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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】塀
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
E04H17/16 104
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020199325
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087406
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀敏
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240381(JP,A)
【文献】特開2009-007819(JP,A)
【文献】特開2014-051793(JP,A)
【文献】特開2005-264572(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01156178(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00 -17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のパネル材と、
二個の縦材と二個の横材とからなる枠体とを有する塀パネルを備えた塀であって、
前記縦材は、前後の側壁部を有して前記パネル材の側端部が挿入される縦溝部を備えており、
前記縦溝部は、開口側において、一方の側壁部は開口側の開口幅が広がる方向に段部が形成され、他方の側壁部には、一方の側壁部に向けて突出する突部が形成されており、
前記横材は、前後の側壁部を有して前記パネル材の上下端部が挿入される横溝部を備えており、
前記横溝部は、開口側において、一方の側壁部には、他方の側壁部に向けて突出する突部が形成されており、他方の側壁部は、開口側の開口幅が広がる方向に段部が形成され、
前記縦溝部内に挿入された前記パネル材は、一方の面は、前記一方の側壁部の開口側との間に隙間が形成され、他方の面が前記他方の側壁部の突部に当接されており、
前記横溝部内に挿入された前記パネル材は、一方の面は前記一方の側壁部の突部に当接され、他方の面は、前記他方の側壁部の開口側との間に隙間が形成されており、
前記横溝部における突部と他方の側壁部の奥側との距離は、前記パネル材の厚さよりも短い、
ことを特徴とする塀。
【請求項2】
前記縦溝部における突部との他方の側壁部の奥側との距離は、前記パネル材の厚さと同程度となされ、前記横材は、前記縦材よりも長い
ことを特徴とする請求項1に記載の塀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やマンション等の敷地境界部や隣地境界部に沿って設けられる塀に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅や工場等の敷地の境界部に沿って設けられる塀は、金属、木材、合成樹脂等からなるパネル材を矩形状の枠体を取付けた塀パネルを形成し、それを幅方向(左右方向)に多数連結して、塀を形成するものが多数提案されている。
【0003】
塀パネルに用いられるパネル材の形態としては、板材、ルーバー材、桟材等が用いられ、板材の場合も、パンチング加工やスリット加工によって通風性を有するものや、板材等を複数枚厚さ方向に配置して用いるもの等がある。
【0004】
本出願人においては、特許文献1において、地表に適宜間隔で立設された支柱に塀パネルが設けられた塀に於いて、この塀パネルが適宜間隔をおいて設けられた一対の板材とこの板材の上下縁部に設けられた横桟とからなり、裏面の板材は合成樹脂からなる基体とこの基体の表裏に設けられた金属板からなり、表面の板材は多孔質体からなり、表裏の板材の間に吸音材が設けられている吸音塀を提案している。
【0005】
