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  • 特許-ヘルド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ヘルド
(51)【国際特許分類】
   D03C 9/02 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
D03C9/02 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021079167
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172865
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 淳
(72)【発明者】
【氏名】今村 亜希子
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-043144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0083471(US,A1)
【文献】特開2016-084558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03C 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機のライダレス形のヘルドフレームに用いられる樹脂製のヘルドであって、前記ヘルドフレームに対し取り付けられる両取付部分がC形又はJ形を成すように形成されているヘルドにおいて、
長手方向における中央に対し両側に位置する各部分であって前記取付部分の端部である湾曲部を含む各部分が、前記ヘルドを板厚方向に見たときの当該部分における両端の間に亘るように配向された連続強化繊維を包含するように形成された補強部として構成されており、
両前記補強部の間に中間部を含み、
前記中間部が、樹脂のみ、又は樹脂に前記連続強化繊維以外の強化材のみを包含させた複合材で形成されている
ことを特徴とするヘルド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機のライダレス形のヘルドフレームに用いられる樹脂製のヘルドであって、前記ヘルドフレームに対し取り付けられる両取付部分がC形又はJ形を成すように形成されているヘルドに関する。
【背景技術】
【0002】
織機におけるヘルドフレームには、ライダレス形と呼ばれるものがある。そのライダレス形のヘルドフレームは、キャリアロッドがフレームステーブに対し一体的に固定された形式のものである。そこで、そのような形式のヘルドフレームに対し使用されるヘルド(ライダレス用のヘルド)は、ヘルドフレーム(キャリアロッド)に対し取り付けられる両取付部分の形状がC形又はJ形であるように形成されている。
【0003】
また、織機に用いられるヘルドには、軽量化を目的として樹脂材料で形成されたもの(所謂、樹脂製ヘルド)も、周知のヘルドとして存在している。そして、そのような樹脂製ヘルドであって、取付部分が前記のようにC形に形成されたライダレス用のヘルドが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-207356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、織機においては、製織中、開口運動に伴ってヘルドフレームが高速で上下動するため、ヘルドには、その各取付部分の端部である湾曲部に対し大きな負荷が掛かる。そして、ヘルドが前記のようなライダレス用のヘルドであって樹脂製のものである場合には、各取付部分における湾曲部が前記負荷によって変形して(捩れて)しまい、それが原因でヘルドがヘルドフレーム(キャリアロッド)から外れてしまうといった問題が発生する場合がある。
【0006】
なお、特許文献1には、ヘルドにおける取付部分(長手方向端部部分)を樹脂に強化繊維が包含された複合材で形成したものとすることが開示されている。そして、そのような複合材であれば、樹脂のみで形成されたものと比べ、剛性が増したものとなる。
