(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】シャフト内部の機械加工工具及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
B23B 29/034 20060101AFI20240925BHJP
B23B 27/00 20060101ALI20240925BHJP
B23B 27/10 20060101ALI20240925BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240925BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20240925BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20240925BHJP
B23B 49/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B23B29/034 Z
B23B27/00 D
B23B27/10
B23Q11/10 D
B23Q17/09 Z
B23Q17/20 A
B23B49/00 A
(21)【出願番号】P 2021517511
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2019063421
(87)【国際公開番号】W WO2019228915
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-23
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520471483
【氏名又は名称】コーニンクルッケ ルフトファールト マートスハッペイ エヌ.ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE LUCHTVAART MAATSCHAPPIJ N.V.
【住所又は居所原語表記】Amsterdamseweg 55,1182 GP Amstelveen(NL)
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン エス,マリオ コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】オッテファンゲル,マールテン
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108473(JP,A)
【文献】特開2014-054678(JP,A)
【文献】特開2014-054677(JP,A)
【文献】特開2012-020384(JP,A)
【文献】特開2011-088242(JP,A)
【文献】特開2010-217144(JP,A)
【文献】特開2010-099797(JP,A)
【文献】特開2009-241249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0079120(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0129170(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0054879(US,A1)
【文献】米国特許第06149561(US,A)
【文献】米国特許第8888419(US,B2)
【文献】国際公開第2018/190038(WO,A1)
【文献】米国特許第8506210(US,B2)
【文献】米国特許第8839699(US,B2)
【文献】仏国特許出願公開第2928568(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23B 35/00-49/06
B23Q 11/10
B23Q 17/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部ボア(3)を有するシャフト(2)の内部を機械加工するための機械加工工具であって、
内部が機械加工されるべき前記シャフト(2)の前記内部ボア(3)の片側(4)の最小開口よりも小さい直径を有するように構成されたボーリングバー(6)と、
前記ボーリングバー(6)を支持するように構成された外側支持装置(5)と、
使用中に前記内部ボア(3)内で前記ボーリングバー(6)
を軸方向に移動させるように構成された軸方向駆動ユニット(11)と、
を備え、前記ボーリングバー(6)が、
前記軸方向駆動ユニット(11)に接続された主要部分(6a)と、
前記ボーリングバー(6)の前記主要部分(6a)に設けられた、半径方向に延出可能な切削インサート(7)と、
前記ボーリングバー(6)の前記主要部分(6a)に回転可能に接続された、前記ボーリングバー(6)の端部(6b)と、
