(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】アレイアンテナ校正装置、アレイアンテナ装置及びアレイアンテナ校正プログラム
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/26 20060101AFI20240925BHJP
H01Q 3/28 20060101ALI20240925BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01Q3/26 Z
H01Q3/28
H01Q21/06
(21)【出願番号】P 2020192363
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】工藤 俊紀
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225845(JP,A)
【文献】特開2016-201769(JP,A)
【文献】特表平05-505466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/26
H01Q 3/28
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出する振幅補正量算出部と、
各アンテナ素子が共通に有するデジタル信号処理部と、各アンテナ素子が個々に有する各アナログ振幅調整部と、に前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量を分担し、前記フェーズドアレイアンテナの全体として、全アナログ振幅調整部に分担する全アンテナ素子の振幅補正量を低減する振幅補正量分担部と、
を備えることを特徴とするアレイアンテナ校正装置。
【請求項2】
前記振幅補正量分担部は、前記デジタル信号処理部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量としてステップ値を設定するときのステップ幅を、各アナログ振幅調整部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量としてステップ値を設定するときのステップ幅より狭くする
ことを特徴とする、請求項1に記載のアレイアンテナ校正装置。
【請求項3】
前記振幅補正量分担部は、前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量が負の値及び正の値の両方を含むときに、前記デジタル信号処理部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量として、前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量の最大値、最小値並びに平均値及び中央値を含む中間値のいずれかを設定する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアレイアンテナ校正装置。
【請求項4】
前記振幅補正量分担部は、(1)前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量が負の値のみを含むときに、前記デジタル信号処理部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量として、前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量の最大値を設定し、(2)前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量が正の値のみを含むときに、前記デジタル信号処理部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量として、前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量の最小値を設定する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアレイアンテナ校正装置。
【請求項5】
前記振幅補正量算出部は、複数の前記フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のアレイアンテナ校正装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のアレイアンテナ校正装置と、各アンテナ素子と、前記デジタル信号処理部と、各アナログ振幅調整部と、を備える
ことを特徴とするアレイアンテナ装置。
【請求項7】
フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出する振幅補正量算出ステップと、
各アンテナ素子が共通に有するデジタル信号処理部と、各アンテナ素子が個々に有する各アナログ振幅調整部と、に前記振幅補正量算出ステップで算出した各アンテナ素子の振幅補正量を分担し、前記フェーズドアレイアンテナの全体として、全アナログ振幅調整部に分担する全アンテナ素子の振幅補正量を低減する振幅補正量分担ステップと、
を順にコンピュータに実行させるためのアレイアンテナ校正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フェーズドアレイアンテナを校正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイアンテナを用いて、ビーム指向性を調整する技術が、特許文献1、2等に開示されている。特許文献1では、アナログ方式のアレイアンテナ装置が開示されている。特許文献2では、フルデジタル方式のアレイアンテナ装置が開示されている。
【0003】
従来技術のアナログ方式のアレイアンテナ装置の構成を
図1に示す。アレイアンテナ装置Aは、アレイアンテナ1及びアレイアンテナ校正装置2を備える。
【0004】
