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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/147 20180101AFI20240925BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
F25C1/147 Z
F25D19/00 530D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021015230
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118596
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】田代 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大谷 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】荒井 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】中田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】芝田 悠月
(72)【発明者】
【氏名】水谷 保起
(72)【発明者】
【氏名】山崎 拓也
(72)【発明者】
【氏名】嘉戸 修治
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-146389(JP,A)
【文献】特開2014-074526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(11)の内側に画成される機械室(11a)に、圧縮機(CM)、凝縮器(CD)、膨張弁(EV)、蒸発管(EP)を有する冷凍回路と、前記凝縮器(CD)を空冷する空冷ファン(F)と、給水タンク(27)から供給される製氷水により氷を生成する製氷部(29)と、制御基板を内包する電装箱(60)とを備え、該機械室(11a)の内外を連通する吸気口(51)および排気口(52)が前記筐体(11)に形成されている製氷機において、
前記空冷ファン(F)が前記機械室(11a)における前記排気口(52)側に設けられ、該排気口(52)と前記空冷ファン(F)とで挟まれる位置に前記凝縮器(CD)が設けられると共に、
前記機械室(11a)を前側空間(Sa)と後側空間(Sb)とに区画するセパレータ(19)を備え、
前記吸気口(51)および前記排気口(52)は、前記後側空間(Sb)を機外部と連通する位置に形成され、
前記後側空間(Sb)に前記凝縮器(CD)および前記空冷ファン(F)が収容され、前記前側空間(Sa)には氷を貯留するストッカ(ST)が収容されて、該ストッカ(ST)内に貯留された氷の出口が前記筐体(11)の前面側に開口するように設けられ、
前記セパレータ(19)の上縁部に形成された開口部(19b)が、前記後側空間(Sb)における前記空冷ファン(F)の吐出側と、前記前側空間(Sa)とを連通するように構成されている
ことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
前記筐体(11)の底板(13b)に前記吸気口(51)が形成され、
前記筐体(11)の天板(13a)に前記排気口(52)が形成され、
前記天板(13a)の下面に対向して前記凝縮器(CD)が配置され、
前記底板(13b)の上面に対向して前記圧縮機(CM)が配置されている請求項1記載の製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷を製造する製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍回路を構成する蒸発管の冷却作用によって製氷部に氷を製造する製氷機が、食料品店や飲食店等で広く使用されている。図5に示すように、製氷機に内蔵される冷凍回路は、圧縮機CM、空冷ファンFにより空気冷却される凝縮器CD、減圧手段としての膨張弁EV、蒸発管(蒸発器)EP等の機器を冷媒配管(配管)31で接続して構成される。冷媒配管31には、圧縮機CMを駆動することで冷媒が循環するようになっている。すなわち、圧縮機CMで圧縮された気化冷媒を凝縮器CDで凝縮させて液化した後、膨張弁EVで減圧した冷媒を蒸発管EPで一挙に膨張させることで、製氷部29を氷点下まで冷却する。そして、蒸発管EPで製氷部29と熱交換した後の気化冷媒は圧縮機CMに戻り、圧縮機CMで再び圧縮されて冷凍回路を循環するようになっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
