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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240925BHJP
【FI】
C02F1/461 101C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020207533
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094575
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】517275287
【氏名又は名称】ドリコアクアサーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】吉田 充
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康博
(72)【発明者】
【氏名】服部 計
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-029797(JP,A)
【文献】特開2011-136296(JP,A)
【文献】特開2005-262003(JP,A)
【文献】特開2002-119970(JP,A)
【文献】特開2004-160349(JP,A)
【文献】特開2000-226682(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102225795(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C02F 1/58- 1/64
C02F 1/70- 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される被処理水の色度を低減させて排出する水処理装置であって、
被処理水を供給される混合槽と、
被処理水の電気分解を行うための第1の電解部が設けられ、前記混合槽よりも小さい容積の電解槽と、
前記混合槽と前記電解槽とを接続し、被処理水を前記混合槽から前記電解槽へ送り、さらに前記電解槽の被処理水を前記混合槽へ戻すように形成された循環流路と、
前記混合槽内の被処理水の遊離残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度計及び前記混合槽内の被処理水の酸化還元電位を測定するORP計の少なくとも一方と、
前記混合槽内の前記被処理水の色度が予め定められた比率以上まで低減されたか否かを判定する色度判定部と、
前記色度判定部の判定結果に基づいて、前記水処理装置の電解能力を制御する電解制御部と、
を備え、前記色度判定部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方と遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた閾値とに基づいて、前記被処理水の色度が前記予め定められた比率以上まで低減されたか否かを判定することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記電解制御部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた第1の閾値以上になったときに前記電解槽内の被処理水の電気分解を停止させ、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた第2の閾値以下になったときに前記電解槽内の被処理水の電気分解を開始させるように、前記第1の電解部の動作を制御する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記水処理装置は、前記残留塩素濃度計及び前記ORP計の両方を備えており、前記電解制御部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の両方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位に関して予め定められた第1の閾値以上になったときに前記電解槽内の被処理水の電気分解を停止させ、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位に関して予め定められた第2の閾値以下になったときに前記電解槽内の被処理水の電気分解を開始させるように、前記第1の電解部の作動を制御する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記電解制御部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が予め定められた第1の閾値以上になったときに前記循環流路の前記被処理水の流量を減少させ、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が予め定められた第2の閾値以下になったときに前記循環流路の前記被処理水の流量を増加させるように、被処理水の循環流量を制御する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記混合槽に第2の電解部がさらに設けられている、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記電解制御部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた第1の閾値以上になったときに前記混合槽内の被処理水の電気分解を停止させ、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた第2の閾値以下になったときに前記混合槽内の被処理水の電気分解を開始させるように、前記第2の電解部の動作を制御する、請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記混合槽内の被処理水の色度が前記混合槽に供給される前の被処理水の色度に対して40%以上低減された状態に相当する換算値が前記閾値として設定される、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記水処理装置は、前記混合槽に供給する前に前記被処理水に生物学的処理又は物理化学的処理を施す前処理装置をさらに備える、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記被処理水は、厨房排水、雑排水及び塩化物イオンを含んだ水の何れかである、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記水処理装置の上流側から前記混合槽に被処理水を供給する供給管の出口と前記電解槽から前記混合槽に被処理水を循環させる循環流路の出口とは、前記混合槽の上部側に開口しており、前記混合槽から前記水処理装置の下流側に被処理水を排出する排出管の入り口と前記混合槽から前記電解槽に被処理水を循環させる循環流路の入口とは、前記供給管の出口及び前記循環流路の出口よりも低い位置の前記混合槽の下部側に開口している、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の水処理装置。
【請求項11】
前記水処理装置は、該水処理装置へ供給される被処理水の流量を調整するための流量調整装置をさらに備える、請求項1から請求項10の何れか一項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給される被処理水の色度を低減させて排出する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、し尿などの有機物を含む排水の浄化方法として、生物学的処理や物理化学的処理に加えて、電気分解処理が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3等を参照)。し尿は含む排水の処理では、尿石が配管へ付着して配管を閉塞させたり、付着した尿石を温床として微生物が繁殖し、尿石の分解物が悪臭を発生させたりする問題を生じさせることがある。このような尿石の生成は、し尿中の尿素が微生物によってアンモニアに変換され、それによって排水のpHが上昇して、し尿中のカルシウムイオンがカルシウム塩として析出して起こると考えられている。排水の電気分解処理では、し尿中に含まれる塩素イオンや排水に添加した塩化物由来の塩素イオンから電気分解により次亜塩素酸を発生させる。これによって、排水中の微生物の殺菌を行い、アンモニアの生成を阻害して、尿石の発生を防止し、悪臭の発生も抑制することができる。また、電気分解によって生成された次亜塩素酸によって、フミン質等の発色団が分解され、排水の色度を低下させることができることが知られており、排水の色度の低減にも電気分解処理が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-294691号公報
【文献】特開2005-169320号公報
