(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】表示装置、補正方法及び制御プラグラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/202 20230101AFI20240925BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20240925BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H04N5/202
H04N5/66 A
G09G5/10 B
(21)【出願番号】P 2021036747
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北野 勝彦
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-093753(JP,A)
【文献】特開平06-006820(JP,A)
【文献】特開平06-090382(JP,A)
【文献】特開2003-069822(JP,A)
【文献】特開2010-028609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/14-5/213
H04N 5/66-5/74
G09G 5/10
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補正前輝度と補正後輝度との関係を表すガンマカーブに基づいて入力画像の輝度を補正する表示装置であって、
前記ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限する
処理として、前記入力画像の明るさに応じて前記ガンマカーブの制限範囲を決定し、前記ガンマカーブが前記制限範囲を超えている場合には、前記制限範囲内となるように前記ガンマカーブを補正する処理を行うガンマカーブ設定部と、
前記ガンマカーブ設定部によって前記補正量が制限された前記ガンマカーブに基づいて前記入力画像の輝度を補正する輝度補正部と、
を備え
、
前記ガンマカーブ設定部は、
(1)前記入力画像の明るさが暗いほど、前記ガンマカーブの補正量であって低輝度領域における輝度を上げる方向の補正量をより大きく制限する処理と(2)前記入力画像の明るさが明るいほど、前記ガンマカーブの補正量であって高輝度領域における輝度を下げる方向の補正量をより大きく制限する処理とのうち、少なくとも何れかを行う
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記ガンマカーブ設定部は、
前記ガンマカーブの制限範囲を規定するテーブルにおける、前記入力画像の明るさに応じた範囲を参照することによって、前記補正量が制限された前記ガンマカーブを生成することを特徴とする請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ガンマカーブ設定部は、
前記入力画像の明るさを示す指標値が所定条件を満たす場合、事前に規定された範囲における補正量を制限する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記入力画像の明るさは、前記入力画像の平均輝度レベルである
ことを特徴とする請求項1から
3までの何れか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記入力画像の明るさは、前記入力画像において所定条件を満たす輝度値を有する画素の数又は割合である
ことを特徴とする請求項1から
4までの何れか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
補正前輝度と補正後輝度との関係を表すガンマカーブに基づいて入力画像の輝度を補正する補正方法であって、
前記ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限する
処理として、前記入力画像の明るさに応じて前記ガンマカーブの制限範囲を決定し、前記ガンマカーブが前記制限範囲を超えている場合には、前記制限範囲内となるように前記ガンマカーブを補正する処理を行うガンマカーブ設定工程と、
前記ガンマカーブ設定工程において前記補正量が制限された前記ガンマカーブに基づいて前記入力画像の輝度を補正する輝度補正工程と、
を含
み、
前記ガンマカーブ設定工程においては、
(1)前記入力画像の明るさが暗いほど、前記ガンマカーブの補正量であって低輝度領域における輝度を上げる方向の補正量をより大きく制限する処理と(2)前記入力画像の明るさが明るいほど、前記ガンマカーブの補正量であって高輝度領域における輝度を下げる方向の補正量をより大きく制限する処理とのうち、少なくとも何れかを行う
ことを特徴とする補正方法。
【請求項7】
