)を含むシート。
【請求項5】
請求項1または2に記載の樹脂組成物(X)を含む玩具。
【請求項6】
請求項1または2に記載の樹脂組成物(X)を含む日用雑貨。
【請求項7】
請求項1または2に記載の樹脂組成物(X)を含む自動車材。
【請求項8】
請求項1または2に記載の樹脂組成物(X)を含む電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および成形体に関し、詳しくは炭素系フィラーを含む樹脂組成物およびこれを用いて成形された成形体に関する。
【0002】
本発明は、さらに詳しくは、応力吸収性、応力緩和性、電気特性、靭性、機械特性に優れ、成形後の収縮率が抑制された、4-メチル-1-ペンテンとα-オレフィンとの共重合体および炭素系フィラーを含む組成物、およびそれを用いて成形された成形体に関する。
【背景技術】
【0003】
オレフィン系重合体は、加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質などに優れているため、押出成形品、射出成形品、中空成形品、フィルム、シート、繊維などに加工され、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、不織布、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、多方面の用途に供されている。
【0004】
特許文献1および特許文献2には、4-メチル-1-ペンテン系共重合体を用いてなる、室温で高いtanδピークを有する材料が開示されており、この材料を、制振、防振部材に適応することも開示されている。制振材に求められる制振性は、たとえば、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との比(G”/G’)である損失正接tanδによって評価することができる。そのためその制振材が使用される温度環境下でのtanδが高い材料ほど、粘性が強く発揮されるため、振動による応力を吸収しやすく、より高い制振性を発揮する。なお、tanδは温度によって変化するため、制振材のtanδの最大値(以下「tanδピーク値」ともいう。)、およびtanδの値が最大となる温度(以下、単に「tanδピーク温度」ともいう。)を特定の範囲に調整する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-82388号公報
【文献】特開2017-132920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1および2に記載の材料は、室温で高いtanδピーク値を有するものの、電気特性の観点から更なる改良が求められていた。
導電性を付与することで、上記各種用途に使用する際に、静電気を抑制したり、また伸縮性の導電配線や電極、センサなどに適用可能となる。
【0007】
そこで、本発明が目的とするところは、室温で高いtanδピーク値を有し、さらに優れた電気特性および機械物性を有する樹脂組成物及び成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記状況を鑑み鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]~[11]に関する。
【0009】
[1]
炭素数6以上20以下のα-オレフィンから導かれる構成単位(i)と炭素数2以上5以下のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)とを含むオレフィン系共重合体である熱可塑性樹脂(A)80.0~99.9質量部と、炭素系フィラー(B)0.1~20.0質量部(熱可塑性樹脂(A)と炭素系フィラー(B)の合計を100質量部とする)とを含み、下記要件(a)~(c)を満たすことを特徴とする樹脂組成物(X):
要件(a);-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδがピーク値となる温度が、0℃以上60℃以下である。
要件(b);-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδのピーク値が、0.5以上5.0以下である。
要件(c);表面抵抗率が10^14Ω以下である。
[2]
熱可塑性樹脂(A)80.0~99.9質量部と、炭素系フィラー(B)0.1~20.0質量部(熱可塑性樹脂(A)と炭素系フィラー(B)の合計を100質量部とする)とを含み、下記要件(a)~(c)を満たすことを特徴とする樹脂組成物(X):
要件(a);-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδがピーク値となる温度が、0℃以上60℃以下である。
要件(b);-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδのピーク値が、0.5以上5.0以下である。
要件(c);表面抵抗率が10^14Ω以下である。
[3]
前記熱可塑性樹脂(A)が、前記炭素数6以上20以下のα-オレフィンが4-メチル-1-ペンテンである4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)であることを特徴とする前記[1]に記載の樹脂組成物(X)。
[4]
前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)が、下記要件(d)~(g)を満たすことを特徴とする前記[3]に記載の樹脂組成物(X):
要件(d);共重合体(A-1)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)と、炭素数2以上5以下のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)との合計を100モル%として、当該構成単位(i)55~90モル%と、当該構成単位(ii)10~45モル%とを含む。
要件(e);共重合体(A-1)は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(Tm)が160℃以下であるか、または示差走査熱量計(DSC)によって融点が測定されない。
要件(f);共重合体(A-1)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδがピークとなる温度が、15℃以上45℃以下である。
要件(g);共重合体(A-1)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδのピーク値が、0.6以上5.0以下である。
[5]
前記炭素系フィラー(B)が、カーボンナノチューブである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物(X)。
[6]
前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物(X)を含むからなる成形体。
[7]
前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物(X)を含むシート。
[8]
前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物(X)を含む玩具。
[9]
前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物(X)を含む日用雑貨。
