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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】柔軟な皮膚バリアリング
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/445 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
A61F5/445
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021558714
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 DK2020050081
(87)【国際公開番号】W WO2020200382
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】PA201970196
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500085884
【氏名又は名称】コロプラスト アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】イロナ マリーア ヘグラ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-099659(JP,A)
【文献】特開2004-130083(JP,A)
【文献】特表2018-527999(JP,A)
【文献】国際公開第2016/124202(WO,A1)
【文献】特開平11-267146(JP,A)
【文献】特開昭60-100959(JP,A)
【文献】特開平10-248867(JP,A)
【文献】米国特許第05501678(US,A)
【文献】米国特許第06685683(US,B1)
【文献】国際公開第2017/032381(WO,A1)
【文献】特表2005-514075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのストーマの周りに位置する皮膚のひだ又はしわに配置するように適合された柔軟な皮膚バリアリングであって、
近位面及び遠位面を有する、相対的により硬い接着材料の第1の層、ここで前記第1の層の前記遠位面は、前記皮膚バリアリングの平面遠位面の少なくとも一部を形成し、
少なくとも前記第1の層の前記近位面に提供される、相対的により柔らかい接着材料の第2の層、ここで、前記第2の層は前記皮膚バリアリングの近位面を形成し、及び
前記皮膚バリアリングの中央部分を通して延びるストーマ受容開口部
を含み、
前記第1の層は、前記皮膚バリアリングの前記中央部分に位置する相対的により厚いバルク部分と、前記皮膚バリアリングの外周縁から半径方向内側に延び、且つ前記バルク部分に移行する相対的により薄いフランジ部分とを含み、
前記相対的により厚いバルク部分は、近位方向に突出する拡張された形状を前記皮膚バリアリングの前記中央部分に提供し、
前記第2の層の前記バルク部分の近位面における部分は、前記拡張された形状及び前記ストーマ受容開口部上の皮膚バリアリングの近位面を形成しており、
前記バルク部分の遠位面は、前記ストーマ受容開口部まで延在している、
皮膚バリアリング。
【請求項2】
前記第2の層は、前記ストーマ受容開口部で前記皮膚バリアリングの内周面の全体を形成する、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項3】
前記皮膚バリアリングの前記近位面は、前記皮膚バリアリングを通した断面図で見られたとき、S字形に近似する曲線を描く、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項4】
前記第1の層の前記フランジ部分に提供された前記皮膚バリアリングの前記近位面の第1の部分は、第1の平面内にあり、前記第1の層の前記バルク部分に提供された前記皮膚バリアリングの前記近位面の第2の部分は、第2の平面内にあり、前記第2の平面は、前記第1の平面に平行である、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項5】
前記第1の平面又は前記第2の平面の法線に沿って測定される、前記第1の平面と前記第2の平面との間の直線距離は、5~20mmの範囲である、請求項4に記載の皮膚バリアリング。
【請求項6】
前記第2の層は、前記皮膚バリアリングの軸方向で測定される実質的に一定の厚さを有するように構成される、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項7】
前記第2の層の実質的に一定の厚さは、0.5~10.0mmの範囲から選択される、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項8】
前記皮膚バリアリングの軸方向で測定される、前記第1の層の前記フランジ部分の厚さは、0.2~3.0mmの範囲である、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項9】
前記皮膚バリアリングの軸方向で測定される、前記第1の層の前記バルク部分の最大厚さは、3~10mmなど、3~12mmの範囲である、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項10】
前記相対的により硬い接着材料は、1.0Hzで0.6未満のタンジェントデルタ(tanδ)及び0.03~1.0Hzの周波数範囲で1MPa未満の|G|を有し、ここで、0.03Hzにおけるタンジェントデルタは、1.0Hzにおけるタンジェントデルタを上回る、請求項1~9のいずれか一項に記載の皮膚バリアリング。
【請求項11】
前記相対的により柔らかい接着材料は、0.6を超えるタンジェントデルタ(tanδ)及び0.03~1.0Hzの周波数範囲で1MPa未満の|G|を有し、ここで、0.03Hzにおけるタンジェントデルタは、1.0Hzにおけるタンジェントデルタを下回る、請求項1~10のいずれか一項に記載の皮膚バリアリング。
【請求項12】
前記相対的により柔らかい接着材料の|G|は、0.03Hz~1.0Hzの周波数範囲で前記相対的により硬い接着材料の|G|を下回る、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項13】
0.03Hzの周波数における前記相対的により柔らかい接着材料及び前記相対的により柔らかい接着材料のそれぞれの|G|の差は、少なくとも10kPaであり、1.0Hzの周波数における前記相対的により柔らかい接着材料及び前記相対的により柔らかい接着材料のそれぞれの|G|の差は、少なくとも100kPaである、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項14】
前記第2の層は、前記第1の層の前記近位面を同時に変形することなく、前記第1の層の前記近位面上で変位され得る、請求項1に記載の皮膚バリアリング。
【請求項15】
オストミー装具システムであって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の皮膚バリアリングと、
オストミー装具のベースプレートと、任意選択的に、
前記ベースプレートの遠位面に取り付けられるように構成されている、前記オストミー装具のための収集バッグと
を含み、
前記ベースプレートの近位面は、前記柔軟な皮膚バリアリングの遠位面に取り付けられるように適合される、オストミー装具システム。
【請求項16】
前記ベースプレートは、皮膚の膨らみ又はヘルニアに位置するストーマの周りのユーザの皮膚表面に取り付けられるように適合可能な種類のものであり、前記ベースプレートは、湾曲され、且つ反転可能であり、且つ前記ベースプレートの縁部に沿って半径方向に延びる花弁状部分を設けられる、請求項15に記載のオストミー装具システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ストーマ排出物には、多くの場合、ユーザの皮膚及びオストミーデバイスの両方に攻撃的な体液及び内臓内容物が含まれ、特に、これらは、オストミーデバイスをユーザの皮膚表面に取り付けるために適用される接着材料の効率及び完全性に悪影響を及ぼす。
【0002】
多くのオストミストは、いわゆる後退した又は窪んだストーマを発症する。オストミストの体の必然的な術後及び進行中の生理学的変化により、ストーマは、最初から又は時間の経過とともに腹部に沈むか又は後退して、ストーマが配置される体表面にくぼみを作ることがある。後退したストーマの周りに標準の平面ベースプレートを適用すると、1つには、ストーマの周りの領域が覆われず(ストーマ周囲の皮膚表面とベースプレートの接着面との間のギャップ)、それによってストーマからの排出物にさらされ得る。さらに、場合により、ストーマがベースプレートの貫通穴を通して延びることができない程度に後退し、その結果、頻繁な漏出の問題が生じる場合がある。後退したストーマの問題及び頻繁に発生する漏れに対処するために、凸状のベースプレートが開発された。
【0003】
従来、凸状ベースプレートは、凸形状の比較的剛性のプレキャスト又は成形ユニットを提供し、それを接着ウェーハの片側に取り付けて、ベースプレートが凸部を得ることによって製造されてきた。そのような製品は、長年にわたり市場で入手可能である。
