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特許7560384スリーブ取付治具挿入ガイド及びスリーブ取付治具の挿入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】スリーブ取付治具挿入ガイド及びスリーブ取付治具の挿入方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/06 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B25B27/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021035848
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135793
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 武士
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082722(JP,A)
【文献】実開昭62-106765(JP,U)
【文献】特開2002-070513(JP,A)
【文献】特開2001-074183(JP,A)
【文献】特表平03-502076(JP,A)
【文献】特表2016-534294(JP,A)
【文献】実開昭60-152808(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0220729(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 25/00-29/02,33/00;
B23P 19/00-19/02;
F16B 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラに挿入されて軸方向にスライドすることによって、内部に保持されたスリーブを径方向外方へと押し広げながら前記スリーブを前記ローラの外周に取り付けるスリーブ取付治具の前記ローラへの挿入をガイドするためのスリーブ取付治具挿入ガイドであって、
前記ローラに挿通する円孔状のガイド孔が形成された本体部を、前記ガイド孔の軸心を通る平面で2分割し、
前記本体部の2分割された分割片同士を分解可能に連結一体化するとともに、
前記本体部の軸方向一端面に嵌合凹部を前記ガイド孔と同心状に形成して構成されるスリーブ取付治具挿入ガイド。
【請求項2】
一方の前記分割片に回動可能に軸支されて前記分割片同士を分解可能に連結する連結手段を設けた請求項1に記載のスリーブ取付治具挿入ガイド。
【請求項3】
前記連結手段は、軸直角方向に配されたボルト部材と、前記ボルト部材に螺合するレバー部材とを備え、
前記ボルト部材は、一方の前記分割片の一端部に、軸直角方向に回動可能に軸支され、
前記レバー部材は、回転によって軸直角方向にスライドし、前記レバー部材の軸方向一端面が他方の前記分割片を押圧して両分割片同士を連結する請求項2に記載のスリーブ取付治具挿入ガイド。
【請求項4】
前記連結手段は、前記本体部の幅中心に対して所定量だけ軸方向にオフセットした位置に配置されている請求項2または3に記載のスリーブ取付治具挿入ガイド。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のスリーブ取付治具挿入ガイドを用いて前記スリーブ取付治具を前記ローラに挿入するスリーブ取付治具の挿入方法であって、
前記スリーブ取付治具挿入ガイドの両分割片を開いて前記スリーブ取付治具を前記分割片によって両側から挟み込んだ後、両分割片を連結一体化する第1工程と、
前記スリーブ取付治具挿入ガイドの前記ガイド孔を前記ローラの外周に嵌め込んで前記スリーブ取付治具挿入ガイドと前記スリーブ取付治具とを前記ローラの外周に沿ってスライドさせる第2工程と、
を経て前記スリーブ取付治具を前記ローラに挿入するスリーブ取付治具の挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブ取付治具のローラへの挿入をガイドするためのスリーブ取付治具挿入ガイドとこれを用いたスリーブ取付治具のローラへの挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ベルトコンベアにおいては、回転するローラによってベルトが搬送されるが、このベルトの蛇行を抑制する技術として、ローラの一部の外径を他の部分よりも大きく仕上げるクラウン加工と称されるものが知られている。このようなクラウン加工が施されたローラによれば、このローラに発生する部分的な周速差によってベルトが周速の大きな側へ寄る特性によって該ベルトの蛇行を抑制することができる。