【0007】
しかし、特許文献1に開示されたその複合材は、短繊維(ウィスカー)状の非常に短い強化繊維を樹脂に添加して成形されたものとなっている。すなわち、そのライダレス用のヘルドにおける樹脂製の取付部分は、強化繊維が点在する(不連続な状態で包含される)かたちで形成されたものとなっている。そのため、そのようなライダレス用のヘルドでは、取付部分における湾曲部の両端間に強化繊維によって補強されていない部分が複数箇所に存在するため、製織中においてヘルドフレームが高速で上下動することにより掛かる大きな負荷によってその湾曲部が変形してしまう。したがって、前記のように構成された特許文献1のライダレス用のヘルドでも、前記のような問題が依然として発生してしまう。
【0008】
以上のような実情を鑑み、本発明は、ライダレス形のヘルドフレームに用いられる樹脂製のヘルドにおいて、製織中にヘルドがヘルドフレームから外れることを発生し難くすることができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、織機のライダレス形のヘルドフレームに用いられる樹脂製のヘルドであって、前記ヘルドフレームに対し取り付けられる両取付部分がC形又はJ形を成すように形成されているヘルドを前提とする。
【0010】
その上で、前記の目的を達成すべく、本発明によるヘルドは、長手方向における中央に対し両側に位置する各部分であって前記取付部分の端部である湾曲部を含む各部分が、前記ヘルドを板厚方向に見たときの当該部分における両端の間に亘るように配向された連続強化繊維を包含するように形成された補強部として構成されている。
【0011】
さらに、本発明によるヘルド、両前記補強部の間に中間部を含む。その上で、前記中間部、樹脂のみ、又は樹脂に前記連続強化繊維以外の強化材のみを包含させた複合材で形成されていることを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
本発明によるヘルドによれば、ヘルドを板厚方向に見て、各取付部分の湾曲部は、前記両端間に亘って連続強化繊維が存在するように構成されたものとなっている。すなわち、湾曲部は、その前記両端間において連続強化繊維が存在していない部分が無く、その全体に亘って補強された補強部となっている。したがって、湾曲部がそのように構成されたヘルドは、前記のような特許文献1のヘルドと比べて湾曲部の剛性が大きいものとなるため、製織中における湾曲部の変形がその特許文献1のヘルドよりも発生し難い。それにより、湾曲部の変形に起因してヘルドがヘルドフレームから外れることが発生し難くなる。
【0013】
しかも、前記のような本発明によるヘルドは、両補強部の間に中間部を含むものとすると共に、その中間部を、樹脂のみ又は樹脂に連続強化繊維以外の強化材のみを包含させた複合材で形成されたものとすることで、前記のよう補強部のみで構成されたものと比べ軽量化されたものとなる。
【0014】
より詳しくは、湾曲部を除く部分には製織中において前述のような湾曲部に掛かるほどの負荷が掛からないことから、その部分を湾曲部よりも剛性が低いものとしても問題が生じる可能性は低い。したがって、ヘルドを両補強部の間に中間部が含まれるように構成すると共に、その中間部を前記のように形成された補強部よりも剛性が低くなるような樹脂のみ又は樹脂に連続強化繊維以外の強化材のみを包含させた複合材によって形成されたものとすることも可能である。そして、そのような中間部を含むように構成されたヘルドは、前記のよう補強部のみで構成されたものと比べ、短い強化材よりも重量のある連続強化繊維の含有量が少ないため、補強部のみで成るものよりも軽量化されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が前提とするヘルドフレームの一例を示す概略側面図。
図2図1で示すヘルドフレームに対し取り付けられているヘルドの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1、2に基づき、本発明によるヘルドの一実施例を説明する。
【0017】
