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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】平面アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/10 20060101AFI20240925BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240925BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01Q13/10
H01Q21/06
H01Q3/26 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020174556
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065824
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】須賀 智文
(72)【発明者】
【氏名】夏原 啓一
(72)【発明者】
【氏名】石田 克義
(72)【発明者】
【氏名】大川 貴容美
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-027033(JP,A)
【文献】特開2016-127453(JP,A)
【文献】特開平04-037204(JP,A)
【文献】特表2001-524276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/10
H01Q 21/06
H01Q 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1地導体と、第1誘電体と、トーナメント給電され格子配列される複数の放射素子が形成される放射基板と、第2誘電体と、前記複数の放射素子に対応する位置に複数のスロットが形成される第2地導体と、がこの順に積層配置される平面アンテナであって、
前記放射基板において、前記複数の放射素子のうちの一部の放射素子に代えて、前記平面アンテナの積層配置の固定用の放射基板孔が形成され、前記第2地導体において、前記複数のスロットのうちの前記一部の放射素子に対応する位置に形成される一部のスロットに代えて、前記平面アンテナの積層配置の固定用の地導体孔が形成され、前記放射基板孔及び前記地導体孔を用いて、前記平面アンテナの積層配置が固定され、
トーナメント給電の末端の4個の放射素子のうちの1個の放射素子に代えて、前記放射基板孔が形成され、前記平面アンテナの偏波面に垂直な方向に配列される2個の放射素子の全励振振幅と、前記2個の放射素子を除く残りの放射素子の励振振幅と、が等しい
ことを特徴とする平面アンテナ。
【請求項2】
地導体と、誘電体と、トーナメント給電され格子配列される複数の放射素子が形成される放射基板と、がこの順に積層配置される平面アンテナであって、
前記放射基板において、前記複数の放射素子のうちの一部の放射素子に代えて、前記平面アンテナの積層配置の固定用の放射基板孔が形成され、前記放射基板孔を用いて、前記平面アンテナの積層配置が固定され、
トーナメント給電の末端の4個の放射素子のうちの1個の放射素子に代えて、前記放射基板孔が形成され、前記平面アンテナの偏波面に垂直な方向に配列される2個の放射素子の全励振振幅と、前記2個の放射素子を除く残りの放射素子の励振振幅と、が等しい
ことを特徴とする平面アンテナ。
【請求項3】
前記平面アンテナの偏波面に垂直な方向に配列される前記2個の放射素子への全分岐電力と、前記2個の放射素子を除く前記残りの放射素子への分岐電力と、が等しい
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の平面アンテナ。
【請求項4】
トーナメント給電として、前記平面アンテナの全分岐での分岐比率が等しい同分岐給電と、前記平面アンテナの中央ほど励振振幅が大きく、前記平面アンテナの偏波面に平行な方向の端部ほど励振振幅が小さいテーパ給電と、のうちのいずれかが適用される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の平面アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トーナメント給電される平面アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
トーナメント給電される平面アンテナが、特許文献1等に開示されている。特許文献1では、給電線路の不連続な箇所からの不要な放射を抑制するために、給電線路に対応する位置に地導体によるシールドを形成する。そして、格子配列される放射素子からの必要な放射を抑制しないために、放射素子に対応する位置に地導体面内のスロットを形成する。
【0003】
特許文献1では、地導体を平面アンテナに固定するために、地導体を平面アンテナにネジ止めする。ここで、平面アンテナの使用周波数が高くなるほど、放射素子の形成間隔が狭くなり、スロットの形成間隔が狭くなり、スロットとスロットとの間の隙間が狭くなる。すると、平面アンテナの使用周波数が高いときには、スロットとスロットとの間の隙間において、地導体を平面アンテナにネジ止めすることができず、放射素子及びスロットに代えたネジ穴において、地導体を平面アンテナにネジ止めする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-027033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の平面アンテナの構成を図1に示す。平面アンテナAは、第1地導体1、第1誘電体2、放射基板3、第2誘電体4及び第2地導体5が、この順に積層配置される。放射基板3は、トーナメント給電され格子配列される複数の放射素子31が形成される。第2地導体5は、複数の放射素子31に対応する位置に複数のスロット51が形成される。
