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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】浴室空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20240925BHJP
   F24D 15/02 20060101ALI20240925BHJP
   F24H 15/104 20220101ALI20240925BHJP
   F24H 15/31 20220101ALI20240925BHJP
   F24H 15/254 20220101ALI20240925BHJP
   F24H 15/212 20220101ALI20240925BHJP
【FI】
F24D3/00 J
F24D15/02 B
F24D3/00 A
F24H15/104
F24H15/31
F24H15/254
F24H15/212
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020188177
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077358
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】桑原 祥
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-056543(JP,A)
【文献】特開2002-071188(JP,A)
【文献】特開2005-061677(JP,A)
【文献】特開平06-288559(JP,A)
【文献】国際公開第2019/149999(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24D 15/02
F24H 15/104
F24H 15/212
F24H 15/254
F24H 15/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を加熱する熱源機と、
熱源機と複数の負荷端末との間で熱媒を循環させる循環管路と、
浴室空調機と、
浴室空調機以外の他の負荷端末と、
循環管路に設けられ、熱媒の浴室空調機への供給/遮断をする開閉弁と、
開閉弁よりも下流側の循環管路に設けられ、浴室空調機を流通する熱媒の温度を検知する温度検知部と、
浴室の室温を検知する室温検知部と、
制御部と、を備える浴室空調システムであって、
制御部は、開閉弁を閉弁させる浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の温度Txと室温検知部で検知される室温Trとの熱媒-室温温度差(Tx-Tr)が所定の第1判定閾値以上である場合、開閉弁の開故障判定を開始し、
浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の温度Txと室温検知部で検知される室温Trとの熱媒-室温温度差(Tx-Tr)が所定の第1判定閾値未満である場合、開閉弁の開故障の判定を規制する制御構成を有する浴室空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室空調システムにおいて、
制御部は、浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の停止中最低温度Tsを更新し、
浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の温度Txと室温検知部で検知される室温Trとの熱媒-室温温度差(Tx-Tr)が所定の第1判定閾値以上である場合、温度検知部で検知される熱媒の温度Txと停止中最低温度Tsとの停止中温度差(Tx-Ts)が所定の第2判定閾値以上となるかどうかから開閉弁の開故障を判定する浴室空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機で加熱された熱媒が循環する負荷端末として浴室空調機と他の負荷端末とを有する浴室空調システムに関する。