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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ガス調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20240925BHJP
   F24C 3/02 20210101ALI20240925BHJP
   F23N 5/20 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
F24C3/12 E
F24C3/02 Q
F23N5/20 102Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020211984
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098551
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】小崎 拓也
(72)【発明者】
【氏名】石川 善克
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0019716(US,A1)
【文献】特開平10-089677(JP,A)
【文献】特開2017-015266(JP,A)
【文献】特開平08-128632(JP,A)
【文献】特開2019-039581(JP,A)
【文献】特開2004-108694(JP,A)
【文献】特開2009-222267(JP,A)
【文献】米国特許第06877981(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F24C 3/02
F23N 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスが供給されるガスバーナと、該ガスバーナに点火する点火プラグと、該点火プラグが電気的に接続されたイグナイタと、前記ガスバーナに点火するために点火操作される操作部と、前記ガスバーナの火炎を検知する火炎検知センサと、前記操作部の点火操作及び前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を制御すると共に、前記イグナイタを制御する制御手段とを備えるガス調理器であって、
前記制御手段は、前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナの着火の有無を判定する判定部を備え、
前記制御手段は、前記操作部の点火操作に応答して、前記ガスバーナへ燃料ガスの供給を開始すると共に、前記イグナイタの駆動を開始して、前記点火プラグに火花放電を生じさせ、前記点火操作から所定時間が経過する迄に、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されると、前記イグナイタの駆動を停止し、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されることなく、前記所定時間が経過すると、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を停止すると共に、前記イグナイタの駆動を停止するものであり、
前記制御手段は、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変するもので、且つ、点火火力の異なる複数の前記ガスバーナを備え、前記制御手段は、前記ガスバーナの点火火力に応じて、前記所定時間を可変するものであって、前記ガスバーナの点火火力が小さい程、前記所定時間を長くすることを特徴とするガス調理器。
【請求項2】
燃料ガスが供給されるガスバーナと、該ガスバーナに点火する点火プラグと、該点火プラグが電気的に接続されたイグナイタと、前記ガスバーナに点火するために点火操作される操作部と、前記ガスバーナの火炎を検知する火炎検知センサと、前記操作部の点火操作及び前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を制御すると共に、前記イグナイタを制御する制御手段とを備えるガス調理器であって、
前記制御手段は、前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナの着火の有無を判定する判定部を備え、
前記制御手段は、前記操作部の点火操作に応答して、前記ガスバーナへ燃料ガスの供給を開始すると共に、前記イグナイタの駆動を開始して、前記点火プラグに火花放電を生じさせ、前記点火操作から所定時間が経過する迄に、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されると、前記イグナイタの駆動を停止し、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されることなく、前記所定時間が経過すると、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を停止すると共に、前記イグナイタの駆動を停止するものであり、
前記制御手段は、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変するもので、且つ、前記制御手段は、前記ガスバーナの燃焼停止時間を計時する計時部を備え、前記制御手段は、前記燃焼停止時間に応じて、前記所定時間を可変するものであって、前記燃焼停止時間が長い程、前記所定時間を長くすることを特徴とするガス調理器。
【請求項3】
燃料ガスが供給されるガスバーナと、該ガスバーナに点火する点火プラグと、該点火プラグが電気的に接続されたイグナイタと、前記ガスバーナに点火するために点火操作される操作部と、前記ガスバーナの火炎を検知する火炎検知センサと、前記操作部の点火操作及び前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を制御すると共に、前記イグナイタを制御する制御手段とを備えるガス調理器であって、
前記制御手段は、前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナの着火の有無を判定する判定部を備え、
前記制御手段は、前記操作部の点火操作に応答して、前記ガスバーナへ燃料ガスの供給を開始すると共に、前記イグナイタの駆動を開始して、前記点火プラグに火花放電を生じさせ、前記点火操作から所定時間が経過する迄に、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されると、前記イグナイタの駆動を停止し、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されることなく、前記所定時間が経過すると、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を停止すると共に、前記イグナイタの駆動を停止するものであり、