【0004】
これらの凸状ベースプレートの主な目的及び効果は、それらが、オストミストの体のストーマ周囲の皮膚が(例えば、過剰な皮膚のひだに起因して)崩壊することを防ぎ得、ストーマが、それらによって提供される反力に起因してベースプレートと体の表面との間の界面を越えて適切に突出し、したがってストーマ排出物を人体廃棄物のための収集バッグに直接堆積する能力を向上できることである。これにより、漏れのリスクが軽減され、なぜなら、ストーマ排出物がそこで接着シールを攻撃して最終的に崩壊させる、ベースプレートの接着面の下にストーマ排出物が到達する可能性が低くなるためである。
【0005】
しかしながら、一般的に、これらの製品は、比較的硬く、柔軟性がないため、身体活動によって引き起こされるユーザの体の動きに良好に追従しない。さらに深刻なことに、これらの製品の使用は、場合により、圧迫創潰瘍、打撲傷及び/又は一般的な皮膚刺激などのストーマ周囲の皮膚損傷を引き起こす可能性があることが経験によって示されている。
【0006】
さらに、これらの凸状ベースプレートのプレキャスト又は成形ユニットは、ストーマとの接合部に取り付けることができず、ストーマの近くに提供することさえできない。代わりに、凸状のプレキャスト又は成形ユニットの最内縁とストーマの表面との間に半径方向の隙間が必要である。
【0007】
これは、いくつかの理由による。まず、硬いユニットがストーマの表面の粘膜に直接接触する場合、それは、粘膜を切断して刺激する傾向があり、最終的にストーマが出血して深刻な合併症を発生する可能性があることが経験によって示されている。また、プレキャスト又は成形されたユニットは、ストーマが自由に拡張することを妨げる可能性があり、この拡張は、腸の蠕動運動によって引き起こされる。
【0008】
さらに、プレキャスト又は成形ユニットの最内縁とストーマ受容貫通穴との間にそのような半径方向の隙間が存在することは、特にストーマのすぐ周囲の皮膚領域において、皮膚表面に対する適切な一定の圧力が欠如することを意味する。この適切な圧力の欠如は、多くの場合、ユーザのストーマのすぐ周囲の皮膚が、凸状ユニットの最内縁とストーマの表面との間において、凸状ユニットによって所定の位置に他に強制される皮膚に対して軸方向に離されることを意味する。この現象により、漏れのリスクが高まる。
【0009】
さらに、ほとんどすべてのユーザは、漏れに対して可能な限り最高の安全性を提供するために、ストーマの表面(輪郭)の形状にできるだけ正確に新しい装具を適合させるために何らかのカスタマイズ行為を実行する必要がある。そのために、プレキャスト又は成形された凸状ユニットを備えたものを含むほとんどすべてのオストミー装具は、ベースプレートの表面を可能な限り良好にフィットさせるためにベースプレートの表面を(例えば、はさみで)切断する可能性がある。これは、多くの場合、製造時にベースプレートの中央に設けられたプレカット穴又は「スターター穴」と呼ばれる小さい穴によって容易になる。
【0010】
従来の凸状ベースプレートに関して、プレキャスト又は成形された硬い凸状ユニットの存在により、プレキャストされた凸状ユニットを切断することができないため、そのような製品の穴のサイズ及び形状に関して、可能なカスタマイズのレベルに制限がある。
【0011】
そのような従来の比較的堅い凸状ベースプレートの一例は、欧州特許第748195号明細書に開示されている。
【0012】
より最近では、オストミストが利用できる凸状ベースプレート製品の種類が増えている。すべてのユーザは、自らの独特の身体及びストーマ形状のために個々のニーズを有するため、既知の硬い凸状の製品がそれらのニーズのすべての種類を克服できないことが経験によって示されている。特に、体の窪みが比較的浅い場合、すなわちストーマが比較的小さい程度にのみ後退される場合、かさばらず、剛性の低い凸状ベースプレートが適切であり得る。そのような凸状ベースプレートの一例は、欧州特許第2497449号明細書の開示によって提供されている。
【0013】
さらに、多くのユーザは、オストミー手術に起因するヘルニアも発症する。一部の人にとって、これは、ストーマが位置する腹部の皮膚表面上の位置がヘルニア上にある、すなわち膨らんだ外側に突出する体の輪郭の上にあることを意味する。他のストーマと同様に、ヘルニア上のストーマは、後退又は窪む可能性があり、ヘルニア又は他の外側に突出する体の輪郭の上の窪んだストーマの周りに適切なシールを提供することは、非常に難しい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
オストミスト及び医療専門家は、この種の体の輪郭によりよく対応するためのオストミーデバイスの改善を同様に歓迎するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示は、添付の特許請求の範囲に従い、ユーザのストーマの周りに位置する皮膚のひだ又はしわに配置するように適合された柔軟な皮膚バリアリングの態様を提供する。
【0016】
添付の図面は、実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図は、実施形態を示し、その記載とともに実施形態の原理を説明するのに役立つ。他の実施形態及び実施形態の意図された利点の多くは、以下の詳細な記載を参照することによってよりよく理解されるようになるため、容易に理解されるであろう。同様の参照番号は、対応する同様の部品を示す。
【0017】
様々な例示的な実施形態及び詳細は、関連する場合、図を参照して以下に記載される。図は、一定の縮尺で描かれることも描かれないこともあり、同様の構造又は機能の要素は、図全体を通して同様の参照番号で表されることに留意されたい。これらの図は、実施形態の記載を容易にすることのみを意図していることにも留意されたい。それらは、本発明の網羅的な記載としても、本発明の範囲の限定としても意図されていない。さらに、例示された実施形態は、示されたすべての態様及び利点を有する必要はない。特定の実施形態に関連して記載される態様及び利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、そのように図示されていない場合又はそのように明示的に記載されていない場合でも他の任意の実施形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の柔軟なバリアリングの一実施形態の断面斜視図である。
図2】本開示の柔軟なバリアリングの一実施形態の拡大断面斜視部分図である。
図3】本開示の柔軟なバリアリングの一実施形態の拡大断面斜視部分図である。
図4】本開示の柔軟なバリアリングの一実施形態の概略断面図である。
図5】本開示の柔軟なバリアリングの一実施形態の概略断面図である。
図6A】本開示の柔軟なバリアリングの一実施形態の斜視図であり、リングが伸張されることを示している。
図6B】本開示の柔軟なバリアリングの一実施形態の上面図である。
図6C】伸張された状態における図6Bの柔軟なバリアリングの実施形態の上面図である。
図7】本開示の柔軟なバリアリングの一実施形態の斜視図であり、リングが圧縮されることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の詳細な記載において、本明細書の一部を形成し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。この点に関して、「上」、「下」、「前」、「後」、「先行」、「追従」等の方向性の用語は、記載される図の向きに関連して使用される。実施形態の構成要素は、いくつかの異なる向きで配置することができるため、方向性の用語は、説明の目的で使用され、決して限定するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造的又は論理的な変更形態がなされ得ることを理解されたい。したがって、以下の詳細な記載は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0020】
本明細書に記載の様々な例示的な実施形態の特徴は、特に断りのない限り、互いに組み合わされ得ることを理解されたい。
【0021】
本開示を通して、「ストーマ」及び「オストミー(ostomy)」という用語は、人の腸又は尿路系を迂回して外科的に造られた開口部を示すために使用される。これらの用語は、交換可能に使用され、意味を区別することは意図されない。同じことが、これらから派生した用語又は句、例えば「ストーマの」、「オストミー(ostomies)」等にも当てはまる。同様に、ストーマから出る固体及び液体の廃棄物は、両方とも交換可能にストーマ「排出物」、「廃棄物」及び「流体」と呼ばれることがある。オストミー手術を受けた対象は、「オストミスト」又は「オストメイト」と呼ばれることがあり、さらに「患者」又は「ユーザ」と呼ばれることもある。しかしながら、場合により、「ユーザ」は、外科医若しくはオストミーケア看護師又は他の人などの医療専門家(HCP)に関連又は言及し得る。そのような場合、「ユーザ」は、「患者」自身ではないことが明示的に述べられるか又は文脈から暗黙的に示される。
【0022】
本開示を通して、「成形可能」及び「成形可能性」という用語は、伸張又は圧縮によって接着剤の形状を変化させるプロセスを示すために使用される。これらの用語は、「造形可能」及び「造形可能性」という用語と交換可能に使用することができ、意味を区別することは意図されない。