【文献】特開2007-252965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浄化処理された排水をいわゆる中水として再利用する場合、用途別に水質基準が定められており、残留塩素濃度などに加え、色度も水質基準の項目の一つとして定められていることが多い。このため、色度計などを用いて、処理された排水の色度を測定し、色度が所定の比率まで低減されるように、電気分解に用いる電極へ供給する電流量を制御していることが一般的である。
【0005】
しかしながら、色度の測定に用いられる色度計は、高価であり、水処理装置のコストを上昇させる要因となっていた。また、色度計には、定期的な清掃が必要となり、メンテナンスのための労力とコストを増加させていた。
【0006】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解消して、色度計を用いることなく安価に、所定の比率まで色度を確実に低減させることを可能とさせ、メンテナンスも容易とすることができる水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み、本発明は、供給される被処理水の色度を低減させて排出する水処理装置であって、被処理水を供給される混合槽と、被処理水の電気分解を行うための第1の電解部が設けられ、前記混合槽よりも小さい容積の電解槽と、前記混合槽と前記電解槽とを接続し、被処理水を前記混合槽から前記電解槽へ送り、さらに前記電解槽の被処理水を前記混合槽へ戻すように形成された循環流路と、前記混合槽内の被処理水の遊離残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度計及び前記混合槽内の被処理水の酸化還元電位を測定するORP計の少なくとも一方と、前記混合槽内の前記被処理水の色度が予め定められた比率以上まで低減されたか否かを判定する色度判定部と、前記色度判定部の判定結果に基づいて、前記水処理装置の電解能力を制御する電解制御部とを備え、前記色度判定部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方と遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた閾値とに基づいて、前記被処理水の色度が前記予め定められた比率以上まで低減されたか否かを判定するようにした水処理装置を提供する。
【0008】
上記水処理装置では、被処理水が混合槽に供給されると共に、循環流路を経て混合槽から送った被処理水を混合槽よりも容積の小さい電解槽で電気分解して脱色を行い、再び電解槽から混合槽へ被処理水を戻すようにしている。このように、電気分解を行う電解槽の被処理水は混合槽との間で循環しているので、電気分解の進行に伴って電解部で電気分解される原料イオン(すなわち塩化物イオンなど)が消費されても、新たに供給され、電解効率を向上させることができる。また、色度判定部が、混合槽内の被処理水の遊離残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度計及び混合槽内の被処理水の酸化還元電位を測定するORP計の少なくとも一方の測定値に基づいて、電解槽とは異なる混合槽内の被処理水が予め定められた比率以上に色度が低減されたか否かを判定し、色度判定部の判定結果に基づいて、電解制御部が電解槽に設置された電解部の作動を制御する。したがって、色度計を用いることなく、混合槽内の被処理水を予め定められた比率以上まで色度を低減させて下流に排出することが可能となる。
【0009】
上記水処理装置の一つの実施形態では、前記電解制御部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた第1の閾値以上になったときに前記電解槽内の被処理水の電気分解を停止させ、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた第2の閾値以下になったときに前記電解槽内の被処理水の電気分解を開始させるように、前記第1の電解部の動作を制御する。
【0010】
前記水処理装置は、前記残留塩素濃度計及び前記ORP計の両方を備えており、前記電解制御部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の両方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位に関して予め定められた第1の閾値以上になったときに前記電解槽内の被処理水の電気分解を停止させ、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位に関して予め定められた第2の閾値以下になったときに前記電解槽内の被処理水の電気分解を開始させるように、前記第1の電解部の作動を制御するようにしてもよい。
【0011】
上記水処理装置では、第1の電解部の作動に加えて又はこれに代えて、前記電解制御部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が予め定められた第1の閾値以上になったときに前記循環流路の前記被処理水の流量を減少させ、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が予め定められた第2の閾値以下になったときに前記循環流路の前記被処理水の流量を増加させるように、被処理水の循環流量を制御してもよい。
【0012】
また、上記水処理装置の一つの実施形態として、前記混合槽に第2の電解部がさらに設けられているようにしてもよい。
【0013】
この場合、第1の電解部の作動に加えて又はこれに代えて、前記電解制御部は、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた第1の閾値以上になったときに前記混合槽内の被処理水の電気分解を停止させ、前記残留塩素濃度計の測定値及び前記ORP計の測定値の少なくとも一方が遊離残留塩素濃度及び酸化還元電位の少なくとも一方に関して予め定められた第2の閾値以下になったときに前記混合槽内の被処理水の電気分解を開始させるように、前記第2の電解部の動作を制御してもよい。
【0014】
上記水処理装置では、例えば、前記混合槽内の被処理水の色度が前記混合槽に供給される前の被処理水の色度に対して40%以上低減された状態に相当する換算値が前記閾値として設定される。
【0015】
前記水処理装置は、前記混合槽に供給する前に前記被処理水に生物学的処理又は物理化学的処理を施す前処理装置をさらに備えることが好ましい。
【0016】
また、前記水処理装置では、前記被処理水は、厨房排水、雑排水及び塩化物イオンを含んだ水の何れかであることが好ましい。
【0017】
さらに、前記水処理装置の上流側から前記混合槽に被処理水を供給する供給管の出口と前記電解槽から前記混合槽に被処理水を循環させる循環流路の出口とは、前記混合槽の上部側に開口しており、前記混合槽から前記水処理装置の下流側に被処理水を排出する排出管の入り口と前記混合槽から前記電解槽に被処理水を循環させる循環流路の入口とは、前記供給管の出口及び前記循環流路の出口よりも低い位置の前記混合槽の下部側に開口していることが好ましい。また、前記水処理装置は、該水処理装置へ供給される被処理水の流量を調整するための流量調整装置をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水処理装置において、電気分解を行う電解槽の被処理水は混合槽との間で循環しているので、電気分解の進行に伴って電解部で電気分解される原料イオン(すなわち塩化物イオンなど)が消費されても、新たに供給されやすく、電解効率を向上させることができる。また、色度判定部が、混合槽内の被処理水の遊離残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度計及び混合槽内の被処理水の酸化還元電位を測定するORP計の少なくとも一方の測定値に基づいて、電解槽とは異なる混合槽内の被処理水が予め定められた色度以下になったか否かを判定し、色度判定部の判定結果に基づいて、電解制御部が電解槽に設置された電解部の作動を制御する。したがって、色度計を用いることなく、安価に、混合槽内の被処理水を予め定められた色度まで低下させて下流に排出することが可能となる。さらに、色度計を用いていないので、メンテナンスも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による水処理装置の第1の実施形態の全体構成を示すブロック図である。
図2】酸化還元電位と色度との相関を示すグラフである。
図3】混合槽内の被処理水の遊離残留塩素濃度と混合槽内の被処理水の色度低減率との相関を示すグラフである。
図4】混合槽内の被処理水のORPと混合槽内の被処理水の色度低減率との相関を示すグラフである。
図5図1に示されている水処理装置における第1の電解能力制御方法のフローチャートである。
図6図1に示されている水処理装置における第2の電解能力制御方法のフローチャートである。
図7図1に示されている水処理装置における第3の電解能力制御方法のフローチャートである。
