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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】コンバインにおける穀粒の測定装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/46 20060101AFI20240925BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20240925BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A01F12/46
G01N27/04 B
G01N27/22 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020212410
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098808
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 大
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-10076(JP,A)
【文献】特開平10-123079(JP,A)
【文献】特開2012-185085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/46
G01N 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置からグレンタンクに穀粒を移送する揚穀装置の穀粒放出経路に水分計の前面板から突出する供給ローラーを臨ませ、この供給ローラーのラセン上に落下した穀粒をその回転駆動に伴って、前記前面板に設ける供給口を通して水分計の測定室内に導入し、この測定室内に導入した穀粒の含水率を水分計によって求める測定装置にあって、前記穀粒放出経路に供給口近傍のラセン上への穀粒の落下を阻止する遮蔽板を設けて、供給ローラーのラセン上に落下してその溝に収容した穀粒が、その後に落下した穀粒と衝突して、この収容した穀粒、或いは落下した穀粒が前面板に設ける供給口を通って測定室内に不測に入ることを防止することを特徴とするコンバインにおける穀粒の測定装置。
【請求項2】
前記水分計の供給ローラーの外周面が揚穀装置の穀粒放出経路を横断するように設けると共に、前記遮蔽板を供給ローラーのラセン上に落下してその溝に収容した穀粒より上手側の穀粒放出経路に設けることを特徴とする請求項1に記載のコンバインにおける穀粒の測定装置。
【請求項3】
前記測定装置に設ける採取室に供給ローラーを設けると共に、その採取室の上方側を塞ぐ遮蔽カバーの内側に遮蔽板を垂下させてボルトで着脱自在に取り付け、その遮蔽カバーを遮蔽板と共に取り外すと採取室に設ける供給ローラーのメンテナンスを行うことができるように構成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバインにおける穀粒の測定装置。
【請求項4】
前記採取室の下方側を塞ぐ閉鎖板より下方に開口を設け、この開口を通して排出する含水率の測定を終えた穀粒、並びに閉鎖板を開いて落下する穀粒を排出筒を介して脱穀装置の選別室に還元することを特徴とする請求項3に記載のコンバインにおける穀粒の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインにおける穀粒の測定装置に係り、詳しくは、コンバインに水分計を設けて収穫した穀粒の含水率を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に汎用コンバインでは、走行装置を備える機体に操縦部と脱穀装置とグレンタンク等を設け、また、機体の前方に掻込リール、刈刃装置、オーガ、及びフィーダからなるヘッダ(刈取部)を設ける。そして、圃場の植立穀稈を刈り取って籾米、麦、大豆、そば等の穀粒を収穫する場合、コンバインは植立穀稈をヘッダによって刈り取って脱穀装置に搬送し、また、脱穀装置はこの搬送されてきた刈取穀稈から穀粒を扱胴によって脱粒させて、更に揺動選別体等によって選別した穀粒を揚穀装置を用いてグレンタンクに移送する。
【0003】
そして、このようにコンバイン等で収穫した穀粒を商品として出荷する場合、穀粒は品位等の検査を行ってその等級付け等によって取引価格が決定される。そこで、高品位の穀粒を収穫して高収入を得ることを最終的な目的として、水分計やカメラ等の撮像装置をコンバインに設けて、穀粒の含水率や汚粒の有無等から刈取適期の判断を行ったり、刈高さ等の刈取方法の変更、更には収穫した穀粒の後処理としての乾燥方法や乾燥機の選定、或いはクリーニングや色彩選別の要否等の判断を行うことが検討されている。
【0004】
なお、自脱型のコンバインでは収穫する穀粒の損傷を防止するために穀粒の含水率を測定してコンバインの各部を制御すること、また、その場合に脱穀装置によって脱粒させた穀粒を揚穀装置を用いてグレンタンクに放出する穀粒の一部を水分計に取り込んで含水率を測定することが、例えば特許文献1によって知られている。さらに、穀粒を乾燥する乾燥機ではサンプリングする穀粒をラセンを備える供給ローラー(スクリュー)によって水分計に供給して乾燥中の穀粒の含水率等を測定することが、例えば特許文献2によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-271251号公報