特に、本発明は、熱媒の浴室空調機への供給/遮断をする浴室空調機の開閉弁の開故障を判定する浴室空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱媒を加熱するバーナやヒータなどの熱源機と、浴室内の温度を調節する浴室空調機や室内を暖房する床暖房パネルなどの複数の負荷端末と、熱源機とこれらの負荷端末との間で熱媒を循環させる循環管路とを備える浴室空調システムが知られている。浴室空調機以外に他の負荷端末を有する浴室空調システムでは、使用者の要求に応じて、複数の負荷端末を任意に運転させるため、循環管路に熱媒の浴室空調機への供給/遮断をする熱動弁などの開閉弁を設け、制御部からの信号に応じて開閉弁を開閉制御している(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のような浴室空調システムでは、開閉弁が開故障すると、制御部からの信号に応じた熱媒の供給が制御できず、各負荷端末が適切に制御できなくなる。例えば、制御部から閉信号が出力されているにも関わらず、開閉弁が閉弁しない開故障が生じている場合、浴室空調機に熱媒が流通するため、熱媒が放熱する。その結果、他の負荷端末の熱効率が低下するだけでなく、開故障が生じていない場合よりも熱源機で高温に熱媒を加熱する必要があり、エネルギーが無駄に消費されてしまうという問題がある。
【0004】
複数の床暖房パネルのみを有する暖房システムでは、熱源機と床暖房パネルとを接続する往き配管と戻り配管とにそれぞれ温度センサを設けるとともに、各床暖房パネルをバイパスするバイパス管で往き配管と戻り配管とを接続させ、開閉弁を閉弁させてから一定時間内に両温度センサで検知される熱媒の温度に温度差が生じるかどうかから、開閉弁の開故障を判定することが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-61677号公報
【文献】特開平6-288559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように熱媒の温度を検知するために複数の温度センサを設けたり、バイパス管を設けたりすると、コストが増加する。また、浴室空調機の暖房運転の停止中であっても、浴槽に湯水が供給されていたり、シャワーなどで湯水が使用されていたりすると、浴室の室温が上昇するため、浴室と連通している浴室空調機内が加温される。その結果、開閉弁が正常に閉弁されて浴室空調機に加熱された熱媒が供給されていないにも関わらず、浴室の使用により熱媒の温度を検知している温度センサの温度が上昇する場合があるため、開故障と誤って判定される虞がある。特に、配管の表面に接触させた温度センサで配管温度を検知することにより熱媒の温度を検知する場合、検知温度が浴室の室温に影響されるため、誤判定が生じやすい。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、浴室空調機以外に他の負荷端末を有する浴室空調システムにおいて、開閉弁が正常に閉弁されているにも関わらず開故障と誤って判定される誤判定を低コストで防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
熱媒を加熱する熱源機と、
熱源機と複数の負荷端末との間で熱媒を循環させる循環管路と、
浴室空調機と、
浴室空調機以外の他の負荷端末と、
循環管路に設けられ、熱媒の浴室空調機への供給/遮断をする開閉弁と、
開閉弁よりも下流側の循環管路に設けられ、浴室空調機を流通する熱媒の温度を検知する温度検知部と、
浴室の室温を検知する室温検知部と、
制御部と、を備える浴室空調システムであって、
制御部は、開閉弁を閉弁させる浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の温度Txと室温検知部で検知される室温Trとの熱媒-室温温度差(Tx-Tr)が所定の第1判定閾値以上である場合、開閉弁の開故障判定を開始し、
浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の温度Txと室温検知部で検知される室温Trとの熱媒-室温温度差(Tx-Tr)が所定の第1判定閾値未満である場合、開閉弁の開故障の判定を規制する制御構成を有する浴室空調システムが提供される。
【0009】
