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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020187107
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076634
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 義一
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 起史
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥川 孝史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 元
(72)【発明者】
【氏名】原 晃
(72)【発明者】
【氏名】山上 憲
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/045470(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/130705(WO,A1)
【文献】特開2016-013554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
前記ケースに設けられたコイルと、
前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子と、
前記可動子が、可動子本体と、前記可動子本体に固定された錘を備え、
前記可動子本体の中心部には、前記ケースの開口部に向かって突出した突起部が設けられ、
前記錘の中心部には、前記ケースの開口部に向かって凹んだ凹部が設けられ、
前記突起部が前記凹部に挿入された状態で、前記可動子本体と前記錘が固定される
ことを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動子本体が、ポールピースと、マグネットとを備えることを特徴とする請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記錘の前記凹部の径が、前記錘の中心軸の径より大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記ポールピースは、前記マグネットにおける前記ケースの開口部側に固定され、
前記突起部が前記ポールピースの中心部に設けられている請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記錘は、
底部が振動軸と直交する方向に拡がり、筒部が前記ケースの開口部方向に開口した有底円筒部
を有することを特徴とする請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記錘は、その中心部に前記ケースの開口部側に向かって前記振動軸線方向に延びる円柱部が、前記有底円筒部と一体に設けられている請求項5に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記有底円筒部の前記筒部の外周は、前記可動子の最も外周側に位置している請求項5又は請求項6のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記錘は、前記円柱部の根元部分から前記筒部との間に、リブが設けられていることを特徴とする請求項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記リブの中心部が、前記リブの外周部より厚いことを特徴とする請求項8に記載の振動アクチュエータ。
【請求項10】
前記リブの前記ケースの開口部側面が少なくとも二つの異なる角度の平面から形成されていることを特徴とする請求項8又は請求項9のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関し、特に、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末、ゲーム機のコントローラ等に用いられる小型で軽量の振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話等の通信機器において、着信やアラームを人に知らせる方法として振動アクチュエータ(又は、振動モータ)を用いた振動による通知方法がある。そして、近年では、映画やゲーム、VR(Virtual Reality:仮想現実)の分野においても、例えば、アクションシーンの演出効果や、プレーヤーに対するフィードバック手段の一つとして振動アクチュエータが用いられており、振動により人の触覚を刺激することによってリアリティを向上させている。
【0003】
振動アクチュエータには、偏心錘をモータによって回転させて慣性力により振動を発生させる方法を用いるものもある。しかし、回転モータを利用した方法は、偏心錘の慣性力により振動を発生させるため、偏心錘が回転を始め振動が触感として得られるまでの反応が鈍く、リアリティが損なわれるという欠点があった。
【0004】