アレイアンテナ1-1の送信時について説明する。送受信部15-1は、送信信号を出力する。合分波部14-1は、送信信号を分波する。アナログ位相調整部13-11、13-12、13-13、・・・、13-1Nは、制御部16-1の制御を受けて、送信信号の位相を調整する。アナログ振幅調整部12-11、12-12、12-13、・・・、12-1Nは、制御部16-1の制御を受けて、送信信号の振幅を調整する。アンテナ素子11-11、11-12、11-13、・・・、11-1Nは、送信信号を送信する。
【0005】
アレイアンテナ1-1の受信時について説明する。アンテナ素子11-11、11-12、11-13、・・・、11-1Nは、受信信号を受信する。アナログ振幅調整部12-11、12-12、12-13、・・・、12-1Nは、制御部16-1の制御を受けて、受信信号の振幅を調整する。アナログ位相調整部13-11、13-12、13-13、・・・、13-1Nは、制御部16-1の制御を受けて、受信信号の位相を調整する。合分波部14-1は、受信信号を合波する。送受信部15-1は、受信信号を出力する。
【0006】
従来技術のフルデジタル方式のアレイアンテナ装置の構成を
図2に示す。アレイアンテナ装置Fは、アレイアンテナ3及びアレイアンテナ校正装置4を備える。
【0007】
アレイアンテナ3-1の送信時について説明する。デジタル信号処理部34-1は、アンテナ素子毎に送信信号の位相及び振幅を調整する。A/D部33-11、33-12、33-13、・・・、33-1Nは、送信信号をD/A変換する。送受信部32-11、32-12、32-13、・・・、32-1Nは、送信信号を出力する。アンテナ素子31-11、31-12、31-13、・・・、31-1Nは、送信信号を送信する。
【0008】
アレイアンテナ3-1の受信時について説明する。アンテナ素子31-11、31-12、31-13、・・・、31-1Nは、受信信号を受信する。送受信部32-11、32-12、32-13、・・・、32-1Nは、受信信号を出力する。A/D部33-11、33-12、33-13、・・・、33-1Nは、受信信号をA/D変換する。デジタル信号処理部34-1は、アンテナ素子毎に受信信号の位相及び振幅を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-022229号公報
【文献】特開2019-052976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性が個体差に応じて異なるならば、フェーズドアレイアンテナの放射電界の所望特性が得られない可能性がある。そこで、フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出する必要がある。
【0011】
図1に示したアナログ方式のアレイアンテナ装置Aが備えるアレイアンテナ校正装置2について説明する。振幅補正量算出部21は、近傍界測定法等による放射電界の相対値測定方法を用いて、アンテナ素子11-11、11-12、11-13、・・・、11-1Nの放射電界の振幅特性を一致させるように、アンテナ素子11-11、11-12、11-13、・・・、11-1Nの振幅補正量を算出する。制御部16-1は、アナログ振幅調整部12-11、12-12、12-13、・・・、12-1Nに対して、アンテナ素子11-11、11-12、11-13、・・・、11-1Nの振幅補正量を反映させる。
【0012】
図1に示した指向性調整及びアンテナ校正において、アレイアンテナ装置Aは、回路構成を簡素にすることができ、コストを低減することができる。しかし、アナログ振幅調整部12-11、12-12、12-13、・・・、12-1Nは、装置構成の簡素化を図るためにデジタル制御可能なステップアッテネータを利用することが多く、その素子性能(最大減衰量及びステップ幅)により、校正可能な値に制限が発生する。そして、アナログ振幅調整部12-11、12-12、12-13、・・・、12-1Nは、振幅補正量の絶対値が大きくなるほど、デバイス起因の位相誤差が大きくなる傾向があるため、アレイアンテナ装置Aの校正精度低下を招く一つの要因となる。
【0013】
図2に示したフルデジタル方式のアレイアンテナ装置Fが備えるアレイアンテナ校正装置4について説明する。振幅補正量算出部41は、近傍界測定法等による放射電界の相対値測定方法を用いて、アンテナ素子31-11、31-12、31-13、・・・、31-1Nの放射電界の振幅特性を一致させるように、アンテナ素子31-11、31-12、31-13、・・・、31-1Nの振幅補正量を算出する。デジタル信号処理部34-1は、アンテナ素子31-11、31-12、31-13、・・・、31-1Nの振幅補正量を反映させる。
【0014】
図2に示した指向性調整及びアンテナ校正において、デジタル信号処理部34-1は、一般的にADC及びDACのビット数がアナログのステップアッテネータと比較して非常に大きくなるため、振幅補正の分解能を向上させることができる。また、ADC及びDACのダイナミックレンジの広さから、振幅補正の可能なレンジも大きく向上する。そして、デジタル信号処理部34-1は、振幅補正量の絶対値が大きくなっても、デバイス起因の位相誤差がアナログのステップアッテネータと比較して小さくなるため、アレイアンテナ装置Fの校正精度を向上させることができる。しかし、アレイアンテナ装置Fは、回路構成を簡素にすることが困難であり、コストを低減することができない。
【0015】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出するにあたり、回路構成の簡素化、コストの低減、振幅補正の可能なレンジの拡大、振幅補正の分解能の向上及びデバイス起因の位相誤差の低減を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、ハイブリッド方式のアレイアンテナ装置を採用する。つまり、各アンテナ素子に対して、デジタル信号処理部を共通に備え、各アナログ振幅調整部を個々に備える。そして、デジタル信号処理部及び各アナログ振幅調整部に対して、各アンテナ素子の振幅補正量を分担する。よって、フェーズドアレイアンテナの全体として、全アナログ振幅調整部に対して、全アンテナ素子の振幅補正量の分担を低減する。
