(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】分散性判定方法、分散性判定装置および学習済みモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
G01N 11/00 20060101AFI20240925BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240925BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240925BHJP
【FI】
G01N11/00 C
G06T7/00 350B
G06T7/00 610
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2021043856
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀平
(72)【発明者】
【氏名】森 剛志
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 靖直
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-190508(JP,A)
【文献】特開2011-069754(JP,A)
【文献】特開2008-292317(JP,A)
【文献】特開2001-313027(JP,A)
【文献】特表2017-504007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0084370(US,A1)
【文献】国際公開第2020/175481(WO,A1)
【文献】特開2007-078590(JP,A)
【文献】国際公開第2018/104580(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00
G06T 7/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子分散液の分散性を判定する分散性判定方法であって、
前記粒子分散液を撮像した撮像画像を取得する画像取得工程と、
学習用の粒子分散液を撮像した教師画像と、前記学習用の粒子分散液について測定したフローカーブの形状特性から判定される前記分散性とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを用いて、前記撮像画像から前記分散性を判定する分散性判定工程とを実施することを特徴とする分散性判定方法。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、前記撮像画像における粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として機械学習され、
前記撮像画像における粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として抽出して前記分散性判定工程に引き渡す特徴量抽出工程を実施することを特徴とする請求項1に記載の分散性判定方法。
【請求項3】
前記フローカーブの形状特性は、前記フローカーブにおけるせん断速度が0.1s
-1のときの粘度と、せん断速度が10s
-1のときの粘度との比であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分散性判定方法。
【請求項4】
粒子分散液の分散性を判定する分散性判定装置であって、
前記粒子分散液を撮像した撮像画像を取得する画像取得手段と、
学習用の粒子分散液を撮像した教師画像と、前記学習用の粒子分散液について測定したフローカーブの形状特性から判定される前記分散性とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを用いて、前記撮像画像から前記分散性を判定する分散性判定手段とを備えていることを特徴とする分散性判定装置。
【請求項5】
粒子分散液の分散性を判定するための学習済みモデルの生成方法であって、
学習用の粒子分散液のフローカーブを測定するフローカーブ測定工程と、
前記学習用の粒子分散液を撮像して教師画像とする教師画像撮像工程と、
前記フローカーブ測定工程で測定された前記フローカーブの形状特性から前記分散性を判定するフローカーブ判定工程と、
前記教師画像撮像工程で撮像された前記教師画像と、前記フローカーブ判定工程で判定された前記分散性とを教師データとして機械学習させ、前記学習済みモデルを生成するモデル生成工程とを実施することを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
【請求項6】
前記教師画像における粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として抽出する特徴量抽出工程を実施し、
前記モデル生成工程では、前記特徴量抽出工程で抽出された粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として機械学習させることを特徴とする請求項5に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項7】
前記フローカーブの形状特性は、前記フローカーブにおけるせん断速度が0.1s