[10]
前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物(X)を含む自動車材。
[11]
前記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物(X)を含む電子部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、室温で高いtanδピーク値を有し、さらに優れた電気特性および機械物性を有し、成形加工方法によらず、室温で高いtanδピーク値を有し、優れた電気特性を有し、さらに機械物性に優れた成形体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の樹脂組成物及び成形体について説明する。
[樹脂組成物(X)]
本発明の樹脂組成物(X)は、熱可塑性樹脂(A)と炭素系フィラー(B)とを含む。
本発明の樹脂組成物(X)は、熱可塑性樹脂(A)および炭素系フィラー(B)のみを含むものであっても良く、あるいは、後述するように、熱可塑性樹脂(A)および炭素系フィラー(B)に加えて、熱可塑性樹脂(A)でも上記炭素系フィラー(B)でもないその他の成分をさらに含んでいても良い。 また、本発明の樹脂組成物(X)は、以下の要件(a)~(c)を満たす。
【0012】
要件(a);
本発明の樹脂組成物(X)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度(以下、「tanδピーク温度」ともいう。)が、0℃以上60℃以下である。
前記tanδピーク温度10℃以上50℃以下であることが伸縮性の観点で好ましく、20℃以上45℃以下であることがより好ましく、25℃以上43℃以下であることが特に好ましい。
【0013】
要件(b);
本発明の樹脂組成物(X)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる損失正接tanδのピーク値(以下「tanδピーク値」ともいう。)が0.5以上5.0以下である。
このtanδピーク値は0.6以上4.5以下であることが柔軟性の観点で好ましく、0.7以上3.5以下であることがより好ましい。 tanδは、動的粘弾性の測定時に得られる貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を用いて、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との比(G”/G’:損失正接)として算出することができる。
【0014】
ここで、本発明において、-40~150℃の範囲でtanδがピーク値(最大値)となる際の温度を、上記tanδがピーク値となる温度とし、その際のtanδの値を上記tanδピーク値とする。なお、上記ピークは、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度に起因すると考えられる。
【0015】
要件(c);
本発明の樹脂組成物(X)は、表面抵抗率が10^14Ω以下である。
【0016】
以下、本発明の樹脂組成物(X)を構成する熱可塑性樹脂(A)および炭素系フィラー(B)について説明する。
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明の樹脂組成物(X)は、熱可塑性樹脂(A)を含む。
樹脂組成物(X)における熱可塑性樹脂(A)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)と炭素系フィラー(B)の合計を100質量部として、80.0~99.9質量部であり、好ましくは85.0質量部以上、より好ましくは90.0質量部以上、また、好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは99.2質量部以下、さらに好ましくは99.0質量部以下である。
【0017】
ここで、本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A)は、本発明の課題を解決できる限り、特に、上記tanδのピーク温度およびピーク値を有する樹脂組成物(X)を与えることができる限り、特に限定されるものではない。ただ、本発明の典型的な態様において、熱可塑性樹脂(A)は、炭素数6以上20以下のα-オレフィンから導かれる構成単位(i)と炭素数2以上5以下のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)とを含むオレフィン系共重合体が耐衝撃性の観点で好ましく、前記オレフィン系共重合体の中でも、前記炭素数6以上20以下のα-オレフィンが4-メチル-1-ペンテンである4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)が特に好ましい。
以下、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)について説明する。
【0018】
≪4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)≫
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)(以下、単に「共重合体(A-1)」ともいう。)は、以下の要件(d)~(g)を全て満たすことが好ましい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いることができる。さらに、本発明のより好ましい態様として、以下の各要件(d)~要件(k)について以下詳述する。
【0019】
要件(d);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)と、炭素数2以上5以下のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)との合計を100モル%としたときに、好ましくは構成単位(i)55モル%~90モル%と、構成単位(ii)10モル%~45モル%とを含む。
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A)中の各構成単位(4-メチル-1-ペンテン及びα-オレフィン)の含有率(モル%)は、13C-NMRにより測定される。
【0020】
ここで、本発明において、「α-オレフィンから導かれる構造単位」というときは、α-オレフィンに対応する構造単位、すなわち、-CH2-CHR-(Rはアルキル基)で表される構造単位を意味する。「4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位」についても同様に解釈され、4-メチル-1-ペンテンに対応する構造単位(すなわち、-CH2-CH(-CH2CH(CH32)-(Rはアルキル基)で表される構造単位)を意味する。
【0021】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)を構成する構成単位(i)の割合の下限値は、好ましくは55モル%であるが、60モル%であることがより好ましく、68モル%であることが特に好ましい。一方、構成単位(i)の割合の上限値は、好ましくは90モル%であるが、86モル%であることがより好ましく、84モル%であることが特に好ましい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)を構成する構成単位(i)の割合が上記下限値以上であると、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)のtanδがピーク値となる温度が室温付近になるため、樹脂組成物のtanδがピーク値となる温度も上述した範囲に調整しやすい。
