(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】障子固定ピース及び排煙窓
(51)【国際特許分類】
E05C 21/02 20060101AFI20240925BHJP
E06B 3/38 20060101ALI20240925BHJP
E06B 7/06 20060101ALI20240925BHJP
E05D 11/10 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
E05C21/02
E06B3/38
E06B7/06
E05D11/10
(21)【出願番号】P 2021020327
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020152437
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】金森 英晃
(72)【発明者】
【氏名】西田 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 正義
(72)【発明者】
【氏名】朝日 信一
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-028285(JP,U)
【文献】特開2004-011242(JP,A)
【文献】特開2018-059265(JP,A)
【文献】実開昭49-124398(JP,U)
【文献】実開昭62-073075(JP,U)
【文献】特開2018-035622(JP,A)
【文献】特開2018-184709(JP,A)
【文献】特開2022-045975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00-21/02
E06B 3/04-3/46,3/50-3/52
E06B 7/00-7/36
E05D 11/00-13/00
E05F 1/00-13/04,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
框係合部と枠係合部とを備え、枠係合部は、框係合部と見込み方向に離間して框係合部よりも内周側に位置しており、障子を開いた状態で框係合部を框の見付壁の外周側縁部に係合して取付けると、框の見付壁の外周側縁部を支点として枠係合部が内外周方向に回動自在であり、障子を閉鎖すると枠係合部が枠の戸当たり片の先端部を乗り越えるとともに、枠の戸当たり片の見付面で押されることで外周側に回動して、枠の戸当たり片の障子と反対側の面に引っ掛かることで障子を閉鎖状態に保持することを特徴とする障子固定ピース。
【請求項2】
枠と、障子と、障子に取付けた請求項1記載の障子固定ピースとを備えることを特徴とする排煙窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子を閉鎖状態に保持する障子固定ピースと、その障子固定ピースを備える排煙窓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排煙窓は、輸送中に障子が開かないように、障子の框を枠に粘着テープで固定して工場から出荷していた。しかし、粘着テープで障子を枠に固定する方法は、信頼性に欠ける上、粘着テープを外した際に障子が急に開いて障子に傷が付いたり、粘着テープの跡が残ったりする不都合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、障子を閉鎖状態に保持する障子固定ピースと、排煙窓の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による障子固定ピースは、框係合部と枠係合部とを備え、枠係合部は、框係合部と見込み方向に離間して框係合部よりも内周側に位置しており、障子を開いた状態で框係合部を框の見付壁の外周側縁部に係合して取付けると、框の見付壁の外周側縁部を支点として枠係合部が内外周方向に回動自在であり、障子を閉鎖すると枠係合部が枠の戸当たり片の先端部を乗り越えるとともに、枠の戸当たり片の見付面で押されることで外周側に回動して、枠の戸当たり片の障子と反対側の面に引っ掛かることで障子を閉鎖状態に保持することを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による排煙窓は、枠と、障子と、障子に取付けた請求項1記載の障子固定ピースとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による障子固定ピースは、框係合部と枠係合部とを備え、枠係合部は、框係合部と見込み方向に離間して框係合部よりも内周側に位置しており、障子を開いた状態で框係合部を框の見付壁の外周側縁部に係合して取付けると、框の見付壁の外周側縁部を支点として枠係合部が内外周方向に回動自在であり、障子を閉鎖すると枠係合部が枠の戸当たり片の先端部を乗り越えるとともに、枠の戸当たり片の見付面で押されることで外周側に回動して、枠の戸当たり片の障子と反対側の面に引っ掛かることで、障子を閉鎖するだけで障子を閉鎖状態に確実に保持できる。
