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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
E06B5/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021094315
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186206
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山中 里加子
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148056(JP,A)
【文献】特開2015-232225(JP,A)
【文献】特開2016-037782(JP,A)
【文献】特開2017-031604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠で障子を支持した建具であって、
前記開口枠の下枠の見込み方向に沿って並んで設けられ、前記障子を案内可能な複数のレールと、
前記レールの相互間に着脱可能に装着されるアタッチメントと、
前記レールの相互間で前記障子の召合せ框の下方に配置され、前記障子の下がりを防止するための金具と、
を備え、
前記アタッチメントには、第1の熱膨張性部材が設けられ、
前記金具には、前記第1の熱膨張性部材よりも低温で膨張する第2の熱膨張性部材が設けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記金具は、前記召合せ框の下面を臨む前記金具の上面に前記第2の熱膨張性部材が設けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建具であって、
前記レールの相互間で前記金具の側方に隣接して設けられた樹脂製の風止板をさらに備え、
前記金具は、前記風止板を臨む見込み面に前記第2の熱膨張性部材が設けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の建具であって、
前記金具は、
前記召合せ框を臨む上板部と、
前記レールの長手方向で前記上板部の一縁部及び他縁部からそれぞれ前記下枠の見込み面に向かって垂下され、該見込み面に近い一部分が前記上板部よりも見込み方向で幅広に形成された第1及び第2の見込み板部と、
を有し、
前記金具は、前記第1及び第2の見込み板部のうち、少なくとも一方の見込み見板部の内側見込み面に前記第2の熱膨張性部材が設けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
開口枠で障子を支持した建具であって、
前記開口枠の下枠の見込み方向に沿って並んで設けられ、前記障子を案内可能な複数のレールと、
前記レールの相互間で前記障子の下框の長手方向に沿って延在する第1の熱膨張性部材と、
前記レールの相互間で前記障子の召合せ框の下方に設けられ、前記第1の熱膨張性部材よりも低温で膨張する第2の熱膨張性部材と、
を備えることを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項5に記載の建具であって、
前記レールの相互間で前記召合せ框の下方に配置され、前記障子の下がりを防止するための金具と、
前記レールの相互間で前記金具の側方に隣接して設けられた樹脂製の風止板と、
をさらに備え、
前記金具は、前記召合せ框の下面を臨む前記金具の上面、及び前記風止板を臨む見込み面に、それぞれ前記第2の熱膨張性部材が設けられている
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口枠で障子を支持した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