【0022】
当然ながら、このとき、構成単位(ii)の割合の上限値は、好ましくは45モル%であるが、40モル%であることがより好ましく、32モル%であることが特に好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の下限値は、好ましくは10モル%であるが、14モル%であることがより好ましく、16モル%であることが特に好ましい。
【0023】
ここで、本発明の典型的な態様において、構成単位(ii)を導く炭素数2以上5以下のα-オレフィンの例として、エチレン、プロピレン、1-ブテン、および1-ペンテンなどの直鎖状のα-オレフィン、ならびに、3-メチル-1-ブテンなどの分岐状のα-オレフィンが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。構成単位(ii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
【0024】
ただし、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、本発明の目的を損なわない程度の少量(たとえば、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%として10モル%以下)であれば、構成単位(i)および構成単位(ii)のほかに、構成単位(iii)として、4-メチル-1-ペンテンおよび構成単位(ii)を導くα-オレフィンのいずれでもない他のモノマーから導かれる構成単位をさらに含んでいてもよい。このような他のモノマーの好ましい具体例としては、前記共重合体(A-1)が4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体の場合であれば、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0025】
要件(e);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、好ましくは示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(Tm)が160℃以下であるか、または示差走査熱量計(DSC)によって融点(Tm)が測定されない。共重合体(A-1)がこのような要件を満たすことによって、本発明の樹脂組成物において炭素系フィラーとの混錬性がよくなり、振動吸収性や応力緩和性を向上させることが可能となる。
【0026】
要件(f);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる、tanδピーク温度が、好ましくは15℃以上45℃以下である。
前記tanδピーク温度は20℃以上40℃以下であることがより好ましく、25℃以上40℃以下であることが特に好ましい。tanδピーク温度を上記の温度範囲にすることで、室温でのtanδの値をより高めることができる。
【0027】
要件(g);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、-40~150℃の温度範囲で、10rad/s(1.6Hz)の周波数で動的粘弾性測定を行って得られる、tanδピーク値が、好ましくは0.6以上5.0以下である。
前記tanδピーク値は1.0以上5.0以下であることがより好ましく、1.5以上5.0以下であることがさらに好ましく、2.0以上4.0以下であることが特に好ましい。tanδピーク値を上記範囲にすることで、引張や変形の速度に応じて振動吸収性、材料の硬さや追従性を変化させることができる。
【0028】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、上記要件(d)~(g)に加えて、以下の要件(h)、(i)、(j)および(k)から選ばれる1以上の要件を満たすことがさらに好ましい。
【0029】
要件(h);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、好ましくは0.1dL/g以上5.0dL/g以下である。前記極限粘度[η]は、0.5dL/g以上4.0dL/g以下であることがより好ましく、0.5dL/g以上3.5dL/g以下であることがさらに好ましい。上記極限粘度[η]が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、シート状の熱可塑性樹脂組成物への成形が容易である。
【0030】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の上記極限粘度[η]は、重合による製造中に水素を添加して分子量や重合活性を制御して、上記範囲に調整することができる。
上記極限粘度[η]は、135℃でデカリン中に異なる量の熱可塑性樹脂組成物を溶解させたときの、それぞれのポリマーの単位濃度cあたりの粘度増加率ηsp(すなわちηsp/c)を求めて還元粘度ηredとし、ηredをポリマーの単位濃度cがゼロになるように外挿して、求めることができる。
【0031】
要件(i);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布:Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上3.5以下である。前記Mw/Mnは、1.2以上3.0以下であることがより好ましく、1.5以上2.8以下であることがさらに好ましい。上記Mw/Mnが上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)は、低分子量、低立体規則性ポリマーによる成形性の低下が生じにくく、シート状の熱可塑性樹脂組成物への成形が容易である。
【0032】
また、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、500以上10,000,000以下であることが好ましく、1,000以上5,000,000以下であることがより好ましく、1,000以上2,500,000以下であることがさらに好ましい。
【0033】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)のMw/MnおよびMwは、たとえばメタロセン触媒を使用することで、上記範囲に調整することができる。
上記MwおよびMw/Mnは、たとえば、液体クロマトグラフとしてWaters製ALC/GPC 150-C plus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6-HT×2本およびGMH6-HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定して得られるクロマトグラムを、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析して、求めることができる。
【0034】
要件(j);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の密度(JIS K7112にて測定)は、好ましくは870~830kg/m3である。前記密度は、より好ましくは865~830kg/m3、さらに好ましくは855~830kg/m3である。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