【0006】
放射基板3において、複数の放射素子31のうちの一部の放射素子31に代えて、平面アンテナAの積層配置の固定用の放射基板孔32が形成される。第2地導体5において、複数のスロット51のうちの一部の放射素子31に対応する位置に形成される一部のスロット51に代えて、平面アンテナAの積層配置の固定用の地導体孔52が形成される。放射基板孔32及び地導体孔52を用いて、平面アンテナAの積層配置が固定される。
【0007】
従来技術では、平面アンテナAのサイドローブが低減されるように、放射基板孔32及び地導体孔52を平面アンテナAの最外周に形成する。そして、平面アンテナAの積層配置が確実に固定されるように、放射基板孔32及び地導体孔52を平面アンテナAの最外周以外にも形成することも考えられる。すると、平面アンテナAのサイドローブの低減と、平面アンテナAの積層配置の確実な固定と、の間のトレードオフが生じる。
【0008】
従来技術の平面アンテナの放射素子の励振振幅を図2に示す。従来技術では、平面アンテナAのφ=0°偏波面において、サイドローブをできるだけ低減するとともに、平面アンテナAのφ=90°偏波面において、サイドローブをできるだけ低減することを考える。トーナメント給電の末端の4個の放射素子31-1、31-2、31-3、31-4のうちの1個の放射素子31-4に代えて、放射基板孔32-4が形成される。トーナメント給電として、平面アンテナAの全分岐での分岐比率が等しい同分岐給電を考える。
【0009】
放射素子31-4の削除前(図2の左上欄及び左下欄を参照。)では、放射素子31-1、31-2、31-3、31-4の励振振幅は、それぞれ、「1」、「1」、「1」、「1」である。すると、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-3の全励振振幅と、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-2、31-4の全励振振幅とは、それぞれ、「2」、「2」である。そして、平面アンテナAのφ=90°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-2の全励振振幅と、平面アンテナAのφ=90°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-3、31-4の全励振振幅とは、それぞれ、「2」、「2」である。さらに、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-3への全分岐電力と、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-2、31-4への全分岐電力とは、それぞれ、「2」、「2」である。
【0010】
放射素子31-4の削除後(図2の右上欄及び右下欄を参照。)では、放射素子31-4の削除前と同様に、放射素子31-1、31-2、31-3の励振振幅は、それぞれ、「1」、「1」、「1」である。すると、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-3の全励振振幅と、放射素子31-1、31-3を除く放射素子31-2の励振振幅とは、それぞれ、「2」、「1」である。そして、平面アンテナAのφ=90°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-2の全励振振幅と、放射素子31-1、31-2を除く放射素子31-3の励振振幅とは、それぞれ、「2」、「1」である。さらに、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-3への全分岐電力と、放射素子31-1、31-3を除く放射素子31-2への分岐電力とは、それぞれ、「2」、「1」である。
【0011】
つまり、放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な各列の全励振振幅が変化し、平面アンテナAのφ=0°偏波面のサイドローブが増加する。そして、放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、平面アンテナAのφ=90°偏波面に垂直な各列の全励振振幅も変化し、平面アンテナAのφ=90°偏波面のサイドローブも増加する。従来技術の平面アンテナの指向性を図3に示す。図3での主偏波は、φ=0°偏波を示す。放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、平面アンテナAのφ=0°偏波面のサイドローブが増加し、平面アンテナAのφ=0°偏波面の利得も減少し得る。
【0012】
さらに、放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、平面アンテナAの一部の分岐での分岐比率が変化する。従来技術の平面アンテナの分岐比率の設計方法を図4に示す。図4での給電回路6は、複数の放射素子31にトーナメント給電する。放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、放射素子31-4に直結する分岐での分岐比率が変化し、放射素子31-4の上流側の分岐での分岐比率も変化し、これに伴って、これらの分岐での分岐比率を再設計する必要がある。