開口枠の開口で左右の障子を互いにスライド可能に支持した引違い窓や、一方のみをスライド可能に支持した片引き窓等の建具がある。例えば特許文献1には、引違い窓の建具において、下枠のレール間にアタッチメントを装着し、下枠の上面をフラットに構成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6711733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成は、火災時に障子と下枠との間に隙間が形成されることを防止するため、レール間のアタッチメントの全長に熱膨張性部材を設けている。ところがこの構成では、加熱序盤に熱膨張性部材の膨らみが不十分であると、障子の召合せ部の隙間が塞がらず、火炎や煙の通り道となる懸念がある。一方、全長の熱膨張性部材が早期に膨らんでしまった後で障子が下がった際、障子と枠との隙間が拡大し、火炎や煙の通り道となる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、安定した防火性能を得ることができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る建具は、開口枠で障子を支持した建具であって、前記開口枠の下枠の見込み方向に沿って並んで設けられ、前記障子を案内可能な複数のレールと、前記レールの相互間に着脱可能に装着されるアタッチメントと、前記レールの相互間で前記障子の召合せ框の下方に配置され、前記障子の下がりを防止するための金具と、を備え、前記アタッチメントには、第1の熱膨張性部材が設けられ、前記金具には、前記第1の熱膨張性部材よりも低温で膨張する第2の熱膨張性部材が設けられている。
【0007】
本発明の第2態様に係る建具は、開口枠で障子を支持した建具であって、前記開口枠の下枠の見込み方向に沿って並んで設けられ、前記障子を案内可能な複数のレールと、前記レールの相互間で前記障子の下框の長手方向に沿って延在する第1の熱膨張性部材と、前記レールの相互間で前記障子の召合せ框の下方に設けられ、前記第1の熱膨張性部材よりも低温で膨張する第2の熱膨張性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、安定した防火性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る建具を室内側から見た正面図である。
図2図1に示す建具の横断面図である。
図3A図2中のIIIA-IIIA線に沿う断面図である。
図3B図2中のIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
図3C図2中のIIIC-IIIC線に沿う断面図である。
図4】下枠の金具及びその周辺部の構成を示す斜視図である。
図5図4に示すアタッチメントの端部キャップを取り外した状態を示す斜視図である。
図6図5に示す下枠を別の角度から見た斜視図である。
図7図6に示す風止板を取り外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る建具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る建具10は、建物躯体の開口部に固定される開口枠12と、開口枠12の内側にスライド可能に配設された左右2枚の障子14,15とを備える。本実施形態では、障子14,15をスライドさせることにより開口枠12の内側に形成した開口16を開閉可能な引違い窓の建具10を例示する。障子14,15は一方が開口枠12にはめ殺され、他方のみがスライドする片引き窓であってもよい。障子の設置枚数は3枚以上であってもよい。
【0012】
開口枠12は、上枠12aと、下枠12bと、左右の縦枠12c,12dとを四周枠組みすることで矩形の開口16を形成したものである。各枠12a~12dは、アルミニウム等を含む金属の押出形材、又は塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂の押出形材である。各枠12a~12dは、金属枠材の室内側に樹脂枠材を装着した複合構造、例えばアルミ樹脂複合枠でもよい。開口枠12は、ねじやくぎ等の固定具18を用いて建物躯体に固定される(図3A参照)。
【0013】
本出願において、見込み方向とは建具10の室内外方向、つまり室内側から室外側に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Zで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠12c等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な下枠12b等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。枠状部材の内側(内周)とは、例えば開口枠12の枠内部分をいう。枠状部材の外側(外周)とは、例えば開口枠12の建物躯体に固定される枠外部分をいう。
