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特許7560418匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物、それを用いたセンサ素子、匂いセンサおよび匂い測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物、それを用いたセンサ素子、匂いセンサおよび匂い測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20240925BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20240925BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240925BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240925BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240925BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G01N27/12 C
G01N27/04 F
G01N27/12 A
G01N27/12 M
C08K3/01
C08G18/42
C08G18/42 008
C08G18/48 033
C08L75/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021136649
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2022045332
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2020150724
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】石田 智信
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】中村 公昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智大
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-010902(JP,A)
【文献】特表2013-509583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0116694(US,A1)
【文献】国際公開第2020/116490(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109540978(CN,A)
【文献】LORWONGTRAGOOL el al.,A Novel Wearable Electronic Nose for Healthca re Based on Flexible Printed Chemical Sensor Array,sensors,Vol.14,2014年,pp.19700-19712
【文献】砂川 貴昭 ほか,水晶振動子を用いたハーブ種識別システムの構築,第18回センシングフォーラム-センシング技術の新たな展開と融合-資料,2001年,pp.237-240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - 27/12
C08K 3/01
C08G 18/42
C08G 18/48
C08L 75/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物であって、
ポリウレタン樹脂(A)、界面活性剤(B)および導電性炭素材料(C)を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤(B)は8~18のHLB値を有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂(A)と前記界面活性剤(B)との重量比[(A)/(B)]が1.0~4.0である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記導電性炭素材料(C)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂(A)、前記界面活性剤(B)および前記導電性炭素材料(C)の合計100重量%に対し、25~75重量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む匂い物質受容層、第1金属配線、および第2金属配線を備えるセンサ素子であって、
前記第1金属配線と前記第2金属配線とは離間しており、
前記匂い物質受容層は、前記第1金属配線の少なくとも一部と前記第2金属配線の少なくとも一部とに接している、センサ素子。
【請求項6】
請求項5に記載の少なくとも1つのセンサ素子と、
前記センサ素子に給電するための電源と、
前記電源から給電されたセンサ素子の前記匂い物質受容層の電気伝導性を示す測定値を出力する測定機器と、を備える、匂いセンサ。
【請求項7】
前記電源は、前記少なくとも1つのセンサ素子に対して、定電流を供給するかまたは定電圧を印加する、請求項6に記載の匂いセンサ。
【請求項8】
請求項6または7に記載の匂いセンサ、および推定装置を備える匂い測定装置であって、
前記推定装置は、
前記測定機器から前記測定値を取得する取得部と、
前記少なくとも1つのセンサ素子の電気伝導性の経時的な変化を解析する解析部と、
推定モデルに基づいて匂い物質を推定する推定部と、を備え、
前記推定モデルは、複数の匂い物質のそれぞれを前記少なくとも1つのセンサ素子に吸着させた場合に前記測定機器によって測定される測定値と、該測定値を与えた匂い物質に固有の識別情報との組み合わせを含む学習用データを用いた機械学習によって生成される、匂い測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の匂い測定装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記取得部、前記解析部、および前記推定部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物、それを用いたセンサ素子、匂いセンサおよび匂い測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理技術の発達により、人間の五感のうち機械的な測定が十分に達成できていない嗅覚を何らかの方法で数値化することができれば、医療分野、環境・安全分野、マーケティング分野等の幅広い産業分野で利用可能であることが期待される。これまでに、特定の気体物質(ガス)を検出する方法は半導体ガスセンサなどによって高精度・高感度の測定が実現されている。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、半導体ガスセンサの半導体を導電性高分子に置き換えて導電性高分子表面への匂い成分の吸着を検出する仕組みを提案している。特許文献1では、熱分解しやすい匂い成分およびセンサの検出部表面で酸化還元反応を生じない物質の検出が可能になることを報告している。
【0004】
また、特許文献2においては、有機ポリマーと導電性物質の混合物の電気抵抗が有機ガスに曝露されることで変化する性質に着目している。特許文献2では、上記混合物のうち有機ポリマーの組成が異なる有機ポリマー/導電性物質の組み合わせを複数調製し、これらを電気抵抗アレイとしてセンサに用いると、同一の有機ガスに曝露された際の電気抵抗変化がそれぞれ異なることが記載されている。これを利用して、電気抵抗変化のパターンと匂い(=有機ガスの混合物)の種類を帰属することによって匂いを識別できることが特許文献2では報告されている。
【0005】
さらに、特許文献3において、上記の有機ポリマーに対して可塑剤を添加することでセンサの応答速度が向上することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-23508号公報
【文献】特表平11-503231号公報
【文献】特表2002-519633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術には、匂いの識別性能の観点から改善の余地があった。
【0008】
本発明の一態様は、匂いの識別性能を向上させた匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物、それを用いたセンサ素子、匂いセンサおよび匂い測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明の一態様は、匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物であって、ポリウレタン樹脂(A)、界面活性剤(B)および導電性炭素材料(C)を含む樹脂組成物、それを用いたセンサ素子、匂いセンサおよび匂い測定装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、匂いの識別性能を向上させた匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物、それを用いたセンサ素子、匂いセンサおよび匂い測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る匂い測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】センサ素子の構成の一例を示す上面図である。
図3図2に示すセンサ素子の構成の一例を示す断面図である。
