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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法、製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240925BHJP
   B29C 35/04 20060101ALI20240925BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/04
B29D30/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020212281
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098716
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 亨
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-137207(JP,A)
【文献】特開昭62-299308(JP,A)
【文献】特開2009-126017(JP,A)
【文献】特開2014-226878(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170751(WO,A1)
【文献】特開2019-018466(JP,A)
【文献】特開2003-071844(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0760592(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/04
B29D 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上クランプリング及び下クランプリングに支持されるブラダに流体を圧入して前記ブラダを膨張させ、前記ブラダで生タイヤを保持するシェーピング工程と、
前記シェーピング工程後に、モールドを閉じて前記生タイヤを加硫する加硫工程と、を含み、
前記シェーピング工程は
前記下クランプリングを動かさずに、前記上クランプリングを第1位置に維持した状態で前記ブラダへの流体の圧入を開始して前記上クランプリングを第1位置に維持した状態で前記流体の圧入を停止し、前記流体の圧入が停止した前記ブラダの赤道面を前記生タイヤの赤道面よりも上方に位置させる工程と、
前記流体の圧入が停止した後で、前記下クランプリングを動かさずに、前記上クランプリングを前記第1位置よりも下方の第2位置へ移動させ、前記加硫工程へ移行する工程と、
を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記第1位置にある前記上クランプリングの少なくとも一部は、前記生タイヤの上ビードの上端よりも上方に位置する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第2位置における前記上クランプリングの上端は、前記生タイヤの上ビードの下端と同じ高さに位置する又は前記生タイヤの上ビードの下端よりも下方に位置する、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
前記シェーピング工程において前記上クランプリングが前記第2位置に到達してから、前記加硫工程における加硫が開始する時点まで前記上クランプリングが前記第2位置に維持される、請求項~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記上クランプリングが前記第1位置から前記第2位置へ向けて移動を開始した時点から、前記上クランプリングが前記第2位置へ移動することを経て、前記モールドが閉じる時点までの間、前記ブラダに対する流体の入出力が停止される、請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
生タイヤを保持可能なブラダと、前記ブラダを支持する上クランプリング及び下クランプリングと、前記生タイヤを加硫するモールドと、を備え、
前記ブラダに流体を圧入して前記ブラダを膨張させ、前記ブラダで前記生タイヤを保持するシェーピング動作と、
