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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/233 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B60R21/233
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021208100
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2023092852
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】室屋 崇也
(72)【発明者】
【氏名】石垣 良太
(72)【発明者】
【氏名】中島 豊
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-500264(JP,A)
【文献】特開2007-069644(JP,A)
【文献】特公平07-037223(JP,B2)
【文献】独国特許出願公開第19844427(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エアバッグと、前記第1エアバッグを膨張展開させるガスを噴射するインフレータと、前記第1エアバッグの内部に設けられ、前記インフレータから噴射されたガスを貯留する第2エアバッグと、前記第1エアバッグの膨張展開時に前記第1エアバッグ内に外気を導入する開口部と、を備えたエアバッグ装置であって、
前記第2エアバッグに、前記インフレータからのガスを前記第1エアバッグ内に噴出するガス流路が2個以上形成されており、かつ、これらガス流路の間の近傍の領域に前記開口部が形成されている、エアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1エアバッグの内外を連通する空気導入管を備え、前記開口部は、前記空気導入管の前記第1エアバッグ内に開放している一方の開口である、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ガス流路は、前記第2エアバッグに設けたノズルによって形成されている、請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記第2エアバッグに設けた孔の周囲を縫製することによって形成されている、請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記ノズルは、第1ノズルと第2ノズルを有し、
前記開口部は、
前記第1ノズルの中心と前記第2ノズルの中心を結ぶ線分を引き、それぞれの中心から前記線分と直交する2本の平行な線を引いたときに、該2本の平行線の内側の領域に少なくとも一部がかかるように設けられる、請求項3又は4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ノズルは、第1ノズルと第2ノズルを有し、
前記開口部は、
前記第1ノズルの中心と前記第2ノズルの中心を結ぶ線分を一辺とする正三角形を前記線分の上下に描いたときに、これら正三角形の各辺の内側の領域に少なくとも一部がかかるように設けられる、請求項3又は4に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記ノズルは、第1ノズルと第2ノズルを有し、
前記開口部は、
前記第1ノズルの中心と前記第2ノズルの中心を結ぶ線分に、少なくとも一部がかかるように設けられる、請求項3又は4に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記開口部は、前記第2エアバッグの左右方向の中央部に設けられている、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
前記空気導入管の外部に開放している他方の開口によって導入部が形成されており、該導入部に前記第1エアバッグ内の空気が外部に流れるのを防止する逆止弁が設けられている、請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項10】
前記空気導入管の外部に開放している他方の開口によって導入部が形成されていると共に、前記第1エアバッグの膨張展開時の形状を規制するテザーを備え、該テザーは、前記導入部と重なり合う位置に孔が設けられている、請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項11】
