(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】無線アクセスネットワークの制御装置
(51)【国際特許分類】
H04W 28/084 20230101AFI20240925BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20240925BHJP
H04W 92/16 20090101ALI20240925BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240925BHJP
【FI】
H04W28/084
H04W24/02
H04W92/16
H04W16/28 130
(21)【出願番号】P 2021161470
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2023-07-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目 3 端末拡張型無線通信システム構築・制御技術 副題:Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】塚本 優
(72)【発明者】
【氏名】伊神 皓生
(72)【発明者】
【氏名】新保 宏之
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0376338(US,A1)
【文献】特表2022-504867(JP,A)
【文献】特表2018-538751(JP,A)
【文献】相原 直紀 Naoki Aihara,電子情報通信学会2021年通信ソサイエティ大会講演論文集1 PROCEEDINGS OF THE 2021 IEICE COMMUNICATIONS SOCIETY CONFERENCE,2021年08月31日,S47-S48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる地理的位置に配置された複数のアクセスポイント(AP)と、異なる地理的位置に配置された複数の計算機群と、を含み、前記複数の計算機群の内のいずれかの計算機群に変調処理を含む機能ユニットを実現し、当該機能ユニットが前記複数のAPの内の1つ以上のAPにユーザ装置(UE)宛の変調信号を送信し、前記1つ以上のAPが当該UEに前記変調信号に対応する無線信号を送信する、無線アクセスネットワーク(RAN)を制御する制御装置であって、
前記複数の計算機群の内の第1計算機群に前記機能ユニットを実現し、かつ、前記複数のAPの内の前記第1計算機群に接続するAPから複数の第1APを含む第1APクラスタを選択することで、第1種別のサービスを提供するための第1高次RANスライスを設定する第1設定手段と、
第1ユーザ装置(UE)と前記第1APクラスタに含まれる前記複数の第1APそれぞれとの間の無線通信状況に基づき、前記第1UEに無線信号を送信する1つ以上の第1APを含む第1APサブクラスタを、前記第1APクラスタに含まれる前記複数の第1APから選択することで、前記第1種別のサービスを前記第1UEに提供するための第1低次RANスライスを設定する第2設定手段と、
を備え、
前記複数の計算機群の内の1つの計算機群は中央サイトに配置され、前記複数の計算機群の内の前記1つの計算機群とは異なる計算機群それぞれは、前記中央サイトと第1伝送路で接続される複数のエッジサイトそれぞれに配置され、前記複数のエッジサイトのそれぞれは、前記複数のAPの内の1つ以上のAPそれぞれと第2伝送路で接続され、
前記第1計算機群が、前記中央サイトに配置されている前記1つの計算機群である場合、前記第1APクラスタは、前記複数のAPから選択され、
前記第1計算機群が、前記複数のエッジサイトの内の第1エッジサイトに配置されている計算機群である場合、前記第1APクラスタは、前記複数のAPの内の前記第1エッジサイトに前記第2伝送路で接続されているAPから選択されることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第2設定手段は、
第2UEと前記第1APクラスタに含まれる前記複数の第1APそれぞれとの間の無線通信状況に基づき、前記第2UEに無線信号を送信する1つ以上の第1APを含む第2APサブクラスタを、前記第1APクラスタに含まれる前記複数の第1APから選択することで、前記第1種別のサービスを前記第2UEに提供するための第2低次RANスライスを設定することを特徴とする請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2設定手段は、前記第1UEが前記第1種別のサービスの利用を停止すると、前記第1低次RANスライスを削除することを特徴とする請求項1
