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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/147 20180101AFI20240925BHJP
   F25C 1/12 20060101ALI20240925BHJP
   F25C 1/25 20180101ALI20240925BHJP
【FI】
F25C1/147 K
F25C1/147 N
F25C1/12 301Z
F25C1/25 D
F25C1/25 303A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020216476
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022007930
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020001442
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020144708
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嘉戸 修治
(72)【発明者】
【氏名】水谷 保起
(72)【発明者】
【氏名】山岡 清史
(72)【発明者】
【氏名】荒井 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】田代 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大谷 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】芝田 悠月
(72)【発明者】
【氏名】中田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹也
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219095(JP,A)
【文献】特開2012-180954(JP,A)
【文献】特開平09-079716(JP,A)
【文献】特開2018-146203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370628(US,A1)
【文献】実開昭61-093769(JP,U)
【文献】実開昭63-134364(JP,U)
【文献】特開2000-205718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00 ~ 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を凍結させることで氷を生成する製氷部と、
前記製氷部へと向かう水が流れる流水経路に設けられ、紫外線を照射することで前記流水経路に流れる水を殺菌するUV殺菌装置と、
前記製氷部に供給するための水を貯めることが可能なタンクと、
前記タンクと前記製氷部とを接続し、前記タンクの水を前記製氷部に供給するための供給路と、
前記供給路とは別に設けられ、前記タンクと前記製氷部とを接続し、前記製氷部の水を前記タンクに回収するための回収路と、
を備え、
前記UV殺菌装置は、前記流水経路において、水の流れが他の箇所に比較して緩やかになる箇所に紫外線を照射するように構成され
前記流水経路は、前記タンク、前記供給路および前記回収路を利用して前記製氷部の水を循環可能な構成とされ、当該製氷機内において水を循環させつつ前記UV殺菌装置によって殺菌を行うように構成され、
前記製氷部は、前記タンクから前記供給路を介して供給された水を貯留する貯水部を有し、前記貯水部に貯められた水を凍らせつつ氷を生成する構成とされ、
当該製氷機は、前記回収路に配されて前記貯水部内の水を前記タンクに送るポンプ装置を備え、前記ポンプ装置の作動によって、前記貯水部内の水を前記タンクに回収するように構成された製氷機。
【請求項2】
前記製氷部に供給するための水を貯めることが可能なタンクを備え、
前記タンクは、水を貯める部分であるタンク本体部と、前記タンク本体部の上方に配されて水を注水させるための注水口と、前記タンク本体部と前記注水口との間に配されて前記注水口から注水される水を自身の上面において受けて前記タンク本体部に流入させる受水部と、を有し、
前記UV殺菌装置は、前記タンク内の少なくとも前記受水部を照射するように構成された請求項1に記載の製氷機。
【請求項3】
前記受水部は、前記タンク本体部の上端から外側に張り出すように形成され、前記上面が前記タンク本体部に向かって下降する傾斜状とされた請求項2に記載の製氷機。
【請求項4】
前記タンクは、上部を覆う蓋部を有し、
前記UV殺菌装置は、前記蓋部の中央に固定された請求項2または請求項3に記載の製氷機。
【請求項5】
前記タンクに貯められた水の上方に配され、前記タンクに貯められた水の水面に向かって超音波を照射することで、前記水面までの距離を測定可能な距離センサを備えた請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の製氷機。
【請求項6】
前記UV殺菌装置は、波長が207nmから285nmの範囲内の紫外線を照射する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の製氷機。
【請求項7】
水を凍結させることで氷を生成する製氷部と、
前記製氷部へと向かう水が流れる流水経路に設けられ、紫外線を照射することで前記流水経路に流れる水を殺菌するUV殺菌装置と、
前記製氷部に供給するための水を貯めることが可能なタンクと、
前記タンクと前記製氷部とを接続し、前記タンクの水を前記製氷部に供給するための供給路と、
前記供給路とは別に設けられ、前記タンクと前記製氷部とを接続し、前記製氷部の水を前記タンクに回収するための回収路と、
を備え、
前記UV殺菌装置は、前記流水経路において、水の流れが他の箇所に比較して緩やかになる箇所に紫外線を照射するように構成され、
前記流水経路は、前記タンク、前記供給路、前記回収路、および前記製氷部を経路上に含む循環可能な構成とされており、
前記流水経路において水を循環するためのポンプ装置と、
前記流水経路における所定箇所の水位の検出結果に基づき、前記ポンプ装置の異常を判定する制御部と、
使用者に対して前記異常を報知するための報知部と、
前記タンク内の水の水位を検出する水位センサと、
前記タンク内への水の供給を調整可能な給水バルブと、
前記タンク内の水の排水を調整可能な排水バルブと、をさらに備え、
前記水位センサは、前記タンク内の水位に合わせて浮力で変位する浮き子を備え、前記タンクの水位が所定の閾値以上か否かによって異なる信号を検出するフロートスイッチであり、
前記制御部は、前記水位センサの検出結果に基づき、前記ポンプ装置の異常を判定するものとされ、
前記制御部は、前記ポンプ装置の作動前における前記水位センサの検出信号と、前記ポンプ装置の作動後における前記水位センサの検出信号とが異なる場合に、前記ポンプ装置は正常と判定し、
前記制御部は、前記ポンプ装置の作動前において、
前記水位センサが第1検出信号を検出するように、前記給水バルブまたは前記排水バルブの少なくとも一方を制御して前記タンク内の水の水位を調整した後、前記水位センサが前記第1検出信号とは異なる第2検出信号を検出するようになるまで、前記給水バルブまたは前記排水バルブの少なくとも一方を制御して前記タンク内の水の水位を調整する製氷機。
【請求項8】
前記制御部は、前記ポンプ装置の作動前において、前記水位センサが前記第2検出信号を検出するように前記タンク内の水の水位を調整する際に、前記給水バルブまたは前記排水バルブの少なくとも一方を断続的に開閉させる請求項7に記載の製氷機。
【請求項9】
前記製氷部は、
前記タンクから前記供給路を介して供給された水を貯留する貯水部を構成し、氷が付着する内面を有するシリンダと、
前記シリンダの内部に回転可能に配され、前記内面に付着された氷を削り取る削氷刃を有するオーガと、を有する請求項7または請求項8に記載の製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、蒸発器プレートを有する蒸発器と、氷を形成するために分配器水を前記蒸発器プレートに分配する分配器と、前記分配器水および水源からの源水を受け取る水溜めと、前記水溜めから前記分配器へ水を配向するポンプと、を備えた製氷機が記載されており、この製氷機は、前記水溜め,前記分配器および前記蒸発器プレートを含む食物ゾーンに微生物が入り込むのを防止するために、膜濾過,銀イオン,抗菌剤,オゾンおよびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される微生物制御部を備えることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-6376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の製氷機は、微生物の侵入に対処するものである。しかしながら、上記特許文献1に記載の製氷機を用いても、微生物の侵入を防止することができるとは言い難い。つまり、製氷機においては、製氷機内における殺菌も必要不可欠であり、特に、氷を生成するために使用される製氷水の殺菌を行うことで、生成される氷の安全性を高めると考えられる。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、製氷水の殺菌を効率的にかつ確実に行うことが可能な製氷機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の製氷機は、