そこで、よりリアルな触感を得るためのアクチュエータとして、例えば、特許文献1に示すように、ボイスコイル型アクチュエータを採用する場合がある。かかる振動アクチュエータでは、筒状のケース内にマグネットを有する可動子を配置すると共に、可動子の周囲にはケースに固定されたコイルを配置し、そのコイルに通電することにより可動子をケース内で往復動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-28819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、可動子の構成部材であるポールピースと錘を固定するために、ポールピースに貫通穴を設けて、その貫通孔に錘の突起部を挿入していた。しかし、ポールピースはマクネットが発生した磁束の通り道(磁路)になっていることから、磁束を遮るような貫通穴が存在することは好ましくはない。特に、貫通穴がポールピースの中心部にあることから、マグネットの中心部からの磁束が貫通穴を通って大気中(ポールピス外部)に漏れ出てしまい、マグネットの磁力を効果的に利用できない。
【0007】
また、錘の重量や、そのバランス特性などを考慮して、錘の形状を単なる板状のものではなく、断面形状が複雑で、振動軸方向に背が高いものが採用されている。このような錘は、単なる板状の錘のようにプレス成型によって製造することは不可能であることから、錘全体を樹脂成型品で作成したり、樹脂内に金属をインサート成形したり、更には、溶けた金属を金型内に流し込んで固めるダイキャスト、金属粉末を金型内に供給して固化させる熱間等方圧プレス、金属射出成型(メタルインジェクション)などの成型方法によって作成される。このような成型方法よって錘を製造する場合、錘に細い突起部があると、金型の突起部分は他の部分に比較すると空間が狭く、そのような狭い部分に樹脂や金属材料を流入又は充填させることは難しい。
【0008】
更には、マグネットやホールピースは磁束を発生させ、磁路となることから、金属製であることが前提である。他方、錘については、その全体や一部を樹脂で製造することも提案されている。すなわち、板ばねで支持されている可動子が、振動アクチュエータの静止時に外部からの振動や衝撃などにより、ケース内で傾いてケース内面やコイルに接触する可能性がある。そのため、錘の背を振動軸方向に高くしたり、マグネットなどよりも外径を大きくしたりすると共に、樹脂製の錘や、少なくとも表面などが樹脂によって被覆されている錘を使用することにより、たとえ錘がケース内面に接触したとしても、錘やケース内面に損傷が発生しないという提案もなされている。
【0009】
また、上記のように可動子やケースの損傷を防止しつつ、錘の重量の調整を容易にするためには、錘の形状をおわん型のように、複雑な形状とすることが求められる。錘全体が樹脂で成形されたり、樹脂内部に金属をインサート成形などの手段で埋め込まれたりした錘の場合、従来の錘に設けられていた突起部も樹脂で作成されることが多い。そのような錘では、樹脂製の突起部に力が加わると、突起部が折損する恐れがあった。
【0010】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、最適な重量で強度の高い錘の製造が容易となり、振動特性に優れた振動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の振動アクチュエータは、次のような構成を有する。
(1)筒状のケース。
(2)前記ケースに設けられたコイル。
(3)前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子。
(4)前記可動子が、可動子本体と、前記可動子本体に固定された錘。
(5)前記可動子本体の中心部には、前記ケースの開口部に向かって突出した突起部が設けられている。
(6)前記錘の中心部には、前記ケースの開口部に向かって凹んだ凹部が設けられている。
(7)前記突起部が前記凹部に挿入された状態で、前記可動子本体と前記錘が固定される。
【0012】
本発明において、次のような構成を採用することができる。
(1)前記可動子本体が、ポールピースと、マグネットとを備える。
(2)前記錘の前記凹部の径が、前記錘の中心軸の径より大きい。
(3)前記ポールピースは、前記マグネットにおける前記ケースの開口部側に固定され、前記突起部が前記ポールピースの中心部に設けられている。
(4)前記錘は、底部が振動軸と直交する方向に拡がり、筒部が前記ケースの開口部方向に開口した有底円筒部を有する。
(5)前記錘は、その中心部に前記ケースの開口部側に向かって前記振動軸線方向に延びる円柱部が、前記有底円筒部と一体に設けられている。
(6)前記有底円筒部の前記筒部の外周は、前記可動子の最も外周側に位置している。
(7)前記錘は、前記円柱部の根元部分から前記筒部との間に、リブが設けられている。
(8)前記リブの中心部が、前記リブの外周部より厚い。
(9)前記リブの前記ケースの開口部側面が少なくとも二つの異なる角度の平面から形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最適な重量で強度の高い錘の製造が容易となり、振動特性に優れた振動アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の全体構成を示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態の全体構成を示す振動軸線方向で切断した断面図である。