【0014】
図3A図3Cに示すように、下枠12bは、見込み方向に並んだレール20,21を有する。レール20,21は、下枠12bの枠内側の見込み面22から枠内方向(上方)に突出した板片であり、下枠12bの全長に亘って延在している。室外側のレール20は、室外側の障子14をスライド可能に案内する。室内側のレール21は、室内側の障子15をスライド可能に案内する。
【0015】
上枠12aについても、障子14,15を案内する一対のレールがレール20,21と対向するように枠内側の見込み面に設けられている。縦枠12c,12dは、例えば枠12a,12bの小口端面を覆うようにこれら枠12a,12bと連結される(図1及び図2参照)。
【0016】
図1図3Cに示すように、外障子である障子14は、四周を囲む上框24a、下框24b、戸先框24c及び召合せ框24dと、内側に配置される面材25とを框組みしたものである。
【0017】
面材25は、例えばスペーサを介して一対のガラス板25a,25bを互いに間隔を隔てて対面配置した2層の複層ガラスである。本実施形態の場合、室外側に配置されるガラス板25aは網入りの厚板ガラスであり、室内側に配置されるガラス板25bは薄板のフロートガラスである。
【0018】
下框24bは、例えば框本体24b1の室内側に押縁24b2を装着した構成である。他の框24a,24c,24dも下框24bと同様な構成である。各框24a~24dは、金属の押出形材又は樹脂の押出形材の単体で構成されてもよいし、アルミニウム等の金属の押出形材と塩化ビニル樹脂等の樹脂の押出形材とによる複合構造でもよい。
【0019】
図3A及び図3Bに示すように、下框24bは、レール20を飲み込む開口溝26を下側の見込み面に有し、面材25の下縁部を飲み込む面材配置溝27を上側の見込み面に有する。開口溝26は、框本体24b1の見込み面から下方に突出し、見込み方向に並んだ一対の垂下片26a,26b間に形成されている。面材配置溝27は、框本体24b1に形成された突出片と押縁24b2に形成された突出片との間に形成されている。他の框24a,24c,24dも、それぞれの面材配置溝27が面材25の上縁部又は側縁部を飲み込んでいる。
【0020】
障子14の戸車14aは、下框24の框本体24b1で回転可能に支持され、下部が開口溝26に配置されている。戸車14aはレール20上を転動することにより、障子14を開口枠12に対して円滑にスライド移動させるためのローラである。
【0021】
図1図3Cに示すように、内障子である障子15は、下枠12bのレール21を戸車15aが転動することで障子14に対して引違いにスライド可能である。障子15は、障子14と同一又は同様な構造でよい。そこで、障子15については、上記した障子14の構成要素と対応する構成要素について同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0022】
図1に示すように、障子15の召合せ框24dと障子14の召合せ框24dとの間はクレセント28によってロック可能であり、これにより障子14,15が閉状態に保持される。
【0023】
次に、下枠12bのより詳細な構成を説明する。
【0024】
図2図3Cに示すように、下枠12bの見込み面22には、室外側アタッチメント30と、室内側アタッチメント31と、アタッチメント32,33とが装着されている。これらアタッチメント30~33は、例えばアルミニウム等の不燃性の金属材料や難燃性の樹脂材料等で形成されるものであり、本実施形態ではアルミニウムを含む金属の押出形材である。アタッチメント30~33は、下枠12bに装着されることで下枠12bの上面を略フラットに構成するための着脱可能な部品である。
【0025】
図3Aに示すように、室外側アタッチメント30は、左右方向(X方向)に延在した棒状部材であり、レール20の室外側に設置される。室外側アタッチメント30は、上下方向に沿う上下片部30aの下端部と、上下片部30aの室外側から上に凸状に屈曲した台状片部30bの先端部とが下枠12bに係脱可能に装着される。上下片部30aは、レール20の室外側見付け面に対向しており、レール20との間に障子14の垂下片26aを飲み込む。図2に示すように、室外側アタッチメント30の左右端面にはそれぞれ端部キャップ34が装着されている。