【文献】特開2005-264572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、塀パネルとして板材を用いると、通常は通気性がないので、風を板材で受けることになり、塀パネルを強固に固定する必要がある。特許文献1の吸音塀では、板材の間に吸音材が設けられているので、例えば、板厚間の距離に対して、吸音材の厚さをやや厚くしたものとすれば、塀パネルの厚さが厚くなる方向にテンションが掛かった状態となるため、板材の上下縁部を横桟に設けた挿入溝に挿入して取付ける場合は、挿入溝の中で板材が圧設された状態となり、横桟に対して板材等を強固に取付けることができる。一方、単板の場合、単板の端部を横桟や縦桟の挿入溝に挿入する場合、単に挿入溝の幅を狭くするのみでは、挿入しにくくなって施工性が低下してしまう。また、挿入溝の幅をやや広くし、クッション材等の弾性部材を挿入溝内に配置する場合は、部材点数が多くなるばかりでなく、クッション材の位置がずれると、隙間が生じて、単板に風が当たるとばたつきが生じやすくなるおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、塀パネルにおいて、単板を枠体に取付けらものであっても、単板を枠体に強固に取り付けることができる塀を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る塀は、矩形状のパネル材と、二個の縦材と二個の横材とからなる枠体とを有する塀パネルを備えた塀であって、前記縦材は、前後の側壁部を有して前記パネル材の側端部が挿入される縦溝部を備えており、前記縦溝部は、開口側において、一方の側壁部は開口側の開口幅が広がる方向に段部が形成され、他方の側壁部には、一方の側壁部に向けて突出する突部が形成されており、前記横材は、前後の側壁部を有して前記パネル材の上下端部が挿入される横溝部を備えており、前記横溝部は、開口側において、一方の側壁部には、他方の側壁部に向けて突出する突部が形成されており、他方の側壁部は、開口側の開口幅が広がる方向に段部が形成され、前記縦溝部内に挿入された前記パネル材は、一方の面は、前記一方の側壁部の開口側との間に隙間が形成され、他方の面が前記他方の側壁部の突部に当接されており、前記横溝部内に挿入された前記パネル材は、一方の面は前記一方の側壁部の突部に当接され、他方の面は、前記他方の側壁部の開口側との間に隙間が形成されており、前記横溝部における突部と他方の側壁部の奥側との距離は、前記パネル材の厚さよりも短い、ことを特徴とするものである。
【0009】
前記縦溝部における突部との他方の側壁部の奥側との距離は、前記パネル材の厚さと同程度となされ、前記横材は、前記縦材よりも長いものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パネル材は横材により前後一方の方向に反る変形力が生じるが、縦材により変形が生じる方向への移動(反り)が抑制され、反りを戻す方向に作用するので、パネル材の全体に一定のテンションが掛かった状態でパネル材を枠体に取付けることが可能となり、枠体にパネル材を強固に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る塀において実施の一形態を示す説明図である。
図2図1のA-A線拡大断面図である。
図3図1の塀パネルの正面図である。
図4図3のB-B線拡大断面図である。
図5図3のC-C線拡大断面図である。
図6】パネル材と縦材との関係を示す説明図である。
図7】パネル材と横材との関係を示す説明図である。
図8】縦材と横材との連結構造を示す説明図である。
図9図1の(c)における支柱の上部付近の拡大図である。
図10】塀パネルと取付部材との関係を示す説明図である。
図11】連結部材の説明図である。
図12】塀パネルと連結部材との関係を示す説明図である。
図13】塀パネルと連結部材との関係を示す他の説明図である。
図14】塀パネル同士の連結状態を示す説明図である。
図15図1の(b)のキャップ付近の拡大図である。
図16図15のキャップの説明図である。
図17図15のD-D線拡大断面図である
図18図15のE-E線拡大端面図である。
図19】塀パネルとキャップとの関係を示す説明図である。
図20】塀パネルとキャップとの関係を示す他の説明図である。
図21】キャップと連結部材との関係を示す説明図である。
図22図1のF-F線における説明図である。
図23】塀の設置方法を示す説明図である。
図24】塀の設置方法を示す他の説明図である。
図25】塀の設置方法を示す他の説明図である。