図8】本発明による水処理装置の第2の実施形態の全体構成を示すブロック図である。
図9】本発明による水処理装置の第3の実施形態の全体構成を示すブロック図である。
図10】本発明による水処理装置を用いた排水処理方法を説明する概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明による水処理装置のいくつかの実施の形態を説明するが、本発明がこれら実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0021】
最初に、図1を参照して、本発明の第1の実施形態による水処理装置11の全体構成を説明する。
【0022】
水処理装置11は、混合槽13と、混合槽13よりも小さい容積の電解槽15と、電解槽15に設けられている第1の電解部17と、循環流路19と、残留塩素濃度計21と、ORP計23と、制御装置25と、混合槽13に接続される原水供給ライン27及び処理済み水排出ライン29とを備え、上流側から原水供給ライン27を経て被処理水としての原水を供給され、脱色処理を行って、色度が所定の比率以上まで低減された被処理水を処理済み水排出ライン29を経て下流側へ排出する。
【0023】
混合槽13には、原水供給ライン27を経て被処理水としての原水が供給される。原水としては、水道水、海水、工業用水、オゾン処理水、井戸水、これらを用いた結果として得られる厨房排水や雑排水などが用いられるが、特に水道水などを用いた塩化物イオンを含んだ排水であることが好ましい。塩化物イオンを含んだ排水であれば、電気分解のために必要となる塩化物イオンのために塩水や塩酸などを添加することなく脱色処理を行うことができるからである。しかしながら、塩化物イオンを含まない原水を処理することも可能である。この場合には、水処理装置11に供給する前に原水に塩水や塩酸などを添加すればよい。原水供給ライン27上には、水処理装置11の上流側から混合槽13への原水(すなわち被処理水)の供給流量を調整するための流量調整装置31が設けられていることが好ましい。さらに、原水供給ライン27上に、原水の色度を測定するための色度測定器33を設けてもよい。色度測定器33としてORP計を用いることが好ましいが、例えば色度計などの色度を測定又は推定可能な測定器を用いてもよい。また、原水供給ライン27は、混合槽13の上部に開口していることが好ましい。一方、処理済み水排出ライン29は、混合槽13にいて、原水供給ライン27の開口端部とは反対側に位置する側壁の上部に開口し、オーバーフローにより混合槽13から水処理装置11の下流側へ排出されるようになっていることが好ましい。
【0024】
厨房排水や雑排水などの排水を原水として用いる場合には、後述するように、水処理装置11に供給する前に、生物学的処理及び物理化学的処理の一方又は両方が原水に施される。生物学的処理としては、活性汚泥処理、生物膜ろ過処理、生物膜処理、嫌気性生物処理などを用いることができるが、膜分離活性汚泥法を用いることが好ましい。膜分離活性汚泥法では、厨房排水や雑排水などの排水は、活性汚泥処理を施されたのち、精密ろ過膜(MF膜)により膜ろ過され、分離処理を施される。また、物理化学処理としては、凝集沈殿処理、加圧浮上処理などを用いることができる。このように生物学的処理及び物理化学的処理の一方又は両方が施された原水が被処理水として水処理装置11の混合槽13に供給される。
【0025】
電解槽15は、混合槽13と別体で設けられており、混合槽13よりも小さい容積を有する。混合槽13と電解槽15とは、第1の循環流路19aと第2の循環流路19bとを含む循環流路19によって接続され、混合槽13と電解槽15との間で被処理水を循環させるようになっている。詳細には、混合槽13内の被処理水が第1の循環流路19aを経て電解槽15へ送られ、電解槽15内の被処理水が第2の循環流路19bを経て混合槽13へ戻されるようになっている。第1の循環流路19a上には、循環ポンプ35が設けられており、循環ポンプ35により混合槽13内の被処理水を電解槽15へ送る。また、第1の循環流路19a上には、第1の循環流路19a内を流通する被処理水の流量を測定するための循環流量計37が設けられている。本実施形態では、電解槽15は、混合槽13よりも高い位置に設置されており、第1の循環流路19aの一端部は、混合槽13において、混合槽13に接続される原水供給ライン27の開口端部とは反対側の底部側に接続され、他端部は、電解槽15の側壁、好ましくはその上部側、に接続されており、混合槽13内の底部の被処理水を循環ポンプ35により電解槽15に流入させるようになっている。また、第2の循環流路19bの一端部は電解槽15の側壁の上部に接続され、他端部は混合槽13の上部に接続されており、電解槽15内でオーバーフローした被処理水が混合槽13内へ流入するようになっている。このようにして、混合槽13内の被処理水が電解槽15を通過して混合槽13に流入する循環流路19が形成される。
【0026】
電解槽15には、電解槽15内の被処理水を電気分解するための第1の電解部17が設けられており、塩化物イオンを含んだ被処理水を電気分解することによって、被処理水の脱色処理が行われ、被処理水の色度を低下させる。被処理水の電気分解により脱色を行うことができるのは、電気分解により次亜塩素酸が生成されて被処理水に含まれるフミン質等の発色団が分解されるからと考えられている。第1の電解部17は、電解槽15内の被処理水に浸漬し且つアノード及びカソードによって構成される一対の電極(例えば白金コートチタン電極)によって構成されている。しかしながら、第1の電解部17は、被処理水の電気分解によって次亜塩素酸を生成できるものであれば、電極に限定されるものではない。このように脱色処理により色度が低減された被処理水が電解槽15からオーバーフローにより第2の循環流路19bを経て混合槽13内に還流される。
【0027】
水処理装置11では、混合槽13と別に電解槽15を設けて電解槽15で被処理水の電気分解を行うことにより、少ない循環流量でも電気分解を行う電解槽15の水理学的滞留時間を短くすることができ、次亜塩素酸の生成のための原料となる塩化物イオンの補充効率が上がる。この結果、電解効率を向上させることができ、省電力効果も得られる。
【0028】
混合槽13内には、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度を測定するための残留塩素濃度計21と、混合槽13内の被処理水の酸化還元電位(以下、ORPと記載する。)を測定するためのORP計23が設けられている。図示されている実施形態では、混合槽13の側壁の底部側に接続された第1の循環流路19a上において混合槽13と循環ポンプ35との間に採水ポンプ39を設けて、被処理水を残留塩素濃度計21に移送することによって、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度を測定している。しかしながら、採水ポンプ39の設置場所は実施形態に限定されるものではなく、混合槽13の別の場所に採水ポンプ39を設けた配管を接続して採水ポンプ39から残留塩素濃度計21に混合槽13内の被処理水を移送するようにしてもよい。なお、残留塩素濃度計21に移送された被処理水は、遊離残留塩素濃度を測定した後に混合槽13へ戻される。
【0029】
本実施形態では、第1の電解部17に加えて、混合槽13内にも、混合槽13内の被処理水を電気分解するための第2の電解部41が設けられており、塩化物イオンを含んだ被処理水を電気分解することによって、混合槽13内の被処理水の脱色処理を行い、被処理水の色度を低下させることができるようになっている。このように、第1の電解部17に加えて、第2の電解部41が設けられていれば、被処理水の電解能力を高めることができると共に、第1の電解部17をオンにした状態(電気分解を開始した状態)のままで第2の電解部41による電気分解の開始と停止とを切り換えることによって一定の電解能力を保ちつつ電解能力を変化させることが可能となる。
【0030】
残留塩素濃度計21及びORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度及びORPは、制御装置25へ送られ、制御装置25が、送られた遊離残留塩素濃度及びORPに基づいて、水処理装置11の電解能力、すなわち脱色能力(色度低減能力)を制御する。水処理装置11の電解処理能力の制御は、以下の三つの方法を採用することができる。第1の制御方法では、第1の電解部17の電極への電力供給の開始又は継続と停止との切り換え(すなわち第1の電解部17による電気分解の開始又は継続と停止との切り換え)を行って第1の電解部17の電解能力を変化させることによって、水処理装置11の電解能力を制御する。第2の制御方法では、第1の電解部17とは独立して、第1の電解部17の電極への電力供給の開始又は継続と停止との切り換えにより第2の電解部41の電気分解の開始又は継続と停止とを切り換え、第1の電解部17の電解能力に、第2の電解部41の電解能力を付加するか否かによって、水処理装置11全体の電解能力を制御する。第3の制御方法では、電解槽15内の被処理水の滞留時間、すなわち混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量、を変化させることによって、第1の電解部17の電解能力を変化させ、水処理装置11の電解能力を制御する。循環流量を増加させると、電気分解による次亜塩素酸の生成で消費される塩化物イオンの補充量が増加して、電解効率の低下を抑制することができ、この結果、第1の電解部17の電解能力を変化させて、水処理装置11の電解能力を調整することができる。循環流量は、循環流量計37によって測定された循環流量に基づいて例えばフィードバック制御を用いて循環ポンプ35の動作を制御することによって調整される。同様に、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を変化させることによって第1の電解部17の電解能力を調整することに加えて又は代えて、流量調整装置31によって混合槽13に供給する原水の流量と混合槽13から排出される処理済み水の流量を変化させることによって、第2の電解部41の電解能力を調整することも可能である。制御装置25は、上述した三つの制御方法を組み合わせて水処理装置11の電解能力を制御することも可能である。