図1は、織機1のライダレス形のヘルドフレーム2を示す。そのヘルドフレーム2は、上下のフレームステーブ3、3と、その両フレームステーブ3、3を両端において連結するサイドステー(図示略)とから成る枠体となっている。また、ヘルドフレーム2は、ヘルド5を支持する上下一対のキャリアロッド4、4を有しており、ライダレス形では、その各キャリアロッド4は、フレームステーブ3に対し一体的に取り付けられている。
【0018】
なお、一般的な織機において、ヘルドは、その長手方向における両側部に形成された取付部分においてキャリアロッドに掛止されるかたちで、ヘルドフレーム(両キャリアロッド)に支持される。また、ヘルドフレームがライダレス形である場合には、前記のように各キャリアロッドがフレームステーブに対し一体的に取り付けられていることから、ヘルドにおける各取付部分は、C形あるいはJ形を成すように形成されたものとされる。その上で、本実施例におけるヘルド5は、各取付部分7がC形を成すように形成されたものとなっている。
【0019】
また、そのヘルド5について、その形態自体は周知であり、ヘルド5は、その長手方向における中央を含む部分である糸挿通部6が細長い矩形状に形成されており、その略中央に経糸を挿通するメール61が形成されている。また、そのヘルド5における各取付部分7は、前記のようにC形を成すように形成されている。したがって、各取付部分7は、その端部が湾曲形状を成すものとなっている。すなわち、各取付部分7は、その端部に湾曲形状を成す湾曲部71を有している。なお、本実施例では、ヘルド5は、その長手方向における両取付部分7、7と糸挿通部6との間に、取付部分7から糸挿通部6に連続して両部分を接続する接続部8を有している。
【0020】
その上で、ヘルド5は、樹脂を母材として形成されたものとなっている。そして、本実施例では、その樹脂は、熱可塑性樹脂とされている。
【0021】
以上のようなヘルド5において、本発明では、その長手方向における中央に対し両側に位置する各部分であって前記した湾曲部71を含む各部分が、ヘルド5を板厚方向に見たときの当該部分における両端の間に亘るように配向された連続強化繊維を包含するように形成された補強部として構成される。その上で、本実施例では、ヘルド5は、各取付部分7が補強部となるように構成されている。すなわち、そのヘルド5は、両取付部分7、7の間に、補強部とは構成が異なる中間部を含むように構成されている。そのような本実施例のヘルド5について、以下で詳細に説明する。
【0022】
ヘルド5において、各取付部分7は、前記のように、本発明で言う補強部として形成される部分となっている。なお、本発明で言う連続強化繊維は、母材に包含(配向)される強化繊維であって、その配向される範囲に亘って(切れ目無く)連続する強化繊維である。また、本実施例では、その連続強化繊維9は、炭素繊維とされている。そして、各取付部分7は、ヘルド5を板厚方向に見て、その取付部分7の形状に沿って取付部分7の両端間に亘るようなかたちで、連続強化繊維9が配向されるように構成されている。但し、ここで言う取付部分7の両端間とは、前記のようにC形を成すことで前記長手方向に対向する両突端を端とするその間の部分である。
【0023】
また、連続強化繊維9は、本実施例では、取付部分7における各部分の幅方向において異なる2位置に配向されたかたちとなるように、各取付部分7に包含されている。すなわち、その各取付部分7は、前記板厚方向に見て、平行に配向された2列の連続強化繊維9を包含するように形成されている。但し、その2列の連続強化繊維9は、本実施例では、取付部分7における前記両突端の一方において繋がっており、1本の連続強化繊維9でその2列が形成されるかたちとなっている。
【0024】
そして、ヘルド5は、前記のように前記両端間に亘るかたちで連続強化繊維9が配向されるように各取付部分7が構成されていることで、その各取付部分7に含まれる湾曲部71においても、その湾曲部71の両端間に亘って配向されるかたちで連続強化繊維9が包含されるように構成されたものとなる。
【0025】
また、ヘルド5は、前記のように、各取付部分7が補強部となるように構成されている。言い換えれば、ヘルド5は、その各取付部分7を除く部分、すなわち、糸挿通部6と両接続部8、8とから成る部分(中間部)10が、補強部(取付部分)7とは構成が異なるように構成されている。そして、その中間部10は、本実施例では、熱可塑性樹脂のみで形成されている。