【0017】
具体的には、本開示は、フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出する振幅補正量算出部と、各アンテナ素子が共通に有するデジタル信号処理部と、各アンテナ素子が個々に有する各アナログ振幅調整部と、に前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量を分担し、前記フェーズドアレイアンテナの全体として、全アナログ振幅調整部に分担する全アンテナ素子の振幅補正量を低減する振幅補正量分担部と、を備えることを特徴とするアレイアンテナ校正装置である。
【0018】
また、本開示は、フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出する振幅補正量算出ステップと、各アンテナ素子が共通に有するデジタル信号処理部と、各アンテナ素子が個々に有する各アナログ振幅調整部と、に前記振幅補正量算出ステップで算出した各アンテナ素子の振幅補正量を分担し、前記フェーズドアレイアンテナの全体として、全アナログ振幅調整部に分担する全アンテナ素子の振幅補正量を低減する振幅補正量分担ステップと、を順にコンピュータに実行させるためのアレイアンテナ校正プログラムである。
【0019】
これらの構成によれば、各アナログ振幅調整部のビット数(最大減衰量又は最大増幅量及びステップ幅)を変更せずに、アナログ方式での回路構成の簡素化及びコストの低減と、デジタル方式での振幅補正の可能なレンジの拡大及びデバイス起因の位相誤差の低減と、を両立させることができる。
【0020】
また、本開示は、前記振幅補正量分担部は、前記デジタル信号処理部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量としてステップ値を設定するときのステップ幅を、各アナログ振幅調整部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量としてステップ値を設定するときのステップ幅より狭くすることを特徴とするアレイアンテナ校正装置である。
【0021】
この構成によれば、各アナログ振幅調整部のビット数(最大減衰量又は最大増幅量及びステップ幅)を変更せずに、アナログ方式での回路構成の簡素化及びコストの低減と、デジタル方式での振幅補正の可能なレンジの拡大、振幅補正の分解能の向上及びデバイス起因の位相誤差の低減と、を両立させることができる。
【0022】
また、本開示は、前記振幅補正量分担部は、前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量が負の値及び正の値の両方を含むときに、前記デジタル信号処理部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量として、前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量の最大値、最小値並びに平均値及び中央値を含む中間値のいずれかを設定することを特徴とするアレイアンテナ校正装置である。
【0023】
この構成によれば、振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量が負の値及び正の値の両方を含むときに、上記の効果を有することができる。
【0024】
また、本開示は、前記振幅補正量分担部は、(1)前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量が負の値のみを含むときに、前記デジタル信号処理部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量として、前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量の最大値を設定し、(2)前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量が正の値のみを含むときに、前記デジタル信号処理部に分担する各アンテナ素子の振幅補正量として、前記振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量の最小値を設定することを特徴とするアレイアンテナ校正装置である。
【0025】
この構成によれば、振幅補正量算出部が算出した各アンテナ素子の振幅補正量が負の値及び正の値の一方を含むときに、上記の効果を有することができる。
【0026】
また、本開示は、前記振幅補正量算出部は、複数の前記フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出することを特徴とするアレイアンテナ校正装置である。
【0027】
この構成によれば、アレイアンテナ装置が、単数のアレイアンテナではなく複数のアレイアンテナを備えるときに、上記の効果を有することができる。
【0028】
また、本開示は、以上に記載のアレイアンテナ校正装置と、各アンテナ素子と、前記デジタル信号処理部と、各アナログ振幅調整部と、を備えることを特徴とするアレイアンテナ装置である。
【0029】
この構成によれば、アレイアンテナ装置が、単数のアレイアンテナのみならず複数のアレイアンテナを備えるときに、上記の効果を有することができる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本開示は、フェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子の放射電界の振幅特性を一致させるように、各アンテナ素子の振幅補正量を算出するにあたり、回路構成の簡素化、コストの低減、振幅補正の可能なレンジの拡大、振幅補正の分解能の向上及びデバイス起因の位相誤差の低減を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来技術のアナログ方式のアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【