【0031】
制御装置25は、色度判定部25aと、電解制御部25bとを含んでいる。色度判定部25aは、残留塩素濃度計21の測定値とORP計23の測定値の少なくとも一方と遊離残留塩素濃度とORPとに関してそれぞれ予め定められた閾値とに基づいて、混合槽13内の被処理水の色度が予め定められた比率以上まで低減されたか否かを判定する。電解制御部25bは、色度判定部25aの判定結果に基づいて、第1の電解部17及び第2の電解部41による水処理装置11の電解能力、すなわち脱色処理能力を調整する。水処理装置11の電解能力の制御方法としては、上述した三つの方法を採用することができる。もちろん、上述したように、上述した三つの制御方法を組み合わせて水処理装置11の電解能力を制御してもよい。
【0032】
このような水処理装置11では、高価な色度計に代えて、残留塩素濃度計21やORP計23を用いて混合槽13内の被処理水の色度を推定し、色度計を用いることなく、原水の色度から所定の色度低減率以上まで色度を低減させた被処理水を下流側に排出することができる。また、高価な色度計を用いていないので、色度計を用いる場合と比較して、水処理装置11のコストの増加を抑えると共に、色度計のメンテナンスも不要となるので水処理装置11のメンテナンスも容易となる。
【0033】
次に、図2から図4を参照して、遊離残留塩素濃度及びORPから色度の低減率を推定する方法について説明する。図2は酸化還元電位(ORP)と色度との相関を示すグラフである。また、図3は混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と原水の色度に対する混合槽13内の被処理水の色度の低減率との相関を示すグラフであり、図4は混合槽13内の被処理水のORPと原水の色度に対する混合槽13内の被処理水の色度の低減率との相関を示すグラフである。図2から図4のグラフは以下の条件下での実験により得られたものである。
【0034】
実験では、図1に示されている水処理装置11において、混合槽13の容積を1m、電解槽15の容積0.3mとした。第1の電解部17のカソード及びアノードの両方として使用した電極は、電極面積1600~6000cmの白金コートチタン電極を使用した。これら電極への供給電流は、電流値を21.7~43.2Aの範囲、電流密度を0.69~2.1A/dmの範囲で変化させた。また、実験に用いた原水は、色度が14~23度、原水供給流量を30~100L/分の範囲、循環流量を30~100L/分の範囲で変化させた。また、原水供給ライン27上に色度測定器33としてのORP計に並べて色度計を配置すると共に、ORP計23の位置に色度計を併設して、原水の色度及び混合槽13内の被処理水の色度を測定した。なお、実験は、第2の電解部41を使用しない形態で行った。このような異なる条件下で、経時的に変化する原水のORP及び色度、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度、ORP、色度を測定した。得られた測定結果について、図2では、混合槽13に供給される前の原水及び混合槽13内の被処理水について、色度測定器33としてのORP計及び混合槽13内のORP計23で測定したORPをX軸(横軸)、ORPの測定と同一時にそれぞれのORP計に併設された色度計で測定した色度をY軸(縦軸)として同一のグラフにプロットした。また、図3では、混合槽13の被処理水の遊離残留塩素濃度をX軸、混合槽13の被処理水の遊離残留塩素濃度の測定と同一時に測定した原水供給ライン27から流入する原水の色度と混合槽13の被処理水の色度との差を原水の色度で除した値を色度低減率としたものをY軸として同一のグラフにプロットし、図4では、ORP計23によって測定した混合槽13の被処理水のORPをX軸、混合槽13の被処理水のORPの測定と同一時に測定した原水供給ライン27から流入する原水の色度と混合槽13の被処理水の色度との差を原水の色度で除した値を色度低減率としたものをY軸として同一のグラフにプロットした。
【0035】
また、各パラメータの測定方法は以下の通りである。
(1)残留塩素濃度
残留塩素濃度測定は、残留塩素濃度計(ハンナジャパン製:HI96734B)を用いてDPD法により行った。
(2)ORP
ORP測定は、パーソナルpH/ORPメータ(横河電機製:PH72)を用いて白金電極法により行った。
(3)色度
色度測定は、デジタル濁色度計(共立理化学製:DTC-4DG)を用いて透過光測定法(光源波長390nm)により行った。
(4)電流
電流測定は、クランプメータ(共立電気計器製:R2300)を用いて行った。
(6)流量(原水供給流量及び循環流量)
原水供給流量は、クランプオン式流量計(キーエンス製:FD-Q50C)を用いて超音波方式により行った。また、循環流量は、クランプオン式流量計(キーエンス製:FD-R50)を用いて超音波方式により測定を行った。
【0036】
図2を参照すると、測定点は、相関係数をRとして、回帰式y=-0.0162x+19.585、決定係数R=0.8134で近似され、ORPと色度との間には強い相関があり、ORPを測定することによって色度を推定することができることが分かる。
【0037】
また、図3を参照すると、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と色度低減率とには相関があり、同様に、図4を参照すると、混合槽13内の被処理水のORPと色度低減率とには相関があることが分かる。したがって、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度やORPを用いることで、原水の色度に対する混合槽13内の被処理水の色度の低減率を推定することができる。さらに、ORPは、色度低減率がある程度大きくならないと、感度よく検出することができない一方、ある程度以上の色度低減率に対しては感度がよく、遊離塩素濃度は色度低減率が小さいときには感度がよい一方、色度低減率が大きくなると、感度が悪くなり、変化が小さくなることが分かる。したがって、遊離残留塩素濃度とORPの両方を用いることによって、それぞれの欠点を補い、色度低減率が小さい領域と色度低減率の大きい領域の何れでも色度低減率の変化を少ない誤差で感度よく検出することが可能となる。特に、色度低減率が小さいときに電解部の作動を開始させ、色度低減率が大きくなったときに電解部の作動を停止させるような制御を行う場合に、残留塩素濃度とORPの両方を用いて制御を行うことが好適である。
【0038】
図3を参照すると、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が1.6mg/L以上となっていれば、混合槽13内の被処理水の色度低減率が40%以上になっていることが分かる。したがって、例えば、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が1.6mg/L以上になるように第1の電解部17や第2の電解部41の電解能力を制御すれば、混合槽13内の被処理水について40%以上の色度低減率を実現することが可能となる。また、図4を参照すると、混合槽13内の被処理水のORPが700mV以上となっていれば、混合槽13内の被処理水の色度低減率が40%以上になっていることが分かる。したがって、例えば、混合槽13内の被処理水のORPが700mV以上になるように第1の電解部17や第2の電解部41の電解能力を制御すれば、混合槽13内の被処理水について40%以上の色度低減率を実現することが可能となる。さらに、混合槽13内の被処理水のORPと混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度との組み合わせにより、第1の電解部17や第2の電解部41の電解能力を制御すれば、混合槽13内の被処理水のORPと混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度のうちの一方のみによる制御と比較して、より確実に混合槽13内の被処理水の色度低減率を40%以上にすることができる。
【0039】