請求項1に記載の表示装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記ガンマカーブ設定部および前記輝度補正部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、補正方法及び制御プラグラムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン受像機、VTR(Video Tape Recorder)、デジタルカメラ、テレビジョンカメラおよびプリンタなどの表示装置は、画質向上のために、コントラストを調整するなど、入力画像に含まれる画素の輝度(入力画像の輝度)を補正する機能を有している。入力画像の輝度を補正する技術としては、ガンマカーブを用いる技術などが挙げられる。
【0003】
特許文献1では、ガンマカーブが設定され得る範囲を所定の許容範囲内に制限することによって、大きな時間軸ノイズを含む映像信号が入力されても、安定した画像を表示可能な画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、対象となる画像の輝度によらずガンマカーブが設定され得る範囲が一律であるため、画像の明るさによっては、コントラストが低下したように感じられてしまう虞がある。
【0006】
本発明の一態様は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、コントラスト感の低下を抑制しつつ、安定した画像を表示可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る表示装置は、補正前輝度と補正後輝度との関係を表すガンマカーブに基づいて入力画像の輝度を補正する表示装置であって、前記入力画像の明るさに応じて、前記ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限するガンマカーブ設定部と、前記ガンマカーブ設定部によって前記補正量が制限された前記ガンマカーブに基づいて前記入力画像の輝度を補正する輝度補正部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る補正方法は、補正前輝度と補正後輝度との関係を表すガンマカーブに基づいて入力画像の輝度を補正する補正方法であって、前記入力画像の明るさに応じて、前記ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限するガンマカーブ設定工程と、前記ガンマカーブ設定工程において前記補正量が制限された前記ガンマカーブに基づいて前記入力画像の輝度を補正する輝度補正工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、コントラスト感の低下を抑制しつつ、安定した画像が表示可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る表示装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】実施形態に関わる表示装置の外観を示す概略図である。
【
図3】ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。
【
図4】ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。
【
図8】ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。
【
図9】ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。
【
図10】ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。
【
図11】ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。
【
図12】ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。
【
図13】入力画像の輝度を補正する補正方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、
図1~
図13を用いて、実施形態1に係る表示装置1、及び入力画像の輝度を補正する補正方法を説明する。
【0012】
〔表示装置1〕
表示装置1は、補正前輝度と補正後輝度との対応関係を表すガンマカーブに基づいて入力画像の輝度を補正する表示装置である。
【0013】
図1は、実施形態1に係る表示装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図2は、実施形態1に係る表示装置1の外観を示す概略図である。
図1に示すように、表示装置1は、入力画像取得部11と、ガンマカーブ設定部12と、輝度補正部13と、表示部14と、を備えている。
【0014】
[入力画像取得部11]
入力画像取得部11は、例えば、放送波を受信する受信部(図示せず)、外部装置(BDプレイヤー、DVDプレイヤー、パーソナルコンピュータおよびゲーム機器など)からの入力を受け付ける入力部(図示せず)、記録媒体(図示せず)を読み取る読取部(図示せず)などから入力画像を取得する。
【0015】
[ガンマカーブ設定部12]
ガンマカーブ設定部12は、入力画像取得部11が取得した入力画像の明るさに応じて、ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限する。