又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1設定手段は、前記複数のAPによるサービス提供範囲内に、前記第1種別のサービスを利用しているUEが無い場合、前記第1高次RANスライスを削除することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1設定手段は、前記複数のAPによるサービス提供範囲内に、前記第1種別のサービスを利用しているUEが無い場合でも、前記第1高次RANスライスを維持することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1設定手段は、前記第1種別のサービスを利用しているUEの数と、前記第1種別のサービスの利用を要求しているUEの数と、前記第1種別のサービスを利用しているUEの位置と、前記第1種別のサービスの利用を要求しているUEの位置と、前記第1種別のサービスの現在のトラフィック量と、前記第1種別のサービスの将来のトラフィック量の推定値と、前記第1種別のサービスが満たすべき品質条件と、の内の少なくとも1つに基づき、前記機能ユニットを実現する前記第1計算機群を前記複数の計算機群から選択することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1設定手段は、前記第1高次RANスライスを提供するための前記機能ユニットを実現する計算機群と、前記第1APクラスタに含まれる前記複数の第1APの変更が必要か否かを判定し、
前記第2設定手段は、前記第1低次RANスライスを提供するための前記第1APサブクラスタに含まれる前記1つ以上の第1APの変更が必要か否かを判定し、
前記第2設定手段による判定の頻度は、前記第1設定手段による判定の頻度より高いことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1設定手段を有する第1制御装置と、前記第2設定手段を有する第2制御装置と、を含むことを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記複数の計算機群の内の1つ以上の計算機群の計算リソースを使用して実現されていることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記制御装置の機能を実現するのに必要な計算リソースと、前記制御装置の機能を前記1つ以上の計算機群で実現した場合に制御信号の送受信に必要な前記第1伝送路及び前記第2伝送路の伝送路リソースと、前記制御装置のために利用可能な前記複数の計算機群それぞれの計算リソースと、前記制御信号の送受信のために利用可能な前記第1伝送路及び前記第2伝送路の伝送路リソースと、に基づき、前記制御装置の機能を実現する前記1つ以上の計算機群を前記複数の計算機群から選択することを特徴とする請求項
9に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想無線アクセスネットワーク(vRAN)、つまり、無線アクセスネットワーク(RAN)の仮想化技術に関し、より詳しくは、RANスライスを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークの仮想化技術をRANに適用したvRANが提案されている。例えば、O-RANアライアンスは、基地局装置の機能を中央ユニット(CU)、分散ユニット(DU)及び無線ユニット(RU)の3つに分割して定義している。なお、CUは、PDCPレイヤ以上のレイヤを処理し、DUは、RLCレイヤから高次物理レイヤまでを処理し、RUは、低次物理レイヤ以下のレイヤを処理する。
【0003】
アナログ領域の信号を扱うRUには専用ハードウェアを用いる必要があるが、デジタル領域での信号処理のみを行うCU及びDUの機能は、例えば、汎用の計算機に適切なプログラムを実行させることにより実現することができる。RUの配置は、サービス提供領域を決定するため、RUは多くの異なる地理的位置に配置される。以下の説明において、RUが配置されるサイトをアンテナサイトとして参照する。一方、CU及びDUは、多くのエッジサイトと、複数のエッジサイトを束ねる中央サイトに配置された1つ以上の計算機(以下、計算機群と表記)上に動的に配置され得る。1つの中央サイトは、複数のエッジサイトと伝送路により接続される。なお、1つの中央サイトと、複数のエッジサイトの内の1つのエッジサイトとは同じサイトであり得る。同様に、1つのエッジサイトは、1つ以上のアンテナサイトと伝送路で接続される。なお、1つのエッジサイトは、1つ以上のアンテナサイトの内の1つのアンテナサイトと同じサイトであり得る。