加えて、色度測定器33によって原水の色度を測定しておけば、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度やORPから推定される色度低減率から、混合槽13内の被処理水の色度を推定することができ、被処理水が所定の色度以下まで低下したことを確認することも可能となる。特に、ORPから色度を推定できることを利用して、色度測定器33としてORP計を用いて原水の色度を測定すれば、色度計を用いることなく、被処理水が所定の色度以下まで低下したことを確認ができるようになる。また、高価な色度計を用いないので、水処理装置11のコストの増加を抑え、水処理装置11のメンテナンスも容易になる。
【0040】
次に、図5から図7を参照して、図1に示されている第1の実施形態による水処理装置11の電解能力の基本となる三つの制御方法を詳細に説明する。
【0041】
図5は、第1の制御方法として、第1の電解部17の電極への電力供給の開始又継続と停止との切り換えを行って第1の電解部17の電解能力を変化させることによって、水処理装置11の電解能力を制御する方法を示している。制御装置25(詳細には色度判定部25a)には、事前の実験等により得られている図3及び図4のような遊離残留塩素濃度及びORPと色度低減率との相関に基づいて、所望する色度低減率を達成するために適した、遊離残留塩素濃度の下側閾値Tcl及びORPの下側閾値Tolが予め設定される。例えば、色度低減率40%以上を実現したい場合、図3及び図4から、Tclとして1.6mg/L、Tolとして700mVを設定すればよい。また、下側閾値Tcl及びTolから所定の幅を持たせて上側閾値Tcu及びTouが予め設定される。例えば、Tcuとして、1.7mg/L、Touとして750mVが設定される。
【0042】
水処理装置11による処理を開始すると、最初に、制御装置25(詳細には電解制御部25b)は、第1の電解部17への電力供給を開始すると共に、混合槽13への原水の供給を開始し、循環ポンプ35を作動させて、混合槽13内の被処理水を電解槽15へ、さらに電解槽15から混合槽13へと戻す循環を開始させる(ステップS101)。これにより、第1の電解部17よる電気分解で色度が低下した電解槽15内の被処理水が混合槽13へ送られ、混合槽13内の被処理水の色度が低下して、色度低減率が増加し始める。このとき、第2の電解部41は、同時に作動させてもよく、停止させた状態のままとしてもよい。混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環と電解槽15における第1の電解部17による電気分解が開始されると、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と上側閾値Tcu、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと上側閾値Touを比較し(ステップS102)、測定された遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になり且つ測定されたORPが上側閾値Tou以上になったと色度判定部25aが判定するまで、電解制御部25bは第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解を継続させる(ステップS103)。測定された遊離残留塩素濃度のみが上側閾値Tcu以上になった場合や測定されたORPのみが上側閾値Tou以上になった場合には、第1の電解部17による電気分解が継続される。一方、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と上側閾値Tcu、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと上側閾値Touを比較し(ステップS102)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になり且つORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが上側閾値Tou以上になって、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた値に到達していると色度判定部25aが判定すると、電解制御部25bは第1の電解部17への電力供給を停止し、第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解を停止させる(ステップS104)。
【0043】
水処理装置11が作動しているときは、第1の電解部17の作動状態にかかわらず混合槽13には原水が供給される。したがって、第1の電解部17による電気分解が停止されていると、時間が経過するに伴って、混合槽13内の被処理水の色度が上昇し、すなわち色度低減率が低下し、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度及びORPが低下する。この結果、混合槽13内の被処理水の色度低減率が所定の値を下回ってしまう可能性がある。
【0044】
そこで、第1の電解部17による電気分解が停止されている状態において、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と下側閾値Tcl、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと下側閾値Tolを比較し(ステップS105)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以上で且つORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tol以上になっていれば、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた下限値以上の色度低減率を保っていると色度判定部25aが判定し、電解制御部25bは、第1の電解部17への電力供給の停止を継続し、第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解の停止を継続させる(ステップS106)。ステップS107で水処理装置11の作動の停止命令がなされない限り、その後、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以下になる又はORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tol以下になるまで、ステップS105からステップS107が繰り返される。
【0045】
一方、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と下側閾値Tcl、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと下側閾値Tolを比較し(ステップS105)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以下になる又はORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tol以下になると、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた下限値以下の色度低減率になったと色度判定部25aが判定し、電解制御部25bは、第1の電解部17への電力供給を開始して、第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解を開始させる(ステップS108)。第1の電解部17よる電気分解が開始されると、電気分解で色度が低下した被処理水が混合槽13に送られるので、混合槽13内の被処理水の色度が再び低下し、色度低減率を増加させることができる。この結果、水処理装置11から排出される被処理水の色度低下率を所定の値以上に維持することが可能となる。ステップS109で水処理装置11の作動の停止命令がなされない限り、その後、ステップS102からステップS109が繰り返される。
【0046】
以上のような制御により、過剰な電気分解を行うことを回避して消費電力を抑制しつつ、水処理装置11から排出される被処理水について、所定の色素低減率を維持することが可能となる。
【0047】
ステップS107又はステップS109で水処理装置11の作動の停止命令を受け付けると、制御部25(詳細には、電解制御部25b)は、第1の電解部17への電力供給を停止して第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解を停止させると共に、混合槽13への原水の供給を停止させ、さらに循環ポンプ35の作動を停止させて、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環を停止させる(ステップS110)。
【0048】