【0016】
図1に示す例では、ガンマカーブ設定部12は、ガンマカーブ計算部122と、輝度計算部123と、範囲決定部124と、ガンマカーブ補正部125とを備えている。以下、ガンマカーブ設定部12が備える各部ごとに説明する。
【0017】
(ガンマカーブ計算部122)
ガンマカーブ計算部122は、補正前輝度と補正後輝度との対応関係を表すガンマカーブを算出する。また、ガンマカーブの算出に用いるガンマ値は、図示しない入力機器を介してユーザが設定した固定値を用いる構成であってもよいし、ガンマカーブ計算部122が入力画像の画素値等を参照して導出した動的な値を用いる構成であってもよい。
【0018】
(輝度計算部123)
輝度計算部123は、入力画像取得部11が取得した入力画像の明るさを示す指標値を算出する。例えば輝度計算部123は、入力画像の明るさを示す指標として、入力画像の平均輝度レベル(APL:Average Picture Level)等を用いてもよい。
【0019】
(範囲決定部124)
範囲決定部124は、輝度計算部123が算出した値に応じて、ガンマカーブの補正量を制限する制限範囲を決定する。一例として、範囲決定部124は、入力画像の明るさが暗いほど、ガンマカーブの補正量であって低輝度領域における輝度を上げる方向の補正量がより大きく制限されるように、前記制限範囲を設定してもよい。換言すれば、範囲決定部124は、入力画像の明るさが暗ければ暗いほど、入力画像の低輝度領域における当該入力画像のガンマ補正による輝度向上がより大きく抑制されるように、ガンマカーブを設定可能な許容範囲を決定してもよい。
【0020】
図3及び
図4は、ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。
図3及び
図4において、領域21が制限範囲に対応し、領域22が許容範囲に対応する。つまり、補正後のガンマカーブは、たとえ一部であっても前記制限範囲には含まれず、許容範囲内に全て含まれる。また、
図3及び
図4のグラフにおいて、グラフの横軸は、入力画像の輝度についての入力階調値を示しており、縦軸は、輝度についての出力階調値を示している。即ち、輝度について、入力階調値256は、出力階調値1024に対応する。また、直線23は、線形であり、座標(0、0)及び(256、1024)を通っている。
【0021】
また、
図3は、入力画像が暗い場合に範囲決定部124が決定し得る制限範囲を示している。
図3においては、矢印に示すように、補正前輝度よりも補正後輝度を高くするガンマカーブの許容範囲が、高輝度領域よりも低輝度領域の方が狭くなっている。ここで、直線23よりも左上の範囲が、補正前輝度よりも補正後輝度を高くする範囲に対応する。
図3に対応する構成においては、入力画像の輝度を上げようとするガンマカーブの低輝度領域における許容範囲が、高輝度領域における許容範囲よりも大きく制限される。また、ガンマカーブの前記許容範囲は、高輝度領域から低輝度領域になるにつれて徐々に大きく制限される。
【0022】
つまり、
図3に対応する構成において、入力画像の低輝度領域は、高輝度領域において許容される程度よりも、ガンマ補正によって一定以上明るくなることはない。これにより、入力画像が暗い場合に低輝度領域の輝度値を上げることが一定範囲に制限されるため、ガンマ補正を行った場合における入力画像のコントラストの低下を抑制することができる。
【0023】
また、範囲決定部124は、入力画像の明るさが明るいほど、ガンマカーブの補正量であって高輝度領域における輝度を下げる方向の補正量がより大きく制限されるように、前記制限範囲を設定してもよい。換言すれば、範囲決定部124は、入力画像の明るさが明るければ明るいほど、入力画像の高輝度領域における当該入力画像のガンマ補正による輝度低下がより大きく抑制されるように、ガンマカーブを設定可能な許容範囲を決定してもよい。
【0024】
図4は、入力画像が明るい場合に範囲決定部124が決定し得る制限範囲を示している。
図4においては、矢印に示すように、補正前輝度よりも補正後輝度を低くするガンマカーブの許容範囲が、低輝度領域よりも高輝度領域の方が狭くなっている。ここで、直線23よりも右下の範囲が、補正前輝度よりも補正後輝度を低くする範囲に対応する。
図4に対応する構成においては、入力画像の輝度を下げようとするガンマカーブの高輝度領域における許容範囲が、低輝度領域における許容範囲よりも大きく制限される。また、ガンマカーブの前記許容範囲は、低輝度領域から高輝度領域になるにつれて徐々に大きく制限される。
【0025】
つまり、
図4に対応する構成において、入力画像の高輝度領域は、低輝度領域において許容される程度よりも、ガンマ補正によって一定以上暗くなるくとはない。これにより、入力画像が明るい場合に高輝度領域の輝度値を下げることが一定範囲に制限されるため、ガンマ補正を行った場合における入力画像のコントラストの低下を抑制することができる。
【0026】
また、範囲決定部124は、制限範囲と許容範囲との境界を示す直線又は曲線を、例えばステップ関数を用いて規定してもよいが、シグモイド関数を用いてS字状の曲線を規定すると好適である。例えば、許容範囲の上限を示すS字曲線R
upper、及び許容範囲の下限を示すS字曲線R