図26図1のG-G線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。図1は本発明に係る塀の実施の一形態を示す説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図面において、10はパネル材、20は縦材、30は横材、40はキャップであって、本発明に係る塀100は、パネル材10に縦材20及び横材30を取付けられた塀パネル50が左右方向に連結されて、設置面に立設された支柱60に取付けられたものであって、隣合う塀パネル50にわたってキャップ40が取付けられたものである。ここで、塀100の左右方向、上下方向、前後方向は、特に説明をしない限り、図1の左右方向、上下方向、前後方向と同じ方向であり、以下、これに基づき説明する。
【0013】
図2図1のA-A線拡大断面図であって、パネル材10の断面状態を説明するものである。パネル材10は、図1及び図4に示すように、略矩形に形成されており、芯材11の表裏面に化粧板12、12が積層された積層体である。芯材11は、一般には、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性合成樹脂から作製されるものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン単独のもの、或いはこれらを適宜混練されたものを用いてもよく、これらに水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機材料を適宜混練したものを用いてもよい。
【0014】
化粧板12は、一般にはアルミニウム合金、ステンレス鋼、銅等の金属箔からなり、その表面に塗装を施してもよく、その表面にシートやフィルムを貼着してもよい。また、化粧板12は、通常は表裏共に同じ種類の金属箔が用いられる。
【0015】
パネル材10は、本形態では、上述のような積層体であるが、積層体の形態に限定されるものではなく、例えば、金属板、樹脂板を用いても良い。
【0016】
図3図1の塀パネル50の正面図、図4図3のB-B線拡大断面図、図5図3のC-C線拡大断面図である。また、図6はパネル材10と縦材20との関係を示す説明図、図7はパネル材10と横材30との関係を示す説明図である。縦材20は、図3及び図4に示すように、パネル材10の左右側端部に取付けられたものであり、基板部21と、基板部21よりも塀パネル50の中央側に位置しておりパネル材10の側端部が挿入される縦溝部22とを備えており、上下方向に連続して形成されている。
【0017】
縦溝部22は、挿入溝22aと前壁部22bと後壁部22cと、前壁部22b及び後壁部22cを接続する底部22dとを備え、底部22dが基板部21側に配置されており、塀パネル50の中央側に向けて開口している。前壁部22bの開口側は、切り欠かれて切り欠き部22eが形成されている。一方、後壁部22cの開口側には、前壁部22bに向けて突出する突部22fが形成されている。
【0018】
これにより、縦溝部22内に挿入されたパネル材10は、その前面は、切り欠き部22eとの間には隙間が形成されており、奥側の前壁部22bに当接され、その後面は後壁部22cの突部22eに当接される。
【0019】
横材30は、図3図5に示すように、パネル材10の上下端部に取付けられたものであり、基板部31と、基板部31よりも塀パネル50の中央側に配置されてパネル材10の上下端部が挿入される横溝部32とが、左右方向に沿って連続して形成されている。
【0020】
横溝部32は、挿入溝32aと前壁部32bと後壁部32cと、前壁部32b及び後壁部32cを接続する底部32dとを備え、底部32dが基板部31側に配置されており、塀パネル50の中央側に向けて開口している。前壁部32bの開口側は、後壁部32cに向けて突出する突部32eが形成されている。一方、後壁部32cの開口側は切り欠かれて切り欠き部32fが形成されている。
【0021】
これにより、横溝部32内に挿入されるパネル材10は、その前面は突部32eに当接され、その後面は切り欠き部32fとは隙間が形成されており、奥側の後壁部32cに当接される。
【0022】
次に、塀パネル50の組み立て手順について説明する。図4に示す様に、縦材20の縦溝部22において、突部22fと底部22d側の前壁部22bの壁面との間の距離K1は、パネル材10の前後方向の厚さ寸法K2と同程度となされている。このため、縦材20の縦溝部22内にパネル材10の左端部又は右端部を挿入する際、切り欠き部22eの段部22gに当接し、それ以上奥に挿入できなくなる場合がある。したがって、図6に示す様に、パネル材10の左右方向に対して、縦溝部22の開口方向をやや後方に向けておけば、パネル材10の上端部又は下端部が段部22gを超えて縦溝部22の奥側まで挿入することができる。