図6は、第2の制御方法として、第1の電解部17とは独立して、第1の電解部17の電極への電力供給の開始又は継続と停止との切り換えにより第2の電解部41の電気分解の開始又は継続と停止とを切り換え、第1の電解部17の電解能力に、第2の電解部41の電解能力を付加するか否かによって、水処理装置11全体の電解能力を制御する方法を示している。第1の制御方法と同様に、制御装置25(詳細には色度判定部25a)には、事前の実験により得られている図3及び図4のような遊離残留塩素濃度及びORPと色度低減率との相関に基づいて、所望する色度低減率を達成するのに適した、遊離残留塩素濃度の下側閾値Tcl及びORPの下側閾値Tolが予め設定される。また、下側閾値Tcl及びTolから所定の幅を持たせて上側閾値Tcu及びTouが予め設定される。
【0049】
水処理装置11による処理を開始すると、最初に、制御装置25(詳細には電解制御部25b)は、第1の電解部17への電力供給を開始すると共に、混合槽13への原水の供給を開始し、循環ポンプ35を作動させて、混合槽13内の被処理水を電解槽15へ、さらに電解槽15から混合槽13へと戻す循環を開始させる(ステップS201)。これにより、第1の電解部17よる電気分解で色度が低下した電解槽15内の被処理水が混合槽13へ送られ、混合槽13内の被処理水の色度が低下して、色度低減率が増加し始める。混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環と電解槽15における第1の電解部17による電気分解が開始されると、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と上側閾値Tcu、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと上側Touを比較し(ステップS202)、測定された遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になり且つ測定されたORPが上側閾値Tou以上になったと色度判定部25aが判定するまで、電解制御部25bは第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解に加えて、第2の電解部41による混合槽13内の被処理水の電気分解を開始又は継続させる(ステップS203)。測定された遊離残留塩素濃度のみが上側閾値Tcu以上になった場合や測定されたORPのみが上側閾値Tou以上になった場合には、第2の電解部41による電気分解が継続される。一方、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と上側閾値Tcu、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと上側閾値Touを比較し(ステップS202)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になり且つORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが上側閾値Tou以上になって、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた値に到達していると色度判定部25aが判定すると、電解制御部25bは第2の電解部41への電力供給を停止し、第2の電解部41による混合槽13内の被処理水の電気分解を停止させる(ステップS204)。なお、このとき、第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解は継続されたままにする。
【0050】
水処理装置11が作動しているときは、第2の電解部41の作動状態にかかわらず混合槽13には原水が供給される。したがって、第2の電解部41による電気分解が停止されていると、第1の電解部17による電気分解が継続されていても、第2の電解部41による被処理水の電気分解の分だけ水処理装置11全体の電解能力が低下するので、時間が経過するに伴って、混合槽13内の被処理水の色度が上昇し、すなわち色度低減率が低下し、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度及びORPが低下する。この結果、混合槽13内の被処理水の色度低減率が所定の値を下回ってしまう可能性がある。
【0051】
そこで、第2の電解部41による電気分解が停止されている状態において、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と下側閾値Tcl、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと下側閾値Tolを比較し(ステップS205)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以上で且つORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tol以上になっていれば、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた下限値以上の色度低減率を保っていると色度判定部25aが判定し、電解制御部25bは、第2の電解部41への電力供給の停止を継続し、第2の電解部41による電解槽15内の被処理水の電気分解の停止を継続させる(ステップS206)。ステップS207で水処理装置11の作動の停止命令がなされない限り、その後、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以下になる又はORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tol以下になるまで、ステップS205からステップS207が繰り返される。
【0052】
一方、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と下側閾値Tcl、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと下側閾値Tolを比較し(ステップS205)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以下になる又はORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tou以下になると、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた下限値以下の色度低減率になったと色度判定部25aが判定し、電解制御部25bは、第2の電解部41への電力供給を開始して、第2の電解部41による混合槽13内の被処理水の電気分解を開始させる(ステップS208)。第2の電解部41による電気分解が開始されると、第1の電解部17による電気分解で色度が低減された処理水が電解槽15から混合槽13へ供給されることに加えて、第2の電解部41よる電気分解で混合槽13内の処理水の色度を低下させることができるので、混合槽13内の被処理水の色度が再び低下し、色度低減率を増加させることができる。この結果、水処理装置11から排出される被処理水の色度低下率を所定の値以上に維持することが可能となる。ステップS209で水処理装置11の作動の停止命令がなされない限り、その後、ステップS202からステップS209が繰り返される。
【0053】
以上のような制御により、第1の制御方法と同様に、過剰な電気分解を行うことを回避して消費電力を抑制しつつ、水処理装置11から排出される被処理水について、所定の色素低減率を維持することが可能となる。
【0054】
ステップS207又はステップS209で水処理装置11の作動の停止命令を受け付けると、制御部25(詳細には、電解制御部25b)は、第1の電解部17及び第2の電解部41への電力供給を停止して、第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解及び第2の電解部41による混合槽13内の被処理水の電気分解を停止させると共に、混合槽13への原水の供給を停止させ、さらに循環ポンプ35を停止させて、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環を停止させる(ステップS210)。
【0055】
図7は、第3の制御方法として、電解槽15内の被処理水の滞留時間、すなわち循環流量を変化させることによって、第1の電解部17の電解能力を変化させ、水処理装置11の電解能力を制御する方法を示している。循環流量を増加させると、電気分解による次亜塩素酸の生成で消費される塩化物イオンの補充量が増加して、電解効率の低下を抑制することができる。この結果、第1の電解部17の電解能力を変化させて、水処理装置11の電解能力を調整することができる。第1の制御方法や第2の制御方法と同様に、制御装置25(詳細には色度判定部25a)には、事前の実験により得られている図3及び図4のような遊離残留塩素濃度及びORPと色度低減率との相関に基づいて、所望する色度低減率を達成するのに適した、遊離残留塩素濃度の下側閾値Tcl及びORPの下側閾値Tolが予め設定される。また、下側閾値Tcl及びTolから所定の幅を持たせて上側閾値Tcu及びTouが予め設定される。
【0056】
