(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】エンジンモジュール
(51)【国際特許分類】
F02K 7/18 20060101AFI20240925BHJP
F02K 9/78 20060101ALI20240925BHJP
B64D 27/02 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
F02K7/18
F02K9/78
B64D27/02
(21)【出願番号】P 2021512210
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019072062
(87)【国際公開番号】W WO2020052910
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516101075
【氏名又は名称】リアクション エンジンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】パーカー リチャード ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーヴィル リチャード アンソニー
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05191761(US,A)
【文献】特表2017-500466(JP,A)
【文献】米国特許第8215589(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/056208(US,A1)
【文献】特開2007-224906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 7/18
F02K 9/78
B64D 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールであって、
空気を受け入れるように構成された吸気装置と、
前記吸気装置からの空気を冷却するように構成された熱交換器装置と、
前記熱交換器装置からの空気を圧縮するように構成された圧縮機と、
1つまたは複数の推力チャンバと、を含み、
前記吸気装置、前記圧縮機、前記熱交換器装置、および前記1つまたは複数の推力チャンバは、概して、前記ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールの軸に沿って配置され、
前記ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールの長手方向の前記軸が、第1の端部と、前記第1の端部の下流に位置する第2の端部とを有し、前記吸気装置が前記第1の端部に配置され、前記1つまたは複数の推力チャンバが前記第2の端部に配置され、
前記熱交換器装置は、前記圧縮機と前記1つまたは複数の推力チャンバとの間に配置され、
前記圧縮機の入口端部は、前記熱交換器装置に近接し、前記熱交換器装置に面して配置され、前記圧縮機の出口端部は、空気入口に近接して配置され、
前記吸気装置から前記熱交換器装置までの第1の空気流路と、前記熱交換器装置から前記圧縮機の前記入口端部までの第2の空気流路とが設けられ、前記第2の空気流路は、前記第1の空気流路内の空気の流れとは反対の実質的に長手方向に空気が流れることを可能にするように構成される、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール。
【請求項2】
前記吸気装置は、前記吸気装置によって受け入れられた空気を減速するように構成された入口コーンを含み、前記圧縮機は、前記入口コーンの内側に少なくとも部分的に配置される、請求項1に記載のエンジンモジュール。
【請求項3】
前記圧縮機の前記出口端部から前記1つまたは複数の推力チャンバまでの第3の空気流路が設けられ、前記第3の空気流路は、前記第2の空気流路内の空気の流れとは反対の実質的に長手方向に空気が流れることを可能にするように構成される、請求項1に記載のエンジンモジュール。
【請求項4】
ナセルをさらに含み、入口コーン、前記熱交換器装置、前記圧縮機、および前記1つまたは複数の推力チャンバは、各々が前記ナセル内に少なくとも部分的に配置されている、請求項2または3に記載のエンジンモジュール。
【請求項5】
入口コーンは軸対称である、請求項2~4のいずれか1項に記載のエンジンモジュール。
【請求項6】
前記エンジンモジュールの前記軸は湾曲している、請求項1~5のいずれか1項に記載のエンジンモジュール。
【請求項7】
燃料タンクをさらに含み、前記燃料タンクは、前記熱交換器装置と前記1つまたは複数の推力チャンバとの間に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載のエンジンモジュール。
【請求項8】
前記1つまたは複数の推力チャンバは、各々が少なくとも1つのロケットノズルを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のエンジンモジュール。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のエンジンモジュールとともに使用するための構造
であって、前記構造は、エンジン構成要素を受け入れるための容積を規定する入口コーンを含む、構造。
【請求項10】