図4】匂い測定装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】推定装置が推定モデルを生成する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】匂い測定装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図7】推定装置が匂い物質を推定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の別の実施形態に係る匂い測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0014】
〔1.樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物であって、ポリウレタン樹脂(A)、界面活性剤(B)および導電性炭素材料(C)を含む。
【0015】
本明細書中、「匂い物質」とは、広義において匂い物質受容層に吸着可能な物質を意味する。従って、一般的に匂いの原因物質とされていない物質も含まれる。「匂い」には原因となる匂い物質が複数含まれることが多く、また、匂い物質として認知されていない物質または未知の匂い物質も存在する。本発明の一実施形態は、匂い物質受容層への匂い物質の吸着量が匂い物質の種類によって異なることに着目するものである。
【0016】
なお、本明細書中、単に「匂い物質」と記載した場合であっても、個々の匂い物質ではなく、複数の匂い物質が含まれ得る「匂い物質の集合体」を意味する場合がある。
【0017】
「匂い物質」としては特に限定されないが、例えばヘキサン、酢酸エチル、メタノール、炭酸ジエチル、トルエン、d-リモネン、ボルナン-2-オン、シス-3-ヘキセノール、β-フェニルエチルアルコール、シトラール、L-カルボン、γ-ウンデカラクトン、オイゲノール、リナリルアセテート、メントール、ベンズアルデヒド、バニリン、ヘキサナール、エタノール、吉草酸ペンチル、リナロール、2-プロパノール等が挙げられる。
【0018】
また、本明細書中、「匂い物質受容層」とは、識別対象となる匂い物質を吸着する層を意味する。匂い物質受容層は上述の樹脂組成物から形成される。匂い物質受容層は、後述のセンサ素子の一部として設けられ得る。
【0019】
引用文献1に記載のセンサでは、単体の化合物からなる匂いの検出は可能であると考えられる。一方で多くの匂いは複数の物質の混合物である。引用文献1に記載のセンサでは検出部に匂いの成分を識別させる機能がないため、混合物に対する匂い識別性能が十分でない。引用文献2では検出部に用いる導電性を示す高分子の化学構造の違いを利用して、それぞれの導電性高分子を介して検出部が示す種々の化合物に対する応答に違いを持たせることで混合物としての匂いを認識させることができることが示されている。しかしながら、導電性を示す高分子の化学構造は限られており、任意の匂い成分に対する検出部の応答を感度良く分離することが難しく、類似の成分からなる匂い同士を識別させることは難しい。引用文献3では有機ポリマーと可塑剤と導電性物質からなる混合物を検出材料として検出部に用いて匂い成分が有機ポリマー中に浸透することを上記混合物の電気抵抗変化として検出する方法を提案している。異なる組成の有機ポリマーを用いれば浸透する匂い成分が異なることを利用して異なる組成の有機ポリマーを含む上記の検出材料からなる検出部を複数並列して用いるアレイにすることで、混合物としての匂いを認識させることができる。しかしながら、上記の有機ポリマーおよび可塑剤を含有する有機ポリマーでは、有機ポリマー/導電性物質の組み合わせを複数用意したとしても、有機ポリマー同士の化学的な性質の差が小さいため、匂いの識別性能は十分でない。これらの従来技術では例えば、複数の物質が相互作用する現実の匂いパターンまたは組成が不明である物質による現実の匂いパターンを的確に検知できない。
【0020】
本発明者らは、上述した樹脂組成物に吸着した匂い物質の量に応じて樹脂組成物の電気伝導性が異なること、および、上述の樹脂組成物への吸着過程は匂い物質毎に異なっていることに着目し、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物およびセンサ素子等を発明するに至った。そして、このような樹脂組成物を用いることにより、匂いの識別性能を向上させることができる。例えば、複数の物質が相互作用する現実の匂いパターンまたは組成が不明である物質による現実の匂いパターンをも識別することができる。
【0021】
<ポリウレタン樹脂(A)>
ポリウレタン樹脂(A)としては、例えば、ポリオール(x)に由来する部分とポリイソシアネート(y)に由来する部分からなる重合体、すなわち、ポリオール(x)とポリイソシアネート(y)とを重合させてなる重合体などを挙げることができる。
【0022】
ポリウレタン樹脂(A)は、1種類のポリウレタン樹脂からなるものであってもよく、2種類以上のポリウレタン樹脂の混合物であってもよい。
【0023】
前記ポリオール(x)としては、例えば、ポリオキシアルキレンジオール(x1)およびポリエステルジオール(x2)からなる群から1種以上選択されるポリオールを挙げることができる。
【0024】
前記ポリオール(x)は、1種類のポリオールからなるものであってもよく、2種類以上のポリオール(x)の混合物であってもよい。
【0025】
前記ポリオキシアルキレンジオール(x1)は、炭素数が2~4のオキシアルキレン基を有するポリエステルジオールであることが好ましく、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、プロピレンオキサイド-エチレンオキサイド共重合ジオール(ランダムおよび/またはブロック共重合体)およびポリテトラメチレンエーテルグリコールからなる群から1種以上選択されることがより好ましい。
【0026】
前記ポリオキシアルキレンジオール(x1)の数平均分子量は、500~20,000であることが好ましく,1,000~15,000であることがより好ましく,2,000~10,000であることが更に好ましい。なお、前記数平均分子量は後述の方法にて測定され得る。
【0027】
前記ポリエステルジオール(x2)としては、例えば、炭素数2~10の脂肪族ジオールおよび芳香族ジオールからなる群から1種以上選択されるジオールと、炭素数2~10の脂肪族ジカルボン酸および炭素数8~12の芳香族ジカルボン酸からなる群から1種以上選択されるジカルボン酸との縮合により得られるポリエステルジオール等を挙げることができる。
【0028】
前記炭素数2~10の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレンジオール、プロピレンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルー1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールおよび1,10-デカンジオールなどを挙げることができる。
【0029】
前記芳香族ジオールとしては、例えば、1,4-ベンゼンジメタノールおよび1,4-ベンゼンジエタノールなどを挙げることができる。
【0030】
前記炭素数2~10の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸およびフマル酸などを挙げることができる。
【0031】
また、前記炭素数2~10の脂肪族ジカルボン酸は、環構造を有していてもよい。前述の環構造を有し、かつ、炭素数2~10である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、1,1-シクロプロパンジカルボン酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸およびビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0032】
前記炭素数8~12の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができる。
【0033】
前記ポリエステルジオール(x2)の数平均分子量は、1,000~20,000であることが好ましく、1,500~15,000であることがより好ましく、2,000~10,000であることが更に好ましい。なお、前記数平均分子量は後述の方法にて測定され得る。
【0034】
前記ポリイソシアネート(y)としては、例えば、炭素数8~16の芳香族ポリイソシアネート、炭素数5~12の鎖状脂肪族ポリイソシアネート、炭素数9~15の脂環式ポリイソシアネートなどを挙げることができる。これらのポリイソシアネートは、2~3個またはそれ以上のイソシアネート基を有してよい。
【0035】
前記ポリイソシアネート(y)は、1種類のポリイソシアネートからなるものであってもよく、2種類以上のポリイソシアネートの混合物であってもよい。
【0036】
前記炭素数8~16の芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、粗製トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニルおよび1,5-ジイソシアナトナフタレンなどを挙げることができる。
【0037】
前記炭素数5~12の鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,2,4-および2,4,4-の混合物)などを挙げることができる。
【0038】
前記炭素数9~15の脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよびノルボルナンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0039】
前記ポリウレタン樹脂(A)において、数平均分子量を元に計算したポリオール(x)のモル数とポリイソシアネート(y)のモル数とのモル比(ポリオール(x)/ポリイソシアネート(y))は、1.0~1.1であることが好ましく、1.0~1.05であることがより好ましい。
【0040】
前記ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は,好ましくは10,000~300,000であり、より好ましくは15,000~250,000であり、更に好ましくは20,000~200,000である。なお、前記数平均分子量は後述の方法にて測定され得る。