【0023】
また図5に示す様に、横材30の横溝部32において、突部32eと底部32d側の後壁部32cの壁面との間の距離K3は、パネル材10の前後方向の厚さ寸法K2より短い。このため、横溝部32内にパネル材10の上端部又は下端部を挿入する際、切り欠き部32fの段部32gに当接し、それ以上奥に挿入できなくなる。したがって、図7に示す様に、パネル材10の上下方向に対して、横溝部32の開口方向をやや前方に向けておけば、パネル材10の上端部又は下端部が段部32gを横溝部32の奥側まで挿入することができる。
【0024】
続いて、縦溝部22の開口の向きが左右方向にとなるように縦材20の向きを戻し、横溝部32の開口の向きが前後方向となるように横材30の向きを戻して、縦材20と横材30とを連結する。この際、横材30の向きを戻すと、図5に示す様に、パネル材10には、上下方向中央部が後ろ向きに反る方向に変形する変形力が働く。このため、縦材20には、前記変形を戻すような力が作用する。これにより、縦溝部22、横溝部32内に挿入されたパネル材10の端部は縦溝部22及び横溝部32内に圧接された状態となり、パネル材10は全体にテンションが掛かった状態となるので、縦材20及び横材30によってパネル材を強固に固定することができる。
【0025】
ここで、距離K1を距離K3と同程度に短くすれば、上述の横材30の効果を勘案すると、縦材20によりパネル材10は、左右方向中央部が前向きに反る方向に変形する変形力が働く。これにより、パネル材10を縦材20及び横材30に更に強固に固定できる可能性がある。しかしながら、これでは、パネル材10に前後逆向きの変形力が生じて、パネル材10に大きな歪みが生じる可能性があり、パネル材10の変形や、縦材20又は横材30の変形や破損の可能性が生じる。
【0026】
また、本形態では、パネル材10は左右方向に長い横長矩形状であるため、距離K1を距離K3を同程度に狭くしてしまうと、縦材20の向きを戻したときに、横材30の向きを戻したときよりも更に大きな変形力が生じる。そこで、本形態では、距離K1は、距離K3より大きく、距離K2と同程度としている。加えて、縦材20の縦溝部22に挿入されたパネル材10において、後向きへの反りは許容するが、前向きへの反りを抑制するように、突部22f及び切り欠き部22eに対して、突部32e及び切り欠き部32fの位置関係を前後逆に配置している。これにより、パネル材10に不必要に大きな変形力が生じることを抑えることができる。したがって、塀パネル50が上下方向に長い縦長形状の場合は、前述の距離K1とK3との関係を逆とすることが好ましい。
【0027】
次に、縦材20と横材30との連結構造について説明する。図8は縦材20と横材30との連結構造を示す説明図である。縦材20は、基板部21から縦溝部22の前壁部22b、底部22d及び後壁部22cに接続される前桟23a、中間桟23b、後桟23cを有している。縦材20の上端部は、縦溝部22、各桟23a、23b、23cは除去されて基板部21のみとなっており、塀パネル50の中央側に面する連結面21aが形成されている。なお、縦材20の下端部にも同様な連結面(図示せず)が形成されているが、詳しい説明は省略する。
【0028】
横材30の側端部を連結面21aに当接してねじS1を用いて縦材20と横材30とを連結する。具体的には、連結面21aは、左右方向に貫通する貫通孔21bを有しており、横材30は、貫通孔21bに対応する位置にビス孔30aが左右方向に沿って形成されている。貫通孔21bからビス孔30aに向けてねじS1を螺入することにより、縦材20と横材30とが連結されて枠体が形成される。図8は、縦材20と横材30とが連結されてなる枠体の上部の連結構造を示したものであるが、下部も同様な構造で連結されているので、詳しい説明は省略する。
【0029】
次に、支柱に対する塀パネル50の取付構造について説明する。図9図1の(b)において支柱60の上部付近の拡大図、図10は塀パネル50と取付部材51との関係を示す説明図である。図9に示す様に、横材30は、基板部31から横溝部32の前壁部32b、底部32dに接続される前板部33a、中板部33bを有している。また基板部31の後側は塀パネル50の中央部側に向けて延びる第一の後板部33cを有しており、横溝部32の後壁部32cは、第一の後板部33cに向けて延びる第二の後板部33dを有しており、第一の後板部33cと第二の後板部33dとの間には左右方向に連続して隙間34が形成されている。