開閉弁が正常に閉弁されていれば、開閉弁よりも下流側の循環管路には熱媒は流通しないから、他の負荷端末の運転状態に関わらず、熱媒の温度が低下する。一方、開閉弁が開故障していれば、他の負荷端末が運転されているとき、熱媒が浴室空調機を流通するから、温度検知部で検知される熱媒の温度が変化する。従って、上記浴室空調システムによれば、浴室空調機以外に他の負荷端末が設けられている場合でも、浴室空調機をバイパスするバイパス管を設けることなく、単一の温度検知部で検知される熱媒の温度を利用して開閉弁の開故障を判定することができる。
【0010】
また、開閉弁が正常に閉弁されていても、浴室が使用されていると熱媒の温度を検知している温度検知部の温度が上昇することがあるから、1つの温度検知部で検知される熱媒の温度だけに基づき開故障を判定すると、誤判定する虞がある。しかしながら、上記浴室空調システムによれば、温度検知部で検知される熱媒の温度だけでなく、浴室の室温にも基づいて開故障を判定するから、開閉弁が正常に閉弁されているときの開故障の誤判定を防止することができる。
また、温度検知部で検知される熱媒の温度と室温との熱媒-室温温度差が所定の第1判定閾値未満である場合、浴室の使用により室温が上昇して温度検知部で検知される熱媒の温度が上昇していると考えられるから、開故障の判定を規制することにより、確実に開故障の誤判定を防止することができる。なお、開故障の判定を規制するとは、その判定自体を規制すること及び判定自体は実行するがその判定結果を反映しないことを含むものである。
【0011】
好ましくは、上記浴室空調システムにおいて、
制御部は、浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の停止中最低温度Tsを更新し、
浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の温度Txと室温検知部で検知される室温Trとの熱媒-室温温度差(Tx-Tr)が所定の第1判定閾値以上である場合、温度検知部で検知される熱媒の温度Txと停止中最低温度Tsとの停止中温度差(Tx-Ts)が、所定の第2判定閾値以上となるかどうかから開閉弁の開故障を判定する。
【0012】
浴室空調機の暖房運転を停止させる場合、浴室空調機への熱媒の供給を遮断するために開閉弁を閉弁させるが、開閉弁が正常に閉弁されており、浴室も使用されていなければ、温度検知部で検知される熱媒の温度は徐々に低下し、温度検知部で検知される熱媒の停止中最低温度は常温程度まで低下する。また、浴室空調機の暖房運転の停止中、他の負荷端末が運転されていて、開閉弁の開故障が生じているとき、または開閉弁は正常に閉弁しているが、浴室の使用により室温が上昇しているときのいずれであっても、温度検知部で検知される熱媒の温度は停止中最低温度より一定温度以上、上昇する場合がある。従って、温度検知部で検知される熱媒の温度と停止中最低温度との停止中温度差のみに基づき開閉弁の開故障を判定すると、誤判定する可能性がある。
【0013】
しかしながら、開閉弁が正常に閉弁されているにも関わらず、浴室の使用により室温が上昇すると、温度検知部で検知される熱媒の温度も室温に追従するから、上昇した温度検知部で検知される熱媒の温度と室温との熱媒-室温温度差は小さい。従って、浴室空調機の暖房運転の停止中、温度検知部で検知される熱媒の温度と室温検知部で検知される室温との熱媒-室温温度差が所定の第1判定閾値以上である場合、温度検知部で検知される熱媒の温度の上昇は室温の上昇に起因するものではないと考えられる。
【0014】
そして、低温負荷端末または高温負荷端末のいずれが運転されているときでも、要求される熱媒の温度は常温よりも高温であるから、温度検知部で検知される熱媒の温度と停止中最低温度との停止中温度差が所定の第2判定閾値以上であれば、開故障が生じている状態で他の負荷端末が運転されており、加熱された熱媒が浴室空調機に流通していると判定することができる。これにより、確実に開閉弁の開故障を判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、浴室空調機以外に他の負荷端末を有する浴室空調システムにおいて、開閉弁の開故障が生じていないにも関わらず、開故障と判定される誤判定を低コストで確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る浴室空調システムを示す概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る浴室空調システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る浴室空調システムを、熱源機である給湯装置1と、高温負荷端末である浴室内を暖房乾燥する浴室空調機5及び追焚き用の風呂熱交換器6と、低温負荷端末である床暖房パネル7及びパネルヒータ8とを有する暖房及び追焚き機能付き給湯システムに適用した場合を例に挙げて説明する。なお、これらの負荷端末は一例ではあるが、例えば、要求される熱媒の温度が60℃以上の負荷端末を高温負荷端末、要求される熱媒の温度が60℃未満の負荷端末を低温負荷端末と規定することができる。