【0041】
<数平均分子量の測定条件>
本明細書において、数平均分子量は、特に限定されないが、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定され得る。なお、GPCに供する試料としては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)、ポリオキシアルキレンジオール(x1)およびポリエステルジオール(x2)等の測定対象を適当な溶媒に溶解させた後、得られた溶液をグラスフィルターにて濾過して得られる濾液を用いることができる。ポリウレタン樹脂(A)を溶解させる溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。ポリオキシアルキレンジオール(x1)を溶解させる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。ポリエステルジオール(x2)を溶解させる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。
【0042】
装置(一例) :東ソー(株)製 HLC-8120
カラム(一例):Guardcolumn α〔東ソー(株)製〕とTSK GEL
α-M〔東ソー(株)製〕とを各1本連結したもの、TSK GEL GMH6 2本
〔東ソー(株)製〕、または、TSK GEL SuperH3000〔東ソー(株)製〕とTSK GEL SuperH4000〔東ソー(株)製〕とを各1本連結したもの
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%の溶液
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
また、該数平均分子量を算出するための検量線は、基準物質として、異なる数平均分子量(500、1050、2800、5970、9100、18100、37900、96400、190000、355000、1090000、または2890000)を有する12種類の標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE、東ソー(株)製)のそれぞれを用いて得られた12個の数平均分子量の測定値に基づき、最小二乗法を用いて作成することができる。
【0043】
前記ポリエステルジオール(x2)は、例えば、公知の製造方法によって得ることができる。具体的には,撹拌装置、温度制御装置、窒素導入管付きの反応容器に、ポリオール、ポリカルボン酸および重合触媒を投入し、所定の温度にて、窒素気流下にて、生成する水を留去しながら、当該ポリオールと当該ポリカルボン酸とを4時間反応させた後、さらに5~20mmHgの減圧下にて1時間反応させることによって、ポリエステルジオール(x2)を得る方法を挙げることができる。前記重合触媒としては、例えば、テトライソプロポキシチタンなどを挙げることができる。前記所定の温度は、特に限定されないが、例えば、200℃で有り得る。
【0044】
前記ポリウレタン樹脂(A)は、例えば、公知の製造方法によって得ることができる。具体的には、以下の(1)~(3)に示す工程を含む方法を挙げることができる。
【0045】
(1)冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、構成単量体としてのポリオール(x)およびポリイソシアネート(y)、並びに、必要に応じて反応溶媒および反応触媒を導入し、常圧かつ窒素雰囲気下にて、所定の温度、例えば、約65℃にて、所定の時間、例えば、10時間撹拌して、当該ポリオール(x)と当該ポリイソシアネート(y)とを反応させる工程。ここで、前記ポリオール(x)は、ポリオキシアルキレンジオール(x1)及び/又はポリエステルジオール(x2)を含有し得る。
【0046】
(2)工程(1)の後、前記反応槽の内部に、反応停止剤を滴下し、さらに1時間撹拌を続ける工程。ここで、前記反応停止剤としては、例えば、1-ブタノールなどを挙げることができる。
【0047】
(3)工程(2)の後、前記反応槽内から、所望の濃度に希釈されたポリウレタン樹脂(A)を得る工程。
【0048】
前記反応溶媒としては,一般的に用いられる非プロトン性溶媒であれば特に限定なく用いることができる。前記反応溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)等を使用することができる。
【0049】
前記反応触媒としては、一般的にウレタン反応において用いられる触媒を用いることができる。前記反応触媒としては、例えば、アミン触媒(トリエチルアミン,N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミン(DABCO)等)、スズ触媒(ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、オクチル酸スズ等)、チタン触媒(テトラブチルチタネート等)を用いることができる。前記反応触媒の使用量は、得られるポリウレタン樹脂(A)の重量に対して0.1重量%以下である。
【0050】
前記反応温度は、ウレタン化反応において通常実施可能な温度が適当であり、例えば、20~140℃であり得、反応時間を好適な範囲に制御するとの観点から、40~100℃の範囲であることは好ましい。
【0051】
<界面活性剤(B)>
界面活性剤(B)は、特に制限はないが、8~18のHLB値を有していることが好ましく、更に好ましくは9~17であり、特に好ましくは10~16である。このようなHLB値の界面活性剤(B)を用いることによって、良好な匂い識別性能が得られる。
【0052】
ここでの「HLB値」とは、親水性と親油性のバランスを示す指標であって、例えば「界面活性剤入門」〔2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著〕212頁に記載されている小田法による計算値として知られているものであり、グリフィン法による計算値ではない。
【0053】
HLB値は有機化合物の有機性の値と無機性の値との比率から計算することができる。
【0054】
HLB=10×無機性/有機性
ここで、上式中の無機性および有機性の値は藤田らによって提案された有機性と無機性を表現する指標値を表しており、前記「界面活性剤入門」213頁に記載の表の値を用いて算出できる。
【0055】
界面活性剤(B)としては、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0056】
アニオン性界面活性剤としては、炭素数10~24のカルボン酸のアルカリ金属塩および炭素数14~24のアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0057】
前記炭素数10~24のカルボン酸としては、例えば、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ペンタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸およびテトラコサン酸等が挙げられる。
【0058】
前記炭素数14~24のアルキルスルホン酸が有するアルキル基としては、例えば、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基およびテトラコシル基等が挙げられる。
【0059】
前記アルカリ金属塩が含むアルカリ金属としては、例えば、ナトリウムおよびカリウム等が挙げられる。
【0060】
カチオン性界面活性剤としては、炭素数12~24のアルキル基を有する第4級アンモニウムのハロゲン化物塩等が挙げられる。
【0061】
前記炭素数12~24のアルキル基を有する第4級アンモニウムとしては、例えばテトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ノナデシルトリメチルアンモニウム、イコシルトリメチルアンモニウム、ヘンイコシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムおよびペンタデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0062】
前記ハロゲン化物塩としては、例えばフッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩およびヨウ化物塩等が挙げられる。
【0063】
両性界面活性剤としては、例えば、炭素数10~22のアルキル基を有するジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウム分子内塩、炭素数10~22のアルキル基を有するN-アルキル-N,N-ジメチルグリシン等が挙げられる。
【0064】
炭素数10~22のアルキル基を有するジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩としては、例えばデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ウンデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ドデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、トリデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、テトラデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ペンタデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ヘキサデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ヘプタデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、オクタデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ノナデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、イコシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ヘンイコシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩およびドコシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩等が挙げられる。