前記制御手段は、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変するもので、且つ、前記所定時間を設定するために操作される設定操作部を備え、前記制御手段は、前記設定操作部の設定操作に応じて、前記所定時間を可変することを特徴とするガス調理器。
【請求項4】
燃料ガスが供給されるガスバーナと、該ガスバーナに点火する点火プラグと、該点火プラグが電気的に接続されたイグナイタと、前記ガスバーナに点火するために点火操作される操作部と、前記ガスバーナの火炎を検知する火炎検知センサと、前記操作部の点火操作及び前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を制御すると共に、前記イグナイタを制御する制御手段とを備えるガス調理器であって、
前記制御手段は、前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナの着火の有無を判定する判定部を備え、
前記制御手段は、前記操作部の点火操作に応答して、前記ガスバーナへ燃料ガスの供給を開始すると共に、前記イグナイタの駆動を開始して、前記点火プラグに火花放電を生じさせ、前記点火操作から所定時間が経過する迄に、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されると、前記イグナイタの駆動を停止し、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されることなく、前記所定時間が経過すると、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を停止すると共に、前記イグナイタの駆動を停止するものであり、
前記制御手段は、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変するもので、且つ、当該ガス調理器が新しい設置場所に設置されたことを検出する設置状態検出部を備え、前記制御手段は、前記設置状態検出部の検出出力に基づいて、前記所定時間を可変するものであって、当該ガス調理器が新しい設置場所に設置された点火操作によって、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと最初に判定される迄は、前記所定時間を、それ以降の所定時間に比べて長くすることを特徴とするガス調理器。
【請求項5】
前記制御手段の電源が、バッテリー装填部に装填される交換可能なバッテリー、または商用電源(100V電源)であり、前記設置状態検出部は、前記バッテリーが、前記バッテリー装填部に最初に装填されたときに、または前記商用電源(100V電源)に最初につなげられたときに、新しい設置場所に設置されたとして検出することを特徴とする、前記請求項4に記載のガス調理器。
【請求項6】
燃料ガスが供給されるガスバーナと、該ガスバーナに点火する点火プラグと、該点火プラグが電気的に接続されたイグナイタと、前記ガスバーナに点火するために点火操作される操作部と、前記ガスバーナの火炎を検知する火炎検知センサと、前記操作部の点火操作及び前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を制御すると共に、前記イグナイタを制御する制御手段とを備えるガス調理器であって、
前記制御手段は、前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナの着火の有無を判定する判定部を備え、
前記制御手段は、前記操作部の点火操作に応答して、前記ガスバーナへ燃料ガスの供給を開始すると共に、前記イグナイタの駆動を開始して、前記点火プラグに火花放電を生じさせ、前記点火操作から所定時間が経過する迄に、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されると、前記イグナイタの駆動を停止し、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されることなく、前記所定時間が経過すると、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を停止すると共に、前記イグナイタの駆動を停止するものであり、
前記制御手段は、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変するもので、且つ、前記ガスバーナが、当該ガス調理器の天板上に複数配設されており、前記制御手段は、前記ガスバーナの前記天板上の位置に応じて、前記所定時間を可変するものであって、前記ガスバーナの位置が使用者から遠い程、前記所定時間を長くすることを特徴とするガス調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロやガスグリルなどのガス調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス調理器には、使用者の点火操作に応答して、ガスバーナへ燃料ガスを供給して点火スパークを発生させる点火動作を開始し、点火操作から所定時間が経過する迄に、ガスバーナに着火したと判定されると、スパークの発生を停止して点火動作を終了し、以後、燃焼を継続させるようにしたものがある。
【0003】
かかるガス調理器では、点火操作から前記所定時間が経過する迄に、着火したと判定されない場合には、点火エラーであるとして、ガスバーナへの燃料ガスの供給を停止すると共に、点火スパークの発生を停止させる。
【0004】
使用者による点火操作からガスバーナに着火したと判定されるまでに要する時間は、例えば、ガス調理器が設置されている場所による燃料ガスの供給圧力の相違などによって長くなることがある。
【0005】
このように使用者の点火操作からガスバーナの着火判定までに要する時間が長くなると、前記所定時間が一定時間に固定されている従来例では、前記所定時間内にガスバーナの着火判定ができず、点火エラーとなる回数が多くなる。点火エラーが頻繁に生じると、使用者は、メンテナンスコールを行うことになる。メンテナンスコールの回数が増えることは、使用者及びメーカーの双方にとって好ましくない。
【0006】
このため、特許文献1には、使用者が点火操作を継続している間は、所定時間の経過に関わらず、点火動作を継続するようにし、使用者の点火操作からガスバーナの着火判定までに要する時間が長くなっても、ガスバーナの点火を可能としたガス燃焼器具の制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-50536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1では、使用者が点火操作を継続している間は、ガスバーナへ燃料ガスを供給して点火スパークを発生させる点火動作を継続するので、点火操作の継続時間が長くなり過ぎると、供給された燃料ガスの量が多くなり過ぎてしまい、爆発的な着火(爆着)が生じる虞が高くなる。