【0007】
請求項2記載の発明による排煙窓は、枠と、障子と、障子に取付けた請求項1記載の障子固定ピースとを備えることで、障子を閉鎖するだけで障子を閉鎖状態に確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は本発明の障子固定ピースの一実施形態を示す側面図、(b)は同平面図、(c)は同正面図である。
【
図2】本発明の排煙窓の一実施形態を示す室内側正面図である。
【
図3】同障子固定ピースを障子の上框に取付けた状態を示す側面図である。
【
図4】障子を閉鎖し、固定する際の手順を示す縦断面図である。
【
図5】障子を閉鎖し、固定する際の手順を示す横断面図である。
【
図7】(a)は本発明の障子固定ピースの他の実施形態を示す側面図、(b)は同平面図、(c)は同正面図である。
【
図8】
図7に示す障子固定ピースにより枠に固定した障子を開く際の手順を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の障子固定ピース3の一実施形態を示しており、
図2は本発明の排煙窓の一実施形態を示している。
図2に示す排煙窓は、工場から出荷するときの状態を示しており、枠1と、枠1内に取付けた障子2と、障子2に取付けた障子固定ピース3,3とを備えており、障子固定ピース3,3により工場から施工現場に搬送する間に障子2が開かないように枠1に固定している。本排煙窓は、障子2が室外側に倒れるように開く外倒し窓となっている。
【0010】
枠1は、
図2に示すように、アルミ形材よりなる上枠9と下枠11と左右の縦枠6,6を四周枠組みして構成してある。上枠9は、
図1(a)に示すように、障子2よりも室内側に垂下する戸当たり片12を有し、戸当たり片12の先端部にリップ溝13が形成してあり、リップ溝13に保持してタイト材14が室外側に向けて設けてある。縦枠6は、
図1(b)に示すように、障子2よりも室内側に内周側に向けて突出する戸当たり片7を有し、戸当たり片7の先端部にリップ溝13が形成してあり、リップ溝13に保持してタイト材(図示省略)が室外側に向けて設けてある。
【0011】
障子2は、
図2に示すように、アルミ形材よりなる上框4と下框15と左右の縦框16,16を四周框組みして構成してある。左右の縦框16の上下端部には、
図1,5に示すように、樹脂製の端部キャップ17が取付けてある。框組みした枠内にはガラスが取付けられるが、
図2に示す工場出荷時の段階では、まだガラスは取付けられていない。障子2は、下框15が図示しない蝶番で下枠11と連結されている。縦枠6と縦框16の間の空間18(
図5参照)には、障子2を開く方向に付勢するためのダンパー(図示省略)が取り付けられている。
上框4は、
図1(a)に示すように、室内側の見付壁の外周側縁部19が、室内側に屈曲してから外周側にのびるクランク状に形成されている。外周側縁部19の室外側には、凹部22が形成されている。
【0012】
障子固定ピース3は、
図2に示すように、左右2つで一組であり、左右の障子固定ピース3,3は左右対称な同一の形状となっている。障子固定ピース3は、硬質の樹脂で一体成形したものであり、
図1(a)に示すように、室外側に鉤型に形成された框係合部23を有している。框係合部23には、上框4の見付壁の外周側縁部19と係合する溝24と、上框4の凹部22底面に当接する当接部25を有している。溝24内には外れ止め用の突起26a,26bが形成してある。溝24は、上框4の見付壁の外周側縁部19に対して余裕を持って形成してある。本障子固定ピース3は、上框4の見付壁の外周側縁部19に框係合部23の溝24を上方から係合させることで、上框4の長手方向にスライド可能に取付けられる。
また障子固定ピース3は、
図1(a)に示すように、框係合部23から室内側に離間して上方に突出する枠係合部31を有している。枠係合部31は、框係合部23よりも内周側に位置しており、枠係合部31の室内側上端部には斜め45°の傾斜面32を有している。框係合部23と枠係合部31との間には、上枠9の戸当たり片12の外周側端部及びタイト材14を受け入れる空間37が設けてある。