【0065】
炭素数10~22のアルキル基を有するN-アルキル-N,N-ジメチルグリシンとしては、N-ドデシル-N,N-ジメチルグリシンおよびN-オクタデシル-N,N-ジメチルグリシン等が挙げられる。
【0066】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0067】
高級アルコールとしては、1-ヘキシルアルコール、1-ヘプチルアルコール、1-オクチルアルコール、1-ノニルアルコール、1-デシルアルコール、1-ウンデシルアルコール、1-ドデシルアルコール、1-トリデシルアルコール、1-テトラデシルアルコール、1-ペンタデシルアルコール、1-ヘキサデシルアルコール、1-ヘプタデシルアルコール、1-オクタデシルアルコール等が挙げられる。
【0068】
エチレンオキサイド付加モル数は、匂い識別性能の観点から5~50が好ましく、より好ましくは5~40が好ましく、さらに好ましくは5~30である。
【0069】
界面活性剤(B)は、匂い識別性能の観点より、好ましくはアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤であり、更に好ましくはノニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤あり、最も好ましくはカチオン性界面活性剤である。
【0070】
前記ポリウレタン樹脂(A)と前記界面活性剤(B)との重量比[(A)/(B)]は、匂い識別性能の観点により、好ましくは1.0~4.0であり、更に好ましくは1.0~2.3であり、最も好ましくは1.0~1.5である。
【0071】
前記ポリウレタン樹脂(A)と前記界面活性剤(B)とは相溶していても相溶していなくても良い。
【0072】
<導電性炭素材料(C)>
本明細書において、導電性炭素材料(C)とは、体積固有抵抗が0.1Ω・cm以下の炭素材料のことである。上述の樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)と界面活性剤(B)との混合物中に導電性炭素材料(C)が分散している状態である。導電性炭素材料(C)同士が互いに接触して導電経路を形成することで樹脂組成物が導電性を有する。
【0073】
導電性炭素材料(C)としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブおよびグラフェン等が挙げられる。
【0074】
カーボンブラックの市販品としては、ケッチェンブラックEC(オランダ・アクゾ社製商品名)、ケッチェンブラックEC-300J(ライオンスペシャリティケミカルズ(株)製商品名)、ケッチェンブラックEC-600JD(ライオンスペシャリティケミカルズ(株)製商品名)、シーストG116、116(東海カーボン社製商品名)、ニテロン#10(新日鉄化学(株)社製商品名)、デンカブラック(電気化学工業(株)社製商品名)およびSUPER C-65(米国・MTI Corporation社製品名)等がある。
【0075】
カーボンナノチューブの市販品としては、VGCF-H(昭和電工(株)社製諸品名)等がある。
【0076】
グラフェンの市販品としては、シグマアルドリッチ社製がある。
【0077】
前記導電性炭素材料(C)の形状は、好ましくは繊維状または球状である。
【0078】
繊維状である場合、繊維径は好ましくは0.1~10μmであり、更に好ましくは0.1~5μmである。繊維長は好ましくは0.1~10μmであり、更に好ましくは1~10μmである。
【0079】
球状である場合、1次粒子径が好ましくは10nm~200nmであり、更に好ましくは20nm~150nmである。
【0080】
導電性炭素材料(C)の含有量は、測定時間と、測定誤差とを、小さく保つことにより、正解率を保つとの観点から、ポリウレタン樹脂(A)、イオン性界面活性剤(B)および導電性炭素材料(C)の合計100重量%に対し、好ましくは25~75重量%であり、さらに好ましくは30~65重量%であり、最も好ましくは35~55重量%である。あるいは、匂い物質の受容感度の観点からは、導電性炭素材料(C)の含有量は、ポリウレタン樹脂(A)、界面活性剤(B)および導電性炭素材料(C)の合計100重量%に対し、5~30重量%であってもよく、5~20重量%であってもよく、5~10重量%であってもよい。
【0081】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法の具体的な一例を示せば、下記の通りである。
【0082】
前記樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)、界面活性剤(B)、導電性炭素材料(C)および溶媒(D)を混合して、撹拌機で均一に混練することでスラリーとして得られる。これを2本一組の金属配線の隙間に塗工した後、加熱乾燥させて得られる乾固物が匂い物質受容層である。
【0083】
前記溶媒(D)としては、乾燥によって除去できる媒体であれば特に限定されないが、好ましくはN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、酢酸エチレン、水、トルエンおよびキシレン等が挙げられる。
【0084】
〔2.センサ素子31〕
上述した樹脂組成物は、樹脂組成物に匂い物質Aが吸着した場合と、匂い物質Aとは異なる匂い物質Bが吸着した場合とで、電気伝導性の経時的な変化が異なる。この性質を利用すれば、匂い物質を検出・識別可能なセンサ素子31を実現することができる。
【0085】
以下では、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を適用したセンサ素子31の概要および効果について説明する。
【0086】
センサ素子31は、上述の樹脂組成物を含む匂い物質受容層315、第1金属配線313A、および第2金属配線313Bを備えている。なお、以下では、第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bを区別しない場合、金属配線313と記す場合がある。
【0087】
ここで、第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bについて、図2および図3を用いて説明する。図2は、センサ素子31の構成の一例を示す上面図であり、図3は、図2に示すセンサ素子31の構成の一例を示す断面図である。
【0088】
第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bは、匂い物質受容層315(すなわち、樹脂組成物)の電気伝導性の変化を計測するための電極として機能する金属配線である。すなわち、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとは互いに離間しており、匂い物質受容層315は、第1金属配線の少なくとも一部と第2金属配線の少なくとも一部とに接している。一例において、第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bは、互いに直接接していない金属配線であり、図2に示すように、互いに略平行な金属配線であってもよい。
【0089】
図2に示すように第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bを含む金属配線313は、基板311上に配置されていてもよい。基板311は、電子回路に一般的に用いられるガラスエポキシ等の基板であり得る。金属配線313は、銅、または金等の金属配線であり得る。基板の面に対して垂直な方向から見た第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bそれぞれの太さは10μm~2mmが好ましく、更に好ましくは10μm~1mmである。基板の面に対して平行な方向から見た第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bそれぞれの高さ、すなわち厚さは1μm~100μmが好ましく、更に好ましくは10μm~50μmである。第1金属配線313Aおよび第2金属配線313Bの間隔は1μm~1mmが好ましく、更に好ましくは1μm~100μmである。金属配線313の長さは10μm~50mmが好ましく、更に好ましくは10μm~30mmである。
【0090】
金属配線313はシール基板312上に配置されていてもよい。図3は、図2のA-A断面を示している。図3に示すようにガラスエポキシ等の基板311上にシール基板312を配置し、そのシール基板312上に金属配線313が配置されていてもよい。基板311上にシール基板312を固定するためにビニールテープ314を用いていてもよい。また、ビニールテープ314は、金属配線313の余分な部分をマスクすることにより、金属配線313の露出部分の長さを調整するためにも用いられ得る。ここで、金属配線313の露出部分とは、金属配線313と匂い物質受容層315とが接する部分である。ビニールテープ314は、金属配線313と匂い物質受容層315とが接する部分の長さを調節するための絶縁体でもあり得る。
【0091】
匂い物質受容層315は、第1金属配線313Aの少なくとも一部と第2金属配線313Bの少なくとも一部とに接していてもよい。匂い物質受容層315は、例えば、図2および図3に示すように、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとに挟まれた領域を埋めるように配されていてもよい。