【0026】
図3Bに示すように、室内側アタッチメント31は、左右方向(X方向)に延在した断面略R字状の棒状部材であり、室内側のレール21の室内側に設置される。下枠12bの室内側端部には、室内の額縁上面や床面等に固定される室内側L字片36が設けられている。室内側アタッチメント31は、この室内側L字片36とレール21との間に配置され、一対の脚部31a,31bの下端部が下枠12bに係脱可能に装着される。室内側アタッチメント31の室外側見付け面は、レール21の室内側見付け面に対向しており、レール21との間に障子15の垂下片26bを飲み込む。図2に示すように、室内側アタッチメント31の左右端面にはそれぞれ端部キャップ37が装着されている。
【0027】
図2に示すように、アタッチメント32,33は、レール20,21間で左右方向に並んで配置されている。アタッチメント32は、障子14と重なる位置にある。アタッチメント33は、障子15と重なる位置にある。
【0028】
図3Aに示すように、障子14側のアタッチメント32は、左右方向に延在した断面略π(パイ)字状の棒状部材である。アタッチメント32は、上部にある中空部の室内外見込み面のそれぞれにポケット部32a,32bが設けられ、中空部の下板の下面にもポケット部32cが設けられている。アタッチメント32は、中空部の下板から垂下された一対の脚部32d,32eが下枠12bに係脱可能に装着される。中空部の下板の室内側端部には、レール21に向かって突出したヒレ部32fが設けられている。アタッチメント32の室外側見付け面は、レール20の室内側見付け面に対向しており、レール20との間に障子14の垂下片26bを飲み込む。図2に示すように、アタッチメント32の左右端面にはそれぞれ端部キャップ38が装着されている。
【0029】
図2図3Bに示すように、障子15側のアタッチメント33は、障子14側のアタッチメント32と同一構造である。そこで、アタッチメント33については、上記したアタッチメント32の構成要素と対応する構成要素について同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。図2に示すように、アタッチメント33の左右端面にもそれぞれ端部キャップ38が装着されている。図3Bに示すように、アタッチメント33の室内側見付け面は、レール21の室外側見付け面に対向しており、レール21との間に障子15の垂下片26aを飲み込む。この際、アタッチメント33のヒレ部32fは、垂下片26aの下方を覆うように配置される。
【0030】
各アタッチメント30~33の上面は、レール20,21の上端面と略同一の高さ位置にある。これにより下枠12bの上面は、全体として略フラットに構成されている。各アタッチメント30~33に装着された端部キャップ34,37,38は、アタッチメント30~33の小口を隠す機能と、アタッチメント30~33を下枠12bから取り外す際の摘み(指先で把持する部分)としての機能とを有する。これら端部キャップ34,37,38は、樹脂部品である。
【0031】
図2図3C図7に示すように、下枠12bの見込み面22の左右略中央部には、風止板40及び金具42が見込み面22の長手方向(X方向)に並んで装着されている。風止板40及び金具42は、左右のアタッチメント32,33の互いに向かい合う端部キャップ38,38間の間隙に設置されている。
【0032】
図2図4図6に示すように、風止板40は、金具42のアタッチメント33側の側部に隣接している。風止板40は、障子14,15の召合せ部、つまり召合せ框24d,24dの相互間の隙間から室内への風の進入を防ぎ、室内外間の気密性を保持するための樹脂部品である。風止板40は、例えば見込み面22に固定されるベース板の上面に複数枚のヒレ状の薄板をX方向に等間隔に並べた構造である。風止板40は、レール20,21間に亘って側面視略凸形状を有することで、レール20,21間の隙間を塞ぐ。風止板40の上端は、障子14,15の召合せ框24dの下面に摺動可能に当接する。
【0033】