前記ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールは、空気吸込モードからフルロケットモードに切り替え可能であるように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のエンジンモジュールまたは請求項9に記載の構造。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載のエンジンモジュールを含む航空機、飛行機械または航空宇宙ビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空宇宙用途で使用され得るタイプのようなエンジンモジュールに関する。本開示はまた、ロケットエンジンのエンジンモジュールの構造、ならびにそのようなエンジンモジュールまたは構造を含む航空機、飛行機械または航空宇宙ビークルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、単段式宇宙往還(SSTO)ビークル用のハイブリッド航空宇宙推進エンジンについて説明している。このようなエンジンは、ロケット燃焼室、空気吸込燃焼室、および空気吸込燃焼室に供給するための空気を加圧するための圧縮機を含む。このようなエンジンは、空気吸込燃焼室で燃焼するための、酸化剤としての圧縮空気と燃料とを使用して作動することができる。これは、ロケット燃焼室のみを備えたエンジンと比較して、そのようなエンジンを備えた航空機の燃料運搬要件を軽減する燃料要件を減らすことができる。
【0003】
本開示は、課題を少なくともある程度軽減し、および/または先行技術に関連する困難に少なくともある程度対処することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様によれば、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールであって、
空気を受け入れるように構成された吸気装置と、
前記吸気装置からの空気を冷却するように構成された熱交換器装置と、
前記熱交換器装置からの空気を圧縮するように構成された圧縮機と、
1つまたは複数の推力チャンバと、を含み、
吸気装置、圧縮機、熱交換器装置、および1つまたは複数の推力チャンバは、概して、エンジンモジュールの軸に沿って配置され、
熱交換器装置は、圧縮機と1つまたは複数の推力チャンバとの間に配置される、
ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールが提供される。
【0006】
エンジンモジュールの軸、例えば縦軸、に沿って配置されたとき、吸気装置、圧縮機、熱交換器装置、および1つまたは複数の推力チャンバのそれぞれの軸のうちの1つまたは複数は、軸と整列されてよく、またはエンジンモジュールの軸に平行におよび/またはエンジンモジュールの軸から離れて配置され得る。
【0007】
吸気装置は、吸気装置によって受け入れられた空気を減速するように構成された入口コーンを含み得る。
【0008】
圧縮機は、少なくとも部分的に入口コーンの内側に配置され得る。そのようなエンジンモジュールは、先行技術のエンジンモジュールと比較して長さが有利に短くなり得て、したがって、よりコンパクトで軽量のエンジンを可能にする。
【0009】
圧縮機は、入口端部および出口端部を有し得て、圧縮機の入口端部は、熱交換器装置に面して配置され得る。そのようなエンジンモジュールは、先行技術のエンジンモジュールと比較して、熱交換器装置の長さにわたって、熱交換器装置の各熱交換器セクションの各々の内側半径方向表面と外側半径方向表面との間ではるかに均一な(すなわち一定の)圧力降下を有利に提供し得る。これは、各熱交換器セクションを通るはるかに均一な質量流量分布と相関し、機械的流れ平衡ソリューション、例えばターニングベーンなどの流れ制御手段の必要性を有利に低減または無効にする。これは、有利には、エンジンモジュールの全体的な質量のさらなる減少につながる。
【0010】
任意選択で、エンジンモジュールは、吸気装置から熱交換器までの第1の空気流路と、熱交換器から圧縮機の入口端部までの第2の空気流路とを提供し、第2の空気流路は、第1の空気流路内の空気の流れとは反対の実質的に長手方向に空気が流れることを可能にするように構成される。
【0011】
任意選択で、エンジンモジュールは、圧縮機の出口端部から1つまたは複数の推力チャンバまでの第3の空気流路を提供してよく、第3の空気流路は、第2の空気流路内の空気の流れとは反対の実質的に長手方向に空気が流れることを可能にするように構成される。
【0012】
エンジンは、ナセルをさらに含み得、入口コーン、熱交換器装置、圧縮機、および1つまたは複数の推力チャンバは、各々がナセル内に少なくとも部分的に配置される。
【0013】
任意選択で、入口コーンは軸対称であり得る。
【0014】
任意選択で、エンジンモジュールの軸は湾曲し得る。
【0015】
任意選択で、エンジンは燃料タンクをさらに含み得、燃料タンクは、熱交換器装置と1つまたは複数の推力チャンバとの間に配置される。
【0016】
1つまたは複数の推力チャンバは、各々が少なくとも1つのロケットノズルを含み得る。
【0017】
任意選択で、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールは、空気吸込モードからフルロケットモードに切り替え可能であるように構成される。ノズルは、コンプレッサからの圧縮空気と燃料とを使用して、空気吸込モードで作動し得る。ロケットモードでは、ノズルは、液体酸素と燃料とを使用して作動し得る。
【0018】
本開示の第2の態様によれば、ロケットエンジンのエンジンモジュールのための構造が提供され、前記構造は、エンジン構成要素を受け入れるための容積を規定する入口コーンを含む。エンジン構成要素は、圧縮機であり得る。
【0019】
本開示の第3の態様によれば、本発明の第1の態様によるエンジンモジュールを含む航空機、飛行機械、または航空宇宙ビークルが、その任意の特徴の有無にかかわらず提供される。
【0020】
本発明はさまざまな方法で実行されることができ、次に本発明の実施形態を添付の図面に関して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1Aは、先行技術の単段式宇宙往還(SSTO)航空機の側面図を示す。
【
図1B】
図1Bは、先行技術の単段式宇宙往還(SSTO)航空機の平面図を示す。
【
図1C】
図1Cは、先行技術の単段式宇宙往還(SSTO)航空機の背面図を示す。
【
図2】
図2は、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンの概略的サイクル図を示す。
【
図3】
図3は、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールの断面の概略図を示す。
【
図4】