を含み、
前記端部(6b)には、ガイドパッド直径設定ユニット(14)により遠隔制御される半径方向に移動可能な1以上のガイドパッド(8)が設けられ、
前記半径方向に延出可能な切削インサート(7)が切削直径設定ユニット(13)により遠隔制御され、
前記ガイドパッド直径設定ユニット(14)には、前記ボーリングバー(6)をその動作中に前記内部ボア(3)内の中央に保つためのフィードバック制御ループを構成するためにトルク検出装置が設けられ、かつ、
前記半径方向に移動可能な1以上のガイドパッド(8)には、前記ガイドパッド(8)の引張圧力を連続的に監視するように構成された力センサが設けられている
ことを特徴とする、機械加工工具。
【請求項2】
前記ボーリングバー(6)の前記端部(6b)には、前記半径方向に移動可能なガイドパッド(8)が少なくとも3つ設けられている、請求項1に記載の機械加工工具。
【請求項3】
前記ガイドパッド(8)がプラスチック材料を含む、請求項1または2に記載の機械加工工具。
【請求項4】
前記ボーリングバー(6)の前記主要部分(6a)が、さらに、内部ボア直径測定装置(9)を含み、
前記内部ボア直径測定装置(9)が、前記ボーリングバー(6)の前記主要部分(6a)において前記半径方向に延出可能な切削インサート(7)と共に配置され、かつ、
前記内部ボア直径測定装置(9)が、前記ボーリングバー(6)の前記主要部分(6a)に設けられたキャビティ内に配置されている、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の機械加工工具。
【請求項5】
前記内部ボア直径測定装置(9)がレーザベースの測定装置(9)とされている、請求項4に記載の機械加工工具。
【請求項6】
前記内部ボア直径測定装置(9)が保護カバー(9a)を含む、請求項4または5に記載の機械加工工具。
【請求項7】
さらに、前記軸方向駆動ユニット(11)、前記切削直径設定ユニット(13)および前記ガイドパッド直径設定ユニット(14)にそれぞれ接続された、工具制御ユニット(16)を備えている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の機械加工工具。
【請求項8】
さらに、前記軸方向駆動ユニット(11)、前記切削直径設定ユニット(13)、前記ガイドパッド直径設定ユニット(14)および前記内部ボア直径測定装置(9)にそれぞれ接続された、工具制御ユニット16を備えている、請求項4ないし6のいずれか一項に記載の機械加工工具。
【請求項9】
さらに、動作中に冷却液を前記ガイドパッド(8)から前記半径方向に延出可能な切削インサート(7)の方向に勢いよく流すように構成された冷却材供給装置を備えている、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の機械加工工具。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の機械加工工具の動作方法であって、前記内部ボア(3)を予め決められた機械加工プロファイルに従って機械加工するステップを含み、
前記ステップが、前記半径方向に移動可能な1以上のガイドパッド(8)を遠隔制御することにより、および、前記半径方向に延出可能な切削インサート(7)の切削直径の、前記半径方向に延出可能な切削インサート(7)の軸方向位置の関数としての調整を遠隔制御することにより行われる、前記動作方法。
【請求項11】
前記内部ボア(3)の前記機械加工の前および/または後に内部ボア軸方向直径プロファイルを測定するステップをさらに含む、請求項10に記載の動作方法。
【請求項12】
前記測定するステップが、前記内部ボア(3)に沿った複数の予め決められた軸方向位置で前記内部ボア軸方向直径プロファイルを測定するステップを含む、請求項11に記載の動作方法。
【請求項13】
前記測定された内部ボア軸方向直径プロファイルを予め決められた機械加工プロファイルに変換するステップをさらに含む、請求項12に記載の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部ボアを有するシャフト、例えば航空機エンジンのタービンシャフトの内部機械加工(マシニング)のための機械加工工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、長尺シャフトの内面機械加工装置を開示している。長尺シャフト支持装置が長尺シャフトを曲がらないように固定する。長尺シャフトは内部ボアを有し、この内部ボア内に機械加工ヘッドが、ヘッド支持装置を用いて長尺シャフトの一端から軸方向に配置され得る。ブレード駆動装置が機械加工ヘッドに長尺シャフトの他端から接続されて、機械加工ヘッドのブレードを回転駆動させる。ブレード駆動装置とヘッド支持装置とが長尺シャフトにおいて反対側の部品となるため、この配置は多くのスペーを必要とする。さらに、長尺シャフトの内面が支持装置の支持ローラにより損傷を受ける可能性があり、直径が軸方向に変化するボアには適用され得ない。