lowerは、シグモイド関数を用いた以下の数1~数4の数式によって規定され得る。各式においてa、b及びcは、任意の係数である。これらの係数の値は、図示しない入力機器を介して表示装置1に入力することによって、ユーザが設定可能な構成であってもよい。また、Y
aplは、APLを示しており、Y
maxは、入力画像における輝度の最大値を示している。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0027】
図5は、数3の数式における右辺の第1項に示すシグモイド関数において、bを固定してaを変化させた場合の曲線をそれぞれ示している。
図5及び後述する
図6において、横軸はx
1の値を示しており、縦軸は前記シグモイド関数の値を示している。
図5に示すように、bを固定してaを変化させた場合、曲線全体の上下幅自体は変化せず、S字の急峻度合いが変化する。
【0028】
図6は、前記のシグモイド関数において、aを固定してbを変化させた場合の曲線をそれぞれ示している。
図6に示すように、aを固定してbを変化させた場合、曲線全体の上下幅が変化する。
【0029】
なお、シグモイド関数を用いた態様とは他の態様として、y=x/(1+|x|)、或いはy=tanh(x)等の式に基づくS字曲線を用いてもよい。
【0030】
また、ガンマカーブの制限範囲は、数1~数4の数式に例示した計算を、入力画像が更新される度に都度行うよりも、範囲決定部124が、入力画像の明るさに応じて、ガンマカーブにおいて補正量を制限する範囲をずらすことによって算出する構成が望ましい。これにより、表示装置1上における処理負荷を軽減させる効果を奏する。以下、
図7~
図12を参照して詳細に説明する。
【0031】
図7は、シグモイド関数の一例を示す図である。
図7のグラフにおいて、横軸は、入力画像の輝度についての入力階調値に対応する階調値であり、縦軸は、輝度についての出力階調値に対応する階調値である。曲線31は、数3の式で算出されるR
upperに対応し、曲線32は、数4の式で算出されるR
lowerに対応する。直線33は、線形であり、曲線31及び曲線32の漸近線又はそれに準ずる直線となっている。
【0032】
また、枠34は、後述する
図8等に例示する単一の制限範囲に対応する。ここで、左の枠34は、Y
apl=32の場合の制限範囲に対応し、右の枠34は、Y
apl=224の場合の制限範囲に対応する。
【0033】
範囲決定部124は、入力画像の明るさが大きいほど枠34を右方向にずらして制限範囲を算出し、小さいほど枠34を左方向にずらして制限範囲を算出する。
【0034】
図8、及び
図9~
図12は、ガンマカーブの制限範囲の一例を示す図である。また、
図8、及び
図9~
図12のグラフにおいて、横軸は、入力画像の輝度についての入力階調値を示しており、縦軸は、輝度についての出力階調値を示している。つまり、
図8等の例においては、入力階調値256は、出力階調値256に対応する。
【0035】
また、
図8、及び
図9~
図12においては、曲線36よりも上側の範囲及び曲線37よりも下側の範囲が制限範囲に対応し、曲線36と曲線37との間が許容範囲に対応する。なお、境界線である曲線36及び曲線37上は、制限範囲と許容範囲との何れに対応する構成であってもよい。直線38は、線形であり、座標(0、0)及び(256、256)を通っている。
【0036】
図8は、Y
apl=32の場合であって、入力画像が非常に暗い場合の制限範囲の一例を示している。
図8の枠39は、
図7の左の枠34に対応し、直線38は、
図7の直線33に対応する。また、曲線36は、
図7の曲線31に対応し、曲線37は、
図7の曲線32に対応する。例えば範囲決定部124は、少なくとも
図7の枠34に含まれる範囲の曲線31及び32に対してそれぞれ一次変換を行い、曲線36及び37を算出してもよい。
【0037】
図9は、Y
apl=64の場合であって、入力画像がやや暗い場合の制限範囲の一例を示している。また、
図9~
図12のグラフは、
図7の左の枠34を段階的に右方向にずらした位置にそれぞれ対応する。
図9に対応する入力画像は、
図8に対応する入力画像ほど暗くないので、
図9に示す制限範囲の方が、
図8に示す制限範囲よりも、ガンマカーブの低輝度領域における輝度を上げる方向の補正量を制限する度合いが小さいものとなっている。
【0038】
図10は、Y
apl=128の場合であって、入力画像の明るさが中間調である場合の制限範囲の一例を示している。
図10の例においては、曲線36と曲線37とが、座標(128、128)を中心として点対称に配置されている。
【0039】
図11は、Y
apl=192の場合であって、入力画像がやや明るい場合の制限範囲の一例を示している。
【0040】
図12は、Y
apl=224の場合であって、入力画像が非常に明るい場合の制限範囲の一例を示している。
図12に対応する入力画像は、
図11に対応する入力画像よりも明るいので、
図12に示す制限範囲の方が、
図11に示す制限範囲よりも、ガンマカーブの高輝度領域における輝度を下げる方向の補正量を制限する度合いが大きいものとなっている。
【0041】