図4は、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールの断面の概略図を示す。
【
図5A】
図5Aは、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールの予冷器の各熱交換器セクションの内側および外側の半径方向表面に沿った圧力プロファイルの違いを示す。
【
図5B】
図5Bは、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールの予冷器の各熱交換器セクションの内側および外側の半径方向表面に沿った圧力プロファイルの違いを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1A、
図1Bおよび
図1Cは、燃料および酸化剤貯蔵部6、7とペイロード領域8とを備えた胴体5を有する、格納式着陸装置2、3、4を備えた単段式宇宙往還(SSTO)航空機1を示す。方向舵11およびカナード12制御面をそれぞれ有する尾翼装置9およびカナード装置10は、胴体5に取り付けられる。エレボン14を有する主翼13が胴体5の両側に取り付けられ、各翼13は、その翼端16にエンジンモジュール15が取り付けられている。
図1Cおよび
図2に示すように、各エンジンモジュール15の後部には、さまざまなバイパスバーナ18に囲まれた4つのロケットノズル17を備えている。
【0023】
図2は、特許文献1から知られている先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンの概略的サイクル図を示す。その適用例として、そのようなエンジンは、本開示のエンジンモジュールに組み込まれ得る。しかしながら、本発明は、この特定のエンジン構成に限定されない。次に、本発明の理解を助けるために、そのようなエンジンの基本的な要素および作動について説明する。
【0024】
エンジンは、空気取込部19を含む。航空機が超音速で移動しているときに、空気取込部19が捕らえられた気流を斜めおよび垂直衝撃波を介して亜音速に減速するために働くように、空気取込部19は、軸対称であり得る。高マッハ数、例えば約マッハ5以上では、この減速により空気入口温度は、通常1250K超まで上昇し得る。
【0025】
空気取込部を通過する空気は、2つの流路に分かれる。これらの流路の1つである24aは、ノズルを含むバイパスバーナ18に空気を供給する。必要以上の水素がサイクルに供給され、バイパスバーナが主燃焼室と組み合わせて用いられて、燃料利用率およびエンジン性能が改善され得る。空気取込部19からの空気の別の部分は、流路24bを介して、圧縮された入口空気を冷却するために必要な予冷器として構成された第1の熱交換器装置へと通過する。先行技術の実施形態では、予冷器は、第1の熱交換器ステージ29および第2の熱交換器ステージ30を含むが、任意の数の熱交換器ステージを有する予冷器を想定することができる。熱交換器の第1のステージ29および熱交換器の第2のステージ30は、相対的に高い温度部分および相対的に低い温度部分にそれぞれ対応する。
【0026】
空気が熱交換器ステージ29、30を通過した後、空気は、以下にさらに詳述するように、タービン32により駆動される圧縮機31を通過する。圧縮機は、エンジンの性能要件に応じて所定の圧縮比を提供するように選択される。先行技術の実施形態では、圧縮機は、吸気が約16バールに圧縮されるように、通常13:1程度の圧縮比を有し得る。圧縮機は、2つのスプールを含み、チタンブレードを含み得る。
【0027】
通常、このようなエンジンには、複数の燃焼室および関連のロケットノズルが備えられる。概略図では、4つのノズル17a、17b、17c、17cが示されるが、任意の数のノズルが想定され得る。各ノズルを、2つの燃焼室タイプが共有する。一方の燃焼室タイプは、圧縮機31からの加圧空気と水素等の燃料の燃焼のための空気吸込作動モードで使用される。空気は、空気吸込燃焼室に送達される前に、プレバーナ33において水素の一部を部分的に燃焼させるために使用され得る。もう一方の燃焼室タイプは、フルロケットモードにおいて、すなわち圧縮空気の代わりに液体酸素等の搭載された酸化剤が利用される場合に使用される。
【0028】
先行技術エンジンの作動を説明する際には1つだけのノズルおよび上述のタイプの関連の燃焼室が強調されるが、提供された他の任意のロケット室/ノズルが類似または同一の様式で作動し得ること、各々が作動およびビークルに推力を提供するためにある割合の燃料および酸化剤を受け入れることを理解されたい。
【0029】
通常の航空機またはビークルは、ナセル内に設けられた4つの燃焼室/ノズルアセンブリを含み得る。しかし、ビークルに必要な推力を提供するために任意の数の室/ノズルアセンブリが提供され得る。
【0030】
4つのノズルアセンブリを各々が含む2つのナセルを備えた航空機では、ノズルアセンブリは、空気吸込式上昇の間には単一のエンジンとしてふるまい、ロケット式上昇の間には2つのツインチャンバロケットエンジンとしてふるまうように構成され得る。これはミッション信頼度を高め、エンジンを最小化するのに役立ち得る。
【0031】
圧縮機31の出口からの圧縮空気は、流路24dを介してプレバーナ33に供給される。プレバーナ33には、本実施形態においては水素の形での燃料も流路26aを介して供給され得る。水素は、通常は極低温形態で航空機に搭載されて貯蔵され、本実施形態においてはポンプまたは圧縮機40により貯蔵部64から送達される。
【0032】
プレバーナ燃焼生成物から閉ループヘリウム冷却回路28へ熱を伝達するために、プレバーナ33の下流に熱交換器27が設けられる。
【0033】
ヘリウム冷却回路28は、一部の作動モードでは、予冷器の第1のおよび第2のステージ29、30を通過し得る。予冷器は、対向流形熱交換器として作動する。そのようなモードでは、予冷器の第1のステージ29の後、すなわち第2のステージのヘリウムループの下流のステージで、ヘリウムストリームは、パス28aに沿ってプレバーナ燃焼熱交換器27へと通る。
【0034】