図3】第1実施形態における錘、ポールピース及びマグネットの分解斜視図である。
図4】第1実施形態におけるケース本体、錘、板ばね及び制振部材の分解斜視図である。
図5】第1実施形態におけるケース本体、錘、板ばね及び制振部材が組み合わされた状態の斜視図である。
図6】第1実施形態において、三角形の軸孔及び中心軸の角と、貫通孔又はリブの位置関係を示す平面図である。
図7】第1実施形態における錘の形状を示す拡大図である。
図8】第1実施形態の作動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
以下、図1及び図2を用いて第1実施形態の振動アクチュエータ1について説明する。本実施形態の振動アクチュエータ1は、その振動軸線O方向1/2の箇所において中心軸と直交する対称面(図2の符号S)を境界として、同一形状の部材を設けたものである。そこで、各部材の構成については、対称形の一方の構成のみを説明し、他方については特別に必要がない限りは同一の符号を付すことで説明は省略する。また、「可動子の中心」という場合には、可動子における振動軸線O方向の中心、具体的には振動軸線Oと対称面Sとの交点をいい、振動軸線Oを軸心とする内外方向については、振動軸線Oを基準として内周或いは外周と表現する。
【0016】
振動アクチュエータ1は、主に、外殻をなす円筒状のケース2と、ケース2の内部に設けられたケース側電磁駆動部3と、ケース側電磁駆動部3により振動可能な可動子4と、可動子4をそれぞれケース2に対して弾性支持する板ばね5を備えている。
【0017】
ケース2は、円筒状のケース本体10と、その両端開口を閉じるカバーケース11、及びケース本体10の開口部近傍の内周部分に設けられたインナーガイド12を備えている。本実施形態において、ケース本体10、カバーケース11及びインナーガイド12は、それぞれABS等の樹脂材料からなるが、樹脂材料に限定されるものでない。ケース本体10の外面には、図示しないリード線が接続されるターミナル13が形成されている。
【0018】
電磁駆動部は、ケース側電磁駆動部3と、ケース本体10内に往復動自在に支持された可動子側電磁駆動部とからなる。
【0019】
ケース側電磁駆動部3は、ケース2に固定されたヨーク20と、コイル21を備える。すなわち、ケース2には、その内周に沿って配置された円筒状の軟磁性材料でなるヨーク20と、ヨーク20の内周にヨーク20と電気的に絶縁された状態で取り付けられたコイル21が設けられている。
【0020】
コイル21はヨーク20の内周に沿って巻回され、可動子4の外周部に対して所定の間隔を保って配置されている。振動時における可動子4とコイル21との接触を防止するため、コイル21の可動子4側の表面を覆うように、ケース本体10の内周にインナーガイド12が固定され、インナーガイド12の内周面と可動子4の外周面に隙間が設けられている。コイル21はターミナル13からの通電により磁場を発生可能である。コイル21は組み立てに際して、接着剤等によりヨーク20やインナーガイド12に仮止めしてもよい。また、コイル21はケース2の外部で巻回したものをケース本体10に挿入し、ヨーク20やインナーガイド12に接着固定してもよい。
【0021】
可動子4は、円筒状のケース2の中心軸方向である振動軸線Oに沿って振動するように、ケース本体10内に配置されている。可動子4は、円板状のマグネット30を備える可動子本体と、マグネット30に固定された錘32を備える。可動子本体は、マグネット30におけるケース2の開口部側に固定された円板状のポールピース31と、ポールピース31の表面に配置される錘32とを有している。これらのうち、マグネット30と、ポールピース31が、可動子側電磁駆動部を構成している。
【0022】
マグネット30は、その着磁方向が振動軸線O方向である。ポールピース31は、金属製の軟磁性材料でなり、金属板のプレス成型品から構成されている。また、ポールピース31は、マグネット30の磁気吸着力及び接着剤等により、マグネット30に取り付けられている。図2及び図3に示すように、ポールピース31の中心部には、ケース2の開口部に向かって突出した突起部311が設けられている。本実施形態では、ポールピース31をプレス成形して突起部311が設けられているため、ポールピース31の突起部311の反対側には凹部312が形成されている。一方、突起部311に対応する錘32の中心部には、ケース2の開口部に向かって凹んだ凹部321が形成されている。突起部311が凹部321に挿入された状態で、ポールピース31と錘32が固定される。マグネット30、ポールピース31、及び錘32の一体化は、上述した磁気吸着力や接着剤、挿入による取り付けに限定されるものではなく、ねじ止め等の機械的手段やその他の手段により固定することにより、一体化してもよい。
【0023】
図2に示すように、可動子4において、マグネット30の外形は、ポールピース31、錘32の外形よりも径方向に小さい。つまり、ポールピース31と錘32の外周が可動子4において最も外周側に位置しており、コイル21の内周と最も接近している。
【0024】