【0003】
特許文献2は、内部ボアを有するシャフトの内部機械加工用の機械加工工具を開示している。この工具は、ボーリングバー、切削インサート、及び、ボーリングバーの主要部分に接続された回転可能な端部を備えている。ボーリングバーの端部に、半径方向に移動可能な1以上のガイドパッドが設けられている。
【0004】
特許文献3は、少なくとも1つのカッターホルダ(好ましくはロッカー型カッターホルダ)がその上に取り付けられたベース本体を有する工具を開示している。カッターホルダは、工具の軸に対して横方向に調整され得るように取り付けられている。
【0005】
特許文献4は、内部ボアを加工するための工具を開示しており、この工具において、スピンドルヘッドを反対側に押すために、管摩耗パッドがワークピース(加工対象物)の内側に押し付けられて使用される。
【0006】
特許文献5は、長尺シャフトの内面を切削するための装置を開示している。この装置は半径方向に移動可能な3セット以上のフリーローラを使用するボーリングバーを備え、フリーローラは、ボーリングバーの軸方向移動及び回転を可能にし且つ支持するように回転できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8,839,699号明細書
【文献】西独国特許出願公開第1086110号明細書
【文献】米国特許第6,394,710号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2136962号明細書
【文献】米国特許第8,839,699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、細長いシャフトの内部ボアを、当該内部ボアの内径プロファイルが前記シャフトの片側又は両側に幅狭の開口部を含む場合でも機械加工するのに特に適した、改良された機械加工工具及び機械加工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上述のように定義された機械加工工具が提供され、この機械加工工具は、ボーリングバー外側支持装置とボーリングバーとを備え、当該ボーリングバーは、前記シャフトの前記内部ボアの片側の最小開口よりも小さい直径を有するように構成されている。前記ボーリングバーは、半径方向に延出可能な切削インサートを含み、前記ボーリングバーの端部が前記ボーリングバーの主要部分に回転可能に接続されている。前記端部に、半径方向に移動可能な1以上のガイドパッドが設けられている。より具体的には、請求項1に記載の方法が提供される。この方法は、細長いシャフトの内部ボアの内面を非常に正確に機械加工することを可能にする。
【0010】
本発明を、添付図面を参照しつつ、以下に、より詳細に論じる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】プロファイルされた内部ボアを有するシャフトの断面図である。
【
図2】本発明による機械加工工具の一実施形態の断面図である。
【
図3】本発明による機械加工工具の一実施形態のボーリングバーの部分斜視図である。
【
図4】本発明による機械加工工具の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を、複数の例示的な実施形態に関して、また、概してシャフトの内部ボアの機械加工に関して説明する。内部ボアを備えたこのようなシャフトは、例えば、航空機のエンジンタービンシャフト(ファンミッドシャフト)として用いられ、より具体的には、内部ボアの機械加工は、シャフト内で生じ得るいずれの内部腐食も除去するために用いられる。
図1は、プロファイルされた(profiled)内部ボア3を有するシャフト2の断面図を示し、この例において内部ボア3は、制限された開口をシャフト2の一端4に有し、この開口の直径は直径d
sである。長期間の使用後に内部ボア3の表面は内部腐食し得る。この腐食を、航空機関連のメンテナンスで通例のように、厳密に規制された要件に従って除去しなければならない。しかし、腐食したシャフト2はエンジンに組み込めず、また、修理不能で廃棄しなければならない場合、本発明の実施形態は、特に航空機エンジンのメンテナンスに関わる人員に、また、航空機の操縦者のためにも有益であろう。腐食を除去するために必要な機械加工作業は旋盤加工(ターニング)であるが、これらのタイプのシャフト2の内部領域にアクセスするのは容易でないため、この機械加工作業が全く容易ではないことに留意されたい。
図1の例に示されているように、内部ボア3の断面は可変であり、一端においては開口直径がおそらくは小さく、円筒状の内部ボア部又は先細状の内部ボア部においては様々な断面を有し、さらに、直径d