【文献】特開2012-185085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のようにコンバインに水分計を設けて穀粒の含水率等を刈取作業中に測定することは、高品位の穀粒を収穫して高収入を得る上で有用である。そこで、特許文献1に記載されているように水分計を、脱穀装置によって脱粒させた穀粒をグレンタンク(穀粒タンク)に搬送する揚穀装置(揚穀スクリュー)の終端部から穀粒がタンク内に飛散しながら供給される箇所に設け、そして、水分計は飛散する穀粒を受け止めながら1粒ずつ取り込み、電極と兼用された一対の回転ローラに挟んで押し潰した状態でその電極間の電気抵抗を測定するように構成する。
【0007】
また、上述の飛散する穀粒を受け止めながら1粒ずつ水分計に取り込む手段として例えば、特許文献2に記載されているように、水分計に一対の供給スクリューを設け、この供給スクリューに飛散する穀粒を受け止めさせる。また、その受け止めた穀粒を供給スクリューの搬送溝に収容して、供給スクリューの回転に伴って1粒ずつ一対の電極ロール間に供給するように構成することが考えられる。
【0008】
しかし、このように水分計を用いて穀粒の含水率を測定するように構成すると、供給スクリューによる電極ロールを備える測定室内への穀粒の供給において、穀粒の過多な供給によって測定室内に過剰な穀粒が導入され、その含水率の測定に支障を及ぼす虞が懸念され、係る穀粒の測定室内への供給において改良の余地がある。
【0009】
より詳細に説明すると、特許文献2では、供給スクリューの搬送路を移動する穀物の搬送量を規制する上部仕切りカバーを設け、搬送路と上部仕切りカバーとの間の開口部(入口部)が測定対象である穀物の粒径よりも僅かに大きい通過径に設定され、穀粒1粒が通過する大きさに形成されている入口部によって搬送量が規制され、穀粒が1粒ずつ測定領域(測定室)内に移動される。
【0010】
そして、この場合、穀物の粒径は穀物の種類、品種、栽培環境等によって左右され、例えば穀物の中でも粒径が大きい大豆を例にとると、その大粒、中粒、小粒、極小粒の区分におけるふるい目の直径は8.5から4.9ミリメートルと2倍弱の差異がある。また、籾米、麦、大豆等を収穫する汎用コンバインでは、単一の水分計を用いてそれらの穀物の種類に関わらず含水率を測定しようとするから、前述の搬送路と上部仕切りカバーとの間の開口部を、最大の粒径を備える穀物を対象として大きく開口する必要がある。
【0011】
そのため、供給スクリューの搬送溝に収容した穀粒が後から飛散した穀粒と衝突して、そのはずみで押されてこの大きな開口を通過して測定室内に不測に入り込んでしまったり、その飛散する方向によって穀粒が直接大きな開口に入り込んでしまうという虞がある。従って、穀粒の測定室内への搬送量を上部仕切りカバーによって規制したとしても、供給スクリューを回転駆動しない測定の休止中でも不測に穀粒が測定室内に供給されることになる。
【0012】
そして、この測定室内に不測に入り込んだ穀粒と、測定の開始に伴って供給スクリューの回転駆動によって供給される穀粒が、例えば電極ロール間に一時に多数供給されてその測定に支障を来したり、測定室内に穀粒が過剰に満たされることによって供給スクリューの回転を不能としたり、或いは穀粒が計測室内でブリッジ現象を生じて電極ロールに穀粒が供給されずに測定不能となるという不具合を生じさせる。
【0013】
そこで、本発明は、上述のような問題点に鑑み、供給ローラーによって水分計の測定室内に穀粒を導入し、この測定室内に導入した穀粒の含水率を測定する際に、過多な穀粒の供給を防止して、その測定を適正に行うことができる、コンバインにおける穀粒の測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のコンバインにおける穀粒の測定装置は、上記課題を解決するため第1に、脱穀装置からグレンタンクに穀粒を移送する揚穀装置の穀粒放出経路に水分計の前面板から突出する供給ローラーを臨ませ、この供給ローラーのラセン上に落下した穀粒をその回転駆動に伴って、前記前面板に設ける供給口を通して水分計の測定室内に導入し、この測定室内に導入した穀粒の含水率を水分計によって求める測定装置にあって、前記穀粒放出経路に供給口近傍のラセン上への穀粒の落下を阻止する遮蔽板を設けて、供給ローラーのラセン上に落下してその溝に収容した穀粒が、その後に落下した穀粒と衝突して、この収容した穀粒、或いは落下した穀粒が前面板に設ける供給口を通って測定室内に不測に入ることを防止することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は第2に、前記水分計の供給ローラーの外周面が揚穀装置の穀粒放出経路を横断するように設けると共に、前記遮蔽板を供給ローラーのラセン上に落下してその溝に収容した穀粒より上手側の穀粒放出経路に設けることを特徴とする。
【0016】
そして、本発明は第3に、前記測定装置に設ける採取室に供給ローラーを設けると共に、その採取室の上方側を塞ぐ遮蔽カバーの内側に遮蔽板を垂下させてボルトで着脱自在に取り付け、その遮蔽カバーを遮蔽板と共に取り外すと採取室に設ける供給ローラーのメンテナンスを行うことができるように構成することを特徴とする。
【0017】
そのうえ、本発明は第4に、前記採取室の下方側を塞ぐ閉鎖板より下方に開口を設け、この開口を通して排出する含水率の測定を終えた穀粒、並びに閉鎖板を開いて落下する穀粒を排出筒を介して脱穀装置の選別室に還元することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコンバインにおける穀粒の測定装置によれば、脱穀装置からグレンタンクに穀粒を移送する揚穀装置の穀粒放出経路に水分計の供給ローラーを臨ませ、この供給ローラーのラセン上に落下した穀粒をその回転駆動に伴って供給口を通して測定室内に導入し、この測定室内に導入した穀粒の含水率を水分計によって求める測定装置にあって、係る測定装置には、供給ローラーのラセン上に落下してその溝に収容した穀粒が、その後に落下した穀粒と衝突して測定室内に不測に入ることを阻止する規制手段を設けるから、水分計の測定室内に過多な穀粒の供給を規制手段によって防止して、穀粒の含水率の測定を適正に行うことができる。
