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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】配管配置設計システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20240925BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240925BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20240925BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F30/10
G06F30/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020198249
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086310
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳田 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博章
(72)【発明者】
【氏名】是松 裕司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 芽未
(72)【発明者】
【氏名】野本 寛幸
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-180855(JP,A)
【文献】特開2020-119437(JP,A)
【文献】特開2011-090471(JP,A)
【文献】特開2015-109006(JP,A)
【文献】特開2003-141195(JP,A)
【文献】特開2011-072172(JP,A)
【文献】特開2007-011553(JP,A)
【文献】特開平09-081624(JP,A)
【文献】特開2004-054359(JP,A)
【文献】特開平09-050454(JP,A)
【文献】特開2003-132107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/18
G06F 30/10
G06F 30/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の始点と終点との間を接続する配管ルートを生成する配管配置設計システムであって、
設計者の指定により、前記配管の始点および終点の座標情報、前記配管内に通す流体の種類および重量の情報、前記配管の材質、長さ、太さの情報を取得する入力部と、
前記配管の材質、長さ、太さに応じた前記配管を構成する配管部材の種類を示す情報、サポート間隔と前記配管の重量、前記配管に通す流体の重量との対応関係を示す情報、配管配置設計に関する基本設計条件を示す配管配置基準情報、および配管配置設計に関する詳細設計条件を示す詳細設計情報を記憶する記憶部と、
前記入力部が取得した情報および前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記配管ルートを生成するルート生成部と、
前記サポート間隔と前記配管の重量、前記配管に通す流体の重量との対応関係を示す情報に基づき、定ピッチスパン法により前記ルート生成部にて生成された前記配管ルートの前記配管を支持するサポート部材を配置するサポート位置を決定するサポート位置決定部と、
前記サポート位置決定部が決定したサポート位置と、前記配管の材質、長さ、太さに応じた前記配管を構成する配管部材の種類を示す情報とに基づいて、前記配管を構成する複数の配管部材を決定するとともに、前記サポート位置決定部により決定された前記サポート部材を固定する位置および前記配管の重量、前記配管に通す流体の重量に基づいて、前記サポート部材の種類、個数を決定する配管部材決定部と、を有し、
前記ルート生成部が生成した配管ルート、前記配管部材決定部が決定した配管部材、サポート部材に関して、熱応力に対する耐久解析、流体の通過に伴う配管の振動解析、耐震解析の少なくとも一つを行う構造解析システムの解析結果が評価値を満たさない場合、前記設計者は前記解析結果を前記入力部に入力することにより前記記憶部にフィードバックして前記配管配置基準情報および前記詳細設計情報が示す条件を修正もしくは追加し、