【0004】
CU及びDUの配置パターンとしては、CU及びDUの両方をエッジサイトに配置するパターンと、DUをエッジサイトに配置し、CUを中央サイトに配置するパターンと、CU及びDUの両方を中央サイトに配置するパターンが考えられる。上記3つの配置パターンそれぞれはメリットとデメリットを有し、適切な配置パターンは、提供するサービス種別、より詳しくは、サービス毎の遅延要求やスループット要求等に依存する。
【0005】
このため、vRANにおいては、サービス種別毎にRANスライスを設定することが検討されている。なお、RANスライスとは、計算機群に実現されたDU及びCUと、RUと、を含む論理的なネットワークである。
【0006】
図1(A)は、1つのアンテナサイトと、当該アンテナサイトに接続する1つのエッジサイトと、当該エッジサイトに接続する1つの中央サイトを示している。
図1(A)に示す様に、アンテンナサイトにはRUが配置され、エッジサイト及び中央サイトには、それぞれ、計算機群が配置される。
図1(B)は、
図1(A)のハードウェア構成上に実現されるRANスライス91~93を示している。RANスライス91は、種別#1のサービスを提供するものであり、CU機能及びDU機能は、エッジサイトに配置されている。また、RANスライス92は、種別#2のサービスを提供するものであり、DU機能はエッジサイトに配置され、CU機能は中央サイトに配置されている。さらに、RANスライス93は、種別#3のサービスを提供するものであり、DU機能及びCU機能は中央サイトに配置されている。なお、ある種別のサービスを提供する1つのRANスライスは、当該RANスライスのRUが提供するセル内に在圏する1つ以上のユーザ装置に対して、当該種別のサービスを提供するために使用される。
【0007】
現在の移動通信ネットワークは、セルラネットワークとも呼ばれる様に、セルを基準としている。1つのセルは1つの基地局(又はRU)に対応付けられる。セルラネットワークでは、2つのセルの境界において、当該2つのセルの2つのRUからの無線信号が干渉するセル間干渉が問題となる。このため、非特許文献1は、セル間干渉を解消する技術であるCF-mMIMO(Cell Free Massive Multi-Input and Multi-Output)を開示している。
【0008】
非特許文献1によると、基地局機能は、変復調以上のレイヤの処理を行う第1機能ブロックと、第1機能ブロックと変調信号を送受信し、当該変調信号に対応する無線信号の送受信を行う第2機能ブロックとに分割される。以下の説明においては、非特許文献1での用語に従い、第1機能ブロックを中央処理ユニット(CPU)と表記し、第2機能ブロックをアクセスポイント(AP)と表記する。1つのCPUは、複数のAPに接続される。あるUEへのデータは、CPUにおいて変調され、当該CPUが接続する複数のAPに変調信号として送信される。変調信号を受信した複数のAPそれぞれは、受信した変調信号に対応する無線信号を当該UEに送信する。1つのCPUが複数のAPからの無線信号の送信を制御することで、当該UEでのセル間干渉を抑えることができる。
【0009】
また、非特許文献2及び非特許文献3は、非特許文献1に記載の構成において、1つのUEに無線信号を送信するAPを動的に選択する構成を開示している。具体的には、CPUは、UEにデータを送信する際、当該UEに無線信号を送信する1つ以上のAPを、当該CPUが接続している複数のAPから選択する。CPUは、選択した1つ以上のAPから当該UEに無線信号を送信させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】H.Q. Ngo,et al.,"Cell-Free Massive MIMO: Uniformly great service for everyone",in 2015 IEEE 16th International Workshop on Signal Processing Advances in Wireless Communications(SPAWC),Stockholm,Sweden,Jun.2015,pp.201-205
【文献】X.Li,et al.,"Optimal Massive-MIMO-Aided Clustered Base-Station Coordination",IEEE Trans.Veh.Technol.,vol.70,no.3,pp.2699-2712,2021年3月