さらに本障子固定ピース3は、枠係合部31の下方に連続して左右両側の側方に張り出すように開き規制片33,33が設けてある。また、障子固定ピース3の下面の室外側端より内周側に向けて延出して手掛け部34が設けてある。さらに、障子固定ピース3の室内側面に工具差込穴35が室外側に向けて設けてある。
【0013】
本障子固定ピース3は、框係合部23の溝24が上框4の見付壁の外周側縁部19に対して余裕を持って形成してあることで、
図3に示すように、障子2を開いた状態で框係合部23を上框4の見付壁の外周側縁部19に係合して取付けると、上框4の見付壁の外周側縁部19を支点として枠係合部31が内外周方向に回動し得るようになっている。
【0014】
次に、障子2を閉鎖し固定する際の手順を説明する。まず、
図5(a)に示すように、上框4の左右2か所に障子固定ピース3,3を、上框4の見付壁の外周側縁部19に障子固定ピース3,3の框係合部23の溝24を上方から係合させて取付ける。このとき、開き規制片33の先端が縦枠6の戸当たり片7の内周側端より内周側に位置するようにしておく。
次に、
図4(a)に示すように、障子固定ピース3の手掛け部34に手を掛けて上框4を内周側から掴んで障子2を閉める。手掛け部34に手を掛けることで、枠係合部31が内周側に移動した状態になっている。
障子2を閉めてゆくと、
図4(b)に示すように、傾斜面32が上枠9の戸当たり片12の先端と擦れながら、枠係合部31が上枠9の戸当たり片12の先端部を乗り越える。
さらに障子2が閉まると、
図4(c)に示すように、上枠4の戸当たり片12の見付面(リップ溝13及びタイト材14が設けてある部分)に押されて障子固定ピース3が上框4の見付壁の外周側縁部19を支点として外周側に向けて回動する。
それに伴い、
図4(d)に示すように、障子固定ピース3の枠係合部31が上枠9の戸当たり片12の障子2と反対側の面に引っ掛かり、これにより障子2が開かないように枠1に固定される。枠係合部31の戸当たり片12との掛かり代Yは、5~10mmとしてある。枠係合部31は変形しないように十分な強度を持たせてあり、上枠9の戸当たり片12との掛かり代Yも十分大きく取ってあるため、ダンパーによる強い付勢力が作用しても枠係合部31が戸当たり片12から外れて障子2が開くことはない。なお、上述した障子2を閉める操作は、枠1の室内側面を床に置いて寝かせた状態で行うことができる。
その後、
図5(b)に示すように、左右の障子固定ピース3,3を外周側にスライドさせ、
図5(c)に示すように、障子固定ピース3,3の開き規制片33を縦枠6の戸当たり片7の室内側に対向させる。これにより、万が一、枠係合部31が上枠9の戸当たり片12から外れても、開き規制片33が縦枠6の戸当たり片7に引っ掛かることで、障子2が開くのを防止できる。
【0015】
施工現場において障子2を開く際には、まず左右の障子固定ピース3,3を開き規制片33が縦枠6の戸当たり片7から外れる位置まで内周側にスライドさせる。
次に、
図6(a)に示すように、障子固定ピース3の工具差込穴35に室内側からドライバー等の工具36を差し入れ、
図6(b)に示すように、工具36で内周側に力を加えることで障子固定ピース3の枠係合部31を内周側に回動させる。
これにより、
図6(c)に示すように、枠係合部31が上枠9の戸当たり片12から外れて障子2が開く。その後、障子固定ピース3,3を取り外す。
【0016】
図7は本発明の障子固定ピース3の他の実施形態を示している。本障子固定ピース3は、枠係合部31の内周側の左右両側位置に、室外側に向けてU字形のバネ片38が設けてある。本障子固定ピース3は、上框4の見付壁の外周側縁部19に框係合部23の溝24を係合させて取付けると、バネ片38の室外側端部が上框4の室内側面に当接してバネ片38が弾性変形し、これにより図中の矢印39に示すように、障子固定ピース3は枠係合部31が上框4の見付壁の外周側縁部19を支点として外周側に向けて回動する方向に付勢されている。
本障子固定ピース3は、先の実施形態と同様に、框係合部23の溝24が上框4の見付壁の外周側縁部19に対して余裕を持って形成してあって、障子2を開いた状態では、障子固定ピース3は上框4の見付壁の外周側縁部19を支点として枠係合部31が内外周方向に回動し得るようになっているが、上記のようにバネ片38による付勢力が働くことで、当接部25が上框4の凹部22底面に当接した姿勢に保持され、障子固定ピース3が上框4から外れにくくなっている。