前記ルート生成部は修正もしくは追加された前記配管配置基準情報および前記詳細設計情報が示す条件に基づき前記配管ルートを再生成し、
前記サポート位置決定部は再生成された前記配管ルートに応じてサポート位置を再決定し、
前記配管部材決定部は再決定された前記サポート位置に応じて前記配管部材を再決定するとともに、前記サポート部材の種類、個数を再決定する、
配管配置設計システム。
【請求項2】
前記記憶部は前記配管ルートが配置される建屋の構造を示す3次元CAD情報である配置空間情報を記憶し、
前記ルート生成部は前記配管ルートを生成するとともに、前記配管ルートが、前記建屋の床、天井、壁を貫通する場合、前記配管の太さ、前記配管内に通す流体の種類および前記建屋の床、天井、壁に応じて貫通孔の位置、大きさを示す3次元形状モデルおよびその貫通孔の集計リストを生成する、
請求項1に記載の配管配置設計システム。
【請求項3】
前記記憶部は前記配管内に通す流体の種類および重量と、前記ルート生成部による配管ルート生成の優先順位とを対応させた情報を記憶し、
前記ルート生成部は、前記入力部が取得した始点および終点の座標情報が示す前記配管ルートが複数の場合、前記入力部が取得した前記配管内に通す流体の種類および重量の情報に基づいて、前記記憶部に記憶された対応関係により前記配管ルート生成の優先順位を決定する、
請求項1または2に記載の配管配置設計システム。
【請求項4】
前記ルート生成部は、前記入力部が前記配管の1つの始点を示す座標に対して複数の終 点を示す座標を取得した場合、前記配管に分岐箇所を有する前記配管ルートを生成する、
請求項1から3の何れか一項に記載の配管配置設計システム。
【請求項5】
前記ルート生成部は、複数の前記配管ルートを生成する場合、複数の前記配管の配置位置が互いに重ならないように、複数の前記配管それぞれの前記配管ルートを生成する、
請求項1から4の何れか一項に記載の配管配置設計システム。
【請求項6】
前記ルート生成部は、前記配管の曲がり部分を構成するエルボ部材や前記配管の溶接個所の数を減らすために曲げ管を採用した前記配管ルートを生成する、
請求項1から5の何れか一項に記載の配管配置設計システム。
【請求項7】
前記ルート生成部は、前記配管を配置する専用スペースが設定されている場合、前記専用スペース内に前記配管が配置された前記配管ルートを生成する、
請求項1から6の何れか一項に記載の配管配置設計システム。
【請求項8】
前記記憶部は、視認を要する計器の保守点検に適した位置の条件、操作を要する部品の操作に適した位置の条件を示す運転・保守情報を記憶し、
前記ルート生成部は、前記運転・保守情報に示された条件を満たす位置に、視認を要する前記計器および操作を要する前記部品を配置する、
請求項1から7の何れか一項に記載の配管配置設計システム。
【請求項9】
前記サポート位置決定部は、複数の前記配管が隣接して配置される場合、複数の前記配管の内の2つ以上の配管を一つのサポート位置で支持可能な位置をサポート位置として決定する、
請求項1または2に記載の配管配置設計システム。
【請求項10】
前記サポート位置決定部は、既設の配管が所定のピッチで支持されているか否かを定ピッチスパン法に基づいて判定する、
請求項1から2および請求項9の何れか一項に記載の配管配置設計システム。
【請求項11】
前記ルート生成部が生成した前記配管ルートおよび予め設定された運搬条件に基づいて、前記配管を構成する部材の長さを決定する配管部材決定部を有する、
請求項1から10の何れか一項に記載の配管配置設計システム。
【請求項12】
前記配管部材決定部が決定した前記サポート部材ごとの数を集計する物量集計部を有す る、請求項1または2に記載の配管配置設計システム。
【請求項13】
前記記憶部は、前記配管ルートが配置される建屋の構造を示す3次元CAD情報である配置空間情報および配置空間内において分電盤が設置されている位置の座標を記憶し、
前記ルート生成部は、前記配管配置基準情報もしくは前記詳細設計情報に、生成した前記配管ルートにおける途中の計器に電気配線ケーブルを必要とする条件が含まれる場合、前記計器を配置した位置の座標を始点座標とし、前記分電盤が設置されている位置の座標を終点座標として電気配線ケーブルを配置するルートを生成する、
請求項1から12の何れか一項に記載の配管配置設計システム。
【請求項14】
前記3次元CAD情報には、3次元レーザスキャナで撮影された点群データが含まれる、
請求項2に記載の配管配置設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管配置設計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
