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  • 特許-太陽電池および太陽電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】太陽電池および太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20240925BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01L31/06 455
H01L31/04 262
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021533087
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2020027527
(87)【国際公開番号】W WO2021010422
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2019131126
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】小西 克典
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦裕
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157521(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/136715(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/060432(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0056545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域、および前記第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池であって、
前記第1領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、真性半導体層を介して、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層が順に積層されており、
前記第2領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記真性半導体層を介して、前記第2導電型半導体層が積層されており、
前記第1領域と前記第2領域との間の境界領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記真性半導体層を介して、絶縁層、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層が順に積層されており、
前記第1領域における前記真性半導体層と、前記境界領域における前記真性半導体層と、前記第2領域における前記真性半導体層とは、連なっており、
前記第1領域における前記第1導電型半導体層と前記境界領域における前記第1導電型半導体層とは、連なっており、
前記第1領域における前記第2導電型半導体層と、前記境界領域における前記第2導電型半導体層と、前記第2領域における前記第2導電型半導体層とは、連なっており、
前記絶縁層は、前記第1領域における前記第1導電型半導体層と前記第2領域における前記第2導電型半導体層との間に介在しており、
前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側には、前記第1導電型半導体層の粒子が付着している、
太陽電池。
【請求項2】
前記半導体基板の前記他方主面側は、テクスチャ構造を有する、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第2導電型半導体層の膜厚は、3.5nm以上である、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域、および前記第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域、並びに前記第1領域と前記第2領域との間の境界領域に、真性半導体層を形成する真性半導体層形成工程と、
前記真性半導体層の上に絶縁性を有するリフトオフ層を形成した後、エッチング溶液を用いて前記第1領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域および前記境界領域に、パターン化された前記リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記第1領域における前記真性半導体層の上、および前記第2領域および前記境界領域における前記リフトオフ層の上に、前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記第2領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜を除去し、前記境界領域における前記リフトオフ層を残しつつ、前記第1領域および前記境界領域に、パターン化された前記第1導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記第1領域および前記境界領域における前記第1導電型半導体層の上、および前記第2領域における前記真性半導体層の上に、前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
を含み、
前記第1半導体層形成工程では、剥離された前記第2領域における前記第1導電型半導体層の粒子が、前記第1領域における前記第1導電型半導体層の表面側に付着する、
太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面接合型(バックコンタクト型、裏面電極型ともいう。)の太陽電池および太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に半導体層が形成された例えばヘテロ接合型(以下、裏面接合型に対して両面接合型と称する。両面電極型ともいう。)の太陽電池と、裏面側のみに半導体層が形成された裏面接合型の太陽電池とがある。両面接合型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されるため、この電極により太陽光が遮蔽されてしまう。一方、裏面接合型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されないため、両面接合型の太陽電池と比較して太陽光の受光率が高い。特許文献1には、裏面接合型の太陽電池が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の太陽電池は、光電変換層として機能する半導体基板と、半導体基板の裏面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、半導体基板の裏面側の他の一部である第2領域、および第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える。