-1のときの粘度と、せん断速度が10s
-1のときの粘度との比であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の学習済みモデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性判定方法、分散性判定装置および学習済みモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子分散液の分散性を判定する分散性判定方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された測定方法(分散性判定方法)では、粒子分散材料(粒子分散液)内部の粒子状材料の凝集構造を異方性信号として測定しなければならないため、工程が煩雑になるという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、簡易な工程で分散性を判定することができる分散性判定方法、分散性判定装置および学習済みモデルの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る分散性判定方法は、粒子分散液の分散性を判定する分散性判定方法であって、前記粒子分散液を撮像した撮像画像を取得する画像取得工程と、学習用の粒子分散液を撮像した教師画像と、前記学習用の粒子分散液について測定したフローカーブの形状特性から判定される前記分散性とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを用いて、前記撮像画像から前記分散性を判定する分散性判定工程とを実施する。
【0007】
本発明の一態様に係る分散性判定方法において、前記学習済みモデルは、前記撮像画像における粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として機械学習され、前記撮像画像における粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として抽出して前記分散性判定工程に引き渡す特徴量抽出工程を実施することが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る分散性判定方法において、前記フローカーブの形状特性は、前記フローカーブにおけるせん断速度が0.1s-1のときの粘度と、せん断速度が10s-1のときの粘度との比であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る分散性判定装置は、粒子分散液の分散性を判定する分散性判定装置であって、前記粒子分散液を撮像した撮像画像を取得する画像取得手段と、学習用の粒子分散液を撮像した教師画像と、前記学習用の粒子分散液について測定したフローカーブの形状特性から判定される前記分散性とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを用いて、前記撮像画像から前記分散性を判定する分散性判定手段とを備えている。
【0010】
本発明の一態様に係る学習済みモデルの生成方法は、粒子分散液の分散性を判定するための学習済みモデルの生成方法であって、学習用の粒子分散液のフローカーブを測定するフローカーブ測定工程と、前記学習用の粒子分散液を撮像して教師画像とする教師画像撮像工程と、前記フローカーブ測定工程で測定された前記フローカーブの形状特性から前記分散性を判定するフローカーブ判定工程と、記教師画像撮像工程で撮像された前記教師画像と、前記フローカーブ判定工程で判定された前記分散性とを教師データとして機械学習させ、前記学習済みモデルを生成するモデル生成工程とを実施する。
【0011】
本発明の一態様に係る学習済みモデルの生成方法において、前記教師画像における粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として抽出する特徴量抽出工程を実施し、前記モデル生成工程では、前記特徴量抽出工程で抽出された粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として機械学習させることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る学習済みモデルの生成方法において、前記フローカーブの形状特性は、前記フローカーブにおけるせん断速度が0.1s-1のときの粘度と、せん断速度が10s-1のときの粘度との比であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、粒子分散液を撮像すれば、その撮像画像から分散性を判定することができるので、粒子状材料の凝集構造を異方性信号として測定しなくてもよく、簡易な工程で分散性を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る分散性判定システムの説明図。
【
図2】一実施形態に係る学習済みモデルの生成方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[装置構成]
図1において、分散性判定装置EAは、粒子分散液の分散性を判定する装置であって、パーソナルコンピュータやサーバ等のコンピュータにより構成されている。なお、粒子分散液は、分散媒である液体に固体または液体の分散質が粒子となって分散したものである。