前記ガス流路の出口付近に、前記ガス流路から噴出するガスの流速を速めるためのテーパー部が設けられている、請求項1乃至10の何れか1つに記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時、エアバッグを膨張展開させて乗員を拘束するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、膨張展開時に、エアバッグ内に外気を引込む機能を備えたエアバッグ装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1のエアバッグ装置は、インフレータから発生させたガスをエアバッグ内に導入する導入部以外に、エアバッグの内外を連通する開口部を備えている。特許文献1の例えば図6には、導入部の両サイドに開口部を設ける構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-69644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、従来のエアバッグ装置は、インフレータからのガスを噴出させる導入部を1つ設け、この導入部を挟むように導入部の両サイドに、外気を引き込む開口部を2つ設けた構成である。
【0006】
しかしながら、1つの導入部に対して2つの開口部を対応づける上記の構成では、各開口部の圧力を十分に下げることはできず、外気を効率的にエアバッグ内に引き込むことができない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、膨張展開時にエアバッグ内に外気を引き込む開口部を備えたエアバッグ装置において、開口部の圧力を十分に下げることが可能で、外気を効率的にエアバッグ内に引き込み、これによりエアバッグの展開性能を高めることができるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1エアバッグと、第1エアバッグを膨張展開させるガスを噴射するインフレータと、第1エアバッグの膨張展開時に第1エアバッグ内に外気を導入する開口部と、を備えたエアバッグ装置であって、
第1エアバッグ内に、インフレータからのガスが噴出するガス流路が2個以上設けられており、これらガス流路の間の近傍の領域に開口部が設けられている、エアバッグ装置である。
【0009】
本発明は、第1エアバッグの内外を連通する空気導入管を備え、開口部は、空気導入管の第1エアバッグ内に開放している一方の開口であるようにしてもよい。
【0010】
本発明は、エアバッグ装置は、更にインフレータから噴射されたガスを貯留するチャンバ部を備え、ガス流路は、チャンバ部からガスが噴出するように設けられるようにしてもよい。
【0011】
本発明は、ガス流路は、チャンバ部に設けたノズルによって形成されているようにしてもよい。
【0012】
本発明は、ノズルは、チャンバ部に設けた孔の周囲を縫製することによって形成されているようにしてもよい。
【0013】
本発明は、ノズルは、第1ノズルと第2ノズルを有し、
開口部は、
第1ノズルの中心と第2ノズルの中心を結ぶ線分を引き、それぞれの中心から線分と直交する2本の平行な線を引いたときに、該2本の平行線の内側の領域に少なくとも一部がかかるように設けられるようにしてもよい。
【0014】
本発明は、ノズルは、第1ノズルと第2ノズルを有し、
開口部は、
第1ノズルの中心と第2ノズルの中心を結ぶ線分を一辺とする正三角形を線分の上下に描いたときに、これら正三角形の各辺の内側の領域に少なくとも一部がかかるように設けられるようにしてもよい。
【0015】
本発明は、ノズルは、第1ノズルと第2ノズルを有し、
開口部は、
第1ノズルの中心と第2ノズルの中心を結ぶ線分に、少なくとも一部がかかるように設けられるようにしてもよい。
【0016】
本発明は、チャンバ部は、第1エアバッグの内部に設けられた第2エアバッグであって、該第2エアバッグに開口部及びガス流路が形成されているようにしてもよい。
【0017】
本発明は、開口部は、第2エアバッグの左右方向の中央部に設けられていてもよい。
【0018】
本発明は、チャンバ部は、第1エアバッグ内に設けられたディフューザーまたはバッフルによって区画された空間であってもよい。
【0019】
本発明は、空気導入管の外部に開放している他方の開口によって導入部が形成されており、該導入部に第1エアバッグ内の空気が外部に流れるのを防止する逆止弁が設けられていてもよい。
【0020】
本発明は、空気導入管の外部に開放している他方の開口によって導入部が形成されていると共に、第1エアバッグの膨張展開時の形状を規制するテザーを備え、該テザーは、導入部と重なり合う位置に孔が設けられていてもよい。
【0021】