水を凍結させることで氷を生成する製氷部と、
前記製氷部へと向かう水が流れる流水経路に設けられ、紫外線を照射することで前記流水経路に流れる水を殺菌するUV殺菌装置と、
を備え、
前記UV殺菌装置は、前記流水経路において、水の流れが他の箇所に比較して緩やかになる箇所に紫外線を照射するように構成されたことを特徴とする。
【0007】
この構成の製氷機は、UV殺菌装置によって製氷に使用される水の殺菌を行うことが可能とされている。そして、このUV殺菌装置は、水の流れが緩やかな箇所に紫外線を照射することで、他の箇所に比較して遅い流速で流れる水に対して殺菌を行うことができるため、この構成の製氷機によれば、効率的に製氷水の殺菌を行うことが可能である。この構成の製氷機は、少なくとも製氷部に対して製氷水を供給する型式のもの、つまり、流下式、オーガ式、セル式、ドラム式、貯水式等、種々の型式の製氷機に採用することができる。なお、この構成における「流水経路」は、製氷部に接続されてその製氷部に水を供給する供給路に限定されず、例えば、製氷部に供給された水のうち凍結しなかった水をタンク等に回収するような構成の製氷機、つまり、製氷水を循環させる型式の製氷機(セル式や流下式等)において、水を回収するための流路も含まれる。したがって、この構成の製氷機は、水を循環させる必要がない型式の製氷機に採用することも、製氷水を循環させる型式の製氷機に採用することも可能である。特に、セル式や流下式の製氷機のように、水を循環させる必要がある型式の製氷機においては、製氷水の殺菌が有効であるため、効率的に殺菌を行うことが可能な本構成の製氷機が好適である。
【0008】
上記構成において、前記製氷部に供給するための水を貯めることが可能なタンクと、前記タンクと前記製氷部とを接続し、前記タンクの水を前記製氷部に供給するための供給路と、前記供給路とは別に設けられ、前記タンクと前記製氷部とを接続し、前記製氷部の水を前記タンクに回収するための回収路と、を備え、前記流水経路が、前記タンク、前記供給路および前記回収路を利用して前記製氷部の水を循環可能な構成とされ、当該製氷機内において水を循環させつつ前記UV殺菌装置によって殺菌を行うように構成することができる。
【0009】
この構成の製氷機は、製氷に使用される水を循環させながら殺菌を行うため、製氷水をより確実に殺菌することができ、安全性の高い氷を生成することが可能となる。
【0010】
また、上記構成において、前記製氷部は、前記タンクから前記供給路を介して供給された水を貯留する貯水部を有し、前記貯水部に貯められた水を凍らせつつ氷を生成する構成とされ、当該製氷機は、前記回収路に配されて前記貯水部内の水を前記タンクに送るポンプ装置を備え、前記ポンプ装置の作動によって、前記貯水部内の水を前記タンクに回収するように構成することができる。
【0011】
この構成の製氷機は、水を貯めた状態で製氷を行う構成のもの、例えば、オーガ式、ドラム式、貯水式の製氷機等において、貯水部の水を循環可能に構成されている。一般的に、オーガ式、ドラム式、貯水式の製氷機は、水を循環させる必要がなく、製氷を停止して、再度製氷運転を開始する際には、貯水部に溜まっていた水を排出するような構成とされていた。それに対して、この構成の製氷機は、貯水部を有する製氷機において貯水部の水を循環可能な構成とされており、貯水部の洗浄を行うことができ、製氷水を無駄にせずに済む。さらに、この構成の製氷機は、例えば、製氷運転の開始前に、水を循環させつつUV殺菌装置によって殺菌することができるため、安全性の高い氷を生成することができる。
【0012】
また、上記構成において、前記製氷部は、流下する水を凍結させて氷を生成する製氷板を有し、前記タンクは、前記製氷板の下方に配されて前記製氷部に供給された水のうち凍結しなかった水を回収可能とされ、当該製氷機は、前記製氷板と前記タンクとの間に配されて前記回収路の一部を構成し、水の通過は許容するとともに前記製氷板により生成された氷の通過は許容しない複数の開口が形成された分離部材を備え、前記UV殺菌装置は、前記分離部材を照射するように構成することができる。
【0013】
この構成の製氷機は、流下式の製氷機において、水の流れが緩やかになる箇所が具体化されている。この構成の製氷機においては、製氷板の下方に配された分離部材によって、製氷中において循環させている製氷水はタンクに、製氷が完了して製氷板から落下させた氷は製氷用のタンクに、それぞれ送られる。製氷中に製氷板から流れ落ちた水は、一部が、分離部材の複数の開口から直接タンクに落下するものの、残りの一部が、氷を滑らせるために比較的緩やかに形成された分離部材上を伝ってからタンクに落下する。この構成の製氷機は、その分離部材上を伝っている水に対してUVを照射して殺菌することができる。なお、分離部材は、複数の開口として、複数の穴が形成されたものであっても、複数の溝が形成されたものであってもよい。
【0014】
また、上記構成において、前記製氷部に供給するための水を貯めることが可能なタンクを備え、前記タンクは、水を貯める部分であるタンク本体部と、前記タンク本体部の上方に配されて水を注水させるための注水口と、前記タンク本体部と前記注水口との間に配されて前記注水口から注水される水を自身の上面において受けて前記タンク本体部に流入させる受水部と、を有し、前記UV殺菌装置は、前記タンク内の少なくとも前記受水部を照射するように構成することができる。
【0015】
この構成の製氷機は、水の流れが緩やかになる箇所が具体化されている。この構成の製氷機は、タンクに注水された水が受水部を伝ってタンク本体部に流入するように構成されており、その受水部を伝っている際にUV殺菌装置によって殺菌を行うようになっている。この構成の製氷機によれば、タンク本体部に流入する前に殺菌することができ、タンク本体部に貯められる製氷水の質を高めることができる。
【0016】
また、上記構成において、前記受水部は、前記タンク本体部の上端から外側に張り出すように形成され、前記上面が前記タンク本体部に向かって下降する傾斜状とされた構成とすることができる。
【0017】
この構成の製氷機は、タンク本体部に貯められた水の水面全体と、受水部の上面とが、水平方向にずれているため、換言すれば、それらがタンク本体部の上方に受水部が重なっていないため、UV殺菌装置によって上方からUVを照射することで、受水部の上面に流れる水だけでなく、タンク本体部に貯められた水も合わせてUV照射することができ、より効率的に、かつ、より確実に製氷水を殺菌することができる。
【0018】
また、上記構成において、前記タンクは、上部を覆う蓋部を有し、前記UV殺菌装置は、前記蓋部の中央に固定された構成とすることができる。
【0019】
この構成の製氷機は、UV殺菌装置によって、受水部を含めてタンク内全体にUVを照射することが可能とされており、上述したタンク本体部に貯められた水の水面全体と受水部の上面とが水平方向にずれた構成の製氷機に、特に有効である。
【0020】
また、上記構成において、前記タンクに貯められた水の上方に配され、前記タンクに貯められた水の水面に向かって超音波を照射することで、前記水面までの距離を測定可能な距離センサを備えた構成とすることができる。
【0021】
この構成の製氷機は、距離センサによって測定された水面までの距離に基づいて、タンク内の水位を検出することができるように構成されている。例えば、フロートスイッチを用いてタンク内の水位を検出する構成とした場合において、UV殺菌装置によってUVを照射すると、フロートが影になって殺菌を行えない箇所がタンク内に存在することになる。しかしながら、この構成の製氷機は、距離センサがタンク内に影を作ってしまうことがなく、より効率的にタンク内の殺菌を行うことが可能となる。
【0022】
また、上記構成において、UV殺菌装置は、波長が207nmから285nmの範囲内の紫外線を照射する構成とすることができる。
【0023】
この構成の製氷機は、UV殺菌装置が照射するUVの波長帯域が具体化されている。当該波長帯域のUVによって効果的に殺菌できる。
【0024】
また、上記構成において、前記製氷部に供給するための水を貯めることが可能なタンクと、前記タンクと前記製氷部とを接続し、前記タンクの水を前記製氷部に供給するための供給路と、前記供給路とは別に設けられ、前記タンクと前記製氷部とを接続し、前記製氷部の水を前記タンクに回収するための回収路と、を備え、前記流水経路は、前記タンク、前記供給路、前記回収路、および前記製氷部を経路上に含む循環可能な構成とされており、前記流水経路において水を循環するためのポンプ装置と、前記流水経路における所定箇所の水位の検出結果に基づき、前記ポンプ装置の異常を判定する制御部と、使用者に対して前記異常を報知するための報知部と、をさらに備える。
【0025】
この構成の製氷機は、水の循環によって流水経路を洗浄したり、殺菌した水の循環によって流水経路を殺菌したりできるように構成されている。また、水を循環するためのポンプ装置の異常を判定し、使用者に報知することができる。
【0026】
また、上記構成において、前記制御部は、前記ポンプ装置の作動前における前記水位の検出結果と、前記ポンプ装置の作動後における前記水位の検出結果とに基づいて、ポンプ装置の異常を判定する。
【0027】
この構成の製氷機は、ポンプ装置の作動前後における流水経路における所定箇所の水位の検出結果に基づいて、ポンプ装置の異常を判定できる。ポンプ装置が正常に作動すると、流水経路内を水が循環して圧損が生じるため、流水経路の所定箇所における水位は変動する。このため当該水位の検出結果に基づいて、ポンプ装置の異常を判定可能となる。