製氷機の一例として、使用者の操作に応じて氷を提供するアイスディスペンサを図6に示す。このアイスディスペンサ(製氷機)10Xは、フレーク状の氷を製造するオーガ式製氷機であり、箱状の筐体11の内側に配置された製氷部としての円筒形の冷凍ケーシング29の外周面に、蒸発管EPが螺旋状に巻き掛けられている。冷凍ケーシング29には給水タンク27からの製氷水が供給され、蒸発管EPとの熱交換によって内周面に氷が生成される。そして、生成された氷をオーガ(図示せず)によって削り取り、上方のストッカSTへと搬送して貯留するようになっている。ストッカSTの前面側には、氷を放出する放出部25が設けられており、この放出部25の下端部に氷の出口が開口している。また、放出部25の下方には前後に揺動する操作レバー26が配置されている。従って、コップ等の飲料容器で操作レバー26を後方へ押しのけるように操作すると、ストッカST内の氷が放出部25から放出され、その氷を飲料容器で受けることができる。なお、氷に加えて飲料水を提供可能なディスペンサでは、外部水道に繋がる注水ノズルが放出部25に設けられる。
【0004】
前記筐体11の内側空間(機械室11a)は、その前後方向の略中央部に立設されたセパレータ(仕切板)19によって前側空間Saと後側空間Sbとに区画されている。このうち前側空間Saには、冷凍ケーシング29および蒸発管EPやストッカST、給水タンク27等が収容されている。また、後側空間Sbには、圧縮機CMや凝縮器CD、空冷ファンF等が収容されている。なお、セパレータ19の後面に電装箱60が取り付けられて当該電装箱60が後側空間Sbに位置している。この電装箱60には、圧縮機CMや空冷ファンF等の制御を担うマイクロコンピュータ(制御部)を有する制御基板が内包されている。
【0005】
空冷ファンFは、後側空間Sbの下部領域で凝縮器CDの上面に対向するように配置され、その下方から上方に向けて空気を流動させるように回転駆動される。この空冷ファンFの回転により、筐体11の底板13bに形成された吸気口51を通じて機外部の空気が後側空間Sbに取り込まれ、その取り込まれた空気は、凝縮器CDと熱交換した後に圧縮機CMや電装箱60の周囲を上昇し、筐体11の天板13aに形成された排気口52から機外部へと排気される(図6に示す矢印Y1方向に移動する)。なお、符号21は、吸気口51を下側から覆うエアフィルタであり、符号23は、排気口52を上側から覆うルーバ23である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-145212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように空冷ファンFを機械室11a内の吸気口51側に配置する場合は、機外部から取り込まれた空気が凝縮器CDと熱交換して熱風となり、その熱風が機械室11a(後側空間Sb)内を流通する。すなわち、機械室11a(後側空間Sb)内の温度が上昇するので、例えば、圧縮機CMや電装箱60等は、その雰囲気温度の上昇により耐久性が低下する可能性がある。なお、機械室11aの前側空間Saは、前述の如くセパレータ19によって後側空間Sbと区画されているが、そのセパレータ19の外形は筐体11の内形と完全には整合しておらず、隙間から後側空間Sbの熱風が流入する(図6に示す矢印Y2方向に熱風の一部が移動する)。これにより例えば、前側空間Saに配置される給水タンク27内の製氷水の水温が上昇することで、製氷能力が低下する虞がある。また、給水タンク27内の製氷水が菌の増殖に適した温度(至適温度30℃~40℃)に近づくことになり、衛生面で問題が生じ得る。
【0008】
更に、機械室11a内を前述の配置にする場合、その底面には凝縮器CDが配置されることから、底面より上方位置に圧縮機CMを配置することになり、圧縮機CMを支持する支持部材37が必要となる。この支持部材37は重量のある圧縮機CMを支持するものであるため強度が必要であり、部品コストがかかる。
【0009】