本発明は、ガス流路の出口付近に、ガス流路から噴出するガスの流速を速めるためのテーパー部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエアバッグ装置は、第1エアバッグと、第1エアバッグを膨張展開させるガスを噴射するインフレータと、第1エアバッグの膨張展開時に第1エアバッグ内に外気を導入する開口部と、を備えている。そして、第1エアバッグ内に、インフレータからのガスが噴出するガス流路が2個以上設けられており、これらガス流路の間の近傍の領域に開口部が設けられている。
【0023】
本発明では、車両の衝突が生じてインフレータが作動したとき、外気を導入する開口部に対し、チャンバ部内のガスが噴出する2個以上のガス流路が近接しているため、開口部付近の圧力を十分に下げることが可能となる。
【0024】
これにより、本発明では、外気が効率的にエアバッグ内に導入され、エアバッグの展開速度が高まり、乗員の拘束性能が向上する。
【0025】
本発明は、インフレータから噴射されたガスを貯留するチャンバ部を設けてもよい。この場合、ガス流路は、チャンバ部からガスが噴出する位置に形成される。ガス流路は、例えば、チャンバ部に設けた孔の周囲を縫製した第1ノズルと第2ノズルによって形成することができる。
【0026】
本発明では、開口部付近の圧力が十分に下がるように、開口部は複数のガス流路の近傍の領域に設ける。ここで、「近傍の領域」とは、最も広義には、第1ノズルの中心と第2ノズルの中心を結ぶ線分を引き、それぞれの中心から線分と直交する2本の平行な線を引いたときに、該2本の平行線の内側の領域に少なくとも一部がかかるように開口部を設けることができる領域をいう。
【0027】
開口部は、より好ましくは、第1ノズルの中心と第2ノズルの中心を結ぶ線分を一辺とする正三角形を線分の上下に描いたときに、これら正三角形の各辺の内側の領域に少なくとも一部がかかるように設ければよい。開口部が第1ノズル、第2ノズルに近接し、開口部付近の圧力がより低下するからである。
【0028】
本発明では、開口部は、第1ノズルの中心と第2ノズルの中心を結ぶ線分に少なくとも一部がかかるように設けることが最も好ましい。この場合、開口部は第1ノズル、第2ノズルに最も近接し、開口部付近の圧力を低下する効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A図1Aは、実施形態に係るエアバッグ装置の膨張展開が完了した状態を乗員パネル側から見た図である。
図1B図1Bは、図1AのA-A断面図である。
図1C図1Cは、図1AのB-B断面図である。
図1D図1Dは、実施形態に係るエアバッグ装置の膨張展開が完了した状態をリアパネル側から見た図である。
図2A図2Aは、実施形態に係るエアバッグ装置の膨張展開が完了した状態を示す斜視図である。
図2B図2Bは、実施形態に係るエアバッグ装置を平置きにした状態において乗員パネルの一部を切り欠いた図である。
図3A図3Aは、図1AのA-A線における断面を斜め方向から見た図であり、第1ノズル及び第2ノズルからガスが噴出している状態を示す図である。
図3B図3Bは、図1AのA-A線における断面を斜め方向から見た図であり、第1ノズル及び第2ノズルから噴射したガスの作用によって開口部付近の圧力が低下した状態を示す図である。
図3C図3Cは、図1AのA-A線における断面を斜め方向から見た図であり、開口部付近の圧力が低下したことによって第1エアバッグ内に空気導入管を通じて外気が引き込まれている状態を示す図である。
図4A図4Aは、実施形態の第1変形例に係るエアバッグ装置の一例を示す一部切り欠き図である。
図4B図4Bは、実施形態の第1変形例に係るエアバッグ装置の他の例を示す一部切り欠き図である。
図4C図4Cは、実施形態の第1変形例に係るエアバッグ装置の他の例を示す一部切り欠き図である。
図5A図5Aは、実施形態のエアバッグ装置において、第1ノズル及び第2ノズルの近傍の領域に開口部を設ける範囲について説明する図である。
図5B図5Bは、実施形態のエアバッグ装置において、第1ノズル及び第2ノズルの近傍の領域に開口部を設ける場合の好ましい範囲について説明する図である。
図5C図5Cは、実施形態のエアバッグ装置において、第1ノズル及び第2ノズルの近傍の領域に開口部を設ける場合の最も好ましい範囲について説明する図である。
図6図6は、実施形態の第2変形例に係るエアバッグ装置をリアパネル側から見た図である。
図7図7は、実施形態の第3変形例に係るエアバッグ装置の水平方向の断面を上方から見た図である。
図8図8は、実施形態の第4変形例であるニーエアバッグ装置の垂直方向の断面を側方から見た図である。
図9A図9Aは、実施形態の第5変形例である助手席用エアバッグ装置の垂直方向の断面を側方から見た図である。