【0092】
匂い物質受容層315の電気伝導性(すなわち、センサ素子31の電気伝導性)が低い場合、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとの間隔は所定の距離(例えば、500μm)以下であることが望ましい。
【0093】
センサ素子31は、匂い物質Aが吸着した場合と、匂い物質Aとは異なる匂い物質Bが吸着した場合とで、電気伝導性の経時的な変化が異なる樹脂組成物を適用することにより、さまざまな匂い物質を検出したり、識別したりすることが可能である。
【0094】
〔3.匂いセンサ30〕
以下では、センサ素子31を適用した匂いセンサ30の概要および効果について、図1を用いて説明する。図1は、センサ素子31を適用した匂いセンサ30を備える匂い測定装置100の構成の一例を示すブロック図である。なお、図1に示すセンサ素子31において、ビニールテープ314は簡略化のためにその図示を省略している。
【0095】
匂いセンサ30は、匂い物質を検出するセンサ素子31、定電流源32(電源)、および電圧計33(測定機器)を備えている。
【0096】
センサ素子31の第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとはリード線Wで接続されている。図1には、リード線Wに定電流源32および電圧計33が配された例を示している。
【0097】
定電流源32は、センサ素子31に給電するための電源である。定電流源32は、センサ素子31にリード線を介して定電流(例えば、1mAの直流電流)を供給する。
【0098】
電圧計33は、定電流源32から供給された定電流を匂い物質受容層315に供給した場合に、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとの間に生じる電位差を測定する。
【0099】
匂いセンサ30は、必須の構成ではないが、筐体34をさらに備えていてもよい。筐体34は、匂い物質を含む空気を内包可能な容器である。筐体34を備えている場合、センサ素子31は筐体34内に設置される。
【0100】
筐体34は、匂い物質を導入するための導入口341および匂い物質を含む空気を排出するための排出口342を備えていている。匂い物質の導入は、導入口341から匂い物質を浸漬したろ紙P等を筐体34内に挿入することによって行われてもよいし、匂い物質を含む空気を導入口341から筐体34内に挿入することによって行われてもよい。筐体34は、匂い物質を所定の濃度(例えば、200ppm)以上含む空気を内包するための容器である。
【0101】
筐体34の排出口342には、必須では無いが、気流生成用ファン35が配されていてもよい。気流生成用ファン35は、筐体34内に気流を生じさせたり、筐体34内の気体を排出口342から筐体34外へ排出させたりするためのものである。
【0102】
なお、匂いセンサ30は、定電流源32の代替として不図示の定電圧源(電源)、電圧計33の代替として不図示の電流計(測定機器)を備えていてもよい。この場合、定電圧源は、センサ素子31に給電するための電源として機能し、センサ素子31にリード線を介して定電圧を印加する。一方、電流計は、匂い物質受容層315に定電圧が印加された場合に、第1金属配線313Aと第2金属配線313Bとの間を流れる電流値を測定する。
【0103】
匂いセンサ30は、センサ素子31に匂い物質が吸着する前後における、該センサ素子31の電気伝導性の経時的な変化を示す測定値を出力する。これにより、さまざまな匂い物質を検出したり、識別したりすることが可能である。
【0104】
〔4.匂い測定装置100〕
上述した匂いセンサ30は、センサ素子31にさまざまな匂い物質が吸着した場合、該センサ素子31の電気伝導性の経時的な変化を匂い物質毎に出力することができる。この匂いセンサ30を適用すれば、匂い物質Aがセンサ素子31に吸着した場合の該センサ素子31の電気伝導性の経時的な変化と、匂い物質Bがセンサ素子31に吸着した場合の該センサ素子31の電気伝導性の経時的な変化と比較することができる。このような比較結果に基づいて、センサ素子31に吸着した匂い物質を推定可能な匂い測定装置100を実現することができる。
【0105】
さらに、匂い測定装置100は、機械学習によって生成した推定モデル22を用いれば、高精度な匂い物質の推定を行うことができる。推定モデル22は、複数の匂い物質のそれぞれを少なくとも1つのセンサ素子31に吸着させた場合に測定される測定値と、該測定値を与えた匂い物質に固有の識別情報との組み合わせを含む学習用データを用いて生成され得る。
【0106】
以下では、匂いセンサ30を適用した匂い測定装置100の概要および効果について説明する。匂い測定装置100は、上述した樹脂組成物を適用したセンサ素子31に生じた電気伝導性の変化から、センサ素子31に吸着した匂い物質を推定する装置である。
【0107】
まず、本発明の一実施形態に係る匂い測定装置100の構成について、図1を用いて説明する。図1は、匂い測定装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0108】
図1に示すように、匂い測定装置100は、推定装置10、および匂いセンサ30を備えている。
【0109】
(推定装置10)
推定装置10は、匂いセンサ30によって検出された匂い物質を推定する装置である。推定装置10は、例えばコンピュータであり、不図示のCPUおよびメモリを備えている。推定装置10は、匂いセンサ30と通信可能に接続されている。具体的には、推定装置10は、匂いセンサ30から取得した計測値を解析することによって、匂い物質の推定を実行する。推定装置10の構成については、後に説明する。
【0110】
<推定モデル22の生成>
次に、匂い物質を推定するために用いる推定モデル22を生成する処理を行う匂い測定装置100の構成、および、推定モデル22を生成する処理について、図4および図5を用いて説明する。
【0111】
推定モデル22は、複数の匂い物質のそれぞれを少なくとも1つのセンサ素子に吸着させた場合に電圧計33によって測定される測定値と、該測定値を与えた匂い物質に固有の識別情報との組み合わせを含む学習用データを用いた機械学習によって生成される。ここで、匂い物質に固有の識別情報とは、例えば、匂い物質の名称、CAS番号、および化学式等であってもよい。
【0112】
(推定装置10の構成(推定モデル22の生成))
図4は、匂い測定装置100の構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、説明の便宜上、図1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0113】
図4に示すように、推定装置10は、入力部15、制御部1、記憶部2を備えている。
【0114】
入力部15は、ユーザからの各種入力操作を受付けるためのものであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等であってもよい。
【0115】
制御部1は、測定値取得部11(取得部)、変化パターン解析部12(解析部)、学習制御部13、および推定モデル生成部14を備えている。
【0116】
測定値取得部11は、電圧計33から測定値を取得する。また測定値取得部11は、取得した測定値を用いて、センサ素子31の電気伝導性を示す値(例えば、抵抗値、およびインピーダンスなど)を算出する。測定値取得部11は、電圧計33から所定の時間間隔(例えば0.1秒間隔)で測定値を取得してもよい。
【0117】
変化パターン解析部12は、少なくとも1つのセンサ素子31の電気伝導性の経時的な変化を解析する。変化パターン解析部12は、測定値取得部11によって算出された抵抗値を用いて、匂い物質が吸着したことによるセンサ素子31の電気伝導性の変化量を示す値を算出する。変化パターン解析部12は、算出した電気伝導性の変化量の時間変化を示す変化パターンを示すデータを生成する。変化パターン解析部12は、生成した変化パターンが既知の匂い物質である場合、生成した変化パターンを該既知の匂い物質に固有の識別情報と対応付けて、変化パターンデータベース21(学習用データ)に格納してもよい。
【0118】
学習制御部13は、記憶部2から変化パターンデータベース21を読み出して、機械学習による推定モデル22の生成を制御する。ここで、変化パターンデータベース21は、複数の匂い物質をセンサ素子31に吸着させた場合に測定される測定値と、該測定値を与えた既知の匂い物質に固有の識別情報との組み合わせを含むデータベースである。学習制御部13は、変化パターンデータベース21から読み出した変化パターンを推定モデル生成部14に入力する。また、学習制御部13は、推定モデル生成部14に入力した変化パターンに対応する匂い物質の識別情報と、推定モデル生成部14から出力される推定結果とを比較し、比較結果に応じた補正指示を推定モデル生成部14に出力する。
【0119】
推定モデル生成部14は、変化パターンデータベース21に格納されている変化パターンを用いた機械学習アルゴリズムによって、推定モデル22を生成する。推定モデル生成部14は、公知の教師有り機械学習アルゴリズムを用いて推定モデル22を生成する構成であってもよい。推定モデル生成部14に適用可能な機械学習アルゴリズムとしては、例えば、k近似法(k-nearest neighbor method)、ロジスティック回帰、サポートベクトルマシン、ランダムフォレスト、およびニューラルネットワーク等が挙げられる。
【0120】
(推定モデル22を生成する処理)
以下、制御部1の各部が行う具体的な処理については、図5を用いて説明する。図5は、推定装置10が推定モデル22を生成する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0121】
まず、測定値取得部11は、匂い物質を浸漬させたろ紙Pを筐体34へ挿入する前の匂いセンサ30において測定された電圧値V0を取得し、抵抗値R0を算出する(ステップS11)。抵抗値R0は、好ましくは200~1000Ωであり、さらに好ましくは250~900Ωであり、最も好ましくは300~800Ωである。