【文献】M.Matthaiou,et al.,"The Road to 6G: Ten Physical Layer Challenges for Communications Engineers" ,IEEE Commun.Mag.,vol.59,no.1,pp.64-69,2021年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
CF-mMIMOをvRAN上で実現することを考える。なお、RUと同様に、アナログ領域の信号を扱うAPには専用のハードウェアを用いる必要があるため、計算機群に実現する機能はCPUとなる。ここで、CF-mMIMОにおいて、無線信号を送信する1つ以上のAPは、各UEに対して定義される。したがって、RANスライスを、1つのUEのサービス種別毎に設ける構成を考えることができる。しかしながら、上述したサービス種別毎のRANスライスを設定し、当該RANスライスで1つ以上のUEに当該種別のサービスを提供する構成と比較し、ユーザ及びサービス種別毎にRANスライスを設定すると、RANスライスの作成・変更・削除等の際の制御オーバヘッドが増加して伝送路の帯域を圧迫し得る。
【0012】
本発明は、CF-mMIMOをvRAN上で実現するための制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によると、異なる地理的位置に配置された複数のアクセスポイント(AP)と、異なる地理的位置に配置された複数の計算機群と、を含み、前記複数の計算機群の内のいずれかの計算機群に変調処理を含む機能ユニットを実現し、当該機能ユニットが前記複数のAPの内の1つ以上のAPにユーザ装置(UE)宛の変調信号を送信し、前記1つ以上のAPが当該UEに前記変調信号に対応する無線信号を送信する、無線アクセスネットワーク(RAN)を制御する制御装置は、前記複数の計算機群の内の第1計算機群に前記機能ユニットを実現し、かつ、前記複数のAPの内の前記第1計算機群に接続するAPから複数の第1APを含む第1APクラスタを選択することで、第1種別のサービスを提供するための第1高次RANスライスを設定する第1設定手段と、第1ユーザ装置(UE)と前記第1APクラスタに含まれる前記複数の第1APそれぞれとの間の無線通信状況に基づき、前記第1UEに無線信号を送信する1つ以上の第1APを含む第1APサブクラスタを、前記第1APクラスタに含まれる前記複数の第1APから選択することで、前記第1種別のサービスを前記第1UEに提供するための第1低次RANスライスを設定する第2設定手段と、を備え、前記複数の計算機群の内の1つの計算機群は中央サイトに配置され、前記複数の計算機群の内の前記1つの計算機群とは異なる計算機群それぞれは、前記中央サイトと第1伝送路で接続される複数のエッジサイトそれぞれに配置され、前記複数のエッジサイトのそれぞれは、前記複数のAPの内の1つ以上のAPそれぞれと第2伝送路で接続され、前記第1計算機群が、前記中央サイトに配置されている前記1つの計算機群である場合、前記第1APクラスタは、前記複数のAPから選択され、前記第1計算機群が、前記複数のエッジサイトの内の第1エッジサイトに配置されている計算機群である場合、前記第1APクラスタは、前記複数のAPの内の前記第1エッジサイトに前記第2伝送路で接続されているAPから選択されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、CF-mMIMOをvRAN上で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】サービス種別毎の従来のRANスライスの説明図。
【
図3】一実施形態によるRANスライスの例を示す図。
【
図4】一実施形態によるRANスライスの例を示す図。
【
図5】一実施形態によるRANスライスの例を示す図。
【
図6】一実施形態によるRANスライスの例を示す図。
【
図7】一実施形態による制御装置が実行する低次RANスライス変更処理のフローチャート。
【
図8】一実施形態による制御装置が実行する高次RANスライス変更処理のフローチャート。
【
図9】一実施形態による制御装置が実行する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
<第一実施形態>
図2は、本実施形態によるRANのハードウェア構成図である。RANは、1つの中央サイトと、当該中央サイトに有線又は無線伝送路により接続される1つ以上のエッジサイトと、を備えている。なお、
図2に示す例においては、エッジサイトの数をエッジサイト#1とエッジサイト#2との2つとしているが例示である。1つの中央サイト及び1つ以上のエッジサイトのそれぞれには計算機群が設置される。1つの中央サイトは、移動通信ネットワークのコアネットワークに接続される。1つのエッジサイトは、有線又は無線伝送路により1つ以上のアンテンナサイトに接続される。