図9B図9Bは、図9Aの変形例に用いるテザーの構成を示す図である。
図10図10は、実施形態の第6変形例であるサイドエアバッグ装置の垂直方向の断面を側方から見た図である。
図11A図11Aは、実施形態に係るエアバッグ装置が設置される車両を例示した図である。
図11B図11Bは、実施形態に係るエアバッグ装置が膨張展開後の車両を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0031】
本発明において「乗員」とは、一例を示せば、前面衝突試験用のダミー(Hybrid III AM50/ NHTSA [National Highway Traffic Safety Administration:米国高速道路交通安全協会]の規格[49CFR Part572 Subpart E 及びO] にて決められた前面衝突試験用人体ダミー)に準拠した、米国における平均的な男性に相当する体格を有するものをいい、概略サイズは、身長175cm、座高88cm、体重78kgであるが、そのほかの人体ダミーに対しても適用可能である。
【0032】
また、本明細書において、「上」「上側」とは座席の正規の位置に着座した乗員の頭部方向を、「下」「下側」とは乗員の足元方向を意味する場合がある。ここで、「正規の位置」とは、座席におけるシートクッションの左右方向の中心位置で、その座席の背もたれ部に乗員の背中が上下に亘って接する位置をいう。また、「前」「前側」とは座席の正規の位置に着座した乗員の正面方向を、「後」「後ろ側」とは乗員の背面方向を意味する場合がある。また、「左」「左側」とは座席の正規の位置に着座した乗員の左手方向を、「右」「右側」とは乗員の右手方向を意味する場合がある。
【0033】
本実施形態は、エアバッグ装置1を、例えば座席101に着座している乗員を拘束する装置として実施するものである(図11A)。エアバッグ装置1は、膨張展開することで乗員を拘束する部位となる円形の第1エアバッグ2を有している。エアバッグ装置1は、ステアリングホイール102の中央に設けた収納部103に収納されている。
【0034】
エアバッグ装置1は、平置き状態において、例えば前側から後ろ側に向かってロール状に巻く、又は、前側から後ろ側に向かって蛇腹状に折り畳むことにより、前後方向の寸法が短くなり、収納部103に収納される時の収納形態となる。車両の衝突時、第1エアバッグ2の膨張圧によって収納部103のカバー104が開裂し、第1エアバッグ2は座席101に向かって膨張展開する。
【0035】
[エアバッグ装置の構成]
図1A図1D図2Aは、膨張展開が完了した状態のエアバッグ装置1を示した図である。図1Aでは、第1エアバッグ2の外形だけでなく、第1エアバッグ2の内部に設けられたインナーエアバッグである第2エアバッグ4も破線によって示している。図1B及び図1Cでは、インフレータ3も例示している。
【0036】
本実施形態のエアバッグ装置1は、第1エアバッグ2と、第1エアバッグ2を膨張展開させるガスを噴射するインフレータ3と、インフレータ3から噴射されたガスを一時的に貯留する第2エアバッグ4と、第1エアバッグ2の内外を連通する空気導入管5とを備えている。第2エアバッグ4の内側空間の体積は、第1エアバッグ2の体積よりも小さく、第2エアバッグ4は第1エアバッグ2に内包されている。第2エアバッグ4は、チャンバ部に相当する。
【0037】
空気導入管5はチューブ状の部材であり、第2エアバッグ4の内部を前後方向に貫通している。空気導入管5には所望の素材を用いることができる。空気導入管5の素材は、例えば第1エアバッグ2及び第2エアバッグ4の基布の素材と同じでもよい。空気導入管5の一方の開口は、第1エアバッグ2内の空間に開放しており、開口部6を形成している。空気導入管5の他方の開口は、第1エアバッグ2の外部に開放しており、円形の導入部7を形成している。図1Dに示すように、リアパネル2bには、導入部7以外に、第1エアバッグ2内の圧力を調整するベントホール10を設けてもよい。
【0038】
第2エアバッグ4には、第2エアバッグ4内のガスが噴出する第1ノズル8及び第2ノズル9が設けられている。本実施形態では、図2Bに示すように、第2エアバッグ4に設けた所要のサイズの円形の孔の周囲を縫製11c,11dすることで、第1ノズル8及び第2ノズル9を形成している。第1ノズル8の径のサイズと第2ノズル9の径のサイズは同じである。第1ノズル8と第2ノズル9は、所要の間隔を空けて、各円の中心が同じ高さ位置となるように設けられている。第1ノズル8及び第2ノズル9は、インフレータからのガスが噴出するガス流路に相当する。
【0039】