【0028】
また、上記構成において、前記タンク内の水の水位を検出する水位センサを備え、前記制御部は、前記水位センサの検出結果に基づき、前記ポンプ装置の異常を判定する。
【0029】
この構成の製氷機は、タンク内の水位の水位を検出する水位センサの検出結果に基づいて、ポンプ装置の異常を判定するため、ポンプ装置の異常を検知するために追加部品を設けずに済むようになる。
【0030】
また、上記構成において、前記水位センサは、超音波を用いて前記タンク内の水の水面までの距離を検出する距離センサである。
【0031】
この構成の製氷機は、水位センサの種類が距離センサと具体化されている。距離センサによれば、水位の変化を連続的に検出できるため、検出水位に基づいてポンプ装置の異常を容易に判定できる。
【0032】
また、上記構成において、前記制御部は、前記ポンプ装置の作動前における前記水位センサの検出水位と、前記ポンプ装置の作動後における前記水位センサの検出水位との水位変化を所定の閾値と比較し、前記水位変化が前記閾値未満の場合に、前記ポンプ装置は異常と判定する。
【0033】
この構成の製氷機は、ポンプ装置の作動前後における距離センサの検出水位の水位変化を、閾値と比較することでポンプ装置を異常判定できるため、判定処理が複雑化せずに済むようになる。
【0034】
また、上記構成において、前記水位センサは、前記タンク内の水位に合わせて浮力で変位する浮き子を備え、前記タンクの水位が所定の閾値以上か否かによって異なる信号を検出するフロートスイッチである。
【0035】
この構成の製氷機は、水位センサの種類がフロートスイッチと具体化されている。フロートスイッチによれば、低コスト化でき、汎用性を高めることができる。
【0036】
また、上記構成において、前記制御部は、前記ポンプ装置の作動前における前記水位センサの検出信号と、前記ポンプ装置の作動後における前記水位センサの検出信号とが異なる場合に、前記ポンプ装置が正常と判定する。
【0037】
この構成の製氷機は、ポンプ装置の作動前後における水位センサの検出信号によってポンプ装置を正常と判定できるため、水位センサとしてフロートスイッチを用いる上で好適となる。
【0038】
また、上記構成において、前記タンク内への水の供給を調整可能な給水バルブと、前記タンク内の水の排水を調整可能な排水バルブと、を備え、前記制御部は、前記ポンプ装置の作動前において、前記水位センサが第1検出信号を検出するように、前記給水バルブまたは前記排水バルブの少なくとも一方を制御して前記タンク内の水の水位を調整した後、前記水位センサが前記第1検出信号とは異なる第2検出信号を検出するようになるまで、前記給水バルブまたは前記排水バルブの少なくとも一方を制御して前記タンク内の水の水位を調整する。
【0039】
この構成の製氷機は、ポンプ装置の作動前において、水位センサの検出信号が第1検出信号から第2検出信号に変化するようになるまで、タンク内の水の水位を排水バルブまたは給水バルブによって調整する。このようにすれば、ポンプ装置が正常である場合には、ポンプ装置の作動後に水位センサの検出信号が確実に第1検出信号に変化するようになる。その結果、ポンプ装置の作動前後における水位センサの検出信号によってポンプ装置を確実に正常判定できるようになる。
【0040】
また、上記構成において、前記制御部は、前記ポンプ装置の作動前において、前記水位センサが前記第2検出信号を検出するように前記タンク内の水の水位を調整する際に、前記給水バルブまたは前記排水バルブの少なくとも一方を断続的に開閉させる。
【0041】
この構成の製氷機は、排水バルブまたは給水バルブの断続的な開閉によってタンク内の水の水位の変化速度を緩めることができる。これにより、タンク内の水位を安定しつつ、変化できるようになる。
【0042】
また、上記構成において、前記製氷部は、前記タンクから前記供給路を介して供給された水を貯留する貯水部を構成し、氷が付着する内面を有するシリンダと、前記シリンダの内部に回転可能に配され、前記内面に付着された氷を削り取る削氷刃を有するオーガと、を有する。
【0043】
この構成の製氷機は、その種類がオーガ式製氷機と具体化されている。オーガ式製氷機では、ポンプ装置は流水経路において水を循環させるために用いられ、製氷時には必ずしも必要とされないため、使用者がポンプ装置の異常に気付きにくい実情がある。本構成の製氷機によれば、オーガ式製氷機であっても、ポンプ装置の異常を検知して使用者に報知可能となる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、製氷水の殺菌を効率的にかつ確実に行うことが可能な製氷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の第1実施例の製氷機の構成を、概略的に示すブロック図である。
図2図1に示す製氷部の断面図である。
図3図1に示す流水経路および冷凍回路の概略図を示す。
図4図3に示す貯水タンクの上面図であり、回収路からの水が貯水タンクに注水される状態を示す図である。
図5図3に示す貯水タンクの上面図であり、回収路からの水が排水される状態を示す図である。
図6図4に示す貯水タンクの断面図(図4におけるA-A断面)である。
図7】第1実施例の製氷機の排水経路を示す概略図である。
図8】第2実施例の製氷機を、概略的に示す図である。
図9図8に示す製氷機における回収路を拡大して示す斜視図である。
図10】第3実施例の製氷機の構成を、概略的に示すブロック図である。
図11図10に示す流水経路および冷凍回路の概略図を示す。
図12】第3実施例の製氷機における洗浄運転のフローチャートである。
図13】第4実施例の製氷機における流水経路および冷凍回路の概略図を示す。
図14A】第4実施例の製氷機における洗浄運転のフローチャートである。
図14B図14Aに続くフローチャートである。
図14C図14Bに続くフローチャートである。
図15】第5実施例の製氷機における洗浄運転のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例1】
【0047】
本発明の第1実施例の製氷機10は、オーガ式製氷機であり、概略的な構成を図1のブロック図に示す。本製氷機10は、製氷部20と、冷凍回路40と、貯水タンク60と、貯氷タンク70と、制御部80と、を含んで構成される。製氷部20は、貯水タンク60から供給された製氷水を貯留する貯水部Sを有して、その貯水部Sに貯められた製氷水を冷凍回路40によって凍らせつつ氷を生成する構成のものである。そして、生成された氷は、貯氷タンク70に送られる。また、後に詳しく説明するが、製氷部20が有する貯水部Sは、貯水タンク60と供給路30によって接続されており、その供給路30を介して製氷水の供給を受けるとともに、供給路30とは別に設けられた回収路31によっても接続されており、その回収路31を介して製氷されなかった製氷水を貯水部Sから回収可能とされている。また、回収路31には、モータを駆動源とするポンプ装置32が設けられており、そのポンプ装置32の作動によって、貯水部Sの製氷水は貯水タンク60に送られる。なお、制御部80は、CPU,RAM,ROM等を有するコンピュータを主体として構成されるものであり、その制御部80によって、上記の製氷部20,冷凍回路40,ポンプ装置32等は制御される。
【0048】
製氷部20は、氷を生成する主体となる製氷機構20Aと、その製氷機構20Aを駆動する駆動部20Bと、それら製氷機構20Aと駆動部20Bとを機械的に連結して駆動部20Bの駆動力を製氷機構20Aに伝達する連結部20Cと、を含んで構成される。製氷機構20Aは、図3に示すように、シリンダ(製氷筒、冷却筒)21と、オーガ22と、成型部材(固定刃、圧縮ヘッド)23と、断熱材24と、カッタ25と、氷排出管26と、シール部(メカニカルシール)27と、を備える。シリンダ21は、金属(例えばステンレス鋼)製で円筒状をなしており、その外周面に冷凍回路40を構成する蒸発管44が巻き回されている。シリンダ21において蒸発管44より下側の側壁には、給水口21Aおよび排水口21Bが設けられている。製氷水は、給水口21Aからシリンダ21内に給水される。また、シリンダ21内の製氷水は排水口21Bからシリンダ21外へ排出される。断熱材24は、蒸発管44の外面を覆っており、冷却効果を高めている。
【0049】
ここで、冷凍回路40について、図3を参照しつつ説明することとする。冷凍回路40は、圧縮機41と、凝縮器42と、膨張弁43と、蒸発管44と、を備え、これらは冷媒管45によって連結されている。圧縮機41は、冷媒ガスを圧縮する。凝縮器42は、圧縮した冷媒ガスをファン46の送風により冷却して液化させる。膨張弁43は、液化冷媒を膨張させる。蒸発管44は、シリンダ21の外面に巻き回されている。蒸発管144は、膨張弁43によって膨張された液化冷媒を気化させて、シリンダ21を冷却する。つまり、冷凍回路40は、上記の製氷機構20Aを構成するシリンダ21の内周面に、氷を凍結させて付着させる構成となっている。また、冷凍回路40は、ファン46と、ドライヤ47と、温度センサ48と、をさらに備える。ドライヤ47は、冷凍回路40に混入した水分を除去する。温度センサ48は、冷媒管45における蒸発管44の出口部分、および、凝縮器42とドライヤ47との間に設けられており、冷媒の温度を検出する。
【0050】