sを有する制限された開口を有して、長尺の内部ボア3へのアクセスを困難にしている。
【0013】
シャフト2の内部ボア3を機械加工しようとするときに遭遇する特定の問題は、適切で好適な工具支持体が無いために正常な機械加工作業を行えないことである。工具支持体がなければ、内部ボア3の要求される表面仕上げ及び寸法精度を満たすことができない。この制限のために、特別な機械加工工具を開発した。これを、幾つかの例示的な実施形態を参照して本明細書に記載する。
【0014】
このタイプの機械加工作業の実行を困難にするその他の要因は、幾つかの用途において、機械加工されるべき材料が非常に硬く(例えば、硬化鋼54HRc)、また、上述のように、シャフト2の両端においてシャフト2の内部ボア3が小さい直径領域を有し、これが機械加工作業を妨げることである。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、内部ボア3を有するシャフト2の内部の機械加工のために、機械加工工具が提供される。この機械加工工具は、
図2の断面図及び
図3の斜視図に示されているように、ボーリングバー外側支持装置5及びボーリングバー6を備えている。ボーリングバー6は、シャフト2の内部ボア3の片側4における直径d
sの最小開口(上記の
図1を参照)よりも小さい直径d
bを有する。さらに、ボーリングバー6は、半径方向に延出可能な切削インサート7と、ボーリングバー6の主要部分6aに回転可能に接続されたボーリングバー6の端部6bとを備えている。最後に、端部6bに、半径方向に移動可能な1以上のガイドパッド8が設けられている。本発明の機械加工工具を使用すれば、内部ボア3に片側4からのみアクセスすることが可能であり、しかも、ボーリングバー6は、また、正確な機械加工を可能にするように完全に支持されもする。バー外側支持装置5は、例えば、支持ベアリングとして実装されることができ、この支持ベアリングは、ボーリングバー6の挿入及び引抜き中に、シャフト2の一端4から所定の距離に、すなわち、切削インサート7(及びシャフト6の端部6a)から離れて保持される。このようなバー外側支持装置5が、最小開口直径d
s(
図1を参照、シャフトの内部ボア3の片側4にある)のボーリングバー6に衝突することを防止する。この衝突は、ボーリングバー6がその質量のために少なくとも10mmも下向きに曲がり得ることによる。支持パッド8は、必要な寸法精度、ランアウト(振れ)精度及び表面仕上げが得られることを、機械加工作業中にシャフト2の堅固な支持をもたらすことにより保証する。適切な機械加工工具支持体が無ければ、振動が生じて表面仕上げの質が低下するであろう。
【0016】
図2及び
図3の例示的な実施形態に示されているように、ボーリングバー6は主要部分6a及び端部6bを含むことができ、ボーリングバー6の端部6bがボーリングバー6の主要部分6aに対して回転可能に接続されていることに留意されたい。半径方向に移動可能な1以上のガイドパッド8が、端部6bをシャフト2の内部ボア3に解除可能にクランプさせるように構成されている。半径方向に延出可能な切削インサート7が主要部分6a上に設けられているため、この構成は、ボア3の内面上での非常に正確に且つ制御された動作を可能にする。
【0017】
切削インサート7が半径方向に延出可能であるため、ボーリングバーの直径dbを、内部ボア3を有する特定のタイプのシャフト2に対して可能な限り大きいように選択し得る。これは、シャフト2の長尺にわたって十分な剛性を得るためである。例示的な実施形態において、機械加工動作長さは2130mm、最小直径は92mmであり、従って、機械加工動作長さの、ボーリングバー(6)の直径に対する比は、約20(より正確には23)であり、10~30の範囲内であり得る。
【0018】
ボーリングバー6の主要部分6aに対して回転可能なボーリングバー6の端部6bに支持パッド8を有することにより、機械加工工具の(内部ボア3の表面に対する)非回転支持体を有することが可能である。これはまた、シャフト2の内部領域の機械加工も可能にし、シャフト2の内部領域は、これ以外の既存の方法では全く機械加工され得ない。これらの支持パッド8は、内部ボア3の軸方向の内径変化に追従できる(例えば、継続的に監視される延出圧力を使用する。以下をさらに参照されたい)。これらの支持パッド8が無ければ、機械加工工具のボーリングバー6は、その質量により下向きに少なくとも10mmも曲がり得る。これは、機械加工を不可能にし、機械加工工具とシャフト2との衝突を生じさせる。
【0019】
ボーリングバー6の回転端部6bが支持パッド8を保持していることにより、シャフト2の内部ボア3の内面が損傷されない。支持パッド8は、内部ボア3の内面に対して軸方向にスライドするだけである。さらなる例示的な実施形態において、端部6bに、半径方向に移動可能な少なくとも3つのガイドパッド8が、例えば120度の間隔で設けられる(すなわち、端部6bの周囲に均等に分布される)。これは、内部ボア3でのボーリングバー6の正確な軸方向位置合わせを可能にする。ガイドパッド8はプラスチック材料を含むことができ、内部ボア3への損傷の可能性をさらに低減できる。