プレバーナ燃焼熱交換器27の後、ヘリウムループは、第1のおよび第2のヘリウムストリーム28bおよび28cに分かれる。第2のヘリウムストリーム28cは、本実施形態では約200バールの入口圧力および約60バールの出口圧力で、タービン32を通過する。圧縮機31を駆動するためにタービン32が用いられる。タービン32は、反転タービンであり得る。
【0035】
ヘリウムストリームは、タービン32を出た後、本実施形態では約600ケルビン度(600K)で熱交換器および再圧縮ステージへと通るが、このステージは、本実施形態では3つのヘリウム再生熱交換器34、35、36および再循環器、例えば圧縮機またはポンプ37、38、39を含む。
【0036】
再生熱交換器34、35、36は、表面内にマイクロチャネルが形成された何千もの拡散接合されたチタン薄板を含み得る。圧縮機または再循環器37、38、39は、遠心ターボ機械を含み得る。
【0037】
タービン32からのヘリウムストリームは、第1の、第2のおよび第3の再圧縮ヘリウムストリーム28d、28e、28fに分かれる。
【0038】
第1の再圧縮ヘリウムストリーム28dは、本実施形態では約600Kで第1の再生熱交換器34を通過し、約100Kに冷却される。それからヘリウムは、圧縮機38において、本実施形態では約60から約200バールに再圧縮され、その後第2の再生熱交換器35を通過し、第2の再生熱交換器35は、タービン32からの第2の再圧縮ヘリウムストリーム28eを本実施形態では600Kから約200Kへ冷却する働きをする。それから第1の再圧縮ヘリウムストリームは、ヘリウムストリーム28jに合流する。
【0039】
第2の再圧縮ヘリウムストリーム28eは、第2の再生熱交換器35の後、第3の圧縮機39において、本実施形態では約60バールから200バールへ再圧縮された後、ヘリウムストリーム28iへと通る。それからヘリウムストリーム28iは、プレバーナ熱交換器27からのヘリウムストリームに合流し、その後第1のダイバータ弁41に合流するが、第1のダイバータ弁41は、ここでは予冷器の第2のステージ30からのヘリウムストリームを誘導するために用いられ得る。
【0040】
第3の再圧縮ヘリウムストリーム28fは、第3の再生熱交換器36に通り、水素ストリーム26gにより、本実施形態では600から50Kに冷却される。水素ストリームには、ここでは液体水素ポンプ40の形で燃料送達装置が提供され、液体水素ポンプ40が搭載された水素貯蔵部64から水素を送達する。
【0041】
第3の再圧縮ヘリウムストリームは、熱交換器36の後、第1の圧縮機37を通過し、ここで本実施形態ではヘリウムが約60から約200バールに圧縮される。それからヘリウムストリームは、上述のように第1の再圧縮ヘリウムストリーム28dを冷却する働きをする熱交換器34を通過し、その後、熱交換器35を通過した第1の再圧縮ヘリウムストリーム28dとともにヘリウムストリーム28jに合流する。
【0042】
ヘリウムストリーム28jは、第1のダイバータ弁41に通り、第1のダイバータ弁41は予冷器の所定のステージに、ここでは予冷器の第1のステージ29の前に、追加の冷却されたヘリウムを供給するために用いられ得る。
【0043】
プレバーナ熱交換器27からのヘリウムストリームは、本実施形態では、第3の再生熱交換器36を通過した水素により、熱交換器43において約900から約300Kへ冷却される。熱交換器43に到達する前に、水素は、再圧縮ステージの第1の、第2のおよび第3の圧縮機36、37、38を駆動するために用いられるタービン44を通過する。水素は、ヘリウムを第2のダイバータ弁42に輸送するヘリウムポンプ46を駆動するためのタービン45も通過する。
【0044】
水素は、熱交換器43の後、搭載された水素貯蔵部64から水素を輸送する働きをする水素ポンプ40を駆動するタービン47を通過する。
【0045】
水素は、タービン47の後、バイパスバーナ18およびプレバーナ33に通り、それから空気吸込作動の間に、ロケットノズル17a、17b、17cの空気吸込燃焼室に通る。
【0046】
既知のエンジンでは、燃焼室は、例えば、GLIDCOP AL-20等のアルミナ分散硬化銅または他の適切な熱伝導性材料を含むライナーを使用して裏打ちされ得る。このような熱伝導性材料は、空気吸込作動モードの間に燃焼室において達し得る高い壁温を考慮して採用され得る。これにより、壁の熱ストレスが回避される。この作動モードでは、燃焼室における膜冷却により水素を用いて燃焼室が膜冷却され得る。
【0047】
既知のエンジンでは、ノズル17a、17b、17c、17dは、例えば、SEP-CARBINOXの最終放射冷却拡張部を有する管状冷却スカートを含む。これは、エンジン冷却のために冷却剤が利用できないときに、ノズルが大気圏再突入の間の外部空気流加熱に耐えることを可能にしようとするものである。本実施形態では、冷却管状スカートは、複数の管を含み得るインコネル等の高温合金から作られる。
【0048】
先行技術のエンジンでは、空気吸込モードの間には、スカートの管に水素を通すことにより液体水素がノズルスカートを冷却するように構成され得る。ロケットモードでは、水素は、ロケット燃焼室の噴射器(図示せず)に入る前に、別個のロケット燃焼室53のライナーおよび管状スカートを通過し得る。
【0049】
予冷器29、30は、空気吸込モードにおいて入口空気を冷却するために用いられる。本実施形態では、予冷器29、30は、閉ループの高圧ヘリウムガスを冷媒として使用する高性能熱交換器である。空気吸込モードのヘリウムループについては、以下でさらに詳述する。
【0050】
適切な予冷熱交換器は、通常は20~30マイクロメートルの薄壁の直径1mm未満の冷却チャンネルまたはチューブのマトリックスを有する対向流形熱交換器として構成され得る。必要な性能を提供するために、例えば300,000~600,000本などの多数のそのようなチューブが各熱交換器内に渦巻き状のスパイラルとして入れ子状に設けられる。チューブは、入口から出口まで螺旋状の通路にしたがい、チューブが半径方向または軸方向に延び得る。先行技術の実施形態では、予冷器は、入口空気を作動モードに応じて1250Kの温度から約400K以下の温度に冷却できるように構成される。先行技術の実施形態では、全ての速度で、空気の温度は水の氷点すなわち摂氏0度より上に維持される。
【0051】