【0019】
図1に示すように、給湯装置1は、給湯側燃焼系統30と暖房・追焚き側燃焼系統40とにより構成されている。給湯側燃焼系統30は、給湯側バーナユニット33と給湯側熱交換器31とを有し、暖房・追焚き側燃焼系統40は、暖房側バーナユニット43及び暖房側熱交換器41とを有する。
【0020】
給湯側燃焼系統30は、上水道に連通し、給湯側熱交換器31の上流端に接続された給水路90と、カラン等の給湯端末3に連通し、給湯側熱交換器31の下流端に接続された給湯路100とを備える。この構成により、上水道から給水路90に供給される水が、給湯側バーナユニット33から放出される燃焼排気によって給湯側熱交換器31で熱交換加熱され、加熱された湯水が給湯路100を介して給湯端末3に供給される。
【0021】
図示しないが、給湯側バーナユニット33の下方には、送風ファンが設けられており、送風ファンの作動によって、筐体10内に吸入された外部の空気が、給湯側バーナユニット33及び暖房側バーナユニット43に燃焼用空気として供給される。
【0022】
給湯路100からは湯張り路250が分岐しており、湯張り路250は浴槽4に接続された風呂戻り路251に連通している。風呂戻り路251は、風呂往き路252とともに、浴槽4と風呂熱交換器6との間で追焚き回路を構成している。湯張り路250には、湯張り路250を開閉する湯張り電磁弁260が設けられている。風呂戻り路251には、浴槽4内の湯水を風呂往き路252及び風呂戻り路251を介して循環させるための風呂ポンプ224が設けられている。
【0023】
暖房・追焚き側燃焼系統40は、暖房側熱交換器41の上流端に接続された暖房戻り路200と、暖房側熱交換器41の下流端に接続された暖房往き路210とを備える。暖房往き路210及び暖房戻り路200は、浴室空調機5に接続されている。また、浴室空調機5と暖房側熱交換器41との間の暖房戻り路200には、シスターン201が介設されている。シスターン201の下流側の暖房戻り路200には、暖房・追焚き側燃焼系統40と各負荷端末との間で湯水を循環させるための暖房ポンプ211が設けられている。また、暖房戻り路200には、暖房ポンプ211より下流側の中間部から低温分岐路216が分岐しており、低温分岐路216は床暖房パネル7やパネルヒータ8を接続するための低温側熱動弁212に繋がっている。各低温側熱動弁212と床暖房パネル7及びパネルヒータ8との間は、床暖房パネル7やパネルヒータ8に湯水を供給する低温暖房往き路217で接続されている。また、シスターン201よりも上流側の暖房戻り路200には、床暖房パネル7やパネルヒータ8からの湯水を戻す低温暖房戻り路218が接続されている。なお、本実施の形態では、熱媒として湯水が用いられているが、他の熱媒(例えば、不凍液)が用いられてもよい。
【0024】
シスターン201には、給水路90から分岐し、シスターン201に水を補充するための補水路204が接続されている。補水路204には、補水電磁弁203が設けられており、補水電磁弁203を開くことで、上水道から給水路90に導入された水がシスターン201に供給される。
【0025】
浴室空調機5よりも上流側の暖房往き路210には、風呂分岐路240が接続されており、風呂分岐路240の途中には、既述した風呂熱交換器6が設けられている。この構成により、風呂熱交換器6において、風呂戻り路251及び風呂往き路252を循環する湯水と風呂分岐路240内を流通する湯水との間で熱交換(液-液熱交換)が行われ、浴槽4の湯水が加熱される。従って、既述したように風呂戻り路251及び風呂往き路252の追焚き回路と風呂分岐路240とに介設された風呂熱交換器6は高温負荷端末を構成する。風呂熱交換器6の上流端に接続された風呂分岐路240には、風呂分岐路240の開度を変更する追焚き流量制御弁220が設けられている。