図2】従来技術のフルデジタル方式のアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【
図3】本開示のハイブリッド方式のアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【
図4】本開示のハイブリッド方式のアレイアンテナ校正装置の処理を示す図である。
【
図5】本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担前の概要を示す図である。
【
図6】本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担後の概要を示す図である。
【
図7】本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担前の具体例を示す図である。
【
図8】本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担後の具体例を示す図である。
【
図9】本開示のアナログ振幅調整部のアナログ補正量及び位相誤差を示す図である。
【
図10】本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担前後の指向性を示す図である。
【
図11】本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担方法の変形例を示す図である。
【
図12】本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0033】
(ハイブリッド方式のアレイアンテナ装置の構成)
本開示のハイブリッド方式のアレイアンテナ装置の構成を
図3に示す。アレイアンテナ装置Hは、アレイアンテナ5及びアレイアンテナ校正装置6を備える。
【0034】
アレイアンテナ5は、複数のアレイアンテナ5-1、5-2、・・・、5-Mを備える。アレイアンテナ5-1は、アンテナ素子51-11、51-12、51-13、・・・、51-1Nを備える。アレイアンテナ5-2は、アンテナ素子51-21、51-22、51-23、・・・、51-2Nを備える。・・・アレイアンテナ5-Mは、アンテナ素子51-M1、51-M2、51-M3、・・・、51-MNを備える。
【0035】
デジタル信号処理部58は、アンテナ素子51-11、・・・、51-MNが共通に有する。アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNは、アンテナ素子51-11、・・・、51-MNが個々に有する。アナログ位相調整部53-11、・・・、53-MNも、アンテナ素子51-11、・・・、51-MNが個々に有する。
【0036】
アレイアンテナ校正装置6は、振幅補正量算出部61及び振幅補正量分担部62を備え、
図4に示したアレイアンテナ校正プログラムをインストールされている。
【0037】
アレイアンテナ5-1の送信時について説明する。デジタル信号処理部58は、送信信号を分波する。A/D部57-1は、送信信号をD/A変換する。送受信部55-1は、送信信号を出力する。合分波部54-1は、送信信号を分波する。アナログ位相調整部53-11、53-12、53-13、・・・、53-1Nは、制御部56-1の制御を受けて、送信信号の位相を調整する。アナログ振幅調整部52-11、52-12、52-13、・・・、52-1Nは、制御部56-1の制御を受けて、送信信号の振幅を調整する。アンテナ素子51-11、51-12、51-13、・・・、51-1Nは、送信信号を送信する。アレイアンテナ5-2、・・・、5-Mの送信時も上記と同様である。
【0038】
アレイアンテナ5-1の受信時について説明する。アンテナ素子51-11、51-12、51-13、・・・、51-1Nは、受信信号を受信する。アナログ振幅調整部52-11、52-12、52-13、・・・、52-1Nは、制御部56-1の制御を受けて、受信信号の振幅を調整する。アナログ位相調整部53-11、53-12、53-13、・・・、53-1Nは、制御部56-1の制御を受けて、受信信号の位相を調整する。合分波部54-1は、受信信号を合波する。送受信部55-1は、受信信号を出力する。A/D部57-1は、受信信号をA/D変換する。デジタル信号処理部58は、受信信号を合波する。アレイアンテナ5-2、・・・、5-Mの受信時も上記と同様である。
【0039】
本開示のハイブリッド方式のアレイアンテナ校正装置の処理を
図4に示す。振幅補正量算出部61は、近傍界測定法等による放射電界の相対値測定方法を用いて、複数のアレイアンテナ5-1、5-2、・・・、5-Mのアンテナ素子51-11、・・・、51-MNの放射電界の振幅特性を一致させるように、アンテナ素子51-11、・・・、51-MNの振幅補正量を算出する(ステップS1)。振幅補正量分担部62は、本開示の特徴部分である。
【0040】
つまり、振幅補正量分担部62は、デジタル信号処理部58と、アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNと、に振幅補正量算出部61が算出したアンテナ素子51-11、・・・、51-MNの振幅補正量を分担する(ステップS2)。そして、アレイアンテナ5の全体として、全アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNに分担する全アンテナ素子51-11、・・・、51-MNの振幅補正量を低減する(ステップS2)。
【0041】