第1エアバッグ2及び第2エアバッグ4は、複数の基布を重ねて縫製11a,11bすることで立体的に膨らむことが可能な袋体として形成されていている。第1エアバッグ2は、膨張展開時に乗員と接する側の面となる乗員パネル2aとリアパネル2bによって構成される。
【0040】
空気導入管5の一方の開口は、第2エアバッグ4の基布の表面から突出することはなく第2エアバッグ4の基布に設けた孔に接続されて開口部6が形成されている。開口部6は円形で、その周囲は縫製11eされている。そして、第1ノズル8と第2ノズル9の間の近傍の領域に開口部6が設けられている。本実施形態では、開口部6の円の中心が、第1ノズル8の円の中心と第2ノズル9の円の中心を結ぶ線分の中間点に位置するように、開口部6が設けられている。
【0041】
[本実施形態の効果等]
図3A図3Cは、本実施形態のエアバッグ装置1の効果を説明する図である。車両に衝撃が発生すると、車両に備えられた各種センサ(図示省略)が衝突を検知し、インフレータ3に作動信号が送信される。センサからの信号を受信することでインフレータ3が作動し、第2エアバッグ4内にガスが供給される。
【0042】
インフレータ3から噴射されたガスは、第2エアバッグ4内に一時的に貯留し、第2エアバッグ4を膨張展開させるが、その後、第1ノズル2及び第2ノズル4を通って高圧のガスが第1エアバッグ2内に供給される。図3A中の矢印Xは、第1ノズル2及び第2ノズル4から送出される高圧のガスの流れを示している。
【0043】
本実施形態では、外気を取り込む開口部6が、第1ノズル8と第2ノズル9の中間に位置しており、それぞれの円形の孔の中心が直線状に並ぶように近接している。このため、図3B中符号Yで示した領域は、第1ノズル2及び第2ノズル4から送出される高圧のガスの流速に応じて負圧の状態となる(ベルヌーイの定理)。
【0044】
これにより、開口部6付近の圧力が十分に低下し、空気導入管5の内外で圧力差が顕著となり、導入部7から外気を効率的に引込むことができる。図3C中の矢印Zは、導入部7に取り込まれる外気の流れを示している。そして、この取り込まれた外気が開口部6を通って第1エアバッグ2内に供給される。
【0045】
第1エアバッグ2は、インフレータ3から発生するガスに加え、開口部6から供給される外気が円滑に取り込まれることによって、座席101の前方にて円形の立体に速やかに膨張展開し、座席101に着座する乗員の上半身や頭部を拘束する。
【0046】
本実施形態では、外気が空気導入管5を通じて効率的に第1エアバッグ2内に導入されるため、第1エアバッグ2の展開速度が高まり、乗員の拘束性能が向上する。また、本実施形態では、インフレータ3の容量が比較的小さい場合であっても、体積が大きい第1エアバッグ2を膨張展開させることが可能となる。
【0047】
[実施形態の第1変形例]
本変形例は、開口部6、第1ノズル8、第2ノズル9に関し、それらの位置関係、それぞれの形状、設ける数を、上述の実施形態とは異なるものとした実施形態である。
【0048】
開口部6、第1ノズル8、第2ノズル9は、これらの中心が水平線上に並んでいる必要はない。例えば、本変形例の一例である図4Aに示すように、開口部6に対して第1ノズル8は左斜め上方向に位置し、第2ノズル9は右斜め下方向に位置するように構成してもよい。また、開口部6、第1ノズル8、第2ノズル9は、これらの中心が同一直線上になくてもよい。
【0049】
開口部6は、取り込んだ外気が第1エアバッグ2内で効率的に行き渡るように、例えば図1Aの実施形態のように、第2エアバッグ4の左右方向の中央部に設ければよい。もっとも、必要であれば、図4Aの変形例に示すように、第2エアバッグ4の左方向もしくは右方向に偏った位置に開口部6を設けてもよい。
【0050】
開口部6の数は1つとは限らず、複数の開口部6を設けてもよい。本変形例の一例である図4Bに示すように、例えば、第1開口部6aと第2開口部6bを設け、第1ノズル8と第2ノズル9の近傍に第1開口部6aが位置していると共に、第3ノズル12を設けた上で、第2ノズル9と第3ノズル12の近傍に第2開口部6bが位置しているように構成してもよい。
【0051】
開口部6、第1ノズル8、第2ノズル9の各形状は、円形とは限らない。本変形例の一例である図4Cに示すように、例えば、開口部6、第1ノズル8、第2ノズル9の形状はいずれも三角形としてもよい。
【0052】
本変形例の構成においても、開口部6が第1ノズル8、第2ノズル9の近傍の領域に設けられる限り、開口部6付近の圧力は十分に下がり、上述の実施形態と同様の効果が得られる。複数の開口部6a,6bが存在する場合も同様で、開口部6aに対して第1ノズル8と第2ノズル9を、開口部6bに対して第2ノズル9と第3ノズル12を、それぞれ近傍の領域に設ければよい。
【0053】