分散性判定装置EAは、記憶手段10と、処理手段20と、操作手段30とを備え、撮像手段40と、出力手段50とで分散性判定システムEA1を構成している。
【0016】
記憶手段10は、メモリやハードディスク等により構成され、分散性判定装置EAおよび分散性判定システムEA1を制御する各種プログラムを記憶している。また、記憶手段10は、粒子分散液の分散性を判定するための学習済みモデルを記憶している。
【0017】
処理手段20は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Central Graphics Processing Unit)等のプロセッサにより構成され、画像取得手段21と、特徴量抽出手段22と、分散性判定手段23とを備えている。
画像取得手段21は、粒子分散液を撮像した撮像画像を撮像手段40から取得する。
特徴量抽出手段22は、画像取得手段21で取得された撮像画像から、所定の特徴量を抽出して分散性判定手段23に引き渡す。特徴量抽出手段22が抽出する特徴量としては、粒子分散液の撮像画像中の粒子の数、最大粒子サイズ、粒子の大きさの偏差、粒子の最大周囲長、粒子の大きさの平均、撮像画像を分割した際の各分割領域における粒子の大きさの個数分布、粒子の周囲長の平均、粒子の周囲長の偏差等が例示できる。
分散性判定手段23は、記憶手段10に記憶された学習済みモデルを用いて、画像取得手段21で取得された撮像画像から粒子分散液の分散性を判定する。
【0018】
操作手段30は、キーボード、操作パネル、タッチパネル、マウス、各種スイッチ、音声入力操作用のマイク等により構成され、各種操作による操作信号を分散性判定装置EAに入力可能とされている。
【0019】
撮像手段40は、カメラ、撮影機、撮像機能付き顕微鏡、イメージングセンサ等により構成され、撮像画像を処理手段20に送信可能となっている。
【0020】
出力手段50は、ディスプレイやパネル等の表示装置や、表示灯やスピーカー等の報知装置等により構成され、分散性判定装置EAによる判定結果を画面に出力したり、点灯や音等で出力したりするようになっている。
【0021】
[学習済みモデル]
学習済みモデルは、学習用の粒子分散液を撮像した教師画像と、学習用の粒子分散液について測定したフローカーブの形状特性から判定される分散性とを教師データとして機械学習させたものであり、
図2に示す以下の手順で生成される。なお、フローカーブとは、粒子分散液のせん断速度と粘度との関係、または粒子分散液のせん断速度と応力との関係をグラフ化したものである。
【0022】
先ず、学習用に様々な種類、状態の粒子分散液を用意し、これらの学習用の粒子分散液についてフローカーブを測定する(ステップST11)。この際使用する測定機器としては、共軸二重円筒型粘度計、B型粘度計、E型粘度計(コーンプレート型粘度計)等、特に限定されないが、回転式粘度計であれば、回転数を自在に変化させながら粘度を測定することができるレオメータが好ましい。
【0023】
次いで、学習用の粒子分散液を撮像して教師画像とする(ステップST12)。撮像は、撮像手段40で行ってもよいし、撮像手段40以外のもので行ってもよく、例えば、2枚のスライドガラスで挟み込まれて塗膜となった粒子分散液を、撮像機能を有するデジタル顕微鏡で撮像してもよい。
【0024】
その後、ステップST11で測定されたフローカーブの形状特性から、学習用の粒子分散液の分散性を判定する(ステップST13)。このように判断する理由として、粒子分散液は、完全分散状態に近ければ、
図3で符号FC1を付したフローカーブが示すように、低せん断領域から高せん断領域にわたって粘度があまり変化しないニュートン流体となっており、その特徴がフローカーブの形状特性に表れるからである。分散性の判定に用いるフローカーブの形状特性としては、例えば、フローカーブの任意の点における傾きまたはこれに相当する特性が例示できる。
本実施形態の場合、フローカーブにおけるせん断速度が0.1s
-1のときの粘度と、せん断速度が10s
-1のときの粘度との比をフローカーブの形状特性として、分散性を判断する。具体的には、
図3で符号FC1を付したフローカーブのように、下記式(1)で求まる指標RIの値がRI≧0.9であれば、粒子分散液がニュートン流体であるとして分散性良(合格)と判断する。一方、
図3で符号FC2を付したフローカーブのように、RI<0.9であれば、粒子分散液がチキソトロピー流体であるとして分散性否(不合格)と判断する。
【0025】
[式1]
RI=せん断速度が10s-1のときの粘度/せん断速度が0.1s-1のときの粘度・・・(1)
【0026】
次に、ステップST12で撮像した教師画像から、所定の特徴量を抽出する(ステップST14)。本実施形態の場合、少なくとも粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として抽出する。なお、特徴量を抽出する際は、各撮像画像に対して、輝度値の平均、分散に基づく閾値を設定し、二値化処理を施しておくとよい。
【0027】
そして、教師画像から抽出した特徴量と、ステップST13で判定された分散性とを教師データとして機械学習させ、粒子分散液の撮像画像を入力、粒子分散液の分散性を出力とする学習済みモデルを生成する(ステップST15)。機械学習の具体的な手法としては、公知の各種の技術が利用可能であり、特に限定されない。本実施形態の場合、機械学習のアルゴリズムに、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、最近傍法(ニアレストネイバー法)、ランダムフォレスト、確率的勾配法、およびカーネル近似を使用する。