【0023】
以下では、デバイスの近位側又はデバイスの一部に言及する場合には常に、オストミー装具がユーザによって装着される場合、それは、皮膚に面する側を指す。同様に、デバイスの遠位側又はデバイスの一部に言及する場合には常に、オストミー装具がユーザによって装着される場合、それは、皮膚に背く側を指す。換言すると、装具がユーザに取り付けられる場合、近位側は、ユーザに最も近い側であり、遠位側は、反対側、すなわち使用中にユーザから最も遠い側である。
【0024】
軸方向は、装具がユーザによって装着される場合、ストーマの方向として定義される。したがって、軸方向は、一般に、ユーザの皮膚又は腹部表面に垂直である。
【0025】
半径方向は、ストーマの方向を横切る軸方向を横切るものとして定義される。一部の文では、「内側」及び「外側」という用語が使用される場合がある。これらの修飾語は、一般に、半径方向を参照して認識されるべきであり、その結果、「外側」要素への言及は、その要素が、「内側」として言及される要素よりもストーマ装具の中心部分から遠く離れていることを意味する。さらに、「最も内側」は、構成要素の中心を形成し、且つ/又は構成要素の中心に隣接する構成要素の部分として解釈されるべきである。同様に、「最も外側」は、構成要素の外縁又は外輪郭を形成し、且つ/又はその外縁又は外輪郭に隣接する構成要素の部分として解釈されるべきである。
【0026】
「凸状」は、要素又はその対応する表面が、全体的な凸部を提供する形状又は形態を有することを定義することを意図している。換言すると、要素全体又はその対応する表面の一部を構成するより小さいセクション又はゾーンは、例えば、線形の形状又は形態である一方、要素又は表面は、全体として凸形状を有する。シート状又は板状の要素の場合、一方の主表面が凸形状を有する場合、反対側の主表面は、対応する凹形状を有すると見なされ得ることがさらに理解されるべきである。
【0027】
「剥離ライナ」は、接着剤を覆い、接着剤の特性が維持され、使用直前まで接着面が露出されないようにするライナ又はライニング材料を定義することを意図している。
【0028】
本開示における特定の特徴又は効果の修飾語としての「実質的」又は「実質的に」という句の使用は、逸脱が、当業者によって通常予想され得る許容範囲内にあることを単に意味することを意図している。
【0029】
本開示における特定の特徴又は効果の修飾語としての「全体的に」という用語の使用は、構造的特徴の場合、そのような特徴の大部分又は主要部分が、対象の特性を示すことと、機能的特徴又は効果の場合、特性を伴う結果の大部分が効果を提供するが、例外的に結果が効果を提供しないこととを意味することを意図している。
【0030】
本開示における特定の特徴又は効果の修飾語としての「およその」又は「およそ」という句の使用は、値が正確に正しくない可能性があるが、かなり正確に近く、当業者によって通常予想され得る変動の範囲内であり得ることを単に意味することを意図している。
【0031】
一態様では、本開示は、ユーザのストーマの周りに位置する皮膚のひだ又はしわに配置するように適合された柔軟な皮膚バリアリングに関する。柔軟なバリアリングは、近位面及び遠位面を有する、相対的により硬い接着材料の第1の層を含む。第1の接着層の遠位面は、リングの平面遠位面の少なくとも一部を形成する。柔軟なバリアリングは、少なくとも接着材料の第1の層の近位面に提供される、相対的により柔らかい接着材料の第2の層をさらに含む。第2の接着層は、リングの近位面を形成する。ストーマ受容開口部は、リングの中央部分を通して延びる。さらに、第1の接着層は、リングの中央部分に位置する相対的により厚いバルク部分と、リングの外周縁から半径方向内側に延び、且つバルク部分に移行する相対的により薄いフランジ部分とを含む。相対的により厚いバルク部分は、近位方向に突出する拡張された形状をリングの中央部分に提供する。
【0032】
本開示によれば、柔軟なバリアリングは、成形可能であり、これは、ユーザが柔軟なバリアリングに指の圧力を加えることによってそれを造形できることを意味する。それにより、柔軟なバリアリングは、ストーマの周りの皮膚のひだ、瘢痕又はしわに全体的又は部分的に適合するようにユーザによって造形することができる。さらなる利点として、柔軟なバリアリングは、所与のストーマの形状に厳密に一致するように、すなわちストーマの外面の輪郭に全体的に「従う」ように造形することもできる。さらに、複数のタイプの成形可能な接着材料を提供することにより(すなわちバリアリングを提供するために接着材料を差別化することにより)、さらなる特徴が柔軟なバリアリングに起因して生じ得る。このような選択肢は、すべてストーマの周囲に密なシールを提供するのに役立ち得る。実施形態において、第1の相対的により硬い接着材料は、感圧接着材料である。実施形態において、第2の相対的により柔らかい接着材料は、感圧接着材料である。実施形態において、第1の相対的により硬い接着材料及び第2の相対的により柔らかい接着材料の両方は、感圧接着材料である。実施形態において、第1の相対的により硬い接着材料及び/又は第2の相対的により柔らかい接着材料は、シリコーンベースの接着材料を含む。
【0033】
本開示によれば、可撓性バリアリングの第1の接着材料及び第2の接着材料の両方は、ある程度成形可能である。しかしながら、バリアリングのバルク部分を形成する第1の接着材料は、第2の接着材料よりも成形性が低い性質のものである。これは、第1の接着材料が第2の接着材料よりも寸法的に安定であることを提供する。そのより高度な寸法安定性は、次に、第1の接着材料のバルク部分が、近位方向に突出する拡張された形状をバリアリングの中央部分に形成し、維持するのに役立つ。換言すると、バルク部分の第1の接着材料は、バリアリングのフランジ部分から近位方向に延びるバリアリングの部分を提供し、それにより、当技術分野でときに凸部と呼ばれるものを形成する。本開示によれば、バリアリングは、柔軟な凸状バリアリングと見なすことができ、第1の接着材料は、塑性変形能力を示しながら、バリアリングに近位に突出する拡張された形状(凸部)を提供することに、主に、しかし排他的ではなく寄与し、第2の接着材料は、主に、柔軟なバリアリングの成形性及び適応性に寄与し、バリアリングの寸法安定性にほとんど又はまったく寄与しない。
【0034】
第1の接着材料のより高度な寸法安定性のさらなる利点は、接着材料の第1の層のフランジ部分が、柔軟なバリアリングの最外周縁の安定性の向上も提供し、特に、それが、柔軟なバリアリングの近位及び遠位面から剥離ライナを除去した後の最外周縁の巻き上がり(又は「カールアップ」)傾向の回避を提供することである。経験から、ある程度の弾性特性を有する接着材料の相対的により薄い(フランジ)部分(すなわち本開示の枠組みにおいて1未満のtan(δ)に対応する)は、薄い部分を支える1つ又は複数の剥離ライナが除去されると、巻き上がる傾向があることが知られている。相対的により硬い接着材料の第1の層を含む、本明細書に開示されるバリアリングの2層構造のために、本バリアリングは、バリアリングの近位及び遠位面上の剥離ライナの除去後にそのような巻き上がりを受ける傾向が少ない。
【0035】
上記の特定された他の特性を満たすために、第1の相対的により硬い接着材料は、BASF製のOppanol B12 SFNなどのポリイソブチレン(PIB);Kraton Polymers Nederland製のKraton(登録商標)D1161-BTなどのスチレン/イソプレン/スチレン(SIS);Arlanxeo製のブチルゴム101-3;Caldic Danmark A/S製のArkon p90などの樹脂;及びAshland Speciality Ingredients製のNatrosol 250HXなどのHEC;CP Kelco APS製のペクチンLM 12 CG-Z/200などのLMエステル;AkzoNobel製のAkucell AF2881などのCMC;及びPB Leiner製のゼラチンを含む様々な吸収性成分を適切に含む。
【0036】
上記の特定された他の特性を満たすために、第2の相対的により柔らかい接着材料は、ポリエチレンコポリマーとポリプロピレングリコール(PPG)との混合物及びスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーからなる群から選択される接着ポリマー成分を含む接着材料を適切に含むが、これらに限定されず;接着材料は、ポリオレフィン、ポリブテン、ポリアクリル酸(PAA)及び少なくとも1つのさらなる吸収性材料をさらに含む。そのような接着剤の適切な例は、本出願人の国際出願である国際公開第2017/032381号パンフレットに開示され、特許請求されている。
【0037】
本開示による実施形態では、柔軟な皮膚バリアリングは、ユーザのストーマの周りに位置する皮膚のひだ又はしわに配置するように適合される。柔軟なバリアリングは、ストーマの周囲にシールを提供するために使用でき、収集パウチ及び接着ウェーハを含む通常のオストミーデバイスと組み合わせて使用することができる。このような状況では、ユーザは、ストーマの周囲に柔軟なバリアリングを密にフィットさせることから始める場合があり、次に柔軟なバリアリングの上又はすぐ隣にオストミーデバイスの接着ウェーハを適用する。代わりに、ユーザは、オストミーデバイスの接着ウェーハに柔軟なバリアリングを適用することから始め、その後、組み合わされたデバイスを、ストーマを取り巻く皮膚に取り付ける場合がある。いずれの方法でも、ストーマの周囲に密で固定されたシールを提供することができ、それによって漏れを防止する。
