(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】接合構造および建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/96 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
E06B3/96 B
(21)【出願番号】P 2021074268
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
(72)【発明者】
【氏名】濱口 公希
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】辻 浩規
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-174681(JP,U)
【文献】特開2021-001509(JP,A)
【文献】実開昭63-073479(JP,U)
【文献】英国特許出願公開第02219821(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の形材の見込み面と第2の形材における長手方向の端面との間にシール材を挟んだ状態でねじによって前記第1の形材と前記第2の形材とを接合する接合構造であって、
前記第1の形材には、前記ねじが挿通される第1の挿通孔が設けられ、
前記シール材には、前記ねじが挿通される第2の挿通孔が設けられ、
前記第2の形材には、前記ねじのねじ部が螺合されるねじ螺合部が設けられ、
前記第1の形材における前記第1の挿通孔の周囲には前記第2の形材に向けて突出する円弧状突起部が設けられ、
前記シール材が前記第1の形材および前記第2の形材によって圧縮され、
前記第2の形材の端面の縁が止水ライン形成部を形成し、この止水ライン形成部と前記第1の形材の接合面とで前記シール材を挟持することで、前記第2の形材の前記端面に沿って連続する止水ラインが形成され、
前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔と前記止水ラインとの最短距離以上の位置に形成され、前記止水ラインに対面する側で周方向の一部が不連続に形成されていることを特徴とする接合構造。
【請求項2】
前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔の中心を基準として少なくとも120度間隔の3か所の部分を含む円弧形状であることを特徴とする請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔の中心を基準として少なくとも90度間隔の3か所の部分を含む円弧形状であることを特徴とする請求項1に記載の接合構造。
【請求項4】
前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔の中心を基準として少なくとも90度間隔の4か所の部分を含む円弧形状であることを特徴とする請求項1に記載の接合構造。
【請求項5】
前記第1の形材における交差する2つの縁によって囲まれる角部に形成され、
前記第1の形材における交差する2つの縁に沿った2つの前記止水ラインに対応して、前記円弧状突起部は2つの不連続部を形成していることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の接合構造。
【請求項6】
第1の形材と、第2の形材と、前記第1の形材の見込み面と前記第2の形材における長手方向の端面との間に挟まれるシール材とを備え、前記第1の形材と前記第2の形材とが請求項1~5のいずれか一つに記載の接合構造によって接合されていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓枠等を構成する2つの形材同士を接合する接合構造及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、縦枠と横枠における長手方向の端面との間にシール材を挟んだ状態でねじによって当該縦枠及び当該横枠同士を接合する接合構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の接合構造では、縦枠、横枠及びシール材は、以下の構成を有する。縦枠には、ねじが挿通される第1の挿通孔と、当該第1の挿通孔の周囲から横枠に向けて突出し、先端が平坦面である環状突起部とが設けられている。また、シール材には、ねじが挿通される第2の挿通孔が設けられている。さらに、横枠には、第1,第2の挿通孔に挿通されたねじのねじ部が螺合されるねじ螺合部が設けられている。そして、第1,第2の挿通孔にねじを挿通し、当該ねじのねじ部をねじ螺合部に螺合すると、縦枠及び横枠は、環状突起部の先端と当該横枠との間にシール材が介在した状態で互いに接合される。この接合構造では、環状突起部が第1の挿通孔の全周にわたって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の接合構造では、第2の挿通孔を適度に大径に設定すれば縦枠における環状突起部の先端が横枠の端面に当接することになり、それ以上はシール材がつぶれることが規制されて適正なつぶれ量にすることができる。したがって、作業者はトルクレンチなどを用いずともねじ締め作業を適正に行うことができる。