【0003】
ところで、ローラに対してクラウン加工を施す方法としては、該ローラを製作する過程で機械加工などによってローラを太鼓(弓なり)形状に成形したり、ローラ全体を台形状に加工する方法などが採用されている。或いは、機械加工以外の方法として、ストレート(同径)のローラの外周に、外径がローラの外径よりも大きな円筒状のスリーブを装着する方法も採用されている。
【0004】
ローラの外周にスリーブを装着する上記方法においては、パイプの軸方向両端にプレスベアリングなどを圧入やカシメによって取り付けた安価なローラの外周に、エラストマーなどの樹脂によって成形されたスリーブを治具を用いて圧入することが行われている。例えば、特許文献1,2には、外周にスリーブが圧入されたローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平2-022909号公報
【文献】特開2018-158826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スリーブをローラの外周に圧入するには、ローラの外径よりも小さな内径を有するスリーブを治具を用いてローラの外周に圧入する方法が一般的に用いられているが、スリーブは、その肉厚が2mm以上であれば、高い剛性が確保できてローラへの圧入にも適しているが、ベルトの周速差や走行音が大きくなるばかりか、ベルトの摩耗も発生し易くなる。このため、スリーブの肉厚は、1mm~1.5mm程度が望ましい。
【0007】
しかしながら、肉厚が薄いスリーブは、その剛性が低く、これをローラに圧入する際に変形してしまうという問題がある。このため、スリーブの挿入過程において、該スリーブの変形に応じた治具を使い分ける必要があり、このために作業が面倒で多くの工数を要するという問題があった。
【0008】
そこで、本出願人は、ローラに挿入されて軸方向にスライドすることによって、内部に保持されたスリーブを径方向外方へと押し広げながらこれをローラの外周に取り付けるためのスリーブ取付治具を先に提案した(特願2020-128679号において)。
【0009】
ところが、上記スリーブ取付治具においては、そのローラへの挿入側端部の円孔の内径がローラの外径よりも大きく、この円孔とローラとの間に比較的大きな径方向隙間が形成されるため、スリーブ取付治具をローラに嵌め込む際に当該スリーブ取付治具をローラに対して案内する手段がない。このため、スリーブ取付治具をローラに嵌め込む作業が容易ではない。すなわち、スリーブ取付治具がローラに対して大きく傾いてガタつき、当該スリーブ取付治具をローラにスムーズに挿入し難い場合もあった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、スリーブ取付治具をローラに簡単に嵌め込んでローラに沿ってスムーズに挿入することができるスリーブ取付治具挿入ガイド及びスリーブ取付治具の挿入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、ローラに挿入されて軸方向にスライドすることによって、内部に保持されたスリーブを径方向外方へと押し広げながら前記スリーブを前記ローラの外周に取り付けるスリーブ取付治具の前記ローラへの挿入をガイドするためのスリーブ取付治具挿入ガイドを、前記ローラに挿通する円孔状のガイド孔が形成された本体部を、前記ガイド孔の軸心を通る平面で2分割し、前記本体部の2分割された分割片同士を分解可能に連結一体化するとともに、前記本体部の軸方向一端面に嵌合凹部を前記ガイド孔と同心状に形成して構成した。
【0012】
