(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】軸受一体型シール
(51)【国際特許分類】
F16C 33/74 20060101AFI20240925BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20240925BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20240925BHJP
F16J 15/3268 20160101ALI20240925BHJP
【FI】
F16C33/74 Z
F16C17/02 Z
F16J15/3204 201
F16J15/3268
(21)【出願番号】P 2021096501
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 伸和
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090180(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0124591(US,A1)
【文献】特開2015-218848(JP,A)
【文献】特開2010-175020(JP,A)
【文献】米国特許第05490731(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/74
F16C 17/02
F16J 15/3204
F16J 15/3268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の軸受部材と、
少なくとも上記軸受部材の外周及び軸方向一端を覆うアウタ部材と、
上記アウタ部材の内面側において、一面が上記軸受部材の軸方向他端を覆うように配された輪環状のシール部材と、
上記アウタ部材の内面側において、上記シール部材の上記一面とは反対側の他面を
輪環状のガスケットを介して覆って該シール部材を上記軸受部材に係着させたインナ部材とを備え、
上記インナ部材は、上記アウタ部材に対して固定されることで、上記軸受部材及び上記シール部材を固定して
おり、
上記ガスケットの径方向内側であって上記インナ部材と上記シール部材との間に隙間が形成されている
ことを特徴とする軸受一体型シール。
【請求項2】
上記インナ部材は、断面L字状であり
、該インナ部材の外周平坦面が上記アウタ部材の内周平坦面に接している
ことを特徴とする請求項1に記載の軸受一体型シール。
【請求項3】
上記インナ部材の軸方向平坦面と反対側の端部は、上記アウタ部材における上記軸受部材と反対側の端部によってカシメ結合されている
ことを特徴とする請求項2に記載の軸受一体型シール。
【請求項4】
上記アウタ部材が、輪環状のガスケットを介して上記軸受部材の軸方向一端を覆っている
ことを特徴とする請求項1から
3いずれかに記載の軸受一体型シール。
【請求項5】
上記シール部材が、輪環状のガスケットを介して上記軸受部材の軸方向他端を覆っている
ことを特徴とする請求項1から
4いずれかに記載の軸受一体型シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ、コンプレッサ、EGRバルブなどの軸受と軸シールとが近接して使用される部位に使用される、軸受一体型シールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1のように、焼結材料から成り、軸孔を有する軸受スリーブと、一面が軸受スリーブに接するように配された輪環状のシール部材と、シール部材の一面とは反対側の他面に接し、シール部材を軸受スリーブに係着させたワッシャー部材とを備え、ワッシャー部材は、軸受スリーブに対して固定されている、焼結軸受が知られている。この焼結軸受はシール部材が一体化されているので、省スペース、低コストなどの効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような焼結軸受では、軸受部が密閉流体に晒される場合に、耐食性の問題が生じる。
【0005】
また、シール部材を軸受部材に直接カシメ結合する場合には、軸受部材の材料によっては、軸受部材そのものの剛性不足により一体化が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、剛性及び耐食性に優れた軸受一体型シールを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、アウタ部材とインナ部材とで軸受部材及びシール部材を覆うようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、円筒形状の軸受部材と、
少なくとも上記軸受部材の外周及び軸方向一端を覆うアウタ部材と、
上記アウタ部材の内面側において、一面が上記軸受部材の軸方向他端を覆うように配された輪環状のシール部材と、
上記アウタ部材の内面側において、上記シール部材の上記一面とは反対側の他面を覆って該シール部材を上記軸受部材に係着させたインナ部材とを備え、
上記インナ部材は、上記アウタ部材に対して固定されることで、上記軸受部材及び上記シール部材を固定している。
【0009】
上記の構成によると、インナ部材をアウタ部材に固定することで、軸受部材及びシール部材を軸方向で挟み込んで固定することができるので、軸受部材が、比較的剛性の低い焼結部材より成る場合でも十分な剛性が確保される。また、アウタ部材とシール部材とで軸受部材を挟み込んでいるので、軸受部材が密閉流体に晒されることがなく、耐食性にも優れる。さらに、シール部材が軸受部材に一体であるので、部品点数が減り取付が容易で省スペースになる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記インナ部材は、断面L字状であり、該インナ部材の軸方向平坦面が上記シール部材の他面を覆い、該インナ部材の外周平坦面が上記アウタ部材の内周平坦面に接している。
【0011】
上記の構成によると、インナ部材がアウタ部材に対して面接触して確実に固定される。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において、
上記インナ部材の軸方向平坦面と反対側の端部は、上記アウタ部材における上記軸受部材と反対側の端部によってカシメ結合されている。
【0013】
上記の構成によると、インナ部材がアウタ部材に面接触した状態でカシメ結合されるので、軸受部材及びシール部材が確実に固定される。
【0014】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記インナ部材が、輪環状のガスケットを介して上記シール部材の他面を覆っている。