上に概説したように、ポンプ40により貯蔵部64から水素が供給され、熱交換器36および43を介してヘリウム回路を冷却するために用いられる。燃料ポンプ40のキャビテーションを防ぎ、フィードラインに閉じ込められる残留流体を最小限にするために、ブーストポンプ(図示せず)が提供されてもよい。
【0052】
水素は、水素タービン47の後、流路26aに沿ってプレバーナ33に供給される。水素は、流路26b、26eを介してバイパスバーナ18にも供給され得る。加えて、空気吸込モードでは、水素が流路26cおよび26dに沿ってロケット燃焼室に供給され、流路25aおよび25bに沿って送達されるプレバーナ燃焼生成物とともに燃焼される。空気吸込モードでは、空気吸込燃焼室は、約12バールで作動する。この空気吸込燃焼室は、約170バールの相対的にはるかに高い圧力で作動するフルロケットモードで使用されるロケット燃焼室とは別個である。
【0053】
ロケットモードでは、燃料送達システムを使用して各ロケットノズルおよび燃焼室装置に水素が供給されるが、燃料送達システムは、本実施形態では、搭載された水素貯蔵部61と約315バールの圧力を達成する一連のポンプ48とを含む。本実施形態では、水素がまずロケット燃焼室53の冷却を提供するために送達される。
【0054】
水素は、燃焼室53を冷却するために使用された後、燃焼室プレバーナ52に供給され、本実施形態では液体酸素ポンプ50と補給ポンプ54とを含む酸化剤送達システムにより供給される酸素を用いて部分的に燃焼される。
【0055】
ロケットプレバーナ52の燃焼生成物は、酸素および水素ポンプ48、50、54を駆動するタービン49、51を駆動する働きをする。
【0056】
それからプレバーナ52の燃焼生成物は、酸素ポンプ50により供給される追加の酸素を用いて、燃焼室53で完全に燃焼される。
【0057】
先行技術のエンジンの空気吸込作動モードでは、ロケット室のための酸化剤としての液体酸素は必要とされない。このようなエンジンを含む航空機は、空気吸込により別個の酸素源を使用することを必要とせずに、追加の推進手段を用いずに離陸できるため、航空機に追加の酸化剤を載せる必要性が減少することから大きな重量効果がある。
【0058】
プレバーナ33の排気は、熱交換器27を介してヘリウムを本実施形態では約930Kおよび200バールの圧力に予熱するために用いられ、その後ヘリウムがタービン32に通って吸気圧縮機31を駆動する。空気吸込モードの間の航空機のマッハ数から独立した、本実施形態では通常は約930Kのヘリウムの一定の上部サイクル温度を維持するために、例えば燃焼される水素の量が制御されるなどしてプレバーナ33が制御される。
【0059】
プレバーナ33は、流路24dに沿って供給される圧縮空気を用いて搭載された貯蔵部64からの水素を燃焼させる。プレバーナ出口ガスは、パス25aに沿って流れてから空気吸込燃焼室55に供給される。
【0060】
プレバーナ33は、先行技術のエンジンの性能要件に応じて選択され得るが、先行技術の実施形態では、プレバーナ33および熱交換器27は、水素リッチ燃焼器と単一の浮動チューブシートを有するシェルアンドチューブ熱交換器とからなる一体的ユニットを形成する。
【0061】
図3は、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15の断面の概略図を示し、
図2に関連して上記のようにエンジンを組み込み得る。従来のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15は、吸気装置19aと、4つの熱交換器セクション63a、63b、63cおよび63dを含む予冷器21の形態の熱交換器装置と、圧縮機31とを含み、これらはすべて、エンジンの縦軸に沿って普通に配置され、
図1A、
図1Bおよび
図1Cに示すように、航空機1の航空機翼13などの航空機翼13に取り付けられ得るナセル29内に含まれる。
【0062】
先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15は、吸気装置19aが空気を受け入れて、その一部が次に予冷器21に流入するように構成されるように、
図2に示され、かつ上記のようなサイクルで作動することができる。予冷器21は、入口空気を冷却する。予冷器21を通る空気の流れに続いて、空気吸込燃焼室の形態である1つまたは複数の推力チャンバ17に流れる前に、空気は、次に圧縮機31を通って流れる。
【0063】
本開示のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールは、空気吸込モードから完全ロケットモードに切り替え可能であるように構成されたエンジンを含み得る。これは、例えば、
図2の構成およびサイクルを有するエンジンを使用することによって達成され得る。したがって、本開示のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールは、
図2および
図3に記載され示されている従来のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールと類似または同一の方法で作動することができ、本明細書に記載の構成要素は、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールに関して上記のものと構造的および/または機能的に類似または同一であり得ることが理解される。次に、
図4を参照して、本開示のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールの構造レイアウトを説明する。
【0064】
図4は、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70の断面の概略図を示す。ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70は、吸気装置62、予冷器63の形態の熱交換器装置、圧縮機64、および各々が少なくとも1つのロケットノズルを含む1つまたは複数の推力チャンバ65を含む。それらのすべては、エンジンモジュール70の長手方向軸69(湾曲または実質的に真っ直ぐであり得る)にほぼ沿って配置され、ナセル66内に含まれる。エンジンモジュールの主要な要素のみが強調表示されているが、例えば、