密度は共重合体(A-1)のコモノマー組成比によって適宜変えることができ、密度が上記範囲内にある共重合体(A-1)は、軽量なシートを製造する上で有利である。
【0035】
要件(k);
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)のメルトフローレート(MFR;Melt Flow Rate)(ASTM D1238にて230℃で2.16kgの荷重にて測定)は、好ましくは4.0~30g/10minである。前記メルトフローレートは、より好ましくは7.0~15g/10min、さらに好ましくは7.0~13g/10minである。メルトフローレートが上記範囲内にある共重合体(A-1)は、成形加工時に良好なペレット及びシート、成形体を製造する上で有利である。
【0036】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の特に好ましい形態は、前記要件(d)~(g)に加えて、更に上記要件(h)を満たし、とりわけ好ましい態様においては、(d)~(h)の要件に加えて、更に要件(i)、(j)および(k)から選ばれる1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは全てを満たしている。
【0037】
≪4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の製造方法≫
前記共重合体(A-1)の製造方法は、特に限定されないが例えば、4-メチル-1-ペンテンと上述した「構成単位(ii)を導くα-オレフィン」とをマグネシウム担持型チタン触媒またはメタロセン触媒などの適当な重合触媒存在下で重合することにより得ることができる。
【0038】
ここで、本発明で用いることのできる重合触媒として、従来公知の触媒、例えばマグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号、国際公開第01/27124号、特開平3-193796号公報あるいは特開平2-41303号公報、国際公開第2011/055803号、国際公開第2014/050817号等に記載のメタロセン触媒などが好適に用いられる。
【0039】
重合は、溶解重合および懸濁重合などを含む液相重合法、ならびに気相重合法などから適宜選択して行うことができる。
液相重合法では、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。上記不活性炭化水素の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、および灯油などを含む脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびメチルシクロヘキサンなどを含む脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどを含む芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、およびテトラクロロメタンなどを含むハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などが含まれる。
【0040】
また、液相重合法では、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマー自身を溶媒とする塊状重合とすることもできる。
なお、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーの共重合を段階的に行うことにより、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)を構成する構成単位(i)~構成単位(iii)の組成分布を適当に制御することもできる。
重合温度は、-50℃以上200℃以下が好ましく、0℃以上100℃以下がより好ましく、20℃以上100℃以下がさらに好ましい。
【0041】
重合圧力は、常圧以上10MPaゲージ圧であることが好ましく、常圧以上5MPaゲージ圧であることがより好ましい。
重合の際に、生成するポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよい。添加される水素の量は、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーの合計量1kgに対して、0.001NL以上100NL以下程度が適当である。
【0042】
<炭素系フィラー(B)>
炭素系フィラー(B)は、導電性を有する材料である。その一例として、カーボンナノチューブ(CNT)、炭素繊維が挙げられる。炭素系フィラー(B)としては導電性を有するこれらの材料であれば特に制限されないが、これらの中でも、成形体の表面抵抗率を下げる効果に優れていることから、カーボンナノチューブが好ましい。
【0043】
カーボンナノチューブは、炭素からなる円筒状の中空繊維状物質であり、多層カーボンナノチューブおよび単層カーボンナノチューブのいずれでもよい。
カーボンナノチューブの平均直径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。また、カーボンナノチューブの平均長さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.6μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。平均直径が1nm以上であれば混練時に切れにくくすることができ、20nm以下であれば導電性を高めることができる傾向にある。また、平均長さが0.5μm以上であれば導電性を高めることができ、50μm以下であれば混練時の粘度上昇を抑制し、混練および成形をしやすくすることができる傾向にある。
【0044】
カーボンナノチューブの平均直径および平均長さは、カーボンナノチューブを電子顕微鏡(SEM、TEM)で観察し、算術平均することにより求めることができる。
カーボンナノチューブは、例えば、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法によって製造することができる。カーボンナノチューブの市販品を用いてもよい。
カーボンナノチューブは、例えばカーボンブラックに比べて、比較的少量で高い導電性を示す傾向にあるが、高価であるためより少量で使用できればコスト面の観点から有利である。
【0045】
炭素繊維としては、公知の種々の炭素繊維を使用することができ、例えば、ポリアクリルニトリル系、レーヨン系、ピッチ系、ポリビニルアルコール系、再生セルロース系、メゾフェーズピッチから製造されたピッチ系等の炭素繊維が挙げられる。炭素繊維は、比強度に優れている点で、軽量性と強度とが重視される用途、例えば航空機用において優位にある。
【0046】
炭素繊維は汎用繊維でよく、高強度繊維でもよい。また、炭素繊維は、長繊維、短繊維、チョップドファイバー、リサイクル繊維であってもよい。
炭素繊維の集束剤(サイズ剤)としては、例えば、ウレタン系エマルション、エポキシ系エマルション、ナイロン系エマルション、オレフィン系エマルションのいずれの集束剤も使用することができる。
【0047】