そこで本発明は、従来の製氷機に内在する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、コストを抑えつつ、機械室内の温度上昇を抑制し得る製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の手段は、
筐体の内側に画成される機械室に、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発管等を有する冷凍回路と、前記凝縮器を空冷する空冷ファンと、給水タンクから供給される製氷水により氷を生成する製氷部と、制御基板を内包する電装箱とを備え、該機械室の内外を連通する吸気口および排気口が前記筐体に形成されている製氷機において、
前記空冷ファンが前記機械室における前記排気口側に設けられ、該排気口と前記空冷ファンとで挟まれる位置に前記凝縮器が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、空冷ファンが機械室内で排気口側に位置し、この空冷ファンおよび排気口の間に凝縮器が位置するので、空冷ファンの吸気側に位置する機械室内の空気が、空冷ファンおよび凝縮器の位置を通って排気口から排気される。すなわち、凝縮器の空冷に利用する前の空気を機械室内に流通させるので、機械室内の温度上昇が抑制される。このため、機械室内に収容される圧縮機や電装箱等の耐久性が低下するのを抑止することができる。また、給水タンク内の製氷水の温度上昇が抑制されるので、製氷能力の低下や製氷水での菌の増殖を抑止することができる。
【0011】
第2の手段は、
前記筐体の底板に前記吸気口が形成され、
前記筐体の天板に前記排気口が形成され、
前記天板の下面に対向して前記凝縮器が配置され、
前記底板の上面に対向して前記圧縮機が配置されていることを要旨とする。
この構成によれば、凝縮器および空冷ファンを排気口側に配置することで機械室の下部に圧縮機の配置スペースを確保でき、頑丈で高価な支持部材を使って圧縮機を機械室の高い位置に支持する必要が生じない。すなわち、圧縮機を筐体の底板の上面に載置する構成により、部品コストを低減できる。
【0012】
第3の手段は、
前記機械室を前側空間と後側空間とに区画するセパレータを備え、
前記吸気口および前記排気口は、前記後側空間を機外部と連通する位置に形成され、
前記後側空間に前記凝縮器および前記空冷ファンが収容され、前記前側空間には氷を貯留するストッカが収容されて、該ストッカ内に貯留された氷の出口が前記筐体の前面側に開口するように設けられ、
前記セパレータの上縁部に形成された開口部が、前記後側空間における前記空冷ファンの吐出側と、前記前側空間とを連通するように構成されていることを要旨とする。
この構成によれば、機械室内の排気口側に空冷ファンを配置して凝縮器の空冷を行う場合、機械室内の空気が空冷ファンによって積極的に機外部へと排出されるので、機械室内への吸気が正常に行えない場合、例えば、吸気口を覆うエアフィルタに埃が詰まった状態では、機械室内が負圧になり得る。機械室内が負圧になると、氷の出口から埃や塵が吸い込まれる可能性があり、吸い込まれた埃や塵が異物として氷に混入する虞がある。これに対し、セパレータの上縁部に開口部を形成し、この開口部が、後側空間における空冷ファンの吐出側と、前側空間とを連通する構成により、後側空間で空冷ファンから吐き出された空気の一部が前側空間に流入する。従って、前側空間が負圧になるのを防ぐことができ、氷の出口から埃や塵が吸い込まれる不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製氷機によれば、コストを抑えつつ、機械室内の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、実施例に係る製氷機における筐体の内部構造を示す概略構成図であり、(b)は、(a)における囲みX1の拡大図である。
図2】筐体の後壁を取り外して機械室の上部を背面側から見た状態を示している。
図3】セパレータおよびシュラウドの形状に関する説明図である。
図4】(a)は、ストッカの概略構成図であり、(b)は、図1における囲みX2の拡大図である。
図5】一般的な冷凍回路に関する説明図である。