風呂熱交換器6の下流端に接続された風呂分岐路240は、浴室空調機5の暖房運転の停止中に追焚き運転が行われるとき、風呂分岐路240を流通する湯水が浴室空調機5を介さずに暖房側熱交換器41に戻るように、浴室空調機5よりも下流側で、シスターン201よりも上流側の暖房戻り路200に接続されている。また、風呂分岐路240の接続部よりも下流側で、浴室空調機5よりも上流側の暖房往き路210には、バイパス路241の上流端が接続されており、バイパス路241の下流端は、シスターン201よりも上流側で、浴室空調機5よりも下流側の暖房戻り路200に接続されている。従って、本実施の形態では、暖房側熱交換器41と各負荷端末との間で熱媒が循環する暖房往き路210、暖房戻り路200、低温分岐路216、低温暖房往き路217、低温暖房戻り路218、風呂分岐路240、及びバイパス路241からなる流体流路が循環管路2を構成する。
【0026】
浴室空調機5は、ケーシング本体内に、循環ファン50と、暖房側熱交換器41から供給される湯水が流通する熱交換器51と、各種運転を実行するための空調機コントローラC5とを備える。また、ケーシング本体内の熱交換器51の上流端に接続された暖房往き路210には、湯水の熱交換器51への供給/遮断及び湯水の供給流量を調節する熱動弁(開閉弁)52が設けられている。また、熱動弁52よりも暖房往き路210の下流側であって、熱動弁52と熱交換器51との間の配管の表面には、配管温度を検知することにより、熱交換器51に供給される湯水の温度を検知する温度センサ(温度検知部)53が設けられている。さらに、ケーシング本体内の吸い込み口近傍には、浴室内の室温を検知する室温センサ(室温検知部)54が設けられている。熱動弁52、温度センサ53、及び室温センサ54や循環ファン50のファンモータ(図示せず)、脱衣室に設置される空調機リモコンRaは、電気配線を介して空調機コントローラC5に接続されている。空調機コントローラC5は、マイクロコンピュータを備え、空調機リモコンRaで所定の操作が行われると、各種の運転プログラムに従って、浴室空調機5の作動を制御する。また、空調機コントローラC5は、熱動弁52の開故障を判定する判定手段を備えており、温度センサ53及び室温センサ54から出力される検知信号に基づき、熱動弁52の開故障を判定する。従って、本実施の形態では、空調機コントローラC5が熱動弁52の開故障を判定する制御部を構成する。
【0027】
床暖房パネル7は、室内を暖房する温調パネル71と、暖房側熱交換器41から供給される湯水が流通する配管72と、各種運転を実行するためのマイクロコンピュータからなる床暖房コントローラC7とを備える。床暖房コントローラC7は、図示しない温度センサや居室に設置される床暖房リモコンRdと電気配線を介して接続されている。同様に、パネルヒータ8は、室内を暖房するパネル81と、暖房側熱交換器41から供給される湯水が流通する配管82と、各種運転を実行するためのマイクロコンピュータからなるパネルヒータコントローラC8とを備える。パネルヒータコントローラC8は、図示しない温度センサや居室に設置されるパネルヒータリモコンReと電気配線を介して接続されている。
【0028】
給湯装置1は、各種運転を実行するためのマイクロコンピュータからなる熱源機コントローラC1を備える。熱源機コントローラC1は、上記した給湯装置1内の各種制御弁、図示しない温度センサや流量センサなどの各種センサ、給湯運転を行うための台所に設置される熱源機の端末である給湯リモコンRc、浴室に設置される風呂リモコンRbと電気配線を介して接続されている。また、熱源機コントローラC1は、既述した空調機コントローラC5、床暖房コントローラC7、及びパネルヒータコントローラC8と通信可能に接続されている。
【0029】
各リモコンRa~Reは、温度や時間を設定するための操作部と、設定温度や運転状態、故障情報などの各種情報を表示するための表示部Da~Deと、図示しない各リモコンRa~Reの作動を制御するリモコン制御部とを有する。さらに、給湯リモコンRcは、外部の通信端末9(例えば、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末装置)と無線通信するための通信部C11を有しており、外部の通信端末9は、給湯リモコンRcを介して熱源機コントローラC1から出力される信号に応じて、表示部Dfに故障情報などの各種情報を表示する。従って、これらのリモコンRa~Reの表示部Da~De及び外部の通信端末9の表示部Dfは、報知部を構成する。図示しないが、空調機リモコンRa以外のリモコンRb~Reや外部の通信端末9は、浴室空調機5に異常が生じた場合、所定の情報を表示部Db~Dfに表示させるかどうかを設定するための特定スイッチを有する。