炭素繊維の平均長さ、すなわち平均繊維長は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは15.0mm以下、より好ましくは13.0mm以下である。平均繊維長が0.1mm以上である場合には、炭素繊維による機械物性の補強効果が充分発現される傾向にある。平均繊維長が15.0mm以下である場合には、樹脂組成物(X)中の炭素繊維の分散性、よって外観が良好となる傾向にある。
【0048】
炭素繊維の平均直径は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは21μm以下、さらに好ましくは19μm以下である。炭素繊維の平均直径が3μm以上である場合には、成形時に炭素繊維が破損し難くなり、また、得られる成形体の衝撃強度が高くなる傾向にある。炭素繊維の平均直径が30μm以下である場合には、成形体の外観が良好となり、また、炭素繊維のアスペクト比が低下せず、成形体の剛性、耐熱性などの機械的物性に十分な補強効果が得られる傾向にある。
【0049】
炭素系フィラー(B)は1種または2種以上用いることができる。
上記樹脂組成物(X)における炭素系フィラー(B)の含有割合は、熱可塑性樹脂(A)と炭素系フィラー(B)の合計を100質量部として、0.1~20.0質量部である。炭素系フィラー(B)の含有割合は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは15.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下である。
【0050】
<その他の成分>
上記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と炭素系フィラー(B)以外の樹脂や、各種樹脂用添加剤をさらに含有することができる。
【0051】
≪その他の重合体≫
本発明の樹脂組成物(X)は、本発明の効果を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)等の熱可塑性樹脂(A)に該当しないその他の重合体(以下「その他の重合体」)をさらに含んでいてもよい。
【0052】
「その他の重合体」の例として、従来公知である、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン等に代表される樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
これらの樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0~25質量部、より好ましくは0.1~20質量部、特に好ましくは0.3~10質量部である。ここで、樹脂組成物(X)を製造する際には、これらの樹脂は後述する添加剤を含む組成物の形態で用いられてもよいが、その場合の樹脂の配合量は、この組成物の質量から添加剤の質量を差し引いてなる質量が基準となる。
【0054】
また、「その他の重合体」は、未変性の重合体に限られず、変性重合体であっても良い。このことから、本発明の樹脂組成物(X)は、熱可塑性樹脂(A)に高い含有率の炭素系フィラー(B)を混練するのを容易にする為に変性ポリオレフィン系ワックス(C)を含んでもよい。この変性ポリオレフィン系ワックス(C)を用いることにより、熱可塑性樹脂(A)中での炭素系フィラー(B)の凝集が抑制されるので混練するのが容易になると考えられる。また、熱可塑性樹脂(A)に高い含有率の炭素系フィラー(B)を混練するのが容易になると考えられる。
【0055】
変性ポリオレフィン系ワックス(C)の種類は特に限定されないが、変性ポリエチレン系ワックス、変性ポリプロピレン系ワックスが好ましく変性ポリエチレン系ワックスがより好ましい。
変性ポリオレフィン系ワックス(C)は、公知の方法で製造することが出来る。例えば、無溶剤あるいは溶剤中で低分子量エチレン系重合体に不飽和カルボン酸またはその誘導体をラジカル反応で付加する方法や、ルイス酸の存在下で付加する方法や、高温下で付加する方法が挙げられる。反応温度は20℃~300℃であり、特に120℃~250℃が好ましい。低分子量エチレン系重合体の融点は120℃程度なので、反応温度を120℃以上とすることが、反応系を均一にする意味で好ましい。
【0056】
不飽和カルボン酸としては反応性二重結合を有し、かつカルボン酸基を有する化合物であれば特に制限されず、使用可能な化合物として、公知の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては反応性二重結合を有し、かつカルボン酸基から誘導されうる基を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、不飽和カルボン酸の無水物、エステル、酸ハライド、アミドおよびイミド等が挙げられる。
【0057】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、およびマレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ナジック酸エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等の不飽和ジカルボン酸が挙げられる。不飽和カルボン酸を用いることによって、カルボン酸基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。
【0058】
不飽和カルボン酸の無水物としては、上記不飽和ジカルボン酸の無水物が使用可能である。その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物)等が挙げられる。不飽和カルボン酸の無水物を用いることによって、無水カルボン酸基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。特に無水マレイン酸が好ましい。
【0059】
不飽和カルボン酸のエステルとしては、上記不飽和カルボン酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、グリシジルエステルが使用可能である。具体例としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート、ヒドロキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルを用いることによって、カルボン酸エステル基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。
【0060】
不飽和カルボン酸のハライドの具体例としては、塩化マレニル、ジクロロマレイン酸無水物(C4Cl23)等が挙げられる。不飽和カルボン酸のハライドを用いることによって、ハロゲン原子含有カルボン酸基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。
【0061】
不飽和カルボン酸のアミドの具体例としては、スルアミド、フタアミド、マレアミド等が挙げられる。不飽和カルボン酸のアミドを用いることによって、アミド基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。
【0062】
不飽和カルボン酸のイミドの具体例としては、マレイミド、フタイミド、スルイミド等が挙げられる。不飽和カルボン酸のイミドを用いることによって、イミド基を有する変性炭化水素樹脂が得られる。
【0063】