また、本発明は、前記スリーブ取付治具挿入ガイドを用いて前記スリーブ取付治具を前記ローラに挿入するスリーブ取付治具の挿入方法として、前記スリーブ取付治具挿入ガイドの両分割片を開いて前記スリーブ取付治具を前記分割片によって両側から挟み込んだ後、両分割片を連結一体化する第1工程と、前記スリーブ取付治具挿入ガイドの前記ガイド孔を前記ローラの外周に嵌め込んで前記スリーブ取付治具挿入ガイドと前記スリーブ取付治具とを前記ローラの外周に沿ってスライドさせる第2工程と、を経て前記スリーブ取付治具を前記ローラに挿入する方法を採用した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スリーブ取付治具挿入ガイドは、2分割されて両分割片が拡開可能であるため、該スリーブ取付治具挿入ガイドの嵌合凹部にスリーブ取付治具の一端部外周を嵌合させると、スリーブ取付治具挿入ガイドのガイド孔と嵌合凹部とは同心上に配置されているため、スリーブ取付治具挿入ガイドとスリーブ取付治具との芯出しが高精度になされる。このため、スリーブ取付治具は、スリーブ取付治具挿入ガイドに案内されてローラにガタつきなく簡単且つスムーズに挿入される。また、スリーブをローラに装着した後、該スリーブ取付治具挿入ガイドを拡開することによって、スリーブ取付治具挿入ガイドとスリーブ取付治具を容易に分離することができ、スリーブをローラに残したまま、スリーブ取付治具挿入ガイドをローラから取り外すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るスリーブ取付治具挿入ガイドの斜視図である。
図2】本発明に係るスリーブ取付治具挿入ガイドの正面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】本発明に係るスリーブ取付治具挿入ガイドの平面図である。
図5図4のB-B線断面図である。
図6】本発明に係るスリーブ取付治具挿入ガイドの底面図である。
図7図6のC-C線断面図である。
図8】スリーブとローラ及びこれらの寸法関係を示す図である。
図9】スリーブ取付治具の側面図である。
図10図9のD-D線断面図である。
図11図10のE-E線断面図である。
図12図10のF-F線断面図である。
図13】(a)~(e)は本発明に係るスリーブ取付治具の挿入方法をその工程順に示す部分平面図である。
図14】(a)~(c)はスリーブ取付治具によるスリーブの取付方法をその工程順に示す部分断面図である。
図15】(a)~(d)はスリーブの位置決め取付方法をその工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
[スリーブ取付治具挿入ガイド]
先ず、本発明に係るスリーブ取付治具挿入ガイドを図1図7に基づいて以下に説明する。
【0017】
図1は本発明に係るスリーブ取付治具挿入ガイドの斜視図、図2は同スリーブ取付治具挿入ガイドの正面図、図3図2のA-A線断面図、図4は同スリーブ取付治具挿入ガイドの平面図、図5図4のB-B線断面図、図6は同スリーブ取付治具挿入ガイドの底面図、図7図6のC-C線断面図である。なお、以下の説明においては、図1図3に示す矢印方向をそれぞれ「軸方向」、「左右方向」とする。
【0018】
本発明に係るスリーブ取付治具挿入ガイド(以下、単に「挿入ガイド」と略称する)1は、樹脂で構成された略円筒状の本体部1Aを備えており、この本体部1Aの中心部には、後述のローラ50(図8参照)が挿通するための円孔状のガイド孔1aが貫設されている。ここで、ガイド孔1aの内径φd1は、ローラ50の外径φD1よりも僅かに大きく設定されており、図2及び図3に示すように、このガイド孔1aとローラ50との間には径方向の微小隙間(クリアランス)δ1(=(d1-D1)/2)が形成されている。なお、本実施の形態では、微小隙間δ1は、δ1=0.1mmに設定されている。
【0019】
そして、図1図3に示すように、挿入ガイド1の軸方向一端面(図3の右端面)には、内径φd2の段付円孔状の嵌合凹部1bがガイド孔1aと同心状に形成されている。
【0020】
ところで、挿入ガイド1の本体部1Aは、図1及び図2に示すように、ガイド孔1aの軸心Oを通る垂直な平面(分割面)Sによって左右に2分割されており、左右の分割片1L,1Rは、分解可能に連結一体化されている。以下、その構造について説明する。
【0021】
左右の分割片1L,1Rのガイド孔1aを挟んでこれの両側(上下両側)の一方(図1及び図2の下側)端部(下端部)は、図6及び図7に示すように、リンク2を介して支軸3によって軸直角方向(図2の左右方向)にそれぞれ回動可能に軸支されている。より詳細には、図6に示すように、左右の分割片1L,1Rの下端部の分割面Sを挟んでこれの左右両側部分の幅方向中央部には、矩形状の溝1cがそれぞれ形成されており、これらの溝1cにはリンク2が嵌め込まれている。そして、このリンク2の左右両端部は、支軸3によって左右の分割片1L,1Rの下端部にそれぞれ連結されている。したがって、左右の分割片1L,1Rは、図2に鎖線にて示すように、支軸3を中心として左右方向に回動して拡開することができる。