図2に示す例においては、エッジサイト#1は、6つのアンテンナサイト#1~#6に接続され、エッジサイト#2は、3つのアンテンナサイト#7~#9に接続されているが、これらアンテナサイトの具体的な数は単なる例示である。1つのアンテナサイトには、少なくともと1つのAPが設置される。なお、
図2に示す例において、1つのエッジサイトには1つのAPが設置されるものとしている。以下の説明において、アンテナサイト#K(Kは1から9までの整数)に設置されているAPをAP#Kと表記する。なお、1つの中央サイトに接続する1つ以上のエッジサイトの内の1つのエッジサイトは、当該中央サイトと同じサイトとすることができる。同様に、1つのエッジサイトに接続する1つ以上のアンテナサイトの内の1つのアンテナサイトは、当該エッジサイトと同じサイトとすることができる。
【0018】
制御装置100は、中央サイト、エッジサイト#1及びエッジサイト#2、並びに、AP#1~#9と制御信号の送受信を行える様に構成されている。なお、制御信号は、各サイトを接続する伝送路内で送受信され得る。制御装置100は、RANスライスの作成、変更、削除等を制御する。なお、各RANスライスは、1つのCPUを有し、CPUは、中央サイト、エッジサイト#1及びエッジサイト#2に設置されている計算機群の内の1つの計算機群において実現される。
【0019】
図3~
図6は、本実施形態によるRANスライスの説明図である。まず、本実施形態において、1つのRANスライスは、1つの高次RANスライスと、1つ以上の低次RANスライスとで構成される。1つの高次RANスライスは、提供するサービス種別毎に作成される。また、1つの低次RANスライスは、1つのUEに提供するサービス種別毎に作成される。ある種別のサービスを提供するための1つの高次RANスライスは、同じ種別のサービスを提供する1つ以上の低次RANスライスに接続される。
【0020】
図3は、種別#1のサービスを提供するための高次RANスライス#1が、UE#1に種別#1のサービスを提供するための低次RANスライス#1と、UE#2に種別#1のサービスを提供するための低次RANスライス#2と、に接続されている状態を示している。
図3に示すRANスライス#1は、全体として、種別#1のサービスを提供するものである。
【0021】
なお、
図3に示すRANスライス#1において、CPUは、エッジサイト#1の計算機群上に実現されている。この場合、制御装置100は、CPUが配置されたエッジサイト#1に伝送路を介して接続できるAP#1~AP#6から複数のAPを選択してRANスライス#1のAPクラスタを構成する。
図3の低次RANスライス内の実線及び点線のAPはAPクラスタを構成するAPを示している。
図3によると、制御装置100は、RANスライス#1のAPクラスタとしてAP#1~AP#6の内からAP#1~AP#4を選択している。
【0022】
各UEに対する低次RANスライスは、APクラスタ内のAP#1~AP#4から選択された1つ以上のAPであるAPサブクラスタによって提供される。
図3の例において、実線のAPはAPサブクラスタを構成するAPを示している。つまり、
図3の例において、UE#1に対して種別#1のサービスを提供する低次RANスライス#1は、AP#1及びAP#3のAPサブクラスタにより提供されている。同様に、UE#2に対して種別#1のサービスを提供する低次RANスライス#2は、AP#1、AP#2及びAP#4のAPサブクラスタにより提供されている。
【0023】
図4は、種別#2のサービスを提供するための高次RANスライス#2が、UE#2に種別#2のサービスを提供するための低次RANスライス#3と、UE#3に種別#2のサービスを提供するための低次RANスライス#4と、に接続されている状態を示している。
図4に示すRANスライス#2は、全体として、種別#2のサービスを提供するものである。
【0024】
なお、
図4に示すRANスライス#2において、CPUは、エッジサイト#1の計算機群上で実現されている。したがって、APクラスタは、エッジサイト#1に接続するAP#1~AP#6から選択される。
図4において、制御装置100は、RANスライス#2のAPクラスタとしてAP#1、AP#2及びAP#4~AP#6を選択している。また、
図4の例において、UE#2に対して種別#2のサービスを提供する低次RANスライス#3は、AP#1、AP#4及びAP#5のAPサブクラスタにより提供されている。同様に、UE#3に対して種別#2のサービスを提供する低次RANスライス#4は、AP#1、AP#2及びAP#6のAPサブクラスタにより提供されている。
【0025】
図5は、
図3と同じ種別#1のサービスを提供するためのRANスライス#3を示している。なお、RANスライス#3を構成する高次RANスライス#3は、