ここで、デジタル信号処理部58に分担するアンテナ素子51-11、・・・、51-MNの振幅補正量としてステップ値を設定するときのステップ幅を、アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNに分担するアンテナ素子51-11、・・・、51-MNの振幅補正量としてステップ値を設定するときのステップ幅より狭くする(ステップS2)。
【0042】
以下では、振幅補正量算出部61が算出したアンテナ素子51-11、・・・、51-MNの振幅補正量を、「目標補正量」という(ステップS1)。そして、振幅補正量分担部62がアナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNに分担するアンテナ素子51-11、・・・、51-MNの振幅補正量を、「アナログ補正量」という(ステップS2)。一方で、振幅補正量分担部62がデジタル信号処理部58に分担するアンテナ素子51-11、・・・、51-MNの振幅補正量を、「デジタル補正量」という(ステップS2)。
【0043】
ステップS2の具体例として、ステップS2-1を
図5から
図10までで説明し、ステップS2-2を
図11で説明し、ステップS2-3を
図12で説明する。
【0044】
(ハイブリッド方式の目標補正量の分担方法の実施例)
本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担前の概要を
図5に示す。振幅補正量算出部61は、アンテナ素子51-11、51-12、51-13、・・・、51-1N、51-21、51-22、51-23、・・・、51-2N、・・・、51-M1、51-M2、51-M3、・・・、51-MNの目標補正量として、-1dB、-1dB、-2dB、・・・、-8dB、-3dB、-3dB、-4dB、・・・、-10dB、・・・、0dB、0dB、-1dB、・・・、-7dBを算出する(ステップS1)。
【0045】
本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担後の概要を
図6に示す。アンテナ素子51-11、・・・、51-MNの目標補正量は、0dBを除いて、負の値のみを含む。
【0046】
振幅補正量分担部62は、デジタル信号処理部58のデジタル補正量として、目標補正量の分担前の0dBではなく、(1)アレイアンテナ5-1について、アンテナ素子51-11、51-12、51-13、・・・、51-1Nの目標補正量の「最大値」-1dBを設定し、(2)アレイアンテナ5-2について、アンテナ素子51-21、51-22、51-23、・・・、51-2Nの目標補正量の「最大値」-3dBを設定し、・・・、(M)アレイアンテナ5-Mについて、アンテナ素子51-M1、51-M2、51-M3、・・・、51-MNの目標補正量の「最大値」0dBを設定する(ステップS2-1)。
【0047】
振幅補正量分担部62は、アナログ振幅調整部52-11、52-12、52-13、・・・、52-1N、52-21、52-22、52-23、・・・、52-2N、・・・、52-M1、52-M2、52-M3、・・・、52-MNのアナログ補正量として、アンテナ素子51-11、51-12、51-13、・・・、51-1N、51-21、51-22、51-23、・・・、51-2N、・・・、51-M1、51-M2、51-M3、・・・、51-MNの目標補正量の「上記の最大値を除いた残り分」0dB、0dB、-1dB、・・・、-7dB、0dB、0dB、-1dB、・・・、-7dB、・・・、0dB、0dB、-1dB、・・・、-7dBを算出する(ステップS2-1)。
【0048】
本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担前の具体例を
図7に示す。振幅補正量算出部61は、アンテナ素子51-11、・・・、51-MNの目標補正量として、各欄の中段の数値を算出する(ステップS1)。ここで、目標補正量の精度は、0.1dBである。しかし、アナログ補正量の精度は、目標補正量の精度と比べて低く、1dBである。一方で、デジタル補正量の精度は、目標補正量の精度と比べて同じく、0.1dBである。
【0049】
本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担後の具体例を
図8に示す。アンテナ素子51-11、・・・、51-MNの目標補正量は、0dBを除いて、負の値のみを含む。
【0050】
振幅補正量分担部62は、デジタル信号処理部58のデジタル補正量として、目標補正量の分担前の0.0dBではなく、(1)アレイアンテナ5-1について、アンテナ素子51-11、・・・、51-1Nの目標補正量の「最大値」-2.2dBを設定し、(2)アレイアンテナ5-2について、アンテナ素子51-21、・・・、51-2Nの目標補正量の「最大値」-3.7dBを設定し、・・・(M)アレイアンテナ5-Mについて、アンテナ素子51-41、・・・、51-MNの目標補正量の「最大値」0.0dBを設定する(ステップS2-1)。
【0051】
振幅補正量分担部62は、アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNのアナログ補正量として、アンテナ素子51-11、・・・、51-MNの目標補正量の「上記の最大値を除いた残り分」を算出する(ステップS2-1)。
【0052】
ここで、目標補正量の分担前では、5個のアンテナ素子について、アナログ補正量が-10dB未満であり、1個のアンテナ素子について、アナログ補正量が-15dB未満である。一方で、目標補正量の分担後では、2個のアンテナ素子について、アナログ補正量が-10dB未満であり、0個のアンテナ素子について、アナログ補正量が-15dB未満である。つまり、目標補正量の分担後では、目標補正量の分担前と比べて、多くのアンテナ素子において、アナログ補正量の絶対値をかなり節約することができる。
【0053】