【0019】
また、前記規制手段を揚穀装置の穀粒放出経路に設ける遮蔽板によって構成し、この遮蔽板によって供給口近傍のラセン上への穀粒の落下を阻止すると、その後に落下した穀粒と衝突して測定室内に不測に入る可能性の高い供給口近傍の供給ローラーのラセン溝に収容された穀粒に対して、遮蔽板を設けることによって後からの穀粒の衝突を無くすことができ、それにより供給口への不測な穀粒の侵入を効果的に防止することができる。なお、遮蔽板は供給口近傍から離れたラセン上への穀粒の落下については関与しないから、そのラセン上へ落下した穀粒は供給ローラーの回転駆動に伴って供給口から測定室内に導入することができる。
【0020】
さらに、前記水分計の供給ローラーの外周面が揚穀装置の穀粒放出経路を横断するように設けると共に、前記遮蔽板を供給ローラーのラセン上に落下してその溝に収容した穀粒より上手側の穀粒放出経路に設けると、供給ローラーの外周面が揚穀装置の穀粒放出経路に沿うように設ける場合のように、放物線を描いて落下する穀粒が供給口に直接入ってしまったり、供給ローラーのラセン上を飛び跳ねて入ってしまう虞があるが、水分計の供給ローラーの外周面が揚穀装置の穀粒放出経路を横断するように設けるとこのような虞をなくし、不測に測定室内に穀粒が入ることを防止することができる。
【0021】
また、前記測定装置に設ける採取室に供給ローラーを設けると共に、その採取室の上方側を塞ぐ遮蔽カバーの内側に遮蔽板を垂下させてボルトで着脱自在に取り付け、その遮蔽カバーを遮蔽板と共に取り外すと採取室に設ける供給ローラーのメンテナンスを行うことができるように構成すると、遮蔽カバーを取り外して落下した穀粒と衝突して摩耗した遮蔽板を取り外して新しい遮蔽板に交換する作業が容易となる。
【0022】
また、遮蔽カバーを取り外して採取室に設ける供給ローラーのメンテナンスを行う際に、遮蔽板が遮蔽カバーと共に取り除かれるので遮蔽板に妨げられることなく、これ等のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、稲株を刈り取って籾米を収穫する場合等にあっては、ラセン溝に収容した穀粒のその後に落下した穀粒との衝突によっても測定室内に入ることが少なく、遮蔽板が不要となるが、このような場合でも遮蔽カバーを取り外して簡単に遮蔽板を取り外すことができる。
【0023】
さらに、前記測定装置に設ける採取室に供給ローラーを設けると共に、この採取室の下方側を塞ぐ閉鎖板を設け、この閉鎖板を閉じると採取室を穀粒を堆積させる貯留室となし、また、この貯留室に堆積する穀粒を撮影するカメラを設けると、水分計への試料となる穀粒の供給箇所とカメラの撮影対象とする穀粒を堆積させた箇所を採取室に纏めることができ、それにより穀粒の測定装置を安価に提供することができる。
【0024】
そして、前記採取室の閉鎖板より下方に開口を設け、この開口を通して排出する含水率の測定を終えた穀粒、並びに閉鎖板を開いて落下する穀粒を排出筒を介して脱穀装置の選別室に還元すると、測定に用いた穀粒を脱穀装置の選別室に戻して、さらに揚穀装置によって最終的にグレンタンクに貯留させることができ、収穫する穀粒のロスを減らすことができる。また、水分計が穀粒を圧砕して含水率を求めるものであれば、砕かれた穀粒を選別室に戻して切れ稈等と共に機外に排出することができ、例えば、グレンタンクに戻す場合のように、グレンタンクに長らく留まって内部を汚すことも無い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を適用する汎用コンバインの側面図である。
図2】汎用コンバインの平面図である。
図3】脱穀装置の内部構造を示す側面図である。
図4】測定装置のコンバインへの取付状態を示す前方斜め左側から見た斜視図である。
図5】測定装置のコンバインへの取付状態を示す前方斜め右側から見た斜視図である。
図6】測定装置のコンバインへの取付状態を示す側面図である。
図7】測定装置のコンバインへの取付状態を示す平面図である。
図8】測定装置のコンバインへの取付状態を示す横断面図である。
図9】穀粒の測定装置の平面図である。
図10】穀粒の測定装置の内部構造を示す背面図である。
図11】穀粒の測定装置の内部構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように稲や麦或いは大豆、そば、菜種等を刈取ってその穀粒(穀物)を収穫する汎用コンバインは、左右のクローラ式走行装置1と、走行装置1のトラックフレーム2の上方に設ける四角枠形状の機体フレーム3によって機体を構成し、この機体フレーム3に対して左右の走行装置1は、図示しない姿勢制御用の油圧シリンダによって昇降自在に取付ける。また、機体フレーム3の前進方向左側には作物の脱穀及び選別処理を行う脱穀装置4を設け、右側には運転席を備える操縦部5と穀粒を貯留するグレンタンク6を前後に設ける。
【0027】
さらに、脱穀装置4と操縦部5の前方には作物を刈取って脱穀装置4に搬送するヘッダ(刈取部)7を設ける。なお、操縦部5の下方からグレンタンク6の前方にかけてエンジン8、ラジエータ、エアクリーナ等で構成する原動部9を設け、この内、エンジン8は、クローラ式走行装置1、脱穀装置4、グレンタンク6、ヘッダ7等を駆動する動力源となる。また、脱穀装置4の後方には排稈等を切断して圃場に拡散するチョッパスプレッダ10を設け、さらに、グレンタンク6の後方には穀粒を機外に排出する穀粒排出オーガ11の縦ラセン12と排出ラセン13を設ける。