【0006】
ところでこのような接合構造は比較的狭所に形成されることから、第1の挿通孔からシール材が水の進入を防ぐ境界である止水ラインまでの距離は比較的小さいが、環状突起部が設けられているとその分だけ止水ラインまでの距離が一層小さくなる。つまり、シール材が止水するシール幅が狭くなる。さらに、シール材の取り付けの位置がずれるとシール幅が一層狭くなって止水性能の低下が懸念される。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、シール材のつぶれ量を適正に管理することができるとともに止水性能の低下を防止することのできる接合構造および建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる接合構造は、第1の形材の見込み面と第2の形材における長手方向の端面との間にシール材を挟んだ状態でねじによって前記第1の形材と前記第2の形材とを接合する接合構造であって、前記第1の形材には、前記ねじが挿通される第1の挿通孔が設けられ、前記シール材には、前記ねじが挿通される第2の挿通孔が設けられ、前記第2の形材には、前記ねじのねじ部が螺合されるねじ螺合部が設けられ、前記第1の形材における前記第1の挿通孔の周囲には前記第2の形材に向けて突出する円弧状突起部が設けられ、前記シール材が前記第1の形材および前記第2の形材によって圧縮され、前記第2の形材の端面の縁が止水ライン形成部を形成し、この止水ライン形成部と前記第1の形材の接合面とで前記シール材を挟持することで、前記第2の形材の前記端面に沿って連続する止水ラインが形成され、前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔と前記止水ラインとの最短距離以上の位置に形成され、前記止水ラインに対面する側で周方向の一部が不連続に形成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明にかかる建具は、第1の形材と、第2の形材と、前記第1の形材の見込み面と前記第2の形材における長手方向の端面との間に挟まれるシール材とを備え、前記第1の形材と前記第2の形材とが上記の接合構造によって接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のような接合構造および建具では、ねじをねじ螺合部に螺合させることによりシール材は次第に圧縮されていき、ねじを締めるトルクは徐々に上昇する。そして、シール材のつぶれ量が適量となった時点でねじ螺合部の端面が円弧状突起部の突端面に当接し、ねじ締めのトルクは急激に上昇することから作業者はねじ締めの終了タイミングを知ることができ、シール材のつぶれ量を適正に管理することができる。また、円弧状突起部は最寄りの止水ラインに対面する側に、不連続部を形成する円弧形状であり、第1の挿通孔と止水ラインとの最短距離以上の位置に形成されており、止水性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる建具の一部分を示す分解斜視図である。
【
図2】接合構造の断面図であり、(a)はねじ締結前の状態を示す模式図であり、(b)はねじ締結後の状態を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態にかかる接合構造における円弧状突起部およびその周辺部を示す模式図である。
【
図4】変形例にかかる円弧状突起部およびその周辺部を示す模式図である。
【
図5】本発明の第2実施形態にかかる接合構造における円弧状突起部およびその周辺部を示す模式図である。
【
図6】本発明の第3実施形態にかかる接合構造における円弧状突起部およびその周辺部を示す模式図である。
【
図7】本発明の第4実施形態にかかる接合構造における円弧状突起部を示す模式図である。
【