前記シェーピング動作後に、前記モールドを閉じて前記生タイヤを加硫する加硫動作と、を実行可能に構成されており、
前記シェーピング動作は、
前記下クランプリングを動かさずに、前記上クランプリングを第1位置に維持した状態で前記ブラダへの流体の圧入を開始して前記上クランプリングを第1位置に維持した状態で前記流体の圧入を停止し、前記流体の圧入が停止した前記ブラダの赤道面を前記生タイヤの赤道面よりも上方に位置させることと、
前記流体の圧入が停止した後で、前記下クランプリングを動かさずに、前記上クランプリングを前記第1位置よりも下方の第2位置へ移動させ、前記加硫動作へ移行することと、
を含む、空気入りタイヤの製造装置。
【請求項7】
前記上クランプリングが前記第1位置から前記第2位置へ向けて移動を開始した時点から、前記上クランプリングが前記第2位置へ移動することを経て、前記モールドが閉じる時点までの間、前記ブラダに対する流体の入出力を停止する、請求項6に記載の空気入りタイヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤの製造方法、製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを加硫する加硫工程で用いられる製造装置(加硫機)は、袋体であるブラダと、ブラダを保持する上クランプリング及び下クランプリングと、を有する。加硫工程において、加硫前の生タイヤは、内圧が付与されたブラダによってモールドに押し付けられ、モールド及びブラダ内の加熱媒体により加熱される。
【0003】
ところが、特許文献1に記載の通り、ブラダが生タイヤのバットレスに当たりにくく、タイヤのうちブラダが当たりにくい部分に製造不良が発生する場合がある。特に扁平率が低くなるほど、タイヤのバットレスに製造不良が現れやすい。特許文献1は、上クランプリング及び下クランプリングの両方を移動させるセンタリングシェーピング方式において上記製造不良の発生を抑制する技術を開示する。
【0004】
下クランプリングを固定した状態で下クランプリングに対して上クランプリングを相対的に移動させるボトムシェーピング方式においても、製造不良の発生を抑制することが求められる。しかし、特許文献1に開示の技術は、センタリングシェーピング方式であるため、その技術をそのままボトムシェーピング方式に適用することができない。特許文献2は、ボトムシェーピング方式を開示するが、ブラダが当たりにくいことに起因する製造不良の発生及びその対策に関する記載を開示しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-226878号公報
【文献】特開昭57-199639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、製造不良の発生を抑制可能な空気入りタイヤの製造方法、製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の空気入りタイヤの製造方法は、上クランプリング及び下クランプリングに支持されるブラダに流体を圧入して前記ブラダを膨張させ、前記ブラダで生タイヤを保持するシェーピング工程と、前記シェーピング工程後に、モールドを閉じて前記生タイヤを加硫する加硫工程と、を含み、前記シェーピング工程は、前記下クランプリングを動かさずに、前記上クランプリングを第1位置に維持した状態で前記ブラダへの流体の圧入を開始して前記流体の圧入を完了し、前記ブラダの赤道面を前記生タイヤの赤道面よりも上方に位置させる工程と、前記流体の圧入が完了した後で、前記下クランプリングを動かさずに、前記上クランプリングを前記第1位置よりも下方の第2位置へ移動させ、前記加硫工程へ移行する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の空気入りタイヤの製造装置を模式的に示す図。
図2】ローダが生タイヤにブラダを挿入する動作を示す図。
図3】上クランプリングが受入位置から第1位置へ移動する動作を示す図。
図4】上クランプリングが第1位置にある状態でブラダに内圧を付与する動作を示す図。
図5】上クランプリングが第1位置から第2位置へ移動する動作を示す図。
図6】ローダが退避する動作を示す図。