【0009】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、爆発的な着火を回避しつつ、点火エラーの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0011】
(1)本発明に係るガス調理器は、燃料ガスが供給されるガスバーナと、該ガスバーナに点火する点火プラグと、該点火プラグが電気的に接続されたイグナイタと、前記ガスバーナに点火するために点火操作される操作部と、前記ガスバーナの火炎を検知する火炎検知センサと、前記操作部の点火操作及び前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を制御すると共に、前記イグナイタを制御する制御手段とを備えるガス調理器であって、
前記制御手段は、前記火炎検知センサの検知出力に基づいて、前記ガスバーナの着火の有無を判定する判定部を備え、前記制御手段は、前記操作部の点火操作に応答して、前記ガスバーナへ燃料ガスの供給を開始すると共に、前記イグナイタの駆動を開始して、前記点火プラグに火花放電を生じさせ、前記点火操作から所定時間が経過する迄に、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されると、前記イグナイタの駆動を停止し、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと判定されることなく、前記所定時間が経過すると、前記ガスバーナへの燃料ガスの供給を停止すると共に、前記イグナイタの駆動を停止するものであり、前記制御手段は、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変する。
【0012】
本発明によると、制御手段は、使用者の点火操作に応答して、ガスバーナへ燃料ガスの供給を開始すると共に、イグナイタの駆動を開始して、点火プラグに火花放電を生じさせ、点火操作から所定時間が経過する迄に、ガスバーナに着火したと判定されると、イグナイタの駆動を停止して燃焼を継続させることができる。また、ガスバーナに着火したと判定されることなく、前記所定時間が経過すると、爆発的な着火が生じないように、ガスバーナへの燃料ガスの供給を停止すると共に、イグナイタの駆動を停止して、点火エラーとして点火動作を停止させることができる。
【0013】
更に、制御手段は、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変する。
【0014】
このように制御手段は、所定時間を可変するので、使用者の点火操作からガスバーナの着火判定までに要する時間に応じた所定時間にすることができ、例えば、当該ガス調理器が設置されている場所による燃料ガスの供給圧力の相違などによって、使用者の点火操作からガスバーナの着火判定までに要する時間が長くなるようなときには、所定時間を長くすることによって、点火エラーの発生を抑制することができる。
【0015】
しかも、所定時間は、予め定められた上限時間内で可変されるので、この上限時間を、ガスバーナの爆発的な着火が生じない長い時間としておくことによって、爆発的な着火を回避することができ、安全である。
【0016】
このように本発明に係るガス調理器は、爆発的な着火を回避して安全であって、点火エラーの発生を抑制した使い勝手のよいものとなる。
【0017】
更に、本発明に係るガス調理器は、点火火力の異なる複数の前記ガスバーナを備え、前記制御手段は、前記ガスバーナの点火火力に応じて、前記所定時間を可変するものであって、前記ガスバーナの点火火力が小さい程、前記所定時間を長くする。
【0018】
ガスバーナは、点火火力が小さい程、所定時間が長くなっても、爆発的な着火が生じにくい。すなわち、ガスバーナは、点火火力によって、点火操作から爆発的な着火が生じる迄の時間が相違する。これに対して、所定時間が一定時間に固定されている従来例では、所定時間が、点火火力に応じた適切な時間となっていない。このため、例えば、点火火力の大きなガスバーナで爆発的な着火が生じないような短い所定時間に固定されていると、点火火力の小さなガスバーナでは、その短い所定時間が経過する迄に、ガスバーナの着火判定が出来ず、点火エラーとなる虞がある。
【0019】
この実施態様によると、ガスバーナの点火火力に応じて、所定時間を上限時間内で可変すると共に、ガスバーナの点火火力が小さい程、所定時間を長くするので、ガスバーナの点火火力に応じて適切な所定時間となり、爆発的な着火を回避して安全を保ちながら、点火エラーが生じるのを抑制することができ、使い勝手が向上する。
【0020】
(2)本発明の一実施態様では、前記制御手段は、前記ガスバーナの燃焼停止時間を計時する計時部を備え、前記制御手段は、前記燃焼停止時間に応じて、前記所定時間を可変するものであって、前記燃焼停止時間が長い程、前記所定時間を長くする。
【0021】
ガスバーナの燃焼停止時間が長いと、ガス管路内の燃料ガスが空気によって希釈、あるいは、置換されるので、使用者の点火操作からガスバーナの着火判定までに要する時間が長くなる。このため、所定時間が一定時間に固定されている従来例では、ガスバーナの燃焼停止時間が長いと、所定時間が経過する迄に、ガスバーナの着火判定が出来ず、点火エラーとなる虞が高くなる。
【0022】
この実施態様によると、ガスバーナの燃焼停止時間に応じて、所定時間を上限時間内で可変すると共に、燃焼停止時間が長い程、所定時間を長くするので、爆発的な着火を回避して安全を保ちながら、点火エラーが生じるのを抑制することができ、使い勝手が向上する。
【0028】
(3)本発明の他の実施態様では、前記ガスバーナの温度を検出する温度検出部を備え、前記制御手段は、前記温度検出部の検出温度に応じて、前記所定時間を可変するものであって、前記検出温度が低い程、前記所定時間を長くする。
【0029】
この実施態様によると、使用者による設定操作に応じて、所定時間を上限時間内で可変できるので、当該ガス調理器の設置場所に特有の理由、例えば、供給される燃料ガス成分に偏りがあって点火しにくい、燃料ガスの供給圧力が低い地域や建物に当該ガス調理器が設置されている、などの理由がある場合に、その設置場所に応じて、使用者等が適切な所定時間を設定することができるので、爆発的な着火を回避して安全を保ちながら、点火エラーが生じるのを抑制することができ、利便性が向上する。
【0030】
(4)本発明の好ましい実施態様では、当該ガス調理器が新しい設置場所に設置されたことを検出する設置状態検出部を備え、前記制御手段は、前記設置状態検出部の検出出力に基づいて、前記所定時間を可変するものであって、当該ガス調理器が新しい設置所に設置された点火操作によって、前記判定部で前記ガスバーナに着火したと最初に判定される迄は、前記所定時間を、それ以降の所定時間に比べて長くする。
【0031】