【0028】
[分散性判定方法]
以上の分散性判定装置EAを備えた分散性判定システムEA1の場合を例として、
図4に示す以下の手順で実施される分散性判定方法を説明する。
先ず、分散性判定システムEA1に対し、当該分散性判定システムEA1の使用者(以下、単に「使用者」という)が、操作手段30を介して自動運転開始の信号を入力する。次いで、使用者または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、例えば、2枚のスライドガラスで挟み込まれて塗膜となった粒子分散液や、透明な容器に収容された粒子分散液を所定の位置に配置すると、処理手段20が撮像手段40を駆動し、粒子分散液を撮像する(ステップST21)。その後、画像取得手段21は、撮像手段40から粒子分散液の撮像画像を取得する(ステップST22)。
【0029】
次に、特徴量抽出手段22は、ステップST22で取得された撮像画像から所定の特徴量を抽出して分散性判定手段23に引き渡す(ステップST23)。この際抽出する特徴量は、学習済みモデルの作成時に教師画像から抽出した特徴量と同じにする。そして、分散性判定手段23は、学習済みモデルを用いて撮像画像から分散性を判定し、判定結果を出力手段50に出力する(ステップST24)。本実施形態の場合、分散性判定手段23は、分散性を2つのレベルに分け、分散性良(合格)または分散性否(不合格)の判定を行う。次いで、出力手段50は、分散性の判定結果を表示装置に表示したり、報知装置を点灯したり、報知装置から音を出したりして使用者に知らせる(ステップST25)。
【0030】
[判定例]
アクリル系樹脂をメチルエチルケトンで希釈した溶液に、表1に示す分散質を添加、分散した粒子分散液のサンプルA~Hの教師画像を用いて学習済みモデルを作成し、当該学習済みモデルを用いて、表1のサンプルJ~Mの分散性判定を行った。
【0031】
【0032】
先ず、サンプルA~Hのフローカーブ測定を行った結果、各サンプルの所定時間経過後の指標RIの値は、下記表2に示す値となった。
【0033】
【0034】
次いで、教師画像を得るために、サンプルA~Hをデジタル顕微鏡で撮像した後、各教師画像に二値化処理を施した。その後、各教師画像における粒子の数、最大粒子サイズ、粒子の大きさの偏差、粒子の最大周囲長、粒子の大きさの平均、撮像画像を分割した際の各分割領域における粒子の大きさの個数分布、粒子の周囲長の平均、粒子の周囲長の偏差を特徴量として抽出した。次に、表2でRI≧0.9となったサンプルの教師画像に分散性良(合格)の判定結果を、RI<0.9のサンプルの教師画像に分散性否(不合格)の判定結果を付した上で、サンプルA~Hの教師画像および判定結果から学習モデルを生成した。
【0035】
作成された学習済みモデルを用いてサンプルJ~Mの分散性を判定した結果を表3に、サンプルJ~Mの実際のフローカーブ測定結果から得られる指標RIの値を表4に示す。
【0036】
【0037】
【0038】
表3、4からわかるように、サンプルJ~Mの撮像画像から学習済みモデルを用いて判定した分散性は、サンプルJ~Mの実際のフローカーブ測定結果から得られる指標RIの値と対応し、良好な判定結果が得られた。
また、撮像画像中の特徴量の数を減らし、粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として同様の判定を行ったところ、判定精度がわずかに低下したものの、実用上問題ない良好な判定結果が得られた。
【0039】
以上のような実施形態によれば、学習用の粒子分散液を撮像した教師画像と、学習用の粒子分散液について測定したフローカーブの形状特性から判定される分散性とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを用いて、撮像画像から分散性を判定する。このため、粒子分散液を撮像すれば分散性を判定することができるので、粒子状材料の凝集構造を異方性信号として測定しなくてもよく、簡易な工程で分散性を判定することができる。
【0040】
また、特徴量抽出手段22が、撮像画像における粒子の数、最大粒子サイズ、および粒子の大きさの偏差を特徴量として抽出して分散性判定手段23に引き渡すため、学習済みモデルによる分散性の判定精度を高めることができる。
【0041】
また、フローカーブにおけるせん断速度が0.1s-1のときの粘度と、せん断速度が10s-1のときの粘度との比をフローカーブの形状特性として分散性を判定するため、せん断速度比が1:10となる位置での粘度比を用いるいわゆるTi値に比べ、フローカーブの形状特性をより広範囲で特定することができ、分散性の判定精度を高めることができる。
【0042】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0043】
例えば、記憶手段10は、分散性判定装置EAに内蔵されていてもよいし、分散性判定装置EAに外付けするタイプであってもよい。
【0044】
処理手段20は、
図5に示すように、画像取得手段21で取得した撮像画像から学習済みモデルを生成するモデル生成手段24を備え、モデル生成手段24で生成された学習済みモデルを用いて、分散性判定手段23で撮像画像から分散性を判定してもよい。即ち、