【0030】
各負荷端末が単独で運転される場合について概略的に説明すると、浴室空調機5で暖房運転が実行される場合、使用者が空調機リモコンRaをオン操作して暖房運転をオンすると、空調機コントローラC5は熱動弁52を開弁させる。また、空調機コントローラC5が運転開始を指示する信号を熱源機コントローラC1に出力すると、熱源機コントローラC1は暖房ポンプ211を作動させるとともに、暖房側バーナユニット43で燃焼を開始させる。そして、熱源機コントローラC1は、暖房側熱交換器41から高温(例えば、80℃)の湯水が浴室空調機5に供給されるように、暖房側バーナユニット43の燃焼量を制御する。温度センサ53で検知される湯水の温度が上昇して、空調機コントローラC5が循環ファン50を作動させると、浴室内に温風が吹き出される。
【0031】
また、風呂リモコンRbで追焚き運転が実行される場合、上記と同様に、使用者が風呂リモコンRbをオン操作して追焚き運転をオンすると、熱源機コントローラC1は暖房ポンプ211を作動させるとともに、追焚き流量制御弁220を開弁させ、暖房側バーナユニット43で燃焼を開始させる。また、熱源機コントローラC1は、暖房側熱交換器41から高温(例えば、80℃)の湯水が風呂熱交換器6に供給されるように、暖房側バーナユニット43の燃焼量を制御する。そして、熱源機コントローラC1が風呂ポンプ224を作動させて、浴槽4の湯水を風呂戻り路251及び風呂往き路252に循環させることにより、浴槽4の湯水が加熱される。
【0032】
また、床暖房パネル7で暖房運転が実行される場合、使用者が床暖房リモコンRdをオン操作して暖房運転をオンすると、床暖房コントローラC7は熱源機コントローラC1に対して運転開始を指示する信号を出力する。熱源機コントローラC1は暖房ポンプ211を作動させるとともに、床暖房パネル7用の低温側熱動弁212を開弁させ、暖房側バーナユニット43で燃焼を開始させる。そして、熱源機コントローラC1は、暖房側熱交換器41から低温(例えば、40℃)の湯水が床暖房パネル7に供給されるように、暖房側バーナユニット43の燃焼量及び低温側熱動弁212の開閉を制御する。パネルヒータ8が単独で暖房運転が実行される場合の制御動作は、上記床暖房パネル7のそれと同様である。
【0033】
また、複数の負荷端末の運転が同時に実行される場合、熱動弁52などの制御弁の作動は上記の各負荷端末が単独で運転されている場合のそれと略同様であるが、例えば、高温負荷端末である浴室空調機5で暖房運転が実行されるとともに、高温負荷端末である風呂熱交換器6で浴槽4の湯水を追焚きする追焚き運転が実行される場合、暖房側熱交換器41から高温の湯水が浴室空調機5及び風呂熱交換器6に供給される。
【0034】
次に、本実施の形態の浴室空調システムにおいて、浴室空調機5の暖房運転の停止中に熱動弁52の開故障を判定する制御動作について、図2を参照して説明する。なお、本実施の形態では、浴室空調機5で暖房運転が開始されるごとに、熱動弁52の開故障を判定する前回の停止中最低温度がリセットされるように構成されているが、暖房運転の停止時に前回の停止中最低温度をリセットしてもよい。
【0035】
使用者が空調機リモコンRaで暖房運転のオフ操作をすると、空調機コントローラC5は熱動弁52を閉弁させる閉信号を出力する。そして、浴室空調機5の次の暖房運転が開始されるまで、温度センサ53で検知される湯水の温度を取得し、所定の計測時間(例えば、5分間)内の湯水の最低温度がそれまでの最低温度よりも低下すると、その最低温度を新たな停止中最低温度Tsとして更新する(ステップS1)。熱動弁52が正常に閉弁しており、浴室も使用されていなければ、他の負荷端末が運転されても浴室空調機5には湯水は流通せず、浴室の室温も上昇しないため、停止中最低温度は、通常、常温程度まで低下する。このとき、より正確に熱動弁52の開故障を判定するため、浴室空調機5の暖房運転のオフ操作をしてから所定時間、経過するのを待って、湯水の温度の取得を開始させてもよい。