配管ルートの設計作業を自動化する技術がある。例えば、特許文献1には、設計対象空間において配管の始点と終点との間を接続する配管ルート生成方法の技術が記載されている。具体的には、設計対象空間内において配管が経由する位置の候補である経由候補点を示す経由候補点情報と、当該経由候補点情報に付与された重み付け情報とに基づいて、配管ルートを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-211987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、プラント等における配管配置設計においては、計画段階から詳細設計段階に至るまで、要求仕様や安全基準等に示された数多くの制約条件を満たしながら配管配置設計を進める必要がある。したがって、プラント等における配管配置設計においては、配管の経由候補点情報と重み付け情報に基づいて配管ルートを決定するだけでは、数多くの制約条件を満たす配管ルートを自動生成することができない。そのため、プラント等における配管配置設計においては、熟練設計者の経験や知見に頼るとことが大きい。
【0005】
しかし、熟練設計者といえども、要求仕様に示される条件、安全基準に示される条件、保守点検作業を考慮した部品の配置条件、施工効率を向上するための条件等の数多くの制約条件を満たす配管ルートの設計をするためには膨大な時間が必要である。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、数多くの制約条件を満たす配管ルートを自動生成することにより、配管ルートの設計負担を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための実施形態に係る配管配置設計システムは、配管の始点と終点との間を接続する配管ルートを生成する配管配置設計システムである。配管配置設計システムは、入力部と記憶部とルート生成部とサポート位置決定部と配管部材決定部とを有する。入力部は、設計者の指定により、配管の始点および終点の座標情報、配管内に通す流体の種類および重量の情報、配管の材質、長さ、太さの情報を取得する。記憶部は、配管の材質、長さ、太さに応じた配管を構成する配管部材の種類を示す情報、サポート間隔と配管の重量、配管に通す流体の重量との対応関係を示す情報、配管配置設計に関する基本設計条件を示す配管配置基準情報、および配管配置設計に関する詳細設計条件を示す詳細設計情報を記憶する。ルート生成部は、入力部が取得した情報および記憶部に記憶された情報に基づいて、配管ルートを生成する。サポート位置決定部は、サポート間隔と配管の重量、配管に通す流体の重量との対応関係を示す情報に基づき、定ピッチスパン法によりルート生成部にて生成された配管ルートの配管を支持するサポート部材を配置するサポート位置を決定する。配管部材決定部は、サポート位置決定部が決定したサポート位置と、配管の材質、長さ、太さに応じた配管を構成する配管部材の種類を示す情報とに基づいて、配管を構成する複数の配管部材を決定するとともに、サポート位置決定部により決定されたサポート部材を固定する位置および配管の重量、配管に通す流体の重量に基づいて、サポート部材の種類、個数を決定する。ルート生成部が生成した配管ルート、配管部材決定部が決定した配管部材、サポート部材に関して、熱応力に対する耐久解析、流体の通過に伴う配管の振動解析、耐震解析の少なくとも一つを行う構造解析システムの解析結果が評価値を満たさない場合、設計者は解析結果を入力部に入力することにより記憶部にフィードバックして配管配置基準情報および詳細設計情報が示す条件を修正もしくは追加する。ルート生成部は修正もしくは追加された配管配置基準情報および詳細設計情報が示す条件に基づき配管ルートを再生成する。サポート位置決定部は再生成された配管ルートに応じてサポート位置を再決定する。配管部材決定部は再決定されたサポート位置に応じて配管部材を再決定するとともに、サポート部材の種類、個数を再決定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る配管配置設計システムの構成図である。
図2】実施形態に係る記憶部について説明するための図である。
図3】実施形態に係る配管部材決定部について説明するための図である。
図4】実施形態に係る配管配置設計システムによる配管ルートの生成について説明するためのフローチャートである。
図5】実施形態に係る配管配置設計システムにより生成された配管ルートの例を示す図である。