【0013】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、スロットを形成した地導体を平面アンテナにネジ止めするために、放射素子及びスロットに代えてネジ穴を形成するにあたり、平面アンテナのサイドローブを増加させず、平面アンテナの利得を減少させず、平面アンテナの一部の分岐での分岐比率を変化させないことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、平面アンテナのある偏波面において、サイドローブをできるだけ低減する一方で、平面アンテナの当該ある偏波面との直交偏波面において、サイドローブを低減しなくてもよいことを考える。そして、ネジ穴の形成にあたり、放射素子の削除後では、放射素子の削除前と比べて、平面アンテナの当該ある偏波面に垂直な各列の全励振振幅を変化させない。さらに、ネジ穴の形成にあたり、放射素子の削除後では、放射素子の削除前と比べて、平面アンテナの一部の分岐での分岐比率を変化させない。
【0015】
具体的には、本開示は、第1地導体と、第1誘電体と、トーナメント給電され格子配列される複数の放射素子が形成される放射基板と、第2誘電体と、前記複数の放射素子に対応する位置に複数のスロットが形成される第2地導体と、がこの順に積層配置される平面アンテナであって、前記放射基板において、前記複数の放射素子のうちの一部の放射素子に代えて、前記平面アンテナの積層配置の固定用の放射基板孔が形成され、前記第2地導体において、前記複数のスロットのうちの前記一部の放射素子に対応する位置に形成される一部のスロットに代えて、前記平面アンテナの積層配置の固定用の地導体孔が形成され、前記放射基板孔及び前記地導体孔を用いて、前記平面アンテナの積層配置が固定され、トーナメント給電の末端の4個の放射素子のうちの1個の放射素子に代えて、前記放射基板孔が形成され、前記平面アンテナの偏波面に垂直な方向に配列される2個の放射素子の全励振振幅と、前記2個の放射素子を除く残りの放射素子の励振振幅と、が等しいことを特徴とする平面アンテナである。
【0016】
この構成によれば、スロットを形成した地導体を平面アンテナにネジ止めするために、放射素子及びスロットに代えてネジ穴を形成するにあたり、平面アンテナのサイドローブを増加させないとともに、平面アンテナの利得を減少させないことができる。
【0017】
また、本開示は、地導体と、誘電体と、トーナメント給電され格子配列される複数の放射素子が形成される放射基板と、がこの順に積層配置される平面アンテナであって、前記放射基板において、前記複数の放射素子のうちの一部の放射素子に代えて、前記平面アンテナの積層配置の固定用の放射基板孔が形成され、前記放射基板孔を用いて、前記平面アンテナの積層配置が固定され、トーナメント給電の末端の4個の放射素子のうちの1個の放射素子に代えて、前記放射基板孔が形成され、前記平面アンテナの偏波面に垂直な方向に配列される2個の放射素子の全励振振幅と、前記2個の放射素子を除く残りの放射素子の励振振幅と、が等しいことを特徴とする平面アンテナである。
【0018】
この構成によれば、スロットを形成することなく、地導体、誘電体及び放射基板をネジ止めするために、放射素子に代えてネジ穴を形成するにあたり、平面アンテナのサイドローブを増加させないとともに、平面アンテナの利得を減少させないことができる。
【0019】
また、本開示は、前記平面アンテナの偏波面に垂直な方向に配列される前記2個の放射素子への全分岐電力と、前記2個の放射素子を除く前記残りの放射素子への分岐電力と、が等しいことを特徴とする平面アンテナである。
【0020】
この構成によれば、スロットを形成するかどうかによらず、上記の効果を有するとともに、平面アンテナの一部の分岐での分岐比率を変化させないことができる。
【0021】
また、本開示は、トーナメント給電として、前記平面アンテナの全分岐での分岐比率が等しい同分岐給電と、前記平面アンテナの中央ほど励振振幅が大きく、前記平面アンテナの偏波面に平行な方向の端部ほど励振振幅が小さいテーパ給電と、のうちのいずれかが適用されることを特徴とする平面アンテナである。
【0022】
この構成によれば、同分岐給電又はテーパ給電について、上記の効果を有する。
【発明の効果】
【0023】
このように、本開示は、スロットを形成した地導体を平面アンテナにネジ止めするために、放射素子及びスロットに代えてネジ穴を形成するにあたり、平面アンテナのサイドローブを増加させず、平面アンテナの利得を減少させず、平面アンテナの一部の分岐での分岐比率を変化させないことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術の平面アンテナの構成を示す図である。
図2】従来技術の平面アンテナの放射素子の励振振幅を示す図である。
図3】従来技術の平面アンテナの指向性を示す図である。
図4】従来技術の平面アンテナの分岐比率の設計方法を示す図である。
図5】本開示の平面アンテナの構成を示す図である。
図6】本開示の平面アンテナの放射素子の励振振幅を示す図である。
図7】本開示の平面アンテナの指向性を示す図である。
図8】本開示の平面アンテナの分岐比率の設計方法を示す図である。
図9】本開示の平面アンテナのテーパ給電を示す図である。
図10】変形例の平面アンテナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0026】
本開示の平面アンテナの構成を図5に示す。平面アンテナAは、第1地導体1、第1誘電体2、放射基板3、第2誘電体4及び第2地導体5が、この順に積層配置される。放射基板3は、トーナメント給電され格子配列される複数の放射素子31が形成される。第2地導体5は、複数の放射素子31に対応する位置に複数のスロット51が形成される。
【0027】