【0036】
また、空調機コントローラC5は、浴室空調機5の暖房運転の停止中、温度センサ53で検知される湯水の温度Txと、室温センサ54で検知される室温Trとを監視し、温度センサ53で検知される湯水の温度と室温との熱媒-室温温度差(Tx-Tr)が、所定の第1判定閾値Z1(例えば、10℃)以上であるかどうかを判定する(ステップS2)。このとき、熱媒-室温温度差が第1判定閾値以上であれば(ステップS2で、Yes)、室温よりも温度センサ53で検知される湯水の温度が上昇してきているから、熱動弁52が開故障している状態で、例えば追焚き運転が実行され、加熱された湯水が浴室空調機5に流通している可能性がある。
【0037】
このため、温度センサ53で検知される湯水の温度Txと、更新された停止中最低温度Tsとの停止中温度差(Tx-Ts)が、所定の第2判定閾値Z2(例えば、25℃)以上となるかどうかを判定する(ステップS3)。
【0038】
このとき、停止中温度差が第2判定閾値以上であれば(ステップS3で、Yes)、所定温度以上、温度センサ53で検知される湯水の温度が上昇しているから、熱動弁52が開故障している状態で他の負荷端末で運転が行われ、加熱された湯水が浴室空調機5に流通していると判定できる。なお、浴室空調機5で暖房運転は実行されていないものの、浴室空調機5に加熱された湯水が流通することにより、熱交換器51が加熱されて、浴室空調機5近傍が温められている。従って、使用者に異常を認識させるため、空調機リモコンRaの表示部Daに熱動弁52が開故障していることを示す警告情報を表示させる。また、熱源機コントローラC1に故障信号を出力し、熱源機コントローラC1は熱動弁52の開故障の履歴を記憶する(ステップS4~S5)。
【0039】
一方、温度センサ53で検知される湯水の温度Txと、室温センサ54で検知される室温Trとの熱媒-室温温度差(Tx-Tr)が第1判定閾値Z1未満であれば、温度センサ53で検知される湯水の温度の上昇は室温に追従している可能性がある。このため、熱媒-室温温度差が第1判定閾値未満であれば(ステップS2で、No)、停止中温度差と第2判定閾値との対比を行うことなく、開故障の判定を規制する。なお、停止中最低温度は次の暖房運転が開始されるまで継続して更新される一方、浴室の利用は一定時間で終了するから、浴室の利用が終了して室温の影響のない状態で熱媒-室温温度差が第1判定閾値以上となるかどうかを判定すれば、確実に熱動弁52の開故障を判定することができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態によれば、浴室空調機5に接続されている循環管路2に設けられた熱動弁52の下流側に浴室空調機5を流通する湯水の温度を検知する温度センサ53を設けているから、熱動弁52が正常に閉弁されており、浴室空調機5で暖房運転が実行されていなければ、温度センサ53で検知される湯水の温度が低下する。一方、熱動弁52に開故障が生じた状態で他の負荷端末が運転されていれば、熱動弁52の下流側に設けられた温度センサ53で検知される湯水の温度が上昇する。従って、浴室空調機5の上流側及び下流側に湯水の温度を検知する複数の温度センサを設けたり、熱動弁52の開故障を判定するために浴室空調機5をバイパスするバイパス管を設けたりすることなく、1つの温度センサ53で検知される湯水の温度に基づいて、熱動弁52の開故障を判定することができる。
【0041】
また、浴室空調機5の暖房運転の停止中、他の負荷端末が運転されていて、熱動弁52の開故障が生じているとき、または熱動弁52は正常に閉弁しているが、浴室の使用により室温が上昇しているときのいずれであっても、温度センサ53で検知される湯水の温度は停止中最低温度よりも一定温度以上、上昇する場合がある。従って、1つの温度センサ53で検知される湯水の温度と停止中最低温度との停止中温度差のみに基づき熱動弁52の開故障を判定すると、誤判定する可能性がある。しかしながら、本実施の形態によれば、温度センサ53で検知される湯水の温度だけでなく、浴室の室温にも基づいて開故障を判定するから、熱動弁52が正常に閉弁されているときの開故障の誤判定を防止することができる。
【0042】