図8】縦枠の壁部に孔および円弧状突起部を形成するためのパンチおよびダイを示す模式斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態にかかる建具の一部分を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第2実施形態にかかる建具の一部分を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる接合構造および建具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる建具10Aの一部分を示す分解斜視図である。建具10Aは、本発明の第1実施形態にかかる接合構造12A、および第2実施形態にかかる接合構造12Bを含んでいる。建具10Aは窓枠または障子枠などであり、上枠(第2の形材)14、下枠(図示略)、一対の縦枠(第1の形材)16(一方のみ図示する)を四周枠組みしたものである。各枠部材は、アルミニウム合金等の金属製、または樹脂製の押出形材によって構成され、全長に亘って略同一の断面形状を有する。
【0014】
本出願において、見込み方向とは建具10Aの室内外方向、(図中に矢印Zで示す。)をいう。見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠16等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠14等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。
【0015】
接合構造12A,12Bは、縦枠16の上端近傍で見込み面を形成する壁部16aと上枠14における長手方向の端面14aとの間にシール材18を挟んで止水する状態でねじ20によって縦枠16と上枠14とを接合するものである。接合構造12Aは見込み方向の略中央部分で縦枠16と上枠14とを接合するのに対し、接合構造12Bは見込み方向の一端近傍で縦枠16と上枠14とを接合する。
【0016】
シール材18は、シート状をなしブチルゴム等の軟質な部材で形成されている。シール材18には、表裏をそれぞれ貫通し、2つのねじ20がそれぞれ挿通される2つの孔(第2の挿通孔)18aが設けられている。縦枠16の壁部16aには、2つのねじ20が挿通される孔(第1の挿通孔)16bが設けられている。2つの孔16bと孔18aとは一対ずつ対応する位置に設けられており、一方の対は見込み方向の略中央に形成されて、接合構造12Aの構成要素となっており、他方の対は見込み方向の一端近傍で交差する2つの縁(
図5の上縁16cと側縁16d)によって囲まれる角部で接合構造12Bの構成要素となっている。
【0017】
接合構造12Aを構成する孔16bの周囲には上枠14に向けて突出する円弧状突起部22Aが設けられている。接合構造12Bを構成する孔16bの周囲には上枠14に向けて突出する円弧状突起部22Bが設けられている。
【0018】
上枠14は上壁24と、垂壁26と、2つのねじ螺合部28とを備える。ねじ螺合部28はビスホールとも呼ばれる。ねじ螺合部28は一対の対向する突出片で構成されねじ20が螺合する中空部を形成している。ねじ螺合部28は一部が開口した断面C字形状となっている。ねじ螺合部28の一方は、上壁24の下面に設けられており、接合構造12Aの構成要素となっている。ねじ螺合部28の他方は上壁24と垂壁26とが直角に交差する角部に設けられており、接合構造12Bの構成要素となっている。
【0019】
次に、第1実施形態にかかる接合構造12Aについて説明する。
図2は、接合構造12Aの断面図であり、(a)はねじ締結前の状態を示す模式図であり、(b)はねじ締結後の状態を示す模式図である。
図3は、接合構造12Aにおける円弧状突起部22Aおよびその周辺部を示す模式図である。
【0020】
図2に示すように、円弧状突起部22Aは略円錐台形状であって、突出側端部の突端面22Aaと、壁部16aに向かって広がるテーパ状の傾斜面22Abとを有する。突端面22Aaは略平面である。円弧状突起部22Aの内空部が孔16bである。突端面22Aaの内周縁が孔16bの開口縁である。傾斜面22Abの外側端が円弧状突起部22Aの外周縁22Acを形成する。円弧状突起部22Aの外周縁22Acは内周縁を形成する孔16bと同心形状である。
【0021】
壁部16aを基準とした円弧状突起部22Aの高さH1は、シール材18における非圧縮時の高さH2よりもやや小さく設定されている。この高さ差ΔH(=H2-H1)は、シール材18の好適なつぶし代となっている。
【0022】
ねじ螺合部28の内径はねじ20のねじ部20aがねじ切りをしながら螺合することが可能な程度の径に設定されている。ねじ螺合部28の外径は外周縁22Acよりもやや大径である。シール材18の孔18aの孔径は、孔16bの孔径以上、外周縁22Acの径以下の範囲で設定されている。
【0023】
本願で止水ラインとは、シール材18が圧縮されて水の進入を防ぐ境界のことである。具体的には、上枠14の端面14a(