【0026】
そして、以上のように構成されるヘルド5は、例えば、移動するノズルから成形用の材料(樹脂)を吐出する形式の3Dプリンタを用いて成形することが可能である。
【0027】
その3Dプリンタを用いたヘルド5の成形について、詳しくは、その成形は、ヘルド5の形状の溝を有する金型を用いて行われる。なお、その金型における前記溝は、取付部分(補強部)7に対応する両側の部分(以下、「第1の溝部分」と言う。)と、その両第1の溝部分の間の部分であって中間部10に対応する部分とで構成されている。また、その両第1の溝部分間の部分は、糸挿通部6に対応する中央の部分(以下、「第2の溝部分」と言う。)と、その第2の溝部分に対する両側の部分であって接続部8に対応する部分(以下、「第3の溝部分」と言う。)とで構成されている。さらに、以下では、第1の溝部分のうち、前記した取付部分7における前記両突端に対応する部分を「溝端部」と言う。
【0028】
そして、最初の工程として、前記金型の前記溝における両第1の溝部分に、前記3Dプリンタを用いて熱可塑性樹脂が充填される。但し、その両第1の溝部分に充填される熱可塑性樹脂は、連続強化繊維9を包含させたものとされる。
【0029】
具体的には、その第1の溝部分に対する熱可塑性樹脂の充填については、先ずは、その第1の溝部分における両溝端部の他方(他方の溝端部)から両溝端部の一方(一方の溝端部)に向け、第1の溝部分の形状に沿わせるかたちで、熱可塑性樹脂を吐出させつつ前記ノズルを移動させる。それにより、第1の溝部分において、前記他方の溝端部から前記一方の溝端部に亘り、連続強化繊維9を包含する熱可塑性樹脂が連続して注入された状態となる。
【0030】
そして、前記一方の溝端部に前記ノズルが達すると、前記一方の溝端部における溝幅の方向において既に注入された熱可塑性樹脂に対し前記ノズルの位置がずれるように、前記ノズルを移動させる。なお、その移動も、前記ノズルが熱可塑性樹脂を吐出しつつ行われる。それにより、前記一方の溝端部において、熱可塑性樹脂に包含された連続強化繊維9は、既に注入された熱可塑性樹脂に包含された連続強化繊維9と繋がった状態で、その溝幅の方向に配向される。
【0031】
次いで、前記他方の溝端部に向け、再び第1の溝部分の形状に沿わせるかたちで、熱可塑性樹脂を吐出させつつ前記ノズルを移動させる。それにより、第1の溝部分には、その各部分の溝幅の方向において既に注入された熱可塑性樹脂と並ぶようなかたちで、前記一方の溝端部から前記他方の溝端部に亘り、連続強化繊維9を包含する熱可塑性樹脂が連続して注入された状態となる。なお、両第1の溝部分に対する熱可塑性樹脂の注入は、その両第1の溝部分の一方に対し前記のような工程によって行われた後、他方の第1の溝部分に対し同じ工程が行われることで完了する。
【0032】
そして、以上のように連続強化繊維9を包含する熱可塑性樹脂が各第1の溝部分に対し注入された結果として、その熱可塑性樹脂が両第1の溝部分に充填された状態となる。また、その各第1の溝部分に対する熱可塑性樹脂の充填が、第1の溝部分における両溝端部の一方から他方に向けて熱可塑性樹脂を吐出させつつ前記ノズルを連続的に移動させる(熱可塑性樹脂を連続して注入する)かたちで行われることにより、その熱可塑性樹脂に包含された連続強化繊維9が、その両溝端部の間、すなわち取付部分7における前記両突端(両端)に対応する2位置の間に亘るように配向される。さらに、その両溝端部の間における前記ノズルの移動が、第1の溝部分における各部分の溝幅の方向において往路に対する復路の位置がずれるように一往復行われることにより、連続強化繊維9が、その溝幅の方向に2列を成して配向された状態となる。
【0033】
次に、続く工程として、前記金型の前記溝における両第1の溝部分間の部分(第2の溝部分及び両第3の溝部分)に、前記3Dプリンタを用いて熱可塑性樹脂が充填される。但し、その第2の溝部分及び両第3の溝部分に充填される熱可塑性樹脂は、強化繊維を包含していないもの(熱可塑性樹脂のみ)とされる。
【0034】