【0038】
特に、実施形態では、相対的により柔らかい第2の接着材料は、相対的により硬い第1の接着材料よりも低い温度で流れ始めるように構成される。これは、第1の接着剤が流れ始める前に第2の接着材料が変形するか、又はストーマの周りの皮膚のひだ又はしわに流れ込むことができるようにする。したがって、実施形態では、第2の接着材料の層は、ストーマを取り巻く皮膚表面(ストーマ周囲の皮膚領域)への柔軟なバリアリングの確実且つ密な適合を提供するのに役立つ。実施形態では、第2の接着材料は、およそ32℃(通常の皮膚表面温度)の温度で皮膚表面に流れ込むように構成される。実施形態では、第1の接着材料は、32℃より高い温度において第2の接着材料と同じ速度で流れるように構成される。実施形態では、第1の相対的により硬い接着材料の層は、第2の相対的により柔らかい接着材料の層よりも遅い速度で流れる。実施形態では、相対的により柔らかい第2の接着材料の層は、相対的により硬い第1の接着材料の層よりも高い粘着性を有するように構成される。実施形態では、相対的により柔らかい第2の接着材料の層は、成形された後でも高い粘着性を維持する。
【0039】
柔軟な皮膚バリアリングは、リングの中央部分を通して延びるストーマ受容開口部を含む。バリアリングの中央部分は、少なくとも、接着材料の第1の層のバルク部分によって提供される近位に突出する拡張された形状を含み、第2の接着材料の層のその部分は、拡張された形状及びストーマ受容開口部上のリングの近位面を形成する。実施形態では、ストーマ受容開口部は、リングの中央部分の中心にある。他の実施形態では、ストーマ受容開口部は、リングの中央部分の半径方向にオフセットされた位置に提供することができる。実施形態では、ストーマ受容開口部の直径は、10~60mm、例えば10~45mm、例えば15~40mmの範囲から選択される。
【0040】
柔軟なバリアリングの第1の接着材料及び第2の接着材料は、それぞれある程度の吸収能力をさらに有し、これは、接着材料のそれぞれが周囲からいくらかの水分又は液体を吸収できることを意味する。これにより、柔軟なバリアリングがストーマ周辺の皮膚から水分(例えば、汗)を吸収することが可能になり、これは、皮膚表面を乾燥状態に保つのに役立ち、それにより皮膚の損傷(皮膚の浸軟)を防ぐ。
【0041】
柔軟な皮膚バリアリングを使用する準備をするために、最初に剥離ライナをすべて取り除き、リングをストーマの周囲の皮膚に配置する。次に、柔軟な皮膚バリアリングを指で押して、ストーマの周りの皮膚のひだ又はしわに密にフィットするようにすることで、必要に応じて形状に成形することができる。柔軟なリングは、ストーマの外側の輪郭に密に適合するように成形することもできる。柔軟なバリアリングがストーマの周りに固定される場合、典型的に接着ウェーハ及び収集バッグを含むオストミーデバイスを皮膚及び/又は柔軟なバリアリングの遠位面に取り付けることができる。使用後、柔軟なバリアリングは、任意選択的にオストミーデバイスと一緒に皮膚から取り外され、廃棄される。代わりに、オストミーデバイス及び柔軟なバリアリングは、ストーマの周りの皮膚に取り付ける前に互いに取り付けられ、これは、ユーザが最初にベースプレートの近位の皮膚に面する表面から剥離ライナを取り除き、次にベースプレート及びバリアリングのストーマ受容開口部を整列させることを十分に考慮しながら、柔軟なバリアリングの遠位面をベースプレートの近位面に取り付けることを意味する。続いて、組み合わされた(一緒に取り付けられた)ベースプレート及びバリアリングは、ストーマの周りのユーザの皮膚表面に適用される。
【0042】
実施形態では、相対的により柔らかい接着材料の第2の層は、ストーマ受容開口部でリングの内周面の全体を形成する。ストーマ受容開口部のリングの内周面は、バリアリングとストーマ受容開口部との間の界面を形成することが理解されるべきである。実施形態では、内周面は、ストーマ受容開口部を環状に取り囲む。実施形態では、相対的により柔らかい接着材料の第2の層は、ストーマ受容開口部でのリングの内周面の全範囲の「ライニング」を提供する。実施形態では、接着材料の第2の層は、バリアリングの近位面と、ストーマ受容開口部におけるリングの内周面との間の移行部にわたって連続的に(すなわち中断又は分断されずに)延びるように構成され、両方の表面は、相対的により柔らかい接着材料の第2の層によって形成される。実施形態では、移行部は、中央部分のバリアリングの近位面の平面がストーマ受容開口部におけるリングの内周面の接線と実質的に直交する方法で交わる縁部を含む。これらの実施形態は、とりわけ、相対的により柔らかい第2の接着材料が、相対的により硬い、より寸法的に安定した第1の接着材料の外面の大部分の周りに位置するため、本開示による2つの接着層のバリアリングを製造中に容易に制御でき、この構成全体が、単一の接着層の成形可能なバリアリングと比較して全体的に安定性が向上したバリアリングを提供する点で有利である。さらに、本開示の2つの接着層のバリアリングは、ストーマの周りに漏れ防止シールをよりよく形成するために必要な構成要素及び/又は付属品の数を減らすことをさらに実現する。バリアリングは、必要な構造的圧力をもたらす能力(相対的により硬い第1の接着材料)と、ストーマ周囲の皮膚領域の皮膚のしわに接着材料を良好に適合させるための成形性(相対的により柔らかい第2の接着材料)との両方を提供する。したがって、ユーザは、ストーマの周りのオストミー装具の良好なシールを達成するために、硬くて圧力をかける構成要素と、ペースト接着材料などのより柔らかく柔軟な接着材料との両方を扱う必要がない。
【0043】
実施形態では、バリアリングの近位面は、リングを通した断面図で見られたとき、S字形に近似する曲線を描く。バリアリングの近位面のこの近似S字形は、フランジ部分と、相対的により硬い接着材料の第1の層のバルク部分との間の比較的滑らかな(又は「穏やかな」若しくは「柔らかい」)移行部を提供する。これは、バリアリングの「凸部」又は凸形状を提供するのに役立つ。
【0044】
実施形態では、第1の接着層のフランジ部分に提供されたリングの近位面の第1の部分は、第1の平面内にあり、第1の接着層のバルク部分に提供されたリングの近位面の第2の部分は、第2の平面内にある。第2の平面は、第1の平面に平行である。
【0045】
実施形態では、第1の平面又は第2の平面の法線に沿って測定される、第1の平面と第2の平面との間の直線距離は、5~20mmの範囲である。実施形態では、直線距離は、5~15mm、例えば5~13mm、例えば5~10mmの範囲であり、例えばおよそ8mmである。この範囲及び範囲内の直線距離の特定の値は、柔軟なバリアリングの適切な凸部を提供する。実施形態では、バリアリングのストーマ受容開口部の内径は、15~50mm、例えば20~45mm、例えば25~40mm、例えば30~35mmの範囲である。実施形態では、(外周縁における)バリアリングの全体の直径は、50~100mm、例えば60~85mm、例えば65~80mm、例えば70~75mmの範囲である。実施形態では、外周縁におけるバリアリングの第1の直径と、(内周面に平行な)内周縁におけるバリアリングの第2の直径との間の差は、およそ40mmである。実施形態では、内周縁から外周縁まで測定されたバリアリングの半径方向幅は、およそ20mm、例えば正確に20mmである。
【0046】
実施形態では、バリアリングは、ストーマ受容開口部の中心軸C-Cに垂直な第1の平面内に延びる外側平面近位面を含み、外側平面近位面は、バリアリングの最も外側の周縁から半径方向内側に延び、中間傾斜面に移行し、中間傾斜面は、外側平面近位面から内側平面近位面に向かって半径方向内側に延び、内側平面近位面は、ストーマ受容開口部の中心軸C-Cに垂直な第2の平面内に延び、中間傾斜面から、ストーマ受容開口部を画定するバリアリングの最も内側の周縁に向かって半径方向に延びる。実施形態では、バリアリングの外側平面近位面は、第1の相対的により硬い接着材料のフランジ部分によって画定されるバリアリングの部分において、相対的により柔らかい接着材料の第2の層によって形成される。実施形態では、バリアリングの内側平面近位面は、第1の相対的により硬い接着材料のバルク部分によって画定されるバリアリングの部分において、相対的により柔らかい接着材料の第2の層によって形成される。
【0047】
理解できるように、換言すると、外側平面近位面は、内側平面近位面に対して、ストーマ受容開口部の軸C-Cに沿って軸方向に変位される。ストーマ受容開口部の軸C-Cから内側平面近位面の最外縁部分までの第1の半径は、ストーマ受容開口部の軸C-Cから外側平面近位面の最内縁部分までの第2の半径よりも小さく、内側平面近位面は、中間傾斜面によって外側平面近位面に接続される。
【0048】
本開示によれば、リングの中央部分で近位に突出する拡張された形状を有し、それによってリングに凸部を生じさせるように柔軟なバリアリングを構成する1つの目的は、ユーザのストーマを皮膚表面から十分に突出させることを促進することである。中央部分の近位に突出する拡張された形状は、ストーマがストーマ排出物のための収集バッグ内に適切に延びることができるように、ストーマ周囲の皮膚領域(ストーマのすぐ周り)に必要な圧力を提供するように設計される。圧力は、バリアリングがオストミー装具の接着性ベースプレートに提供又は取り付けられ、オストミー装具がストーマ領域の周りのユーザの腹部皮膚に接着され、それによってリングの中央部分の近位に突出する拡張された形状からストーマ周囲領域に圧力が作り出されるときに得られる。