このような太陽電池によれば、第1導電型半導体層をパターニングした後、第2導電型半導体層を半導体基板の裏面側の全面に製膜すればよいので、製造プロセスの簡略化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-101151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、半導体基板の裏面近傍において第1導電型半導体層と第2導電型半導体層とが隣接するので、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層との境界近傍における半導体基板においてキャリアの再結合が生じ、太陽電池の特性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、特性低下を抑制する太陽電池および太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池は、半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域、および前記第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池であって、前記第1領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、真性半導体層を介して、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層が順に積層されており、前記第2領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記真性半導体層を介して、前記第2導電型半導体層が積層されており、前記第1領域と前記第2領域との間の境界領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記真性半導体層を介して、絶縁層、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層が順に積層されており、前記第1領域における前記真性半導体層と、前記境界領域における前記真性半導体層と、前記第2領域における前記真性半導体層とは、連なっており、前記第1領域における前記第1導電型半導体層と前記境界領域における前記第1導電型半導体層とは、連なっており、前記第1領域における前記第2導電型半導体層と、前記境界領域における前記第2導電型半導体層と、前記第2領域における前記第2導電型半導体層とは、連なっており、前記絶縁層は、前記第1領域における前記第1導電型半導体層と前記第2領域における前記第2導電型半導体層との間に介在する。
【0008】
本発明に係る他の太陽電池は、半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池であって、前記第1領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、真性半導体層を介して、前記第1導電型半導体層が積層されており、前記第2領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記真性半導体層を介して、前記第2導電型半導体層が積層されており、前記第1領域と前記第2領域との間の境界領域には、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記真性半導体層を介して、絶縁層および前記第1導電型半導体層が順に積層されており、前記第1領域における前記真性半導体層と、前記境界領域における前記真性半導体層と、前記第2領域における前記真性半導体層とは、連なっており、前記第1領域における前記第1導電型半導体層と前記境界領域における前記第1導電型半導体層とは、連なっており、前記絶縁層は、前記第1領域における前記第1導電型半導体層と前記第2領域における前記第2導電型半導体層との間に介在する。
【0009】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域、および前記第1領域の第1導電型半導体層上に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域、並びに前記第1領域と前記第2領域との間の境界領域に、真性半導体層を形成する真性半導体層形成工程と、前記真性半導体層の上に絶縁性を有するリフトオフ層を形成した後、エッチング溶液を用いて前記第1領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域および前記境界領域に、パターン化された前記リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記第1領域における前記真性半導体層の上、および前記第2領域および前記境界領域における前記リフトオフ層の上に、前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記第2領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜を除去し、前記境界領域における前記リフトオフ層を残しつつ、前記第1領域および前記境界領域に、パターン化された前記第1導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、前記第1領域および前記境界領域における前記第1導電型半導体層の上、および前記第2領域における前記真性半導体層の上に、前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、を含む。
【0010】
本発明に係る他の太陽電池の製造方法は、半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に形成された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に形成された第2導電型半導体層とを備える裏面接合型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域、並びに前記第1領域と前記第2領域との間の境界領域に、真性半導体層を形成する真性半導体層形成工程と、前記真性半導体層の上に絶縁性を有するリフトオフ層を形成した後、エッチング溶液を用いて前記第1領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域および前記境界領域に、パターン化された前記リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記第1領域における前記真性半導体層の上、および前記第2領域および前記境界領域における前記リフトオフ層の上に、前記第1導電型半