【0015】
上記の構成によると、インナ部材とシール部材との間を通る漏れ(内部リーク)を防止することができる。
【0016】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
上記アウタ部材が、輪環状のガスケットを介して上記軸受部材の軸方向一端を覆っている。
【0017】
上記の構成によると、アウタ部材と軸受部材との間を通る漏れ(内部リーク)を防止することができる。
【0018】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、
上記シール部材が、輪環状のガスケットを介して上記軸受部材の軸方向他端を覆っている。
【0019】
上記の構成によると、シール部材と軸受部材との間を通る漏れ(内部リーク)を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、剛性及び耐食性に優れた軸受一体型シールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る軸受一体型シールを示す断面図である。
【
図2】軸受一体型シールを一部破断して示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態の変形例に係る軸受一体型シールを示す
図2相当斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1及び
図2は本発明の実施形態の軸受一体型シール1を示し、この軸受一体型シール1は、円筒形状の軸受部材2を備えている。この軸受部材2は、様々な素材から成ってもよく、例えば、焼結材料より成るものであったり、銅合金、カーボン、樹脂などから成るブッシュであったりしてもよい。
【0024】
軸受一体型シール1は、少なくとも軸受部材2の外周2a及び軸方向一端2bを覆うアウタ部材3を備えている。アウタ部材3の軸方向一端平坦面3bは、軸受部材2の軸方向一端2bに面接触している。このアウタ部材3は、例えば、一部折り曲げ形成された輪環状であり、ステンレス鋼板、冷間圧延鋼板等の金属部材が望ましい。アウタ部材3は、耐食性を必要とする部位にはステンレス鋼板などの耐食性の高い材料が適しているが、場合によっては、折り曲げ加工が可能な剛体であれば金属材料でなくてもよい。
【0025】
軸受一体型シール1は、アウタ部材3の内面側において、一面4aが軸受部材2の軸方向他端2cを覆うように配された輪環状のシール部材4を備えている。シール部材4は、ナイロン、ポリエチレン、化学的に安定で耐熱性及び耐薬品性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂材料、ゴム材料などよりなる。
【0026】
軸受一体型シール1は、さらに、アウタ部材3の内面側において、シール部材4の一面4aとは反対側の他面4bを覆ってシール部材4を軸受部材2に係着させたインナ部材5を備えている。このインナ部材5は、アウタ部材3に対して固定されることにより、軸受部材2及びシール部材4を固定している。
【0027】
インナ部材5は、例えば、折り曲げ形成された輪環状かつ断面L字状であり、インナ部材5の軸方向平坦面5aがシール部材4の他面4bを覆い、インナ部材5の外周平坦面5bがアウタ部材3の内周平坦面3aに接している。このインナ部材5も、ステンレス鋼板、冷間圧延鋼板等の金属部材が望ましいが、場合によっては、折り曲げ加工が可能な剛体であってもよい。耐食性を必要とする部位には、ステンレス鋼板などの耐食性の高い材料が適している。
【0028】
インナ部材5の軸方向平坦面5aと反対側の端部5cは、アウタ部材3における軸受部材2と反対側端部3cとカシメ結合されている。例えば、この反対側端部3cは、他の部分よりも薄肉に成形しておけば、カシメ加工が容易である。インナ部材5の外周平坦面5bがアウタ部材3の内周平坦面3aに面接触した状態で、その反対側端部3cによってカシメ結合されるので、軸受部材2及びシール部材4が確実に固定される。
【0029】
このように、インナ部材5をアウタ部材3に確実に固定することで、軸受部材2及びシール部材4を軸方向で挟み込んで固定することができるので、軸受部材2が比較的剛性の低い焼結部材より成る場合でも十分な剛性が確保される。
【0030】
また、アウタ部材3とシール部材4とで軸受部材2を挟み込んでいるので、軸受部材2が密閉流体に晒されることがなく、耐食性にも優れる。
【0031】
さらに、シール部材4が軸受部材2に一体であるので、部品点数が減り取付が容易で省スペースになる。
【0032】
したがって、本実施形態に係る軸受一体型シール1によると、剛性及び耐食性に優れた軸受一体型シール1が得られる。
【0033】
-変形例-
図3は本発明の実施形態の変形例に係る軸一体型シール1’を示し、ガスケット6が設けられている点で実施形態と異なる。なお、本変形例では、
図1及び
図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0034】
インナ部材5が、輪環状のガスケット6を介してシール部材4の他面4bを覆っている。すなわち、インナ部材5の軸方向平坦面5aと軸受部材2の軸方向他端2cとの間にガスケット6を挟み込んでいる。ガスケット6を設けることで、インナ部材5の軸方向平坦面5aとシール部材4の他面4bとの間を通る漏れ(内部リーク)を防止することができる。
【0035】
ガスケット6の位置は、この変形例の位置に限定されない。図示しないが、例えば、アウタ部材3が、輪環状のガスケット6を介して軸受部材2の軸方向一端2bを覆っていてもよい。この場合は、ガスケット6を設けることで、アウタ部材3の軸方向一端平坦面3bと軸受部材2の軸方向一端2bとの間を通る漏れ(内部リーク)を防止することができる。
【0036】
また、シール部材4が、輪環状のガスケット6を介して軸受部材2の軸方向他端2cを覆っていてもよい。この場合は、ガスケット6を設けることで、シール部材4の一面4aと軸受部材2の軸方向他端2cとの間を通る漏れ(内部リーク)を防止することができる。
【0037】
ガスケット6は、上述した部位について複数箇所に設けてもよい。
【0038】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0039】
1,1’ 軸受一体型シール
2 軸受部材
2a 外周
2b 軸方向一端
2c 軸方向他端
3 アウタ部材
3a 内周平坦面
3b 軸方向一端平坦面
3c 反対側端部
4 シール部材
4a 一面
4b 他面
5 インナ部材
5a 軸方向平坦面
5b 外周平坦面
5c 端部
6 ガスケット