図3とは異なりエッジサイト#2の計算機群上で実現されている。したがって、RANスライス#3のためのAPクラスタは、エッジサイト#2に接続するAP#7~AP#9から選択される。
図5において、制御装置100は、RANスライス#3のAPクラスタとしてAP#7~9を選択している。
図5の例において、UE#4に対して種別#1のサービスを提供する低次RANスライス#5は、AP#7及びAP#9のAPサブクラスタにより提供されている。同様に、UE#5に対して種別#1のサービスを提供する低次RANスライス#6は、AP#7~AP#9のAPサブクラスタにより提供されている。
【0026】
図6は、種別#3のサービスを提供するためのRANスライス#4を示している。なお、RANスライス#4を構成する高次RANスライス#4は、中央サイトの計算機群上で実現されている。したがって、RANスライス#4のためのAPクラスタは、中央サイトが接続するAP#1~AP#9の内から選択される。
図6において、制御装置100は、RANスライス#4のAPクラスタとしてAP#2~#7及び#9を選択している。
図6の例において、UE#1に対して種別#3のサービスを提供する低次RANスライス#7と、UE#2に対して種別#3のサービスを提供する低次RANスライス#8は、共に、AP#4~AP#6のAPサブクラスタにより提供されている。また、UE#4に対して種別#3のサービスを提供する低次RANスライス#9は、AP#3~AP#7のAPサブクラスタにより提供されている。
【0027】
図7は、制御装置100が実行する低次RANスライス変更処理のフローチャートである。制御装置100は、S10において、制御対象の低次RANスライスに接続される高次RANスライスのAPクラスタの各APから、制御対象の低次RANスライスよってサービス提供されるUEとの間の無線品質情報を取得する。例えば、
図3の低次RANスライス#1が制御対象である場合、制御装置100は、AP#1~AP#4からUE#1との間の無線品質情報を取得する。
【0028】
S11で、制御装置100は、無線品質情報に基づき、低次RANスライスを構成するAPサブクラスタの変更が必要か否かを判定する。変更が必要ではないと判定すると、制御装置100は、S10から処理を繰り返す。一方、変更が必要であると判定すると、制御装置100は、S12において、制御対象の低次RANスライスに接続される高次RANスライスのAPクラスタ内のAPから変更後のAPサブクラスタを構成するAPを選択する。そして、制御装置100は、制御対象の低次RANスライスに接続されている高次RANスライスのCPUと、当該高次RANスライスのAPクラスタの各APに変更後のAPサブクラスタを構成するAPを通知する。例えば、
図3の低次RANスライス#1が制御対象である場合、制御装置100は、AP#1~AP#4と、高次RANスライス#1を構成するエッジサイト#1のCPUに、変更後のAPサブクラスタを構成するAPを通知する。なお、S13の処理は、低次RANスライスの変更を、当該低次RANスライスに接続される高次RANスライスに通知する処理とも表現できる。
【0029】
なお、UEがサービスの利用を開始する場合、制御装置100は、当該サービスを提供する高次RANスライスのAPクラスタから、当該UEにサービスを提供する低次RANスライスのAPサブクラスタを選択する。そして、選択したAPサブクラスタ、つまり、作成する低次RANスライスを、当該低次RANスライスに接続される高次RANスライスに関連付けられたAPクラスタの各AP及びCPUに通知する。なお選択は、S10及びS11と同様に、当該UEと、当該UEが要求するサービス種別を提供する高次RANスライスに関連付けられたAPクラスタの各APとの間の無線品質に基づく。また、UEがサービスの利用を停止した場合、制御装置100は、当該UEに当該サービスを提供する低次RANスライスを削除し、当該低次RANスライスの削除を、当該低次RANスライスに接続されていた高次RANスライスに関連付けられたAPクラスタの各AP及びCPUに通知する。
【0030】
