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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】物体識別装置、車両および物体識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20240925BHJP
【FI】
G01S15/931
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021051238
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149199
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 逸銘
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕貴
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-239433(JP,A)
【文献】特開平06-232819(JP,A)
【文献】特開2008-076232(JP,A)
【文献】特開2007-137352(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0048809(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/64
G01S 13/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体から物体に向けて送波された検出波が、前記物体で反射されて前記移動体で受波された場合、前記検出波の反射強度と識別閾値との比較結果に基づいて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する識別部と、
前記検出波が前記物体の少なくとも2つの点で反射されて前記移動体に受波された場合、前記少なくとも2つの点の位置に応じて、前記物体が柱状物体であるか否か判定し、前記判定の結果に応じて、前記識別部の識別感度を変更する変更部と、
を備える物体識別装置。
【請求項2】
異なる経路を伝搬した前記検出波を検出することにより算出される前記物体の複数の座標に基づいて前記物体の形状を判定する形状判定部を備え、
前記変更部は、前記複数の座標に応じて、前記識別感度を変更する、
請求項1に記載の物体識別装置。
【請求項3】
移動体から物体に向けて送波された検出波が、前記物体で反射されて前記移動体で受波された場合、前記検出波の反射強度と識別閾値との比較結果に基づいて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する識別部と、
前記検出波が前記物体の少なくとも2つの点で反射されて前記移動体に受波された場合、前記少なくとも2つの点の位置に応じて、前記識別部の識別感度を変更する変更部と、
を備え、
前記識別閾値は、前記少なくとも2つの点の間の距離が所定閾値以上である場合、前記制御対象物ではない非制御対象物に対する前記検出波の反射強度に合わせて設定される、
体識別装置。
【請求項4】
前記非制御対象物は、路面に位置し、前記移動体の本体と衝突しない高さを有する下方物である、
請求項に記載の物体識別装置。
【請求項5】
前記変更部は、前記識別閾値を変更することにより前記識別感度を変更する、
請求項1~の何れか1項に記載の物体識別装置。
【請求項6】
前記変更部は、前記反射強度を変更することにより前記識別感度を変更する、
請求項1~の何れか1項に記載の物体識別装置。
【請求項7】
前記変更部は、前記移動体と前記物体との距離に応じて前記識別感度を変更する制御を行う、
請求項1~の何れか1項に記載の物体識別装置。
【請求項8】
請求項1~の何れか1項に記載の物体識別装置と、
前記検出波を送波する送波センサと、
前記検出波を受波する、少なくとも2つの受波センサと、
を備える車両。
【請求項9】
物体識別方法であって、
移動体から物体に向けて送波された検出波が、前記物体で反射されて前記移動体で受波するステップと、
記検出波の反射強度と識別閾値との比較結果に基づいて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別するステップと、を有し、
前記受波するステップにおいて、前記検出波が前記物体の少なくとも2つの点で反射されて前記移動体に受波された場合、前記識別するステップは、前記少なくとも2つの点の位置に応じて、前記物体が柱状物体であるか否か判定し、前記判定の結果に応じて、識別感度を変更する、物体識別方法。
【請求項10】
物体識別方法であって、
移動体から物体に向けて送波された検出波が、前記物体で反射されて前記移動体で受波するステップと、
前記検出波の反射強度と識別閾値との比較結果に基づいて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別するステップと、を有し、