【0028】
ここで、各部の構造を説明すると、機体の前方側に設けるヘッダ7は、フィーダハウス14とオーガーフレーム15とリールフレーム16を一体的に連結して構成する。この内、オーガーフレーム15には、鋼鈑を湾曲させて形成するプラットホーム17を設け、このプラットホーム17上には、螺旋18aを有するドラム18bとドラム18bの外周に突出するフィンガー18cを備える左右方向に延びるプラットホームオーガ18を回転駆動可能に軸架する。また、オーガーフレーム15の前部には、左右のデバイダ19とレシプロ式の刈刃装置20を設ける。
【0029】
さらに、箱枠状に形成したフィーダハウス14内には、駆動軸21に取付けた後部の駆動スプロケット22と前部のドラム23間に左右の搬送チェン24を巻回すると共に、左右の搬送チェン24間に所定間隔を有して複数のスラット25を横架したフィーダ26を設ける。また、リールフレーム16には、掻込リール27を設けており、この掻込リール27はリールフレーム16の左右先端部に回転自在に軸支した駆動軸と、この駆動軸と一体回転する側面視多角形状(実施形態においては6角形状)の左右の回転支持体28とを備える。
【0030】
また、左右の回転支持体28の頂点部には、左右方向に伸延する複数のタイン取付杆29を回転自在に架設し、各タイン取付杆29には所定間隔毎にバネ式のタイン30を垂下状に取付ける。そして、上記回転支持体28の一方の横外側には、駆動軸の軸芯とは偏倚した軸芯廻りに回転する姿勢保持用回転体31を設け、姿勢保持用回転体31の各頂点に設けた枢支体32とタイン取付杆29の一側端とをリンクを介して連結することにより、タイン30が回転支持体28の回転にかかわらず常時下方を向くようにその姿勢を保持する。
【0031】
なお、リールフレーム16は、オーガーフレーム15の上部に回動自在に枢支した左右の揺動アーム33の先端に後部を回動自在に枢支し、フィーダハウス14に一端を取付けた前後移動用の電動油圧シリンダ34を伸縮作動させることによって、掻込リール27を揺動アーム33を介してオーガーフレーム15に対して前後に位置調節することができる。また、リールフレーム16の中ほどとオーガーフレーム15との間には、昇降用の油圧シリンダ35を設け、この油圧シリンダ35を伸縮作動させることによって、掻込リール27をオーガーフレーム15に対して上下に高さ調節することができる。
【0032】
そして、以上のように構成するヘッダ7は、機体フレーム3の前部に立設した脱穀装置4の前部フレームにホルダを介して回動自在に支承すると共に、フィーダハウス14と機体フレーム3との間に設けた昇降用油圧シリンダ36の伸縮作動によって、ヘッダ7の前部側を下降させた状態と上昇させた状態に姿勢変更することができる。なお、フィーダ26の駆動軸21は、上記ヘッダ部7の回動中心と同芯上に設けてあり、ヘッダ部7の掻込リール27、刈刃装置20、プラットホームオーガ18、及びフィーダ26は、エンジン動力によって駆動する。
【0033】
従って、ヘッダ7を下降させた状態として機体を走行させると、圃場の植立穀稈(作物)が左右のデバイダ19によって刈取対象と非刈取対象とに分草され、その内、刈取対象の植立穀稈が掻込リール27によってプラットホーム17内に掻き込まれながら刈刃装置20で刈取られる。また、プラットホーム17内に掻き込まれた穀稈は、プラットホームオーガ18によってフィーダハウス14の前方に横送りされ、さらに、フィーダハウス14の前方に横送りされた穀稈は、フィーダ26によってフィーダハウス14に掻き上げられて、搬送チェン24に取付けたスラット25に係止されながらフィーダハウス14の下部を通過して、刈取られた穀稈の全体が脱穀装置4に投入される。
【0034】
なお、ヘッダ7には、リールフレーム16の前端に前照灯37を取付けると共に、方向指示器38とバックミラー39をオーガーフレーム15から立設したステー40に取付ける。また、41はプラットホーム17の側方を覆うカバー、42は掻込リール27の伝動部を覆うカバーである。さらに、フィーダハウス14の後部側の側方には、機体フレーム3からメンテナンス用のハシゴ43を立設する。
【0035】
次に、脱穀装置4について説明すると、脱穀装置4はヒンジを介して上方に開閉自在なロータカバー44と、側方に開閉自在なロータサイドカバー45と、着脱自在な脱穀カバー(前カバー46、後カバー47)によって上方及び左側方を覆い、後方にはチョッパスプレッダ10を連設する。また、脱穀装置4はフィーダ26によって搬送されてきた穀稈が投入される扱室48と、扱室48の下方に形成する選別室49とを備える。この内、扱室48内には機体の前後方向軸心周りに回転する扱胴50を軸架する。
【0036】
この扱胴50は、その前部が円錐状で後部が円筒状に形成したロータ51と、ロータ51の外周に取付けた螺旋状になしたスクリュー52と、スクリュー52の外周に所定ピッチで取付けた複数の超硬扱歯53と、ロータ51の終端部外周に取付けた送塵体54を備える。また、扱胴50の下方には、フィーダ26によって搬送されてきた穀稈を受け入れる入口受板に引き続いて、扱胴50の下部周辺を覆うように円弧状の受網55を周設する。そして、扱室48に投入された穀稈は、スクリュー52とロータカバー44に枢着した送塵弁によって機体後方側に揉み解しながら搬送し、また、スクリュー52と超硬扱歯53によってロータ51の外周上を周回する間に受網に擦り付けて脱粒処理を行う。
【0037】