【0122】
一方、入力部15は、筐体34内に挿入したろ紙Pに浸漬させた既知の匂い物質の名称等の入力を受け付ける(ステップS12)。ステップS12の処理はステップS11の前に行ってもよい。
【0123】
次に、測定値取得部11は、既知の匂い物質を浸漬させたろ紙Pを筐体34へ挿入した直後からの、匂いセンサ30において測定された電圧値Vを取得し、抵抗値Rを算出する(ステップS13)。
【0124】
続いて、変化パターン解析部12は、抵抗値R0および抵抗値Rを用いて、R/R0を算出する(ステップS14)。R/R0は、既知の匂い物質が吸着したことによる、センサ素子31の電気伝導性の変化量を示す値である。なお、変化パターン解析部12は、R/R0の代わりに、R-R0を算出してもよい。変化パターン解析部12は、R/R0の経時的な変化パターンを、入力された既知の匂い物質の名称と対応付けて変化パターンデータベース21に格納する(ステップS15)。
【0125】
所定種類の既存の匂い物質について変化パターンが記憶されていない場合(ステップS16にてNO)、すなわち、機械学習に用いるデータがまだ不足している場合、ステップS11に戻る。
【0126】
所定種類の既存の匂い物質について変化パターンが記憶された場合(ステップS16にてYES)、学習制御部13は、変化パターンデータベース21に記憶されている、既知の匂い物質についての変化パターンを読み出して、推定モデル生成部14に入力する。推定モデル生成部14は、変化パターンデータベース21に格納されている変化パターンを用いた機械学習アルゴリズムによって、推定モデル22を生成する(ステップS17)。
【0127】
推定モデル生成部14は、所定の機械学習によって生成した推定モデル22を記憶部2に格納する(ステップS18)。
【0128】
図4および図5に示す例では、推定装置10が推定モデル22を生成しているが、これに限定されない。例えば、推定装置10とは異なる外部のコンピュータであって、学習制御部13および推定モデル生成部14と同じ機能を備えるコンピュータに変化パターンデータベース21と同じデータを提供して、推定モデル22を作成させてもよい。
【0129】
<匂い物質の推定>
次に、推定モデル22を用いて匂い物質を推定する匂い測定装置100aの構成、および、推定処理について、図6および図7を用いて説明する。
【0130】
(推定装置10aの構成(推定処理の実行))
図6は、匂い測定装置100aの構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、説明の便宜上、図1および図4にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0131】
図6に示すように、推定装置10aは、制御部1a、記憶部2a、および出力部18を備えている。ここで、図6は、図4に示す推定装置10を、匂い物質の推定処理に利用した場合の構成例を示している。すなわち、図4に示す推定装置10と図6に示す推定装置10aとは、同じハードウェア構成を備えるコンピュータであってもよい。
【0132】
出力部18は、ユーザに推定結果を提示するためのものであり、例えば、ディスプレイ、スピーカ、ランプ等であってもよい。
【0133】
制御部1aは、測定値取得部11(取得部)、変化パターン解析部12(解析部)、推定部16、および出力制御部17を備えている。
【0134】
推定部16は、推定モデル22を用いて、匂いセンサ30から取得した測定値を解析した解析結果から匂い物質を推定する。
【0135】
出力制御部17は、推定結果を出力するように出力部18を制御する。
【0136】
(推定処理)
以下、制御部1aの各部が行う具体的な処理については、図7を用いて説明する。図7は、推定装置10aが匂い物質を推定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0137】
まず、測定値取得部11は、匂い物質を浸漬させたろ紙Pを筐体34へ挿入する前の匂いセンサ30において測定された電圧値V0を取得し、抵抗値R0を算出する(ステップS1)。
【0138】
次に、測定値取得部11は、未知の(すなわち、推定対象の)匂い物質を浸漬させたろ紙Pを筐体34へ挿入した直後からの、匂いセンサ30において測定された電圧値Vを取得し、抵抗値Rを算出する(ステップS2)。
【0139】
続いて、変化パターン解析部12は、抵抗値R0および抵抗値Rを用いて、R/R0を算出する(ステップS3)。
【0140】
次に、推定部16は、推定モデル22に基づいて、R/R0の経時的な変化パターンから未知の匂い物質を推定する(ステップS4)。
【0141】
出力制御部17は、出力部を制御して、推定結果を出力する(ステップS5)。
【0142】
<実施形態2>
上述の実施形態では、1つのセンサ素子31を備える匂いセンサ30について説明したが、匂いセンサ30が2以上のセンサ素子31を備えていてもよい。例えば、匂いセンサ30bは、匂い物質受容層315に用いた樹脂組成物が互いに異なるセンサ素子31、31bを備えていてもよい。このことについて、図8を用いて説明する。図8は、本発明の別の実施形態に係る匂い測定装置100bの構成の一例を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、図1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0143】
例えば、図8に示す匂い測定装置100bは、匂いセンサ30、30bおよび推定装置10bを備えている。匂いセンサ30bは、センサ素子31およびセンサ素子31bを備えており、センサ素子31の匂い物質受容層315と、センサ素子31bの匂い物質受容層315bとでは、用いられている樹脂組成物が異なっていてもよい。
【0144】
推定装置10bは、推定装置10、10aと同じ構成を備えるコンピュータであってもよい。推定装置10bは、定電流源32からセンサ素子31に定電流を供給した場合に電圧計33によって測定される第1測定値と、定電流源32bからセンサ素子31bに定電流を供給した場合に電圧計33bによって測定される第2測定値とをそれぞれ取得し解析する。
【0145】
匂い物質を吸着する特性が異なる樹脂組成物を匂い物質受容層に用いたセンサ素子を複数備えることにより、匂い測定装置100bは、複数の匂い物質についての推定を同時に実行することができる。なお、本発明の一実施形態に係るセンサ素子に加えて、匂い物質受容層に界面活性剤(B)を含まないセンサ素子を併用してもよい。
【0146】
また、匂い測定装置100bを用いれば、既知の匂い物質のそれぞれについて、センサ素子31の電気伝導性の変化を示す第1変化パターンと、センサ素子31bの電気伝導性の変化を示す第2変化パターンとを得ることが可能である。推定モデル22は、第1変化パターンおよび第2変化パターンの両方を用いた機械学習によって生成されてもよい。匂い測定装置100bは、このように生成された推定モデル22を用いて匂い物質を推定するため、各匂い物質をより精密に識別することが可能である。
【0147】
<ソフトウェアによる実現例>
推定装置10、10a、10bの制御ブロック(特に制御部1)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0148】
後者の場合、推定装置10、10a、10bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路等を用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)等をさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0149】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0150】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0151】
[製造例1~11]
<ポリエステルジオール(x2)の作製>
攪拌翼、撹拌装置、窒素流入口および流出口を備えた反応容器に、加熱冷却装置、温度計、温度調節装置、重合触媒導入管および窒素導入管を取り付けた。この反応容器は、反応容器内部を減圧可能なシール構造を有している。前記反応容器内に、表1に記載の重量部にて、ジオールとジカルボン酸とを加え、さらに重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート0.5重量部を投入した。その後、前記反応容器を、撹拌しながら200℃まで昇温し、窒素気流を流しつつ、副生する水を留去しながら5時間かけて、前記ジオールと前記ジカルボン酸とを反応させた。続いて、前記反応容器内部の圧力を10mmHgに減圧した後、さらに1時間、前述の反応を進行させることによって、ポリエステルジオール(x2-1)~(x2-11)を得た。
【0152】
得られたポリエステルジオール(x2)の各数平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件で測定し、その結果を表1に記載した。
【0153】
装置 :東ソー(株)製 HLC-8120
カラム :TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
また、数平均分子量の測定は、ポリエステルジオール(x2)をTHFに溶解させ、不溶解分をグラスフィルターで濾別したものを試料溶液として行った。
【0154】
【表1】
【0155】
[製造例12~28]
<ポリウレタン樹脂(A)の作製>
表2に記載のポリオール(x)とポリイソシアネート(y)を用いて、以下に示す方法にて、ポリウレタン樹脂(A)を得た。
【0156】