図6】一般的な製氷機の内部構造を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。本実施例では、氷および飲料水を提供する飲料用ディスペンサの構成について説明し、前述した従来の冷凍回路(図5参照)およびアイスディスペンサ(図6参照)と同一の構成に関しては、同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。但し、ディスペンサ以外の製氷機(氷の放出機能のない製氷機)にも本発明の構成を適用し得る。また以下の説明では、製氷機を正面側(前側)から見た状態を基準として、左右方向、上下方向および前後(手前・奥)方向を規定して説明する。
【実施例
【0016】
実施例の製氷機(飲料用ディスペンサ)10は、図1(a)に示すように、外郭を構成する縦長矩形状の筐体11の内側に画成された機械室11aに、冷凍回路(圧縮機CM、凝縮器CD、膨張弁EV、蒸発管EP等)、空冷ファンF、冷凍ケーシング(製氷部)29、給水タンク27、ストッカST等が収容されている。筐体11は、前方に開口する箱形の筐体基部13と、この筐体基部13の前面開口を覆うように配置されたフロントパネル15とで基本的に構成されている。筐体基部13は、天板13a、底板13b、左右の側板13cおよび背板13dを組み合わせて前方に開口する箱状に構成されている。また、筐体11は、底板13bから延びる4本の脚部17によって自立するように構成されている。すなわち、製氷機10(筐体11)を平面に設置する場合、その底板13bの下方には脚部17の長さ分に相当する上下寸法の隙間が確保される。
【0017】
筐体11の内側(機械室11a)には、セパレータ19がその板面を前後に向けた姿勢で配置されている。これにより機械室11aは、セパレータ19より前側(フロントパネル15との間)の前側空間Saと、セパレータ19より後側(筐体11の背板13dとの間)の後側空間Sbとに区画されている。
【0018】
機械室11aの前側空間Saには、蒸発管EPが外周面に巻回された冷凍ケーシング29が収容されていると共に、給水タンク27やストッカST等が収容されている。給水タンク27は、セパレータ19を後方へ箱状に折り曲げて形成したタンク収容部19a(図3参照)に一部が入り込む状態で配置されている。ストッカSTの前面側には、氷および飲料水を下方(コップ等の飲料容器による氷の受け取り位置)に向けて放出する放出部25が設けられている。本実施例の放出部25は、ストッカST内の氷を放出するための機構部分(氷案内路25a、スパウト25bおよびシャッタ機構25c)と、外部水道からの飲料水を放出するための機構部分(注水ノズル25dおよび図示しない開閉弁)とで構成される。すなわち、スパウト25bの下端部が氷の出口となっており、注水ノズル25dの下端部が飲料水の出口となっている。これに対し、氷を放出する機構部分のみで放出部25を構成してもよい。
【0019】
また、機械室11aの後側空間Sbには、圧縮機CM、凝縮器CD、空冷ファンF、電装箱60等が収容されている。そして、筐体11の底板13bに形成された吸気口51と、筐体11の天板13aに形成された排気口52とが、機械室11aのうち後側空間Sbを機外部と連通するように構成されている。すなわち、空冷ファンFの回転駆動により、筐体11の下方(機外部)の空気が吸気口51から機械室11aの後側空間Sbに取り込まれ、この取り込まれた空気は後側空間Sbを上昇して、排気口52から筐体11の上方(機外部)へと排気される。
【0020】
(空冷ファンFの吐出配置について)
ここで、空冷ファンFの機械室11a内での配置(吐出配置)について説明する。本実施例の製氷機10では、凝縮器CDおよび空冷ファンFが後側空間Sbの上部(排気口52側)に配設され、空冷ファンFが機械室11a内の空気を機外部に向けて積極的に吐出する構成となっている。一方で、後側空間Sbの下部には、圧縮機CMが底板13bの上面に載置されるかたちで配設されている。また、セパレータ19の後面における上下方向の中央部に、電装箱60がタンク収容部19aを避けて配設されている。すなわち、機械室11aの後側空間Sbにおいて、天板13aの下面と対向する位置に凝縮器CDが配置され、この凝縮器CDの下面側に空冷ファンFが取り付けられている。そして、筐体11の下方から吸気口51を介して後側空間Sbに取り込まれた空気が、圧縮機CMの周囲を上昇し、次に電装箱60の周囲を上昇して、空冷ファンFに吸い込まれ、当該空冷ファンFから凝縮器CD側に吐き出されることで当該凝縮器CDと熱交換して、直ちに排気口52から筐体11の上方に排出されるように構成されている。