図6】実施形態に係る配管配置設計システムにより生成された部材ごとの数を示す表の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、実施形態に係る配管配置設計システムについて、図を参照して説明する。配管配置設計システムは、配管を配置するルート(以下、配管ルート)を自動生成する装置である。配管配置設計システムは、電気配線設計、空調設備のダクトの配置設計等にも適用できるが、ここでは、プラント分野における流体(気体、液体等)を通す配管の配置設計に適用する場合について説明する。
【0010】
配管配置設計システムは、CPU,メモリ等を備えるコンピュータであって、メモリに記憶された配管配置設計アプリケーションソフトウエアに基づいて動作する。
【0011】
図1は、配管配置設計システム1の機能的な構成図である。配管配置設計システム1は、記憶部10、入力部20、ルート生成部30、サポート位置決定部40、配管部材決定部50、物量集計部60、出力部70を備える。
【0012】
記憶部10は、図2に示されるように、配置空間情報11、配置専用スペース情報12、既設配管情報13、配管配置基準情報14、詳細設計情報15、運転・保守情報16を記憶する。
【0013】
配置空間情報11は、建屋の構造を示す3次元CAD情報である。配置専用スペース情報12は、建屋内における配管を配置する領域を示す3次元CAD情報である。既設配管情報13は、既設の配管位置を示す3次元CAD情報である。
【0014】
配管配置基準情報14は、配管配置設計における基本設計条件を示す情報である。この配管配置基準情報14には、床・天井・壁と配管との距離、並走する配管との距離、ケーブルラックと配管との距離、配管の曲げ管選定、配管に貫通孔を設ける場合の貫通孔の口径、原子力プラントの場合では放射線線量が高い区域における貫通孔の位置等を規定する条件が含まれる。なお、曲げ管とは、直管に曲げ加工を施した部材である。また、配管配置基準情報14には、安全系統の分離条件が含まれる。安全系統の分離条件とは、例えば、第1系統の配管ルートで事故が発生した場合に、第1系統の配管ルートから第2系統の配管ルートに切り替える構成とし、第1系統の配管ルートと第2系統の配管ルートを壁等を隔てて配置するなどの条件である。これらの情報は、配管内に通す流体の種類等に応じて設定されている。
【0015】
詳細設計情報15は、詳細設計条件を示す情報である。この詳細設計情報15には、計器・オリフィス前後における直管(配管の直線部分)の長さ、施工誤差、配管の勾配、他設備との距離等の条件が含まれる。また、詳細設計情報15には、熟練設計者の経験や知見に基づく設計条件が含まれる。さらに、詳細設計情報15には、複数の配管がある場合の集中配置条件も含まれる。
【0016】
運転・保守情報16は、視認を要する計器の保守点検に適した位置の条件、操作を必要とする部品の操作に適した位置の条件等を示す情報である。視認を要する計器とは、流量計、気圧計等である。操作を必要とする部品とは、電動弁や手動弁などのバルブ等である。運転・保守情報16には、保守者が視認しやすい計器の高さ、保守者が操作しやすいバルブの高さおよび向き、計器およびバルブ等と壁との距離等の条件が含まれる。また、運転・保守情報16には、配置禁止領域の情報が含まれる。配置禁止領域とは、通路や危険物の貯蔵場所付近等の配管の配置が禁止されている領域、バルブ等のメンテナンス作業に必要な領域等である。
【0017】
入力部20は、タッチパネル、キーボード等で構成される。入力部20は、タッチパネルの画面上に建屋の3次元CAD情報を表示し、設計者の指定により、配管の始点および終点の座標情報を取得する。また、入力部20は、タッチパネルの画面上に配管内に通す流体の種類および重量、配管の素材、配管の太さ等のリストを表示し、設計者の指定により、これらの情報を取得する。さらに、配管の数が複数である場合、入力部20は、設計者の指定により、どの配管を優先して配置するかを定める優先順位を取得する。
【0018】
ルート生成部30は、配管配置基準情報14、詳細設計情報15および運転・保守情報16、および、配置空間情報11に基づいて、配管の始点を示す座標から終点を示す座標に至る配管ルートを生成する。また、ルート生成部30は、複数の配管ルートを生成する場合、複数の配管の配置位置が互いに重ならないように(干渉しないよう)に、複数の配管それぞれの配管ルートを生成する。
【0019】