図7】モールドが閉まる動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態の空気入りタイヤの製造方法及び製造装置について、図面を参照して説明する。図1~7は、製造装置及び生タイヤの模式的な断面図であるが、生タイヤのみにハッチングを付している。
【0010】
<製造装置の構造>
図1及び図7に示すように、製造装置(加硫機)は、ブラダ1と、ブラダ1を支持する上クランプリング20及び下クランプリング21と、モールド3と、を有する。
【0011】
ブラダ1は、生タイヤTを保持可能に構成されている。生タイヤTは、図1に示すタイヤ軸C1が上下方向を向く姿勢でブラダ1に保持される(図4図7参照)。ブラダ1は、流体が内部に入出力される袋体である。ブラダ1は、生タイヤTの内側に配置され、保持媒体(低圧ガス)又は加熱媒体(高圧ガス)などの流体が内部に圧入されることにより膨張して生タイヤTの内面に接触し、生タイヤTを保持する。具体的には、図4図7に示すように、生タイヤTのトレッドのタイヤ径方向内側の内面およびサイドウォールのタイヤ軸方向内側の内面にブラダ1が接触して生タイヤTを保持する。
【0012】
図1及び図2に示すように、生タイヤTは、ローダ5(搬送装置)により搬送される。ローダ5は、生タイヤTを把持し、生タイヤTの内側にブラダ1が配置される位置に生タイヤTを搬送する。ローダ5は、鉛直方向及び水平方向の両方向に移動可能なローダ本体50と、ローダ本体50から下方に延び且つ先端がローダ5の鉛直中心軸C2の径方向外側に向けて延びている複数のパドル51と、を有する。複数のパドル51は、ローダ5の鉛直中心軸C2を中心として周方向に隙間をあけて環状に配置されている。複数のパドル51それぞれは、ローダ5の径方向に沿ってスライド移動可能に構成されている。これにより、複数のパドル51が拡径可能又は縮径可能となり、生タイヤTのビードをタイヤ径方向内側から支持する状態(図1参照)と、生タイヤTのビードよりも径方向内側に退避して生タイヤTを離す状態(図6参照)と、を切り替え可能に構成されている。
なお、ローダ5は、本明細書でいう製造装置に含まれてもよいし、本明細書でいう製造装置以外の別個の装置として設けられていてもよい。
【0013】
図1に示すように、上クランプリング20及び下クランプリング21は、リング状に形成されており、その中心に上下方向に延びるセンターポスト22が配置され、センターポスト22の径方向外側へ延びている。上クランプリング20は、下クランプリング21の上方に配置される。上クランプリング20及び下クランプリング21それぞれの径方向外側の端部は、ブラダ1を支持する。下クランプリング21は固定されており、上クランプリング20は、上下移動可能にセンターポスト22に支持されている。
【0014】
製造装置は、流体制御機構(非図示)を有する。流体制御機構は、ブラダ1に対する流体(媒体)の入出力が可能である。ブラダ1に対して流体を入力することによってブラダ1を膨張させ、ブラダ1から流体を外部に出力することによってブラダ1を縮小させることが可能である。ブラダ1の内部に入力される流体は、気体、液体又はそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。ブラダ1の内部に圧入される流体は、ブラダ1により生タイヤTを保持可能にするための保持媒体、生タイヤTを保持し且つ熱を生タイヤTに伝熱させて生タイヤを加硫するための加熱媒体などが挙げられる。加熱媒体は、保持媒体よりも高温である。
【0015】
モールド3は、図7に示すように、生タイヤTを加熱して空気入りタイヤの形状を成形する。モールド3は金属製であり、常時加熱又は適宜加熱されている。第1実施形態のモールド3は、タイヤのトレッドを形成するセクタ32と、タイヤのサイドウォールを形成する上サイドモールド30a及び下サイドモールド30bと、タイヤのビードを形成する上ビードリング31a及び下ビードリング31bと、を有する。下サイドモールド30b、下ビードリング31b及び下クランプリング21で構成される下モールドユニット3Bが位置固定されている。上サイドモールド30a及び上ビードリング31aで構成される上モールドユニット3Aが上下移動可能に構成される。また、セクタ32は、下モールドユニット3Bに対して拡径する方向及び縮径する方向の両方向に移動可能である。これにより、モールド3が開閉可能に構成される。
【0016】
<製造装置の動作>
製造装置の動作、すなわち空気入りタイヤの製造方法について説明する。
【0017】