製氷機構20Aを構成するオーガ22は、図2に示すように、全体にみて細長い棒状をなし、細長く延びる延在方向がシリンダ21の中心軸に沿うように、シリンダ21の内部空間に上下に挿入されている。オーガ22は、側面に視て蒸発管144と重なる部分に螺旋状の削氷刃22Aを備える。削氷刃22Aは、オーガ22の棒状の本体からシリンダ21の内面21Fに向かって突出しており、その突出長は、シリンダ21の内面21Fに僅かに到達しない程度とされる。削氷刃22Aは、回転させられることで、シリンダ21の内面21Fに付着した氷を削り取るようになっている。
【0051】
成型部材23は、図2に示すように、シリンダ21の内部の上側に固定されている。成型部材23は、略筒状をなし、オーガ22の上部22Bが内部に挿入され、オーガ22を回転可能に保持している。また、成型部材23は、外周面に軸線方向に沿って延びる複数の溝が成形された断面歯車状の部材であり、シリンダ21の内面21Fとの間に上下に貫通する氷通過経路23Aを形成する。オーガ22によって上方に運搬された氷は、その氷通過経路23Aに押し込まれ、成柱状に圧縮成型される。
【0052】
カッタ25は、図2に示すように、成型部材23の上方に配されている。カッタ25は、成型部材23で圧縮成型された氷を所定の長さに切断する。氷排出管26は、一端部がカッタ25を覆って製氷機構20Aから外側に向かって延び出すように配されており、この氷排出管26を通って、カッタ25で切断された氷が、貯氷タンク70に送られる。
【0053】
シール部27は、図2に示すように、シリンダ21の内部に配され、封止体27Aと、固定具27Bと、を有する。封止体27Aは、セラミックス、又は硬質樹脂からなり、オーガ22の円柱状をなす本体と後述するハウジング20C2との隙間を埋めて、内部の水を止水する。固定具27Bは、封止体27Aの上側に配され、封止体27Aをオーガ22の本体の外面に対して押し付けて固定している。これにより、オーガ22の本体外周面と、封止体27Aと、ハウジング20C2の上部と、シリンダ21の内面21Fと、に囲まれた空間が、製氷水を貯留可能な貯水部Sを構成している。シリンダ21に設けられた給水口21Aおよび排水口21Bは、貯水部Sの底部側(下側)において、封止体27Aと側面視で重なる位置に設けられている。シール部27は、オーガ22と共に回転し、その際、封止体27Aは、ハウジング20C2の上部に対して摺動する。
【0054】
駆動部20Bは、図2に示すように、製氷機構20Aの下方に配されている。駆動部20Bは、モータと、歯車系と、出力軸20B1と、を備える。モータが回転駆動すると、歯車系を通じて動力が伝達され、出力軸20B1が回転する。
【0055】
連結部20Cは、図2に示すように、カップリング(軸継手)20C1と、ハウジング20C2と、を有する。カップリング20C1は、円筒状をなしており、その内部に、スプライン係合するオーガ22の下端と、出力軸20B1の上端とを固定している。カップリング20C1により、出力軸20B1が回転すると、オーガ22が一体的に回転する。
【0056】
次に、本製氷機10内における水の流れについて詳しく説明する。貯水タンク60は、概して箱状のものであり、内部に製氷水を貯留するものであり、その貯水タンク60は、上述した製氷部20が有する貯水部Sに対し、図3に示したような高さ位置となるように、それら貯水タンク60と製氷部20とは、本製氷機10内に配されている。また、それら貯水タンク60と製氷部20の貯水部Sとは、供給路30を構成する通水管50によって通水可能とされている。具体的に言えば、貯水タンク60は、底面に通水口60Aが設けられており、その通水口60Aとシリンダ21の給水口21Aとが、通水管50によって接続されることで、貯水タンク60と貯水部Sとが通水可能な状態となっている。そのような構成により、貯水部Sは、貯水タンク60の水位と同じ水位となるまで、水が溜まるようになっている。
【0057】
一方、貯水部Sと貯水タンク60とは、図1に示したように、供給路30とは別に回収路31によっても接続されている。具体的には、その回収路31は、シリンダ21の排水口21Bに接続されたポンプ装置32と、そのポンプ装置32と貯水タンク60とを接続する送水管51と、からなる。ポンプ装置32は、ポンプモータ32Aを主体とするものであり、排水口21Bに接続された吸い込み側のポート32Bから吸い込んだ貯水部S内の水を、吐出側のポート32Cに接続された送水管51に送り出すように構成される。そして、送水管51のもう一方の端部が貯水タンク60に接続されており、貯水部Sの水を貯水タンク60に回収可能とされている。以上のような構成から、本製氷機10においては、図1に示すように、貯水タンク60,供給路30,回収路31によって、製氷部20(詳しく言えば貯水部S)へと向かう水(製氷水)が流れる流水経路52が形成されており、その流水経路52が、製氷部20の水を循環可能な構成とされているのである。
【0058】
次に、貯水タンク60について詳しく説明する。図4から図6に示すように、水が貯められる部分である概して箱状のタンク本体部61と、そのタンク本体部61の外側に配された排水部62と、それらタンク本体部61と排水部62との上部を覆う蓋体(蓋部)63と、を有している。排水部62は、上端が貯水タンク60内部に開口し、下方に向かって延び出した部分である。つまり、この排水部62は、タンク本体部61の内部の水位が高くなり、自身の上端を越流した水を貯水タンク60内から排出させるためのものである。換言すれば、この排水部62は、タンク本体部61の上限水位を、自身の上端の高さに設定するものである。
【0059】
また、蓋体63には、2つの注水口63A,63Bが設けられている。第1注水口63Aは、水道管と連通する給水管53が接続されており、水道水を貯水タンク60内に注水させるものである。また、第2注水口63Bは、先に説明した回収路31を構成する送水管51が接続されており、製氷部20の貯水部Sから回収した水を貯水タンク60内に注水させるものである。なお、給水管53には、給水バルブ54が設けられている。
【0060】
また、蓋体63には、第2注水口63Bの位置を変更可能な注水位置変更機構64が設けられている。その注水位置変更機構64は、送水管51の貯水タンク60側の端部を下方に開口させた状態で保持する送水管保持体64Aと、その送水管保持体64Aを水平面内において回動させるモータ(ステッピングモータ)64Bと、を含んで構成され、送水管保持体64Aの位置を図4に示した位置と図5に示した位置とで選択的に切り替えるように構成される。
【0061】
送水管保持体64Aが図4に示した位置にある場合には、第2注水口63B(図4において符号63B-P1)から注水される水は、タンク本体部61に戻される。ただし、この場合において、第2注水口63Bは、タンク本体部61の外側(図4においてタンク本体部61の左側)で、上述した排水部62からずれた位置(図4において排水部62の下側)に位置させられる。貯水タンク60は、この位置に、第2注水口63Bから注水される水を自身の上面において受ける受水部65を有している。この受水部65は、図6に示すように、タンク本体部61の上端から外側に張り出すように形成され、そのタンク本体部61に向かって下降する傾斜状に形成されており、第2注水口63Bから流下した水を受けて自身の上面を伝わせ、タンク本体部61に流入させるようになっている。
【0062】
一方、送水管保持体64Aが図5に示した位置にある場合には、第2注水口63B(図5において符号63B-P2)は、排水部62の上方に位置させられる。つまり、この場合には、送水管51に送られた水は、後に詳しく説明するが、排水部62から本製氷機10の外に排出される。例えば、製氷部20の貯水部S内の水や、貯水タンク60のタンク本体部61内の水を排出させるような場合、具体的には、それらに貯められた水が設定された時間を経過した場合の古くなった水や、本製氷機10内の洗浄を行った場合の洗浄水などを排出させる場合に使用される。
【0063】
ここで、本製氷機10の排水について説明する。まず、上述した貯水タンク60の排水部62の下端には、第1排水管56が接続されている。また、図7に示すように、また、貯氷タンク(アイスビン)70の底面部には、貯氷タンク70内に貯められた氷が融解して生じた水を排出する第2排水管57が接続されている。そして、それら第1排水管56と第2排水管57とは、本製氷機10内において合流し、本排水管58によって機外に排出されるようになっている。なお、本排水管58には、逆止弁トラップ59が設けられており、排水が貯水タンク60および貯氷タンク70に逆流することを防止するとともに、排水管56,57,58内が水抜き状態であっても空気の逆流も遮断できるため、外部からの異臭、細菌等の流入を防止することができる。
【0064】
上述したように、本製氷機10は、製氷部20の貯水部Sに貯められた水を貯水タンク60に回収すること、さらに言えば、貯水部S,貯水タンク60,供給路30,回収路31によって形成される流水経路52において製氷水を循環させることが可能とされている。例えば、製氷運転が一旦終了して、ある程度の時間が経過した後に再度製氷運転を開始する場合を考える。従来の製氷機は、流水経路が循環可能とされておらず、貯水部Sから水を排出させることが一般的であった。本製氷機10によれば、無駄に排出させる製氷水を減らすことができ、効率的に製氷を行うこと(供給水量に対する製氷量の向上を図ること)が可能である。ただし、本製氷機10は、製氷水を循環させる構成であるため、製氷水の殺菌が重要となる。そのことを考慮し、本製氷機10は、効率的に、かつ、確実に製氷水を殺菌することができるように構成されている。その構成について、以下に詳しく説明する。
【0065】