また、ルート生成部30は、後述する配管部材決定部50がエルボ部材を選択することを前提として、配管ルートを生成する。エルボ部材とは、配管の曲がり部分を構成する部材である。エルボ部材は、直管と直管とを接続する部材であり、配管の角度や勾配を変えるために使用される。ルート生成部30は、エルボ部材や配管の溶接個所の数を減らすために曲げ管を採用した配管ルートを生成する。
【0020】
また、ルート生成部30は、床、天井、壁を貫通する配管ルートを生成する場合、床、天井、壁に形成する貫通孔の位置、大きさ等を示す3次元形状モデルおよびその貫通孔の集計リストを生成する。
【0021】
サポート位置決定部40は、定ピッチスパン法(標準支持間隔法ともいう)に基づいて、配管を支持するサポート部材を配置するサポート位置を決定する。このサポート位置決定部40は、配管の重量、配管に通す流体等の重量に基づいて、配管を支持するサポート部材を配置するサポート位置を決定する。例えば、サポート位置決定部40は、配管の始点、終点、曲がり部、分岐部等の荷重が集中する部分近くを支持するようにサポート位置を決定し、直管部分および曲げ管部分について予め設定された標準スパン(サポート位置と隣接するサポート位置との間隔)に基づいて定ピッチスパン法によりサポート位置を決定する。
【0022】
また、サポート位置決定部40は、ルート生成部30が生成した複数の配管ルートが隣接している場合や並走している場合、複数の配管の内の2つ以上の配管を一つのサポート位置で支持可能な位置をサポート位置として決定する。詳細は後述する。
【0023】
配管部材決定部50は、ルート生成部30が生成した配管ルートおよび予め設定された運搬条件に基づいて、配管を構成する複数の部材それぞれの長さを決定する。例えば、配管部材決定部50は、1個の部材の長さが10m以下になるように、配管を構成する複数の部材それぞれの長さを決定する。また、配管部材決定部50は、1個の部材の重量が100kg以下になるように、配管を構成する複数の部材それぞれの長さを決定する。
【0024】
また、配管部材決定部50は、配管の重量、配管に通す流体等の重量および配管を支持するサポート部材を固定する場所に基づいて、配管を支持するサポート部材を決定する。この配管部材決定部50は、図3に示されるように、固定場所(床、天井、壁等)、サポートする配管の数、配管および配管を通す流体の重量等によって、サポート部材を決定する。
【0025】
物量集計部60は、配管部材決定部50が決定した部材ごとの数を集計する。
【0026】
出力部70は、ディスプレイもしくは印刷装置で構成される。出力部70は、ルート生成部30が生成した配管ルートおよびサポート位置決定部40が決定したサポート部材の位置を示す3次元CAD画像を表示する。また、出力部70は、物量集計部60が集計した部材ごとの数を出力する。
【0027】
次に、実施形態に係る配管配置設計システム1による配管ルートの生成について、図4に示されるフローチャートを参照しながら説明する。
【0028】
最初に、ルート生成部30は、配管ルートの生成に必要な配管ルート生成条件を取得する(ステップS11)。このルート生成部30は、記憶部10から、配置空間情報11、配置専用スペース情報12、既設配管情報13、配管配置基準情報14、詳細設計情報15、運転・保守情報16を取得する。また、ルート生成部30は、配管の始点および終点の座標情報、配管内に通す流体の種類および重量の情報、配管の素材、配管の太さ等の情報、配管配置の優先順位の情報を入力部20を介して取得する。
【0029】
次に、ルート生成部30は、優先順位の最も高い配管の配管ルート(第1の配管ルート)を生成する(ステップS12)。このルート生成部30は、設計者が指定した優先順位の最も高い配管を特定する。そして、ルート生成部30は、設計者が指定した建屋の3次元CAD情報における配管の始点座標から終点座標に至る第1の配管ルートを、配管配置基準情報14、詳細設計情報15、運転・保守情報16に規定された条件を満たすように生成する。
【0030】
このルート生成部30は、配置空間情報11に基づいて、配管の始点を示す座標から終点を示す座標に至る最短ルートを暫定的な第1の配管ルートとして生成する。なお、ルート生成部30は、配置禁止領域を避けて暫定的な第1の配管ルートを生成する。次に、ルート生成部30は、配管配置基準情報14、詳細設計情報15、運転・保守情報16に示される条件を満たすように最短ルートで生成した暫定的な第1の配管ルートを修正することにより配管を配置する座標を求め、最終的な第1の配管ルートを生成する。
【0031】