具体的には、その熱可塑性樹脂の充填については、先ずは、両第3の溝部分の一方(一方の第3の溝部分)において、前記溝の長手方向(ヘルド5の長手方向に相当する方向)における第1の溝部分側の端部から第2の溝部分側の端部に向け、熱可塑性樹脂を吐出させつつ前記ノズルを前記長手方向に移動させる。但し、その前記長手方向への前記ノズルの移動は、溝幅の方向(第2の溝部分の溝幅の方向と一致する方向)における両側への往復変位を伴って行われる。それにより、前記一方の第3の溝部分全体に、熱可塑性樹脂が注入(充填)された状態となる。その後、両第3の溝部分の他方(他方の第3の溝部分)に対しても、同様にして熱可塑性樹脂の注入(充填)が行われる。
【0035】
次いで、第2の溝部分に対する熱可塑性樹脂の注入が行われる。その注入は、前記一方の第3の溝部分側の端部と前記他方の第3の溝部分側の端部との間で、熱可塑性樹脂を吐出させつつ前記ノズルを前記長手方向に往復移動させることで行われる。そして、そのように注入が行われることで、第2の溝部分に対し熱可塑性樹脂が充填された状態となる。
【0036】
そして、前記金型の前記溝において、以上のように各溝部分に対しそれぞれに応じた熱可塑性樹脂が充填されることで、全体に亘って熱可塑性樹脂が充填された状態になると共に、その全体のうちのヘルド5の両取付部分7、7に対応する部分に充填された熱可塑性樹脂に対し前述のように配向された連続強化繊維9が包含された状態となる。その上で、最後の工程として、その充填された熱可塑性樹脂の形状を整えるべく、前記溝に充填された熱可塑性樹脂を加圧し、その後、その熱可塑性樹脂を冷却して固化させることで、前述のようなヘルド5が成形される。
【0037】
そして、本実施例のヘルド5によれば、各取付部分7に包含された連続強化繊維9が、ヘルド5を板厚方向に見て、その取付部分7における湾曲部71の両端間に亘って存在していることで、各湾曲部71が全体に亘って補強されている。したがって、そのヘルド5は、強化繊維を不連続な状態で包含させた複合材で湾曲部(取付部分)が形成されている従来のヘルドと比べ、湾曲部71の剛性が大きいものとなっている。それにより、本実施例のヘルド5は、製織中における湾曲部71の変形が前記従来のヘルドよりも発生し難いものとなっており、そのように湾曲部71の変形が発生し難いヘルド5によれば、その変形に起因してヘルド5がヘルドフレーム2から外れることが発生し難くなる。
【0038】
さらに、本実施例のヘルド5は、連続強化繊維9を包含させた両補強部(取付部分)7、7の間が、熱可塑性樹脂のみで形成された(連続強化繊維9を含まない)中間部10であるように構成されているので、補強部のみで成るものと比べ軽量化されたものとなっている。
【0039】
なお、本発明は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下(1)~(6)のように変形させた態様(変形例)でも実施することができる。
【0040】
(1)補強部について、前記実施例では、ヘルド5は、各取付部分7が連続強化繊維9を包含させた補強部となるように構成されている。しかし、本発明において、ヘルドは、そのように各取付部分が補強部であるように構成されたものに限らない。
【0041】
詳しくは、本発明において、ヘルドは、その長手方向における中央に対し両側に位置する各部分であって湾曲部を含む各部分が補強部として構成されたものであれば良い。言い換えれば、ヘルドは、少なくとも両湾曲部が補強部であるように構成されていれば良く、例えば、各取付部分における湾曲部のみが補強部であるように構成されていても良い。そして、その場合には、ヘルドは、その板厚方向に見て、各湾曲部がその湾曲部の形状に沿った方向における両端の間に亘って配向されるかたちで連続強化繊維を包含するように構成されたものとなる。
【0042】
また、ヘルドは、以上のようにその一部が補強部であるように構成されたものにも限られず、その長手方向における中央に対し両側に位置する各部分全体が補強部であるように構成されていても良い。すなわち、ヘルドは、補強部のみで成る(中間部を含まない)ものとされても良い。そして、その場合には、ヘルドは、その全体に連続強化繊維を包含させたものとなる。