【0049】
本開示によれば、本明細書で考察される発明的な柔軟なバリアリングによって達成される別の目的は、形状及びサイズがユーザの個々のストーマ周囲領域及びストーマに適合される能力に関して、特に用途の広い皮膚バリアリングを提供することである。現在利用可能なバリアリングの選択肢と異なり、本開示による柔軟なリングは、ストーマ周囲領域及びストーマへの非常に密接な(したがって漏れのない)適合を促すように成形可能であるが、それでもなお、当技術分野で通常見られるようにバリアリングに比較的固い熱可塑性要素を含まなくても、ストーマを十分に突出させるための高いストーマ周囲圧を提供する能力を有するリングを提供する。
【0050】
開示されたバリアリングのさらなる利点は、ユーザの動きにより適応し、ストーマ周囲領域に圧力創傷を引き起こしにくく、ユーザによってより小さいセグメント(部分)に切断され得る(これは、バリアリングに熱可塑性要素がないため、本開示に従ってさらに容易になる)バリアリングの提供を含む。多くのユーザは、例えば、手術瘢痕、皮膚浸軟等に由来する、非常に不均一及び/又は不規則なストーマ周囲の皮膚表面を有する。これら及び他のユーザにとって、本開示の柔軟なバリアリングをより小さいセグメントに切断する選択肢は、特に有利である。ストーマ周囲領域の一部のみが適切なストーマ突出のために圧力下に置かれる必要があり得、且つ/又はストーマ周囲領域の一部のみが柔軟なバリアリングの材料で「満たされる」ことから利益を得ることができる。開示されたバリアリングを使用して、ユーザは、バリアリングから、例えばリング全体の三日月状の部分又は四分の一の部分などの形状でより小さいセグメントを切り取り、次にバリアリングのこのセグメント/部分をオストミー装具のベースプレートに取り付けて、その後、ストーマの周りに適用して使用するという選択肢を有する。このように、開示されたバリアリングは、オストミー装具に非常に用途の広い付属品を提供し、これは、それが必要とされる場所で(場合によりその場所でのみ)ストーマ周囲の皮膚表面に正確に非常に密にフィットするように簡単且つ直感的に適合させることができる。これにより、ユーザにとってより快適な解決策が提供される。全体として、これは、ストーマ排出物の漏れのリスクをさらに低減するのに役立つ解決策を提供する。
【0051】
さらに有利な実装形態において、本開示の柔軟なバリアリングは、ヘルニアを発症し、腹部皮膚表面上のストーマの位置がヘルニア、すなわちふくらんだ外向きに突出した体の輪郭上にあるユーザに特に適している。これらのユーザの多くにとって、後退した(突出していない)ストーマの問題が頻繁に発生する。ヘルニア自体が外側に突き出ている場合でも、ストーマは、ヘルニアの中空の(窪んだ)ストーマ周囲の皮膚部分に「座る」ことが非常に多いため、これらのユーザは、ストーマ周囲にオストミー装具を密にフィットさせるためのすべての要件を満たすことができるオストミー装具を見つけることが困難である。本開示の柔軟な皮膚バリアリングは、非常に用途が広く適応性があり、したがってストーマを突出させるためにストーマ周囲領域に適切な圧力を提供することができると同時に、容易なカスタマイズに対する個々のユーザのニーズを満たす解決策を提供する。特に、本開示の柔軟なバリアリングが凹状オストミーベースプレート、例えば国際公開第2016/146135号パンフレット又は国際公開第2017/041807号パンフレットとして公開された本出願人の他の特許出願に開示されている凹状ベースプレートと組み合わせて使用される場合、ヘルニアを抱えるユーザは、そのニーズをよりよく満たすことができる組み合わせた選択肢を提示される。
【0052】
実施形態では、相対的により柔らかい接着材料の第2の層は、リングの軸方向で測定される実質的に一定の厚さを有するように構成される。これは、接着材料の第2の層の厚さが接着材料の第2の層の範囲にわたって変化するように構成されていないことを意味する。実施形態では、ストーマ受容開口部でリングの内周面全体を形成する相対的により柔らかい接着材料の第2の層の部分は、リングの近位面を形成する第2の接着材料の層と同じ実質的に一定の厚さを有する。1つの利点は、柔軟なバリアリングの製造の容易さである。
【0053】
実施形態では、接着材料の第2の層の実質的に一定の厚さは、0.5~10.0mmの範囲から選択される。実施形態では、接着材料の第2の層の実質的に一定の厚さは、0.5~2.0mmの範囲から選択される。実施形態では、厚さは、0.5mmであるように選択される。実施形態では、厚さは、1.0mmであるように選択される。実施形態では、厚さは、1.5mmであるように選択される。実施形態では、厚さは、2.0mmであるように選択される。実施形態では、厚さは、5.0mmであるように選択される。実施形態では、厚さは、10.0mmであるように選択される。
【0054】
実施形態では、リングの軸方向で測定される、相対的により硬い接着材料の第1の層のフランジ部分の厚さは、0.2~3.0mmの範囲である。
【0055】
実施形態では、リングの軸方向で測定される、相対的により硬い接着材料の第1の層のバルク部分の最大厚さは、3~10mmなど、3~12mmの範囲である。
【0056】
実施形態では、第1の接着層の相対的により硬い材料は、1Hzで0.6未満のタンジェントデルタ(tanδ)及び0.03~1.0Hzの周波数範囲で1MPa未満の|G|を有し、ここで、0.03Hzにおけるタンジェントデルタは、1.0Hzにおけるタンジェントデルタを上回る。これらの値は、柔軟なバリアリングの第1の層及び第2の層に使用される接着材料をDMA分析(動的機械分析、動的機械分光法としても知られている)にかけることによって得られる。DMA分析の試験条件については、以下でさらに記載する。
【0057】
実施形態では、第2の相対的により柔らかい接着材料の層は、相対的により硬い接着材料の第1の層の近位面を同時に変形することなく、相対的により硬い接着材料の第1の層の近位面上で変位され得る。換言すると、第2のより柔らかい接着材料は、指の圧力を使用して、相対的により硬い第1の接着材料に対して押されるか又は突かれることができ、それにより、第2のより柔らかい接着材料は、相対的により硬い接着材料の第1の層の近位面上で位置をシフトすることができる。このようにして、ユーザによってもたらされる第2の接着材料の局所的な薄化又は肥大化及び/又は再分配を達成することができる。したがって、次に、バリアリング、特にその近位面の輪郭を操作する(「操る」)ことができ、したがって個々のユーザのニーズに合わせてカスタマイズすることができる。また、柔軟なバリアリングは、操作がより柔らかく滑らかであり、2層構造のためにより簡単に皮膚表面に流れ込み、これにより第2の相対的により柔らかい接着材料は、より柔軟な構造を提供することを促進する。
【0058】
実施形態では、第2の相対的により柔らかい接着材料の層及び相対的により硬い接着材料の第1の層は、ユーザの指の圧力によって共変形可能であるように構成される。共変形可能であることは、ユーザが指の圧力を加えると接着材料の両方の層が同時に成形され、それによりユーザがバリアリングの形状及び輪郭を操作できることを意味する。実施形態では、バリアリングの共変形可能な接着材料の層は、ユーザが例えば両手の人差し指をバリアリングのストーマ受容開口部に挿入し、反対方向に引っ張り力を提供し、それによりバリアリングのサイズ及び/若しくは形状並びに/又はバリアリングの内周縁の形状を変更できるという意味で伸張可能である。例では、バリアリング及びストーマ受容開口部は、バリアリングが操作又は伸張前にユーザに供給されるとき、両方とも全体的に環状又は円形の形状であり、その後、ユーザによる修正後に卵形又は楕円形の形状をとる。
【0059】
代替的又は追加的に、実施形態では、ユーザは、例えば、バリアリングの外周縁の反対の位置に指を置き、ストーマ受容開口部に向かって圧力を加えて、それによりバリアリングの形状及び/又はバリアリングの内周縁の形状を修正することにより、バリアリングに圧力をかけることができる。それにより、リングの接着材料層は、接着材料を開口部に向かって半径方向内側に変形及び変位させ、バリアリングの形状の変化をもたらす。したがって、ユーザは、接着材料をバリアリングのある部分から別の部分に移動させることができ、これは、第2の相対的により柔らかい接着材料を移動して、後退部又はユーザのストーマの周りの皮膚のひだを密にフィットするように接着材料で埋める必要がある位置に対応する特定の位置にリングのより厚い部分を形成できるか、又は逆に別の位置でより薄い部分を形成できることを意味する。特に、しかし排他的にではなく、ユーザは、柔軟な皮膚バリアリングを全体的に環状又は円形の形状から全体的に卵形又は楕円形に造形できることが予見される。実施形態では、バリアリングの中央部分がユーザによって操作されると、バリアリングの第1及び第2の接着層の材料は、ストーマ受容開口部から半径方向に離れて又はストーマ受容開口部に向かって半径方向に変位されるため、バリアリングの厚さは、減少又は増加する。さらに、本開示によるバリアリングでは、第1の接着材料は、ユーザによる成形操作後に得られるバリアリングのカスタマイズされた輪郭を提供し、元の形状への実質的な弾性回復なしにそのカスタマイズされた形状を維持する。これは、ストーマの周りの皮膚のひだにより簡単に流れ込む第2の接着材料の能力と組み合わせて、非常に用途が広く、柔軟な皮膚バリアリングを提供する。本明細書に記載のバリアリングのプロトタイプを引張試験にかけ、その結果を従来技術の例示的なバリアリングに対する同一の試験の結果と比較することにより、本開示の柔軟なバリアリングは、従来技術のリングよりも著しくより優れた塑性変形能力を示すことが見出された。