このように、振幅補正量分担部62は、デジタル信号処理部58と、アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNと、にアンテナ素子51-11、・・・、51-MNの目標補正量を分担する(ステップS2、S2-1)。そして、アレイアンテナ5の全体として、全アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNの全アナログ補正量を低減する(ステップS2、S2-1)。さらに、デジタル信号処理部58のデジタル補正値としてステップ値を設定するときのステップ幅を、アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNのアナログ補正量としてステップ値を設定するときのステップ幅より狭くする(ステップS2)。
【0054】
これにより、デジタル信号処理部58は、アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNと異なり、アナログ補正量の分散を小さくできることで、等価的に振幅補正の可能なレンジを拡大することができ、振幅補正の分解能を向上させることができる。そして、デジタル信号処理部58は、アナログ振幅調整部52-11、・・・、52-MNと異なり(
図9のアナログ振幅調整部のアナログ補正量及び位相誤差を参照)、振幅補正量の絶対値が大きくなっても、デバイス起因の位相誤差を最小限にでき、アレイアンテナ装置Hの校正精度を向上させることができる。さらに、アレイアンテナ装置Hは、フルデジタル方式を採用しないで、ハイブリッド方式を採用するため、回路構成を簡素にすることができ、コストを低減することができる。
【0055】
本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担前後の指向性を
図10に示す。
図10の左欄では、第1のアレイアンテナ5について、目標補正量の分担前後の指向性を示す。
図10の右欄では、第2のアレイアンテナ5について、目標補正量の分担前後の指向性を示す。目標補正量の分担後では、目標補正量の分担前と比べて、少なくともビーム指向性を劣化させずに維持することができる。
【0056】
(ハイブリッド方式の目標補正量の分担方法の変形例)
本開示では、アレイアンテナ5は、複数のアレイアンテナ5-1、5-2、・・・、5-Mを備えている。変形例として、アレイアンテナ5は、単数のアレイアンテナ5-1を備えてもよい。ただし、アンテナ素子51-11、・・・、51-1Nの目標補正量の「最大値」=0dBとすれば、本開示の効果を有することができない。そこで、アンテナ素子51-11、・・・、51-1Nの目標補正量の「最大値」<0dBとすれば、本開示の効果を有することができる。そして、アレイアンテナ5が、複数のアレイアンテナ5-1、5-2、・・・、5-Mを備えれば、本開示の効果を有することが容易になる。
【0057】
本開示のハイブリッド方式の目標補正量の分担方法の変形例を
図11、12に示す。
【0058】
図11の左欄では、アナログ振幅調整部は、減衰のみを実行することができる。そこで、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量は、-2dB、-1dB、-3dBであり、負の値のみを含む。そして、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のデジタル補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「最大値」-1dBを設定する。さらに、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のアナログ補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「上記の最大値を除いた残り分」-1dB、0dB、-2dBを設定する(ステップS2-1)。よって、各々のアンテナ素子51-1、51-2、51-3の各々のアナログ補正量を低減することができる。むろん、アレイアンテナ5の全体として、全てのアンテナ素子51-1、51-2、51-3の合計のアナログ補正量を低減することができる。
【0059】
図11の右欄では、アナログ振幅調整部は、増幅のみを実行することができる。そこで、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量は、+2dB、+1dB、+3dBであり、正の値のみを含む。そして、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のデジタル補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「最小値」+1dBを設定する。さらに、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のアナログ補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「上記の最小値を除いた残り分」+1dB、0dB、+2dBを設定する(ステップS2-2)。よって、各々のアンテナ素子51-1、51-2、51-3の各々のアナログ補正量を低減することができる。むろん、アレイアンテナ5の全体として、全てのアンテナ素子51-1、51-2、51-3の合計のアナログ補正量を低減することができる。
【0060】