開口部6の圧力を十分に下げることができる「近傍の領域」の条件について、図5A図5Cを参照しながら説明する。近傍の領域は、最も広義には、第1ノズル8の中心と第2ノズル9の中心を結ぶ線分13を引き、それぞれの中心から線分13と直交する2本の平行線14を引いたときに、これら2本の平行線14に挟まれた内側の領域に、開口部6の少なくとも一部がかかる領域をいう。図5Aでは、上記条件を充たしている開口部6の一例を示している。
【0054】
図5Bは、より好ましい実施形態を示したものである。開口部6は、第1ノズル8の中心と第2ノズル9の中心を結ぶ線分13を一辺とする正三角形15a,15bを線分13の上下に描いたときに、これら正三角形15a,15bの各辺の内側の領域に少なくとも一部がかかるように設けている。この場合、図5Aの場合よりも、開口部6が第1ノズル8及び第2ノズル9に近接し、開口部6付近の圧力がより低下する。
【0055】
図5Cは、最も好ましい実施形態を示したものである。開口部6は、第1ノズル8の中心と第2ノズル9の中心を結ぶ線分13に少なくとも一部がかかるように設けている。この場合、開口部6は第1ノズル8及び第2ノズル9に更に近接し、開口部6付近の圧力を低下させる効果がより高まる。図1Aに示した実施形態も、上記の条件を充たすものであり、最良の実施形態の一つである。
【0056】
本変形例の上記以外の構成、例えば第1エアバッグ2、インフレータ3の構成等については、上述の実施形態で説明したところと同じであるから、説明を省略する。
【0057】
[実施形態の第2変形例]
本変形例は、図6に模式的に示すように、空気導入管5の外部に開放している他方の開口である導入部7に、第1エアバッグ2内の空気が外部に流れるのを防止する逆止弁16を設けた実施形態である。
【0058】
エアバッグ装置1では、膨張展開時に開口部6付近の圧力が低下することで、導入部7から外気が取り込まれ、開口部6を通じて第1エアバッグ2内に外気が効率的に供給される。しかし、導入部7から逆流する空気があると、開口部6から取り込める空気の量が減少してしまう。そこで、本変形例に示すように、導入部7には、第1エアバッグ2内の空気が外部に流れるのを防止する逆止弁16を設けることが好ましい。
【0059】
[実施形態の第3変形例]
本変形例は、図7に模式的に示すように、第1ノズル8及び第2ノズル9の各出口付近に、第1ノズル8及び第2ノズルから噴出するガスの流速を速めるためのテーパー部17を設けた実施形態である。
【0060】
エアバッグ装置1では、膨張展開時に第1ノズル8及び第2ノズル9から高圧のガスが噴出することで開口部6付近が負圧となる。このため、第1ノズル8及び第2ノズル9から噴出するガスの流速を速める構造が求められる。一例として、本変形例に示すように、第1ノズル8及び第2ノズル9の出口付近に、ガスが流れる方向に向けて先細りしたテーパー部17を設けることで、ガスの流速を速めることができる。
【0061】
[実施形態の第4変形例]
本変形例は、図8に示すように、エアバッグ装置1を、座席101に着座している乗員の膝及び膝から下方の部位を保護するニーエアバッグ装置とした実施形態である。105は、座席101の前方にあるインストルメントパネルを示している。
【0062】
本変形例は、乗員を保護する第1エアバッグ2を有しているが、上述の実施形態とは異なり、インナーエアバッグである第2エアバッグ4は有していない。本変形例では、インフレータ3から噴出されたガスを一時的に貯留するチャンバ部は、第1エアバッグ2内に設けられたディフューザー18によって区画された空間18aである。
【0063】
ディフューザー18によって区画された空間18aをチャンバ部とする本変形例の構成においても、空気導入管5の一方の開口である開口部6の近傍に、第1ノズル8及び第2ノズル9(共に不図示)を設けることで、第1エアバッグ2の膨張展開時に開口部6付近の圧力が下がり、導入部7から効率的に外気が取り込まれる。これにより、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
[実施形態の第5変形例]
本変形例は、図9Aに示すように、エアバッグ装置1を、助手席用エアバッグ装置とした実施形態である。
【0065】
本変形例も、第2エアバッグ4は有しておらず、第1エアバッグ2内に設けられたディフューザー18によって区画された空間18aが、インフレータ3から噴出されたガスを一時的に貯留するチャンバ部に相当する。
【0066】
本変形例のエアバッグ装置1は、第1エアバッグ2と、第1エアバッグ2内に外気を供給する外気導入管5を備えている。また、第1エアバッグ2は、膨張展開時の形状を規制するテザー19を備えている。
【0067】