放射基板3において、複数の放射素子31のうちの一部の放射素子31に代えて、平面アンテナAの積層配置の固定用の放射基板孔32が形成される。第2地導体5において、複数のスロット51のうちの一部の放射素子31に対応する位置に形成される一部のスロット51に代えて、平面アンテナAの積層配置の固定用の地導体孔52が形成される。放射基板孔32及び地導体孔52を用いて、平面アンテナAの積層配置が固定される。
【0028】
本開示では、平面アンテナAのサイドローブが低減されるように、放射基板孔32及び地導体孔52を平面アンテナAの最外周に形成する。そして、平面アンテナAの積層配置が確実に固定されるように、放射基板孔32及び地導体孔52を平面アンテナAの最外周以外にも形成することも可能である。つまり、平面アンテナAのサイドローブの低減と、平面アンテナAの積層配置の確実な固定と、の間のトレードオフが生じない。
【0029】
本開示の平面アンテナの放射素子の励振振幅を図6に示す。本開示では、平面アンテナAのφ=0°偏波面において、サイドローブをできるだけ低減する一方で、平面アンテナAのφ=90°偏波面において、サイドローブを低減しなくてもよいことを考える。トーナメント給電の末端の4個の放射素子31-1、31-2、31-3、31-4のうちの1個の放射素子31-4に代えて、放射基板孔32-4が形成される。トーナメント給電として、平面アンテナAの全分岐での分岐比率が等しい同分岐給電を考える。
【0030】
放射素子31-4の削除前(図6の左上欄及び左下欄を参照。)では、放射素子31-1、31-2、31-3、31-4の励振振幅は、それぞれ、「1」、「1」、「1」、「1」である。すると、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-3の全励振振幅と、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-2、31-4の全励振振幅とは、それぞれ、「2」、「2」である。そして、平面アンテナAのφ=90°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-2の全励振振幅と、平面アンテナAのφ=90°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-3、31-4の全励振振幅とは、それぞれ、「2」、「2」である。さらに、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-3への全分岐電力と、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-2、31-4への全分岐電力とは、それぞれ、「2」、「2」である。
【0031】
放射素子31-4の削除後(図6の右上欄及び右下欄を参照。)では、放射素子31-4の削除前と異なり、放射素子31-1、31-2、31-3の励振振幅は、それぞれ、「1」、「2」、「1」である。すると、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-3の全励振振幅と、放射素子31-1、31-3を除く放射素子31-2の励振振幅とは、それぞれ、「2」、「2」である。そして、平面アンテナAのφ=90°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-2の全励振振幅と、放射素子31-1、31-2を除く放射素子31-3の励振振幅とは、それぞれ、「3」、「1」である。さらに、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1、31-3への全分岐電力と、放射素子31-1、31-3を除く放射素子31-2への分岐電力とは、それぞれ、「2」、「2」である。
【0032】
つまり、放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な各列の全励振振幅が変化せず、平面アンテナAのφ=0°偏波面のサイドローブが増加しない。そして、放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、平面アンテナAのφ=90°偏波面に垂直な各列の全励振振幅が変化し、平面アンテナAのφ=90°偏波面のサイドローブが増加する。本開示の平面アンテナの指向性を図7に示す。図7での主偏波は、φ=0°偏波を示す。放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、平面アンテナAのφ=0°偏波面のサイドローブが増加せず、平面アンテナAのφ=0°偏波面の利得も減少しない。
【0033】
さらに、放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、平面アンテナAの一部の分岐での分岐比率が変化しない。本開示の平面アンテナの分岐比率の設計方法を図8に示す。図8での給電回路6は、複数の放射素子31にトーナメント給電する。放射素子31-4の削除後では、放射素子31-4の削除前と比べて、放射素子31-4に直結する分岐での分岐比率が変化せず、放射素子31-4の上流側の分岐での分岐比率も変化せず、これに伴って、これらの分岐での分岐比率を再設計する必要がない。
【0034】
以上では、トーナメント給電として、平面アンテナAの全分岐での分岐比率が等しい同分岐給電を考えた。以下では、トーナメント給電として、平面アンテナAの中央ほど励振振幅が大きく、平面アンテナAのφ=0°偏波面に平行な方向の端部ほど励振振幅が小さいテーパ給電を考える。本開示の平面アンテナのテーパ給電を図9に示す。
【0035】