本製氷機10は、UV殺菌装置90を備えている。UV殺菌装置90は、紫外線ランプあるいは深紫外線LEDランプであり(以下の説明において、「UVランプ90」と呼ぶ場合がある)、水の殺菌作用が高い253nm~285nmの波長の紫外線(UV)を照射可能なものとされている。UVランプ90は、前述した貯水タンク60に対して取り付けられる。詳しく言えば、図4から図6に示すように、蓋体63のほぼ中央に固定され、貯水タンク60内をUV照射する。そして、UVランプ90は、図6に二点鎖線で示す範囲、貯水タンク60の側壁における上方側までをUV照射可能に構成される。詳しく言えば、UVランプ90は、貯水タンク60内に設けられた受水部65を含む高さまでの範囲をUV照射可能とされているのである。
【0066】
なお、本製氷機10においては、製氷運転が一旦終了して、ある程度の時間が経過した後に再度製氷運転を開始する場合、流水経路52において製氷水を一定時間の間循環させ、貯水部S(シリンダ21)および供給路30(通水管50)を洗浄させるようになっている。また、この製氷水の循環をさせている間、UVランプ90によってUV照射が行われ、製氷水の殺菌が行われる。この製氷水の循環時には、製氷水が貯水タンク60内に戻される際、タンク本体部61に直接注水されずに受水部65上に流下され、その受水部65上を伝ってタンク本体部61に流入する。そして、その受水部65の上にも、UVランプ90によるUV照射が行われている。つまり、本製氷機10においては、タンク本体部61に貯まった製氷水に対してだけでなく、勾配の緩い傾斜状の受水部65を流れている製氷水に対して、換言すれば、比較的遅い流速で流れている製氷水に対して、UV照射による殺菌を行うことができるため、効率的かつ確実に製氷水の殺菌を行うことができるのである。
【0067】
また、本製氷機10は、貯水タンク60内(詳しく言えばタンク本体部61内)の水位を計測して、その計測結果に基づいて製氷運転を行うように構成される。そのため、貯水タンク60には、水位を計測する水位センサ91が設けられている。詳しく言えば、水位センサ91は、蓋体63に固定され、タンク本体部61に貯められた水の水面に向かって超音波を照射して水面までの距離を測定する距離センサとして機能するものであり、その測定された水面までの距離に基づいて水位を計測するものである。なお、水位センサ91は、詳しく言えば、超音波を照射する照射部と、貯水タンク60内の水の水面によって反射した超音波を受信する受信部と、を備え、照射部から照射した超音波が反射によって受信部に戻って来るまでの時間に基づいて、水位センサ91から水面までの距離を測定することが可能となっている。この超音波を用いた水位センサ91は、フロートスイッチのように水面にフロートを浮かべたり、赤外線レーザを用いたセンサのように、水面に反射材を浮かべたりする必要がなく、貯水タンク60内に影を作ることがないため、貯水タンク60内の製氷水を確実にUV照射することができ、より効率的に殺菌を行うことが可能である。
【0068】
ちなみに、本製氷機10においては、図7に示すように、貯氷タンク70にも、UV殺菌装置90と同様のUV殺菌装置92が設けられている。このUV殺菌装置92は、貯氷タンク70の蓋部70Aの中央付近に固定され、下側に向かって常時UV照射を行っている。つまり、このUV殺菌装置92は、貯氷タンク70の内壁、氷排出管26における貯氷タンク70側の氷の放出口、および、製氷された氷の殺菌を、常時行っている。また、貯氷タンク70には、水位センサ91と同様の超音波センサであって、貯められた氷の量を推定するための貯氷高センサ93も設けられている。従来の製氷機は、氷の量を計測するセンサがない場合が多く、貯氷タンクを開けて氷の量を確認していた。それに対して、本製氷機10は、貯氷高が表示されるように構成されるため、貯氷タンク70を開ける回数が減り、菌の貯氷タンク70内への混入を抑えることができ、衛生上優れたものとなる。
【0069】
以上のように、本製氷機10によれば、製氷水の殺菌を効率的かつ確実に行うことで、製氷水が安全性に(衛生的に)優れたとものとなるとともに、衛生さが確実に保たれた氷を提供することができる。
【実施例2】
【0070】
上記の第1実施例の製氷機10は、オーガ式の製氷機とされていたが、第2実施例の製氷機100は、図8に示すように、流下式の製氷機である。製氷機100は、図1に示すように、水を凍結させることで氷を製造する複数の製氷部111と、製氷部111(より詳しくは製氷部111が備える各製氷板112)を冷却する冷却装置140と、製氷部111に供給される水を貯めることが可能な貯水タンク113と、製氷部111で製造された氷を貯めることが可能な貯氷タンク114と、製氷部111に貯水タンク113内の水を供給することが可能なポンプ装置115と、を備える。
【0071】
また、製氷機100は、製氷部111とポンプ装置115とを接続する配管118と、配管118の中間部119から引き出され、貯水タンク113内の水を外部に排水するための排水管120と、排水管120を開閉する排水バルブ121と、貯水タンク113に貯められた水の上方に配され、貯水タンク113に貯められた水の水面までの距離を測定することが可能な水位センサ122と、貯氷タンク114に貯められた氷の上方に配され、貯氷タンク114に貯められた氷の上面までの距離を測定することが可能な貯氷高センサ123と、を備える。
【0072】
製氷部111は、複数の製氷板112と、散水パイプ124と、散水ガイド125と、を備える。製氷板112は、垂直な姿勢で設けられている。複数の製氷板112において、対向配置された一対の製氷板112,112の間には、蛇行状をなす蒸発管144(冷却装置140の一部)が設けられている。製氷板112は、図2に示すように、上下方向に沿って延びる複数の製氷面112Aと、上下方向に沿って延びる複数の突条部112Bと、を有している。複数の製氷面112Aは、水平方向に沿って並んでおり、隣り合う製氷面112Aは、突条部112Bによって仕切られている。製氷面112Aは、製氷板112において蒸発管144とは反対側の面によって構成されている。散水パイプ124(散水器)は、一対の製氷板112,112毎に設けられている。ポンプ装置115から散水パイプ124に送られた製氷水は、散水パイプ124によって各製氷面112Aに散水される。そして、散水パイプ124から散水された製氷水は、散水ガイド125によって各製氷面112Aに案内された後、各製氷面112Aを流下する構成となっている。
【0073】
冷却装置140は、図1に示すように、圧縮機141と、凝縮器142と、膨張弁143と、蒸発管144と、ファン146と、を備える。圧縮機141、凝縮器142、膨張弁143および蒸発管144は、冷媒が封入された冷媒管145によって連結されている。圧縮機141は、冷媒ガスを圧縮する。凝縮器142は、圧縮した冷媒ガスをファン146の送風により冷却して液化させる。膨張弁143は、液化冷媒を膨張させる。蒸発管144(蒸発器)は、膨張弁143によって膨張された液化冷媒を気化させて製氷板112を冷却する。このように、圧縮機141、凝縮器142、膨張弁143、蒸発管144および冷媒管145は、製氷板112を冷却するための冷媒の循環サイクル(冷凍回路)を構成するものとされる。また、冷却装置140は、冷凍回路に混入した水分を除去するためのドライヤ147を備える。
【0074】
また、冷却装置140は、圧縮機141で圧縮された冷媒ガス(ホットガス)を蒸発管144に供給するためのバイパス管149と、バイパス管149に設けられた電磁弁であるホットガス弁150と、を備える。ホットガス弁150を開くことで、圧縮機141から冷媒ガス(ホットガス)を蒸発管144に供給し、蒸発管144を加熱することが可能となっている。つまり、冷却装置140は、蒸発管144を加熱する加熱装置としての機能を有する。
【0075】
貯水タンク113は、図1および図3に示すように、上方に開口された箱形をなすタンク本体部126と、タンク本体部126の開口を覆う蓋体127と、を備える。タンク本体部126の内部空間には製氷に用いられる製氷水が貯留される。タンク本体部126は、製氷部111の下方にまで拡がっているものの、蓋体127は、タンク本体部126における製氷部111の直下に位置する箇所は覆っていない。そして、その箇所の上方、換言すれば、タンク本体部126と製氷部111との間には、後に詳しく説明する簀子状のキューブガイド160が配されている。このキューブガイド160によって、製氷部111から流下した水は、キューブガイド160の隙間を通過して、貯水タンク113に貯留されるようになっている。
【0076】
また、一対の製氷板112,112の間には給水パイプ152(給水側の散水パイプ)が設けられている。給水パイプ152は、給水管129および給水バルブ130を介して水道管131と接続されている。これにより、給水バルブ130を開くことで、水道水が製氷板112の裏面(製氷面112Aと反対側の面)を流下した後、貯水タンク113に供給される構成となっている。また、製氷面112Aを流下する製氷水のうち、凍結しなかった水は、貯水タンク113に貯留される構成となっている。つまり、貯水タンク113は、製氷部111に供給された製氷水のうち、凍結しなかった水が貯水タンク113に貯まる構成となっている。これにより、ポンプ装置115を動作させることで、貯水タンク113と製氷部111との間で製氷水を循環させることが可能となっている。
【0077】
ポンプ装置115は、回転速度を変えることが可能なポンプモータ133を有し、ポンプモータ133の駆動に伴って製氷部111に貯水タンク113内の水を供給することが可能となっている。ポンプモータ133は、回転速度を変えることが可能なDCモータ(DCブラシレスモータ)とされる。これにより、ポンプモータ133の回転速度を増減させることで、製氷部111への水の供給量(ひいては、貯水タンク113と製氷部111の間の水の循環量)を増減させることが可能となっている。