変性ポリオレフィン系ワックス(C)の酸価は、好ましくは1~100mg-KOH/g、より好ましくは10~90mg-KOH/gである。変性ポリオレフィン系ワックス(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは400~20000である。
変性ポリオレフィン系ワックス(C)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0~20質量部、より好ましくは0.1~15質量部、特に好ましくは0.3~10質量部である。
【0064】
≪添加剤≫
上記樹脂組成物(X)は、必要に応じて、公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、耐候性安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、有機充填剤、および軟化剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0065】
軟化剤の例には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどを含む石油系物質、コールタールおよびコールタールピッチなどを含むコールタール類、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などを含む脂肪油、トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどを含むロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸およびエルカ酸などを含む脂肪酸またはその金属塩、石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどを含む合成高分子、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどを含むエステル系可塑剤、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物、ならびに液状チオコールなどを含む公知の軟化剤が含まれる。
【0066】
軟化剤としては、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジアルボン酸エステル(アジピン酸-プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)、石油樹脂等が挙げられる。
【0067】
離型剤としては、高級脂肪酸の低級(C1~4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4~30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸のグリコールエステル、流動パラフィン等が挙げられる。
【0068】
酸化防止剤としては、フェノール系(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等)、多環フェノール系(2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等)、リン系(テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレンジホスフォネート等)、アミン系(N,N-ジイソプロピル-p-フェニレンジアミン等)の酸化防止剤が挙げられる。
【0069】
難燃剤の例には、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2-シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステル及びその他のリン化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、およびテトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0070】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系等が挙げられる。
【0071】
抗菌剤としては、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素等が挙げられる。
【0072】
界面活性剤としては非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキル時ヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0073】
帯電防止剤としては、上記の界面活性剤、脂肪酸エステル、高分子型帯電防止剤が挙げられる。脂肪酸エステルとしてはステアリン酸やオレイン酸のエステルなどが挙げられ、高分子型帯電防止剤としてはポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
【0074】
顔料としては、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としてはアゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等が挙げられる。これら顔料および染料の添加量は、特に限定されないが、前記共重合体(A)100質量部に対して、合計で、通常5質量部以下、好ましくは0.1~3質量部である。
【0075】
スリップ防止剤としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、講習脂肪酸塩(ステアリン酸カルシウム等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等)等が挙げられる。
【0076】
上記の各種添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、特に限定されないが、前記熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、それぞれ、0.01~30質量部であることが好ましい。
【0077】
<樹脂組成物(X)の製造>
上記樹脂組成物(X)は、例えば、熱可塑性樹脂(A)と炭素系フィラー(B)と任意に加えられる他の成分とをドライブレンドし、続いて一軸または二軸押出機またはバンバリーミキサーまたは加圧ニーダーで溶融混練し、ストランド状に押出しペレットに造粒することにより得ることができる。なお、炭素系フィラー(B)や無機充填剤などの成分は、熱可塑性樹脂(A)等の樹脂成分と予め混合してマスターバッチの形態で用いてもよい。
【0078】
[成形体]
本実施形態の成形体は、上記樹脂組成物(X)を含む。成形方法としては、具体的には、従来公知のポリオレフィンの成形方法、例えば、押出成形、射出成形、フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等の公知の熱成形方法が挙げられる。好ましくは射出成形によって、上記樹脂組成物(X)を加工することで、上記樹脂組成物(X)を含む本実施形態の成形体を得ることが可能である。成形体としては、炭素系フィラー(B)としてカーボンナノチューブを含有する樹脂組成物(X)を含む成形体が好ましい。
【0079】
上記成形体は、上記樹脂組成物(X)から形成された成形体であってもよく、また、上記樹脂組成物から形成された部分、例えば表層、を有する成形体であってもよい。