【0030】
これにより、横材30は、前壁部32b、底部32d、中板部33b、基板部31及び前板部33aにより囲まれた前中空部35と、後壁部32c、底部32d、中板部33b、基板部31、第一の後板部33c及び第二の後板部33dに囲まれた後中空部36とを有し、それぞれ横材30の長手方向に沿って連続して形成されている。後中空部36は隙間34を通じて横材30の外部と通じている。
【0031】
後中空部36内には、隙間34の上下寸法より幅広の取付部材51が配置されている。取付部材51は横長板状であって前後方向に貫通するねじ孔51aを有しており、支柱60の前後方向を貫通するボルトB1のねじ先端部が、ねじ孔51aに螺入され、増し締めすることにより、取付部材51の後面と支柱60の前面との間に第一の後板部33cと第二の後板部33dとが挟持された状態となる。これにより、横材30が支柱60に固定されて、塀パネル50が支柱60に取付けられる。
【0032】
次に、具体的な取付方法の一例を説明する。図10に示す様に、縦材20の上下端部において左右方向に貫通して形成されて横材30の後中空部36に通じる後挿入孔24から取付部材51を挿入する。横材30は、図9に示す様に、取付部材51を隙間34付近に誘導するためのガイド部37を有しており、後挿入孔24から挿入された取付部材51をガイド部37に沿って後中空部36内を所定の位置まで移動させる。その後、支柱60の後側からボルトB1を前後方向に貫通して、取付部材51のねじ孔51aに螺入して増し締めする。なお、図9図10は塀パネル50の上部側の説明であるが、塀パネル50の下部側も同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0033】
次に、塀パネル50同士の連結構造について説明する。図11は、連結部材52の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。連結部材52は、塀パネル50同士を連結するものであって、縦板部53と横板部54とを有している。縦板部53は、前後方向に貫通するねじ孔52aを有している。
【0034】
図9に示す様に、横材30の前中空部35に連結部材52が配置される。横材30の中板部33bは、前後方向に貫通する貫通孔(図示せず)を有しており、横材30の後方から隙間34及び後中空部36を経て前記貫通孔に挿入されたボルトB2のねじ先端部がねじ孔52aに螺入され、増し締めすることにより、連結部材52が横材30に固定される。
【0035】
連結部材52は、図11に示す様に、縦板部53の左右に間隔をあけて二個のねじ孔52a、52aが形成されており、左右方向の一端部が一方の塀パネル50の横材30に固定されており、左右方向の他端部が他方の塀パネル50の横材30に固定されている。これにより、塀パネル50同士が連結される。
【0036】
塀パネル50同士の連結方法の一例を説明する。図12及び図13は塀パネル50と連結部材52との関係を示す説明図、図14は塀パネル50、50同士の連結状態を示す説明図である。まず、図9に示す様に、前中空部35は、連結部材52の縦板部53を横材30の中板部33bに沿って挿入させるためのガイド部38を有している。図12に示す様に、縦材20は、横材30の前中空部35に通じており、かつ、連結部材52が挿通可能な前挿入孔28を有している。前挿入孔28に連結部材52を挿入すると、連結部材52は、前中空部35のガイド部38に沿って奥に進む。
【0037】
図13に示す様に、連結部材52を左右方向で長さの半分程度挿入する。そして、図9に示す様に、ボルトB2を中板部33bの貫通孔(図示せず)から連結部材52のねじ孔52aに螺入して増し締めする。これにより、連結部材52が一方の塀パネル50に固定され、連結部材52の左右方向の半分程度の長さが塀パネル50から左右方向の外側に向けて突出された状態となる。
【0038】
続いて、塀パネル50から突出している連結部材52に対して、上述と同様な操作によって新たな塀パネル50を固定する。これにより、図14に示す様に、塀パネル50、50同士が連結される。
【0039】
図9図12図14は、塀パネル50の上部側の説明であるが、塀パネル50の下部側も同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0040】