【0078】
また、製氷部111は、ポンプ装置115よりも高い位置に配されており、配管118は、ポンプ装置115から上方に延びている。そして、配管118の中間部119には、貯水タンク113内の水を外部に排水するための排水管120が設けられ、排水管120には、排水管120を開閉する排水バルブ121が設けられている。これにより、排水バルブ121を開いた状態でポンプ装置115を動作させると、排水管120を通じて貯水タンク113の水を排水することが可能となっている。貯水タンク113に清潔な水、もしくは洗剤を入れた状態でポンプ装置115を作動させると製氷部111の製氷面112A側を洗浄することができる。また、給水管129と配管118との間には、通水管134と通水バルブ135とが設けられている。そのような構成により、給水バルブ130と排水バルブ121とを閉じた状態で通水バルブ135を開いてポンプ装置115を作動させると、給水パイプ152を通じて製氷板112の裏面に貯水タンク113の水を供給することができ、製氷板112の裏面を洗浄することができる。
【0079】
水位センサ122は、貯水タンク113に貯められた水の上方に配され、貯水タンク113内の水の水面に向かって超音波を照射することで、貯水タンク113に貯められた水の水面までの距離を測定することが可能な超音波センサである。より詳しくは、水位センサ122は、超音波を照射する照射部と、貯水タンク113内の水の水面によって反射した超音波を受信する受信部と、を備え、照射部から照射した超音波が反射によって受信部に戻って来るまでの時間に基づいて、水位センサ122から水面までの距離を測定することが可能となっている。水位センサ122から水面までの距離は、貯水タンク113の水位と連動することから、水位センサ122は、貯水タンク113に貯められた水の水位を測定することが可能な水位センサとして用いることができる。水位センサ122を水位センサとして用いることで、水位をリニアに検知することができる。
【0080】
貯氷タンク114は、製氷部111で製氷された氷を貯えるもので、図1に示すように、製氷部111の下方に配されており、氷排出管151を介して製氷部111と連通されている。使用者は、製氷された氷を貯氷タンク114から取り出して使用する。貯氷高センサ123は、貯氷タンク114を構成する上壁部114Bに設けられた超音波センサであり、貯氷タンク114に貯められた氷の上面に対して超音波を照射することで氷の上面までの距離を測定することが可能な構成となっている。
【0081】
さて、上述したキューブガイド160は、図9に示すように、複数の開口(溝,長孔)160Aが形成された簀子状の部材であり、貯氷タンク114における氷の入口114Aに向かうにつれて下降傾斜する姿勢で設けられている。これにより、キューブガイド160上に落下した氷は、開口160Aは通過せず、貯氷タンク114の入口114Aに向かって滑り落ちる構成となっている。つまり、このキューブガイド160は、水の通過は許容するとともに製氷板112により生成された氷の通過は許容しない分離部材として機能するものとなっている。また、図1に示すように、そのキューブガイド160と製氷部111との間、詳しく言えば、キューブガイド160における貯氷タンク114側(下端側)の部分の上方には、ディフレクタ161が配されている。このディフレクタ161は、キューブガイド160とは対称的に、氷の入口114Aから離間する方向に向かって下降傾斜する姿勢で配されており、例えば、貯氷タンク114側の製氷板112から流下した水が貯氷タンク114には流下しないよう、キューブガイド160の基端側(上端側)に誘導するものとなっている。また、貯氷タンク114側の製氷板112において生成された氷も、このディフレクタ161上に落下して、キューブガイド160上に送られ、キューブガイド160によって貯氷タンク114に送られる。
【0082】
以上説明したように、第2実施例の製氷機100においては、配管118が、貯水タンク113と製氷部111とを接続して貯水タンク113の水を製氷部111に供給するための供給路として機能し、キューブガイド160およびディフレクタ161が、製氷部111の水を貯水タンク113に回収するための回収路として機能する。つまり、第2実施例の製氷機100は、それら供給路,回収路および貯水タンク113を利用して製氷部111の水を循環させる構成の流水経路を有するものとされており、第1実施例の製氷機10と同様に、製氷水の殺菌が重要となる。そこで、第2実施例の製氷機100も、効率的に、かつ、確実に製氷水を殺菌することができるように構成されている。
【0083】
本製氷機100は、UV殺菌装置162,163,164を備えている。UV殺菌装置162,163,164は、第1実施例の製氷機10が備えるUV殺菌装置90,92と同様に、紫外線ランプあるいは深紫外線LEDランプであり(以下の説明において、「UVランプ162,163,164」と呼ぶ場合がある)、水の殺菌作用が高い253nm~285nmの波長の紫外線(UV)を照射可能なものである。
【0084】
第1UVランプ162および第2UVランプ163は、製氷板112を覆うハウジング170の内壁面に固定されている。詳しく言えば、第1UVランプ162は、キューブガイド160の基端(ハウジング170への取付部)の上方に固定され、第2UVランプ163は、ディフレクタ161の基端(ハウジング170への取付部)の上方に固定されている。そして、第1UVランプ162は、少なくともキューブガイド160上にUVを照射可能とされ、第2UVランプ163は、少なくともディフレクタ161上にUVを照射可能とされている。また、第3UVランプ164は、貯水タンク113の蓋体127に固定され、貯水タンク113内に貯水された水に対してUV照射可能とされている。
【0085】
第2実施例の製氷機100においては、製氷中に、つまり、製氷水を循環させている間、UVランプ162,163,164によってUV照射が行われ、製氷水の殺菌が行われる。この製氷水の循環時には、製氷部111から流下した製氷水は、キューブガイド160の開口160Aから直接貯水タンク113に流入するものもあるが、一部のものは、キューブガイド160上を伝ってから貯水タンク113に流下する。また、他の一部のものは、ディフレクタ161上に流下され、キューブガイド160に向かって流される。そして、それらキューブガイド160およびディフレクタ161は、比較的勾配が緩く、キューブガイド160上を伝っている製氷水、ディフレクタ161上を流れている製氷水は、比較的遅い流速で流れている。第2実施例の製氷機100は、その比較的遅い流速で流れている製氷水に対し、第1UVランプ162および第2UVランプ163によって殺菌を行うことができるため、効率的かつ確実に製氷水の殺菌を行うことができる。
【変形例1】
【0086】
上記の第1実施例のオーガ式の製氷機10では、UVランプ90,92は、特に水の殺菌効果が高い253nm~285nmの波長のUVを照射可能な構成とされていたが、第1変形例のオーガ式の製氷機200では、UVランプ290,292は、殺菌効果を有する207nm~285nmの波長のUVを照射可能な構成とされている。第1変形例のそれ以外の構成及び効果は、第1実施例と同様である。
【変形例2】
【0087】
上記の第2実施例の流下式の製氷機100では、UVランプ162,163,164は、特に水の殺菌効果が高い253nm~285nmの波長のUVを照射可能な構成とされていたが、第2変形例の流下式の製氷機300では、UVランプ362,363,364は、殺菌効果を有する207nm~285nmの波長のUVを照射可能な構成とされている。第2変形例のそれ以外の構成及び効果は、第2実施例と同様である。
【0088】
UVランプ362,363,364が、短波長のUV(例えば207nm)を照射すると、照射範囲に存在する空気内酸素にUVが吸収されて、酸素がオゾンに変化する。このオゾンが流水経路を流れることで、貯氷タンク114や流水経路等で発生するバクテリアをオゾンによって無効化(弱体化または死滅)できる。
【実施例3】
【0089】
上記の第1実施例の製氷機10及び第1変形例の製氷機200は、流水経路52において製氷水を一定時間の間循環して、流水経路52内の貯水部S(製氷部20)等を循環洗浄可能なオーガ製氷機とされていたが、第3実施例の製氷機400はさらに、循環用の動力源であるポンプ装置32の異常を検知して使用者に報知する機能を備える。以下、図10から図12を参照して第3実施例について説明するが、第1実施例及び第1変形例と同様の構成、作用及び効果についての説明は省略する。
【0090】
製氷機400は、図10に示すように、ポンプ装置32の異常を使用者に報知するための報知部の一例として表示部75を備える。報知部は、使用者への報知機能を有していれば表示部75に限られず、例えばブザーや点滅ランプ、さらにはこれらの組み合わせであっても構わない。制御部80は、貯水タンク60に設けられた水位センサ91の検出結果に基づいてポンプ装置32の異常を判定する。水位センサ91は、既述したように距離センサであり、タンク本体部61に貯められた水の水面に向かって超音波を照射して水面までの距離を測定する。製氷機400は詳しく後述するように、制御部80によってポンプ装置32の異常が判定(検知)されると、表示部75にエラーメッセージが表示されるように制御されている。
【0091】