また、上述した係数a、b及びcに関して、aの値を大きくした場合、低輝度領域及び高輝度領域においてガンマカーブの制限範囲が急峻となるため、本実施形態に係る表示装置1による効果がより大きくなる。また、aの値を小さくした場合、ガンマカーブの制限範囲がなだらかになるので、より自然なガンマ補正が可能となる。また、bの値を変化させた場合、入力階調全体に関して制限範囲の大小を調整することができる。また、cの値を変化させた場合、
図7に例示するS字曲線が左右にずれることにより、制限範囲を急峻に大きくする入力階調値を調整することができる。
【0042】
また、範囲決定部124は、一度算出した制限範囲を示す値等を、ルックアップテーブルに格納し、次回以降は前記ルックアップテーブルを参照して、制限範囲を決定する構成であってもよい。換言すると、ガンマカーブ設定部12が、ガンマカーブの制限範囲を規定するルックアップテーブルにおける、入力画像の明るさに応じた範囲を参照することによって、補正量が制限されたガンマカーブを生成してもよい。一例として、ルックアップテーブルの入力値を、入力画像の明るさを示すAPL等の値、又は変形例1に後述する画素の数又は割合等とし、ルックアップテーブルの出力値を、記録されたS字曲線RupperとRlowerとを用いる範囲を示す値とする構成であってもよい。又は、前記出力値を、入力画像の輝度についての各入力階調それぞれ対応する許容範囲の上限及び下限を示す配列等とする構成であってもよい。
【0043】
(ガンマカーブ補正部125)
ガンマカーブ補正部125は、範囲決定部124が決定した制限範囲に基づいて、ガンマカーブの補正量を決定し、ガンマカーブを補正する。例えばガンマカーブ補正部125は、以下の(1)~(3)に示す処理を、各入力階調値iについてそれぞれ行うことによってガンマカーブを補正してもよい。ここで、y[i]は、補正前のガンマカーブを入力階調値iに適用した場合の出力階調値を示している。また、upper_range[i]は、入力階調値iに対応する許容範囲の上限を示しており、lower_range[i]は、入力階調値iに対応する許容範囲の下限を示している。下記(1)~(3)に示す処理は、表示装置1の処理負荷が比較的低く、ガンマカーブの補正を高速に行うことができる。
【0044】
(1)y[i]の値がupper_range[i]の値よりも大きければ、y[i]の値がupper_range[i]の値になるように、当該入力階調値iに対応するガンマカーブ部分をクリッピングする。
【0045】
(2)y[i]の値がlower_range[i]の値よりも小さければ、y[i]の値がlower_range[i]の値になるように、当該入力階調値iに対応するガンマカーブ部分をクリッピングする。
【0046】
(3)(1)及び(2)の何れの条件も満たされなければ、y[i]の値を現状維持とするため、当該入力階調値iに対応するガンマカーブ部分について、クリッピングを行わない。
【0047】
[輝度補正部13]
輝度補正部13は、ガンマカーブ設定部12によって補正量が制限されたガンマカーブに基づいてガンマ補正を行い、入力画像の輝度を補正する。
【0048】
[表示部14]
表示部14は、輝度補正部13によって輝度が補正された画像等を表示する表示パネルである。
【0049】
〔表示装置1による補正方法〕
次に、
図13を参照して、実施形態1に係る表示装置1によって実行される、入力画像の輝度を補正する補正方法を説明する。
図13は、前記補正方法の流れを示すフローチャートである。
【0050】
(ステップS101)
表示装置1の入力画像取得部11は、入力画像を取得する(入力画像取得工程)。
【0051】
(ステップS102)
ガンマカーブ計算部122は、ガンマ値を参照してガンマカーブを算出する(ガンマカーブ計算工程)。
【0052】
(ステップS103)
輝度計算部123は、入力画像取得部11が取得した入力画像の明るさを示す指標値を算出する(輝度計算工程)。
【0053】
(ステップS104)
範囲決定部124は、輝度計算部123が算出した値に応じて、ガンマカーブの制限範囲を決定する(制限範囲決定工程)。
【0054】
(ステップS105)
ガンマカーブ補正部125は、範囲決定部124が決定した制限範囲に基づいて、ガンマカーブの補正量を決定し、ガンマカーブを補正する(ガンマカーブ補正工程)。
【0055】
また、ステップS102~S105の工程は、入力画像の明るさに応じて、ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限するガンマカーブ設定工程に対応する。
【0056】
(ステップS106)
輝度補正部13は、ガンマカーブ設定工程において補正したガンマカーブに基づいてガンマ補正を行い、入力画像の輝度を補正する(輝度補正工程)。
【0057】
(ステップS107)
表示部14は、輝度補正工程において輝度が補正された画像を表示する(表示工程)。
【0058】
以上、補正前輝度と補正後輝度との関係を表すガンマカーブに基づいて入力画像の輝度を補正する補正方法であって、ガンマカーブ設定工程及び輝度補正工程等を含む補正方法の一例について説明した。上述したように、ガンマカーブ設定工程では、前記入力画像の明るさに応じて、前記ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限する。また、輝度補正工程では、ガンマカーブ設定工程において前記補正量が制限された前記ガンマカーブに基づいて前記入力画像の輝度を補正する。