この実施態様によると、当該ガス調理器が新しい設置場所に設置されたことを設置状態検出部が検出すると、点火操作によって、判定部でガスバーナに着火したと最初に判定される迄は、所定時間を長くする。例えば、新築マンションに、当該ガス調理器が設置された場合などに、マンションのガス配管が長く、当該ガス調理器に燃料ガスが届くまでに何度も点火操作及び点火エラーを繰り返すようなときに、所定時間を長くすることによって、点火操作及び点火エラーの回数を少なくすることができる。これによって、当該ガス調理器を新しい設置場所に設置する際の作業者の作業負担を軽減することができる。
【0032】
(5)本発明の他の実施態様では、前記制御手段の電源が、バッテリー装填部に装填される交換可能なバッテリー、または商用電源(100V電源)であり、前記設置状態検出部は、前記バッテリーが、前記バッテリー装填部に最初に装填されたときに、または前記商用電源(100V電源)に最初につなげられたときに、新しい設置場所に設置されたとして検出する。
【0033】
この実施態様によると、当該ガス調理器は、出荷後に初めてバッテリーがバッテリー装填部に装填されたときに、または前記商用電源(100V電源)に最初につなげられたときに、新しい設置場所に設置されたと検出するので、新しい設置場所に設置されたことを確実に検出することが可能になる。
【0034】
(6)本発明の更に他の実施態様では、前記ガスバーナが、当該ガス調理器の天板上に複数配設されており、前記制御手段は、前記ガスバーナの前記天板上の位置に応じて、前記所定時間を可変するものであって、前記ガスバーナの位置が使用者から遠い程、前記所定時間を長くする。
【0035】
この実施態様によると、複数のガスバーナの内で、天板上の配設位置が、使用者から遠いもの程、近いものより所定時間を長くするので、長くした所定時間内で、仮に爆発的な着火が生じても、使用者から遠い位置のガスバーナであるので、使用者に与える影響が少なく、安全を確保することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、所定時間を、予め定められた上限時間内で可変するので、使用者の点火操作からガスバーナの着火判定までに要する時間に応じた所定時間にすることができ、例えば、当該ガス調理器が設置されている場所による燃料ガスの供給圧力の相違などによって、使用者の点火操作からガスバーナの着火判定までに要する時間が長くなるようなときには、所定時間を長くすることによって、点火エラーの発生を抑制することができる。
【0037】
しかも、所定時間は、予め定められた上限時間内で可変されるので、この上限時間を、ガスバーナの爆発的な着火が生じない長い時間としておくことによって、爆発的な着火を回避することができ、安全である。
【0038】
このように爆発的な着火を回避して安全であって、かつ、点火エラーの発生を抑制した使い勝手のよいガス調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は本発明の一実施形態に係るグリル付きガスコンロの斜視図である。
図2図2図1のグリル付きガスコンロの概略構成図である。
図3図3は所定時間が一定時間に固定されている従来例のタイムチャートである。
図4図4は所定時間が可変である本実施形態のタイムチャートである。
図5図5は本発明の一実施形態の所定時間の可変処理を示すフローチャートである。
図6図6は本発明の他の実施形態の所定時間の可変処理を示すフローチャートである。
図7図7はグリル用調理設定入力部及びガスコンロ用調理設定入力部の各一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0041】
この実施形態では、ガス調理器としてグリル付きガスコンロに適用して説明する。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態に係るグリル付きガスコンロAの斜視図である。このグリル付きガスコンロAは、コンロ本体1の上部に、ガスバーナとして最大火力の異なる3つのコンロバーナ2a~2cを備えている。更に、グリル付きガスコンロAは、コンロ本体1の左右中央には、ガスバーナとしてグリルバーナ(図示せず)を内装すると共に、グリル扉3aを前方に備えるグリル皿(図示せず)を前面から出し入れ可能に装着したグリル部3を備えている。
【0043】
この実施形態のグリル付きガスコンロAは、図示しないキッチンキャビネットに落とし込み装着されるビルトインタイプである。
【0044】
コンロ本体1の上部は、天板4で覆われると共に、コンロ奥端の上面にグリル部3の燃焼排ガスを排出するためのグリル排気口5が設けられている。
【0045】
この実施形態では、天板4の手前側の左右に配設したコンロバーナ2a,2bの一方(左側)が、標準火力のコンロバーナ2aとなっており、他方(右側)が、高火力のコンロバーナ2bとなっている。また、奥側の中央部に配設したコンロバーナ2cが、小火力のコンロバーナ2cとなっている。各コンロバーナ2a~2cには、被加熱物としての調理容器、例えば鍋の底部の温度を検出するサーミスタ等からなる温度センサ7a~7cがそれぞれ装備されていると共に、対応する五徳6a~6cがそれぞれ載置されている。
【0046】
コンロ本体1の前面の左右上部には、各コンロバーナ2a~2cの点火、消火、火力調節の操作をそれぞれ行うための3つの操作部としての加熱状態調節部8a~8cが設けられている。この実施形態では、前面の左側に、標準火力のコンロバーナ2aの加熱状態調節部8aを配設し、前面の右側に、高火力のコンロバーナ2bの加熱状態調節部8b及び小火力のコンロバーナ2cの加熱状態調節部8cを配設している。
【0047】
また、前面の右側上部には、各部への通電の入切を行う自動復帰型で押し釦式の電源スイッチ9が設けられている。
【0048】
上記各加熱状態調節部8a~8cは、前後方向に移動自在な押釦により構成され、コンロバーナ2a~2cの使用に当たっては、押釦よりなる加熱状態調節部8a~8cを押圧して点火操作をすることで、後退していた加熱状態調節部8a~8cが前方に突出して器具栓がONとなり、流出するガス燃料に火花放電がなされてコンロバーナ2a~2cに点火される。
【0049】
この押釦よりなる加熱状態調節部8a~8cが前方に突出した状態で加熱状態調節部8a~8cを指で摘んで回動操作すると、コンロバーナ2a~2cの火力が、調節できるようになっている。一方、消火にあたっては、前方に突出している加熱状態調節部8a~8cを後方に押圧操作することで突出していた加熱状態調節部8a~8cが後方に後退して器具栓がOFFとなってコンロバーナ2a~2cが消火される。
【0050】
コンロ本体1の前面の左右の下部には、操作パネル10,11が収納自在に設けられている。右側の操作パネル11には、グリル部3に関する操作を行うためのグリル用調理設定入力部12が設けられ、この操作パネル11がグリル側操作パネルとなっている。また、左側の操作パネル10には、コンロバーナ2a~2cに対する調理設定の入力を行うためのガスコンロ用調理設定入力部13が設けられ、この操作パネル10がコンロ側操作パネルとなっている。
【0051】
このグリル用調理設定入力部12及びガスコンロ用調理設定入力部13では、グリル部及びコンロバーナ2a~2cによる自動調理の設定を行うことができる。この自動調理としては、コンロバーナ2a~2cの火力を切替えて一定の温度範囲に温度制御する自動調理などがある。