一方、扱室48の下方に形成する選別室49には揺動選別体56を設け、この揺動選別体56は、その前後をリンクと駆動リンク等で構成する揺動機構によって前後揺動自在に支持し、揺動選別体56が前後に揺動することで処理物を篩選別する。また、揺動選別体56の下方には、揺動選別体56に向かう選別風を発生させる唐箕ファン57とターボファン58を設け、これらのファン57、58によって生成された選別風によって処理物を揺動選別体56において風選する。そして、網からなるグレンシーブ59を漏下した穀粒は、一番流板に流下案内させて一番物として一番螺旋60上に落下させる。また、二番物は二番流板に流下案内させて二番螺旋61上に落下させる。
【0038】
さらに、揺動選別体56の終端まで移送した切れ稈等の塵埃は、扱室48の受網の後端部まで搬送した排稈等と共に後部の排出口からチョッパスプレッダ10に受け渡して、チョッパスプレッダ10はこれらをナイフによって細断して圃場に拡散する。また、一番螺旋60によって横送りした穀粒は、バケットコンベア62とその上部に設ける横螺旋63によってグレンタンク6内に移送すると共に、二番螺旋61によって横送りした二番物は、二番還元装置を構成するスラットコンベア64と還元横螺旋65によって扱室48の前部に還元して再度脱粒処理を行うか、又は還元横螺旋筒の中途に設けた蓋を開いて、二番物を揺動選別体56上に再び落下させて再選別処理を行う。
【0039】
次に、前述の脱穀装置4によって脱粒させた穀粒を上部に設ける供給口から取込んで満杯になると下部に横設する横ラセンを駆動して機外に排出するグレンタンク6は、原動部9後方の機体フレーム3に設ける。そして、グレンタンク6は、鋼鈑によって形成する平板を結合して前壁と後壁と右側壁と左側壁と天井壁で略直方体状に形成する上部側の貯留部6aと、この貯留部6aの下方にあって前壁と後壁と左右の傾斜する側壁で略倒三角柱状(漏斗状)に形成する下部側の樋部を設ける箱状のタンクに構成する。
【0040】
また、グレンタンク6は図7に示すように、その貯留部6aの左側壁の上部寄りに前述の横螺旋63を嵌挿する開口を設けて穀粒の供給口6bを構成し、横螺旋63が回転駆動されるとその終端に設ける掻出板は、脱穀装置4によって脱粒させた穀粒をタンク6の前部上方から後方に向けて放出する。また、タンク6の樋部の底部に前後方向となる横ラセンをグレンタンク6の左右方向の中心から外方側に所定量ずらして横設し、この横ラセンをエンジン8の動力によって回転駆動すると、タンク6内に貯留する穀粒を縦ラセン12と排出ラセン13を介して排出ラセン13の先端に設ける放出口13aから機外に排出することができる。
【0041】
以上、汎用コンバインの各部の概略構造について説明したが、次に本発明の特徴とする穀粒の測定装置について説明すると、図4乃至図8に示すように脱穀装置4からグレンタンク6に穀粒を移送する揚穀装置を構成するバケットコンベア62は、特に図6に示すように搬送チェーン62aに取り付けた多数のバケット62bを内装する箱状のケース62cを脱穀装置4の右側に立設し、このケース62cの上部寄りの前面には横螺旋63を内装するケース63aを取付けて設ける。そして、穀粒の測定装置66は、この横螺旋ケース63aの前面にその測定ケース67を取付けて設ける。
【0042】
また、係る測定ケース67は、特に図8に示すようにそのケース内部に略直方体状の採取室68を設け、この採取室68の下部は穀粒の貯留室69としての役割を担う。また、採取室68の右側には機器室70を設け、この機器室70内にはカメラ71を設ける。さらに、採取室68の左側には水分計72を取付けて設ける。なお、測定ケース67の前面にはギヤードモータ73を取付ける。
【0043】
そして、このように構成する穀粒の測定装置66は、特に図4及び図5に示すようにグレンタンク6の上部寄りの左側で脱穀装置4の右側寄りの上方の空きスペースを利用して設けることができ、必要に応じて汎用コンバインに後付けすることができる。なお、測定装置66の前方にはステー74を介して排出ラセン13を格納位置に保持するオーガレスト75を設ける。
【0044】
さらに、測定装置66の詳細について説明すると図6に示すように、前述のバケットコンベア62は、脱穀装置4の一番螺旋60によって横送りした穀粒をバケット62bによって掬い取って上部の従動スプロケットの軸心を中心に回動する際に穀粒を前方に向かって放出する。そのため、放出された穀粒は放物線を描いてバケットコンベア62のケース62cの前面側に設ける開口から前方に設ける横螺旋ケース63aの底板63b上に落下してその中央に形成する樋部63cに集められ、そして、横螺旋63によって横送りされてグレンタンク6内に放出される。
【0045】
一方、図11に示すように横螺旋ケース63aの前板63dの上部には開口63eを設け、また、測定ケース67の採取室68を形成する天板67aに開口67bを設ける。そのため、前述のバケット62bから放出された穀粒の一部はこれ等の開口63e、開口67bを通って採取室68内を落下する。なお、バケットコンベア62のケース62c及び横螺旋ケース63aの上方側は天板62dによって塞ぎ、また、採取室68の上方側は測定ケース67に着脱自在に取り付ける遮蔽カバー76によって塞いでいる。
【0046】
さらに、採取室68を形成する左側板67cの上部寄りに矩形状の穴67dを設け、この穴67dに水分計72の本体から突出させて設ける供給ローラー77、77を通して、水分計72の本体を左側板67cの外側面に密着させて取り付ける。そのため、水分計72の本体から突出させて設ける供給ローラー77、77は、その長手方向(ローラー軸77aの軸心方向)が左右方向を向いて、左側板67cと右側板67eで囲まれる採取室68内に水平に設けることになる。