次に、塀パネル50に対するキャップ40の取付構造について説明する。図15図1の(b)のキャップ40付近の拡大図、図16図15のキャップ40の説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。塀パネル50同士の連結箇所において、一方の塀パネル50の縦材20と、この縦材20に相対向する他方の塀パネル50の縦材20との間にキャップ40が取付けられている。キャップ40は、相対向する縦材20同士の上端面20aを覆う蓋部41と、蓋部41の下面から下方に向けて形成された脚部42とを備えている。
【0041】
これにより、図14に示す様に、縦材20の上端面20aは、蓋部41により覆われて、外部からは見えない状態となる。縦材20は、本形態では、アルミニウム合金からなる形材を適宜長さに切断するため、上端面20aに切断面が露出するため、縦材20の表面の色や光沢とは異なることが多いので、蓋部41で切断面である上端面20aを覆い、外部から見えないようにすることができる。なお、本形態では、図16に示す様に、蓋部41の前後端部は下方に向けて突出部41a、41aが形成されており、これにより、縦材20の上端部において、上端面20aに加えて、上端面20aの前後のエッジ付近も覆うことができる。
【0042】
図17図15のD-D線拡大断面図である。縦材20は、左右方向の外側面に前後方向中間部において上下方向に連続的にしており、塀パネル50の中央側に向けて形成された凹部25を備えている。本形態においては、縦材20の外側面において、前端部と後端部にそれぞれリブ26、26が形成されており、前後のリブ26、26間に凹部25が形成されている。隣合う塀パネル50において、縦材20の外側面同士が相対向しているため、凹部25同士及びリブ26同士も相対向している。そして、凹部25とリブ26とによって上下方向に空間部27が形成されている。この空間部27内にキャップ40の脚部42が配置されている。
【0043】
脚部42は、空間部27内に配置されおり、相対向するリブ26、26同士は当接しているか、ほとんど隙間が無い状態であるので、外部からは見えず、キャップ40において、外部から見える箇所を蓋部41のみとすることができる。
【0044】
図18は、図15のE-E線拡大端面図である。キャップ40の脚部42は、縦材20の左右方向の外側面から外方に突出する突出部Tに係止されている。突出部Tは、空間部27内を左右方向に通過しており、一方の縦材20の外側面から他方の縦材20に向けて突出している。これにより、キャップ40は、塀パネル50に対して、ねじ等の固定具で固定しなくても、容易には外れなくなる。本形態では、突出部Tは、塀パネル50同士を連結する連結部材52を兼ねている。これにより、キャップ40を係止するために別部材を用意する必要はなく、部材点数を少なくすることができる。
【0045】
次に、塀パネル50とキャップ40の関係を説明する。図19及び図20は塀パネル50とキャップ40との関係を示す説明図、図21はキャップ40と連結部材52の関係を示す説明図である。図19に示す様に、塀パネル50同士の連結箇所においては、相対向する縦材20により空間部27が形成されている。この空間部27に、上方からキャップ40の脚部42を挿入して、図20に示す様に、塀パネル50同士の連結箇所にキャップ40を固定する。これにより、縦材20の上端面20aを覆うことができる。
【0046】
図21は空間部27に挿入されたキャップ40の脚部42と、脚部42係止される連結部材52(突出部T)との関係を示している。なお、連結部材52は、図19図20においては正面視では現れないが、図13図17に示す様に空間部27において、連結部材52は左右方向に貫通して左右の塀パネル50に固定されている。
【0047】
まず、空間部27に位置する連結部材52(突出部T)に対して、上方からキャップ40の脚部42を近づける。脚部42は、連結部材52の縦板部53よりも前方に配置される前脚部43と、横板部54よりも後方に配置される後脚部44とを有している。また、前脚部43は、縦板部53の下端面に係止される係止部43aを有している。後脚部44は、横板部54の下端面に係止される係止部44aを有している。キャップ40は合成樹脂製であって弾性変形可能であるので、空間部27に脚部42を挿入し、係止部43aが縦板部53の前面側に当接し、係止部44aが横板部54の後面側に当接するように、前脚部43及び後脚部44の先端側が外方に反るように変形させることができる。具体的には、係止部43a、44aの一方を縦板部53又は横板部54に当接させ、キャップ40を前に傾ける、又は後ろに傾けることにより、残りの一方の係止部44a、43aを横板部54又は縦板部53に当接させる。