【0052】
図2は、図1のグリル付きガスコンロAの概略構成図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0053】
各コンロバーナ2a~2cには、各コンロバーナ2a~2cにそれぞれ点火するための点火プラグ14a~14cと、各点火プラグ14a~14cが、電気的にそれぞれ接続されたイグナイタ22a~22cと、コンロバーナ2a~2cの火炎をそれぞれ検知する火炎検知センサとしての熱電対15a~15cとが設けられている。また、各コンロバーナ2a~2cには、上記のように調理容器19、例えば鍋の底部の温度を検出する温度センサ7a~7cが設けられている。
【0054】
グリル部3にも同様に、上部及び下部のグリルバーナ16a,16bにそれぞれ点火するための点火プラグ17a,17bと、各点火プラグ17a,17bが、電気的にそれぞれ接続されたイグナイタ22d,22eと、各グリルバーナ16a,16bの火炎をそれぞれ検知する火炎検知センサとしての熱電対18a,18bとが設けられる。また、グリル皿20の底部の温度を検出するサーミスタ等からなる温度センサ21が設けられている。
【0055】
各バーナ2a~2c,16a,16bに個別的に対応する各イグナイタ22a~22eに通電(駆動)することによって、各バーナ2a~2c,16a,16bに個別的に対応する点火プラグ14a~14c,17a,17bで火花放電が発生する。
【0056】
各コンロバーナ2a~2c及びグリルバーナ16a,16bには、都市ガス等の燃料ガスを供給する燃料供給路23からそれぞれ分岐した分岐供給路24~27が接続されている。
【0057】
燃料供給路23には、元電磁弁28が設けられる。各分岐供給路24~27には、燃料ガスの供給量の調節を行うためステッピングモータにより駆動されて弁体の開度の微調整が可能なモーター弁からなる流量制御弁29~32と、前記弁体の開度を検出する回転角度センサ33~36が設けられている。
【0058】
各流量制御弁29~32は、各バーナ2a~2c,16a,16bが立ち消えしたときに、燃料ガスの供給路を遮断する安全弁としての機能を有している。
【0059】
グリルバーナ16a,16b用の分岐供給路27には、燃料ガスの供給圧力を設定圧に調整するガバナ37が設けられている。
【0060】
マイクロコンピュータからなる制御部40には、各バーナ2a~2c,16a,16bの火炎をそれぞれ検知する火炎検知センサとしての熱電対15a~15c,18a,18b及び各温度センサ7a~7c,21の検出出力が与えられると共に、流量制御弁29~32の各回転角度センサ33~36の出力が与えられる。
【0061】
また、制御部40には、上記の加熱状態調節部8a~8c、グリル用調理設定入力部12、及び、ガスコンロ用調理設定入力部13等からなる手動操作部42からの操作入力が与えられる。この操作入力には、使用者による点消火の操作に応じたバーナ2a~2c,16a,16bに対する点消火の指令が含まれる。
【0062】
制御部40は、手動操作部42からの操作入力、熱電対15a~15c,18a,18b、各温度センサ7a~7c,21、及び、各回転角度センサ33~36の出力に基づいて、各バーナ2a~2c,16a,16bの点消火、燃料ガスの供給、及び、燃焼を制御する制御手段としての機能を有している。
【0063】
また、制御部40は、前記火炎検知センサとしての熱電対15a~15c,18a,18bの起電力に基づいて、各バーナ2a~2c,16a,16bの着火の有無を判定する判定部としての機能を備えている。この判定では、熱電対15a~15c,18a,18bが火炎を検知して、その起電力が、閾値電圧Vs以上になると、着火したと判定する。
【0064】
更に、制御部40は、各バーナ2a~2c,16a,16bの燃焼を停止してから次に点火操作がされる迄の燃焼停止時間を計時する計時部としての機能を備えている。
【0065】
また、制御部40は、当該グリル付きガスコンロAが、新しい設置場所に設置されたことを検出する設置状態検出部としての機能を備えている。この実施形態の設置状態検出部は、交換可能なバッテリーである電池が、出荷後、最初に電池装填部としての電池ボックスにセット(装填)されたときに、当該グリル付きガスコンロAが、新しい設置場所に設置されたとして検出する。
【0066】
制御部40は、使用者の点火操作によって点火が指令されると、指令されたバーナ2a~2c,16a,16bに対する燃料ガスの供給を開始し、対応する熱電対15a~15c,18a,18bの出力(起電力)に基づいて、着火したと判定される迄、所定時間に亘って点火動作を行うように、イグナイタ22a~22e、元電磁弁28、及び、対応する流量制御弁29~32を制御する。また、制御部40は、使用者の消火操作によって消火が指令されると、指令されたバーナ2a~2c,16a,16bに対する燃料ガスの供給を停止するように構成されている。
【0067】
この実施形態では、バーナ2a~2c,16a,16bの爆発的な着火を回避しつつ、点火エラーの発生を抑制するために、次のようにしている。
【0068】
すなわち、制御部40は、使用者による点火操作に応答して、バーナ2a~2c,16a,16bへの燃料ガスの供給を開始すると共に、点火操作に対応するイグナイタ22a~22eの駆動を開始して、点火プラグ14a~14c,17a,17bに火花放電を生じさせ、点火操作から所定時間が経過する迄に、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cに着火したと判定されると、点火操作に対応するイグナイタ22a~22eの駆動を停止して点火動作を停止し、燃焼状態を継続する。
【0069】
また、点火操作に対応するバーナ2a~2c,16a,16bに着火したと判定されることなく、前記所定時間が経過すると、爆発的な着火が生じないように、点火操作に対応するバーナ2a~2c,16a,16bへの燃料ガスの供給を停止すると共に、点火操作に対応するイグナイタ22a~22eの駆動を停止して点火動作を停止する。同時に、点火エラーとして、加熱状態調節部8a~8cの周囲の燃焼ランプを点滅させて報知する。
【0070】
更に、この実施形態では、制御部40は、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変するようにしている。
【0071】
ここで、前記所定時間を、予め定められた上限時間内で可変する本実施形態の作用効果を、前記所定時間が一定時間に固定されている従来例と比較して説明する。
【0072】
以下では、コンロバーナ2a~2cについて説明するが、グリルバーナ16a,16bについても同様である。
【0073】
図3は、前記所定時間が一定時間に固定されている従来例のタイムチャートの一例を示すものである。同図(a)は使用者による点火操作(点火指令)、同図(b)は上記の元電磁弁28の開閉状態、同図(c)は上記の流量制御弁29~31の開閉状態、同図(d)はイグナイタ22a~22cの駆動(通電)状態、同図(e)はコンロバーナ2a~2cの火炎の状態、同図(f)は火炎検知センサとしての熱電対15a~15cの出力(起電力)、同図(g)は着火判定結果、同図(h)は燃焼ランプの状態をそれぞれ示している。