【0059】
前記の構成によれば、コントラスト感の低下を抑制しつつ、安定した画像が表示可能となる。
【0060】
〔変形例〕
以下、前記実施形態の変形例について説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、重複する説明を繰り返さない。
【0061】
(変形例1)
輝度計算部123は、入力画像の明るさを示す指標として、入力画像において所定条件を満たす輝度値を有する画素の数又は割合等を用いてもよい。
【0062】
本変形例の構成においては、所定条件を満たす輝度値として所定値以上の輝度値を有する画素の数が多い程、
図7の枠34を右方向にずらし、前記画素が少ない程、枠34を左方向にずらして以降の処理を行う構成であってもよい。或いは、所定条件を満たす輝度値として所定値以下の輝度を有する画素の数が多い程、枠34を左方向にずらし、前記画素が多い程、枠34を右方向にずらして以降の処理を行う構成であってもよい。
【0063】
なお、本開示における「入力画像の明るさ」とは、必ずしも入力画像全体の明るさを意味していない。例えば輝度計算部123は、入力画像の中心位置を含む領域であって、入力画像の80%~90%程度の大きさの領域に基づいて入力画像の明るさを示す指標値を算出してもよい。
【0064】
また、輝度計算部123は、入力画像を複数の領域に分割し、そのうちの1以上の領域に基づいて入力画像の明るさを示す指標値を算出してもよい。或いは、輝度計算部123が前記領域毎に異なる前記指標値を算出して、範囲決定部124が領域毎の制限範囲を決定し、ガンマカーブ補正部125が領域毎に適用されるガンマカーブの補正をそれぞれ行う構成でもよい。
【0065】
また、輝度計算部123は、入力画像中における人物若しくは建物又は背景等のオブジェクトを、例えば機械学習を用いて、色又は形状に基づき抽出し、抽出したオブジェクトの明るさを示す指標値を算出して何れかを用いてもよい。また、輝度計算部123が抽出したオブジェクト単位で、上述した領域が規定される構成であってもよい。
【0066】
(変形例2)
前記実施形態においては、範囲決定部124が入力画像の明るさに応じて例えば枠34をずらすことにより、段階的な制限範囲を決定する構成について、
図7~
図12を参照して説明したが、範囲決定部124は、前記構成に限定されない。
【0067】
範囲決定部124は、入力画像の明るさを示す指標値が所定条件を満たす場合、事前に規定された範囲における補正量を制限してもよい。例えば範囲決定部124は、前記指標値が所定条件を満たす場合として、入力画像全体における輝度を示す指標値が第1の所定値未満である場合に、事前に規定された、
図3に例示する制限範囲を用いるものとして決定してもよい。また、範囲決定部124は、前記指標値が所定条件を満たす場合として、前記指標値が第2の所定値を超える場合に、事前に規定された、
図4に例示する制限範囲を用いるものとして決定してもよい。また、範囲決定部124は、前記指標値が所定条件を満たさない場合として、前記指標値が、第1の所定値以上であり且つ第2の所定値以下である場合に、例えば
図3の右下の領域21と、
図4の左上の領域21とを合わせた領域を制限範囲として決定してもよい。
【0068】
なお、前記指標値についての所定条件が満たされるか否かによらず、例えば
図3の左上の領域21と、
図4の右下の領域21とを合わせた領域を、範囲決定部124が制限範囲として決定する構成も本開示に含まれる。
【0069】
(変形例3)
前記実施形態においては、ガンマカーブが制限範囲に含まれる場合にガンマカーブをクリッピングする構成について説明したが、ガンマカーブ補正部125は、前記構成に限定されない。例えばガンマカーブ補正部125は、ガンマカーブを一定区間ごとに分割して、許容範囲に収まるようにゲインを乗ずる構成であってもよい。y[i]を、補正前のガンマカーブを入力階調値iに適用した場合の出力階調値とし、ゲインの値をαとすると、ガンマカーブ補正部125は、例えばα*(y[i]-i)+iの値を、新たなy[i]の値として用いてもよい。また、前記αは、分割されたガンマカーブの区分毎に異なる値である。
【0070】
また、ガンマカーブ補正部125は、範囲決定部124が決定した制限範囲に基づいてガンマカーブを補正する構成に限定されない。例えばガンマカーブ補正部125は、低輝度領域に対応するガンマカーブ部分が、入力となる画素の輝度を上げるように作用する場合、前記ガンマカーブ部分に対応する補正量に1以下の係数を乗じるようにガンマカーブを補正してもよい。また、ガンマカーブ補正部125は、高輝度領域に対応するガンマカーブ部分が、入力となる画素の輝度を下げるように作用する場合、前記ガンマカーブ部分に対応する補正量に1以下の係数を乗じるようにガンマカーブを補正してもよい。
【0071】
〔ソフトウェアによる実現例〕
表示装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に入力画像制御部、ガンマカーブ設定部12及び輝度補正部13)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0072】