図12の左欄では、アナログ振幅調整部は、減衰及び増幅を実行することができる。そこで、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量は、+1dB、-1dB、+1dBであり、負の値及び正の値の両方を含む。そして、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のデジタル補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「最大値」+1dBを設定する。さらに、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のアナログ補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「上記の最大値を除いた残り分」0dB、-2dB、0dBを設定する(ステップS2-3)。よって、一部のアンテナ素子51-2の一部のアナログ補正量を低減することはできないが、残りのアンテナ素子51-1、51-3の残りのアナログ補正量を低減することはできる。そして、アレイアンテナ5の全体として、全てのアンテナ素子51-1、51-2、51-3の合計のアナログ補正量を低減することができる。
【0061】
図12の中欄では、アナログ振幅調整部は、減衰及び増幅を実行することができる。そこで、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量は、-1dB、+1dB、-1dBであり、負の値及び正の値の両方を含む。そして、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のデジタル補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「最小値」-1dBを設定する。さらに、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のアナログ補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「上記の最小値を除いた残り分」0dB、+2dB、0dBを設定する(ステップS2-3)。よって、一部のアンテナ素子51-2の一部のアナログ補正量を低減することはできないが、残りのアンテナ素子51-1、51-3の残りのアナログ補正量を低減することはできる。そして、アレイアンテナ5の全体として、全てのアンテナ素子51-1、51-2、51-3の合計のアナログ補正量を低減することができる。
【0062】
図12の右欄では、アナログ振幅調整部は、減衰及び増幅を実行することができる。そこで、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量は、+1dB、-1dB、+2dBであり、負の値及び正の値の両方を含む。そして、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のデジタル補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「中央値」+1dBを設定する。さらに、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のアナログ補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「上記の中央値を除いた残り分」0dB、-2dB、+1dBを設定する(ステップS2-3)。よって、一部のアンテナ素子51-2の一部のアナログ補正量を低減することはできないが、残りのアンテナ素子51-1、51-3の残りのアナログ補正量を低減することはできる。そして、アレイアンテナ5の全体として、全てのアンテナ素子51-1、51-2、51-3の合計のアナログ補正量を低減することができる。
【0063】
なお、アンテナ素子51-1、51-2、51-3のデジタル補正量として、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「中央値」に代えて、アンテナ素子51-1、51-2、51-3の目標補正量の「平均値」でもよく、上記の目標補正量の「中央値」及び「平均値」を含む「中間値」でもよい(ステップS2-3)。ただし、一般に考えて効果の最大化が可能なのは、上記のデジタル補正量として、上記の目標補正量の「中央値」、「平均値」、「最大値」及び「最小値」のいずれかにした際であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
このように、本開示のアレイアンテナ校正装置、アレイアンテナ装置及びアレイアンテナ校正プログラムは、ハイブリッド方式のアレイアンテナに適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
A:アレイアンテナ装置
1、1-1:アレイアンテナ
2:アレイアンテナ校正装置
11-11、11-12、11-13、11-1N:アンテナ素子
12-11、12-12、12-13、12-1N:アナログ振幅調整部
13-11、13-12、13-13、13-1N:アナログ位相調整部
14-1:合分波部
15-1:送受信部
16-1:制御部
21:振幅補正量算出部
F:アレイアンテナ装置
3、3-1:アレイアンテナ
4:アレイアンテナ校正装置
31-11、31-12、31-13、31-1N:アンテナ素子
32-11、32-12、32-13、32-1N:送受信部
33-11、33-12、33-13、33-1N:A/D部
34-1:デジタル信号処理部
41:振幅補正量算出部
H:アレイアンテナ装置
5、5-1、5-2、5-M:アレイアンテナ
6:アレイアンテナ校正装置
51-11、51-12、51-13、51-1N、51-21、51-22、51-23、51-2N、51-M1、51-M2、51-M3、51-MN、51-1、51-2、51-3:アンテナ素子
52-11、52-12、52-13、52-1N、52-21、52-22、52-23、52-2N、52-M1、52-M2、52-M3、52-MN:アナログ振幅調整部
53-11、53-12、53-13、53-1N、53-21、53-22、53-23、53-2N、53-M1、53-M2、53-M3、53-MN:アナログ位相調整部
54-1、54-2、54-M:合分波部
55-1、55-2、55-M:送受信部
56-1、56-2、56-M:制御部
57-1、57-2、57-M:A/D部
58:デジタル信号処理部
61:振幅補正量算出部
62:振幅補正量分担部