まず、図1に示すように、モールド3の開状態において、上クランプリング20が生タイヤTの受入位置P0に待機する。下クランプリング21は固定されており位置変化しない。受入位置P0は、ブラダ1が生タイヤTに干渉しないように、下クランプリング21との関係において生タイヤTのビードよりもブラダ1が小さくなる位置である。上クランプリング20が受入位置P0にある場合は、ブラダ1の内部の流体の一部は外部に排出されており、ブラダ1が縮んでいる。モールド3の開状態は、セクタ32及び上モールドユニット3Aが、下モールドユニット3Bから離間している状態である。なお、図1はセクタ32の図示を省略している。
【0018】
次に、図2に示すように、ローダ5に把持される生タイヤTが、ブラダ1に装着される。この時、生タイヤTの赤道面CL1が規定位置になるようにローダ5が生タイヤTを把持し続ける。規定位置は、モールド3に対して設定されている。ローダ5はセンターポスト22に嵌合して軸心が合う構造になっている。
【0019】
次に、図3に示すように、上クランプリング20が受入位置P0から第1位置P1に移動する。第1位置P1は、受入位置P0よりも下方である。同図に示すように、第1位置P1にある上クランプリング20の少なくとも一部は、生タイヤTの上ビードの上端T1よりも上方に位置する。生タイヤTは、タイヤ軸方向両側それぞれにビードを有する。上ビードは、上下にそれぞれある対のビードのうち上側のビードを意味する。本明細書において「ビード」は、ビードコアT3とタイヤ軸方向に重なる部位及びビードコアT3よりもタイヤ径方向内側をいう。図3~5の例ではビードは、一点鎖線S1よりもタイヤ径方向内側の部位である。
【0020】
次に、図4に示すように、シェーピング工程(動作)を実行する。シェーピング工程は、ブラダ1に流体(保持媒体;低圧ガス)を圧入してブラダ1を膨張させ、ブラダ1で生タイヤTを保持する工程である。具体的には、下クランプリング21を動かさずに、上クランプリング20を第1位置P1に維持した状態でブラダ1への流体の圧入を開始する。規定量の流体の入力が完了したこと、または、ブラダ1の内圧が規定圧力になったことをセンサで検出したことなどの所定条件の成立により、流体の圧入を完了(停止)する。流体の圧入が完了することで、ブラダ1が膨張して生タイヤを保持すると共に、ブラダ1の赤道面CL2が生タイヤTの赤道面CL1よりも上方に位置する。ブラダ1の赤道面CL2は、上クランプリング20に保持される上側ブラダ端と、下クランプリング21に保持される下側ブラダ端との中間である。上側ブラダ端及び下側ブラダ端の径方向位置が同じなので、鉛直方向における上側ブラダ端と下側ブラダ端の中間の高さになる(図4参照)。よって、ローダ5が保持する生タイヤTの赤道面CL1よりもブラダ1の赤道面CL2が上方になるように、第1位置P1が設定されている。第1実施形態では、生タイヤTの上ビードの上端T1とブラダ1の上側の支持端1aとの鉛直方向に沿った長さL1が15mmに設定されており、ブラダ1の先端が生タイヤTの上ビードの上端T1よりも上方に突出している。L1は、適宜変更可能である。例えば、L1は、10mm以上且つ40mm以下に設定可能である。
【0021】
流体の圧入が完了した後で、図5に示すように、下クランプリング21を動かさずに、上クランプリング20を第1位置P1から第2位置P2に移動させる。流体の圧入が完了するまで、上クランプリング20を第1位置P1に維持するので、ブラダ1の形状が安定してから、上クランプリング20を移動させることになる。第2位置P2は、第1位置P1よりも下方に位置する。ブラダ1に対する流体の入出力は、上クランプリング20が第1位置P1から第2位置P2に向けて移動を開始した時点から、上クランプリング20が第2位置P2に到達した時点までの間、少なくとも停止される。よって、上クランプリング20が下がる動作によってブラダ1を押さえることになり、ブラダ1の内圧が高くなる。これにより、ブラダ1が生タイヤTの内面により強く押されることになり、生タイヤTとブラダ1の間の空気が抜けやすくなる。逆にこの押し込み動作を行わなければ、生タイヤTとブラダ1の間の空気が抜けにくい。
【0022】
第2位置P2における上クランプリング20の上端20aは、生タイヤTの上ビードの下端T2と同じ高さに位置する又は生タイヤTの上ビードの下端T2よりも下方に位置する。これにより、上クランプリング20が、上から降りてくる上モールドユニット3Aと干渉することを回避可能となる。