制御部80は、図10に示すように、その一部に含まれる記憶部81(具体的にはROMやRAM等)に記録された制御プログラムを実行することで、使用者による操作、及び各センサの検出結果に基づいて各機器を制御している。記憶部81にはまた、製氷機400の動作に係る各設定値が記憶されており、後述する洗浄運転の累積実行回数N1及び累積ポンプ異常検知回数E1は、電源OFF時にも記憶が維持可能に格納されている。制御部80にはさらに、時間をカウントするための計時部82が含まれている。制御部80は、流水経路52を循環洗浄する洗浄運転の制御プログラムを実行する際に、ポンプ装置32の異常を判定して報知する処理(以下、ポンプ異常報知処理と記す)を実行する。洗浄運転は例えば、製氷運転が一旦終了して、ある程度の時間が経過した後に再度製氷運転を開始する場合に自動的に実行されたり、使用者による操作によって強制実行されたりする。
【0092】
製氷機400は、第1実施例の製氷機10と製氷水の排水経路が異なっており、図11に示すように排水バルブ94と、第3排水管95と、を備える。また、製氷機400は第1実施例の製氷機10と異なり、ステッピングモータ66が設けられておらず、貯水タンク60の蓋体63の通水口63Bは、タンク本体部61の上方位置63B-P1(図4)に固定されている。第3排水管95は、送水管51の一部から分岐して第1排水管56と接続されている。排水バルブ94は、第3排水管95上に設けられている。これにより排水バルブ94を開くと、貯水タンク60のタンク本体部61内の製氷水、及び製氷部20の貯水部S内の製氷水は、送水管51、第3排水管95を順に通って、第1排水管56に排出される。一方で排水バルブ94が閉じられると、貯水部S、ポンプ装置32、送水管51、タンク本体部61、通水管50、貯水部Sと繋がり、水が循環可能な流水経路52が形成される。
【0093】
次に、図12を参照して、ポンプ異常報知処理を含む洗浄運転の制御フローについて説明する。洗浄運転が開始されると、まず排水バルブ94を所定時間(例えば1分間)だけ開き(S10)、流水経路52内(具体的には貯水部S内、及びタンク本体部61内)に残水があれば排水する。排水バルブ94は、所定時間の経過後(計時部82による所定時間のタイマーカウント後)には閉じられる。次に、給水バルブ54が開かれ(S12)、タンク本体部61内及び貯水部S内に循環洗浄に用いられる水が溜められる。この給水は、タンク本体部61の水位が予め設定された所定水位に達するまで行われる。より詳しくは、タンク本体部61の水位を水位センサ91によって検出し(S14)、水位センサ91の検出水位(検出結果の一例)が所定水位に達したら(S16のYES)、給水バルブ54を閉じる(S17)。このようにして循環洗浄のための水が溜められ、ポンプ装置32が作動する前の状態におけるタンク本体部61の水位を図11に示すように第1水位LV1とする。なお、既述したようにこの状態における貯水部Sの水位は、タンク本体部61の水位と同じ高さになる。
【0094】
次に、溜められた水を使って流水経路52内を循環洗浄するために、図12に示すようにポンプ装置32が作動する(S19)。ポンプ装置32が正常に作動すると、流水経路52内を水が循環して圧損が生じるため、タンク本体部61の水位は図11に矢線で示すように上昇し、貯水部Sの水位は下降する。この水位変化はポンプ装置32の作動から所定時間後に安定するため、ポンプ装置32の作動から所定時間(例えば10秒間)だけ待機して(S21)、所定時間の経過後にタンク本体部61の水位を水位センサ91によって計測する(S23)。この状態におけるポンプ装置32の作動後のタンク本体部61の水位を図11に示すように第2水位LV2とする。制御部80は、第1水位LV1と第2水位LV2との水位差(水位変化)△LVを算出し、水位変化△LVが所定の閾値(以下、水位変化閾値)以上の場合には(S25におけるYES)、ポンプ装置32が正常と判定する(S27)。
【0095】
一方で、図12に示すように、水位変化△LVが水位変化閾値未満の場合(S25におけるNO)には、ポンプ装置32が異常(故障)と判定し(S29)、表示部75にエラーメッセージを表示して使用者に報知する(S31)。ポンプ装置32は、循環洗浄に必要とされる所定時間(例えば1分間)作動され、所定時間の経過後に停止される(S32のYES、S34)。その後ステップS10と同様に、排水バルブ94を所定時間(例えば1分間)だけ開くと(S36)、流水経路52内の残水が排水され、洗浄運転が終了となる。
【0096】
なお、上記した水位変化閾値は、ポンプ装置32の正常運転時における水位変化△LVに応じて予め設定される。正常運転時における水位変化△LVは例えば3mmから20mm程度の範囲とされるが、当該水位変化△LVが10mmの場合、水位変化閾値をこれより十分小さい5mmに設定すると、ポンプ装置32が正常の場合に水位変化△LVが確実に水位変化閾値を超えるようになり、誤判定を回避できる。一方で、正常運転時における水位変化△LVが水位センサ91で検出できない程度に小さ過ぎる場合には、通水管50の内径を小さくしたり、通水管50にオリフィスを設けたりすることで、圧損を増大する措置を施してもよい。このようにすれば、ポンプ装置32の吐出流量を増大させることなく、正常運転時における水位変化△LVを大きくでき、水位センサ91による検出を容易にできるようになる。
【0097】
上記した洗浄運転の制御フローによれば、洗浄運転のためにポンプ装置32を作動する際に、ポンプ異常報知処理を行うことができ、別途ポンプ装置32の点検時間を設けずに済む。制御フローにおいて、ステップS10からステップS19までの処理、及びステップS32からS36までの処理は、循環洗浄を行うための処理であり、ステップS21からステップS31までの処理がポンプ異常報知処理である。ポンプ装置32が故障すると、水の循環による流水経路52の洗浄効果や、殺菌した水の循環による流水経路52の殺菌効果を奏することができなくなる。オーガ式製氷機では既述したように、流下式製氷機と異なりポンプ装置32が製氷時には必ずしも必要とされないため、使用者がポンプ装置32の異常に気付きにくい実情がある。このため、ポンプ装置32の故障が使用者に報知されないまま使用が継続されると、衛生上好ましくない。これに対して本実施例に係る製氷機400によれば、ポンプ装置32の異常を検知して使用者に報知可能となる。ポンプ装置32の異常検知は、例えばポンプ装置32そのものに回転検知機構を設けたり、流水経路52に流量センサや水圧センサを設けたりすることでも実現できるが、その場合には異常検知用の追加部品が必要となってしまう。本実施例によれば、追加部品を設けることなくポンプ異常報知処理を行うことができ、コスト面でも有利である。
【0098】
なお、製氷機400は、製氷水の排水経路が第1実施例の製氷機10と異なる構成としたが、図3の第1実施例と同様の構成とし、排水バルブ94は図2におけるシリンダ21の排出口21Bと、ポンプ装置32の吸い込み側のポート32Bとの間に設けたり、図3における送水管51上に設けたりしても構わない。
【実施例4】
【0099】
上記の第3実施例の製氷機400では、水位センサ91が超音波を用いた距離センサとされていたが、第4実施例の水位センサ591は、浮き子591Aを備えるフロートスイッチとされる。第4実施例に係る製氷機500のそれ以外の構成は第3実施例の製氷機400と同様である。以下、図13から図14Cを参照して第4実施例について説明するが、第1実施例、第1変形例、及び第3実施例と同様の構成、作用及び効果についての説明は省略する。
【0100】
水位センサ591は、図13に示すように一般的なフロートスイッチとされ、フロート(浮き子591A)を備える。浮き子591Aが浮力でタンク本体部61の水位に合わせて上下に変位すると、その変位によって水位センサ591の本体部に含まれるリードスイッチがオン、オフする。これにより水位センサ591は、タンク本体部61の水位が所定の閾値(以下、水位閾値LVTH)以上か否かによって、各場合に対応する検出信号(検出結果の別の一例)を検出して出力する。より詳しくは、水位センサ591は、タンク本体部61の水位が水位閾値LVTH以上の場合には高水位状態を示す信号(HIGH、検出信号の一例)を検出し、水位閾値LVTH未満の場合には低水位状態を示す信号(LOW、検出信号の別の一例)を検出する。従ってフロートスイッチは、第3実施例に係る水位センサ91(距離センサ)と異なりタンク本体部61の水位変化を連続的に検出することができない。このため、第3実施例において図12のステップS25で示したように、ポンプ装置32の作動に伴うタンク本体部61の水位変化△LVを水位変化閾値と比較することで、ポンプ装置32の異常を判定することが困難である。
【0101】
そこで本実施例では、図14A,14B,14Cに示す制御フローによって、ポンプ異常報知処理を含む洗浄運転を行っている。洗浄運転が開始されると、図14Aに示すように、排水バルブ94を所定時間だけ開弁し(S10)、次に給水バルブ54を開いて循環洗浄に用いられる水を溜める(S12)。そして、タンク本体部61の水位を水位センサ591によって検出し(S114)、水位センサ591の検出水位(検出信号)がHIGH(第1検出信号の一例)になったら(S116のYES)、給水バルブ54を閉じる(S17)。次に、排水バルブ94を所定時間(例えば2秒間)だけ開弁して(118)、タンク本体部61内の水を排水する。そして、水位を安定させるために所定時間(例えば5秒間)だけ待機して(S120)、その経過後にタンク本体部61の水位を水位センサ591によって計測する(S122)。
【0102】