【0047】
また、この供給ローラー77、77の配置形態をバケットコンベア62から放出されて後方から前方に放物線を描いて落下する穀粒の放出経路Rからみると、供給ローラー77、77の外周面がこの穀粒放出経路Rを横断するように設け、その結果、供給ローラー77の後方側となる外周面に穀粒が当たるとそれ以上の前方側への落下が阻止されて、供給ローラー77の直下、又は後方に向けて弾かれてそのまま穀粒が下方に向けて落下するように設ける。
【0048】
そして、係る供給ローラー77、77の下方となる採取室68には、その採取室68の下方側を塞ぐ閉鎖板78を設け、この閉鎖板78によって塞がれた上方が穀粒の貯留室69となる。より詳細に説明すると、図8及び図11に示すように測定ケース67の前板67fに取り付けたギヤードモータ73の出力軸に閉鎖板78の右端部に設ける連結部78aを取り付けて、この閉鎖板78を右側板67eの開口から採取室68内に位置するように設ける。
【0049】
また、前板67fにストッパピン79、80を採取室68内に臨むように取り付け、閉鎖板78が上方側のストッパピン79に当たるまでギヤードモータ73を正回転駆動させると、採取室68の下方が閉鎖板78によって塞がれ、逆に閉鎖板78が下方側のストッパピン80に当たるまでギヤードモータ73を逆回転駆動させると、採取室68の下方が解放されるように構成する。そのため、採取室68の下方が閉鎖板78によって塞がれると、バケットコンベア62から放出されて採取室68内を落下する穀粒は、貯留室69に溜まって閉鎖板78上に堆積することになり、また、採取室68の下方が解放されると、貯留室69に溜まった穀粒は下方に落下し、バケットコンベア62から放出されて採取室68内を落下する穀粒もそのまま下方に落下する。
【0050】
そして、採取室68(貯留室69)から落下する穀粒と、水分計72から測定を終えて左側板67cの下端寄りに設ける開口aを通して排出された穀粒は、脱穀装置4の開口bに差し込む排出筒cを介して還元横螺旋65と扱室48の受網の右側を通って選別室49に戻され、再び選別が行われる。
【0051】
そのため、測定に用いた穀粒は全て脱穀装置4の選別室49に戻して再選別を行い、更にバケットコンベア62によって最終的にグレンタンク6に貯留させることができ、収穫する穀粒のロスを減らすことができる。また、水分計72が穀粒を圧砕して含水率を求めるものであれば、砕かれた穀粒を選別室49に戻して切れ稈等と共に機外に排出することができ、例えば、グレンタンク6に砕粒を戻す場合のように、グレンタンク6に長らく留まって内部を汚すことも無い。
【0052】
一方、前述のように採取室68(貯留室69)の右側には機器室70を設け、この機器室70内にはカメラ71を設ける。また、採取室68と機器室70を仕切る右側板67eに設ける穴をガラス板81によって塞ぐ。そのため、貯留室69に溜まって堆積した穀粒は、カメラ71によってガラス板81越しに撮影することができる。なお、図11に示すように後板67gには近接センサ82を設けて、貯留室69に穀粒が満杯レベルに堆積したことを検出すると、前述の閉鎖板78を開いて貯留室69に溜まった穀粒を下方に落下させるようにギヤードモータ73を制御する。
【0053】
なお、カメラ71で堆積した穀粒を撮影する際に貯留室69内が暗ければ、右側板67eに撮影用のLEDライト等を設けて貯留室69の堆積した穀粒を照らして撮影してもよい。また、その際、穀物に合わせて発光色や明るさを選択調整することができるようにすると鮮明なカラー又はモノクロ映像をモニタ等に届けることができる。
【0054】
以上、穀粒の測定装置66の構造について説明したが、次に水分計72の本体への試料となる穀粒の供給について詳細に説明すると、図9及び図11に示すように左側板67cの外側面に密着させて取り付ける水分計72の前面板72aには、前後方向に離して2つの供給ローラー77、77の回転軸部77a、77aを夫々通す2つの穴72b、72bと、両穴72b、72bの中間となる上方寄りに設ける1つの穴72cを設ける。
【0055】
そして、この2つの穴72b、72bに供給ローラー77、77の回転軸部77a、77aを夫々通して水分計72の本体に回転自在に軸支する。また、2つの供給ローラー77、77は水分計72に設ける図示しない電動モータを駆動すると歯車機構によって互いに逆方向に回転するように構成する。さらに、残る1つの穴72cは供給ローラー77、77の回転駆動に伴って穀粒を水分計72の測定室内に導入する供給口72cとなし、ここで水分計72の測定室は前面板72aの奥側に形成し、前面板72aは測定室を形成する部材としても利用する。
【0056】
また、供給ローラー77、77には、その正逆回転に伴って穀粒を供給口72cに向けて送ったり、穀粒を逆に供給口72cから離すように送るラセンを施している。また、向かい合う互いの供給ローラ77、77は一方のラセン溝77bに他方のラセン山77cが入り込むように、その外周を一部ラップさせて設ける。そのため、供給ローラー77、77上に落下して一方のラセン溝77b内に収容された穀粒gが、そのラセン溝77bに案内されて供給ローラー77から滑落しようとしても、穀粒が他方のラセン山77cに当たってその滑落が阻止される。
【0057】
従って、上述の滑落が阻止された穀粒gが両供給ローラー77、77のラセン溝77b内に互い違いに整列して収容され、一方、ラセン溝77bに入ったとしても他方のラセン山77cによって滑落が阻止されなかった穀粒、或いはラセン山77c上に落下して弾んだ穀粒は供給ローラー77、77から排除されて下方に落下する。なお、ラセン溝77bに整列して収容された穀粒g上に落下した穀粒等は、その場に留まろうとするが供給ローラー77、77の回転に伴って振るい落されたり、後から落下してきた穀粒と衝突した弾みで落とされることになって、例えば供給ローラー77、77が測定のために1回転すると、大豆等の粒径が大きい穀粒であれば2粒から3、4粒ずつ供給口72cを通って測定室内に適正な量を供給することができる。