【0023】
図5に示すように、鉛直方向における第2位置P2にある上クランプリング20に保持されるブラダ端と下クランプリング21に保持されるブラダ端との中間の高さは、ローダ5が保持する生タイヤTの赤道面CL1と高さが一致する。仮に、第2位置P2に上クランプリング20が位置する状態でブラダ1への流体の圧入を開始し且つ流体の圧入を完了すれば、生タイヤTの赤道面CL1とブラダ1の赤道面CL2の高さがほぼ一致することになる。しかし、図4に示すように、上クランプリング20が第1位置P1に位置する状態で、ブラダ1への流体の入力を開始し且つ完了しているので、生タイヤTの赤道面CL1よりもブラダ1の赤道面CL2が上方に位置する。この状態で、図5に示すように、上クランプリング20を第1位置P1から第2位置P2に下降させても、ブラダ1に内圧が張られているので、ブラダ1の赤道面CL2は生タイヤTの赤道面CL1よりも上方にあることに変わりない。勿論、生タイヤTとブラダ1の間にある離型剤によって生タイヤTに対してブラダ1が多少動く可能性があるが、生タイヤTの赤道面CL1よりもブラダ1の赤道面CL2が上方にある関係に変化は生じない。そして、生タイヤTの赤道面CL1よりもブラダ1の赤道面CL2が上方にある状態で、上クランプリング20を第1位置P1から第2位置P2に下降させるので、ブラダ1の内圧によりブラダ1の上半分が上側バットレスの内面に当たりやすくなる。その結果、ブラダ1が当たりにくいことによる上側バットレスの製造不良を低減可能となる。
【0024】
上クランプリング20の第2位置P2への移動が完了すれば、図6に示すように、ローダ5のパドル51を縮径させ、ローダ5を上方に移動させることで、パドル51を生タイヤTから退避させる。これにより、モールド3を閉じることが可能となる。
【0025】
次に、図7に示すように、上モールドユニット3A及びセクタ32を閉位置に移動させてモールド3を閉じ、生タイヤTを加硫する加硫工程が開始される。加硫工程では、モールド3及びブラダ1に圧入される加熱媒体により生タイヤTが加硫される。加硫が開始される時点とは、ブラダ1への加熱媒体への流入動作が開示される時点である。なお、上記の通り、加硫工程でブラダ1に入力される流体は、加熱媒体(高圧ガス)である。加熱媒体は、シェーピング工程でブラダ1に入力される保持媒体(低圧ガス)よりも高温である。加硫工程におけるブラダ1の内圧は、シェーピング工程におけるブラダ1の内圧よりも高い。
【0026】
なお、シェーピング工程において上クランプリング20が第2位置P2に到達してから、加硫工程における加硫が開始する時点まで上クランプリング20が第2位置P2に維持される。また、上クランプリング20が第1位置P1から第2位置P2へ向けて移動を開始した時点から、モールド3が閉じる時点までの間、ブラダ1に対する流体の入出力が停止される。上記シェーピング工程(動作)及び加硫工程(動作)は、図示しない製造装置の制御部が各機構を制御することで実現される。すなわち、図示しない制御部が、シェーピング工程(動作)を実行させ、加硫工程(動作)を実行させる。
【0027】
<第1実施形態の変形例>
(1)第1実施形態のモールドは、セクタと、サイドモールドと、ビードリングとを有する分割体であるが、これに限定されない。
(2)第1実施形態では、上クランプリング20の動作によってブラダ1の赤道面CL1を生タイヤTの赤道面CL2より上方に位置させているが、これ以外の方法でもブラダ1の赤道面CL1を生タイヤTの赤道面CL2より上方に位置させることができるのであれば、上クランプリング20の動作に限定されない。
【0028】
以上のように、特に限定されないが、第1実施形態の空気入りタイヤの製造方法のように、上クランプリング20及び下クランプリング21に支持されるブラダ1に流体を圧入してブラダ1を膨張させ、ブラダ1で生タイヤTを保持するシェーピング工程と、シェーピング工程後に、モールド3を閉じて生タイヤTを加硫する加硫工程と、を含み、シェーピング工程は、流体の圧入が完了したブラダ1の赤道面CL1を生タイヤTの赤道面CL2より上方に位置させる工程を含む、としてもよい。