【0080】
さらに、本実施形態の成形体は、機械物性にも優れている。
成形体は、日用雑貨やレクリエーション用途などの家庭用品から、一般産業用途、工業用品に至る広い用途で用いられる。例えば、家電材料部品、通信機器部品、電気部品、電子部品、自動車材、その他の車両の部品、船舶、航空機材料、機械機構部品、建材関連部材、土木部材、農業資材、電動工具部品、食品容器、フィルム、シート、繊維,玩具等が挙げられる。
【0081】
自動車材としては、例えば、フロントドア、バックドア、スライドドア、フロントエンドモジュール、ドアモジュール、フェンダー、ホイルキャップ、ガソリンタンク、座席(詰物、表地など)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、タイヤ、マットレスカバー、エアバック、コネクタ、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被服材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、デッキパネル、カバー類、合板、天井板、仕切り板、側壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、防音板、断熱板、窓材が挙げられる。
【0082】
家電材料部品、通信機器部品、電気部品、電子部品としては、例えば、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、ヘッドホンステレオ、携帯電話、電話機、ファクシミリ、複写機、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、電子辞書、カード、ホルダー、文具等の事務・OA機器;洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、炬燵などの家電機器;TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレイヤー、スピーカー、液晶ディスプレイなどのAV機器;コネクタ、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、電線、ケーブル、トランス、センサ、偏向ヨーク、分電盤、時計、ロボット材が挙げられる。
【0083】
日用雑貨としては、例えば、衣類、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、自転車、楽器などの生活・スポーツ用品が挙げられる。
【実施例
【0084】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における各種物性は以下の方法により測定した。
【0085】
〔組成〕
4-メチル-1-ペンテン共重合体(A-1)中の各構成単位(4-メチル-1-ペンテン及びα-オレフィン)の含有率(モル%)は、13C-NMRにより測定した。
・測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
・観測核:13C(125MHz)
・シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
・パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
・繰り返し時間:5.5秒
・積算回数:1万回以上
・溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
・試料濃度:55mg/0.6mL
・測定温度:120℃
・ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0086】
〔極限粘度[η]〕
共重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。
約20mgの特定4-メチル-1-ペンテン(4MP1)系共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記の式1参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式1
【0087】
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
【0088】
-条件-
測定装置:GPC(ALC/GPC 150-C plus型、示差屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6-HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6-HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o-ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
【0089】
〔メルトフローレート(MFR)〕
共重合体のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、ASTM D1238に準拠し、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。単位は、g/10minである。
【0090】
〔密度〕
共重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定した。この密度(kg/m3)を軽量性の指標とした。
【0091】
〔融点(Tm)〕
共重合体の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。約5mgの重合体を、測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱する。重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行ない、この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を重合体の融点(Tm)とした。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用した。
【0092】
〔動的粘弾性〕
動的粘弾性の測定では、測定対象とする共重合体または成形体からなる厚さ2mmのプレスシートを測定試料として用い、さらに動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×2mmの短冊片を切り出した。ANTONPaar社製MCR301を用いて、10rad/sの周波数で-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0~40℃の範囲でガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(tanδピーク温度)、およびそのピーク値(tanδピーク値)の値を測定した。
【0093】
[合成例1]
<4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の合成>
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn-ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4-メチル-1-ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