学習用の粒子分散液を撮像手段40で撮像した教師画像を画像取得手段21で取得し、特徴量抽出手段22で教師画像から所定の特徴量を抽出し、モデル生成手段24で教師画像を用いて学習済みモデルを生成してもよい。この場合、学習用の粒子分散液のフローカーブは、レオメータ等のフローカーブ測定機器から受信してもよいし、操作手段30から入力されてもよい。また、学習用の粒子分散液の分散性は、そのフローカーブからモデル生成手段24が上記式(1)を用いて判定してもよいし、判定結果が操作手段30から入力されてもよい。なお、モデル生成手段24は、ディープラーニング(深層学習で)学習済みモデルを生成してもよい。
画像取得手段21は、粒子分散液の撮像画像を撮像手段40から直接取得してもよいし、撮像手段40から直接取得しなくてもよく、例えば、撮像手段40による撮像画像が蓄積されたサーバやデータベース等の画像蓄積手段から撮像画像を取得してもよい。
特徴量抽出手段22は、粒子の数、最大粒子サイズ、粒子の大きさの偏差、粒子の最大周囲長、粒子の大きさの平均、撮像画像を分割した際の各分割領域における粒子の大きさの個数分布、粒子の周囲長の平均、粒子の周囲長の偏差のうち、任意の複数項目を特徴量として抽出してもよい。
分散性判定手段23は、指標RIによる分散性良否(分散性合否)の判定閾値を0.9以外の値としてもよいし、指標RIの値に応じて分散性を3つ以上のレベルに分けて判定してもよく、例えば、RI≧0.95となった場合は分散性優(合格)、0.95>RI≧0.9となった場合は分散性良(合格)、RI<0.9の場合は分散性否(不合格)と判定してもよいし、RI=1.0~0.9の範囲を0.01ごとに10分割し、分散性を10段階で判定してもよいし、RIの値をそのまま判定結果として出力してもよい。
分散性判定手段23は、フローカーブの任意の点における傾きや、フローカーブの任意の複数点を通る直線の傾きをフローカーブの形状特性とし、これらの傾きを指標RIとして分散性を判定してもよい。この場合、上記の場合と同様に、例えば、フローカーブの傾きが閾値以上なら分散性良(合格)、閾値未満なら分散性否(不合格)と判定してもよいし、フローカーブの傾きに応じて分散性を3つ以上のレベルに分けて判定してもよいし、フローカーブの傾きの値をそのまま判定結果として出力してもよい。
【0045】
操作手段30は、分散性判定装置EAから分離可能に構成されていてもよいし、分離不能に構成されていてもよい。
操作手段30は、分散性判定装置EAに備わっていてもよいし、備わっていなくてもよく、備わっていない場合、分散性判定装置EAと、撮像手段40と、出力手段50とで分散性判定システムEA1を構成してもよいし、分散性判定装置EAと通信可能な外部の入力装置からの操作信号を分散性判定装置EAに入力してもよい。
【0046】
撮像手段40は、分散性判定装置EAに備わっていてもよいし、分散性判定システムEA1に備わっていてもよいし、分散性判定装置EAや分散性判定システムEA1に備わっていなくてもよく、備わっていない場合、分散性判定装置EAや分散性判定システムEA1と通信可能な外部の撮像装置での撮像画像を画像取得手段21で取得するようにしてもよい。
【0047】
出力手段50は、分散性判定装置EAに備わっていてもよいし、分散性判定システムEA1に備わっていてもよいし、分散性判定装置EAや分散性判定システムEA1に備わっていなくてもよく、備わっていない場合、分散性判定装置EAや分散性判定システムEA1と通信可能な外部の出力装置に判定結果を出力してもよい。
【0048】
学習済みモデルは、教師画像から特徴量を抽出しないで機械学習させたものであってもよく、例えば、教師画像からディープラーニングで学習させたものであってもよい。ディープラーニングで学習させる場合、特徴量抽出手段22や特徴量抽出工程は、なくてもよい。
学習済みモデルの生成において、フローカーブ測定工程、フローカーブ判定工程および教師画像撮像工程の実施順序は特に限定されず、フローカーブ測定工程、教師画像撮像工程、フローカーブ判定工程の順に実施してもよいし、フローカーブ測定工程、フローカーブ判定工程、教師画像撮像工程の順に実施してもよいし、教師画像撮像工程、フローカーブ測定工程、フローカーブ判定工程の順に実施してもよい。
【0049】
粒子分散液は、分散媒が液体であれば、分散媒および分散質の物質、種別、組成等は、特に限定されることはない。例えば、分散媒は、有機溶剤、水、アルコール、樹脂溶液、油等であってもよい。また、分散質は、無機粒子、有機粒子、有機無機ハイブリッド粒子、マイクロカプセル、熱膨張粒子、または液滴等であってもよいし、粒子の表面が改質されたものであってもよいし、酸化物や水酸化物であってもよく、1種類の分散質が単独で用いられてもよいし、複数種類の分散質が併用されてもよい。
【0050】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、画像取得工程は、粒子分散液を撮像した撮像画像を取得する工程であればどのような工程でもよく、出願当初の技術常識に照らし合わせてその技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【符号の説明】
【0051】
EA…分散性判定装置
10…記憶手段
20…処理手段
21…画像取得手段
22…特徴量抽出手段
23…分散性判定手段
30…操作手段
40…撮像手段
50…出力手段