【0074】
また、図3(a)~(h)において、実線は、所定時間内に点火が正常に行われた場合を示し、破線は、所定時間内に点火が正常に行われず、点火エラーとなった場合を示している。
【0075】
先ず、所定時間(ts-t0)内に点火が正常に行われた実線で示される場合について説明する。所定時間(ts-t0)は、例えば、5秒である。
【0076】
時点t0において、同図(a)に示すように、使用者によって点火操作が行われると、同図(b)に示すように、元電磁弁28が開放されると共に、点火操作に対応する流量制御弁29~31が、同図(c)に示されるように開放されて、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cへ燃料ガスの供給が開始される。
【0077】
また、同図(d)に示すように、点火操作に対応するイグナイタ22a~22cが駆動(ON)されて、点火操作に対応する点火プラグ14a~14cに火花放電が生じる。これによって、同図(e)に示すように、例えば、時点t1において、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cの火炎が生じ、同図(f)に示すように、点火操作に対応する熱電対15a~15cによって火炎が検知されて起電力が生じる。
【0078】
点火操作に対応する熱電対15a~15cの起電力が、所定時間(ts-t0)内である、例えば、時点t2において、着火の有無を判定するための閾値電圧Vsに達すると、同図(g)に示すように、着火したと判定されて、着火判定結果がハイレベルとなる。これによって、同図(d)に示すようにイグナイタ22a~22cの駆動が停止されると共に、同図(h)に示すように燃焼ランプが点灯し、使用者に燃焼が開始されたことを報知し、燃焼状態を継続する。
【0079】
次に、例えば、ガス調理器が設置されている場所の燃料ガスの供給圧力が低いために、使用者による点火操作からガスバーナが着火したと判定されるまでに要する時間が長くなって、所定時間(ts-t0)内に正常な点火が行われず、点火エラーとなる破線で示される場合について説明する。
【0080】
時点t0において、同図(a)に示すように、使用者によって点火操作が行われると、同図(b)に示すように、元電磁弁28が開放されると共に、点火操作に対応する流量制御弁29~31が、同図(c)に示されるように開放されて、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cへ燃料ガスの供給が開始される。
【0081】
また、同図(d)に示すように、点火操作に対応するイグナイタ22a~22cが駆動(ON)されて、対応する点火プラグ14a~14cに火花放電が生じる。
【0082】
点火プラグ14a~14cの火花放電にも関わらず、火炎がなかなか生じず、例えば、時点t3において、同図(e)の破線に示すように火炎が生じ、同図(f)の破線に示すように、点火操作に対応する熱電対15a~15cによって火炎が検知されて起電力が生じる。
【0083】
火炎が生じるのが遅く、点火操作に対応する熱電対15a~15cの起電力が、同図(f)の破線に示すように、所定時間(ts-t0)が経過する時点ts迄に、着火の有無を判定するための閾値電圧Vsに達することができない。このため、時点tsにおいて、同図(b),(c)の破線に示すように、元電磁弁28及び対応する流量制御弁29~32を閉止して、燃料ガスの供給を停止すると共に、同図(d)の破線に示すように、点火操作に対応するイグナイタ22a~22cの駆動を停止して点火動作を終了すると共に、同図(h)の破線に示すように、燃焼ランプを点滅させて、使用者に点火エラーであることを報知する。時点tsにおける点火動作の停止に伴って、同図(e)の破線に示すように、火炎が消え、同図(f)の破線に示すように、点火操作に対応する熱電対15a~15cの起電力が低下する。
【0084】
この図3の例では、所定時間(ts-t0)内の時点t3において、火炎が生じているが、所定時間(ts-t0)内に、火炎が生じなかった場合も同図(f)に示される熱電対の起電力が生じず、着火の有無を判定するための閾値電圧Vsに達しないので、点火エラーとなる。
【0085】
次に、図4に基づいて、所定時間を、予め定められた上限時間内で可変する本実施形態のタイムチャートの一例について説明する。この図4は、上記図3に対応するものであって、図3と同様に、図4(a)は使用者による点火操作(点火指令)、図4(b)は元電磁弁28の開閉状態、図4(c)は流量制御弁29~31の開閉状態、図4(d)はイグナイタ22a~22cの駆動(通電)状態、図4(e)はコンロバーナ2a~2cの火炎の状態、図4(f)は火炎検知センサとしての熱電対15a~15cの出力(起電力)、図4(g)は着火判定結果、図4(h)は燃焼ランプの状態をそれぞれ示している。
【0086】
図4において、実線及び破線は、上記図3の実線及び破線の場合にそれぞれ対応している。
【0087】
この図4では、所定時間を、予め定められた上限時間内で長くしており、具体的には、所定時間(ts´-t0)は、上記図3の所定時間(ts-t0)に比べて、時点tsから時点ts´に至る時間が長くなっている。この所定時間(ts´-t0)は、例えば、10秒である。
【0088】
先ず、図4の実線で示すように、時点t0において、同図(a)に示すように、使用者によって点火操作(点火指令)が行われると、同図(b)に示すように、元電磁弁28が開放されると共に、点火操作に対応する流量制御弁29~31が、同図(c)に示されるように開放されて、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cへの燃料ガスの供給が開始される。
【0089】
また、同図(d)に示すように、点火操作に対応するイグナイタ22a~22cが駆動(ON)されて、点火操作に対応する点火プラグ14a~14cに火花放電が生じる。これによって、同図(e)に示すように、例えば、時点t1において、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cに火炎が生じ、同図(f)に示すように、点火操作に対応する熱電対15a~15cによって火炎が検知されて起電力が生じる。
【0090】
点火操作に対応する熱電対15a~15cの起電力が、所定時間(ts´-t0)内である、例えば、時点t2において、着火の有無を判定するための閾値電圧Vsに達すると、同図(g)に示すように、着火したと判定されて、着火判定結果がハイレベルとなり、同図(d)に示すようにイグナイタ22a~22cの駆動が停止されると共に、同図(h)に示すように燃焼ランプが点灯し、使用者に燃焼が開始されたことを報知し、燃焼状態を継続する。
【0091】
以上は、上記図3の実線で示される点火が正常に行われた場合と同様である。
【0092】