前記受波するステップにおいて、前記検出波が前記物体の少なくとも2つの点で反射されて前記移動体に受波された場合、前記識別するステップは、前記少なくとも2つの点の位置に応じて、識別感度を変更し、
前記識別閾値は、前記少なくとも2つの点の間の距離が所定閾値以上である場合、前記制御対象物ではない非制御対象物に対する前記検出波の反射強度に合わせて設定される、
物体識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体識別装置、車両および物体識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の移動体と、物体との間における検出波の往復に基づいて物体を検出可能な物体識別装置が知られている。例えば、特許文献1には、物体の高さと、車両から物体までの距離とに応じて検出波の反射強度を補正して、補正後の反射強度に基づいて、物体の種別を識別可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-247215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検出波の反射強度は、外乱(例えば、風、雨、熱等)によってばらつきがあることや、物体の形状によっては、距離に起因する反射強度の変化傾向が同じではないため、反射強度を調整するのみでは物体を安定して識別することができないおそれがあった。
【0005】
本開示の目的は、物体を安定して識別することが可能な物体識別装置、車両および物体識別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る物体識別装置は、
移動体から物体に向けて送波された検出波が、前記物体で反射されて前記移動体で受波された場合、前記検出波の反射強度と識別閾値との比較結果に基づいて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別する識別部と、
前記検出波が前記物体の少なくとも2つの点で反射されて前記移動体に受波された場合、前記少なくとも2つの点の位置に応じて、前記物体が柱状物体であるか否か判定し、前記判定の結果に応じて、前記識別部の識別感度を変更する変更部と、
を備える。
【0007】
本開示に係る車両は、
上記の物体識別装置と、
前記検出波を送波する送波センサと、
前記検出波を受波する、少なくとも2つの受波センサと、
を備える。
【0008】
本開示に係る物体識別方法は、
物体識別方法であって、
移動体から物体に向けて送波された検出波が、前記物体で反射されて前記移動体で受波するステップと、
記検出波の反射強度と識別閾値との比較結果に基づいて、前記物体が制御対象物であるか否かについて識別するステップと、を有し、
前記受波するステップにおいて、前記検出波が前記物体の少なくとも2つの点で反射されて前記移動体に受波された場合、前記識別するステップは、前記少なくとも2つの点の位置に応じて、前記物体が柱状物体であるか否か判定し、前記判定の結果に応じて、識別感度を変更する。
【0009】
本開示によれば、物体を安定して識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態に係る車両制御ユニットが適用された車両の構成例を示すブロック図である。
図2】車両における物体検出部の配置の一例を示す図である。
図3】反射強度に対する識別閾値の設定における一般的な方法について説明するための図である。
図4】下方物と検出波との関係性について説明するための図である。
図5】下方物に係る反射強度の距離に対する変化の一例を示す図である。
図6】物体が柱状物体である場合の検出波の経路の一例を示す図である。
図7】形状判定閾値と距離との関係性の一例を示す図である。
図8】柱状物体に係る反射強度と、識別閾値との関係性の一例を示す図である。
図9】車両制御ユニットにおける識別制御の動作例を示すフローチャートである。
図10】車両における物体検出部の配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本開示の実施の形態に係る車両制御ユニット100が適用された車両1の構成例を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、車両1は、例えば、進行経路の周辺に存在する物体が車両1と衝突する可能性があるか否かを識別する機能を有する移動体である。車両1は、加速部10と、制動部20と、車速情報取得部30と、物体検出部40と、車両制御ユニット100とを有する。
【0013】
加速部10は、車両制御ユニット100の加速要求に応じて車両1の加減速を行う加速装置である。
【0014】
制動部20は、車両制御ユニット100の制動要求に応じて車両1の制動を行う制動装置である。
【0015】
車速情報取得部30は、車両1の速度に関する情報を取得する。具体的には、車速情報取得部30は、加速部10等から、車両1の車速、加速度の情報を取得し、かつ、制動部20等から、ブレーキの情報等を取得する。また、車速情報取得部30は、図示しないハンドル等の操作部から舵角等の情報を取得する。