すなわち、熱動弁52が正常に閉弁されているにも関わらず、浴室の使用により室温が上昇すると、温度センサ53で検知される湯水の温度も室温に追従するから、上昇した温度センサ53で検知される湯水の温度と室温との熱媒-室温温度差は小さい。従って、浴室空調機5の暖房運転の停止中、温度センサ53で検知される湯水の温度と室温センサ54で検知される室温との熱媒-室温温度差が第1判定閾値以上である場合、温度センサ53で検知される湯水の温度の上昇は室温の上昇に起因するものではないと考えられる。また、既述したように、熱動弁52が正常に閉弁されていれば、熱動弁52よりも下流側の循環管路2には湯水は流通しないため、湯水の温度が徐々に低下し、温度センサ53で検知される湯水の温度は常温程度まで低下している。
【0043】
そして、低温負荷端末または高温負荷端末のいずれが運転されているときでも、要求される湯水の温度は常温よりも高温であるから、温度センサ53で検知される湯水の温度と停止中最低温度との停止中温度差が第2判定閾値以上であれば、開故障が生じている状態で他の負荷端末が運転されており、加熱された湯水が浴室空調機5に流通していると判定することができる。これにより、確実に熱動弁52の開故障を判定することができる。
【0044】
一方、温度センサ53で検知される湯水の温度と室温との熱媒-室温温度差が第1判定閾値未満である場合、浴室の使用により室温が上昇して温度センサ53で検知される湯水の温度が追従していると考えられるから、第2判定閾値による開故障の判定を規制することにより、確実に開故障の誤判定を防止することができる。
【0045】
なお、浴室空調機5の暖房運転の停止中、熱動弁52の開故障が生じておらず、浴室も使用されていない場合、温度センサ53で検知される湯水の温度と、室温センサ54で検知される室温はいずれも常温程度となって、熱媒-室温温度差は第1判定閾値未満となる。従って、この場合、第2判定閾値による開故障の判定は行われないが、熱動弁52は正常に閉弁されているから、開故障の誤判定は生じない。そして、浴室空調機5の暖房運転の停止後に他の負荷端末の運転が開始された場合、熱動弁52が開故障していれば、上記のように高温の湯水が浴室空調機5に供給されるから、熱媒-室温温度差は第1判定閾値以上となり、停止中温度差も第2判定閾値以上となるため、確実に開故障を判定することができる。
【0046】
また、高温端末である浴室空調機5の暖房運転の停止から短時間内は温度センサ53で検知される湯水の温度は室温よりも高温であるため、熱媒-室温温度差は第1判定閾値以上となるが、停止中最低温度も高温となり、温度センサ53で検知される湯水の温度と停止中最低温度との停止中温度差は第2判定閾値未満となるため、開故障が生じていると誤判定されるのを防止することができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、浴室空調機5以外に他の負荷端末を有する浴室空調システムにおいて、熱動弁52の開故障が生じていないにも関わらず、開故障と判定される誤判定を低コストで確実に防止することができる。
【0048】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、開閉弁として熱動弁が使用されている。しかしながら、開閉弁として流量制御弁などの他の開閉弁を使用してもよい。
【0049】
(2)上記実施の形態では、空調機コントローラによって開閉弁の開故障が判定されている。しかしながら、温度センサで検知される熱媒の温度及び室温センサで検知される室温に基づいて開閉弁の開故障を判定できれば、他のコントローラによって開閉弁の開故障が判定されてもよい。例えば、空調機コントローラと通信接続されている熱源機コントローラによって開閉弁の開故障が判定されてもよい。この場合、熱源機コントローラが制御部として機能する。
【0050】
(3)上記実施の形態では、温度センサで検知される湯水の温度と、室温センサで検知される室温とに基づき、開閉弁の開故障が判定されている。しかしながら、熱媒の温度は、熱源機の運転状態、外気温など外的要因によって変化する。従って、より正確に開閉弁の開故障を判定するため、さらに他の外的要因を考慮した補正値を使用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 給湯装置(熱源機)
5 浴室空調機
6 風呂熱交換器
7 床暖房パネル
8 パネルヒータ
9 外部の通信端末
52 熱動弁(開閉弁)
53 温度センサ(温度検知部)
54 室温センサ(室温検知部)
C5 空調機コントローラ



図1
図2