図2図3C図7に示すように、金具42は、風止板40のアタッチメント32側の側部に隣接している。金具42は、障子14,15の召合せ框24dの下方に配置され、火災時に障子14,15が下がることを防止するための下がり防止金具である。金具42は、ステンレスやスチール等で形成された金属板を正面視略コ字状に折り曲げた部品である。
【0034】
金具42は、XZ水平面に沿って配置される上板部42aと、YZ鉛直面に沿って配置され、X方向に並設される一対の見込み板部42b,42cとを有する。上板部42aは、下枠12bの見込み面22と略平行するように配置され、その上面42a1が障子14,15の召合せ框24dの下面24d1を臨む(図3C参照)。第1の見込み板部42bは、X方向で上板部42aのアタッチメント32側の縁部から見込み面22に向かって垂下されている。第2の見込み板部42cは、X方向で上板部42aのアタッチメント33側の縁部から見込み面22に向かって垂下されている。
【0035】
図3Cに示すように、見込み板部42b,42cの見込み面は、略凸状の外形を有する。具体的には、見込み板部42b,42cは、上部が上板部42aと同一の見込み幅(Z方向の幅寸法)を有し、下部は上板部42aよりも大きな見込み幅で幅広に形成されている。これにより金具42は、図3Cに示すようにX方向から見た側面視で、Z方向両側の上角部に切欠き状の逃げ部42d,42eが形成されている。逃げ部42dは障子14の垂下片26bとの干渉を避けるための部分である。逃げ部42eは障子15の垂下片26aとの干渉を避けるための部分である。
【0036】
図3C及び図5に示すように、金具42は、第1の見込み板部42bの下端部からアタッチメント32側に屈曲させた取付板部42fを有する。金具42は、この取付板部42fを貫通するねじ44によって下枠12bの見込み面22に締結される。
【0037】
次に、建具10における下枠12b及びその周辺部での防火構造を説明する。
【0038】
建具10は、アタッチメント32,33の各位置に設けられた第1の熱膨張性部材46(図3A及び図3B参照)と、金具42の各位置に設けられた第2の熱膨張性部材48(図2及び図3C参照)と、を備える。
【0039】
熱膨張性部材46,48は、加熱されると膨張する部材であり、例えば加熱によって発泡する黒鉛等の加熱発泡材である。第1の熱膨張性部材46は、例えば200℃まで加熱された場合に膨張する性質を有する。第2の熱膨張性部材48は、第1の熱膨張性部材46よりも低温で膨張する性質を有する黒鉛等の加熱発泡材であり、例えば150℃まで加熱された場合に膨張する。
【0040】
図3A及び図3Bに示すように、第1の熱膨張性部材46は、例えばアタッチメント32,33の各ポケット部32a~32cと、ヒレ部32fの下面とに設けられている。これら各位置の第1の熱膨張性部材46は、アタッチメント32,33の長手方向の略全長に延在している。つまりこれら第1の熱膨張性部材46は、レール20,21の相互間で障子14,15の下框24bの長手方向に沿って延在している。
【0041】
ポケット部32a~32cに設けられた第1の熱膨張性部材46は、一対のフック状のヒレで保持されると共に、各面(見付け面や見込み面)に粘着剤等で貼り付けられている。第1の熱膨張性部材46は、粘着なしでポケット部32a~32cの保持のみで設置されてもよい。反対にポケット部32a~32cのフック状のヒレをなくし、第1の熱膨張性部材46を各面に粘着のみで固定してもよい。
【0042】
ポケット部32aの第1の熱膨張性部材46は、障子14の垂下片26bに対向しているため、火災時に膨張するとこの垂下片26bとアタッチメント32との間の隙間を埋める(図3A参照)。ポケット部32bの第1の熱膨張性部材46は、障子15の垂下片26aに対向しているため、火災時に膨張するとこの垂下片26aとアタッチメント33との間の隙間を埋める(図3B参照)。ポケット部32cの第1の熱膨張性部材46は、下枠12bの見込み面22に対向しているため、火災時に膨張するとこの見込み面22とアタッチメント32,33との間の隙間を埋める(図3A及び図3B参照)。
【0043】
ヒレ部32fの下面に設けられた第1の熱膨張性部材46は、粘着剤等で貼り付けられている。ヒレ部32fの下面にも一対のフック状のヒレによるポケット部を形成し、ここで第1の熱膨張性部材46を保持してもよい。ヒレ部32fの第1の熱膨張性部材46は、下枠12bの見込み面22に対向しているため、火災時に膨張するとこの見込み面22とヒレ部32fとの間の隙間を埋める(図3A及び図3B参照)。