【0016】
物体検出部40は、例えば、ソナー、レーダー等の車載センサであり、超音波やミリ波(電磁波)等の検出波を送波し、物体に反射して戻ってきた検出波を受波することで、車両1の進行経路の周辺に存在する物体を検出する。物体検出部40は、車両1の前端部や後端部に設けられており、例えば、送波センサ41と、2つの受波センサ42とを有する。
【0017】
図2は、車両1における物体検出部40の配置の一例を示す図である。なお、以下の説明においては、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。例えば、X方向が車両1の左右方向を示し、Y方向が車両1の前後方向(進行方向)、Z方向が車両1の上下方向(高さ方向)を示している。
【0018】
例えば、図2に示すように、物体検出部40は、車両1のY方向の+側の端部において、X方向の両端部に1つずつ、また、X方向の中央部に2つの計4つのセンサを有する。送波センサ41は、例えば、X方向の中央部の2つのうち、-側に配置されたセンサである。受波センサ42は、X方向の-側の端部に配置されたセンサと、X方向の中央部の2つのうち、+側に配置されたセンサである。
【0019】
送波センサ41は、検出波を送波するセンサであり、例えばソナーの場合、圧電素子に所定の周波数の電圧をかけることで、同じ周波数の超音波(検出波)を生成して送波する。なお、送波センサ41は、送波した検出波を受波可能に構成されていても良い。
【0020】
受波センサ42は、送波センサ41から送波された後、物体2に当たって反射した検出波を受波するセンサである。受波センサ42は、例えばソナーの場合、圧電素子が検出波の音圧を電圧に変換し、変換後の電圧を整流することにより、受波した検出波を音波受信強度(反射強度)に変換する。なお、受波センサ42は、検出波を送波可能に構成されていても良い。
【0021】
送波センサ41から物体2を経由して受波センサ42までの検出波が往復する際の飛翔時間が計測されることで、車両1と物体2との距離を算出することが可能となる。また、車両1と物体2との距離が算出されることで、三角測量の原理に基づき、検出波が物体2に反射された位置の座標を算出することが可能となる。
【0022】
また、2つの受波センサ42が設けられているので、送波センサ41から送波された検出波を、2つの受波センサ42のそれぞれで受波することができる。そのため、2つの受波センサ42で受波される検出波のそれぞれは、異なる経路D1,D2を通って各受波センサ42に戻る。
【0023】
経路D1,D2では、物体2における異なる位置P1,P2で検出波が反射されるため、2つの受波センサ42で検出波を受波できた場合、物体2の位置P1,P2における2つの座標を算出することが可能となる。なお、図2における物体2は、X方向に平行な平面を有する壁である。
【0024】
図1に戻り、車両制御ユニット100は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等であり、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。車両制御ユニット100は、予め設定されたプログラムに基づいて、進行経路の周辺に存在する物体が制御対象物(例えば、衝突の可能性がある対象である物体)であるか否かを識別し、所定の走行制御を行う。
【0025】
車両制御ユニット100は、識別部110と、形状判定部120と、変更部130と、制御部140とを有する。識別部110、形状判定部120および変更部130は、本開示の「物体識別装置」に対応する。
【0026】
識別部110は、車両1から物体に向けて送波された検出波が、物体で反射されて車両1で受波された場合、検出波の反射強度と識別閾値との比較結果に基づいて、物体を制御対象物であるか否かについて識別する。
【0027】
具体的には、識別部110は、受波センサ42で受波した検出波に基づく反射強度が識別閾値以上である場合、物体が制御対象物であると識別し、反射強度が識別閾値未満である場合、物体が制御対象物ではない非制御対象物と識別する。なお、送波センサ41が、送波した検出波を受波した場合、識別部110は、送波センサ41で受波した検出波に基づく反射強度に基づいて、物体を制御対象物であるか否かについて識別する。
【0028】
識別閾値は、受波センサ42で受波した検出波に基づく反射強度と比較されることで、物体が車両1の制御対象物(障害物)であるかの識別基準となる閾値である。識別部110では、反射強度が識別閾値以上となると、物体が制御対象物であると識別する。
【0029】
また、検出波は、空気中で急速に減衰するため、車両1と物体との距離が長くなるほど、その減衰量が大きくなる。そのため、受波センサ42で受波される検出波に基づく反射強度も、例えば図3に示すように、車両1と物体との距離が長くなるほど低くなるので、一般的に、識別閾値は、その反射強度に合わせて、車両1と物体との距離が長くなるほど低くなるように設定される。
【0030】