【0058】
なお、水分計72を用いて穀粒の含水率を表示する場合、測定室に供給された多数の穀粒を個々に測定した平均値を表示し、また、このような表示を1回当たりの測定の度に行うことになる。或いは、水分計の種類によっては測定室に供給された多数の穀粒を一時に測定した値を表示する。そして、その場合の測定して表示する周期は所定の時間を空けたり、又は所定の刈取走行距離毎であったりと定期的に行う場合と、オペレータの測定指示に基づいて不定期に行う場合がある。
【0059】
また、その場合に水分計72は、先ず供給ローラー77、77を10数回転だけ逆回転駆動させて、供給ローラー77、77上の穀粒をローラー先端から落下させる。そして、供給ローラー77、77上に最新の穀粒が溜まるのを待つか、或いは逆回転駆動の直後から供給ローラー77、77を正回転駆動させて、測定室内に穀粒を平均に必要な量だけ供給し、その後、次の測定まで供給ローラー77、77の回転駆動を停止させる。
【0060】
ところで、水分計72の穀粒を取り入れる供給口72cの大きさは、対向させて設ける両供給ローラー77、77のラセン溝77bに収容した穀粒が通過する幅と、収容された穀粒の上に乗る穀粒が通過する高さを必要とする。また、測定対象とする穀物の粒径は穀物の種類、品種、栽培環境等によって左右され、例えば穀物の中でも粒径が大きい大豆を例にとると、その大粒、中粒、小粒、極小粒の区分におけるふるい目の直径は8.5から4.9ミリメートルと2倍弱の差異がある。そこで、汎用性を考慮して穀物の種類等に関わらずその含水率を得ることができるように供給口72cの径を、最大の粒径をもつ穀粒であっても漏れなく通過させることができる大きなものとする。
【0061】
しかし、このように供給口72cを大きくすると、供給ローラー77、77のラセン溝77bに既に収容された穀粒上に後から落下した穀粒が衝突して、その弾みで収容された穀粒、或いは後から落下した穀粒等が不測に供給口72cに入り込んでしまうという虞がある。そこで、供給口72cへの不測な穀粒の侵入を防止する規制手段を設ける。
【0062】
そして、この規制手段として実施形態にあっては、バケットコンベア62から放出されて後方から前方に放物線を描いて落下する穀粒の放出経路Rの上手側に遮蔽板83を設け、この遮蔽板83によって供給口72c近傍のラセン(供給ローラー77、77)上への穀粒の落下を阻止し、供給口72c近傍の供給ローラー77、77のラセン溝77bに収容された穀粒等に対して後からの穀粒の衝突を無くして、供給口72cへの不測な穀粒の侵入を防止する。
【0063】
より詳細に説明すると、前述の測定ケース67に着脱自在に取り付けて採取室68の上方側を塞ぐ遮蔽カバー76の内側に遮蔽板83を垂下させてボルトで着脱自在に取り付ける。そして、この遮蔽板83は、穀粒の放出経路Rを横断するように設ける供給ローラー77、77と同様に、その板面が供給ローラー77、77のラセン上に落下してその溝77bに収容した穀粒より上手側の放出経路Rを横断するように設け、後方より前方に向かって落下した穀粒が遮蔽板83の後面に当たると、それ以上の前方への落下を無くして供給口近傍の供給ローラー77、77のラセン溝77bに収容された穀粒上に落下しないようにする。
【0064】
より具体的には、図9乃至図11に示すように、遮蔽板83を後方側の供給ローラー77の真上から垂下させて、その板面の下端が供給ローラー77の軸心に沿い、且つ供給ローラー77とその下端との間の隙間から穀粒が前方に通り抜けることがないように供給ローラー77に接近させて設ける。また、遮蔽板83の左右となる幅は、供給ローラー77の左右となる長さの1/2から1/3程度となし、この遮蔽板83を供給口72cを設ける左側に寄せて設ける。
【0065】
従って、供給口72cを通って測定室内に不測に入る可能性の高い供給口72c近傍の供給ローラー77のラセン溝77bに収容された穀粒に対して、遮蔽板83を設けることによって後からの穀粒の衝突を無くすことができ、それによりラセン溝77bに収容された穀粒の供給口72cへの不測な侵入を効果的に防止することができる。
【0066】
なお、遮蔽板83は供給口72c近傍から離れたラセン上への穀粒の落下については関与しないから、そのラセン上へ落下した穀粒は、遮蔽板83を設けない場合と同様に供給ローラー77の正回転駆動に伴って供給口72cから測定室内に導入することができる。また、その際に測定室内に導入される穀粒は、供給口72cに至るまでに余分な穀粒が前方側の供給ローラー77から振るい落とされ、ラセン溝77bに穀粒が整列した状態で測定室内に過不足なく供給することができる。
【0067】
さらに、ラセン溝77bに収容した穀粒が後から落下した穀粒に押されて供給口72cに不測に入り込む要因としては、供給ローラー77のラセン溝77bは存在するが送り方向側のラセン山77cが途絶えて存在しなくなったラセン終端部における約180度の角度内に送られた穀粒が、後から落下した穀粒との衝突によって供給口72c側に押されて、ラセン山77cのない小径の回転軸部77aから供給口72cに入る、或いは後から落下した穀粒との衝突によって跳ね上がってラセン山77cを越えて供給口72cに入る場合が考えられる。
【0068】