また、始点から終点に至る配管ルートの途中に視認を要する計器および操作を必要とする部品を配置する必要がある場合、設計者は、視認を要する計器および操作を必要とする部品を配置する座標を予め入力部20を介して設定することもできる。この場合、ルート生成部30は、視認を要する計器および操作を必要とする部品の座標を通過するように、第1の配管ルートを生成する。
【0032】
ルート生成部30は、既設配管情報13がある場合、既設の配管領域を避けて、第1の配管ルートを生成する。また、ルート生成部30は、建屋内に配管を配置する専用スペースが設定されている場合、配置専用スペース情報12に基づいて、配置専用スペース内に第1の配管ルートを生成する。
【0033】
次に、ルート生成部30は、2番目に優先順位が高い配管の配管ルート(第2の配管ルート)を生成する(ステップS13)。ルート生成部30は、設計者が指定した建屋の3次元CAD情報における配管の始点座標から終点座標に至る第2の配管ルートを、配管配置基準情報14、詳細設計情報15、運転・保守情報16に規定された条件を満たすように生成する。ルート生成部30は、第1の配管ルートの領域および既設の配管領域を避けて、第2の配管ルートを生成する。
【0034】
次に、ルート生成部30は、3番目に優先順位が高い配管ルートを生成する場合、第1および第2の配管ルートの領域、既設の配管領域を避けて、第3の配管ルートを生成する。ルート生成部30は、以下同様にして、4番目以降の配管ルートを生成する。
【0035】
次に、サポート位置決定部40は、定ピッチスパン法に基づいて、配管を支持するサポート部材を配置するサポート位置を決定する(ステップS14)。サポート間隔(1本の配管ルートにおける配管を支持する任意のサポート位置とこれに隣接するサポート位置との間隔)は、配管の重量、配管に通す流体等の重量等に応じて予め記憶部10に記憶されている。サポート位置決定部40は、複数の配管が隣接もしくは並走して配置される場合、複数の配管の内の2つ以上の配管を一つのサポート位置で支持可能な位置をサポート位置として決定する。
【0036】
具体例について説明する。定ピッチスパン法を採用する場合、サポート間隔の標準スパンと、サポート位置の許容移動範囲が設定される。サポート位置決定部40は、最初に、並走して配置された複数の配管それぞれについて、定ピッチスパン法に基づいてサポート位置を決定する。次に、サポート位置決定部40は、複数の配管それぞれのサポート位置を許容移動範囲(例えば、20%)の範囲内で移動させることにより、複数の配管に共通する共通サポート位置を決定する。サポート位置決定部40は、共通サポート位置をサポート位置とすることにより、配管ルートの全長におけるサポート部材の数を低減する。
【0037】
次に、配管部材決定部50は、予め設定された運搬条件(部材の長さおよび重量等)に基づいて、部材の長さを決定する(ステップS15)。例えば、配管部材決定部50は、配管を構成する複数の部材それぞれの長さが10m以下になるように、配管を構成する部材の長さを決定する。また、配管部材決定部50は、部材1個の重量が100kg以下になるように、部材の長さを決定する。配管部材決定部50は、サポート位置決定部40が決定したサポート位置がそれぞれの部材の端部付近に位置するように部材の長さを決定する。配管を構成する部材の種類は、配管の材質、長さ、太さ等に応じて予め記憶部10に記憶されている。配管部材決定部50は、配管の材質、長さ、太さ等に応じて、予め記憶されている部材の中から、配管を構成する部材を決定する。
【0038】
また、配管部材決定部50は、配管の重量、配管に通す流体等の重量および配管を支持するサポート部材を固定する場所等に基づいて、配管を支持するサポート部材を決定する。この配管部材決定部50は、図3に示されるように、固定場所(床、天井、壁等)、サポートする配管の数、配管および配管を通す流体の重量等に応じたサポート部材を決定する。
【0039】
次に、物量集計部60は、配管部材決定部50が決定した部材(配管を構成する部材、サポート部材)ごとの数を集計する(ステップS16)。
【0040】
次に、出力部70は、ルート生成部30が生成した配管ルートおよびサポート位置決定部40が決定したサポート部材の位置を示す3次元CAD画像を表示する(ステップS17)。図5は、出力された配管ルートおよびサポート部材の位置を示す3次元CAD画像の例である。図5は、1つの始点SPに対して、2つの終点EP1,EP2を設定した分岐がある場合の配管ルートを示す3次元CAD画像の例である。配管PPは、所定の間隔でサポート部材SPPで支持されている。出力部70は、建屋の3次元CAD画像と配管ルートおよびサポート部材の位置を示す3次元CAD画像とを重ね合わせた画像を表示することもできる。