図8は、制御装置100が実行する高次RANスライス変更処理のフローチャートである。制御装置100は、S20において、CPUから各UEが要求しているサービス種別の情報を取得する。S21で、制御装置100は、制御対象の高次RANスライスの変更が必要か否かを判定する。高次RANスライスの変更は、APクラスタの変更や、CPU機能の配置位置の変更(例えば、中央サイトからエッジサイトへ、又は、その逆)を含む。なお、高次RANスライスの変更は、当該高次RANスライスにより提供されるサービスを利用している(及び利用を要求している)UEの数、これらUEの位置、当該サービスの現在のトラフィック量(或いは、現在のトラフィック量から予測される将来のトラフィック量)、当該サービスが満たすべき品質条件(遅延条件、スループット等)の少なくとも1つに基づき判定され得る。変更が必要ではないと判定すると、制御装置100は、S20から処理を繰り返す。一方、変更が必要であると判定すると、制御装置100は、S22で、高次RANスライスを提供するCPUの配置位置と、高次RANスライスに関連付けるAPクラスタとを決定する。そして、制御装置100は、S23で、変更後の高次RANスライスを、制御対象の高次RANスライスの変更前のAPクラスタ及び変更後のAPクラスタに通知する。また、制御装置100は、CPUの配置位置を変更した場合、変更前のCPUを削除し、変更後のCPUを起動させる。なお、APクラスタを変更した場合、制御装置100は、変更後のAPクラスタから各低次RANスライスのAPサブクラスタを選択する。つまり、制御装置100は低次RANスライスの変更も行う。なお、CPUの配置位置を変更したのみであれば、低次RANスライスの変更は必要ない。
【0031】
なお、例えば、
図2のAP#1~AP#9によるサービス提供領域内において、ある種別のサービスを利用しているUEが0になると、制御装置100は、当該種別のサービスを提供している高次RANスライスを削除する。これは、当該種別のサービスを提供しているRANスライスを削除することでもある。なお、当該種別のサービスを利用しているUEが0になると、直ちに当該種別のサービスを提供している高次RANスライスを削除することに本発明は限定されず、当該種別のサービスを利用しているUEが0である状態が所定期間以上継続すると、当該種別のサービスを提供している高次RANスライスを削除する構成であっても良い。さらに、当該種別のサービスを利用しているUEが0になっても、当該種別のサービスを提供するための高次RANスライスについては維持する構成とすることもできる。これは、高次RANスライスの設定・削除のための制御オーバヘッドを削減するためである。なお、この場合、維持する高次RANスライスを提供するCPUは、サービス提供範囲を大きくするため、例えば、中央サイトの計算機群において実現しておく構成とすることができる。
【0032】
また、AP#1~AP#9によるサービス提供領域内において、ある種別のサービスを利用しているUEが0の状態であり、かつ、当該種別のサービスを提供するための高次RANスライスが削除されている状態において、あるUEが当該種別のサービスを要求すると、制御装置100は、当該種別のサービスを提供するための高次RANスライスのためのCPUをどの計算機群に実現するかと、当該高次RANスライスのAPクラスタと、を決定して高次RANスライスを設定する。なお、その際の処理は、
図8に示す変更処理と同様である。
【0033】
本実施形態において、
図7の処理と
図8の処理の実行頻度(周期)は異なる。低次RANスライスに関する処理は、UEとAPとの間の無線通信状況の変化に追随できる様にミリ秒のオーダで繰り返し実行する必要がある。一方、高次RANスライスに関する処理は、上述した様に、UEの数や、UEの位置や、トラフィック量等、緩やかに変化するパラメータに基づき決定されるため、数分以上のオーダで制御すれば十分である。したがって、
図7の処理の実行頻度は、
図8の処理の実行頻度より高い。
【0034】
以上、本実施形態では、RANスライスを、サービス種別に関連付けられた高次RANスライスと、サービス種別及びUEに関連付けられた低次RANスライスと、に分割する。低次RANスライスについては、UEとAPとの間の無線通信状況の変化に追随できる様にミリ秒のオーダで制御する必要があるが、高次RANスライスについては、より長い周期、例えば、数分以上のオーダで制御すれば十分である。したがって、RANスライスを低次RANスライスと高次RANスライスとに分割することなく、サービス種別及びUEそれぞれに1つのRANスライスを設定する構成と比較して、RANスライスの制御に関する制御オーバヘッドの増加を抑えることができる。
【0035】
また、サービス種別及びUEの組み合わせ毎の低次RANスライスを、同じ種別のサービスを提供する高次RANスライスに接続する。したがって、異なるUEで伝送路(中央サイトからアンテナサイト)の通信リソース及び計算機群の計算リソースを共有する統計多重効果が得られる。これにより、伝送路リソース及び計算機群の計算リソースの利用効率を高めることができる。
【0036】
なお、制御装置100については、CPUの機能を実現するために使用される中央サイト、エッジサイト#1及びエッジサイト#2の1つ以上のサイトの計算機群上に実現することも、これら、計算機群とは別の、制御装置100専用に設けた計算機又は計算機群上に実現することもできる。