図1参照)の上縁14aaが止水ライン形成部を形成し、この止水ライン形成部と縦枠16の接合面である壁部16a(
図1参照)とでシール材18を挟持することで、上縁14aaに沿って連続する止水ラインLzが形成される。
図3に示す場合の止水ラインLzは水平となっている。通常、シール材18は上縁14aaよりもはみ出るように形成され、止水ラインLzは上縁14aaと一致する。
図3の例ではシール材18の縁と縦枠16の上縁16cが一致している。なお、
図3は円弧状突起部22Aを備える縦枠16の見込み面を示しているが、理解を容易にするために上枠14の上縁14aaおよびシール材18の位置を実線で示している。
図4~
図6も同様である。
【0024】
円弧状突起部22Aは環状ではなく上方部分、つまり止水ラインLzに対面する側で周方向の一部が不連続の円弧形状となっている。円弧状突起部22Aの不連続部22Azを
図3では仮想線で示している。孔16bの上縁の点P01と止水ラインLzとの離間距離をWとする。
【0025】
円弧状突起部22Aにおける一対の円弧端部22Adは、それぞれ点P01を通って止水ラインLzと平行な直線となっている。すなわち一対の円弧端部22Adは一つの直線を形成しており、いずれの箇所も止水ラインLzまでの離間距離がWである。また、円弧状突起部22Aは、孔16bの中心Oを基準として少なくとも90度間隔の4か所の部分P1を含む円弧形状に形成されている。つまり、円弧状突起部22Aは270度以上に亘る円弧を形成している。
【0026】
このように構成される接合構造12Aでは、ねじ20を孔16b,18aを挿通させてそのねじ部20aをねじ螺合部28に螺合させることにより上枠14と縦枠16とを接合させることができる。その際、シール材18は次第に圧縮されていくことからねじ20を締めるトルクは徐々に上昇する。そして
図2(b)に示すように、シール材18のつぶれ量が適量のΔHとなった時点でねじ螺合部28の端面28aが円弧状突起部22Aの突端面22Aaに当接することから、ねじ締めのトルクは急激に上昇し作業者はねじ締めの終了タイミングを知ることができる。
【0027】
すなわち、作業者はトルクレンチなどを用いずともねじ締め作業を適正に行うことができ、シール材18のつぶれ量を適正に管理することができる。これにより、シール材18はつぶれ量が足りずに止水性能が不十分であったり、逆に過大なつぶれ量により損傷させたり寿命を低下させることがない。また、突端面22Aaは平面状であって、端面28aに対して安定的に面接触することができる。ただし、突端面22Aaは端面28aとの当接の際に作業者がトルクの上昇を感じ取ることができる程度に平面状になっていればよく、例えば製作工程上での多少のバリが生じていても構わない。
【0028】
接合構造12Aは止水ラインLzに対面する側に、不連続部22Azが形成されている円弧形状であり、孔16bおよび円弧端部22Adは止水ラインLzまで適度な離間距離Wが確保されており、仮にシール材18の取り付け位置がわずかにずれたとしても止水性能が低下することがない。また換言すれば、円弧状突起部22Aは孔16bからみて止水ラインLzの側には設けられていないことから、その分だけ止水領域が狭まることがなく、またはその分だけ孔16bを止水ラインLzに近づけて設けることが可能になる。
【0029】
接合構造12Aにおける円弧状突起部22Aは、90度間隔の4か所の部分P1を含むように形成されていることから、十分な周長が確保されて高強度であって変形しづらく、ねじ締め時で端面28aが突端面22Aaに当接したときに急激にトルクが上昇することから作業者はねじ締めの終了タイミングを認識しやすい。
【0030】
ところで、シール材18は壁部16aの所定箇所に作業者が位置合わせをする場合があるが、この際、孔18aと孔16bとが同軸上に配置される必要がある。円弧状突起部22Aでは90度間隔の4か所の部分P1を含んで十分な周長を有するとともに、外周縁22Acが孔16bと同心形状であることから、シール材18の孔18aを孔16bに対して位置を合わせる作業が容易である。具体的には、シール材18は多少の弾性があることから、孔18aの周囲を同心で傾斜面22Abに被せるように変形させながら押すと、傾斜面22Abのテーパと弾性変形した孔18bの周辺部のテーパとが略嵌合するようになり、簡易的な一種の調心作用が得られて孔18aと孔16bとの位置合わせが容易となる。また、円弧状突起部22Aは、少なくとも直交する4箇所の部分P1でシール材18の孔18aを案内する作用があり、孔18aが上下左右にずれにくくなる。なお、孔18aの径が外周縁22Acと同径である場合には、シール材18を弾性変形させることなく、孔18aに円弧状突起部22Aがそのまま嵌合されて位置合わせが行われる。
【0031】