【0044】
図3C図7に示すように、第2の熱膨張性部材48は、金具42の上板部42aの上面42a1と、見込み板部42bの内側見込み面42b1と、見込み板部42cの外側見込み面42c1とに設けられている。
【0045】
上面42a1に設けられた第2の熱膨張性部材48は、上面42a1と略同一の外形を有する矩形状に形成され、上面42a1に粘着剤等で貼り付けられている。上面42a1の第2の熱膨張性部材48は、障子14,15の召合せ框24dの下面24d1に対向しているため、火災時に膨張するとこの下面24d1と上面42a1との間の隙間を埋める(図3C参照)。
【0046】
見込み板部42bに設けられた第2の熱膨張性部材48は、見込み板部42bの内側見込み面42b1と略同一の外形を有する略凸状に形成され、内側見込み面42b1に粘着剤等で貼り付けられている。見込み板部42bの第2の熱膨張性部材48は、他方の見込み板部42cの内側見込み面に対向しているため、火災時に膨張するとブリッジ状の金具42の内側から各召合せ框24dの下面24d1までの間をレール20,21間に亘って埋める(図6及び図7参照)。見込み板部42bの第2の熱膨張性部材48に代えて又はこれと共に、見込み板部42cの内側見込み面に第2の熱膨張性部材48を設けてもよい。但し、第2の熱膨張性部材48は、内側見込み面42b1に設ければ、外側見込み面42c1に設けるものと同一部品を兼用できるため、コストの点で好ましい。
【0047】
見込み板部42cに設けられた第2の熱膨張性部材48は、見込み板部42cの外側見込み面42c1と略同一の外形を有する略凸状に形成され、外側見込み面42c1に粘着剤等で貼り付けられている。このため、見込み板部42cの第2の熱膨張性部材48は、風止板40と対向している。見込み板部42cの第2の熱膨張性部材48は、風止板40に対向しているため、火災時に膨張すると樹脂製の風止板40が焼失した後の空きスペースをレール20,21間に亘って埋める(図6及び図7参照)。
【0048】
本実施形態の建具10は、さらに、室外側及び室内側のアタッチメント30,31の各位置(図3A図3C参照)と、下枠12bの見込み面22の端部キャップ38の下側(図5図7参照)とにも第1の熱膨張性部材46が適宜設けられている。これらの第1の熱膨張性部材46は、アタッチメント32,33に設けた第1の熱膨張性部材46と同一の性質を有するものである。
【0049】
次に、本実施形態の建具10における下枠12b及びその周辺部での防火作用を説明する。
【0050】
例えば室外側で発生した火災等の熱を建具10が受けた場合、加熱序盤には、召合せ部(召合せ框24d)の下方のレール20,21間に火炎や煙の貫通孔の形成が懸念される。召合せ部は、障子14,15の召合せ框24dが室内外にオーバーラップしているため放熱性が低く、早期に障子14,15が下がって室内外を貫通する隙間を生じ易いためである。
【0051】
そこで、本実施形態の建具10では、金具42に設けられた低温用の第2の熱膨張性部材48が早期に膨張する。これにより当該建具10は、加熱序盤に火炎や煙の通過が懸念される召合せ部(召合せ框24d)の下方が膨張した第2の熱膨張性部材48によって適切に塞がれる。特に第2の熱膨張性部材48は金具42の上面42a1に設けられているため、各障子14,15の召合せ框24dとの間の隙間を適切に且つ迅速に閉塞できる。さらに第2の熱膨張性部材48は金具42の内側見込み面42b1にも設けられているため、レール20,21間の隙間を一層確実に且つ迅速に閉塞できる。
【0052】
この際、本実施形態の建具10は、召合せ部の下方に樹脂製の風止板40を備える。風止板40は、例えば熱可塑性エラストマー(TPE:Thermo Plastic Elastomer)で形成されている。このため、風止板40が加熱序盤に焼失し、この部分の隙間が一層拡大する懸念がある。しかしながら、第2の熱膨張性部材48は、風止板40に臨む第2の見込み板部42cの外側見込み面42c1にも設置されているため、風止板40の焼失後の隙間を適切に且つ迅速に閉塞できる。すなわち第2の熱膨張性部材48は、少なくとも風止板40の焼失温度よりも高温で膨張する性質を有するため、風止板40が焼失した後のスペースを円滑に閉塞することができる。
【0053】