平面アンテナAの中央において、トーナメント給電の末端の4個の放射素子31-1C、31-2C、31-3C、31-4Cのうちの1個の放射素子31-4Cに代えて、放射基板孔32-4Cが形成される。平面アンテナAの端部において、トーナメント給電の末端の4個の放射素子31-1E、31-2E、31-3E、31-4Eのうちの1個の放射素子31-4Eに代えて、放射基板孔32-4Eが形成される。
【0036】
放射素子31-4Eの削除前(図9の左下欄を参照。)では、放射素子31-1E、31-2E、31-3E、31-4Eの励振振幅は、それぞれ、「0.2」、「0.3」、「0.2」、「0.3」である。すると、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1E、31-3Eの全励振振幅と、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-2E、31-4Eの全励振振幅とは、それぞれ、「0.4」、「0.6」である。そして、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1E、31-3Eへの全分岐電力と、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-2E、31-4Eへの全分岐電力とは、それぞれ、「0.4」、「0.6」である。放射素子31-4Cの削除前(図9の左上欄を参照。)については、平面アンテナAの中央ほど励振振幅が大きいことを除いて、放射素子31-4Eの削除前とほぼ同様である。
【0037】
放射素子31-4Eの削除後(図9の右下欄を参照。)では、放射素子31-4Eの削除前と異なり、放射素子31-1E、31-2E、31-3Eの励振振幅は、それぞれ、「0.2」、「0.6」、「0.2」である。すると、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1E、31-3Eの全励振振幅と、放射素子31-1E、31-3Eを除く放射素子31-2Eの励振振幅とは、それぞれ、「0.4」、「0.6」である。そして、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な方向に配列される放射素子31-1E、31-3Eへの全分岐電力と、放射素子31-1E、31-3Eを除く放射素子31-2Eへの分岐電力とは、それぞれ、「0.4」、「0.6」である。放射素子31-4Cの削除後(図9の右上欄を参照。)については、平面アンテナAの中央ほど励振振幅が大きいことを除いて、放射素子31-4Eの削除後とほぼ同様である。
【0038】
つまり、放射素子31-4C、31-4Eの削除後では、放射素子31-4C、31-4Eの削除前と比べて、平面アンテナAのφ=0°偏波面に垂直な各列の全励振振幅が変化せず、平面アンテナAのφ=0°偏波面のサイドローブが増加しない。そして、放射素子31-4C、31-4Eの削除後では、放射素子31-4C、31-4Eの削除前と比べて、平面アンテナAの一部の分岐での分岐比率が変化しない。
【0039】
このように、スロット51を形成した第2地導体5を平面アンテナAにネジ止めするために、放射素子31及びスロット51に代えて放射基板孔32及び地導体孔52を形成するにあたり、平面アンテナAのサイドローブを増加させず、平面アンテナAの利得を減少させず、平面アンテナAの一部の分岐での分岐比率を変化させないことができる。
【0040】
変形例の平面アンテナの構成を図10に示す。平面アンテナAは、第1地導体1、第1誘電体2及び放射基板3が、この順に積層配置される。放射基板3は、トーナメント給電され格子配列される複数の放射素子31が形成される。しかし、第2誘電体4及び第2地導体5は、積層配置されない。そして、第1地導体1、第1誘電体2及び放射基板3は、それぞれ、金属板等、発泡材料等及びフィルム基板等であり、別個の部品である。
【0041】
放射基板3において、複数の放射素子31のうちの一部の放射素子31に代えて、平面アンテナAの積層配置の固定用の放射基板孔32が形成される。放射基板孔32を用いて、平面アンテナAの積層配置つまり別個の部品の積層配置が固定される。
【0042】
図5から図9までと同様にして、トーナメント給電の末端の4個の放射素子31のうちの1個の放射素子31に代えて、放射基板孔32が形成される。図5から図9までと同様にして、平面アンテナAの偏波面に垂直な方向に配列される2個の放射素子31の全励振振幅と、当該2個の放射素子31を除く残りの放射素子31の励振振幅と、が等しい。
【0043】
このように、スロット51を形成することなく、第1地導体1、第1誘電体2及び放射基板3をネジ止めするために、放射素子31に代えて放射基板孔32を形成するにあたり、平面アンテナAのサイドローブを増加させず、平面アンテナAの利得を減少させず、平面アンテナAの一部の分岐での分岐比率を変化させないことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の平面アンテナは、平面アンテナのある偏波面のみにおいて、サイドローブをできるだけ低減すればよい用途(例えば、静止衛星のみとの衛星通信、又は、水平偏波面のみでのマイクロ回線)において、特に有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
A:平面アンテナ
1:第1地導体
2:第1誘電体
3:放射基板
4:第2誘電体
5:第2地導体
6:給電回路
31、31-1、31-2、31-3、31-4、31-1C、31-2C、31-3C、31-4C、31-1E、31-2E、31-3E、31-4E:放射素子
32、32-4、32-4C、32-4E:放射基板孔
51:スロット
52:地導体孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10