【0094】
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
【0095】
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の4-メチル-1-ペンテン・α‐オレフィン共重合体(A-1)(以下、「共重合体A-1」という)を得た。得られた共重合体A-1の各種物性の測定結果を表1に示す。ここで、表1中、「4MP1」は4-メチル-1-ペンテンを、「AO」はα-オレフィンをそれぞれ指している。
【0096】
共重合体A-1中の4-メチル-1-ペンテンの含有率は72.5mol%であり、プロピレンの含有率は27.5mol%であった。また、共重合体A-1の密度は839kg/m3であった。共重合体A-1の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体A-1の融点(Tm)は観測されなかった。
【0097】
成形体の作製方法
株式会社テクノベル社製kzw15のホッパー部に実施例または比較例に記載の樹脂および炭素系フィラーを投入し、200℃で溶融混練し、樹脂組成物ペレットを作製した。その後、東芝機械株式会社製の射出成型機 東芝75トンのホッパー部に上記樹脂組成物ペレットを投入し、200℃で溶融させ、40℃の金型に射出圧50MPa、保圧30~40MPaで射出成形し、130mm×130mm×2mm厚の平板成形体(プレスシート)および、ASTM D638 Type4に準拠したダンベル型成形体試験片を作製した。
【0098】
表面抵抗率の測定
成形体の表面抵抗率は、以下のようにして求めた。
樹脂組成物の前記2.0mm厚のプレスシートについて、株式会社エーディーシー社製デジタル超高抵抗/微少電流計8340A型を用いて、二重リング法により室温、湿度50%、印加電圧10V、印加時間60秒の条件において表面抵抗率を測定した。
【0099】
収縮率
収縮率は、前記厚さ2mmのプレスシートを測定試料として用い、射出金型の長さとの差を4辺について測定し、金型の長さに対する寸法変化を用いて算出した。
【0100】
引張強度、引張伸び
成形体の引張強度および引張弾性率は、前記ダンベル型成形体試験片を用いて引張試験により測定した。引張試験は、株式会社インテスコ製5本掛け引張試験機 2005X-5を用い、ASTM D638に準拠して23℃において、試験速度50mm/分で行った。
【0101】
[実施例1~3]
カーボンナノチューブマスターバッチ(炭素系フィラー(B)であるナノシル社製カーボンナノチューブNC7000を15wt%、および熱可塑性樹脂(A)である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)85wt%を含むマスターバッチ:炭素系フィラーマスターバッチ)と、熱可塑性樹脂(A)である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)とを表2に示す「配合比」(質量部)でドライブレンドした。各配合比から、樹脂組成物の各成分の「組成」比率(質量%)は表2に示すとおり計算される。次に、前述の方法にて樹脂組成物ペレットおよび物性測定用試験片を作製した。この試験片を用いて引張試験、表面抵抗率の測定、収縮率の測定および粘弾性測定を実施した。
【0102】
[比較例1]
前記カーボンナノチューブマスターバッチを用いず、熱可塑性樹脂(A)である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)のみを用いたこと以外は実施例1と同様の方法にて樹脂組成物ペレットおよび物性測定用試験片を作製し、引張試験、表面抵抗率の測定、収縮率の測定および粘弾性測定を実施した。
【0103】
[比較例2および3]
実施例1のカーボンナノチューブの炭素系フィラーマスターバッチに替えてカーボンブラック25wt%およびポリプロピレン75wt%を含む炭素系フィラーマスターバッチ(DIC株式会社P-5050)を使用し、各原料を表2に記載の比率とした以外は実施例1と同様に樹脂組成物ペレットおよび物性測定用試験片を作製し、引張試験、表面抵抗率の測定、収縮率の測定および粘弾性測定を実施した。
【0104】
実施例1~3および比較例1~3で得られた成形体の表面抵抗率、収縮率、tanδピーク値、tanδピーク温度、引張強度および引張弾性率を表2に示す。表2中、「CNT」はカーボンナノチューブを、「CB」はカーボンブラックを意味する。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
以下の実施例および比較例については、以下の方法により熱伝導率および熱抵抗を求めた。
(熱伝導率)
熱伝導性組成物の熱伝導率は、定常法熱流計法にて実施した。具体的にはアルバック理工社製測定器GH-1を用い、ASTM E1530に準じて、温度30℃、試料保持用設定空気圧0.3MPa、試験片形状50mmφで測定した。
(熱抵抗)
熱抵抗は以下の式より算出した。
熱抵抗=試験片厚み/熱伝導率
【0108】
[実施例4]
実施例1記載の樹脂組成物(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)100質量部およびカーボンナノチューブマスターバッチ25質量部をドライブレンドして得た樹脂組成物)を用いて前述の方法により作製された試験片の、前記方法により求めた熱伝導率測定および熱抵抗の結果を表3に示す。
【0109】
[実施例5]
実施例2記載の樹脂組成物(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)100質量部およびカーボンナノチューブマスターバッチ66質量部をドライブレンドして得た樹脂組成物)を用いて前述の方法により作製された試験片の、前記方法により求めた熱伝導率測定および熱抵抗の結果を表3に示す。
【0110】
[実施例6]
実施例3記載の樹脂組成物(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)100質量部およびカーボンナノチューブマスターバッチ115質量部をドライブレンドして得た樹脂組成物)を用いて前述の方法により作製された試験片の、前記方法により求めた熱伝導率測定および熱抵抗の結果を表3に示す。
【0111】
[比較例4]
比較例1記載の樹脂組成物を用いて前述の方法により作製された試験片の、前記方法により求めた熱伝導率測定および熱抵抗の結果を表3に示す。
【0112】
[比較例5]
比較例2記載の樹脂組成物(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)100質量部およびカーボンブラックマスターバッチ11質量部をドライブレンドして得た樹脂組成物)を用いて前述の方法により作製された試験片の、前記方法により求めた熱伝導率測定および熱抵抗の結果を表3に示す。
【0113】
[比較例6]
比較例3記載の樹脂組成物(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)100質量部およびカーボンブラックマスターバッチ43質量部をドライブレンドして得た樹脂組成物)を用いて前述の方法により作製された試験片の、前記方法により求めた熱伝導率測定および熱抵抗の結果を表3に示す。
【0114】
表3中、「CNT」はカーボンナノチューブを、「CB」はカーボンブラックを意味する。
【0115】
【表3】