図4は、円弧状突起部22Cおよびその周辺部を示す模式図である。円弧状突起部22Cは、上記の円弧状突起部22Aの変形例である。円弧状突起部22Cは、円弧状突起部22Aの代わりに適用されて接合構造12Aを構成する。円弧状突起部22Cにおける突端面22Ca、傾斜面22Cb、外周縁22Ccは、上記の突端面22Aa、傾斜面22Ab、外周縁22Acと同様の構成である。円弧状突起部22Cにおける円弧端部22Cdは上記の円弧端部22Adに相当するが、その傾斜角度が異なっている。したがって、上記の不連続部22Azに相当する不連続部22Czも形状が異なっている。
【0032】
上記の一対の円弧端部22Adは点P01を通って止水ラインLzと平行な直線を形成していたのに対して(
図3参照)、一対の円弧端部22Cdは点P01を起点として、該起点P01から遠ざかるほど止水ラインLzから離間するように傾斜する直線となっている。すなわち、円弧端部22Cdは起点のP01では止水ラインLzとの離間距離がWであり、それ以外の箇所ではW以上の離間距離があって止水領域を一層広く確保することができる。換言すれば、円弧状突起部22Aは、孔16bと止水ラインLzとの最短距離W以上の位置に形成されている。
【0033】
また、円弧状突起部22Cは、孔16bの中心Oを基準として120度間隔の3か所の部分P2を含む円弧形状に形成されている。つまり、円弧状突起部22Cは240度以上に亘る円弧を形成している。なお、上記の円弧状突起部22Aについても120度間隔の3か所の部分P2を含んでいる(
図3参照)。
【0034】
仮に、円弧状突起部の円弧角度が180度程度であり、または180度間隔の2か所だけに設けられている場合には、孔18aを孔16bに合わせようとしても円弧状突起部の不連続部分が大きいためにその不連続部分の方向にずれが生じやすく、位置合わせが困難となる。これに対して、円弧状突起部22Cでは、少なくともバランスした3箇所の部分P2でシール材18の孔18aを案内する作用があり、孔18aがずれにくくなる。
【0035】
円弧状突起部22Cは、240度以上に亘る1つの円弧を形成していて強度および孔位置合わせ作用に好適であるが、少なくとも120度間隔の3か所の部分P2を含むように形成されていれば、離間した2つの円弧または3つの円弧からなる形状であっても相応の効果が得られる。
【0036】
次に、第2実施形態にかかる接合構造12Bについて説明する。
図5は、接合構造12Bにおける円弧状突起部22Bおよびその周辺部を示す模式図である。
【0037】
図5に示すように、円弧状突起部22Bは第1部分30と第2部分32とからなる。第1部分30と第2部分32とは2つの不連続部22Bz,22Byで隔たっている。円弧状突起部22Bは、概念的には上記の円弧状突起部22A(
図3参照)における不連続部22Azが2か所に形成されたものである。第1部分30は、突端面30a、傾斜面30b、外周縁30cおよび一対の円弧端部30dz,30dyを有する。第2部分32は、突端面傾斜面外周縁および一対の円弧端部32dz,32dyを有する。突端面30a,32a、傾斜面30b,32b、外周縁30c,32c、円弧端部30da,30dy,32da,32dyは、上記の突端面22Aa、傾斜面22Ab、外周縁22Ac、円弧端部22Adに相当する。
【0038】
不連続部22Bzは上記の不連続部22Azと同様に止水ラインLzに近い側が不連続になっている部分であり、円弧端部30dzおよび円弧端部32dzが止水ラインLzと平行な直線を形成している。
【0039】
接合構造12Bは見込み方向の端部近傍の角部で縦枠16と上枠14とを接合していることから、その近傍には上方の止水ラインLzだけでなく、縦枠16の見付け面を形成する側縁16dに沿って上下方向に延在する止水ラインLyがある。具体的には、上枠14の端面14a(
図1参照)の側縁14abが止水ライン形成部を形成し、この止水ライン形成部と縦枠16の接合面である壁部16a(
図1参照)とでシール材18を挟持することで、側縁14abに沿って連続する止水ラインLyが形成される。そのため、接合構造12Bにおける円弧状突起部22Bには、止水ラインLyに近い側に不連続部22Byが形成されている。すなわち、不連続部22Byは、孔16bを基準として円弧端部30dyおよび円弧端部32dyによって形成される鉛直の直線よりも外周側の部分に相当する。円弧端部30dyおよび円弧端部32dyによって形成される直線は、側縁14abと一致しており、該側縁14abとの離間距離Wが維持されており、止水ラインLzに対応した上方部と同様に、シール材18による十分な止水性能が得られる。止水ラインLzと止水ラインLyが任意角度で交差する場合であっても、接合構造12Bは不連続部22Bz,22Byを適正位置に設けることにより止水性能が低下することのないように作用させることができる。