【0060】
実施形態では、バリアリングは、およそ5mm+/-1mmの内周縁(ストーマ受容開口部の内径)におけるリングの単軸方向の伸張の結果として、最大でおよそ2mmのリングの中央部分の厚さの最大の減少を可能にするように構成される。実施形態では、バリアリングの厚さは、リングが、リング開口部で反対方向にリングを伸ばす結果として最大6mmの結果として生じる伸張を受けたとき、最大2mm減少し、それにより、バリアリングの形状は、例えば、環状/円形から卵形/楕円形にシフトし得る。実施形態では、バリアリングは、およそ5mm+/-1mmの内周縁(ストーマ受容開口部の内径)でのリングの単軸方向の伸張に応答して、最大でおよそ1mmのリングの中央部分の厚さの最大の減少を可能にするように構成される。実施形態では、バリアリングは、伸張に応答して、およそ0.5mmのリングの中央部分の厚さの最大の減少を可能にするように構成される。実施形態では、バリアリングは、伸張に応答して、およそ0.5~1mmのリングの中央部分の厚さの最大の減少を可能にするように構成される。実施形態では、バリアリングは、半径方向の1つの軸に沿った最大6mmの伸張に応答して、厚さが最小に減少するように構成される。したがって、本開示によるバリアリングの中央部分の厚さは、リングが半径方向に1つの軸に沿って結果として生じる伸張を受けたとき、最大でおよそ2mm減少することができる。バリアリングの半径方向の1つの軸に沿った最大でおよそ6mmの結果として生じる伸張によって引き起こされる、およそ0.1mm~およそ2mmの厚さのあらゆる減少は、本開示に含まれることが予見される。
【0061】
より具体的な用語で接着材料の成形性及び/又は粘着性/皮膚表面への流れを評価する場合、パラメータの複合体、ある周波数範囲内のせん断弾性係数|G|及びtan(δ)を、接着材料が成形可能及び/又は粘着性/流動性である場合の優れた指標として使用することができる。これらのパラメータは、通常、振動周波数掃引を使用して、接着材料を、32℃で1%の制御された変形に回転せん断変形下で変形することによって決定される。
【0062】
対象となる周波数範囲は、0.03Hz~1Hzであり、なぜなら、これは、適用、摩耗、取り外しなどのオストミーデバイスの取り扱いが通常行われる周波数範囲であるためである。
【0063】
複合体のせん断弾性係数|G|は、接着材料の成形特性を示し、すなわち例えば指でそれを造形及び操作するのがどの程度簡単であるかを示す。
【0064】
接着材料のtan(δ)は、接着材料の弾性特性とその塑性特性との間の関係である。接着材料の弾性特性が高いほど、変形後に元の形状に近づくように戻るが、塑性特性が高い場合、接着材料は、変形した状態により近いままである。tan(δ)=1の場合、弾性特性と塑性特性とのバランスが取れている。tan(δ)が1より大きい場合、塑性特性が優勢であり、tan(δ)が1未満である場合、弾性特性が優勢である。本開示の接着材料は、tan(δ)が1.0Hzにおいて0.6を超え、|G|が0.03~1Hzの周波数範囲で1MPa未満である場合、成形可能であると見なされる。
【0065】
実施形態では、第2の接着層の相対的により柔らかい材料は、0.6を超えるタンジェントデルタ(tanδ)及び0.03~1.0Hzの周波数範囲で1MPa未満の|G|を有し、ここで、0.03Hzにおけるタンジェントデルタは、1.0Hzにおけるタンジェントデルタを下回る。
【0066】
実施形態では、第2の相対的により柔らかい接着材料の|G|は、0.03Hz~1.0Hzの周波数範囲で第1の相対的により硬い接着材料の|G|を下回る。
【0067】
実施形態では、0.03Hzの周波数における第1及び第2の接着材料のそれぞれの|G|の差は、少なくとも10kPaであり、1.0Hzの周波数における第1及び第2の接着材料のそれぞれの|G|の差は、少なくとも100kPaである。
【0068】
本開示による凸状バリアリングのサンプルを、市場で入手可能な「標準ケア」製品、すなわちHollister(登録商標)Adapt Convexバリアリングと比較するように求められたオストミーケアの分野の医療専門家からの122の回答に基づくと、回答者の94%は、本開示によるバリアリングが凸部の提供においてより優れていると感じ、83%は、より肌にやさしいと感じ、95%は、個々の体の輪郭によりよく適合すると感じ、98%は、皮膚に対してよりよいシールを提供すると感じ、77%は、より簡単且つ直感的に使用できると感じた。
【0069】
第2の態様において、本開示は、本明細書に開示されるような柔軟な皮膚バリアリングと、オストミー装具のベースプレートと、任意選択的に、オストミー装具のための収集バッグとを含むオストミー装具システムに関する。収集バッグは、ベースプレートの遠位面に取り付けられるように構成される。一実施形態では、収集バッグは、材料を互いに溶接することによってベースプレートに恒久的に取り付けられる。他の実施形態では、収集バッグ及びベースプレートのそれぞれは、結合用半部を含み、これらのそれぞれは、収集バッグをベースプレートに取り付けるために、他方の結合用半部と液密に結合し、係合するように構成される。実施形態では、ベースプレートの近位面は、柔軟な皮膚バリアリングの遠位面に取り付けられるように適合される。実施形態では、ベースプレートは、平面状の近位面を含む。他の実施形態では、ベースプレートは、湾曲した近位面を含む。一実施形態では、ベースプレートは、湾曲され、且つ反転可能であり、且つベースプレートの縁部に沿って半径方向に延びる花弁状部材を設けられ、それにより、ベースプレートは、皮膚の膨らみ又はヘルニアに位置するストーマの周りのユーザの皮膚表面に取り付けられるように適合可能である。実施形態では、ベースプレートは、本出願人の公開国際公開第2016/146135号パンフレットに開示されている種類のものである。
【0070】
それにより、第2の態様による実施形態では、バリアリングの遠位面は、ベースプレートの近位面に取り付けられ、したがってストーマに直接隣接するストーマ周囲の皮膚表面に付着するように構成される。ベースプレートとの組み合わせにおいて、バリアリングの凸部は、ストーマに直接隣接する圧力の増加により、リング20が窪んだ又は後退したストーマを皮膚表面からよりよく突出させるのに役立つ。リングがオストミーデバイスの接着ウェーハの近位面に取り付けられる実装形態では、組み合わされたオストミーデバイスの(腹部皮膚表面に取り付けられた)より大きい合計接着面積のために、拡張された形状がストーマ周囲の皮膚表面に追加の圧力を提供する。
【0071】
動的機械分析(DMA) - 試験条件
DMAを、32℃及び1%CD(制御された変形)で周波数掃引によって以下のように実行した。サンプルは、90℃、10barで2つの剥離ライナ間で厚さ1mmに熱成形することによって準備した。パンチングツールを使用して、直径25mm又は8mmの丸いサンプルを切り出した(試験機器の寸法に依存する)。剥離ライナを除去し、サンプルをThermo Scientific Haake Rheo Stress 6000レオメーターに配置した。使用された形状は、第1の相対的により硬い接着剤について8mmの直径、第2の相対的により柔らかい接着剤について25mmの直径を有する平行な板であり、加えられた力は、5Nであった。5Nの力を加えた後、32℃でサンプルの10分間の熱平衡化を測定前に行った。
【0072】
バリアリングの厚さを伸張して測定するための試験手順
バリアリングの伸張を実行し、伸張の前後のバリアの厚さを測定するための試験手順の以下の記載は、例示であり、伸張を行い、厚さを決定する1つの可能な方法と見なされるべきである。バリアリングを伸張し、その厚さを測定するための他の方法及び手順が許容され得る。
【0073】
本開示によるバリアリングの試験手順において、カスタマイズされた伸張ツールを準備した。しかしながら、これは、バリアリングの伸張を得るために必須ではないため、これ以上記載しない。
【0074】
試験手順のステップは、以下のとおりである。
1.バリアリングサンプルを準備する
2.凸側(リングの近位方向に突出する拡張された形状)の頂部からストーマ受容開口部内の接着材料中に4つの線を一意に引き、その結果、2つの反対側の線が整列し、2対の線が互いに垂直になる(直交する)ようにする
3.4つの線のそれぞれの凸側の端部でバリアリングの厚さを測定し(測定手順については、以下を参照されたい)、各ポイントに一意に例えば「1」、「2」、「3」、「4」とマークを付ける
4.定規又はキャリパーのいずれかを使用して、ステップ2で作成した反対方向に整列した線の2つ間でバリアリングの内径(ストーマ受容開口部の直径)を測定する
5.凸側を上に向け、反対にマークされたポイントの2つ(例えば、ポイント「1」及び「3」)を伸張方向に合わせた状態でサンプルを配置する
6.反対にマークされたポイントによって内周でサンプルをつかみ、バリアリングサンプルを反対に整列した線の軸に沿って反対方向の引っ張り力及び15mmの開口部のサイズにさらす
7.サンプルの伸張された状態を40+/-10秒間維持する
8.サンプルの張力を解放し、凸側を上に向けた状態で低抵抗面に置き、自由に落ち着かせる
9.サンプルを30+/-2分間滞留させて、伸張した状態から後退させる