しかし、縁石等の下方物は、例えば検出波の入射角と反射角の関係上、図3のような距離に対する反射強度の変化傾向と同じにはならない。例えば、図4に示すように、比較的、車両1と距離が近い下方物2Aが存在する場合、下方物2Aは送波センサ41から送波された検出波が当たりにくい位置にあるため、比較的距離が近い位置に存在する下方物2Aについては、反射強度は小さい。
【0031】
それに対し、比較的、車両1と距離が離れた位置に存在する下方物2Bは、検出波が当たりやすく、また、下方物2Bで反射した検出波も受波センサ42に入射しやすくなるため、反射強度が大きくなる。具体的には、図5に示すように、距離に対する反射強度の変化傾向は、距離T1離れた位置から距離が離れるにつれ、徐々に反射強度が上昇し、距離T2で反射強度が最大値となった後、反射強度が下がっていくような、変化傾向となる。
【0032】
そのため、図3に示すような、距離が離れるほど小さくなる識別閾値を設定すると、下方物に係る反射強度が識別閾値を超えてしまう。下方物は、路面に位置しており、車両1の本体と衝突しない高さを有するため、障害物とはなり得ないもの(非制御対象物)である。そのような下方物が、反射強度が強調されることに起因して、制御対象物と識別されてしまう可能性がある。なお、図4では、車両1の後部に位置する物体(下方物)についての例が示されているが、車両1の前部に位置する物体の場合でも同様である。
【0033】
そのため、本実施の形態では、図5に示す破線のように、下方物に係る反射強度が識別閾値を超えないように、識別閾値が設定される。具体的には、識別閾値が、車両1から距離T1離れた位置から、反射強度が最大値に達する距離T2まで段階的に大きくなった後、車両1から距離が離れるにつれ、小さくなるように設定される。
【0034】
これにより、縁石のような下方物を制御対象物(障害物)と識別することを抑制することができる。
【0035】
形状判定部120は、異なる経路を伝搬した前記検出波を検出することにより算出される物体の2つの座標に基づいて物体の形状を判定する。具体的には、形状判定部120は、2つの座標に基づいて、物体が柱状物体であるか否かについて判定する。柱状物体は、例えば、道路の端に設けられるポール等の円柱状の物体である。
【0036】
具体的には、形状判定部120は、検出波の往復によって算出される、車両1と物体との間の距離から三角測量の原理に基づき、物体における検出波が当たった位置を示す座標を算出する。
【0037】
上記の通り、受波センサ42が2つ設けられているので、形状判定部120は、各受波センサ42で受波した検出波に基づいて、2つの座標を算出する。そして、形状判定部120は、2つの座標の座標差に応じて、物体が柱状物体であるか否かについて判定する。具体的には、形状判定部120は、座標差が形状判定閾値以上である場合、物体が柱状物体ではないと判定し、座標差が形状判定閾値未満である場合、物体が柱状物体であると判定する。
【0038】
形状判定閾値は、柱状物体のように比較的細く、2つの座標の座標差が密接する値に対応した閾値であり、柱状物体の太さ等に応じて適宜設定される。形状判定閾値は、本開示の「所定閾値」に対応する。
【0039】
図6に示すように、柱状物体2Cは、円周面を有することから、座標位置が近接する異なる2点P3,P4のそれぞれから、異なる経路D3,D4により、2つの受波センサ42のそれぞれに向けて検出波を反射する。
【0040】
それに対し、柱状物体2C以外の非柱状物体(例えば、図2に示すX方向に延びる平面を有する壁等の物体2)は、座標位置が比較的離間する異なる2点P1,P2のそれぞれから、異なる経路D1,D2により、2つの受波センサ42のそれぞれに向けて検出波を反射する。
【0041】
このように、2つの座標の座標差に、柱状物体と非柱状物体とで明確な違いがあるため、形状判定閾値を基準にして物体が柱状物体であるか否かについて判定することが可能である。また、反射強度は、外乱(風、雨、熱等)の影響を受けて値が変動しやすいが、座標差は、外乱の影響を比較的受け難いので、物体が柱状物体であるか否かを正確に判定することができる。
【0042】
また、座標差は、2つの座標のX方向成分およびY方向成分のうち少なくともX方向成分の距離で示される。なお、座標差は、X方向成分に加えてY方向成分の距離が考慮されても良い。
【0043】
また、車両1と物体との距離に応じて、算出される座標差が異なる場合があるので、この場合、例えば、図7に示すように、車両1と物体との距離ごとに異なる形状判定閾値が設定されていても良い。図7に示す例では、形状判定閾値は、車両1と物体との距離が長くなるにつれ、大きくなるように設定されている。
【0044】
変更部130は、検出波が物体の2つの点で反射されて車両1で受波された場合、当該2つの点の位置に応じて、物体が制御対象物であるか否かについて識別する識別部110の識別感度を変更する。具体的には、変更部130は、2つの座標の座標差に応じて識別閾値を変更する。言い換えると、変更部130は、形状判定部120の判定結果に基づき、物体が柱状物体であるか否かに応じて識別閾値を変更することにより上記識別感度を変更する。
【0045】