このような火災等の熱影響が長引くと、風止板40の焼失等に続いて、今度は障子14,15の下框24b等が熱変形を生じる懸念がある。そうすると、下框24bとレール20,21との間に室内外の貫通孔となる隙間が形成される。
【0054】
そこで、本実施形態の建具10では、加熱序盤は膨張せずに残った高温用の第1の熱膨張性部材46が膨張する。つまりアタッチメント32,33の各部に設けられた第1の熱膨張性部材46が膨張し、各障子14,15の下框24bに沿って延在するレール20,21間の隙間を塞ぐため、障子14,15の下がりも抑制できる。従って、仮にアタッチメント32,33にも低温用の第2の熱膨張性部材48を用いると、召合せ部よりも遅く隙間が生じるアタッチメント32,33部分でも早期に膨張してしまい、その後の下框24bの熱伸びによる隙間を埋めることができなくなるという問題がある。
【0055】
以上より、本実施形態の建具10は、下枠12b及びその周辺部に設けた熱膨張性部材46,48が加熱の経過時間に応じて適切に機能するため、長時間安定した防火性能が得られる。
【0056】
本発明の第1態様に係る建具は、開口枠で障子を支持した建具であって、前記開口枠の下枠の見込み方向に沿って並んで設けられ、前記障子を案内可能な複数のレールと、前記レールの相互間に着脱可能に装着されるアタッチメントと、前記レールの相互間で前記障子の召合せ框の下方に配置され、前記障子の下がりを防止するための金具と、を備え、前記アタッチメントには、第1の熱膨張性部材が設けられ、前記金具には、前記第1の熱膨張性部材よりも低温で膨張する第2の熱膨張性部材が設けられている。このような構成によれば、性質の異なる熱膨張性部材が時間差で膨張するため、長時間安定した防火性能を得ることができる。
【0057】
前記金具は、前記召合せ框の下面を臨む前記金具の上面に前記第2の熱膨張性部材が設けられた構成としてもよい。そうすると、障子の召合せ框と金具との間の隙間を第2の熱膨張性部材によって迅速に閉塞することができる。
【0058】
前記レールの相互間で前記金具の側方に隣接して設けられた樹脂製の風止板をさらに備え、前記金具は、前記風止板を臨む見込み面に前記第2の熱膨張性部材が設けられた構成としてもよい。そうすると、風止板が加熱序盤に焼失した場合であっても、その部分の隙間を第2の熱膨張性部材によって迅速に閉塞できる。
【0059】
前記金具は、前記召合せ框を臨む上板部と、前記レールの長手方向で前記上板部の一縁部及び他縁部からそれぞれ前記下枠の見込み面に向かって垂下され、該見込み面に近い一部分が前記上板部よりも見込み方向で幅広に形成された第1及び第2の見込み板部と、を有し、前記金具は、前記第1及び第2の見込み板部のうち、少なくとも一方の見込み見板部の内側見込み面に前記第2の熱膨張性部材が設けられた構成としてもよい。そうすると、加熱序盤にレール間の隙間を一層確実に閉塞できる。
【0060】
本発明の第2態様に係る建具は、開口枠で障子を支持した建具であって、前記開口枠の下枠の見込み方向に沿って並んで設けられ、前記障子を案内可能な複数のレールと、前記レールの相互間で前記障子の下框の長手方向に沿って延在する第1の熱膨張性部材と、前記レールの相互間で前記障子の召合せ框の下方に設けられ、前記第1の熱膨張性部材よりも低温で膨張する第2の熱膨張性部材と、を備える。このような構成によれば、性質の異なる熱膨張性部材が時間差で膨張するため、長時間安定した防火性能を得ることができる。
【0061】
前記レールの相互間で前記召合せ框の下方に配置され、前記障子の下がりを防止するための金具と、前記レールの相互間で前記金具の側方に隣接して設けられた樹脂製の風止板と、をさらに備え、記金具は、前記召合せ框の下面を臨む前記金具の上面、及び前記風止板を臨む見込み面に、それぞれ前記第2の熱膨張性部材が設けられた構成としてもよい。そうすると、障子の召合せ框と金具との間の隙間、及び風止板の焼失後の隙間を第2の熱膨張性部材によって迅速に閉塞できる。
【0062】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 建具、12 開口枠、12b 下枠、14,15 障子、20,21 レール、24b 下框、32,33 アタッチメント、40 風止板、42 金具、46 第1の熱膨張性部材、48 第2の熱膨張性部材
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7