【0022】
他方、左右の分割片1L,1Rの上端部は、互いに螺合するボルト部材4とレバー部材5によって構成される連結手段によって分解可能に連結されている。具体的には、左側の分割片1Lの上端部には、周方向に延びる直線状の溝1dが形成されており、この溝1dには、ボルト部材4の頭部4aが支軸6によって上下に回動可能に軸支されている。ここで、ボルト部材4には、頭部4aから一体に延びる雄ネジ部4bが設けられている。
【0023】
また、右側の分割片1Rの上端部には、水平にカットされた切欠部1eが形成されており、この切欠部1eには、レバー部材5が左右方向に沿って略水平に設置されている。ここで、図5に示すように、レバー部材5の軸中心には雌ネジ部5aが形成されており、この雌ネジ部5aにボルト部材4の雄ネジ部4bが螺合している。なお、このレバー部材5の軸方向一端にはダイヤル部5bが形成されており、左右の分割片1L,1Rが連結一体化されている図1及び図2に示す状態においては、レバー部材5の軸方向他端面(図2の左端面)は、右側の分割片1Rの段部1f,1gを押圧して当該分割片1Rを左側の分割片1Lに当接させている。また、図4に示すように、連結手段を構成するボルト部材4とレバー部材5は、挿入ガイド1の幅方向中心に対して軸方向(図4の下方)に図示のεだけオフセットした位置に配置されている。
【0024】
而して、図1及び図2に示すように、左右の分割片1L,1Rが連結手段を構成するボルト部材4とレバー部材5によって連結一体化されている状態から、レバー部材5のダイヤル部5bを手で摘んで該レバー部材5を回せば、このレバー部材5がボルト部材4の雄ネジ部4bに沿って図2及び図4の右方へと移動し、該レバー部材5の軸方向端面が右側の分割片1Rの段部1f,1gから離れる。そして、この状態からレバー部材5を図2に鎖線にて示すように支軸6を中心として矢印方向(半時計方向)に回動させれば、左右の分割片1L,1Rの連結が解除される。したがって、この状態から左右の分割片1L,1Rをその下端部に設けられた支軸3を中心として図2に鎖線にて示すように左右に回動させ、これらの分割片1L,1Rを拡開させることができる。
【0025】
[スリーブ取付治具]
次に、スリーブ取付治具を図8図12に基づいて以下に説明する。
【0026】
図8はスリーブとローラ及びこれらの寸法関係を示す図、図9はスリーブ取付治具の側面図、図10図9のD-D線断面図、図11図10のE-E線断面図、図12図10のF-F線断面図である。
【0027】
本実施の形態に係るスリーブ取付治具10は、図8に示す金属製のローラ50の外周の軸方向両端から図示の距離Lの位置に樹脂製(本実施の形態では、エラストマー製)のスリーブ40を取り付けるためのものである。なお、ローラ50の軸方向両端には、アダプタ51がそれぞれ取り付けられており、各アダプタ51の中心からは小径の円柱状の突起51aが一体に突設されている。ここで、ローラ50の外径をφD1、スリーブ40の内径をφd3、外径をφD2とする。
【0028】
スリーブ取付治具10は、後述のように当該スリーブ取付治具10内に位置決めされて保持されたスリーブ40(図8参照)をローラ50(図8参照)によって径方向外方へと押し広げながら該ローラ50の外周に取り付けるための金属製の円筒状部材であって、ガイド部材11と、第1リング部材12と、第2リング部材13と、ベース部材14とが軸方向に同軸に連結一体化して構成されている。
【0029】
上記ガイド部材11は、当該取付治具10内へのローラ50の挿入をガイドする円筒状の部材であって、その内径φd4は、図8に示すローラ50の外径φD1よりも大きく設定されている(φd4>φD1)。また、このガイド部材11の外径φD3は、前記挿入ガイド1に形成された嵌合凹部1bの内径φd2に略等しく(実際には、僅かに小さく)設定されている(φD3≒φd2)。
【0030】
そして、このガイド部材11の周方向4箇所には、円孔状のボルト挿通孔11aが周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)で軸方向(図10の左右方向)に貫設されている。