図2に関連して上で説明されたものなど、エンジンの他の要素が存在し得ることが理解される。ナセル66は、
図1A、
図1Bおよび
図1Cに示すように、航空機1の航空機翼13などの航空機翼13に取り付けることができる。図示の実施形態では、ナセル66は、実質的に湾曲したテーパー付けられた中空体として形成される。
【0065】
熱交換器装置63が圧縮機64と1つまたは複数の推力チャンバ65との間に物理的に配置されるように、吸気装置62、熱交換器装置63、圧縮機64、および1つまたは複数の推力チャンバ65は、エンジンモジュール70の長手方向軸69にほぼ沿って配置されまたは位置づけられる。有利には、これは、より詳細に説明されるように、全長が短縮されたエンジンモジュールを提供する。吸気装置62、圧縮機64、熱交換器装置63、および1つまたは複数の推力チャンバ65は、各々がそれぞれの軸、例えば長手方向軸、を有し得る。
図4に示す実施形態では、吸気装置62、熱交換器装置63、および圧縮機64のそれぞれの軸は、エンジンモジュール70の軸69とほぼ一致して配置されている。さらに、
図4に示す実施形態では、1つまたは複数の推力チャンバ65の軸が、エンジンモジュール70の軸69とほぼ一致して配置されるように、個々の推力チャンバは、エンジンモジュール70の軸69の周りに対称的に分散または配置される。あるいは、吸気装置62、圧縮機64、熱交換器装置63、および1つまたは複数の推力チャンバ65のそれぞれの軸のうちの1つまたは複数は、前記1つまたは複数のそれぞれの軸が、エンジンモジュール70の軸69に沿って離間されたときに、エンジンモジュール70の軸69とほぼ一致するように配置されないように、エンジンモジュール70の軸69と平行にまたはそれから間隔を置いて配置され得ることが想定される。例えば、エンジンモジュール70は、第2の吸気装置を含み得、ここで、吸気装置62および第2の吸気装置のそれぞれの軸がエンジンモジュール70の軸69に平行にまたはそれから間隔を置いて配置され得るように、吸気装置62および第2の吸気装置は、エンジンモジュール70の軸69の周りに対称的に分散または配置され得る。別の例として、熱交換器装置63は、熱交換器装置63の軸がエンジンモジュールの軸69に平行にまたはそれから離れて配置され得るように配置され得る。
【0066】
エンジンモジュール70の長手方向軸69は、エンジンモジュール70の両端を規定する第1のすなわち近位端部69aおよび第2のすなわち遠位端部69bを有する。軸69の第2の端部69bは、軸69の第1の端部69aの下流に位置している。軸の第1の端部69aは、エンジンモジュール70の第1の端部71aにあり、軸の第2の端部69bは、エンジンモジュール70の第2の端部71bにある。吸気装置62は、軸69の第1の端部69aすなわちエンジンモジュール70の第1の端部71aに配置され、1つまたは複数の推力チャンバ65は、軸69の第2の端部69bすなわちエンジンモジュール70の第2の端部71bに配置される。
【0067】
吸気装置62は、空気が吸気装置62に入り、エンジンモジュール70によって捕捉されるように構成された空気入口62aを備える。吸気装置62はまた、図示の実施形態では軸対称であり、実質的に円錐形である少なくとも部分62fを有する入口コーン62bを含む。示される実施形態では、入口コーン62bは、軸69の第1の端部69a、すなわちエンジンモジュール70の第1の端部71aに配置された頂点62eを有する。頂点62eは、入口コーン62bの実質的に円錐形の第1の部分62fの頂点であり、頂点62eから離れる方向に半径方向外向きにテーパー付けられている。入口コーン62bは、頂点から離れる方向に半径方向内向きにテーパー付けられて、切り詰められた実質的に円錐形を形成する第2の部分62gを含む。入口コーン62bの実質的に円錐形の第1の部分62fおよび第2の部分62gは、それらの間に実質的に湾曲した遷移セクション62hを有する。
【0068】
入口コーン62bは、内面および外面を有する。入口コーン62bの内面は、入口コーン62bの内側の内部容積62cを規定する。入口コーン62bの外面とナセル66の内面との間に、テーパー付けられた環状容積62dが規定されており、環状容積62dは、入口コーン62bの外面がナセル66の内面に対してテーパー付けられているために先細になっている。入口コーン62bの外面およびナセル66の内面によって規定される先細の環状容積62dは、空気入口62aによって捕捉された気流を、斜めおよび通常の衝撃波を介して亜音速に減速するのに役立つ。マッハ数が高い場合、例えばマッハ5以上では、この減速により、空気入口温度が通常1250Kを超えるまで上昇する可能性がある。捕捉された気流がこのように減速されるための流路を提供するのは、先細の環状容積62dである。空気入口62aは、先細の環状容積62dによって構造的に規定されている。空気入口62aは、先細の環状容積62dの最上流の端部(すなわち、軸69の第1の端部69aまたはエンジンモジュール70の第1の端部71aに近接または隣接して物理的に配置された先細の環状容積62dの端部)である。
【0069】
空気入口62aは、軸69の第1の端部69aに隣接して配置されている。したがって、エンジンモジュール70の構造レイアウトでは、圧縮機64は、空気入口62aと熱交換器装置63との間に配置されている。有利には、これは、
図3の先行技術のエンジンモジュール15の構造レイアウトと比較した場合、熱交換器装置63と1つまたは複数の推力チャンバ65との間の距離を短縮することを可能にする。これは、
図3の先行技術のエンジンモジュール15の構造レイアウトのように、熱交換器装置と1つまたは複数の推力チャンバとの間に圧縮機を取り付けるために追加のスペース/縦方向距離を提供する必要がないので、熱交換器装置63と1つまたは複数の推力チャンバ65とを、エンジンモジュール70の長手方向軸69に沿って、はるかに接近して、または直接隣接して配置することができるからである。結果として、エンジンモジュール70の全長を大幅に短縮することができ、その結果、よりコンパクトで軽量のエンジンモジュール70が得られ、外部の空気力が低減される。エンジンモジュール70は、熱交換器装置63と推力チャンバ65との間に配置された燃料タンク(図示せず)をさらに含むことができる。