次に、例えば、ガス調理器が設置されている場所の燃料ガスの供給圧力が低いために、使用者による点火操作からガスバーナが着火したと判定されるまでに要する時間が長くなって、上記図3では、破線で示される点火エラーとなる場合について説明する。
【0093】
図4の時点t0において、同図(a)に示すように、使用者によって点火操作が行われると、同図(b)に示すように、元電磁弁28が開放されると共に、点火操作に対応する流量制御弁29~31が、同図(c)に示されるように開放されて、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cへ燃料ガスの供給が開始される。
【0094】
また、同図(d)に示すように、点火操作に対応するイグナイタ22a~22cが駆動(ON)されて、点火操作に対応する点火プラグ14a~14cに火花放電が生じる。
【0095】
点火プラグ14a~14cの火花放電にも関わらず、火炎がなかなか生じず、例えば、時点t3において、同図(e)の破線に示すように火炎が生じ、同図(f)の破線に示すように、点火操作に対応する熱電対15a~15cによって火炎が検知されて起電力が生じる。
【0096】
火炎が生じるのが遅く、対応する熱電対15a~15cの起電力が、同図(f)の破線に示すように、着火の有無を判定するための閾値電圧Vsに達するまでの時間が長くなるが、上記のように所定時間(ts´-t0)を延ばして長くしている。これによって、点火操作に対応する熱電対15a~15cの起電力が、所定時間(ts´-t0)内である時点t4において、着火の有無を判定するための閾値電圧Vsに達し、同図(g)の破線に示すように、着火したと判定されて、着火判定結果がハイレベルとなる。これによって、同図(d)の破線に示すようにイグナイタ22a~22cの駆動が停止されると共に、同図(h)の破線に示すように燃焼ランプが点灯し、使用者に燃焼が開始されたことを報知し、燃焼状態を継続する。
【0097】
このように所定時間が一定時間の固定されている図3の従来例では、点火エラーとなる場合であっても、所定時間を予め定められた上限時間内で可変し、図4のように所定時間を長くした場合には、点火エラーとなることなく、正常な点火が行われる。
【0098】
予め定められた上限時間は、コンロバーナ2a~2cの爆発的な着火が生じない時間であり、出来るだけ長い時間であるのが好ましく、例えば、16秒である。
【0099】
このように所定時間を、コンロバーナ2a~2cの爆発的な着火が生じない予め定められた上限時間内で可変するので、爆発的な着火を回避することができると共に、所定時間を、使用者の点火操作からガスバーナの着火判定までに要する時間に応じた時間にすることができるので、点火エラーの発生を抑制することができ、使い勝手が向上する。
【0100】
次に、より具体的な実施形態についてフローチャートを参照して説明する。
【0101】
図5は、本発明の一実施形態の所定時間の可変処理を示すフローチャートである。
【0102】
この図5は、グリル付きガスコンロAが新しい設置場所に設置されたか否か、コンロバーナ2a~2cの燃焼停止時間、及び、コンロバーナ2a~2cの温度に応じて、所定時間を、予め定められた上限時間内、例えば、16秒以内で可変するものである。
【0103】
先ず、使用者による点火操作、すなわち、点火指令がなされると(ステップS1)、新しい設置場所での着火履歴があるか否かを判断する(ステップS2)。
【0104】
グリル付きガスコンロAが新しい設置場所、例えば、新築マンションに、設置されたような場合には、燃料ガスのガス配管が長いので、グリル付きガスコンロAに燃料ガスが届くまでに時間を要する。このため、点火操作を行っても所定時間内に着火できず、点火エラーとなり、点火操作及び点火エラーが繰り返されることになる。
【0105】
そこで、この実施形態では、ステップS2において、上記の設置状態検出部としての制御部40によって、グリル付きガスコンロAが、新しい設置場所に設置されたことを検出したときには、この新しい設置場所での着火履歴があるか、すなわち、新しい設置場所で着火したと判定された初回の着火判定の履歴があるか否かを判断する。新しい設置場所での着火履歴がないときには、グリル付きガスコンロAが新しい設置場所に設置されて未だ着火したことがないので、ステップS3に移り、所定時間を上限時間内で長く、例えば、10秒とし、点火動作を開始する(ステップS4)。
【0106】
このようにグリル付きガスコンロAが新しい設置場所に設置されて初回の着火が確認される迄は、所定時間を長くするので、所定時間が短い場合に比べて、点火操作及び点火エラーを繰り返す回数を少なくすることができる。これによって、グリル付きガスコンロAを新しい設置場所に設置する際の作業者の作業負担を軽減することができる。
【0107】
上記ステップS2において、新しい設置場所での着火履歴があると判断されたときには、グリル付きガスコンロAは、新しい設置場所に設置されて既に点火及び着火が行われているとして、ステップS5に移る。
【0108】
コンロバーナの燃焼停止時間が長いと、ガス管路内の燃料ガスが空気によって希釈、あるいは、置換されるので、使用者の点火操作からコンロバーナの着火判定までに要する時間が長くなる。そこで、ステップS5では、点火操作されたコンロバーナ2a~2cの燃焼停止時間が、閾値時間tm以上であるか否かを判断する。この閾値時間tmは、比較的広い時間範囲で定めることができ、例えば、5hr程度としてもよい。
【0109】
ステップS5において、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cの燃焼停止時間が、閾値時間tm以上であるときには、燃焼を停止してから長時間経過しているので、使用者の点火操作からコンロバーナ2a~2cの着火判定までに要する時間が長くなるとして、ステップS3に移り、所定時間を上限時間内で長く、例えば、10秒にして点火動作を開始する(ステップS4)。
【0110】
上記ステップS5において、点火操作されたコンロバーナの燃焼停止時間が、閾値時間tm以上でないとき、すなわち、燃焼を停止してから長時間経過していないときには、ステップS6に移る。
【0111】
コンロバーナ2a~2cの温度が低い程、燃料ガスの温度は低くなり、ガスの爆発限界は温度が低いと狭くなるので、着火しにくくなる場合がある。そこで、ステップS6では、点火操作されたコンロバーナ2a~2cに対応する温度センサ7a~7cによる検出温度が、閾値温度TL以下であるか否かを判断する。この閾値温度TLは、例えば、20℃程度としてもよい。
【0112】
ステップS6において、点火操作されたコンロバーナ2a~2cに対応する温度センサ7a~7cによる検出温度が、閾値温度TL以下であるときには、点火操作されたコンロバーナ2a~2cの温度が低く、使用者の点火操作からコンロバーナ2a~2cの着火判定までに要する時間が長くなるとして、ステップS3に移り、所定時間を上限時間内で長く、例えば、10秒にして点火動作を開始する(ステップS4)。
【0113】