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記第2領域における前記リフトオフ層を除去することにより、前記第2領域における前記第1導電型半導体層の材料膜を除去し、前記境界領域における前記リフトオフ層を残しつつ、前記第1領域および前記境界領域に、パターン化された前記第1導電型半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、前記第1領域および前記境界領域における前記第1導電型半導体層の上、および前記第2領域における前記真性半導体層の上に、前記第2導電型半導体層の材料膜を形成する第2半導体層材料膜形成工程と、エッチング溶液を用いて少なくとも前記第1領域における前記第2導電型半導体層の材料膜を除去することにより、少なくとも前記第2領域に、パターン化された前記第2導電型半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池の特性低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図2図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図3A】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図である。
図3B】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層形成工程を示す図である。
図3C】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図3D】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3E】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
図4】本実施形態の変形例に係る太陽電池であって、図1のII-II線断面相当の断面図である。
図5A】本実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図5B】本実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0014】
(太陽電池)
図1は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図1に示す太陽電池1は、裏面接合型の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。
【0015】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第1方向(X方向)に交互に設けられている。
なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0016】
第1領域7と第2領域8との境界には、境界領域Rが存在する。
【0017】
図2は、図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11と、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層された真性半導体層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側に積層された真性半導体層23と、半導体基板11の裏面側の一部(第1領域7)の真性半導体層23上に積層された第1導電型半導体層25と、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)の真性半導体層23上、および半導体基板11の裏面側の一部(第1領域7)の第1導電型半導体層25上に積層された第2導電型半導体層35と、第1領域7と第2領域8との間の境界領域Rに形成された絶縁層40とを備える。また、太陽電池1は、第1領域7に形成された第1電極層27と、第2領域8に形成された第2電極層37とを備える。
【0018】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0019】
半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
また、半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
【0020】
真性半導体層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。真性半導体層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7、境界領域Rおよび第2領域8に連なって形成されている。真性半導体層13,23は、例えば真性(i型)アモルファスシリコンを主成分とする材料で形成される。
真性半導体層13,23は、いわゆるパッシベーション層として機能し、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0021】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側および真性半導体層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0022】
第1導電型半導体層25は、半導体基板11の裏面側の第1領域7および境界領域Rに連なって形成されている。具体的には、第1導電型半導体層25は、第1領域7における真性半導体層23上、および境界領域Rにおける真性半導体層23上に形成された絶縁層40上に形成されている。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0023】
第2導電型半導体層35は、半導体基板11の裏面側の第1領域7、境界領域Rおよび第2領域8に連なって形成されている。具体的には、第2導電型半導体層35は、第1領域7および境界領域Rにおける第1導電型半導体層25上、および第2領域8における真性半導体層23上に形成されている。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
【0024】
第2導電型半導体層35の膜厚は、3.5nm以上であることが好ましい。第2導電型半導体層35の膜厚とは、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35等の積層方向の厚さであって、第1方向(X方向)および第2方向(Y方向)に交差する方向の厚さである。
また、第1領域7における第1導電型半導体層25の表面側には、第1導電型半導体層25の粒子25Aが付着していることが好ましい(詳細は後述する。)。
【0025】
なお、第1導電型半導体層25がp型半導体層であり、第2導電型半導体層35がn型半導体層であってもよい。この場合、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0026】