特に限定されないが、第1実施形態の空気入りタイヤの製造装置のように、生タイヤTを保持可能なブラダ1と、ブラダ1を支持する上クランプリング20及び下クランプリング21と、生タイヤTを加硫するモールド3と、を備え、ブラダ1に流体を圧入してブラダ1を膨張させ、ブラダ1で生タイヤTを保持するシェーピング動作と、シェーピング工程後に、モールド3を閉じて生タイヤTを加硫する加硫動作と、を実行可能に構成されており、シェーピング動作は、流体の圧入が完了したブラダ1の赤道面CL1を生タイヤTの赤道面CL2より上方に位置させること、を含む、としてもよい。
【0029】
このように、ブラダ1の赤道面CL2を生タイヤTの赤道面CL1よりも上方に配置することにより、ブラダ1で生タイヤTの上側バットレスを適切に押さえることができ、製造不良発生を抑制可能となる。
【0030】
特に限定されないが、第1実施形態の空気入りタイヤの製造方法のように、シェーピング工程は、下クランプリング21を動かさずに、上クランプリング20を第1位置P1に維持した状態でブラダ1への流体の圧入を開始して流体の圧入を完了し、ブラダ1の赤道面CL1を生タイヤTの赤道面CL2よりも上方に位置させる工程と、流体の圧入が完了した後で、下クランプリング21を動かさずに、上クランプリング20を第1位置P1よりも下方の第2位置P2へ移動させ、加硫工程へ移行する工程と、を含む、としてもよい。
特に限定されないが、第1実施形態の空気入りタイヤの製造装置のように、シェーピング動作は、下クランプリング21を動かさずに、上クランプリング20を第1位置P1に維持した状態でブラダ1への流体の圧入を開始して流体の圧入を完了し、ブラダ1の赤道面CL2を生タイヤTの赤道面CL1よりも上方に位置させることと、流体の圧入が完了した後で、下クランプリング21を動かさずに、上クランプリング20を第1位置P1よりも下方の第2位置P2へ移動させ、加硫工程へ移行することと、を含む、としてもよい。
【0031】
これにより、ブラダ1の赤道面CL2を生タイヤTの赤道面CL1よりも上方に配置でき、上クランプリング20を第1位置P1から第2位置P2に移動させることで、ブラダ1を生タイヤTに押し込むことができ、ブラダ1で生タイヤTの上側バットレスを適切に押さえることができ、製造不良発生を抑制可能となる。
【0032】
特に限定されないが、第1実施形態のように、第1位置P1にある上クランプリング20の少なくとも一部は、生タイヤTの上ビードの上端T1よりも上方に位置する、としてもよい。これにより、第1位置をこのように規定することで、生タイヤの上側バットレスを押さえるのに必要なブラダの長さを確保することができ、製品不良の発生をより一層低減可能となる。
【0033】
特に限定されないが、第1実施形態のように、第2位置P2における上クランプリング20の上端20aは、生タイヤTの上ビードの下端T2と同じ高さに位置する又は生タイヤTの上ビードの下端T2よりも下方に位置する、としてもよい。これにより、上から降りてくるモールドに干渉せず、適切にブラダを保持可能となる。
【0034】
特に限定されないが、第1実施形態のように、シェーピング工程において上クランプリング20が第2位置P2に到達してから、加硫工程における加硫が開始する時点まで上クランプリング20が第2位置P2に維持される、としてもよい。これにより、特許文献1のように上クランプリング20が移動することによりリードタイムが長くなることを避けることが可能となる。
【0035】
特に限定されないが、第1実施形態のように、上クランプリング20が第1位置P1から第2位置P2へ向けて移動を開始した時点から、上クランプリング20が第2位置P2へ移動することを経て、モールド3が閉じる時点までの間、ブラダ1に対する流体の入出力が停止される、としてもよい。これにより、ブラダによる生タイヤの保持を安定させることが可能となる。
【0036】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0037】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0038】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…ブラダ、20…上クランプリング、20a…上クランプリングの上端、21…下クランプリング、3…モールド、T…生タイヤ、P1…第1位置、P2…第2位置、T1…生タイヤの上ビードの上端、T2…生タイヤの上ビードの下端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7