【0040】
このような円弧状突起部22Bは、第1部分30が180度以上に亘る円弧を形成しており、適度に長い周長が確保されているのに加え、第2部分32が第1部分30の存在していない箇所に設けられていて補完的作用を奏していることから全体として十分な強度が得られる。また、円弧状突起部22Bは、
図5から明らかなように90度間隔の4か所の部分P1を含んでいることから、シール材18の孔18aを孔16bに対して位置合わせする作業が容易である。また、円弧状突起部22Bは、少なくとも120度間隔の3か所の部分P2を含んでいれば相応の強度が得られるとともに、孔18aの位置合わせ作業を容易化するための相応の効果が得られる。
【0041】
次に、第3実施形態にかかる接合構造12Dについて説明する。
図6は、接合構造12Dにおける円弧状突起部22Dおよびその周辺部を示す模式図である。接合構造12Dが適用されるのは、上記の止水ラインLzと止水ラインLyとが90度の円弧状の止水ラインLmでつながっている場合である。上記の円弧状突起部22Bが第1部分30と第2部分32とから構成されているのに対し、この場合の円弧状突起部22Dは第1部分30のみからなる。
【0042】
このような円弧状突起部22Dでは、止水ラインLmとの位置関係から上記の第2部分32を設けることができないが、180度以上にわたる第1部分30が90度間隔の3か所の部分P1を含んでおり、シール材18の孔18aを孔16bに対して位置合わせをするための位置決めにある程度の効果は得られる。
【0043】
次に、第4実施形態にかかる接合構造12Eについて説明する。
図7は、接合構造12Eにおける円弧状突起部22Eを示す模式図である。
図7における符号で22Ea,22Eb,22Ec,22Edは、円弧状突起部22A(
図3参照)における22Aa,22Ab,22Ac,22Adに相当する。
【0044】
上記の円弧状突起部22Aにおいて円弧端部22Adが直線状に形成されていたのに対し、円弧状突起部22Eにおける円弧端部22Edは曲線状となっている。したがって、外周縁22Ecと2つの円弧端部22Edとによって形作られる輪郭は略楕円形状となっている。
【0045】
円弧状突起部22Eは後述するパンチ40およびダイ42(
図8参照)によって形成されるが、パンチ40およびダイ42はエンドミルで加工することが実用的であり、該エンドミル径の関係上、突出し加工端部は止水ラインLzに対して正確には平行にはならず、円弧端部22Edのように曲線形状となる。このように円弧状突起部22Eは製作上で実用的である。
【0046】
図8は、縦枠16の壁部16aに孔16bおよび円弧状突起部22Aを形成するためのパンチ40およびダイ42を示す模式斜視図である。パンチ40は、上方の大径部40aと、該大径部40aの下方に同軸構成で設けられた小径部40bとを有する。小径部40bは円柱形状である。大径部40aは基本的に円柱形状であるが、周面における下方の一部は切りかかれておりDカット面40cを形成している。Dカット面40cは鉛直平面を形成しており、小径部40bの外周に接している。ダイ42は、上方で開口している大径孔42aと、該大径孔42aの底面から同軸構成で下方に向けて貫通している小径孔42bとを有する。小径孔42bは円形孔である。大径孔42aは基本的に円形孔であるが、周面の一部が平面のDカット面42cを形成している。Dカット面42cは鉛直平面を形成しており、小径孔42bの外周に接している。パンチ40とダイ42とは、互いのDカット面40c,42cが整合する角度に設定されている。
【0047】
図示を省略しているが加工の際にはダイ42の上面に加工対象である壁部16aが載置される。そして、パンチ40をダイ42に向けて下降させると大径部40aは大径孔42aに嵌合し、円弧状突起部22Aが形成される。Dカット面40c,42cよりも外周側の部分はプレス加工されないことから、この部分が不連続部22Azとなる。また、小径部40bは小径孔42bに嵌合して壁部16aに孔16bを形成する。なお、円弧状突起部22B(
図5参照)の形成のためには、Dカット面40c,42cを2か所設ければよい。
【0048】
図9は、本発明の第2実施形態にかかる建具10Bの一部分を示す斜視図である。
図10は、本発明の第2実施形態にかかる建具10Bの一部分を示す分解斜視図である。建具10Bは、例えば浴室の出入口に設けられて折戸を支持する枠体である。
図9、
図10の手前側が浴室側、奥が脱衣室側である。建具10Bにおいて上記の建具10Aと同様の構成要素には同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