図2及び図3に示すように、錘32は非磁性体からなり、樹脂及び/又は金属の成型品から構成される。本実施形態では、錘全体を溶けた金属を金型内に流し込んで固めるダイキャストで作成しているが、樹脂成型品を用いたり、重量調整のため樹脂内に金属をインサート成形したり、金属粉末を金型内に供給して固化させる熱間等方圧プレス、金属射出成型(メタルインジェクション)などの成型方法によって作成したりしてもよい。錘32は、その中心部にケース2の開口部側に向かって振動軸線O方向に延びる円柱部322と、円柱部322の根元部分(振動軸線O方向中央側)から底部323が振動軸と直交する方向に拡がり、筒部325がケース2の開口部方向に開口した断面U字状をなした有底円筒部を備えている。円柱部322のマグネット30側の中心部には、ケース2の開口部に向かって凹んだ凹部321が形成されている。凹部321の径は、錘32の中心軸324の径より大きくなるように形成されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、錘32における円柱部322の先端中央部には、振動軸線O方向に突出した多角形の中心軸324が設けられる。例えば、錘32の中心軸324は、120度の間隔で角及び辺がある正三角形であり、角は円弧状に形成される。円盤状の底部323の外周縁には板ばね5側に立ち上がった筒部325が設けられると共に、底部323の表面には、円柱部322の根元部分から筒部325に達する3本のリブ326が120度間隔の等間隔で放射状に設けられている。
【0026】
リブ326は、錘32の円柱部322と接している中心部が外周部よりも厚く形成される。詳しくは、図7に示すように、リブ326は、円柱部322の周縁に沿って錘32の円柱部322と接している中心部の高さL1と、外周部の高さL2を異ならせる。そして、L1>L2となるように、リブ326の高さは、振動軸線O方向に最も背が高くなるように形成される。また、リブ326の上面、すなわちリブ326のケース2の開口部側は、少なくとも2つの異なる角度の平面から形成される。例えば、リブ326の中心部から外周部に向かって約3分の1は傾斜面326a、傾斜面端部から筒部325までの間は対称面Sと平行の平面326bのように2つの異なる角度の平面から形成されるとよい。
【0027】
図3に示すように、リブ326の位置は、三角形をした中心軸324の角の位置と対応付けられており、錘32と板ばね5との振動特性を考慮して最適の角度に設定されている。すなわち、中心軸324の角の位置によって、錘32と板ばね5との周方向の角度が決定されるが、板ばね5には腕部と切欠部というように錘32を支持する剛性が異なる箇所がある。一方、錘32も3本のリブ326の存在により、周方向の重量配分が均一でないことから、板ばね5の剛性の不均等と錘32の各部の重量バランスを考慮して、振動むらの発生が少ない状態となるように、中心軸324の角の位置とリブ326の位置を設定する。本実施形態においては、図6(b)に示すように、中心軸324の3つの角と、リブ326の位置との間に、振動軸線Oを基準として60度の角度のずれを有するように、中心軸324とリブ326が配置される。
【0028】
板ばね5は、金属の一枚ないし複数枚の板ばねで構成されており、例えば本実施形態ではステンレスの薄板を加工したものを使用している。板ばね5の材料は、金属に限らず樹脂や繊維を含む複合素材であってもよい。また、板ばね5の材料は、耐久性及び可撓性に優れた材料が望ましい。
【0029】
図4に示すように、板ばね5の内周部中心には、錘32の中心軸324が嵌合される多角形の軸孔50が設けられている。例えば、この軸孔50は、120度の間隔で角又は辺がある正三角形であり、角は円弧状に形成される。この軸孔50を利用して、板ばね5は錘32と連結されている。すなわち、正三角形に形成された軸孔50に、同じく正三角形に形成された錘32の中心軸324を挿通することで、板ばね5に対する錘32の位置合わせがなされる。そして、板ばね5の表面から突出した中心軸324が治具によって加熱又は加圧されて押し潰されることで、錘32の表面と板ばね5が重ね合わされた状態で加締められている。板ばね5と錘32との固定手段は加締めに限定されるものではなく、多角形の中心軸324と軸孔50を備えていれば、ねじ止めや接着等の他の方法により固定(連結)することもできる。
【0030】
図4に示すように、板ばね5は、その内周部に設けられた支持部51から外周方向へ渦巻き状に延びる3本の腕部52を有している。各腕部52は振動軸線Oの回りに120度間隔で等間隔に設けられている。各腕部52の外周端は、板ばね5の外周部にケース本体10の内周に沿って設けられた環状の枠部53に連結されている。
【0031】
前記のように本実施形態において、対称面を境界として2つの板ばね5が対称形に設けられている。これら2つの板ばね5の各腕部52の渦巻き方向は互いに逆方向になっている。これにより、アクチュエータの振動時において、可動子4は、2つの板ばね5から各々逆方向のトルクを受けるため、振動軸線O方向に往復動しても、振動軸線O回りに回転しない。
【0032】