本実施の形態では、図8に示すように、非柱状物体である場合の識別閾値は、縁石のような下方物に対応した第1閾値に設定されている。第1閾値は、上記の、図5に示す識別閾値である。つまり、識別閾値は、2つの座標の座標差(2つの点の間の距離)が形状判定閾値以上である場合、非制御対象物に対する検出波の反射強度に合わせて設定される。
【0046】
柱状物体は路面に立設されて、ある程度の高さを有することから、下方物のように、距離が遠くなるほど反射強度が大きくなるということがないので、柱状物体に係る検出波に基づく反射強度は、車両1と柱状物体との距離が遠くなるほど小さくなっていく。
【0047】
車両1と柱状物体との距離がある程度離れると、柱状物体に係る反射強度が第1閾値を下回るので、識別部110が柱状物体を制御対象物ではない非制御対象物と識別することとなる。
【0048】
そのため、変更部130が、物体が柱状物体である場合、識別閾値を柱状物体に係る反射強度に対応した第2閾値に変更する。第2閾値は、柱状物体に係る反射強度と同様に、車両1と柱状物体との距離が遠くなるほど小さくなるように変化する。
【0049】
このようにすることで、識別部110が柱状物体を制御対象物であると確実に識別することができる。
【0050】
また、変更部130は、車両1と物体との距離に応じて、識別閾値を変更する制御を行うか否かについて判定しても良い。車両1と物体との距離が遠くなるほど、算出される物体の座標の誤差が大きくなるので、柱状物体の判定精度に影響しやすくなる。
【0051】
そのため、変更部130は、車両1と物体との距離が所定距離以下である場合、上記の識別閾値を変更する制御を行う。所定距離は、例えば、物体の座標の算出精度がある程度確保される距離であり、物体検出部40の検出波に基づく反射強度等に応じて適宜設定される。
【0052】
こうすることで、柱状物体の判定精度が確保された範囲で柱状物体を制御対象物であると識別することができる。
【0053】
制御部140は、識別部110により識別された制御対象物の動きや、車両1の動き(車速の情報)に基づく制御対象物の相対速度等に基づいて、車両1と制御対象物との衝突可能性を予測する。衝突可能性の予測方法は、例えば公知の技術を適用することができる。
【0054】
そして、制御部140は、衝突可能性と、車両1の加速度の状態とに応じて、加速要求または制動要求を出力する。
【0055】
これにより、正確に識別した制御対象物に対して制動動作の制御を行う等、適切な走行制御を行うことができる。
【0056】
以上のように構成された車両制御ユニット100における識別制御の動作例について説明する。図9は、車両制御ユニット100における識別制御の動作例を示すフローチャートである。図9における処理は、例えば、車両1が走行している際に適宜実行される。また、本フローチャートでは、送波センサ41から検出波が送波されたことを前提としている。
【0057】
図9に示すように、車両制御ユニット100は、2つの受波センサ42で検出波を受波したか否かについて判定する(ステップS101)。判定の結果、2つの受波センサ42で検出波を受波していない場合(ステップS101、NO)、ステップS101の処理が繰り返される。
【0058】
一方、2つの受波センサ42で検出波を受波した場合(ステップS101、YES)、車両制御ユニット100は、車両1と物体との距離と、検出波の反射強度の情報を取得する(ステップS102)。
【0059】
次に、車両制御ユニット100は、車両1と物体との距離が所定距離以内であるか否かについて判定する(ステップS103)。判定の結果、距離が所定距離より大きい場合(ステップS103、NO)、処理はステップS105に遷移する。
【0060】
一方、距離が所定距離以内である場合(ステップS103、YES)、車両制御ユニット100は、2つの座標の座標差が形状判定閾値未満であるか否かについて判定する(ステップS104)。
【0061】
判定の結果、座標差が形状判定閾値以上である場合(ステップS104、NO)、車両制御ユニット100は、識別閾値を非柱状物体に係る第1閾値に設定する(ステップS105)。一方、座標差が形状判定閾値未満である場合(ステップS104、YES)、車両制御ユニット100は、識別閾値を柱状物体に係る第2閾値に設定する(ステップS106)。
【0062】
ステップS105またはステップS106の後、車両制御ユニット100は、反射強度が識別閾値以上であるか否かについて判定する(ステップS107)。判定の結果、反射強度が識別閾値以上である場合(ステップS107、YES)、車両制御ユニット100は、物体が制御対象物であると識別する(ステップS108)。
【0063】
一方、反射強度が識別閾値未満である場合(ステップS107、NO)、車両制御ユニット100は、物体が非制御対象物であると識別する(ステップS109)。ステップS108またはステップS109の後、本制御は終了する。
【0064】
なお、ステップS108の後、車両制御ユニット100により、車両1に対して所定の走行制御が行われる。
【0065】
以上のように構成された本実施の形態によれば、物体が柱状物体であるか否かによって識別閾値を変更するので、柱状物体を制御対象物として正確に識別することができる。
【0066】