【0041】
また、出力部70は、物量集計部60が集計した部材(配管を構成する部材、サポート部材)ごとの数を出力する。図6は、出力された部材ごとの数を示す表の例である。
【0042】
(変形例1)
実施形態1の説明では、設計者が配管の素材、配管の太さ、配管配置の優先順位を指定する場合について説明した。他の実施形態として、配管配置設計システムが、設計者が指定した配管内に通す流体の種類および重量の情報に基づいて、配管の素材、配管の太さ、配管配置の優先順位を自動で決定することもできる。この配管内に通す流体の種類および重量と、配管の素材、配管の太さ、配管配置の優先順位等とを対応させた情報を記憶部10に記憶しておく。ルート生成部30は、設計者が入力した配管内に通す流体の種類および重量に対応する配管の素材、配管の太さ、配管配置の優先順位等を記憶部10から取得し、配管の素材、配管の太さ、配管配置の優先順位等を決定する。そして、ルート生成部30は、配管内に通す流体の種類および重量、決定した配管の素材、配管の太さ等に応じて、適用する配管配置基準情報14、詳細設計情報15を選択する。また、ルート生成部30は、図4に示すフローチャートにおける第1の配管を決める優先順位を、配管内に通す流体の種類および重量と配管配置の優先順位を対応させた情報に基づいて決定する。
【0043】
(変形例2)
サポート位置決定部40は、既設の配管が所定のピッチで支持されているか否かを定ピッチスパン法に基づいて判定することもできる。具体的には、設計者が、判定対象とする既設の配管を指定する。サポート位置決定部40は、記憶部10から既設配管情報13を取得する。サポート位置決定部40は、既設配管情報13に含まれる既設配管のサポート位置情報、配管および配管を通す流体の重量に応じて指定されたサポート間隔に基づいて、既設の配管が所定のピッチで支持されているか否かを定ピッチスパン法に基づいて判定する。サポート位置決定部40は、既設の配管のサポート間隔が要求条件を満たしていない場合、追加すべきサポート位置を生成する。
【0044】
(変形例3)
配管配置設計システム1は、配管配置基準情報14もしくは詳細設計情報15に、電気配線ケーブルもしくは空調ダクトを必要とする条件が含まれる場合、電気配線ケーブルもしくは空調ダクトを配置するルートを生成することもできる。例えば、配管ルートの途中に、電力の供給を必要とする計器がある場合、ルート生成部30は、記憶部10から予め記憶されている分電盤が設置されている位置の座標を取得する。ルート生成部30は、該当する計器を配置した位置の座標を始点座標とし、分電盤が設置されている位置の座標を終点座標として、電気配線ケーブルの配線ルートを生成する。
【0045】
プラントにおける配管ルートの全長は、1,000kmを超えることもある。この配管を支持するサポート部材の数は10万個を超える。また、計器やバルブの数が1000個を超えることもある。このような複雑な配管設計を熟練設計者の経験や知見に頼って行うと、配管設計には膨大な時間を要することとなる。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態に係る配管配置設計システム1は、配管配置基準情報および詳細設計情報等が示す数多くの制約条件を満たす配管ルートを自動生成することができるので、配管ルートの設計負担を低減することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る配管配置設計システム1は、配管の重量等に応じた配管のサポート位置を自動生成することができるので、配管のサポート位置の設計負担を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る配管配置設計システム1は、複数の配管ルートが隣接する場合や並走する場合、複数の配管を一つのサポート位置で支持可能なサポート位置を自動生成できるので、サポート部材の数を低減でき、工事負担を低減することができる。
【0049】
なお、上記の説明では、建屋内に配管を配置する場合について説明したが、配管配置設計システム1は、建屋外における配管ルートの生成にも適用できる。この場合、配置空間情報11として、敷地内の構造を示す3次元CAD情報を使用する。
【0050】
また、上記の説明では、配管配置設計システム1内に記憶部10を設ける場合について説明したが、記憶部10を配管配置設計システム1の外に設け、ネットワークを介して配管配置設計システム1に接続してもよい。
【0051】