絶縁層40は、境界領域Rに形成されている。絶縁層40は、真性半導体層23上において、第1領域7における第1導電型半導体層25と第2領域8における真性半導体層23との間に介在する。絶縁層40は、後述するリフトオフ層材料、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁性材料で形成される。以下では、絶縁層40をリフトオフ層ともいう。
【0027】
絶縁層40の膜厚は数十nm以上数百nmであり、絶縁層40の幅は100μm以下であればよい。絶縁層40の膜厚とは、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35等の積層方向の厚さであって、第1方向(X方向)および第2方向(Y方向)に交差する方向の厚さである。絶縁層40の幅は、第2導電型半導体層35から第1導電型半導体層25へ向かう第1方向(X方向)に沿う方向の幅である。
【0028】
換言すれば、第1領域7には、半導体基板11の裏面側に、真性半導体層23を介して、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35が順に積層されている。第2領域8には、半導体基板11の裏面側に、真性半導体層23を介して、第2導電型半導体層35が積層されている。境界領域Rには、半導体基板11の裏面側に、真性半導体層23を介して、絶縁層40、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35が順に積層されている。
【0029】
第1電極層27は、第1領域7における第2導電型半導体層35上に形成されており、第2電極層37は、第2領域8における第2導電型半導体層35上に形成されている。
第1電極層27は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層28と金属電極層29とを有する。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された透明電極層38と金属電極層39とを有する。
透明電極層28,38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)、ZnO(Zinc Oxide:酸化亜鉛)が挙げられる。金属電極層29,39は、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成される。
【0030】
(太陽電池の製造方法)
以下、図3A図3Eを参照して、図1および図2に示す本実施形態の太陽電池1の製造方法について説明する。図3Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における真性半導体層形成工程およびリフトオフ層形成工程を示す図であり、図3Bは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層形成工程を示す図である。図3Cは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程を示す図であり、図3Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。また、図3Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
【0031】
まず、図3Aに示すように、例えばCVD法(化学気相堆積法)を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第1領域7、境界領域R、第2領域8に、真性半導体層23を積層(製膜)する(真性半導体層形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層13および光学調整層15を積層(製膜)する。
【0032】
次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち真性半導体層23上の全面に、リフトオフ層(絶縁層)40を積層(製膜)する(リフトオフ層形成工程)。
【0033】
次に、図3Bに示すように、エッチング溶液を用いて、半導体基板11の裏面側において、第1領域7におけるリフトオフ層40を除去することにより、第2領域8および境界領域Rに、パターン化されたリフトオフ層40を形成する(リフトオフ層形成工程)。リフトオフ層40に対するエッチング溶液としては、例えばフッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物が用いられる。
【0034】
次に、図3Cに示すように、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第1領域7における真性半導体層23上、および第2領域8および境界領域Rにおけるリフトオフ層40上に、第1導電型半導体層材料膜25Zを積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
【0035】
次に、図3Dに示すように、リフトオフ層40を用いたリフトオフ法を利用して、半導体基板11の裏面側の第2領域8における第1導電型半導体層材料膜25Zを除去し、境界領域Rにおけるリフトオフ層40を残しつつ、第1領域7および境界領域Rに、パターン化された第1導電型半導体層25を形成する(第1半導体層形成工程)。
【0036】
具体的には、エッチング溶液を用いて、半導体基板11の裏面側の第2領域8におけるリフトオフ層40をエッチング(除去)することにより、リフトオフ層40上の第1導電型半導体層材料膜25Zを除去し、境界領域Rにおけるリフトオフ層40を残しつつ、第1領域7および境界領域Rに第1導電型半導体層25を形成する。リフトオフ層40のエッチング溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。
【0037】
また、このとき、リフトオフによって剥離された第2領域8の第1導電型半導体層の粒子25Aが第1領域7の第1導電型半導体層25の表面側に付着する。
【0038】
次に、図3Eに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第1領域7および境界領域Rにおける第1導電型半導体層25上、および第2領域8における真性半導体層23上に、第2導電型半導体層35を形成する(第2半導体層形成工程)。
【0039】
次に、半導体基板11の裏面側に、第1電極層27および第2電極層37を形成する(電極層形成工程)。
具体的には、例えばスパッタリング法等のPVD法(物理気相成長法)を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極層材料膜を積層(製膜)する。その後、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜の一部を除去することにより、透明電極層28,38のパターニングを行う。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