上記ステップS6において、温度センサによる検出温度が、閾値温度TL以下でないときには、コンロバーナ2a~2cの温度が高く、使用者の点火操作からコンロバーナ2a~2cの着火判定までに要する時間は比較的短くてもよいとして、ステップS7に移り、所定時間を短く、例えば5秒にして点火動作を開始する(ステップS4)。
【0114】
このように本実施形態によれば、グリル付きガスコンロAを新しい設置場所に設置する際に、点火操作及び点火エラーの回数を減らすことができ、作業者の作業負担が軽減される。また、所定時間を、コンロバーナ2a~2cの燃焼停止時間、及び、コンロバーナ2a~2cの温度に応じて、予め定められた上限時間内で可変するので、爆発的な着火を回避しつつ、点火エラーの発生を抑制することができ、使い勝手が向上する。
【0115】
図6は、本発明の他の実施形態の所定時間の可変処理を示すフローチャートである。
【0116】
この図6は、コンロバーナ2a~2cの点火火力に応じて、所定時間を、予め定められた上限時間内、例えば、16秒以内で可変するものである。
【0117】
先ず、使用者による点火操作、すなわち、点火指令がなされると(ステップS10)、点火操作に対応するコンロバーナ2a~2cの点火火力が1500kcal/h以下であるか否かを判断し(ステップS11)、点火火力が1500kcal/h以下であるときには、点火火力が比較的小さな小火力のコンロバーナ2cであるとしてステップS12に移る。ステップS12では、小火力のコンロバーナ2cであるので、所定時間が長くなっても、爆発的な着火が生じにくいとして、所定時間を上限時間以内で長く、例えば、15秒にし、点火動作を開始する(ステップS13)。
【0118】
上記ステップS11で、点火火力が1500kcal/h以下でないときには、点火操作に対応するコンロバーナの点火火力が3000kcal/h以下であるか否かを判断する(ステップS14)。点火火力が3000kcal/h以下であるときには、ステップS15に移る。ステップS15では、点火火力が、1500kcal/hを超え、3000kcal/h以下であり、点火火力が、中程度の標準火力のコナロバーナ2aであるとして、所定時間を上限時間内で中程度の長さ、例えば、10秒にし、点火動作を開始する(ステップS13)。
【0119】
上記ステップS14で、点火火力が3000kcal/h以下でないときには、ステップS16に移る。ステップS16では、点火火力が比較的大きな高火力のコンロバーナ2bであり、所定時間が長いと、爆発的な着火が生じ易いとして、所定時間を短く、例えば、5秒にし、点火動作を開始する(ステップS13)。
【0120】
このように本実施形態によれば、所定時間を、コンロバーナ2a~2cの点火火力に応じて、予め定められた上限時間内で可変するので、爆発的な着火を回避しつつ、点火エラーの発生を抑制することができ、使い勝手が向上する。
【0121】
なお、点火火力の大小が、必ずしもコンロバーナの最大火力に応じて決められる必要はなく、例えば、高火力のコンロバーナと、標準火力のコンロバーナとが、同じ点火火力であってもよい。
【0122】
所定時間は、使用者自身が次のようにして可変設定することができる。
【0123】
図7(a)は、上記のグリル用調理設定入力部12の一部を、図7(b)は、上記のガスコンロ用調理設定入力部13の一部をそれぞれ示す図である。
【0124】
使用者自身が、所定時間を可変設定する場合には、例えば、ガスコンロ用調理設定入力部13のコンロタイマー45の「+」キー45a又は「-」キー45bと、左コンロの高温炒めキー46とを同時に5秒以上押して、所定時間を可変する設定モードを開始する。
【0125】
この設定モードにおいて、例えば、グリル用調理設定入力部12のグリルタイマー47の「+」キー47a及び「-」キー47bを操作して所定時間の可変設定に対応する項目番号を選択する(グリルタイマー47に項目番号を表示させる)。項目番号を選択した後、ガスコンロ用調理設定入力部13のコンロタイマー45の「+」キー45a及び「-」キー45bを操作して、「01」~「15」のいずれかの数字を設定する(コンロタイマー45に設定する所定時間を表示させる)ことによって、所定時間として、上限時間内で、1秒から15秒までの時間を、各コンロバーナで個別に、あるいは一括に、1秒単位で可変設定する。
【0126】
その後、ガスコンロ用調理設定入力部13のコンロタイマー45の「+」キー45a又は「-」キー45bと、右コンロの高温炒めキー48とを同時に5秒以上押して、所定時間を可変する設定モードを終了する。
【0127】
上記実施形態では、グリル付きガスコンロAが、新しい設置場所に設置されたことを検出する設置状態検出部は、電池が、出荷後、最初に電池ボックスにセットされたときに、新しい設置場所に設置されたとして検出したが、他の実施形態として、グリル付きガスコンロAを新しい設置場所に設置したときに、所要の操作を行うことによって、設置状態検出部が、グリル付きガスコンロAが新しい設置場所に設置されたことを検出するようにしてもよい。
【0128】
この所要の操作としては、例えば、ガスコンロ用調理設定入力部13の左コンロの炊飯/湯沸しキー49又は右コンロの炊飯/湯沸しキー50を押しながら乾電池を電池ボックスにセットすることで、新しい設置場所に設置されたことを検出するようにしてもよい。
【0129】
更に、他の実施形態として、グリル付きガスコンロAが、商用電源(100V電源)を使用するもので、新しい設置場所に設置されたことを検出する設置状態検出部は、グリル付きガスコンロが、出荷後、最初に商用電源(100V電源)につなげられたときに、設置状態検出部が新しい設置場所に設置されたことを検出するようにしてもよい。
【0130】
なお、上記の使用者自身による所定時間の可変設定、及び、グリル付きガスコンロAが、新しい設置場所に設置されたことを検出するための所要の操作におけるキー操作は、上記に限らないのは勿論である。
【0131】
また、上記図5及び図6の実施形態に限るものではなく、それらの一部あるいは全てを適宜組み合わせてもよい。
【0132】
(4)本発明の好
例えば、図5のコンロバーナの燃焼停止時間のみによって所定時間を可変してもよくあるいは、コンロバーナの燃焼停止時間やコンロバーナの検出温度と、図6に示されるコンロバーナの点火火力とを適宜組み合わせて、所定時間を可変してもよい。
【0133】
また、新しい設置場所での点火履歴がないときの所定時間を、他の条件より長め(例えば、15秒)としてもよい。
【0134】
本発明の他の実施形態として、所定時間を、予め定められた上限時間内において、コンロバーナの燃焼停止時間、検出温度や点火火力などに応じて、線形式で可変してもよい。
【符号の説明】
【0135】
2a~2c コンロバーナ
3 グリル部
7a~7c,21 温度センサ
8a~8c 加熱状態調節部
12 グリル用調理設定入力部
13 ガスコンロ用調理設定入力部
14a~14c,17a,17b 点火プラグ
15a~15c,18a,18b 熱電対
16a,16b グリルバーナ
22a~22e イグナイタ
28 元電磁弁
29~32 流量制御弁
40 制御部
A グリル付きガスコンロ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7