上記したステップS118からS122の排水処理を水位センサ591の検出水位がLOW(第2検出信号の一例)になるまで繰り返す(S124のNO)。このようにすれば、排水バルブ94が所定周期で断続的に開閉されて排水が徐々に進むようになり、タンク本体部61の水位の低下速度を緩めることができる。その結果、排水バルブ94の閉弁後にタンク本体部61の水位が安定しやすくなる。水位センサ591の検出水位がLOWになると(S124のYES)、循環洗浄のために必要な水が溜められ、ポンプ装置32の作動前の状態となる。この状態におけるタンク本体部61の水位を図13に示すように第1水位LV10とする。第1水位LV10は、水位センサ591の水位閾値LVTH未満であって、水位閾値LVTHとの差分(LVTH-LV10)ができるだけ小さいことが好ましい。このようにすれば、後述するようにポンプ装置32が正常に作動しタンク本体部61の水位が第2水位LV20に上昇した場合に、第2水位LV20が確実に水位閾値LVTH以上となる(水位センサ591の検出水位が確実にHIGHとなる)。その結果、ポンプ装置32の作動前後における水位センサ591の検出信号の変化(LOWからHIGH)によって、ポンプ装置32を確実に正常判定できるようになる。
【0103】
次に、溜められた水を使って流水経路52内を循環洗浄するために、図14Bに示すようにポンプ装置32を作動し(S19)、水位センサ591で水位を検出する(S126)。ポンプ装置32が正常に作動すると、既述したように流水経路52内を水が循環して圧損が生じるため、タンク本体部61の水位は図13の矢線に示すように上昇する。ポンプ装置32の作動後の状態におけるタンク本体部61の水位を第2水位LV20とする。そして、制御部80は、第2水位LV20が水位閾値LVTH以上となり、水位センサ591の検出水位がHIGHである場合には(S128におけるYES)、ポンプ装置32が正常と判定する(S27)。また、本実施例においては、洗浄運転の累積ポンプ異常検知回数(以下、累積異常検知回数と記す)E1が記憶部81に記憶されており、ポンプ装置32が正常と判定されると、累積異常検知回数E1が工場出荷時と同じ初期値0にリセットされる(S130)。
【0104】
ポンプ装置32は、図14B及び図14Cに示すように循環洗浄に必要とされる所定時間(例えば1分間)だけ作動され、その経過後に停止される(S32のYES、S34)。そして、制御部80によってポンプ装置32の作動中(ポンプ装置32が作動された所定時間(1分間)内)にステップS27の正常判定が1回でも出されたか否かが判断され(S132)、NOの場合には、累積異常検知回数E1を1回加算してE1=E1+1とする(S134)。制御部80は、累積異常検知回数E1が所定回数(例えば10回)以上となれば(S136のYES)、ポンプ装置32は異常(故障)と判定し(S29)、表示部75にエラーメッセージを表示して使用者に報知する(S31)。使用者への報知(S31)後、ステップS132でYESの場合、及びステップ136でNOの場合は、排水バルブ94を所定時間(例えば1分間)だけ開いて(S36)、流水経路52内の残水を排水し、洗浄運転が終了となる。
【0105】
このように累積異常検知回数E1によって異常判定して使用者に報知することで、水位センサ591としてフロートスイッチを用いた場合であっても誤検知を抑制することができる。フロートスイッチは一般に、タンク本体部61の水面の波立ちや浮き子591Aに付着する汚れ(スケール等)の影響を受けやすい。このため、水位センサ591の検出水位がLOW(S128においてNO)とされた場合でも、それは水位センサ591の誤検知に過ぎず、ポンプ装置32は正常に動作している可能性がある。そこで、異常検知回数を累積カウントして累積異常検知回数E1が所定回数に達した場合に異常と判定することで、誤検知、誤報知してしまう事態を回避できる。
【0106】
上記した洗浄運転の制御フローによれば、水位センサ591として低コストで汎用性に優れたフロートスイッチを用いつつ、洗浄運転のためにポンプ装置32を作動する際に、ポンプ異常報知処理を合わせて行うことができる。
【0107】
なお、流水経路52を循環洗浄する際の製氷水の循環方向は、ポンプ装置32の駆動方向及び貯水タンク60の形状等を適宜変更することで反対方向(すなわち、流水経路52を製氷水が貯水部S、通水管50、タンク本体部61、送水管51、ポンプ装置32、貯水部Sの順に循環)とすることもできる。その場合、ポンプ装置32が正常に作動すると、流水経路52内を水が循環して圧損が生じ、タンク本体部61の水位は下降し、貯水部Sの水位は上昇することとなる。このため製氷水の循環方向が反対方向の場合には、上記したステップS12からS17の給水処理(図14A)は実行せずに、ステップS118からS122の排水処理(図14B)は、給水バルブ54の断続的な開閉による給水処理とし、給水処理は水位センサ591の検出信号がHIGHになるまで繰り返すものとすればよい。そして、ポンプ装置32が正常に作動すると、タンク本体部61の水位は下降するため、ステップS128において水位センサ591の検出信号がLOWである場合に、ポンプ装置32が正常と判定するようにすればよい。
【実施例5】
【0108】
第5実施例の製氷機600は、洗浄運転を行う際に、ポンプ異常報知処理を含む洗浄運転を行うか、ポンプ異常報知処理を含まない洗浄運転を行うかが自動的に選択される。第5実施例において、第1実施例、第1変形例、第3実施例、及び第4実施例と同様の構成、作用及び効果についての説明は省略する。
【0109】
本実施例に係る洗浄運転は、図15に示すように、開始されると第4実施例と同様にステップS17までが行われる。次に、洗浄運転の累積実行回数N1の数によって、ポンプ異常報知処理を含む洗浄運転を行うか(S117のYES)、ポンプ異常報知処理を含まない洗浄運転を行うかが自動的に選択される(S117のNO)。本実施例では、洗浄運転の実行回数が累積カウントされて累積実行回数N1として記憶部81に記憶されており(工場出荷時の初期値0)、累積実行回数N1の数によってポンプ異常報知処理を行うか否かが選択されるようになっている(S117)。より詳しくは、ステップS117では、実行中の洗浄運転(累積実行回数N1)が工場出荷時から所定回数目(N回目、例えばN=1,11,21…)である場合に(S117のYES)、第4実施例と同じポンプ異常報知処理を含む洗浄運転に進む。一方で、累積実行回数N1がN回目でない場合には(S117のNO)、ポンプ異常報知処理を含まない洗浄運転(通常の洗浄運転)が行われる。具体的には通常の洗浄運転では、ポンプ装置32が作動されて(S19)、所定時間(例えば1分間)の経過後に停止され(S32のYES、S34)、排水バルブ94を所定時間(例えば1分間)だけ開いて(S36)、流水経路52内の残水を排水し、洗浄運転が終了となる。
【0110】
このようにすれば、洗浄運転の度にポンプ異常検知処理を行わず、所定回数に1回の割合で実行することができる。第4実施例では、ポンプ異常検知処理を行うために排水バルブ94の開閉回数が増大するが、本実施例によれば排水バルブ94の開閉回数の増大を必要最小限に抑制できる。その結果、排水バルブ94の寿命低下を抑制できるようになる。
【0111】
<他の実施形態>
(1)上述した実施例及び変形例の製氷機は、いずれも流水経路が製氷部の水を循環可能な構成とされていたが、そのような構成に限定されない。つまり、流水経路が貯水タンクと供給路とで構成される製氷機に採用することもできる。また、流水経路には、水源から製氷部に直接製氷水を供給する流路も含まれ、本発明の製氷機は、その流路において水の流れが他の箇所に比較して緩やかになる箇所にUV照射する構成とすることもできる。また、本発明の製氷機は、上述したオーガ式製氷機および流下式製氷機に限定されず、セル式、ドラム式、貯水式等、種々の型式の製氷機に採用することができる。
【0112】
(2)また、上述した第3実施例から第5実施例では、製氷機はポンプ装置の異常を検知して使用者に報知する機能を備え、ポンプ装置によって循環される水はUV照射される構成とされていたが、当該水は、UV照射されていなくても構わない。ポンプ装置によって循環される水は、例えば、単なる水道水、洗剤が混合された水、オゾン水等、循環することで洗浄作用や殺菌作用を奏する水系媒体(水を主成分とする液状の物質)であればよい。第3実施例から第5実施例に記載の技術は、このような水系媒体を循環するポンプ装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10,200,400,500,600…オーガ式製氷機、20…製氷部、20A…製氷機構、S…貯水部、21…シリンダ、22…オーガ、22A…削氷刃、23…成形部材、30…供給路、31…回収路、32…ポンプ装置、32A…ポンプモータ、40…冷凍回路、50…通水管、51…送水管、52…流水経路、54…給水バルブ、60…貯水タンク〔タンク〕、61…タンク本体部、62…排水部、63…蓋体〔蓋部〕、63B…第2注水口〔注水口〕、65…受水部、70…貯氷タンク、75…表示部(報知部)、80…制御部、90,290…UV殺菌装置、91…水位センサ〔距離センサ〕、94…排水バルブ、100,300…流下式製氷機、111…製氷部、112…製氷板、113…貯水タンク〔タンク〕、114…貯氷タンク、115…ポンプ装置、118…配管〔供給路〕、122…水位センサ〔距離センサ〕、126…タンク本体部、127…蓋体、133…ポンプモータ、140…冷却装置、151…氷排出管、160…キューブガイド〔分離部材〕、160A…開口、161…ディフレクタ、162,163,362,363…UV殺菌装置、591……水位センサ〔フロートスイッチ〕、591A…浮き子、ΔLV…水位変化
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15