水処理装置11による処理を開始すると、最初に、制御装置25(詳細には電解制御部25b)は、第1の電解部17への電力供給を開始すると共に、混合槽13への原水の供給を開始し、循環ポンプ35を作動させて、混合槽13内の被処理水を電解槽15へ、さらに電解槽15から混合槽13へと戻す循環を予め定められた初期流量で開始させる(ステップS301)。これにより、第1の電解部17よる電気分解で色度が低下した電解槽15内の被処理水が混合槽13に送られ、混合槽13内の被処理水の色度が低下して、色度低減率が増加し始める。このとき、第2の電解部41は同時に作動させてもよく、停止させたままとしてもよい。混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環と電解槽15における第1の電解部17による電気分解が開始されると、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と上側閾値Tcu、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと上側閾値Touを比較し(ステップS302)、測定された遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になり且つ測定されたORPが上側閾値Tou以上になったと色度判定部25aが判定するまで、電解制御部25bは、第1の電解部17への電力供給量を一定に保ったまま、循環流量計37の測定結果に基づいて循環ポンプ35の作動を制御して、混合槽13と電解槽15との間の循環流量を増加させる(ステップS303)。測定された遊離残留塩素濃度のみが上側閾値Tcu以上になった場合や測定されたORPのみが上側閾値Tou以上になった場合には、電解制御部25bは、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を増加させるように循環ポンプ35を制御する。このような被処理水の循環流量の増加により、塩化物イオンを含んだ被処理水が混合槽13から電解槽15へより多く送られて、第1の電解部17による電気分解で消費される塩化物イオンが補充されるので、第1の電解部17への電力供給量が一定に保たれたままでも、第1の電解部17による電気分解の効率を向上させ、色度低減率の増加速度を速めることができる。一方、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と上側閾値Tcu、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと上側閾値Touを比較し(ステップS302)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になり且つORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが上側閾値Tou以上になって、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた値に到達していると色度判定部25aが判定すると、電解制御部25bは、第1の電解部17への電力供給量を一定に保ったまま、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を減少させるように循環ポンプ35の動作を制御する。(ステップS304)。このような被処理水の循環流量の減少により、第1の電解部17による電気分解で消費される塩化物イオンの電解槽15への補充量が減少するので、第1の電解部17への電力供給量が一定に保たれたままでも、第1の電解部17による電気分解の効率を低下させ、色度低減が過剰となることを抑制することができ、循環ポンプ35における電力消費も抑制することが可能となる。
【0057】
水処理装置11が作動しているときは、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量にかかわらず混合槽13には原水が供給される。したがって、循環流量の減少により第1の電解部17の電解能力を低下させると、時間が経過するに伴って、混合槽13内の被処理水の色度が上昇し、すなわち色度低減率が低下し、混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度及びORPが低下する。この結果、混合槽13内の被処理水の色度低減率が所定の値を下回ってしまう可能性がある。
【0058】
そこで、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を減少させている状態において、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と下側閾値Tcl、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと下側閾値Tolを比較し(ステップS305)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以上で且つORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tol以上になっていれば、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた下限値以上の色度低減率を保っていると色度判定部25aが判定し、電解制御部25bは、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を減少させるように循環ポンプ35を制御し、第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解の効率を低下させて電解能力を減少させる(ステップS306)。ステップS307で水処理装置11の作動の停止命令がなされない限り、その後、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以下になる又はORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tol以下になるまで、ステップS305からステップS307が繰り返される。
【0059】
一方、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度と下側閾値Tcl、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPと下側閾値Tolを比較し(ステップS305)、残留塩素濃度計21によって測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以下になる又はORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPが下側閾値Tol以下になると、混合槽13内の被処理水の色度低減率が予め定められた下限値以下の色度低減率になったと色度判定部25aが判定し、電解制御部25bは、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を増加させるように循環ポンプ35を制御し、第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解の効率を上昇させて電解能力を向上させる(ステップS308)。混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を増加させて第1の電解部17の電解能力が向上されると、第1の電解部17による電気分解で色度の低減率が高められた処理水が電解槽15から混合槽13に供給されて、混合槽13内の処理水の色度を低下させることができるので、混合槽13内の被処理水の色度低減率を増加させることができる。この結果、水処理装置11から排出される被処理水の色度低下率を所定の値以上に維持することが可能となる。ステップS309で水処理装置11の作動の停止命令がなされない限り、その後、ステップS302からステップS309が繰り返される。
【0060】
以上のような制御により、第1の制御方法及び第2の制御方法の場合と同様に、過剰な電気分解を行うことを回避して消費電力を抑制しつつ、水処理装置11から排出される被処理水について、所定の色素低減率を維持することが可能となる。
【0061】
ステップS307又はステップS309で水処理装置11の作動の停止命令を受け付けると、制御部25(詳細には、電解制御部25b)は、第1の電解部17への電力供給を停止して第1の電解部17による電解槽15内の被処理水の電気分解を停止させると共に、混合槽13への原水の供給を停止させ、循環ポンプ35を停止させて、混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環を停止させる(ステップS310)
【0062】
上述した三つの制御方法は、別個の方法として記載されているが、これらの制御方法は選択的に行われる必要はなく、組み合わせて行ってもよい。例えば、第1の制御方法と第2の制御方法とを同時に行い、混合槽13内の被処理水の遊離塩素濃度及びORPに基づいて、循環流量を制御しつつ、第1の電解部17への電力供給の開始又は継続と停止とを切り換えるようにしてもよい。もちろん、三つの制御方法を同時に行い、混合槽13内の被処理水の遊離塩素濃度及びORPに基づいて、循環流量を制御しつつ、第1の電解部17及び第2の電解部41への電力供給の開始又は継続と停止とを切り換えるようにしてもよい。