具体的には、攪拌翼、撹拌装置、窒素流入口および流出口を備えた反応容器に、加熱冷却装置、温度計、温度調節装置、重合触媒導入管および窒素導入管を取り付けた。この反応容器は、反応容器内部を減圧可能なシール構造を有していた。前記反応容器内に表2に記載の重量部にて、ポリオキシアルキレンジオール(x1)及び/又はポリエステルジオール(x2)を含有するポリオール(x)と、ポリイソシアネート(y)とを加え、さらに、反応溶媒と反応触媒としてジブチルスズジラウレートとを投入した。その後、前記反応容器内部を、常圧かつ窒素雰囲気下とし、前記反応容器内部の温度を65℃に昇温させ、当該温度を保ちながら、前記反応容器内部を10時間かけて撹拌し、前記ポリオール(x)と前記ポリイソシアネート(y)とを反応させた。続いて、撹拌後に、前記反応容器内部に、反応停止剤として1-ブタノール5部を加えた後、さらに前記反応容器内部の撹拌を1時間続けた。その結果、ポリウレタン樹脂(A‐1)~(A-17)を得た。なお、前記反応溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)を使用した。
【0157】
得られたポリウレタン樹脂(A)の各数平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件で測定し、その結果を表3に記載した。
【0158】
装置 :東ソー(株)製 HLC-8120
カラム :TSK GEL SuperH3000〔東ソー(株)製〕と、TSK GEL SuperH4000〔東ソー(株)製〕とを各1本連結したもの
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のDMF(ジメチルホルムアミド)溶液
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
また、数平均分子量の測定は、ポリウレタン樹脂(A)をDMFに溶解させ、不溶解分をグラスフィルターで濾別したものを試料溶液として行った。
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【0161】
[製造例29~41]
<高級アルコールエチレンオキサイド付加物の作製>
反応容器内部を減圧または加圧可能なシール構造を有する攪拌翼、撹拌装置、窒素流入口、流出口およびエチレンオキサイド流入口を備えた反応容器に、加熱冷却装置、温度計、圧力計、温度調節装置および窒素導入管を取り付けた。前記反応容器に、窒素雰囲気下、30部のモレキュラーシーブス3Aで2時間乾燥させた表4に記載の重量部の高級アルコール、触媒である水酸化カリウム3部を仕込み、減圧窒素置換を行った。前記反応容器内部を、160℃まで昇温し、表4に記載の重量部のエチレンオキサイドを反応容器内部の圧力が0.5MPa(G)となるよう流量を調整しながら滴下して反応させた。滴下終了後1時間撹拌を続け、その後、前記反応容器内部の温度を室温まで降温させ、高級アルコールエチレンオキサイド付加物(NS-1)~(NS-13)を得た。
【0162】
【表4】
【0163】
[実施例1~236、比較例1~17]
<スラリーの作製>
ポリウレタン樹脂(A)、界面活性剤(B)、導電性炭素材料(C)および溶媒(D)としての酢酸エチルを表5~20に記載した量でポリプロピレン製容器に量り取り、混合物を得た。当該混合物を、自転・公転ミキサー((株)シンキー社製ARE-310)を用いて2000回転/分で60分間撹拌して、スラリーを得た。当該スラリーを、匂い物質受容層を形成するための樹脂組成物として用いた。なお、下記表5~20において、「(A)/(B)比率」とは、ポリウレタン樹脂(A)と界面活性剤(B)との重量比を意味する。
【0164】
表5~20に記載の、高級アルコールエチレンオキサイド付加物以外の界面活性剤(B)は東京化成工業(株)で市販されているものを用いた。また、高級アルコールエチレンオキサイド付加物については前記の方法で調製した(NS-1)~(NS-13)を用いた。
【0165】
表5~20に記載の導電性炭素材料(C)は、SUPER-C65(カーボンブラック)はMTI Corporation社製、VGCF-H(カーボンナノチューブ)は昭和電工(株)社製、デンカブラック(カーボンブラック)はデンカ(株)社製、ケッチェンブラックEC-300J(カーボンブラック)およびケッチェンブラックEC-600JD(カーボンブラック)はライオンスペシャリティケミカル(株)社製をそれぞれ用いた。
【0166】
<センサ素子の作製>
間隙幅500μmの複数の金属配線を備えたシール基板(ICB-073、サンハヤト(株)製)から、2本1組の金属配線を含むシール基板を切り出した。切り出したシール基板を、さらに金属配線の長さが3.5cmとなるように切断した。
【0167】
切断されたシール基板をガラス板の上に、金属配線が上になるよう両面テープで貼り付けた。また、金属配線の露出部分の長さが3.0cmとなるように、金属配線の余分な部分にビニールテープを貼り付けてマスクした。ついで、前記の方法で調製したそれぞれのスラリーを、バーコーター(No.4)を用いて金属配線の露出部に塗布した。塗布後、100℃に加熱した順風乾燥機で3時間乾燥させた。乾燥後、室温まで冷却してから、匂い物質受容層を備えた金属配線をガラス板から剥離して、センサ素子(E-1)~(E-236)および比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)を得た。
【0168】
【表5】
【0169】
【表6】
【0170】
【表7】
【0171】
【表8】
【0172】
【表9】
【0173】
【表10】
【0174】
【表11】
【0175】
【表12】
【0176】
【表13】
【0177】
【表14】
【0178】
【表15】
【0179】
【表16】
【0180】
【表17】
【0181】
【表18】
【0182】
【表19】
【0183】
【表20】
【0184】
[実施例237~462、比較例18~34]
<樹脂組成物およびセンサ素子の評価>
樹脂組成物の評価は、センサ素子(E)および比較用センサ素子(E’)から得られるデータを比較することで行うことができる。
【0185】
<測定方法>
検体(匂い物質)を導入する導入口と検体が均一に広がるようエアフローを作るためのファンとを備えた筐体を作製した。端子を外部へ取り出すためのリード線をはんだ付けしたセンサ素子(E-1)~(E-226)および比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)のうち、評価対象のセンサ素子を筐体内に設置した。
【0186】
筐体外部に取り出したリード線の末端に1mAの定電流電源と、リード線の両端子にかかる電圧を測定するための電圧計を取りつけ、電圧計の測定値をコンピュータで記録した。
【0187】
筐体内の検体の濃度が200ppmとなるようにろ紙に検体を浸漬させ、当該ろ紙を導入口から挿入した。ろ紙の挿入後すぐに測定を開始した。測定開始から60秒後に再びファンを60秒間回転させ、筐体内の蒸気を外部に排出させながら測定を行った。なお、電圧の測定は0.1秒間隔で実施した。また、測定は同じ条件につき、100回繰り返し行った。
【0188】
検体としては、ヘキサン、酢酸エチル、メタノール、炭酸ジエチル、またはトルエンを用いた。
【0189】
<評価方法>
各時間で測定された電圧と定電流電源から供給される電流値1mAを用いて、オーム法則から電気抵抗Rを算出した。検体導入前の抵抗R0を予め測定しておき、R/R0を算出した。
【0190】
R/R0の0.1秒間隔の時間変化を用いて各々の検体に対するセンサ素子の応答性を、k近傍法を使用して分析した。センサ素子(E-1)~(E-226)または比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)について、前記の測定を行い、各実施例および各比較例に該当する100回×5検体=計500回分の測定データを学習データ数:テストデータ数=80:20となるようランダムに分割し、学習データに対してk近傍法による分類器(学習モデル)を作成した。各実施例および比較例の分類器についてテストデータを分類させた際の正解率をセンサ素子の性能指標とし、正解率が高いほどセンサ素子としての性能が高いと判断できる。各実施例における分類器の作成および正解率算出には、対応するセンサ素子(E)によって得られたデータと当該センサ素子(E)と同一のポリウレタン樹脂(A)を用いた比較用センサ素子(E’)によって得られたデータの両方を用いた。
【0191】
<評価結果>
評価結果を以下に示す。
【0192】
【表21】
【0193】
【表22】
【0194】
【表23】
【0195】
【表24】
【0196】
【表25】
【0197】
【表26】
【0198】
実施例1~226にて製造されたセンサ素子を使用した匂いセンサと比較例1~17にて製造されたセンサ素子を使用した匂いセンサのそれぞれにおける、前記性能評価にて算出された正解率を比較する。
【0199】
例えば、センサ素子(E-1)を用いた、実施例237の匂いセンサの正解率は72%である一方、センサ素子(E-1)と同一のポリウレタン樹脂(A)を使用している比較用センサ素子(E’-9)を用いた、比較例26の匂いセンサの正解率は27%であった。
【0200】
表21~26に記載の通り、センサ素子(E-1)~(E-226)を用いた、実施例237~462の匂いセンサの正解率は、比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)を用いた、比較例18~34の匂いセンサの正解率よりも高かった。
【0201】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物およびこれを用いたセンサ素子を用いた匂いセンサは、良好な匂い識別性能を有すると言える。
【0202】
また、導電性炭素材料(C)の含有量が増加するほど、Rmax/R0の値は低下する傾向にあった。Rmax/R0の値が小さいほど測定誤差が増えるため、Rmax/R0の値は大きいほど良い。
【0203】
[実施例463~472]
<導電性炭素材料(C)の含有量の評価>
導電性炭素材料(C)の含有量を変化させることで、測定開始直後のR/R0の値を制御できる。前記と同じ方法で、各センサ素子(E-227)~(E-236)を用いてR/R0を測定した。測定終了後、測定開始から1秒後におけるR/R0を抽出し、表27に記載した。また、測定中のRの最大値をRmaxとして、Rmax/R0(%)の値も表27に併せて記載した。
【0204】