10.ステップ4を繰り返して、伸張後の内径を測定する
11.一意にマークされた4つのポイントのそれぞれにおいて、凸側のバリアリングの結果として得られた厚さを測定する
12.ステップ11のバリアリングを伸張した後の厚さの測定値を、ステップ4のバリアリングを伸張する前の厚さの測定値と比較する
【0075】
バリアリングの厚さは、以下のように測定する。
1.ミツトヨ製の「アブソリュート」など、較正済みの厚さゲージを準備する。厚さゲージは、0.02mm又はそれよりも優れた精度及び1.5N以下の測定力を有するべきである。測定用フット部分は、好ましくは、直径が10mmで平面を有する。
2.バリアリングのサンプルを準備する
3.厚さゲージは、測定用フット部分とゲージ面との間にサンプルがない状態で測定を行うことでリセットされる
4.バリアリングサンプルのマークされたポイントの1つを測定用フット部分とゲージ面との間に配置し、測定値を記録する
5.バリアリングサンプルのマークされたすべてのポイントでステップ4を繰り返す
【0076】
いくつかの試験手順及び測定について、バリアリングの接着材料の表面の1つ又は複数が剥離ライナ材料、例えばシリコン処理されたポリマーシート材料で覆われる場合、実用のために役立つ場合がある。当業者は、この必要性を判断し、必要と考えられる場合にはそのような材料を適用することができる。同様に、当業者は、適用された場合、剥離ライナの追加の厚さを考慮に入れるのに困難はないであろう。
【0077】
図面の詳細な記載
図1は、本開示による柔軟なバリアリング20の一実施形態の断面斜視図である。
【0078】
柔軟なバリアリング20は、近位面24及び遠位面26を有する、相対的により硬い接着材料22の第1の層を含む。第1の接着層22の遠位面26は、バリアリング20の平面(平面状)遠位面28の少なくとも一部を形成する。リング20は、少なくとも接着材料22の第1の層の近位面24に提供される、相対的により柔らかい接着材料32の第2の層をさらに含む。接着材料32の第2の層は、リング20の近位面38を形成する。リング20は、中央部分40を通して延びるストーマ受容開口部34を含む。接着材料22の第1の層は、リング20の中央部分40に位置する相対的により厚いバルク部分44と、リング20の外周縁46から半径方向内側に延びる相対的により薄いフランジ部分42とを含む。フランジ部分42は、バルク部分44に移行する。相対的により厚いバルク部分44は、リング20の中央部分40に対して近位に突出する拡張された形状48を提供する。バルク部分44が形成する近位に突出する拡張された形状48は、上で説明したように、リング20に全体的な凸形状を与えると理解することができる。
【0079】
柔軟な皮膚バリアリング20は、ユーザのストーマの周りに位置する皮膚のひだ又はしわに配置するように適合される。リング20は、ストーマに直接隣接するストーマ周囲の皮膚表面に接着するように構成され、ストーマの周りにシールを提供するために使用され、多くの実装形態において、収集パウチ及び接着ウェーハを含む通常のオストミーデバイスと組み合わせて使用される。特に、拡張された形状48は、リング20に凸部を形成し、これは、ストーマに直接隣接する圧力の増加により、リング20が窪んだ又は後退したストーマを皮膚表面からよりよく突出させるのに役立つ。リング20がオストミーデバイスの接着ウェーハの近位面に取り付けられるいくつかの実装形態において、拡張された形状48は、組み合わせたオストミーデバイスの(腹部皮膚面に取り付けられた)より大きい合計接着面積のために、ストーマ周囲の皮膚表面に追加の圧力を提供し得る。
【0080】
相対的により硬い接着材料22の第1の層は、そのバルク部分44で、ストーマの周りの皮膚表面に必要な圧力をかけるのに十分な寸法安定性を柔軟なバリアリング20に提供する。しかしながら、第1の相対的により硬い接着材料22は、ユーザがリング20をカスタマイズすることを可能にする成形性も示す。相対的により柔らかい接着材料32の第2の層は、第1の接着材料22と組み合わせて成形されるように構成されるだけでなく、それは、第2の接着材料32よりも低い温度で流れ始めるようにさらに適合され、したがって第1の接着材料22より前に窪んだストーマの周りの皮膚表面のひだ及びしわに適切に流れ込む。ストーマ周囲圧力を生じさせる柔軟なバリアリングの2つの異なる接着層22、32の組み合わせは、寸法が安定しているが、カスタマイズ可能(成形可能)であり、窪んだストーマの周りに良好なシールを形成する機能を備え、特に、しかし排他的ではなく、外側に突出する身体の輪郭を有するユーザのために、ストーマの周囲のより良好なシールに対するユーザのニーズを大幅に満たす。
【0081】
図2は、本開示による柔軟なバリアリング20の一実施形態の拡大断面斜視部分図である。
【0082】
図2では、相対的により柔らかい接着材料32の第2の層は、ストーマ受容開口部34でリング20の内周面50の全体を形成する。実施形態では、第1の接着層の材料22のいずれもストーマ受容開口部34と当接せず、ストーマ受容開口部34と界面を形成することもない。図2に示される実施形態では、内周面50は、ストーマ受容開口部34を環状に取り囲む。図2では、相対的により柔らかい接着材料32の第2の層は、ストーマ受容開口部34においてリング20の内周面50の全範囲の「ライニング」を提供する。図2の図に示される実施形態は、バリアリングの近位面38と、ストーマ受容開口部34におけるリング20の内周面50との間の移行部52をさらに含み、両方の面38、50は、相対的により柔らかい接着材料32の第2の層によって形成される。図2において、移行部52は、縁部54を含み、そこで中央部分40におけるバリアリング20の近位面38の平面がストーマ受容開口部におけるリング20の内周面50の接線と実質的に直交して又は垂直に交わる。
【0083】
図3は、本開示による柔軟なバリアリング20の一実施形態の拡大断面斜視部分図である。
【0084】
図3では、相対的により硬い接着剤22の第1の層は、ストーマ受容開口部34でリング20の内周面50の主な部分を形成する。実施形態では、第1の接着層の材料22は、ストーマ受容開口部34と当接するか、又はストーマ受容開口部34と界面を形成する。図3に示される実施形態では、内周面50は、ストーマ受容開口部34を環状に取り囲む。実施形態では、相対的により柔らかい接着材料32の第2の層のわずかな縁部部分56もストーマ受容開口部34と当接するか、又はストーマ受容開口部34と界面を形成する。
【0085】
図4は、本開示による柔軟なバリアリング20の一実施形態の概略断面図である。
【0086】
図4では、第2の相対的により柔らかい接着層32及び相対的により硬い接着材料22の第1の層の両方は、ユーザによって加えられる指の圧力によって変形可能であることが見られ、すなわち、接着材料22、32の第1及び第2の層は、共変形可能である。ユーザが指の圧力を加えると、バリアリング20の形状及び/又は輪郭が操作される。接着材料22、32のこの共変形性は、図4の実施形態に示されている。最初に、第2のより柔らかい接着材料の層32の一部(又はある体積)がストーマ受容開口部34に対して半径方向外側に変位され、第2の接着材料の局所的な膨らみ58を形成し、これは、第2の接着材料32の隣接部分よりも厚い。第2の接着材料32は、必ずしも半径方向外向き方向に変位されるだけでなく、半径方向と交差する方向、すなわち「横」及び半径方向内側にも潜在的に変位されることを理解されたい。第2に、図4の実施形態の図は、矢印A及びBの方向に軸方向及び半径方向に変形されている、相対的により硬い接着材料22の第1の層をさらに示す。さらに、図4では、ユーザは、ここで、リングの近位面38に圧力をかけた第1の接着材料22のわずかな凹み60を確認することができる。これらの実施形態における両方の接着材料22、32の変形は、同時に起こることが理解されるべきである。さらに、ユーザは、接着材料22、32をバリアリング20のある部分(セグメント/セクション)から別の部分(セグメント/セクション)に移動させることができ、これは、接着材料22、32を移動させて、図4に示されるように、特定の位置でリングのより厚い部分58を形成できること意味することを理解されたい。ユーザによる指での成形後に得られるバリアリング20の結果として生じるカスタマイズされた輪郭は、ストーマの周りの皮膚表面輪郭へのカスタマイズされたバリアリング20の改善された適合を提供する。
【0087】
図5は、本開示による柔軟なバリアリング20の一実施形態の概略断面図である。
【0088】
図5の実施形態では、第2の相対的により柔らかい接着材料の層32は、ユーザによって加えられた指の圧力によって変形可能である。ユーザがリング20の近位面38に指の圧力を加えると、バリアリング20の(すなわちこれらの実施形態ではリングの近位面38の)形状及び/又は輪郭が操作される。図5は、第2のより柔らかい接着層32の一部(又はある体積)がストーマ受容開口部34に対して半径方向外向きに変位されて、第2の接着材料32の隣接する部分よりも厚い第2の接着材料の局所的な膨らみ62を形成する方法を示す。第2の接着材料32は、必ずしも半径方向外向き方向に変位されるだけでなく、半径方向と交差する方向、すなわち「横」及び半径方向内向きにも潜在的に変位されることを理解されたい。
【0089】