また、識別閾値(第1閾値)が、非制御対象物に識別閾値が非制御対象物の反射強度に合わせて設定されているので、物体が非制御対象物である場合、当該物体を制御対象物と識別することを確実に抑制することができる。
【0067】
すなわち、本実施の形態では、物体の形状により、反射強度の変化傾向が同じではないことに起因して、物体を誤って識別することを抑制することができる。その結果、本実施の形態では、物体を安定して識別することができる。
【0068】
また、2つの座標の座標差に基づいて物体が柱状物体であるか否かについて判定するので、外乱の影響に起因して物体の形状を誤って判定することを抑制することができる。その結果、本実施の形態では、物体の形状を正確に判定することができる。
【0069】
また、車両1と物体との距離に応じて、識別感度を変更するか否かについて判定するので、柱状物体の判定精度が確保された範囲で柱状物体を制御対象物であると識別することができる。その結果、物体が柱状物体であることを正確に判定することできる。
【0070】
なお、上記実施の形態では、識別感度を識別閾値とし、識別閾値を変更することとしていたが、本開示はこれに限定されず、例えば、識別感度を反射強度とし、識別閾値を変更する代わりに反射強度を変更することとしても良い。識別感度を反射強度とする場合、検出波の出力圧(音圧等)や、検出波の増幅度を変更することで、反射強度が変更される。
【0071】
具体的には、物体が柱状物体である場合に検出波の出力圧や、検出波の増幅度を強くして、反射強度が識別閾値(第1閾値)を超えるように、変更部130が反射強度を変更する。
【0072】
このようにしても、物体を安定して識別することができる。
【0073】
また、上記実施の形態では、柱状物体として、ポール等の円柱状の物体を例示したが、本開示はこれに限定されず、送波センサ41から送波された検出波を物体の2つの点で、2つの受波センサ42に向けて反射可能な形状の物体(例えば、H鋼等のような反射部位が複数あるような柱状物体)である限り、どのような柱状物体であっても良い。
【0074】
また、上記実施の形態では、物体検出部40が、4つのセンサを有する構成であったが、本開示はこれに限定されず、1つの送波センサと2つの受波センサとを少なくとも有している限り、センサを何個有していても良い。例えば、図10に示すように、物体検出部40が1つの送波センサ41と2つの受波センサ42とを含む、6つのセンサを有している。
【0075】
6つのセンサは、X方向の中央部に2つ、X方向の両端部に1つずつ、車両1の両側面に1つずつ配置されている。図10に示す例では、送波センサ41は、X方向の-側の端部に設けられている。また、図10に示す例では、受波センサ42については、X方向の中央部の2つのうち、-側に配置される1つと、車両1のX方向の-側の側面に配置される1つとの計2つの受波センサ42が設けられている。また、送波センサの両隣のセンサで受波する場合を考慮すると、図2に示すような、物体検出部40が4つのセンサを有する構成の場合、X方向の中央部の2つを送波センサとすることが可能である。それに対し、物体検出部40が6つのセンサを有する構成の場合、X方向の中央部の2つと、X方向の両端部のそれぞれとの、4つを、送波センサとすることが可能となるため、図2に示す構成と比較して、送波センサと受波センサとの組み合わせのバリエーションを増やすことが可能となる。
【0076】
また、上記実施の形態では、検出波が物体の2つの点で反射されて車両1で受波された場合、識別感度を変更していたが、本開示はこれに限定されず、物体の3つ以上の点で反射されて車両1で受波された場合でも識別感度を変更しても良い。また、この場合、3つ以上の受波センサが設けられていれば良い。
【0077】
また、上記実施の形態では、形状判定部を有していたが、本開示はこれに限定されず、2つの座標の情報や、物体の形状の情報を外部から取得可能である限り、形状判定部を有さなくても良い。
【0078】
また、上記実施の形態では、2つの受波センサで検出波を受波した場合に識別制御を行っていたが、本開示はこれに限定されず、1つの受波センサのみで、検出波を受波した場合、識別閾値を非柱状物体に係る第1閾値に設定して物体を識別しても良い。
【0079】
また、上記実施の形態では、物体識別装置(識別部、形状判定部および変更部)が車両制御ユニットに組み込まれていたが、本開示はこれに限定されず、車両制御ユニットに組み込まれていなくても良い。
【0080】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示の物体識別装置は、物体を安定して識別することが可能な物体識別装置、車両および物体識別方法として有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 車両
10 加速部
20 制動部
30 車速情報取得部
40 物体検出部
41 送波センサ
42 受波センサ
100 車両制御ユニット
110 識別部
120 形状判定部
130 変更部
140 制御部
図1
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図10