【表27】
【0205】
表27に記載のとおり、導電性炭素材料(C)が増えるほど、具体的には25重量%以上である場合に、測定開始1秒後のR/R0の値が増大し、導電性炭素材料(C)の含有量30重量%以上の範囲である場合に、測定開始1秒後のR/R0の値が特に顕著に増大する。測定開始1秒後のR/R0が大きいほど測定時間の短縮および消費電力の削減につながるため、導電性炭素材料(C)の含有量は、25重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることが特に好ましいと言える。なお、導電性炭素材料(C)の含有量が75重量%以下であると、シール基板に対する導電性炭素材料(C)の密着性がより良好であり、センサ素子(E)により適していた。
【0206】
一方、表27に記載のとおり、導電性炭素材料(C)の含有量が増加するほどRmax/R0の値は低下し、測定誤差が増える。しかしながら、実施例463~472における、導電性炭素材料(C)の含有量が75重量%以下の範囲においては、Rmax/R0の値は大きく低下しておらず、測定誤差は小さく保たれていると考えられる。そのため、測定時間および測定誤差を小さく保つことにより正解率を保つことの観点から、導電性炭素材料(C)の含有量は、好ましくは25~75重量%であり、さらに好ましくは30~65重量%であり、最も好ましくは35~55重量%であると言える。
【0207】
[実施例473、比較例35]
<匂いセンサおよび匂い測定装置の評価>
匂いセンサおよび匂い測定装置の評価は、下記のシステムに組み込んだセンサ素子(E-1)~(E-226)を用いて匂いを識別させた際の正解率と比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)を用いて匂いを識別させた際の正解率とを比較することで行うことができる。
【0208】
<測定方法>
検体(匂い)を導入する導入口と検体が均一に広がるようエアフローを作るためのファンとを備えた筐体を作製した。端子を外部へ取り出すためのリード線をそれぞれはんだ付けしたセンサ素子(E-1)~(E-226)を筐体内に格納した匂いセンサ(F)、比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)を筐体内に格納した比較用匂いセンサ(F’)を用いた。
【0209】
筐体外部に取り出したリード線の末端に1mAの定電流電源と、リード線の両端子にかかる電圧を測定するための電圧計を取りつけ、電圧計の測定値をコンピュータで記録した。
【0210】
筐体内の検体の濃度が200ppmとなるようにろ紙に検体を浸漬させ、当該ろ紙を導入口から挿入した。ろ紙の挿入後すぐに測定を開始した。測定開始から60秒後に再びファンを60秒間回転させ、筐体内の蒸気を外部に排出させながら測定を行った。なお、電圧の測定は0.1秒間隔で実施した。また、測定は同じ条件につき、100回繰り返し行った。
【0211】
検体としては、d-リモネン、ボルナン-2-オン、シス-3-ヘキセノール、β-フェニルエチルアルコール、シトラール、L-カルボン、γ-ウンデカラクトン、オイゲノール、リナリルアセテートを用いた。検体はいずれも東京化成工業(株)社製のものを用いた。
【0212】
<評価方法>
各時間で測定された電圧と定電流電源から供給される電流値1mAとを用いて、オーム法則から電気抵抗Rを算出した。検体導入前の抵抗R0を予め測定しておき、R/R0を算出した。
【0213】
R/R0の0.1秒間隔の時間変化を用いて各々の検体に対するセンサ素子の応答性を、k近傍法を使用して分析した。匂いセンサ(F)および比較用匂いセンサ(F’)について、前記の測定を行い、それぞれのセンサについて100回×9検体=計900回分の測定データを学習データ数:テストデータ数=80:20となるようランダムに分割し、学習データに対してk近傍法による分類器(学習モデル)を作成した。各実施例および比較例の分類器についてテストデータを分類させた際の正解率を匂いセンサの性能指標とし、正解率が高いほどセンサとしての性能が高いと判断できる。
【0214】
<評価結果>
上記の測定の結果、匂いセンサ(F)の正解率は75%、比較用匂いセンサ(F’)の正解率は31%となり、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物およびこれを用いたセンサ素子を用いた匂いセンサが良好な匂い識別性能を有すると言える。
【0215】
[実施例474~699、比較例36~52]
<混合物である検体を用いた際の評価>
<混合物である検体の調製方法>
前記単体の検体に加えて、混合物である検体を次の方法で調製した。メントール、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、バニリン、ヘキサナール、エタノール、吉草酸ペンチル、リナロール、2-プロパノールをそれぞれ200ppmの気体となるようデシケーター内で調製し、混合物原料とした。次いで、三方コックとセプタムゴムを取り付けた500mLの2口ナスフラスコを真空減圧後に密封した。各混合物原料から下記の体積をシリンジで採取し、密封した2口ナスフラスコのゴムセプタムから注入した。
混合物検体1:
メントール(150mL)
ベンズアルデヒド(150mL)
酢酸エチル(150mL)
混合物検体2:
バニリン(150mL)
ヘキサナール(150mL)
エタノール(150mL)
混合物検体3:
吉草酸ペンチル(150mL)
リナロール(150mL)
2-プロパノール(150mL)
<混合物である検体を含む測定方法>
実施例237~462、比較例18~34と同様に、センサ素子(E-1)~(E-226)および比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)のうち、評価対象のセンサ素子を筐体内に設置した。定電流電源、電圧計、コンピュータも同様に配置した。
【0216】
前記の方法で調製した混合物検体20mLをシリンジで採取し、当該混合物検体を導入口から注入した。混合物検体の注入後すぐに測定を開始した。測定開始から60秒後に再びファンを60秒間回転させ、筐体内の蒸気を外部に排出させながら測定を行った。なお、電圧の測定は0.1秒間隔で実施した。また、測定は同じ条件につき、100回繰り返し行った。
【0217】
<混合物である検体を用いた際の評価方法>
上記の方法で得られたデータと前記の単体である検体について行った測定により得られたデータ(実施例237~462、比較例18~34)とを利用して、前記の単体である検体について行った評価方法と同様の方法で評価を行い、正解率を算出した。すなわち、以下の方法で評価を行った。
【0218】
各時間で測定された電圧と定電流電源から供給される電流値1mAを用いて、オーム法則から電気抵抗Rを算出した。検体導入前の抵抗R0を予め測定しておき、R/R0を算出した。
【0219】
R/R0の0.1秒間隔の時間変化を用いて各々の検体に対するセンサ素子の応答性を、k近傍法を使用して分析した。センサ素子(E-1)~(E-226)または比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)について、前記の測定を行い、各実施例および各比較例に該当する100回×8検体=計800回分の測定データを学習データ数:テストデータ数=80:20となるようランダムに分割し、学習データに対してk近傍法による分類器(学習モデル)を作成した。各実施例および比較例の分類器についてテストデータを分類させた際の正解率をセンサ素子の性能指標とし、正解率が高いほどセンサとしての性能が高いと判断できる。各実施例における分類器の作成および正解率算出には、対応するセンサ素子(E)によって得られたデータと当該センサ素子(E)と同一のポリウレタン樹脂(A)を用いた比較用センサ素子(E’)によって得られたデータの両方を用いた。
【0220】
<混合物である検体を用いた際の評価結果>
評価結果を以下に示す。
【0221】
【表28】
【0222】
【表29】
【0223】
【表30】
【0224】
【表31】
【0225】
【表32】
【0226】
【表33】
【0227】
実施例474~699、比較例36~52に記載の匂いセンサのそれぞれにおける、前記性能評価にて算出された正解率を比較する。
【0228】
例えば、センサ素子(E-1)を用いた、実施例474の匂いセンサの正解率は67%である一方、センサ素子(E-1)と同一のポリウレタン樹脂を使用している比較用センサ素子(E’-9)を用いた、比較例44の匂いセンサの正解率は40%であった。
【0229】
表28~33に記載の通り、センサ素子(E-1)~(E-226)を用いた、実施例474~699の匂いセンサの正解率は、比較用センサ素子(E’-1)~(E’-17)を用いた、比較例36~52の匂いセンサの正解率よりも高かった。
【0230】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物およびこれを用いたセンサ素子を用いた匂いセンサは、検体が混合物である場合であっても、良好な匂い識別性能を有すると言える。
【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明は、医療用、ガス検知用、農業用およびその他工業や生活に用いられる匂い識別センサとして有用である。例えば、農家が香りのある作物の成熟具合を前記匂い識別センサを用いて判定して、最適な収穫タイミングを管理することもできる。また、食品または化粧品などの製品の匂いを匂い識別センサでデータ化して、製品開発の効率向上および品質安定化を支援することもできる。
【符号の説明】
【0232】
10、10a、10b 推定装置
11 測定値取得部(取得部)
12 変化パターン解析部(解析部)
16 推定部
30、30b 匂いセンサ
31、31b センサ素子
32、32b 定電流源(電源)
33、33b 電圧計(測定機器)
100、100a、100b 匂い測定装置
313A 第1金属配線
313B 第2金属配線
315、315b 匂い物質受容層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8