また、実施形態1の説明では、配管配置基準情報14、詳細設計情報15、運転・保守情報16が記憶部10に固定情報として記憶されている場合について説明したが、任意の情報を設計者が追加もしくは修正できるようにしてもよい。
【0052】
また、実施形態1の説明では、入力部20がタッチパネル、キーボード等である場合について説明したが、入力部20は、インターネット、USB等のインタフェースであってもよい。入力部20は、複数の配管の始点および終点の座標情報、配管内に通す流体の種類および重量、配管の素材等の情報をファイル形式で取得してもよい。
【0053】
また、図4を用いた配管ルートの生成の説明では、サポート位置を決定(ステップS14)した後で、部材の長さを決定(ステップS15)する場合について説明をしたが、部材の長さを決定した後にサポート位置を決定してもよい。もしくは、部材の長さを決定した後に、各部材を支持できるようにサポート位置を修正してもよい。
【0054】
また、配置空間情報11や既設配管情報13の3次元CAD情報は、既設プラントの状況(壁や柱等の存在、既設の装置等の存在等)を3次元レーザスキャナを用いて取得した点群データで構成された情報であってもよい。点群データは、3次元座標の点の集まりであり、建屋、既設設備、既設配管等を3次元レーザスキャナで複数の位置から撮影することにより取得することができる。建屋、既設設備、既設配管等の点群データは、建屋、既設設備、既設配管等の立体形状を表すことができる。壁・天井・床・柱や梁などの点群データをグループ化して配置空間情報11の属性情報を付与することにより、既設プラントの配置空間情報11の3次元CAD情報として扱うことができる。同様に、既設のケーブルラックや空調ダクト、鉄骨やサポート部材、機器や電気盤などの設備の点群データもそれぞれの属性情報を付与することでそれぞれの3次元CAD情報として扱うことができる。
【0055】
(実施形態2)
ここでは、配管配置基準情報14、詳細設計情報15等の情報を追加もしくは修正する場合について説明する。
【0056】
配管配置設計システム1で配管ルートを生成し、配管を支持するサポート部材を配置するサポート位置を決定した後、構造解析システムを使用して、生成した配管ルートについて、配管の強度評価(材料力学上の確認)を行う。例えば、構造解析システムを使用して、熱応力に対する耐久解析、流体の通過に伴う配管の振動解析、耐震解析等を行う。
【0057】
熱応力に対する耐久解析を例に説明する。この解析では、環境温度および配管内に通す流体の温度を仕様が定める最高温度から最低温度まで変化させ、配管の熱膨張もしくは熱収縮により、配管に基準値以上の負荷が生じないかを解析する。例えば、配管の曲がり部分を設計基準が定める最小の曲がり半径に設定した場合、流体の熱による配管の熱膨張により配管内部応力が基準値より高くなる場合がある。構造解析システムが、配管内部応力が基準値を超えるという解析結果を出力した場合、曲がり部分の最小半径を規定する設計基準を修正する必要がある。
【0058】
配管配置設計システム1は、構造解析システムの解析結果を配管配置基準情報14、詳細設計情報15等にフィードバックする。この場合設計者は、構造解析システムによる熱応力に対する耐久解析、流体の通過に伴う配管の振動解析、耐震解析等の解析結果を配管ルートの設計条件の追加情報として入力部20に入力する。入力部20は、追加情報を記憶部10に記憶する。これにより、配管配置基準情報および詳細設計情報が示す条件は、修正もしくは追加される。そして、配管配置設計システム1は、構造解析システムによる解析結果の情報(追加情報)を加えて、配管配置基準情報14、詳細設計情報15、運転・保守情報16に基づいて、配管ルートを生成する。
【0059】
このように、配管配置設計システム1による配管ルートの生成、構造解析システムによる構造解析、配管配置基準情報および詳細設計情報が示す条件の修正もしくは追加、配管配置設計システム1による配管ルートの生成、の工程を繰り返すことにより、信頼性の高い配管配置設計を行うことができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…配管配置設計システム
10…記憶部
11…配置空間情報
12…配置専用スペース情報
13…既設配管情報
14…配管配置基準情報
15…詳細設計情報
16…運転・保守情報
20…入力部
30…ルート生成部
40…サポート位置決定部
50…配管部材決定部
60…物量集計部
70…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6