そのため、殻で覆われた籾のように互いの衝突によって跳ねることが少ない穀粒の場合は、遮蔽板83を取り外したり、或いは幅の狭い遮蔽板83に交換して測定室内に多少多く穀粒を供給するようにしてもよい。また、遮蔽板83が穀粒との衝突によって摩耗した際には取り外して新しい遮蔽板83に交換する。そして、そのような場合に遮蔽板83は遮蔽カバー76にボルトで着脱自在に取り付けているから、遮蔽カバー76をノブ付きボルトを取り外して測定ケース67から取り外してそれらの作業を容易に行うことができる。
【0069】
また、遮蔽カバー76をノブ付きボルトを取り外して測定ケース67から取り外し、上部の開口67bを通して供給ローラー77やガラス板81等に付着した塵埃等を取り除いたり点検する際に、遮蔽板83が遮蔽カバー76と共に取り除かれているので遮蔽板83に妨げられることなく、これ等のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、図10及び図11に一点鎖線で示すように遮蔽板83の非作用面にコ字状の補強プレート83aを固着して設けると、穀粒との衝突による遮蔽板83の変形を防止することができ、また、コ字状になすことによって遮蔽板83と補強プレート83aの間の隙間を無くして穀粒が溜まることを防止し、遮蔽板83のメンテナンス性を向上させることができる。
【0070】
なお、前述のように供給ローラー77、77の外周面は、穀粒放出経路Rを横断するように設けるが、例えば水分計72を前板67fに取り付けて供給ローラー77、77を採取室68に前方から後方に向けて突出させて設け、供給ローラー77、77の外周面がバケットコンベア62から放出されて後方から前方に放物線を描いて落下する穀粒の放出経路Rに沿うように設けることもできる。しかし、このように供給ローラー77、77を配置すると、後方から前方に放物線を描いて落下する穀粒が供給口72cに直接入ってしまったり、供給ローラー77、77のラセン上を飛び跳ねて入ってしまう虞が多分にある。
【0071】
また、このように配置する供給ローラー77、77に遮蔽板83を設ける場合、遮蔽板83は供給ローラー77、77の上方に供給口72cを覆うように設けることになるが、供給ローラー77、77によって供給口72cに向けて送る穀粒の移動を妨げないように遮蔽板83の下端を供給ローラー77、77から離して設ける必要があり、この隙間を通って供給口72cに穀粒が不測に入る虞があり、このような点でその虞のない前述の形態で供給ローラー77、77を配置することが好ましい。
【0072】
そして、以上のように構成する穀粒の測定装置66を汎用コンバインに取り付けて刈取作業を行う場合、脱穀装置4からグレンタンク6に移送する一部の穀粒を採取室68内に落下させて、供給ローラー77上に落下した穀粒を試料として水分計72に供給する。また、水分計72は供給された穀粒を測定室内において例えば、電極と兼用された一対の回転ローラに挟んで押し潰した状態でその電極間の電気抵抗を次々と測定する。さらに、この測定した電気抵抗と測定室内に設けるサーミスタの電気抵抗から検量線を用いて温度補正を行った多数の穀粒の平均した含水率、並びに標準偏差等を得ることができる。
【0073】
なお、穀粒の含水率を得る方法として上述のような電気抵抗式水分計が知られている他、試料の誘電率(高周波容量)と質量と温度を測る高周波容量式水分計や、試料の質量を測って乾燥させ再び質量を測る赤外線水分計、或いは試料に近赤外線を照射して吸収率の変化から試料を非破壊で測る近赤外成分分析計が知られている。従って、水分計としてこれ等の水分計を選択して用いることができ、水分計の形態は特に問わない。そして、このように測定して得られた穀粒の含水率等は、操縦部5に設ける液晶表示装置で構成するモニタに表示し、刈取適期の判断を行ったり、収穫した穀粒の後処理としての乾燥方法や乾燥機の選定の判断に役立てることができる。
【0074】
また、一方、貯留室69に堆積した穀粒の状態をカメラ71で撮影した映像を、同じく操縦部5に設けるモニタに表示し、収穫した穀粒の粒形、しわ粒、烈皮粒、腐敗粒、砕粒、被害粒の有無、青立の刈り取りによる茎汁の付着や刈り高さ不適合による泥の付着による汚粒の有無等から青立の事前の除去を行ったり、刈高さ等の変更、或いは収穫後の穀粒のクリーニングや色彩選別の要否等の判断に役立てることができる。さらに、取得したこれ等のデータを無線通信システムを利用して管理センター等に送信し、今後の情報としてサーバーに蓄えさせたり、即座に画像処理して烈皮粒や汚粒の割合等を自動的に数値化して返信させることもできる。
【0075】
なお、以上説明した実施形態では、供給ローラー77を対向させて前後2つ設けるが、例えば前方側の供給ローラー77を小径な丸棒に替えて、後方側の供給ローラー77のラセンによる送り作用によってのみ穀粒を水分計に供給し、丸棒はその際の供給ローラー77によって送る穀粒の落下を防ぐものとしてもよい。また、供給口72cへの不測な穀粒の侵入を防止する規制手段として供給口72cの前面にカメラのシャッターの如き開閉体を備え、供給ローラー77の正回転駆動時のみ開閉体を開くように構成してもよい。
【0076】
さらに、穀粒の測定装置66を横螺旋63によって穀粒をグレンタンク6に放出する穀粒放出経路に設けてもよく、また、籾米や麦の穀粒を収穫する自脱コンバインに、実施形態の穀粒測定装置を設けて、籾米や麦の含水率等を測定してもよく、本発明のコンバインの穀粒測定装置は、前記実施形態に必ずしも限定するものではない。
【符号の説明】
【0077】
4 脱穀装置
6 グレンタンク
62 バケットコンベア(揚穀装置)
66 穀粒測定装置
72 水分計
72c 供給口
77 供給ローラー
77b ラセン溝
77c ラセン山
83 遮蔽板(規制手段)
R 穀粒放出経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11