【0037】
さらに、制御装置100を、低次RANスライスを制御する低次制御装置と、高次RANスライスを制御する高次制御装置とに分割することもできる。なお、低次制御装置は、
図7に関して説明した処理を実行し、高次制御装置は、
図8に関して説明した処理を実行する。
【0038】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態において、制御装置100は、CPUの機能を実現するために使用される計算機群上に実現される。なお、制御装置100は、1つのサイトの計算機群上で実現されるのみならず、複数のサイトの計算機群上に分散して実現され得る。
【0039】
本実施形態では、制御装置100を実現するために必要な計算機リソースと、制御情報の送受信のために必要となる伝送路リソースと、各サイトで制御装置100のために利用可能な計算機リソースと、各伝送路において制御情報の送受信に利用可能な伝送路リソースと、に基づき、制御装置100の機能を実現する計算機群を制御装置100自体が動的に制御する。
【0040】
図9は、本実施形態による処理のフローチャートを示している。なお、制御装置100の機能が実現される初期の計算機群についてはオペレータが決定し、オペレータの操作により、当該計算機群上に制御装置100の機能が実現されているものとする。
【0041】
S30において、制御装置100は、機能の実現のために必要なリソース(計算機及び伝送路)と、利用可能なリソース(計算機及び伝送路)と、を判定する。S31で、制御装置100は変更が必要か否かを判定する。例えば、現在の構成で、制御装置100の機能の実現のために必要なリソースを所定期間の間は少なくとも確保できると判定される場合、制御装置100は、変更が不要と判定する。この場合、制御装置100は、S30から処理を繰り返す。一方、現在の構成では、制御装置100の機能の実現のために必要なリソースが所定期間の間に確保できなくなると判定される場合、制御装置100は、変更が必要と判定する。また、現在の構成において制御装置100のために確保されている計算機のリソースが、必要な計算機リソースより多すぎると判定される場合にも制御装置100は変更が必要と判定する。変更が必要と判定すると、制御装置100は、変更後の構成を、必要なリソースと利用可能リソースとに基づき判定する。
【0042】
変更は、例えば、分割、統合、配置変更と、を含む。配置変更は、例えば、制御装置100が、中央サイトとエッジサイト#1の計算機群で実現されている場合において、エッジサイト#1で実現されている機能部分を、エッジサイト#2の計算機群に移動させる処理を意味する。この場合、変更後の構成において、制御装置100は、中央サイトとエッジサイト#2の計算機群で実現されることになる。一方、分割は、例えば、制御装置100が、中央サイトとエッジサイト#1の計算機群で実現されている場合において、中央サイトで実現されている機能部分の一部を、エッジサイト#2の計算機群に移動させる処理を意味する。この場合、変更後の構成において、制御装置100は、中央サイトとエッジサイト#1とエッジサイト#2の計算機群で実現されことになる。さらに、統合は、例えば、制御装置100が、中央サイトとエッジサイト#1の計算機群で実現されている場合において、エッジサイト#1で実現されている機能部分を、中央サイトの計算機群に移動させる処理を意味する。この場合、変更後の構成において、制御装置100は、中央サイトの計算機群で実現されことになる。
【0043】
制御装置100は、S32において、変更に係る計算機群に変更の指示を行い、S33で変更を行う。その後、制御装置100は、S30から処理を繰り返す。
【0044】
なお、制御装置100の機能を、高次制御装置と低次制御装置とに分割する場合には、高次制御装置と低次制御装置それぞれが、個別に
図9の処理を実行する構成とすることができる。
【0045】
以上、本実施形態では、利用可能なリソース(計算機及び伝送路)に基づき制御装置100の構成を動的に制御することで、RAN全体の制御オーバヘッドを抑えることができる。
【0046】
なお、本発明による制御装置100は適切なプログラムを一連の計算機群上で実行することで実現され得る。これらプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0047】
以上の構成により、CF-mMIMOをvRAN上で実現することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0048】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。