【0021】
ここで、前述した機械室11a内の配置に関する作用効果について説明する。本実施例の製氷機10では、空冷ファンFが機械室11aにおける排気口52側に設けられていると共に、空冷ファンFと排気口52とで挟まれる位置に凝縮器CDが設けられているので、空冷ファンFの吸気側(すなわち空冷ファンFより下方)に位置する機械室11a内の空気が、空冷ファンFおよび凝縮器CDの位置を通って排気口52から排気される。すなわち、凝縮器CDの空冷に利用する前の空気を機械室11a内に流通させ、その空気が凝縮器CDの空冷に利用されて温度上昇した後は直ちに排気口52から排気することで、機械室11a内の温度上昇が抑制される。このため、機械室11a内に収容される圧縮機CMや電装箱60等の耐久性が低下するのを抑止することができる。また、前側空間Saに配置されている給水タンク27内の製氷水の温度上昇が抑制されるので、製氷能力の低下や製氷水での菌の増殖を抑止することができる。
【0022】
また、製氷機10は、筐体11の底板13bに吸気口51が形成されると共に、筐体11の天板13aに排気口52が形成され、天板13aの下面に対向して凝縮器CDが配置されると共に、底板13bの上面に対向して圧縮機CMが配置されているので、凝縮器CDおよび空冷ファンFが排気口52側にあって後側空間Sb(機械室11a)の下部に圧縮機CMの配置スペースを確保でき、頑丈で高価な支持部材を使って圧縮機CMを機械室11aの高い位置に支持する必要が生じない。すなわち、圧縮機CMを筐体11の底板13bの上面に載置する構成により、部品コストを低減できる。
【0023】
(前側空間Saの負圧化抑制構造について)
本実施例の製氷機10では、機械室11aのうち前側空間Sa内の気圧が下がり負圧となるのを防ぐため、後側空間Sbにおける空冷ファンFの吐出側となる上端部の領域のみを前側空間Saと僅かに連通させる(後側空間Sbにおける空冷ファンFの吸込側に位置する領域に対しては前側空間Saとの空間的な連通を防止する)構成としている。具体的には、図2に示すように、セパレータ19の側縁部と筐体11の側板13cとの間の隙間を塞ぐための直線状のシール部材33が、凝縮器CDを支持するシュラウド35の側方位置から機械室11aの下端(底板13b)にかけて延在するように配置されている。一方で、セパレータ19の上縁部には、図1(b)、図2および図3に示すように、上方に開口する切欠き状の第1開口部19bが形成されている。また、シュラウド35におけるセパレータ19と対向する部位の上縁部に、上方に開口する切欠き状の第2開口部35aが形成されている。セパレータ19およびシュラウド35は、上縁部が筐体11の天板13aの下面に接する状態で機械室11aに配置され、第1開口部19bと第2開口部35aとが連通するように構成されている。すなわち、空冷ファンFの吸込側(空冷ファンFより下方)には、当該空冷ファンFの回転に伴って前側空間Saから後側空間Sbに空気が移動しないように規制するシール部材33が設けられており、空冷ファンFの吐出側(空冷ファンFより上方)には、後側空間Sbから前側空間Saに空気が移動する経路(第1開口部19bおよび第2開口部35a)を設けている。
【0024】
ここで、前述した前側空間Saの負圧化抑制構造に関する作用効果について説明する。本実施例の製氷機10では、前述の如く空冷ファンFが吐出配置(排気口52側に位置する配置)となっており、機械室11a内への吸気が正常に行えない場合、例えば、吸気口51を覆うエアフィルタ21に埃が詰まった状態では、機械室11aが負圧になり得る。ここで、筐体11前面側には、スパウト25bの出口(氷の出口)や注水ノズル25dの出口(飲料水の出口)が開口している。このため、機械室11aにおいて前側空間Saまでが負圧になると、スパウト25bや注水ノズル25dの出口から埃や塵が吸い込まれる可能性があり、吸い込まれた埃や塵が異物として氷や飲料水に混入する虞がある。そこで、本実施例の製氷機10では、機械室11aを前側空間Saおよび後側空間Sbに区画するセパレータ19の上縁部に形成された第1開口部19bが、凝縮器CDを支持するシュラウド35に形成された第2開口部35aを介して、後側空間Sbにおける空冷ファンFの排気側と、前側空間Saとを連通するように構成している。すなわち、後側空間Sbにおいて空冷ファンFの回転によって吐き出された空気の一部を前側空間Saに流入させることで、前側空間Saが負圧になるのを防ぐことができ、氷の出口や飲料水の出口から埃や塵が吸い込まれる不具合を防止することができる。