【0031】
また、前記第1リング部材12は、図11に示すように、周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)で4分割された4つの分割片12Aを備えており、その外周に軸方向に適当な間隔で形成された2つの嵌合溝12aには、ガータスプリングやOリングなどのリング状の第1付勢部材15がそれぞれ巻装されており、これらの第1付勢部材15によって4つの分割片12Aが径方向内方に付勢されている。
【0032】
ここで、スリーブ取付治具10の非作動時(スリーブ40の取り付けが行われていないとき)には、4つの分割片12Aは、図11に実線にて示すように周方向に互いに当接して縮径状態にあり、この状態では、当該第1リング部材12の中心部には、スリーブ40が挿入保持される円孔状の挿入孔12bが形成されている。なお、挿入孔12bの内径φd5は、スリーブ40の外径φD2(図8参照)よりも小さく設定されている(φd5<φD2)。そして、各分割片12Aの中心部には、図11に示すように、径方向に長い長孔12cが軸方向にそれぞれ貫設されている。
【0033】
さらに、前記第2リング部材13も、図12に示すように、周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)で4分割された4つの分割片13Aを備えており、その外周に形成された1つの嵌合溝13aには、ガータスプリングやOリングなどのリング状の第2付勢部材16が巻装されており、この第2付勢部材16によって4つの分割片13Aが径方向内方に付勢されている。ここで、スリーブ取付治具10の非作動時には、4つの分割片13Aは、図12に実線にて示すように周方向に互いに当接して縮径状態にあり、この状態では、当該第2リング部材13の中心部には、ローラ50が通過する円孔状の通孔13bが形成されている。なお、通孔13bの内径φd6は、ローラ50の外径φD1(図8参照)よりも小さく設定されている(φd6<φD1)。
【0034】
また、この第2リング部材13の第1リング部材12の端面に当接する端面には、後述のように第1リング部材12の挿入孔12bに挿入保持されるスリーブ40の軸方向一端面が突き当てられる位置決め段部13cが形成されている。そして、第2リング部材13の各分割片13Aの中心部には、図12に示すように、径方向に長い長孔13dが軸方向にそれぞれ貫設されている。
【0035】
前記ベース部材14は、スリーブ40の取付時にローラ50の通過を許容するものであって、その中心部には、ローラ50を通過させるための円孔状の通孔14aが軸方向に貫設されている。ここで、通孔14aの内径φd7は、ローラ50の外径φD1(図8参照)よりも僅かに大きく設定されており(φd7>φD1)、通孔14aとローラ50との間には、径方向の微小隙間δ2(クリアランス)(=(d7-D1)/2)が形成されている。なお、本実施の形態では、微小隙間δ2は、0.1mmに設定されている。
【0036】
そして、図10に示すように、このベース部材14の第2リング部材13の端面に当接する軸方向一端面の周方向4箇所(第1リング部材12の長孔12cと第2リング部材13の長孔13d及びガイド部材11のボルト挿通孔11aにそれぞれ対応する4箇所)には、ネジ穴14bが形成されている。
【0037】
而して、スリーブ取付治具10においては、ローラ50が通過する方向(図10の左側)からガイド部材11、第1リング部材12、第2リング部材13及びベース部材14の順に重ねられ、ガイド部材11に形成された4つのボルト挿通孔11aにそれぞれ挿通する段付ボルト17を第1リング部材12と第2リング部材13の各4つの分割片12A,13Aに形成された各長孔12cと各長孔13dにそれぞれ通し、各段付ボルト17の端部ネジ部17aをベース部材14に形成された4つの各ネジ穴14bにそれぞれねじ込むことによって、ガイド部材11と第1リング部材12、第2リング部材13及びベース部材14が軸方向に同軸に連結一体化されている。このように構成されたスリーブ取付治具10においては、第1リング部材12の4つの分割片12Aと第2リング部材13の4つの分割片13Aは、これらに形成された長孔12c,13dと段付ボルト17との径方向隙間δ(図11及び図12参照)の範囲で径方向外方に移動することができる。
【0038】
[スリーブ取付治具の挿入方法]