【0070】
示される例では、圧縮機64は、エンジンモジュールの近接端部の入口コーン62bの内側に実質的に完全に配置され、すなわち、圧縮機64は、入口コーン62b内の容積62c内に配置されて容積62c内を占める。しかしながら、圧縮機64は、入口コーン62bの内側に少なくとも部分的にのみ配置することができ、すなわち、圧縮機64は、入口コーン62b内の容積62c内に部分的にのみ配置されて容積62c内を部分的にのみ占めることができると想定される。有利なことに、例えば
図3のような先行技術のエンジンモジュールの構造レイアウトと比較した場合、圧縮機64を少なくとも部分的に入口コーン62b内に配置することは、入口コーン62b内のそうでなければ空の容積62cを利用し、熱交換器装置63と1つ以上の推力チャンバ65との間の距離を減少させることができる。結果として、エンジンモジュール70の全長を大幅に短縮することができ、その結果、よりコンパクトで軽量のエンジンモジュール70が得られ、外部の空気力が低減される。
【0071】
圧縮機64は、予冷器63から空気が受け入れられる入口端部64aと、圧縮空気が圧縮機64から排出される出口端部64bとを有し、出口端部64bの空気は、入口端部64aの空気よりもより高い圧力である。示される実施形態では、圧縮機64は「逆流」方向に配向され、これは、圧縮機64の入口端部64aが予冷器63に面して配置され、すなわち、圧縮機64の入口端部64aが予冷器63の近くに配置され、そして圧縮機64の出口端部64bが空気入口62aに面して配置され、すなわち、圧縮機64の出口端64bが空気入口62aの近くに配置されることを意味する。有利なことに、これは、圧縮機64が同じ場所に取り付けられた場合(すなわち、予冷器63が圧縮機64と1つまたは複数の推力チャンバ65との間に配置された場合)と比較して、予冷器63の出口を圧縮機64の入口端部64aに接続するために必要なダクトの長さを短縮するが、反対方向である(すなわち、圧縮機の入口端部64aが空気入口62aに面して配置され、圧縮機の出口端部64bが予冷器63に面して配置されている)。
【0072】
熱交換器装置63は、吸気装置62からの入口空気を冷却する予冷器として構成されている。予冷器は、2つ以上の熱交換器セクションまたはステージを含む。図示の実施形態では、予冷器63は、4つの熱交換器セクション63a、63b、63c、および63dを有するが、任意の数の熱交換器セクションを想定することができる。
【0073】
吸気装置62、予冷器63、および圧縮機64の間の空気の流路を示す
図4に示す矢印を参照して、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70の構造的レイアウトによって提供される空気流路について、より詳細に説明する。吸気装置62は、捕捉された気流を減速させるのに役立つ。この減速は、矢印72によって示すように、空気の一部が入口コーン62bの外面とナセル66の内面との間を流れるにつれて、空気の温度を上昇させることができる。
【0074】
エンジンモジュール70には、吸気装置62から予冷器63の入口までの第1の空気流路67が設けられる。第1の空気流路67は、実質的に長手方向(すなわち、エンジンモジュール70の軸69に実質的に平行)であり、軸の第1の端部69aから離れて、軸の第2の端部69bに向かう方向である、第1の方向を有する。次に、第1の空気流路は90度回転して、実質的に半径方向であり、エンジンモジュール70の軸69に向かう方向(すなわち、半径方向内向き)である、第2の方向を有する。
【0075】
エンジンモジュール70には、予冷器63の出口から圧縮機64の入口端部64aまでの第2の空気流路68が設けられる。第2の空気流路68は、実質的に半径方向であり、エンジンモジュール70の軸69に向かう方向(すなわち、半径方向内向き)である、第1の方向を有する。次に、第2の空気流路68は90度回転して、実質的に長手方向(すなわち、エンジンモジュール70の軸69に実質的に平行)であり、軸69の第2の端部69bから離れて、軸69の第1の端部69aに向かう方向である、第2の方向を有する。すなわち、第2の空気流路68は、第1の空気流路67内の空気の流れと反対の実質的に長手方向に空気が流れることを可能にするように構成される。
【0076】
第3の空気流路が、圧縮機64の出口端部64bから1つまたは複数の推力チャンバ65まで設けられる。第3の空気流路は、実質的に長手方向(すなわち、エンジンモジュール70の軸69に実質的に平行)であり、軸69の第1の端部69aから離れて、軸69の第2の端部69bに向かう方向である。すなわち、第3の空気流路は、第2の空気流路68内の空気の流れと反対の実質的に長手方向に空気が流れることを可能にするように構成される。
【0077】
一組のダクト73が、圧縮機64の出口端部64bから1つまたは複数の推力チャンバ65まで設けられる。ダクト73は、第3の空気流路がダクトを通って流れることを可能にするように構成される。
【0078】
圧縮機64と1つまたは複数の推力チャンバ65との間に熱交換器装置63を物理的に配置すると、先行技術のエンジンモジュール15の圧縮機31および1つまたは複数の推力チャンバ17と比較して、圧縮機64と1つまたは複数の推力チャンバ65との間の長手方向距離/分離が増加する。これは、先行技術のエンジンモジュール15のように、圧縮機64が1つまたは複数の推力チャンバ65のより近くに物理的に配置されている場合よりも、第3の空気流路のダクト73の長さがより長くなる必要があることを意味する。ダクト73のこの増加した長さは、ダクト73の質量の増加をもたらす。しかしながら、この質量の増加は、エンジンモジュール70の全長の減少によって提供される、エンジンモジュール70全体の質量の有利な有意な減少によって相殺される。
【0079】
ダクト73は、ダクト73の内面を断熱し、ダクト73を予冷器63の半径方向内面に物理的に配置し、それを通って1つまたは複数の推力チャンバまで長手方向に延在することによって、低温材料を使用して形成することができる。
【0080】
このハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70のさらなる利点は、計算流体力学(CFD)を使用して示されたように、エンジンモジュール70の構造レイアウトが、予冷器63の長さにわたる予冷器63の熱交換器セクション63a、63b、63cおよび63dの各々の半径方向内面と半径方向外面との間で、先行技術のエンジンモジュール15と比較して、はるかに均一な(すなわち一定の)圧力降下を提供することである。
図5Aは、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15の4つの熱交換器セクションを含む例示的な予冷器の各セクションの半径方向内面および半径方向外面に沿った圧力プロファイルを示す。
図5Bは、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70の4つの熱交換器セクションを含む予冷器63の各セクションの半径方向内面および半径方向外面に沿った圧力プロファイルを示す。
図5Aおよび
図5Bの両方において、x軸は、予冷器63に沿ったメートル単位の位置(すなわち、距離)を表し、y軸は、パスカル単位の静圧を表す。
図5Aおよび
図5Bの両方において、圧力曲線は、予冷器の4つの熱交換器セクションの各々の半径方向内面および半径方向外面の両方についてプロットされている。
【0081】
図5Aおよび
図5Bの熱交換器セクションの半径方向内面および半径方向外面に沿ったそれぞれの圧力プロファイル間の差は、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15のレイアウトと比較して、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70のレイアウトが、予冷器63の長さにわたる(すなわち、すべての熱交換器セクションにわたる)各熱交換器セクションの半径方向内面と半径方向外面との間ではるかに均一な圧力降下を提供することを示す。先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15のレイアウトでは、
図5Aに示すように、予冷器21の各熱交換器セクションにわたる圧力降下に有意な不一致がある。例えば、各熱交換器セクションの半径方向内面と半径方向外面との間の圧力降下間の予冷器の長さ全体(すなわち、第1の熱交換器セクションと第4の熱交換器セクションとの間)の最大差は、約30kPaにもなる可能性がある。各熱交換器セクションにわたる圧力降下のこの差は、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15のレイアウトにおける各熱交換器セクションを通る質量流量の不一致に直接関係している。この質量流量の不一致は、高いマッハ数で流れを適切に冷却するための問題を引き起こす可能性がある。
【0082】
従来のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15とは対照的に、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70では、各熱交換器セクション63a、63b、63cおよび63dにわたる圧力降下の大きさ(すなわち、半径方向内面と半径方向外面との間の圧力差)は、はるかに一定、つまり類似している。例えば、
図5Bに示すように、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70の第1の熱交換器セクションの半径方向内面と半径方向外面との間の圧力降下、および第4の熱交換器セクションの半径方向内面と半径方向外面との間の圧力降下は、それぞれ、約17.5kPaおよび25kPaである可能性がある。これは、各熱交換器セクションの半径方向内面と半径方向外面との間の圧力降下間の予冷器の長さ全体(すなわち、第1の熱交換器セクションと第4の熱交換器セクションとの間)の最大差が、先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15の約30kPaと比較して、わずか約7.5kPaであることを表す。
【0083】
これは、各熱交換器セクションを通るはるかに均一な質量流量分布と相関している。これは次に、圧縮機の入口端部64aでの全体温度均一性の増加につながり、機械的流れ平衡ソリューション、例えばターニングベーンなどの流れ制御手段の必要性を低減または無効にする可能性があり、したがって、エンジンモジュール70の全体の質量のさらなる削減につながる。
【0084】
本明細書に記載されるように、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70は、有利には、エンジンモジュール70の全長を大幅に短縮することを可能にする。これは、圧縮機64と1つまたは複数の推力チャンバ65との間に熱交換器装置63を配置することによって達成される。これにより、圧縮機を、吸気装置62の入口コーン62bの内側に少なくとも部分的に配置することが可能になる。先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール15と比較して、このレイアウトは、熱交換器装置63と1つまたは複数の推力チャンバ65との間の距離を短縮し、吸気装置62の入口コーン62b内の空の容積62cを利用する。したがって、ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70のレイアウトは、エンジンモジュール70内の空間を効率的に利用し、縦方向に短くなることで、全体の容積および質量が減少する。さらに、エンジンモジュール70がよりコンパクトであるため、ナセルの外部空気力も低減される。
【0085】
本開示はまた、本明細書に記載されるようなハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュール70を含む航空機、飛行機械または航空宇宙ビークルを含むことを理解されたい。
【0086】
添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対してさまざまな修正を行うことができる。