【0025】
(ストッカSTの容量増加構造について)
次に、図4(a)および図4(b)を参照し、ストッカSTの構成について説明する。本実施例のストッカSTは、有底円筒状のビン71と、円盤状のカバー73との間に、ストッカST内部の氷の貯留空間の高さを拡大するための環状のスリーブ75を介在させている。ビン71は、底壁部71aの外周から上方に向けて円筒部71bが延出する構成であり、スリーブ75は、その下面をビン71における円筒部71bの環状の上面に対向させた状態で、ネジNによりビン71に固定されている。すなわち、スリーブ75は、ビン71の円筒部71bの高さ寸法を延長するのと同様に機能している。なお、ビン71がステンレスの絞り加工により形成されているのに対し、スリーブ75は合成樹脂材により形成されている。
【0026】
スリーブ75の下面の内周縁部には、下方に向けて開口する環状溝部77が形成されており、円筒部71b(ビン71)の上面の内周縁部に沿って上方に突出する環状突部71c(図4(a)中の拡大図を参照)が、環状溝部77に嵌合するように構成されている。また、スリーブ75の下面の外周縁部には、円筒部71b(ビン71)の上面の外周縁部を外周側から覆う環状被覆部79が形成されている。更に、スリーブ75の下面と、円筒部71b(ビン71)の上面との間には、環状のパッキン81が配設されている。このパッキン81は、スリーブ75の環状溝部77の外周縁部によって円筒部71b(ビン71)の上面に押し潰される状態となり、スリーブ75とビン71との間の隙間を塞ぐように機能する。
【0027】
ここで、前述したストッカSTの容量増加構造に関する作用効果について説明する。本実施例の製氷機10では、有底円筒状のビン71の上面(円筒部71bの上面)に対して下面が対向するように環状のスリーブ75が配置され、このスリーブ75の開口を上から覆うようにカバー73を配置している。ビン71は、深絞りが難しいステンレスを平板から有底筒状にプレスする絞り加工によって形成されるので、貯氷量を増加させるためにビン71の高さ寸法を拡大するのは容易ではない。ビン71の直径を拡大して貯氷量を増加させることもできるが、ビン71を形成するための高価な金型が新規に必要になりコストがかかる。これに対し、ビン71の円筒部71bとカバー73との間に環状のスリーブ75を備え、このスリーブ75を、ビン71の円筒部71bの高さ寸法を延長するのと同様に機能させることにより、ビン71の形状を大幅に変える必要なく、ストッカST内の氷の容量を増加させることができる。また、スリーブ75は、合成樹脂材により形成されるので、ビン71と同様にステンレスで形成される場合と比較して、当該スリーブ75の内周面に氷がアーチングする可能性を低減することができる。更に、ビン71における円筒部71bの上面とスリーブ75の下面との間にパッキン81を設けて隙間を防止することにより、ビン71およびスリーブ75の間から融氷水が染み出てくるのを防止することができる。
【0028】
〔変更例〕
本願は前述した実施例の構成に限定されるものではなく、例えば以下の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例では、吸気口を筐体の底板に形成すると共に排気口を筐体の天板に形成したが、吸気口および排気口は異なる位置に形成されていてもよい。例えば、吸気口を筐体の背板の下部に形成し、この背板の上部に排気口を形成するようにしてもよい。
(2) 実施例では、圧縮機を筐体の底板に載置して配設したが、支持部材を用いて底板より上方に配設してもよい。
(3) 実施例では、放出部を構成するスパウトの下端部を氷の出口とするディスペンサについて説明したが、氷を放出する機能を有しない製氷機に発明の構成を適用することも可能である。この場合には、ストッカに連通する氷取出し口が氷の出口となる。
【符号の説明】
【0029】
11 筐体,11a 機械室,13a 天板,13b 底板,19 セパレータ,
19b 第1開口部(開口部),27 給水タンク,29 冷凍ケーシング(製氷部),
51 吸気口,52 排気口,60 電装箱,CD 凝縮器,CM 圧縮機,
EP 蒸発管,EV 膨張弁,F 空冷ファン,Sa 前側空間,Sb 後側空間,ST ストッカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6