外気導入管5の一方の開口は第1エアバッグ2内に開放しており、開口部6を形成している。外気導入管5の他方の開口は外部に開放しており、導入部7を形成している。そして、本変形例では、テザー19が導入部7と重なり合う位置に設けられる場合は、図9Bに示すように、テザー19に導入部7と同じサイズか導入部7よりもややサイズが大きい孔19aを設けている。これにより、テザー19によって導入部7が閉塞されるのを回避することができる。
【0068】
[実施形態の第6変形例]
本変形例は、図10に示すように、エアバッグ装置1を、座席101に着座している乗員の側部(頭部、肩部、腹部、腰部)を保護するサイドエアバッグ装置とした実施形態である。第1エアバッグ2は、座席101に着座した乗員の車幅方向中心側において背もたれ部のサイドサポート部から前方に膨張展開し、乗員の側部を拘束する。
【0069】
本変形例では、第1エアバッグ2内に設けられた2つのバッフル20によって区画された空間20aが、インフレータ3から噴出されたガスを一時的に貯留するチャンバ部に相当する。
【0070】
2つのバッフル20によって区画された内側の空間20aをチャンバ部とする本変形例の構成においても、空気導入管5の一方の開口である開口部6の近傍に、第1ノズル8及び第2ノズル9(共に不図示)を設けることで、第1エアバッグ2の膨張展開時に開口部6付近の圧力が下がり、導入部7から外気が効率的に取り込まれる。これにより、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
[その他の変形例]
上述の実施形態において、インフレータ3は、必ずしも第1エアバッグ2の内部に設ける必要はない。例えば、収納部103にインフレータ3を収納してもよい。
【0072】
上述の実施形態において、第1ノズル8及び第2ノズル9は、第2エアバッグ4の基布に設けた孔から突出している部位を有する筒状体であってもよい。
【0073】
上述の実施形態において、空気導入管5は、第2エアバッグ4の基布に設けた孔から突出している部位を有していてもよい。
【0074】
上述の実施形態では、例えば第2エアバッグ4をインフレータ3から噴出されるガスを貯留するチャンバ部として用い、第2エアバッグ4に設けた孔(第1ノズル8及び第2ノズル9)をガス流路とする例を示したが、本発明では、第1エアバッグ2内にインフレータ3からのガスが噴出するガス流路を2個以上設けることが可能で、これらガス流路の間の近傍の領域に外気を導入する開口部6を設けることができる限り、チャンバ部を有さない構成も可能である。例えば、第1エアバッグ2内に設けたガスガイドによってガス流路を形成してもよい。
【0075】
上述の実施形態において、第1エアバッグ2及び第2エアバッグ4は、基布同士を縫製したものに限らず、OPW(One-Piece Woven)の技術を用いた紡織によって形成したものでもよい。
【0076】
上述の実施形態において、エアバッグ装置1をサイドエアバッグ装置として構成する場合、座席101に着座した乗員の頭部における一方の側部を覆うように膨張展開する頭部用クッション部と、乗員の胴体(肩部から腹部)における一方の側部を覆うように膨張展開する胴体用クッション部とを備えるように構成してもよい。この場合において、胴体用クッション部の保護範囲は、乗員の肩部から腰部までとなるように構成してもよい。
【0077】
上述の実施形態において、インフレータ3は、ガス発生剤が充填されておりこれを燃焼させてガスを発生させるタイプのものでもよいし、圧縮ガスが充填されており熱を発生させることなくガスを供給できるタイプのものでもよい。インフレータ3は、燃焼ガスと圧縮ガスを利用するハイブリッドタイプのものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、エアバッグの種類を問わず、あらゆるエアバッグ装置に適用可能である。例えば、本発明中では図示はしないが、本発明の特徴を用いて、カーテンエアバッグ、歩行者保護用エアバッグ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 エアバッグ装置
2 第1エアバッグ
3 インフレータ
4 第2エアバッグ(チャンバ部)
5 空気導入管
6 開口部(一方の開口)
7 導入部(他方の開口)
8 第1ノズル(ガス流路)
9 第2ノズル(ガス流路)
10 ベントホール
11c,11d 縫製
12 第3ノズル(ガス流路)
13 線分
14 平行線
15a,15b 正三角形
16 逆止弁
17 テーパー部
18 ディフューザー
18a 区画された空間(チャンバ部)
19 テザー
19a 孔
20 バッフル
20a 区画された空間(チャンバ部)
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B