次に、挿入ガイド1を用いたスリーブ取付治具10のローラ50への挿入方法を図13に基づいて以下に説明する。
【0039】
図13(a)~(e)は本発明に係るスリーブ取付治具10の挿入方法をその工程順に示す平面図である。
【0040】
スリーブ取付治具10のローラ50への挿入は、以下の第1工程及び第2工程を経てなされる。
【0041】
1)第1工程:
第1工程においては、挿入ガイド1の左右の分割片1L,1Rを図13(a)に示すように左右に開き、図13(b)に示すように、当該挿入ガイド1に形成された嵌合凹部1bでスリーブ取付治具10のガイド部材11を両側から挟み込むことによって、挿入ガイド1とスリーブ取付治具10とを連結一体化する。
【0042】
具体的には、挿入ガイド1の左右の分割片1L,1Rが図1及び図2に示すように連結一体化されている状態から、レバー部材5を回して該レバー部材5をボルト部材4の雄ネジ4bに沿って図2図4及び図5の右方へとスライドさせれば、該レバー部材5の軸方向一端面が分割片1Rの段部1f,1gから離れる。そして、この状態からレバー部材5を支軸6を中心として図2の実線矢印方向(反時計方向)に回動させれば、左右の分割片1L,1Rの連結が解除され、左右の分割片1L,1Rを支軸3を中心として図2の実線矢印方向にそれぞれ回動させれば、図2に鎖線にて示すように、左右の分割片1L,1Rを開くことができる。
【0043】
上述のように挿入ガイド1の左右の分割片1L,1Rが開いた状態で、これらの分割片1L,1Rに形成された半割れ状の嵌合凹部1bによってスリーブ取付治具10のガイド部材11を両側から挟み込み、両分割片1L,1Rを支軸3を中心として図2の破線矢印方向にそれぞれ回動させてこれらを閉じ、レバー部材5を図2に鎖線にて示す状態から破線矢印方向(時計方向)に回動させてこれを実線にて示す元の水平状態に戻す。そして、この状態からレバー部材5を回せば、該レバー部材5がボルト部材4の雄ネジ部4bに沿ってスライドし、その軸方向端面が分割片1Rの段部1f,1gに突き当たって当該分割片1Rが他方の分割片1Lを押圧するため、左右の分割片1L,1Rが図1及び図2に示すように連結一体化される。なお、挿入ガイド1とスリーブ取付治具10とが連結一体化された状態では、挿入ガイド1の分割面Sには若干の隙間が形成されており、挿入ガイド1の嵌合凹部1bがスリーブ取付治具10のガイド部材11を確実に挟持することができる。また、本実施の形態では、図4に示すように、連結手段を構成するボルト部材4とレバー部材5の軸中心を挿入ガイド1の幅中心に対して軸方向(スリーブ取付治具10方向)にεだけオフセットさせて配置したため、挿入ガイド1の嵌合凹部1bとスリーブ取付治具10のガイド部材11との嵌合が一層緊密になされる。
【0044】
以上のようにして挿入ガイド1がスリーブ取付治具10のガイド部材11を挟持した状態で、これらの挿入ガイド1とスリーブ取付治具10とが連結一体化された状態では、挿入ガイド1のガイド孔1aと嵌合凹部1bとは同心状に形成されているため、ガイド孔1aとスリーブ取付治具10のベース部材14に形成された通孔14aとは同軸上に配置され、両者の芯出しがなされる。
【0045】
2)第2工程:
第2工程においては、図13(c)に示すように、スリーブ取付治具10と連結一体化された挿入ガイド1のガイド孔1aがローラ50の外周に嵌め込まれる。そして、ローラ50の外周にガイド孔1aが嵌め込まれた挿入ガイド1を図13(d)に示すようにスリーブ取付治具10と共にローラ50に沿って図示矢印方向に移動させれば、スリーブ取付治具10は、挿入ガイド1によって案内されてローラ50の外周にガタなく簡単且つスムーズに挿入される。
【0046】
ところで、以上の第1及び第2工程を経てスリーブ取付治具10が挿入ガイド1によってローラ50にガタなくスムーズに挿入されると、挿入ガイド1とスリーブ取付治具10がローラ50に沿ってスライドすることによって、スリーブ取付治具10の内部に保持されたスリーブ40が以下の要領でローラ50の外周の所定位置に正確に位置決めされた状態で取り付けられる。以下、スリーブ取付治具10によるスリーブ40のローラ50への取付方法を図14に基づいて説明する。
【0047】