図4に示すように、円筒状をしたケース本体10の端面には、ケース本体10の径方向内側に突出したフランジ部14が設けられ、このフランジ部14に振動軸線O方向に伸びる3本の突起部15が120度間隔で設けられている。板ばね5の外周の枠部53には、突起部15が挿入される3つの貫通孔54が120度間隔で設けられている。この場合、図6(a)に示すように、錘32の三角形をした中心軸324の3つの角及び板ばね5に設けられた三角形の軸孔50の3つの角と、板ばね5に設けられた3つの貫通孔54の位置との間に、振動軸線Oを基準として30度の角度のずれを有するように、板ばね5の軸孔50と3つの貫通孔54が配置される。
【0033】
各突起部15が各貫通孔54に挿入された状態で、各突起部15の先端が治具を用いて加熱又は加圧し、押し潰すことにより、ケース本体10の端面に板ばね5の枠部53が重ね合わされた状態で加締められている。枠部53と板ばね5との固定手段は加締めに限定されるものではなく、ねじ止めや接着等の他の方法により固定することもできる。
【0034】
このように構成された板ばね5は、振動軸線O方向及び対称面Sの面方向において所定の範囲で弾性変形可能である。なお、この所定の範囲は、振動アクチュエータ1として通常に使用した場合の可動子4の振幅範囲に相当する。従って、所定の範囲は、少なくとも板ばね5がケース2に接触しない範囲であり、板ばね5の弾性変形の限界を超えない範囲である。
【0035】
本実施形態において、板ばね5には、その振動特性を制御する制振部材41が設けられている。制振部材41は、図4に示すように、板ばね5の支持部51から各腕部52の一定の範囲までの形状に沿った外形の板状をなし、板ばね5の一面に固定されている。制振部材41は、板ばね5上に積層された、接着剤でなる第1接着層と、PE(ポリエチレン)でなるPE層と、接着剤でなる第2接着層と、エラストマでなるエラストマ層とからなっている。エラストマとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)が適切であるが、これに限定するものではない。制振部材41の弾性変形、具体的には、PE層や接着剤層のずり変形、エラストマ層の曲げ変形により、板ばね5の制振を行う。制振部材41と板ばね5との固定手段は、上記の接着によるものに限定されず、樹脂製の制振部材41を板ばね5に熱溶着する等、その他の固定手段を用いてもよい。
【0036】
[1-2.実施形態の作用]
以上のように構成された振動アクチュエータ1は、コイル21に通電していない状態において、図2に示すように、板ばね5で支持される可動子4が、振動軸線O方向の中央に位置している。
【0037】
可動子4を振動させる際には、ターミナル13を介して、コイル21に、交互に逆極性の磁界を発生する向きに交流を通電させる。即ち、コイル21の隣り合う部分に同極が発生するようになっている。例えば、図8に示す極性の場合、可動子4には実線矢印Aで示す振動軸線O方向の他側(図8における下方)への推力が発生し、コイル21へ流す電流を反転させれば、可動子4には点線矢印Bで示す振動軸線O方向の一側(図8における上方)への推力が発生する。このように、コイル21に交流を通電させれば、可動子4は板ばね5による付勢力を両側から受けながら、振動軸線Oに沿って振動する。
【0038】
可動子4に発生する推力は、基本的にはフレミングの左手の法則に基づいて与えられる推力に準じられる。本実施形態では、対称形の配置された2つのコイル21がケース2に固定されているので、マグネット30等が取り付けられた可動子4に2つのコイル21に発生する力の反力としての推力も発生する。
【0039】
そのため、振動軸線O方向に働く推力と、マグネット30の磁束の対称面S方向に働く推力を受け、錘32には、振動軸線Oを中心として回転する力が加わる。その際、錘32に設けられた正三角形の中心軸324の角が、錘32の回転止めとなり、可動子4は振動軸線Oに沿って振動する。
【0040】
[1-3.実施形態の効果]
(1)本実施形態では、可動子4に設けられた突起部311が錘32の凹部321に挿入された状態で、可動子4と錘32が固定される。よって、錘32に突起部を設ける必要がなく、錘32の形成が容易となる。
【0041】
(2)本実施形態では、ポールピース31に設けられた突起部311が錘32の凹部321に挿入された状態で、ポールピース31と錘32が固定される。よって、ポールピース31に貫通穴がないので、マグネット30からの磁力線がポールピース31の全域で捕捉され、ポールピース31内に流入するので、マグネット30からの磁力線の漏洩がなく、コイル21で発生した磁力を有効に利用して、可動子4を往復動させることができ、優れた振動特性を得ることができる。
【0042】
(3)錘32の中心部に、ケース2の開口部に向かって凹んだ凹部321が設けられている。よって、成型時に成形部材が型の中に流れやすくなり、小型で複雑な形状であっても錘32の製造が容易となり、振動特性に優れた振動アクチュエータを提供することができる。
【0043】
(4)本実施形態では、錘32の凹部321の径が、錘32の中心軸324の径より大きい。よって、成型時に成形部材が型の中に流れやすくなり、小型で複雑な形状であっても錘32の製造が容易となる。また、板ばね5の表面から突出した錘32の中心軸324を加締める際、加締め形状の真下の平面の面積が広くなり、安定して固定することが可能となる。さらに、錘32の凹部321の径が、錘32の中心軸324の径より大きいため、中心軸324のような凸部の作成も容易となる。