建具10Bは、上枠(図示略)、下枠(第2の形材)50、一対の縦枠(第1の形材)16(一方のみ図示する)を四周枠組みしたものである。接合構造12Aは、縦枠16と下枠50における長手方向の端面との間にシール材18を挟んで止水する状態でねじ20によって縦枠16と下枠50とを接合している。
【0050】
上記の例では、止水ラインLzが孔16bを基準として枠体の外周側に形成されていたのに対し、建具10Bにおける止水ラインLは孔16bを基準として枠体の内周側で下枠50の縁に沿って形成されている。また、下枠50における見込み面を形成する上壁50aは浴室側が下がるようにやや傾斜しており、止水ラインLもこれに応じて一部が傾斜している。接合構造12Aは、
図9、
図10で示される範囲で浴室寄りと脱衣室寄りの2か所に設けられている。このうち、浴室寄りの接合構造12Aでは、傾斜した止水ラインLに沿って不連続部22Azが傾斜しており、シール材18がつぶされる領域を適切に確保している。
【0051】
本発明にかかる接合構造は、第1の形材の見込み面と第2の形材における長手方向の端面との間にシール材を挟んだ状態でねじによって前記第1の形材と前記第2の形材とを接合する接合構造であって、前記第1の形材には、前記ねじが挿通される第1の挿通孔が設けられ、前記シール材には、前記ねじが挿通される第2の挿通孔が設けられ、前記第2の形材には、前記ねじのねじ部が螺合されるねじ螺合部が設けられ、前記第1の形材における前記第1の挿通孔の周囲には前記第2の形材に向けて突出する円弧状突起部が設けられ、前記シール材が前記第1の形材および前記第2の形材によって圧縮され、前記第2の形材の端面の縁が止水ライン形成部を形成し、この止水ライン形成部と前記第1の形材の接合面とで前記シール材を挟持することで、前記第2の形材の前記端面に沿って連続する止水ラインが形成され、前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔と前記止水ラインとの最短距離以上の位置に形成され、前記止水ラインに対面する側で周方向の一部が不連続に形成されていることを特徴とする。
【0052】
また、本発明にかかる建具は、第1の形材と、第2の形材と、前記第1の形材の見込み面と前記第2の形材における長手方向の端面との間に挟まれるシール材とを備え、前記第1の形材と前記第2の形材とが上記の接合構造によって接合されていることを特徴とする。
【0053】
このような接合構造および建具によれば、シール材のつぶれ量を適正に管理することができるとともに止水性能の低下を防止することができる。
【0054】
本発明にかかる接合構造は、前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔の中心を基準として少なくとも120度間隔の3か所の部分を含む円弧形状であることを特徴とする。
これにより、円弧状突起部は充分な強度を有するとともに、シール材の第2の挿通孔を円弧状突起部に合わせやすくなる。
【0055】
本発明にかかる接合構造は、前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔の中心を基準として少なくとも90度間隔の3か所の部分を含む円弧形状であることを特徴とする。
これにより、円弧状突起部は充分な強度を有するとともに、シール材の第2の挿通孔を円弧状突起部に合わせやすくなる。
【0056】
本発明は、前記円弧状突起部は、前記第1の挿通孔の中心を基準として少なくとも90度間隔の4か所の部分を含む円弧形状であることを特徴とする。
これにより、円弧状突起部は充分な強度を有するとともに、シール材の第2の挿通孔を円弧状突起部に合わせやすくなる。
【0057】
本発明は、角部に形成され、前記第1の形材における交差する2つの縁に沿った2つの前記止水ラインに対応して、前記円弧状突起部は2つの不連続部を形成していることを特徴とする。
これにより、形材の角部で止水ラインが近傍に2つ存在する場合であっても止水性能の低下を防止することができる。
【0058】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
10A,10B 建具、12A,12B 接合構造、14 上枠(第2の形材)、14a 端面、16 縦枠(第1の形材)、16a 壁部、16b 孔(第1の挿通孔)、16c 上縁、16d 側縁、18 シール材、18a 孔(第2の挿通孔)、20 ねじ、22A,22B,22C,22D,22E 円弧状突起部、22Aa,22Ca,22Ea,30a,32a 突端面、22Ab,22Cb,22Eb,30b,32b 傾斜面、22Ac,22Cc,22Ec,30c,32c 外周縁、22Ad,22Cd,22Ed,30da,30dy,32da,32dy 円弧端部、22Az,22By,22Bz 不連続部、28 ねじ螺合部、30 第1部分、32 第2部分、40 パンチ、42 ダイ、L,Lz,Ly 止水ライン、O 中心