図14(a)~(c)はスリーブのローラへの取付方法をその工程順に示す部分断面図であり、スリーブ40が挿入保持されたスリーブ取付治具10がローラ50の軸方向一端に嵌め込まれて左方へとスライドすると、図14(a)に示すように、スリーブ40の軸方向一端面がローラ50の軸方向一端に取り付けられたアダプタ51の端部外周縁に係合する。ここで、アダプタ51の外周端縁は、円弧曲面状に面取り(R加工)がなされているため、第1リング部材12には、その4つの分割片12Aを第1付勢部材15の付勢力に抗して径方向外方に押し広げようとする径方向外方の力が作用する。
【0048】
上記状態からスリーブ取付治具10がローラ50に沿ってさらにスライドすると、図14(b)に示すように、スリーブ40がローラ50によって径方向外方(図11の矢印方向)に押し広げられる。そして、スリーブ取付治具10をローラ50に沿ってさらに押し込むと、図14(c)に示すように、スリーブ40がローラ50の外周に容易に装着(圧入)される。すなわち、第1リング部材12の4つの分割片12Aが図11に鎖線にて示すように第1付勢部材15の付勢力に抗して径方向外方に移動し、第1リング部材12が拡開するため、スリーブ40がローラ50によって容易に押し広げられてローラ50の外周に取り付けられる。なお、このとき、スリーブ40は、第2リング部材13の位置決め段部13cに当接しているためにスリーブ取付治具10に対して軸方向に摺動することがない。
【0049】
その後、スリーブ取付治具10をローラ50に沿ってさらにスライドさせ、図14(c)に示すように、第2リング部材13がローラ50の上端部(アダプタ51の外周端縁)に達すると、該第2リング部材13の4つの分割片13Aが第2付勢部材16の付勢力に抗して図12に鎖線にて示すように径方向外方に移動する。すなわち、4つの分割片13Aがローラ50によって押し広げられて第2リング部材13の通孔13bが拡径するため、スリーブ取付治具10のローラ50に沿うスライドが許容される。
【0050】
そして、以上のようにして図13(e)に示すようにローラ50の外周の所定位置にスリーブ40が取り付けられると、挿入ガイド1がローラ50から取り外される。なお、挿入ガイド1のローラ50からの取り外しは、図2に鎖線にて示すように、左右の分割片1L,1Rを支軸3を中心として回動させてこれらを開くことによってなされる。このようにスリーブ40をローラ50に装着した後、挿入ガイド1を拡開することによって、挿入ガイド1とスリーブ取付治具10を容易に分離することができ、スリーブ40をローラ50に残したまま、挿入ガイド1をローラ50から取り外すことが可能である。
【0051】
而して、スリーブ取付治具10は、挿入ガイド1を用いて以上の第1工程及び第2工程を経てなされるため、当該スリーブ取付治具10をローラ50に簡単に嵌め込んでこれをローラ50に沿ってスムーズに挿入することができる。
【0052】
[スリーブの位置決め取付方法]
次に、スリーブ40のローラ50への位置決め方法を図15に基づいて以下に説明する。
【0053】
図15(a)~(d)はスリーブの位置決め取付方法をその工程順に示す断面図であり、以下、図8に示すように、2つのスリーブ40をローラ50の軸方向両端部(端部から距離Lの位置)に位置決めして取り付ける場合について説明する。ここで、図8に示すように、スリーブ40の内径φd3は、ローラ50の外径φD1よりも小さく設定されている(φd3<φD1)。
【0054】
スリーブ40をローラ50に位置決めして取り付けるには、図15(a)に示すように、垂直に起立する位置決め治具20のホルダ21の円孔21aにローラ50の下端部を垂直上方から嵌合させ、該ローラ50をその下端面が位置決め治具20内の位置決め段部21cに突き当たるまで押し込んで当該ローラ50を位置決め治具20によって垂直に起立させる。
【0055】
次に、図15(a)に鎖線にて示すように、内部にスリーブ40が挿入保持されたスリーブ取付治具10を挿入ガイド1と共に挿入ガイド1を下にしてローラ50の上端部に嵌め込む。ここで、スリーブ取付治具10に挿入保持されたスリーブ40は、第2リング部材13の位置決め段部13cに当接することによってスリーブ取付治具10に対して軸方向に正確に位置決めされている。
【0056】
上記状態から、挿入ガイド1とスリーブ取付治具10をその下端面が位置決め治具20の上端面に当接するまでローラ50の外周に沿って押し込む。すると、図15(a)に実線にて示すように、ローラ50の軸方向一端(下端部)外周にスリーブ40(ローラ50で隠れている箇所は点線で示す)が正確に位置決めされて取り付けられる。
【0057】