【0044】
(5)本実施形態では、錘32が、底部323が振動軸Oと直交する方向に拡がり、筒部325がケース2の開口部方向に開口した断面U字状をなした有底円筒部を有する。そのため、外部からの衝撃などが加わった際にも、錘32の筒部325がインナーガイド12に接触し、可動子4とコイル21の接触することを防止することができ、動作不良や異音を防止することが可能となる。
【0045】
(6)本実施形態では、錘32のその中心部に、ケース2の開口部側に向かって振動軸線O方向に延びる円柱部322が、有底円筒部と一体に設けられている。よって、最適な重量で強度の高い錘32の製造が容易となり、振動特性に優れた振動アクチュエータを提供することができる。
【0046】
(7)本実施形態では、筒部325の外周は、可動子4の最も外周側に位置している。そのため、外部からの衝撃などが加わった際にも、錘32の筒部325がインナーガイド12に接触し、可動子4とコイル21の接触することを防止することができる。
【0047】
(8)本実施形態では、円柱部322の根元部分から筒部325との間に、等間隔で放射状にリブ326が設けられている。そのため、筒部325が肉薄に成形された場合でも高い強度を保つことが可能となり、振動特性に優れた振動アクチュエータを提供することができる。
【0048】
(9)本実施形態では、錘32の円柱部322と接している中心部が外周部よりも厚く形成されている。よって、錘32の成型時に成形部材が型の中に流れやすくなり、錘32の製造が容易となる。また、錘32の中心部が重くなるため、可動子全体の重さのバランスの向上を図ることができる。さらに、板ばね5の表面から突出した錘32の中心軸324を加締める際、錘32の中心部が厚いため、安定して加締めることが可能となる。
【0049】
(10)本実施形態では、リブ326の上面、すなわちリブ326のケース2の開口部側は、少なくとも2つの異なる角度の平面から形成されている。よって、錘32の成型時に成形部材が型の中により流れやすくなり、小型で複雑な形状であっても錘32の製造が容易となる。
【0050】
[2.他の実施形態]
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、発明の範囲を限定することを意図しておらず、以下に列記するように、発明の要旨を逸脱しない範囲で、そのほかの様々な形態で実施されることが可能であり、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、これら実施形態、それらの組合せ、更にはそれらの変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下は、本発明に包含される実施形態の例である。
【0051】
(1)例えば、上記実施形態におけるポールピース31の突起部311及び錘32の凹部321は、いずれも中心部に設けたが、必ずしも中心部に設ける必要はない。また、突起部311と凹部321は、1つに限られず、両者の数が等しいものであれば、複数設けてもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、円柱部322の根元部分から筒部325との間に、等間隔で放射状にリブ326を設けたが、円柱部322又は筒部325の強度を補強するものであれば、必ずしも等間隔である必要はない。また、リブの形状も放射状に限られず、格子状や渦巻状などであってもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、リブ326は錘32の円柱部322と接している中心部が外周部よりも厚く形成、すなわち錘32の円柱部322と接している中心部が振動軸線O方向に最も背が高くなるように形成したが、錘32の円柱部322と接している中心部が対称面S方向に最も長くなるように形成してもよい。
【0054】
(4)上記実施形態では、板ばね5は制振部材41を有しているが、必ずしも制振部材を有していなくてもよい。
【0055】
(5)上記実施形態のケース2は円筒状をなしており、可動子4は略円柱状をなしているが、ケース及び可動子の形状はこれに限られるものではなく、多角形やその他の形状であってもよい。
【0056】
(6)上記の実施形態は、可動子のポールピース31に突起部311を設けたが、可動子の他の部材、例えばマグネット30の表面や、ポールピース31の錘側に他の部材を被覆或いは積層した場合には他の部材の表面に突起部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 振動アクチュエータ
2 ケース
3 ケース側電磁駆動部
4 可動子
5 板ばね
11 カバーケース
12 インナーガイド
13 ターミナル
14 フランジ部
15 突起部
20 ヨーク
21 コイル
30 マグネット
31 ポールピース
311 突起部
312 凹部
32 錘
321 凹部
322 円柱部
323 底部
324 中心軸
325 筒部
326 リブ
326a 傾斜面
326b 平面
41 制振部材
50 軸孔
51 支持部
52 腕部
53 枠部
54 貫通孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8