【0043】
(2)補強部の構成について、前記実施例のヘルド5において、補強部(取付部分)7は、ヘルド5を板厚方向に見て、その両端間に亘って配向された強化繊維である連続強化繊維9が、2列を成すように配向されて包含された構成となっている。しかし、本発明のヘルドにおいて、補強部は、そのように複数列に配向された連続強化繊維が包含されるように構成される場合であっても、その列数は、前記実施例のような2列に限らず、3列以上であっても良い。但し、本発明による補強部は、少なくとも1列の連続強化繊維が配向されるように構成されていれば良く、その列数は1列であっても良い。
【0044】
また、前記実施例では、複数列(2列)に配向された連続強化繊維を補強部が包含する場合において、その2列の配向が1本の連続強化繊維によって成されている。しかし、そのように補強部が複数列に配向された連続強化繊維を包含するように構成される場合であっても、その複数列は、1本の連続強化繊維によって成されるものに限らず、その各列がそれぞれ独立した連続強化繊維によって形成されるものであっても良い。
【0045】
なお、本発明のヘルドにおける補強部は、前記のように少なくとも1列に配向された連続強化繊維を包含するように構成されていれば、樹脂に含まれるそれ以外の構成については特に限定されない。したがって、本発明による補強部は、連続強化繊維のみを包含するように構成されたものに限らず、連続強化繊維に加え、例えば連続強化繊維よりも短い強化繊維を包含するように構成されていても良い。
【0046】
(3)中間部について、前記実施例では、ヘルド5は、両補強部(取付部分)7、7間の部分に補強部7とは構成が異なる中間部10を含むように構成されている。その上で、中間部10は、(強化繊維を含まない)樹脂のみで形成されたものとなっている。しかし、両補強部の間に中間部を含むようにヘルドが構成される場合において、その中間部は、樹脂のみで形成されるものに限らず、樹脂に連続強化繊維以外の強化材のみを包含させた複合材で形成されたものであっても良い。なお、その強化材としては、例えば、母材(樹脂)に不連続な状態で包含(配向)される短繊維(チョップ状の繊維)や粉末(ミルド)等のかたちの強化材が考えられる。
【0047】
(4)ヘルドを形成する材料について、前記実施例のヘルド5において、補強部7における連続強化繊維9は、炭素繊維とされている。しかし、本発明のヘルドにおいて、連続強化繊維は、炭素繊維に限らず、ガラス繊維やポリアラミド繊維等、炭素繊維以外の強化繊維であっても良い。また、母材としての樹脂についても、前記実施例の熱可塑性樹脂に限らず、熱硬化性樹脂であっても良い。
【0048】
(5)本発明が前提とするヘルドについて、そのヘルドは、織機のライダレス形のヘルドフレームに用いられるものである。そして、周知のライダレス用のヘルドとしては、前記実施例のように各取付部分がC形を成すように形成されたもの以外に、各取付部分がJ形を成すように形成されたものがある。その上で、本発明は、そのように各取付部分がJ形を成すように形成されたヘルドにも適用可能である。
【0049】
(6)本発明によるヘルドの成形について、前記実施例では、その成形において金型(ヘルド5の形状の溝)へ樹脂を充填(注入)する工程が、移動するノズルから成形用の材料(樹脂)を吐出する形式の3Dプリンタを用いて行われる例を一例として説明した。しかし、本発明のヘルドの成形において、金型へ樹脂を充填する工程(充填工程)は、3Dプリンタに限らず、例えば、成形用の材料を配置型上に配置するAFP(Automated Fiber Placement)装置を用いて行うことも可能である。また、ハンドレイアップ成形法のようにその成形が作業者の手作業によって行われる場合には、その充填工程も手作業で行われる。
【0050】
また、本発明は、以上で説明した実施例及び変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 織機
2 ヘルドフレーム
3 フレームステーブ
4 キャリアロッド
5 ヘルド
6 糸挿通部
61 メール
7 取付部分(補強部)
71 湾曲部
8 接続部
9 連続強化繊維
10 中間部
図1
図2