【0048】
図21において、脚部42を下方に移動させる(脚部42を空間部27の下方側に向けて挿入する)と、図18に示す様に、係止部43aが縦板部53の下端面に係止され、係止部44aが横板部54の下端面に係止される。これにより、キャップ40は、連結部材52(突出部T)に対して上下方向及び前後方向の移動が規制されるので、キャップ40を上方に向けて引き抜こうとしても、容易には引き抜けなくなる。
【0049】
加えて、塀パネル50同士の連結させた後に、キャップ40を取付けることができるので、仮に、キャップ40を取付け忘れた箇所があっても、塀パネル50同士の連結作業に影響するものではなく、キャップ40が取付けられていない箇所があれば、後から取付けることができるので、施工性に優れたものとなる。
【0050】
更に、キャップ40の脚部42は連結部材52に係止されるので、キャップ40を引き抜くことが容易でない上、脚部42は、空間部27内に配置されており、縦材20の前後のリブ26により外部から脚部42がほとんど見えない構造であるため、例えば、一般的なオーバーキャップのように、嵌合箇所を工具など使って嵌合状態を緩めてオーバーキャップを外すようなこともできにくくなる。
【0051】
なお、キャップは、本形態のように、塀パネル50を上下に複数段配置した場合は、最上段の塀パネル50の連結箇所の上部にのみ取付けられればよい。
【0052】
次に、本形態のように、塀パネルを上下に複数段配置する場合の、上下の塀パネルの積み重ね構造について説明する。図22図1のF-F線における説明図であって、(a)はF-F線拡大断面図、(b)は(a)の説明図である。
【0053】
本形態の横材30は、上下反転して利用できるため、塀パネル50の上下の横材30は同じ部材を利用している。しかしながら、横材30は、前後方向に対しては非対称形状であるため、前後に反転して利用することができない。したがって、塀パネル50の上に別の塀パネル50を段積みする場合に、横材30同士が積み重ねられるが、一方の横材30に突部を形成し、他方の横材30に嵌合可能な凹部を形成するような嵌合構造とすることが難しい。
【0054】
そこで、本形態においては、横材30は、上下方向の外側面において、前後方向中央部に突部39が形成されており、突部39は左右方向に連続して形成されている。つまり、塀パネル50を上下方向に段積みすると、積み重ね箇所において、上下の横材30の突部39が相対向して配置された状態となる。
【0055】
本形態では、上下の塀パネル50の間に、上下の突部39にそれぞれ嵌合されるスペーサー70が配置されている。スペーサー70材は、上下面の前後方向の中央部に突部39が嵌合される溝部71を有しており、溝部71は左右方向に沿って連続して形成されている。
【0056】
これにより、塀パネル50を段積みする際、下の塀パネル50を配置し、横材30の上にスペーサー70を配置し、更にその上に上の塀パネルを載置することによって、スペーサー70を介して上下の塀パネル50が嵌合された状態となり、前後方向の位置ずれが生じにくくなる。
【0057】
スペーサー70は、合成樹脂製であって、上下方向中央に上下に薄肉の金属箔72が左右方向に沿って配置され、周りの合成樹脂と接着されている。これにより、スペーサー70の上に塀パネルを載置した際、上の塀パネル50の重量によりスペーサー70に圧着し、スペーサー70と下の塀パネル50も圧着した状態となるが、スペーサー70が大きく変形したり、破断したりする不具合の発生を抑えることができる。また、気温の変化により、スペーサー70の樹脂は横材30よりも膨張・収縮に伴う寸法変化が大きくなる可能性があるが、金属箔72により、スペーサー70の寸法変化を抑えることができる。
【0058】
次に、上下方向に塀パネルが積み重ねられた塀の設置方法の一例を説明する。図23図25は、塀100の設置方法を示す説明図である。なお、図面における矢印は、各部材の移動方向を示している。まず、図23の(a)に示す様に、設置場所に支柱60を適宜間隔で立設する。続いて塀パネル50を支柱60に取付けて、塀パネル50の左側に連結部材52を固定する。次に、図23の(b)に示す様に、連結部材52の左側に塀パネル50を配置して、連結部材52を介して右側の塀パネル50と連結して支柱60に固定する。
【0059】