その後、例えばパターン印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38の上に金属電極層39を形成することにより、第1電極層27および第2電極層37を形成する。
【0040】
以上の工程により、図1および図2に示す本実施形態の裏面接合型の太陽電池1が得られる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池1および太陽電池の製造方法によれば、第1導電型半導体層25をパターニングした後、第2導電型半導体層35を半導体基板11の裏面側の全面に製膜すればよいので、製造プロセスの簡略化、短縮化、低コスト化が可能である。
また、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、製造プロセスの途中で、特に第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35を形成する際に、半導体基板11の主面が露出しないので、太陽電池の高いライフタイムを維持できる。
【0042】
また、本実施形態の太陽電池1および太陽電池の製造方法によれば、半導体基板11の裏面近傍において第1領域7の第1導電型半導体層25と第2領域8の第2導電型半導体層35との間に絶縁層40が形成されているので、第1領域7の第1導電型半導体層25と第2領域8の第2導電型半導体層35との境界近傍における半導体基板11においてキャリアの再結合が抑制される。そのため、太陽電池の特性低下を低減することができる。
【0043】
更に、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1半導体層形成工程において利用するリフトオフ層40の一部を残すことにより絶縁層40を形成するので、製造プロセスの簡略化、短縮化、低コスト化が可能である。
【0044】
ここで、本願発明者(ら)は、半導体基板11の裏面側がテクスチャ構造を有すると、テクスチャ構造の谷部では絶縁層が除去されるが、テクスチャ構造の頂部には絶縁層が残るとの知見を得ている。
本実施形態の太陽電池1および太陽電池の製造方法によれば、半導体基板11の裏面側がテクスチャ構造を有するので、第1半導体形成工程において、半導体基板11の裏面側の境界領域Rに、絶縁層(リフトオフ層)40を残すことができる。
【0045】
ここで、第2領域8の第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35の性能低下を防ぐためには、第2導電型半導体層35の膜厚を厚くする必要がある(例えば、3.5nm以上)。しかし、第2導電型半導体層35の膜厚を厚くすると、第1領域7における第1導電型半導体層(例えば、N型半導体層)25と第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35との間のトンネリング効率が低下し、膜厚方向の抵抗が高くなる。
【0046】
これに対して、本実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1半導体層形成工程においてリフトオフ法を利用するので、リフトオフによって剥離された第2領域8の第1導電型半導体層の粒子25Aが第1領域7の第1導電型半導体層25の表面側に付着する。これにより、第1領域7の第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35の間に第1導電型半導体層の粒子25Aが介在し、第1領域7における第1導電型半導体層(例えば、N型半導体層)25と第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35との間のトンネル伝導性が向上し、界面抵抗および膜厚方向の抵抗増加が低減される。これにより、太陽電池のFF特性が上昇する。
このように、第1半導体層形成工程においてリフトオフ法を利用し、第2導電型半導体層35の膜厚を3.5nm以上とすることにより、第2領域8における第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35の性能低下を防ぎ、第1領域7における第2導電型半導体層(例えば、P型半導体層)35の膜厚方向の抵抗増加を低減することができる。これにより、高性能な太陽電池を実現することができる。
【0047】
(変形例)
図4は、本実施形態の変形例に係る太陽電池であって、図1のII-II線断面相当の断面図である。図4に示すように、変形例の太陽電池1では、図2に示す太陽電池1において、第2導電型半導体層35は第1導電型半導体層25上に存在しないようにパターニングされてもよい。
【0048】
すなわち、変形例の太陽電池1では、第1領域7には、半導体基板11の裏面側に、真性半導体層23を介して、第1導電型半導体層25が積層されており、第2領域8には、半導体基板11の裏面側に、真性半導体層23を介して、第2導電型半導体層35が積層されており、境界領域Rには、半導体基板11の裏面側に、真性半導体層23を介して、絶縁層40および第1導電型半導体層25が順に積層されていてもよい。
【0049】
この変形例の太陽電池の製造方法では、図3A図3Eに示す太陽電池の製造方法において、図3Eに示す第2半導体層形成工程に代えて図5Aに示す第2半導体層材料膜形成工程および図5Bに示す第2半導体層形成工程を含めばよい。
【0050】
すなわち、変形例の太陽電池の製造方法では、図3Dに示す第1半導体形成工程の後、図5Aに示すように、例えばCVD法を用いて、第1領域7および境界領域Rにおける第1導電型半導体層25上、および第2領域8における真性半導体層23上に、第2導電型半導体層材料膜35Zを形成すればよい(第2半導体層材料膜形成工程)。その後、図5Bに示すように、エッチング溶液を用いて、少なくとも第1領域7における第2導電型半導体層材料膜35Zをエッチング(除去)することにより、少なくとも第2領域8に、パターン化された第2導電型半導体層35を形成すればよい(第2半導体層形成工程)。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、図2に示すようにヘテロ接合型の太陽電池1の製造方法を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池の製造方法に適用可能である。
【0052】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン基板を有する太陽電池を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 太陽電池
7 第1領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2領域
11 半導体基板
13,23 真性半導体層
15 光学調整層
25 第1導電型半導体層
25Z 第1導電型半導体層材料膜
27 第1電極層
28,38 透明電極層
29,39 金属電極層
35 第2導電型半導体層
35Z 第2導電型半導体層材料膜
37 第2電極層
40 絶縁層、リフトオフ層
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B