【0063】
また、上述の三つの制御方法では、遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になり且つORPが上側閾値Tou以上になったときに混合槽13内の被処理水の色度が予め定められた低減率以上になったと色度判定部25aが判定しているが、遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になるか又はORPが上側閾値Tou以上になったときに、混合槽13内の被処理水の色度が予め定められた低減以上になったと色度判定部25aが判定するようにしてもよい。同様に、遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以下になり且つORPが下側閾値To以下になったときに混合槽13内の被処理水の色度が予め定められた低減率の下限値以下になったと色度判定部25aが判定するようにしてもよい。
【0064】
次に、本発明による水処理装置の他の実施形態を説明する。
【0065】
図8は、本発明の第2の実施形態による水処理装置11’の全体構成をブロック図により示している。第2の実施形態による水処理装置11’は、水処理装置11’には第2の電解部41が設けられていない点において、第1の実施形態による水処理装置11と異なっており、他の点においては共通している。水処理装置11’の各構成要素の構成及び動作は水処理装置11の対応する構成要素と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
第2の実施形態の水処理装置11’は、第2の電解部41を備えていないので、第1の実施形態の水処理装置11における電解能力の制御方法のうち、第2の制御方法(すなわち第2の電解部41による電気分解の開始又は継続と停止との切り換えによる電解能力制御方法)を使用することはできない。しかしながら、水処理装置11’は水処理装置11において第2の電解部41を停止させた状態と同様であり、水処理装置11’でも、第1の制御方法(すなわち第1の電解部17による電気分解の開始又は継続と停止との切り換えによる電解能力制御方法)と、第3の制御方法(すなわち混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量の増減による電解能力制御方法)とを行うことが可能である。また、水処理装置11の場合と同様に、水処理装置11’でも、第1の制御方法と第3の制御方法とを組み合わせて同時に行うことも可能である。
【0067】
さらに、循環流量の増減による電解能力の制御を行わないのであれば、水処理装置11‘において循環流量計37をさらに省略することも可能である。
【0068】
図9は、本発明の第3の実施形態による水処理装置11”の全体構成をブロック図により示している。第3の実施形態による水処理装置11”は、水処理装置11”にはORP計23が設けられていない点において、第1の実施形態による水処理装置11と異なっており、他の点においては共通している。水処理装置11”の各構成要素の構成及び動作は水処理装置11の対応する構成要素と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0069】
第3の実施形態による水処理装置11”も第1の実施形態による水処理装置11と同様に測定された混合槽13内の被処理水の色度に基づいて、電解能力の制御を行う。しかしながら、第3の実施形態による水処理装置11”はORP計23を備えていない。したがって、制御装置25の色度判定部25aが、残留塩素濃度計21により測定された遊離残留塩素濃度のみに基づいて混合槽13内の被処理水の色度低減率を判定する点において、水処理装置11”は水処理装置11と異なっているが、この点を除けば、前述した三つの制御方法を同様に行うことが可能である。また、水処理装置11の場合と同様に、水処理装置11”でも、第1の制御方法から第3の制御方法を組み合わせて同時に行うことも可能である。
【0070】
したがって、水処理装置11”の場合、図5から図7に示されている三つの制御方法において、色度判定部25aが、残留塩素濃度計21により測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度のみに基づいて、混合槽13内の被処理水の色度低減率を推定するようにすればよい。すなわち、残留塩素濃度計21により測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が上側閾値Tcu以上になったときに、第1の電解部17又は第2の電解部41への電力供給を停止若しくは混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を減少させ、残留塩素濃度計21により測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度が下側閾値Tcl以下になったときに、第1の電解部17又は第2の電解部41への電力供給を開始又は継続させる、もしくは混合槽13と電解槽15との間の被処理水の循環流量を増加させればよい。
【0071】
第3の実施形態では、残留塩素濃度計21のみが設けられているが、残留塩素濃度計21に代えて、ORP計23のみを設け、ORP計23によって測定された混合槽13内の被処理水のORPに基づいて、混合槽13内の被処理水の色度低減率を推定するようにすることも可能である。また、循環流量の増減による電解能力の制御を行わないのであれば、水処理装置11”において循環流量計37をさらに省略することも可能である。
【0072】
第3の実施形態の水処理装置11”から第2の電解部41をさらに省略することも可能である。この場合、第2の制御方法(すなわち第2の電解部41による電気分解の開始と停止との切り換えによる電解能力制御方法)を使用することはできなくなることは言うまでもない。
【0073】
次に、図10を参照して、本発明による水処理装置11を用いた排水処理方法を説明する。
【0074】
水処理装置11を用いて排水処理を行う場合には、水処理装置11の前段に、前処理装置53を設ける。前処理装置53には、排水が供給され、供給された排水に生物学的処理及び物理化学的処理の一方又は両方を施す。これにより、排水中の有機物などの分解又は除去や殺菌が行われ、さらに、前処理装置53で前処理を施された排水が原水として、水処理装置11に供給され、色度低減処理を施されて、排出される。生物学的処理としては、活性汚泥処理、生物膜ろ過処理、生物膜処理、嫌気性生物処理などを用いることができる。また、物理化学的処理としては、凝集沈殿処理、加圧浮上処理などを用いることができる。排出された被処理水は、予め定められた色度低減率となるまで色度が低減されている。また、水処理装置11には、残留塩素濃度計21が設けられているので、被処理水が所定の残留塩素濃度を含むようにすることも可能である。したがって、色度や残留塩素濃度の規定が定められているようなビルの中水として使用することが可能となる。
【0075】
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明の水処理装置を説明したが、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、図示されている水処理装置11の混合槽13に被処理水のpHを測定するためのpH計をさらに設けてもよい。被処理水をいわゆる中水として使用する場合、被処理水のpHも基準が定められていることがあり、被処理水中に含有される次亜塩素酸の比率がpHにも影響を与えることから、残留塩素濃度計21やORP計23の測定値に加えて、pH計の測定値に基づいて電解能力を制御することで、基準を満たすように対応することが可能となる。また、第1の実施形態の水処理装置11や第2の実施形態の水処理装置11’において、残留塩素濃度計21により測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度とORP計23により測定された混合槽13内の被処理水のORPとに基づいて、電解能力の制御を行うと説明したが、残留塩素濃度計21により測定された混合槽13内の被処理水の遊離残留塩素濃度とORP計23により測定された混合槽13内の被処理水のORPのうちの一方のみに基づいて、電解能力の制御を行うようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0076】
11 水処理装置
11’ 水処理装置
11” 水処理装置
13 混合槽
15 電解槽
17 第1の電解部
19 循環流路
21 残留塩素濃度計
23 ORP計
25 制御装置
25a 色度判定部
25b 電解制御部
35 循環ポンプ
37 循環流量計
41 第2の電解部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10