すなわち、スリーブ40は、前述のようにスリーブ取付治具10に対して正確に位置決めされており、このスリーブ40が取り付けられるローラ50は、位置決め治具20によってスリーブ取付治具10(スリーブ40)に対して軸方向に正確に位置決めされるため、結果的にスリーブ40がローラ50の軸方向一端部(下端部)外周に正確に位置決めされて取り付けられる。具体的には、ローラ50の軸方向一端面(下端面)からスリーブ40の軸方向一端との距離が目標値Lとなるように位置決め治具20の高さh1を設定することによって、スリーブ40がローラ50の軸方向一端面(下端面)から距離Lの位置に正確に位置決めされて取り付けられる。
【0058】
以上のようにしてスリーブ40がローラ50の外周の一端部に装着されると、挿入ガイド1とスリーブ取付治具10をローラ50から引き抜いた後、図15(b)に示すように、位置決めアダプタ30をローラ50にその上端部から通す。そして、位置決めアダプタ30をその下端面が位置決め治具20の上端面に突き当たるまで押し下げる。このとき、位置決めアダプタ30の下端部内周には下方に向かって広がる不図示のテーパ面が形成されているため、該位置決めアダプタ30がローラ50の外周に既に取り付けられたスリーブ40に干渉することがない。なお、必要に応じて、スリーブ40を接着剤によってローラ50の外周の所定位置に取り付けるようにしても良い。
【0059】
すると、位置決めアダプタ30が位置決め治具20の上端に連結されるが、このとき、位置決めアダプタ30の下端内周に溝状の嵌合段部30dを形成し、位置決め治具20の上端内周に嵌合段部20dを形成したため、位置決めアダプタ30と位置決め治具20とが凹凸嵌合して両者が正確且つ確実に連結される。
【0060】
上記状態から、図15(c)に鎖線にて示すように、別のスリーブ40が内部に挿入保持されたスリーブ取付治具10と挿入ガイド1をローラ50の位置決めアダプタ30の上方に露出する上端部に前述と同様に嵌め込み、これらのスリーブ取付治具10と挿入ガイド1を挿入ガイド1の端面が位置決めアダプタ30の上端面に突き当たるまで下方へと押し込むと、図15(d)に示すように、前述と同様の過程(図14(a)~(c)参照)を経て別のスリーブ40がローラ50の上端部外周の所定位置(ローラ50の上端面から距離Lの位置)に正確に位置決めされて取り付けられる。このとき、スリーブ40の取り付けに接着剤を用いる場合には、あふれ出た接着剤が位置決めアダプタ30の上端内周に形成された溝30bに収容される。
【0061】
ここで、位置決めアダプタ30の高さh2は、図15(d)に示すように、スリーブ40の軸方向端面とローラ50の上端面との距離がLとなるような値に設定されている。
【0062】
以上説明した位置決め取付方法によれば、スリーブ40は、スリーブ取付治具10に位置決めされた状態で挿入保持され、このスリーブ40を保持するスリーブ取付治具10に対してローラ50が位置決め治具20と位置決めアダプタ30によって位置決めされるため、結果的に2つのスリーブ40がローラ50に対して軸方向に正確に位置決めされた状態でローラ50の軸方向両端部外周に取り付けられる。
【0063】
ところで、以上はローラ50の軸方向両端部外周に2つのスリーブ40を取り付ける方法について説明したが、同様の方法によって1つまたは3つ、或いはそれ以上の数のスリーブ40をローラ50の外周に正確に位置決めして取り付けることができる。
【0064】
また、図15に示す例では、挿入ガイド1をローラ50の外周に装着した状態でスリーブ40をローラ50に位置決めして取り付けたが、挿入ガイド1を取り外した状態でスリーブ40をローラ50の外周に位置決めして取り付けるようにしても良い。
【0065】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1 スリーブ取付治具挿入ガイド(挿入ガイド)
1A スリーブ取付治具挿入ガイドの本体部
1L,1R スリーブ取付治具挿入ガイドの分割片
1a 本体部のガイド孔
1b 本体部の嵌合凹部
2 リンク
3 支軸
4 ボルト部材(連結手段)
4a ボルト部材の頭部
4b ボルト部材の雄ネジ部
5 レバー部材(連結手段)
5a レバー部材の雌ネジ部
6 支軸
10 スリーブ取付治具
40 スリーブ
50 ローラ
S 分割面
ε 連結手段のオフセット量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15