特に、図5の実施形態の図において、相対的により硬い接着材料22の第1の層は、ユーザの指の圧力の適用によって変形されない。図5の実施形態において、相対的により硬い第1の接着剤22と、相対的により柔らかい第2の接着剤22との間の差別化がこれらの特性を提供することが理解されるべきである。換言すると、第1及び第2の接着材料22、32は、材料の同時変形が全く起こらないか又はわずかにのみ起こるように構成される。したがって、ユーザは、第2の相対的により柔らかい接着材料32をバリアリング20のある部分(セグメント/セクション)から別の部分に移動させることができ、これは、第2のより柔らかい接着材料32を移動して、特定の位置にリングのより厚い部分62を形成できるのと同時に、第1の相対的により硬い接着材料22が、図5に示すように、リング20の全体的な寸法安定性を損なうことなくその形状(近接方向に突出する部分)を維持することを意味する。ユーザによる第2のより柔らかい接着層32の指による成形後に得られるような、結果として得られるバリアリング20のカスタマイズされた輪郭は、皮膚表面輪郭への適応に関して優れた汎用性と、したがってストーマの周りの改善された適合との両方を提供するバリアリング20を提供するが、これは、凹んだストーマが皮膚表面から突出した状態を保つために、ストーマ周囲領域に十分な圧力も維持する。
【0090】
図6Aは、本開示の柔軟なバリアリング20の一実施形態の概略斜視図であり、リングがユーザの指によって伸張されることを示す。図6Bは、リングが伸張される前の図6Aの柔軟なバリアリング20の概略上面図である。図6Cは、リング20が伸張された後の図6A、6Bの柔軟なバリアリング20の概略上面図である。最初に図6Aを参照すると、実施形態では、(中央部分40の近位に突出する拡張された形状を示す図1の参照番号48と比較した)柔軟なバリアリング20の中央部分40の厚さは、ストーマ受容開口部34の内周面50(内径D1)でリングを伸張すると減少する。図6B及び6Cも参照されたい。換言すると、実施形態では、開口部34でリングが反対方向に伸びた結果としてリング20が伸張すると、柔軟なバリアリング20の厚さが減少し、それにより図6Bの環状/円形から図6Cの卵形/楕円形にシフトされた柔軟なバリアリング20の形状を見ることができる。同様に図6Aに示されるのは、バルク部分44及びフランジ部分42である。図6B及び6Cの図を比較すると、開口部34の直径が図6Bの初期直径D1から図6Cのより大きい伸張後の直径D2にどのように拡大されたかを見ることもできる。特に、図6Cに概略的に示されているリング20の変形は、永久的である。実施形態では、バリアリング20の中央部分40の厚さの減少は、リング20が図6Cの直径D2に対応する矢印の軸方向に伸張され、その後、放置して落ち着かせた場合、最大2mmである。
【0091】
図7は、本開示の柔軟なバリアリング20の一実施形態の概略斜視図であり、リングがユーザの指間で圧縮されることを示す。
【0092】
特定の特徴を示し、記載してきたが、それらは、特許請求される本発明を限定することを意図していないことが理解され、特許請求される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更形態及び修正形態がなされ得ることが当業者に明らかになる。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で見なされるべきである。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
本開示は更に以下の態様を含んでいる:
《態様1》
ユーザのストーマの周りに位置する皮膚のひだ又はしわに配置するように適合された柔軟な皮膚バリアリングであって、
近位面及び遠位面を有する、相対的により硬い接着材料の第1の層であって、前記第1の接着層の前記遠位面は、前記リングの平面遠位面の少なくとも一部を形成する、第1の層、
少なくとも前記接着材料の第1の層の前記近位面に提供される、相対的により柔らかい接着材料の第2の層であって、前記リングの近位面を形成する第2の層、
前記リングの中央部分を通して延びるストーマ受容開口部
を含み、
前記第1の接着層は、前記リングの前記中央部分に位置する相対的により厚いバルク部分と、前記リングの外周縁から半径方向内側に延び、且つ前記バルク部分に移行する相対的により薄いフランジ部分とを含み、
前記相対的により厚いバルク部分は、近位方向に突出する拡張された形状を前記リングの前記中央部分に提供する、柔軟な皮膚バリアリング。
《態様2》
前記相対的により柔らかい接着材料の第2の層は、前記ストーマ受容開口部で前記リングの内周面の全体を形成する、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様3》
前記バリアリングの前記近位面は、前記リングを通した断面図で見られたとき、S字形に近似する曲線を描く、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様4》
前記第1の接着層の前記フランジ部分に提供された前記リングの前記近位面の第1の部分は、第1の平面内にあり、前記第1の接着層の前記バルク部分に提供された前記リングの前記近位面の第2の部分は、第2の平面内にあり、前記第2の平面は、前記第1の平面に平行である、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様5》
前記第1の平面又は前記第2の平面の法線に沿って測定される、前記第1の平面と前記第2の平面との間の直線距離は、5~20mmの範囲である、態様4に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様6》
前記相対的により柔らかい接着材料の第2の層は、前記リングの軸方向で測定される実質的に一定の厚さを有するように構成される、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様7》
前記接着材料の第2の層の実質的に一定の厚さは、0.5~10.0mmの範囲から選択される、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様8》
前記リングの軸方向で測定される、前記相対的により硬い接着材料の第1の層の前記フランジ部分の厚さは、0.2~3.0mmの範囲である、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様9》
前記リングの軸方向で測定される、前記相対的により硬い接着材料の第1の層の前記バルク部分の最大厚さは、3~10mmなど、3~12mmの範囲である、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様10》
前記第1の接着層の前記相対的により硬い材料は、1.0Hzで0.6未満のタンジェントデルタ(tanδ)及び0.03~1.0Hzの周波数範囲で1MPa未満の|G |を有し、ここで、0.03Hzにおけるタンジェントデルタは、1.0Hzにおけるタンジェントデルタを上回る、態様1~9のいずれか一つに記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様11》
前記第2の接着層の前記相対的により柔らかい材料は、0.6を超えるタンジェントデルタ(tanδ)及び0.03~1.0Hzの周波数範囲で1MPa未満の|G |を有し、ここで、0.03Hzにおけるタンジェントデルタは、1.0Hzにおけるタンジェントデルタを下回る、態様1~10のいずれか一つに記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様12》
前記第2の相対的により柔らかい接着材料の|G |は、0.03Hz~1.0Hzの周波数範囲で前記第1の相対的により硬い接着材料の|G |を下回る、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様13》
0.03Hzの周波数における前記第1及び第2の接着材料のそれぞれの|G |の差は、少なくとも10kPaであり、1.0Hzの周波数における前記第1及び第2の接着材料のそれぞれの|G |の差は、少なくとも100kPaである、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様14》
前記第2の相対的により柔らかい接着材料の層は、前記相対的により硬い接着材料の第1の層の前記近位面を同時に変形することなく、前記相対的により硬い接着材料の第1の層の前記近位面上で変位され得る、態様1に記載の柔軟な皮膚バリアリング。
《態様15》
オストミー装具システムであって、
態様1~14のいずれか一つに記載の柔軟な皮膚バリアリングと、
オストミー装具のベースプレートと、任意選択的に、
前記ベースプレートの遠位面に取り付けられるように構成されている、前記オストミー装具のための収集バッグと
を含み、
前記ベースプレートの近位面は、前記柔軟な皮膚バリアリングの遠位面に取り付けられるように適合される、オストミー装具システム。
《態様16》
前記ベースプレートは、皮膚の膨らみ又はヘルニアに位置するストーマの周りのユーザの皮膚表面に取り付けられるように適合可能な種類のものであり、前記ベースプレートは、湾曲され、且つ反転可能であり、且つ前記ベースプレートの縁部に沿って半径方向に延びる花弁状部分を設けられる、態様15に記載のオストミー装具システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7