次に、図24の(a)に示す様に、右側の塀パネル50の上にスペーサー70を載置し、更に、その上に、新たな塀パネル50を載置して、支柱60に固定する。続いて、図24の(b)に示す様に、上段の塀パネル50の左側に連結部材52を固定する。
【0060】
次に、左下の塀パネル50上にスペーサー70を載置し、図25に示す様に、右上の塀パネル50とは左右方向に間隔をあけて、スペーサー70の上に新たな塀パネル50を載置する。その後、左上の塀パネル50をスペーサー70に沿って右側に移動させて、連結部材52に固定する。この際、右上の塀パネル50において、連結部材52の高さ位置と、左上の塀パネル50の高さ位置を合わせる必要がないので、塀パネル50同士の連結作業が容易になされる。そして、左上の塀パネル50を支柱60に固定する。更に、キャップ40を左上及び右上の塀パネル50の間に取付ける。これにより、図1の(a)に示す様に、塀パネル50を上下方向、左右方向に配置して塀100を設置することができる。
【0061】
塀パネルの支柱側は、図9に示す様に、横材30の隙間34が左右方向に連続して形成されており、支柱60との取付け箇所にのみボルトB1が前後方向に配置されている。図26図1のG-G線拡大断面図である。本形態では、隙間34にカバー材80が取付けられており、隙間34を塞ぐことができる。カバー材80の長さは横材の左右方向の長さとしておけば良いが、支柱60との取付け用のボルトB1の位置は避ける必要があるので、例えば、ボルトB1より右側及び左側の長さに応じてカバー材80の長さを調整したものを取付ければよい。これにより、カバー材80により隙間が隠されるので、外観上、塀パネル50の表裏の区別が付きにくいものとなり、意匠性に優れたものとなる。
【0062】
また、図1に示す様に、支柱60(ボルトB1)の位置は、通常は塀パネル50の一方の端部側に配置されることが多いので、ボルトB1から塀パネル50の一方の端部までにはカバー材80を取付けず、ボルトB1から塀パネル50の他方の端部側のみにカバー材80と取付けてもよい。
【0063】
カバー材80は、本形態では、横材30の第一の後板部33cと第二の後板部33dとにそれぞれ係合する一対の係合部81、82を有しており、それぞれの係合部81、82が第一の後板部33cと第二の後板部33dに係止されることにより、カバー材80が横材30に固定されて隙間34が塞がれる。第一の後板部33c及び第二の後板部33dは、隙間34側の端部において、外側面が内方に向けて切り欠かれて切り欠き部33e、33fがそれぞれ形成されており、この切り欠き部33e、33fにカバー材80の上端部及び下端部が配置されるので、カバー材80は横材30から突出することがなく、面一とすることができる。カバー材80の取付方法は、隙間34の後側からカバー材80を差し込んで係止させてもよく、横材30の側端部にカバー材80の一端部を係止して、スライドさせるものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、塀パネルにおいて、単板を枠体に取付けらものであっても、単板を枠体に強固に取り付けることができるので、板材を用いた塀に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 パネル材
11 芯材
12 化粧板
20 縦材
20a 上端面
21 基板部
21a 連結面
22 縦溝部
22a 挿入溝
22b 前壁部
22c 後壁部
22d 底部
22e 切り欠き部
22f 突部
22g 段部
23a 前桟
23b 中間桟
23c 後桟
24 後挿入孔
25 凹部
26 リブ
27 空間部
28 前挿入孔
30 横材
30a ビス孔
31 基板部
32 横溝部
32a 挿入溝
32b 前壁部
32c 後壁部
32d 底部
32e 突部
32f 切り欠き部
32g 段部
33a 前板部
33b 中板部
33c 第一の後板部
33d 第二の後板部
33e、33f 切り欠き部
34 隙間
35 前中空部
36 後中空部
37 ガイド部
38 ガイド部
39 突部
40 キャップ
41 蓋部
41a 突出部
42 脚部
43 前脚部
43a 係止部
44 後脚部
44a 係止部
50 塀パネル
51 取付部材
51a ねじ孔
52 連結部材
52a ねじ孔
53 縦板部
54 横板部
60 支柱
70 スペーサー
71 溝部
72 金属箔
80 カバー材
81、82 係合部
B1、B2 ボルト
S1 ねじ
T 突出部
100 塀

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26