【0020】
さらなる実施形態において、ボーリングバー6の主要部分6aは軸方向駆動ユニット11に接続されて、内部ボア内のボーリングバー6の左右運動による、内部ボア3の大部分に沿った機械加工(及び測定)を可能にする。軸方向駆動ユニット11は様々な方法で実現されることができ、その一例が
図2に示す実施形態に示されている。この例において、軸方向駆動ユニットは、回転軸21に接続されたモータ20を備え、回転軸21にウォームホイール22が設けられている。ウォームホイール22の回転が、ボーリングバー6(ボーリングバー外側支持装置5により支持されている)に固定された接続要素23の並進(左右)運動を生じさせる。
【0021】
図2及び
図3の例示的な実施形態に示されているような切削インサート7は、使用中にボーリングバー6が軸方向に移動するときに、予めプログラムされた経路に従うように制御される。この特徴により、機械加工工具のボーリングバー6の直径d
bは、直径が可能な限り大きく、且つ可能な限り剛性であるように設定され得る。上述のように、機械加工工具の剛性は、機械加工作業を成功させるための重要な特徴である。この目的のために、本発明のさらなる態様において、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる、機械加工工具を動作させる方法を提供する。この方法は、内部ボア3を、予め決められた機械加工プロファイルに従って機械加工するステップを含み、これは、半径方向に延出可能な切削インサート7の切削直径を、半径方向に延出可能な切削インサート7の軸方向位置の関数として調整することにより行われる。正確な制御が、様々な制御システムの実施形態、例えば、コンピュータ数値制御(CNC)ユニットの使用において得られるであろう。
【0022】
内部ボア3を有するシャフト2の従来の検査工具を用いても、内径の測定はできないことに留意されたい。機械加工作業の前、作業中、作業後の視認性には、カスタムメイドの視認設備も必要であり得、また、要求される最小限の表面仕上げには、カスタムメイドの表面仕上げ測定ツールが必要であろう。これらの問題に対処するために、さらなる実施形態において、ボーリングバー6の主要部分6aは、半径方向に延出可能な切削インサート7の付近に軸方向に配置された内部ボア直径測定装置9をさらに備えている。一例として、内部ボア直径測定装置9は、
図3の部分斜視図に示されているように、レーザベースの測定装置9である。
【0023】
図3の実施形態に示されているように、レーザベースの測定装置9は、ボーリングバー6の主要部分6aにおいて切削インサート7と共に配置されており、ボーリングバー6から離れる方向に向けられたレーザビームを、実線で示されているように使用する。レーザベースの測定装置9は、機械加工工具のボーリングバー6に(例えば、
図3に示されているように、ボーリングバー6の主要部分6a内の専用のキャビティに)内蔵されることができる。内部ボア測定装置9は、距離を測定するために配置され、この距離は、内部ボア3の軸方向プロファイルを決定するために再計算され得る。
【0024】
内部ボア直径測定装置9は、
図3の実施形態に示されているように、保護カバー9aを含み得る。これは、(敏感な)電子部品及び光学部品を、ターニング(turning)中の環境から、例えば冷却液から保護するためである。
【0025】
本発明のさらなる方法の実施形態において、動作中、(内蔵レーザ)内部ボア直径測定装置9は、機械加工作業の前後に、プログラム可能な位置にて内径を測定する。従来の検査ツールを使用しても内径を測定することはできない。
【0026】
この目的のために、上述の方法の実施形態は、内部ボア軸方向直径プロファイルを内部ボア3の機械加工の前及び/又後に測定するステップをさらに含み得る。機械加工前の測定値を用いて最初のプロファイルを決定しておき、これを所望のプロファイルと照合させて、例えば、どこに内部腐食が存在するかを特定できる。また、オプションとしてであるが、事前記憶されたプロファイルを使用して機械加工を実行してもよい。この場合は、機械加工後の測定値を用いて、内部ボア3が所望の仕様範囲内にあるかどうかをチェックできる。
【0027】
さらなる実施形態において、測定は、内部ボア軸方向直径プロファイルを、内部ボア3に沿った複数の予め決められた軸方向位置にて測定するステップを含む。十分な測定が行われた場合、或いは、内部ボア3のプロファイルの既知のパラメータ(例えば、内部ボア3の、真直の、先細状の、及び/又は複雑な形状の断面の個数)を用いて、適切な内部ボア軸方向直径プロファイルを決定できる。
【0028】