また本障子固定ピース3は、工具差込穴35が室外側に向かって外周側に傾斜して設けてある。
【0017】
図8は、上記の障子固定ピース3により枠1に固定した障子2を開く際の手順を示している。障子2を開く際には、
図8(a)に示すように、障子固定ピース3の工具差込穴35に室内側からドライバー等の工具36を差し入れ、
図8(b)に示すように、工具36で内周側に力を加えることで障子固定ピース3の枠係合部31を内周側に回動させ、枠係合部31を上枠9の戸当たり片12から外す。その際、工具差込穴35が室外側に向かって外周側に傾斜して設けてあることで、高所にある排煙窓であっても工具差込穴35に工具36を差し込みやすく、工具36の先端で枠1を傷つけたり、工具36が工具差込穴35から不意に外れたりしたときに手が枠1に当たって怪我をしたりするのを防ぐことができる。
障子固定ピース3の枠係合部31が上枠9の戸当たり片12から外れると、
図8(c)に示すように、障子2はダンパーの力で勢いよく開くが、バネ片38の付勢力により枠係合部31が外周向きに回動して、框係合部23の溝24内に設けた外れ止め用の突起26a,26bが上框4の見付壁の外周側縁部19にしっかり掛かるため、障子2が開く際の反動で障子固定ピース3が外れて落下するのを防ぐことができる。
【0018】
以上に述べたように本障子固定ピース3は、框係合部23と枠係合部31とを備え、枠係合部31は、框係合部23と見込み方向に離間して框係合部23よりも内周側に位置しており、障子2を開いた状態で框係合部23を框(上框)4の見付壁の外周側縁部19に係合して取付けると、框4の見付壁の外周側縁部19を支点として枠係合部31が内外周方向に回動自在であり、障子2を閉鎖すると枠係合部31が枠(上枠)9の戸当たり片12の先端部を乗り越えるとともに、枠9の戸当たり片12の見付面で押されることで外周側に回動して、枠9の戸当たり片12の障子2と反対側の面に引っ掛かることで、障子2を閉鎖するだけで障子2を閉鎖状態に確実に保持できる。
また本障子固定ピース3は、框内周側に延出する手掛け部34を有し、手掛け部34は、障子2を閉鎖する際に框4の内周側から手を掛けるものなので、障子2を閉める際に手掛け部34に手を掛けることで枠係合部31を内周側に回動した状態に保持し、障子2をスムーズに閉鎖できる。
また本障子固定ピース3は、工具差込穴35を有し、工具差込穴35に工具36を差し込んで力を加えることで枠係合部31が内周側に回動して枠9の戸当たり片12から外れるので、障子2を開ける際の作業性も良い。工具差込穴35が室外側に向かって外周側に傾斜して設けてあると、障子2を開ける際の作業性が一層向上する。
さらに本障子固定ピース3は、框4の長手方向にスライド自在であり、外側にスライドしたときに縦枠6の戸当たり片7の障子2と反対側の面に対向する開き規制片33を有するので、万が一、枠係合部31が外れても開き規制片33が縦枠6の戸当たり片7に引っ掛かることで障子2が開くのを防止できる。
障子固定ピース3に、上框4の室内側面に押接するバネ片38が設けてあると、障子2が開いたときの反動で障子固定ピース3が外れて落下するのを防止できる。
本障子固定ピース3を使用することで、粘着テープを貼ったり剥がしたりする手間が要らなくなり、粘着テープの跡が残ることもない。障子固定ピース3は、繰り返し使用することができ、経済的である。
【0019】
本排煙窓は、枠1と、障子2と、障子2に取付けた請求項1記載の障子固定ピース3,3とを備えることで、障子2を閉鎖するだけで障子2を閉鎖状態に確実に保持できる。
また本排煙窓は、工場から出荷する時点で障子2を開く方向に付勢するダンパーが取り付けられているため、施工現場においてダンパーを取付ける必要がなく、施工現場での作業の負担を軽減できる。また、ダンパーだけでなく、障子を開閉操作するための滑車等のオペレータ装置を工場から出荷する時点で取付けておくこともできる。
【0020】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。障子固定ピースの形状、材質、取付位置は、障子の開き方やダンパーの有無等に応じて適宜変更することができる。枠と框の断面形状、材質は、適宜変更することができる。障子の開き方は、外倒し式に開くものに限らず、内倒し式に開くもの、突き出し式に開くもの(上部側を支点に室外側に回動して開くもの)であってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 枠
2 障子
3 障子固定ピース
4 上框(框)
9 上枠(枠)
12 戸当たり片
19 框の見付壁の外周側縁部
23 框係合部
31 枠係合部