この場合、前記装置は、前記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により前記プログラムを実行することにより、前記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0073】
前記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、前記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、前記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して前記装置に供給されてもよい。
【0074】
また、前記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、前記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより前記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0075】
また、前記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは前記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0076】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る表示装置は、補正前輝度と補正後輝度との関係を表すガンマカーブに基づいて入力画像の輝度を補正する表示装置であって、前記入力画像の明るさに応じて、前記ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限するガンマカーブ設定部と、前記ガンマカーブ設定部によって前記補正量が制限された前記ガンマカーブに基づいて前記入力画像の輝度を補正する輝度補正部と、を備える構成である。
【0077】
本発明の態様2に係る表示装置は、前記の態様1において、前記ガンマカーブ設定部は、前記入力画像の明るさが暗いほど、前記ガンマカーブの補正量であって低輝度領域における輝度を上げる方向の補正量をより大きく制限する構成としてもよい。
【0078】
本発明の態様3に係る表示装置は、前記の態様1又は2において、前記ガンマカーブ設定部は、前記入力画像の明るさが明るいほど、前記ガンマカーブの補正量であって高輝度領域における輝度を下げる方向の補正量をより大きく制限する構成としてもよい。
【0079】
本発明の態様4に係る表示装置は、前記の態様1から3までの何れかにおいて、前記ガンマカーブ設定部は、前記ガンマカーブの制限範囲を規定するテーブルにおける、前記入力画像の明るさに応じた範囲を参照することによって、前記補正量が制限された前記ガンマカーブを生成する構成としてもよい。
【0080】
本発明の態様5に係る表示装置は、前記の態様1から3までの何れかにおいて、前記ガンマカーブ設定部は、前記入力画像の明るさを示す指標値が所定条件を満たす場合、事前に規定された範囲における補正量を制限する構成としてもよい。
【0081】
本発明の態様6に係る表示装置は、前記の態様1から5までの何れかにおいて、前記入力画像の明るさは、前記入力画像の平均輝度レベルである構成としてもよい。
【0082】
本発明の態様7に係る表示装置は、前記の態様1から5までの何れかにおいて、前記入力画像の明るさは、前記入力画像における所定値以上又は未満の輝度値を有する画素の数又は割合である構成としてもよい。
【0083】
本発明の態様8に係る補正方法は、補正前輝度と補正後輝度との関係を表すガンマカーブに基づいて入力画像の輝度を補正する補正方法であって、前記入力画像の明るさに応じて、前記ガンマカーブの少なくとも一部の範囲における補正量を制限するガンマカーブ設定工程と、前記ガンマカーブ設定部によって前記補正量が制限された前記ガンマカーブに基づいて前記入力画像の輝度を補正する輝度補正工程と、を含む方法である。
【0084】
本発明の態様9に係る制御プログラムは、前記の態様1に記載の表示装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記ガンマカーブ設定部および前記輝度補正部としてコンピュータを機能させるための制御プログラムである。
【0085】
本発明の各態様に係る表示装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記表示装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記表示装置をコンピュータにて実現させる表示装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0086】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 表示装置
11 入力画像取得部
12 ガンマカーブ設定部
13 輝度補正部
14 表示部
122 ガンマカーブ計算部
123 輝度計算部
124 範囲決定部
125 ガンマカーブ補正部