さらに別の実施形態において、本発明の方法は、測定された内部ボア軸方向直径プロファイルを、予め決められた機械加工プロファイルに変換するステップを含み得る。そして、このような予め決められた機械加工プロファイルを用いて、例えば、多数のシャフト2を連続的にバッチ処理し得る。
【0029】
CNCユニットは、単一のユニットとして、或いは別々の制御ユニットの組合せ(おそらくは相互接続される)として実装され得る。これにより、内部ボア3の先細状になる直径への対処、及び、機械加工されていない領域と機械加工された領域との間での滑らかな移行が、おそらくはカスタムメイドのCNC制御ソフトウェアを使用して可能にされる。
【0030】
さらなる実施形態において、半径方向に延出可能な切削インサート7は、(数値制御される)切削直径設定ユニット13により遠隔制御される。この実装例が
図2の断面図に示されており、切削直径設定ユニット13は、ウォームホイールユニット26を備えた軸25を回転駆動させるモータ24を含む。これは、ロッド27の並進運動を提供し、この並進運動は、変換ユニット28により、矢印で示されているように切削インサート7の半径方向延出運動に変換される。
【0031】
さらなる実施形態において、半径方向に移動可能なガイドパッド8は、(数値制御される)ガイドパッド直径設定ユニット14により遠隔制御される。
図2の断面図に示されている実施形態において、ガイドパッド直径設定ユニット14は多数のコンポーネントを含み、これらの大部分がボーリングバー6の端部6bに配置されている。この実施形態において、電気アクチュエータ30が、接続ロッド31を軸方向(左向きの矢印)に移動させ、そして、変換器要素32を介してガイドパッド8を半径方向(ガイドパッド8に向かう矢印)に延出させるように配置されている。電気アクチュエータ30は、ボーリングバー6の内部領域を通ってガイドされている電線33を介して駆動される。
【0032】
さらなる実施形態において、ガイドパッド直径設定ユニット14に、さらにトルク検出装置が、例えば、半径方向に移動可能なガイドパッド(8)の1以上に設けられ得る。これにより、ボーリングバー6をその動作中に内部ボア3内の中央に正確に保つためのフィードバック制御ループを構成できる。
【0033】
代替的に又は追加的に、半径方向に移動可能なガイドパッド又はその構成要素に力センサを取り付けることもでき、これは、ガイドパッド8の引張圧力を連続的に監視すること(これもまた、例えばフィードバック制御ループを使用する)を可能にする。
【0034】
さらなる実施形態において、機械加工工具の動作制御のために、工具制御ユニット16が具備され、これは、任意選択的に存在する軸方向駆動ユニット11、切削直径設定ユニット13、ガイドパッド直径設定ユニット14、及び/又は、内部ボア直径測定装置9に接続される。この例示的なセットアップが
図4の概略図に示されている。
【0035】
機械加工作業のために、シャフト2は回転的に、すなわち周方向に駆動されることができ、一方、ボーリングバー6は軸方向にのみ移動し、回転はしないということに留意されたい。この目的のために、機械加工工具は、さらに、回転駆動ユニット12(おそらくは工具制御ユニット16に接続され且つこれにより制御される)を含む。
【0036】
シャフト2の内部ボア3を加工すると、生じた金属チップ及び/又はさらなる屑片がシャフト2の内部で集まる可能性があり、これらが機械加工作業を妨害するか又は機械加工された領域を損傷し得る前にこれらを除去しなければならない。本発明の機械加工工具のさらなる実施形態において、機械加工に必要な冷却材(クーラント)が後方に勢いよく流され、そうして、ガイドパッド8とシャフト2の内部ボア3の内面との間に閉じ込められることを防止する。このようにしなければ、チップ及び/又は屑片が内面を損傷することになろう。構成に関し、機械加工工具は、さらに、冷却材供給装置を備え得る。この冷却材供給装置は、作業中に冷却液を、ガイドパッド(8)から、半径方向に延出可能な切削インサート(7)の方向に、すなわち内部ボア3の一端に向かって勢いよく流すように配置されている。
【0037】
以上に、本発明を、図面に示されているような複数の例示的な実施形態に関して説明してきた。幾つかの部品及び構成要素の修正及び代替的な実施が可能であり、これらは、添付の特許請求の範囲に定義されているような保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
2 シャフト
3 内部ボア
5 ボーリングバー外側支持装置
6 ボーリングバー
6a ボーリングバーの主要部分
6b ボーリングバーの端部
7 半径方向に延出可能な切削インサート
8 半径方向に移動可能なガイドパッド
9 内部ボア直径測定装置
9a 保護カバー
11 軸方向駆動ユニット
13 切削直径設定ユニット
14 ガイドパッド直径設定ユニット
16 工具制御ユニット
20 モータ
22 ウォームホイール
24 モータ
26 ウォームホイールユニット
28 変換ユニット
32 変換器要素