(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240925BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20240925BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/06 300
(21)【出願番号】P 2021561214
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039064
(87)【国際公開番号】W WO2021106417
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019216869
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/202958(WO,A1)
【文献】特開2016-122749(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037803(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107785444(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
第1主面及び第2主面を有する半導体基板の前記第2主面にパッシベーション層を積層する工程と、
前記半導体基板の前記第1主面に、第1方向に延びる複数の第1収集電極を積層する工程と、
前記半導体基板の前記第1主面の前記第1方向の一方の端部領域に、前記複数の第1収集電極を接続するよう前記第1方向に交差する第2方向に延びる第1接続電極を積層する工程と、
レーザーの照射により、前記パッシベーション層に、前記半導体基板の全長に亘って、それぞれ前記第1方向に沿うよう、互いに間隔を空けて平行に配置される複数の接続開口を形成する工程と、
前記パッシベーション層の前記第1方向に前記第1接続電極と反対側の端部領域に、前記第1方向にみて前記接続開口と重複しないよう前記第2方向に並んで複数の第2接続電極を積層する工程と、
前記接続開口内に露出する前記半導体基板、前記パッシベーション層、及び前記第2接続電極に跨り、前記第2接続電極の中央部を露出する第2収集電極を積層する工程と、
を備える、太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的光電変換効率が高い太陽電池として、PERC(Passibated Emitter and Rear Cell)と呼ばれる構造を有する太陽電池が知られている。PERC型太陽電池は、半導体基板の裏面(受光面と反対側の面)にパッシベーション膜が形成されることにより、生成されたキャリアが半導体基板の裏面で再結合することを抑制して比較的高い光電変換率が得られる。PERC型太陽電池では、パッシベーション膜に開口を形成し、半導体基板の開口から露出する部分(ベース領域)から電力を取り出す必要がある。このため、PERC型太陽電池は、パッシベーション膜の裏面側を覆い、開口の内部に充填されて半導体基板と接続された収集電極を有する。
【0003】
通常、PERC型太陽電池において、収集電極は、半導体基板と合金化することによってより多くの正孔を有し、キャリアの再結合を抑制するBSF(Back Surface Field)を形成できるアルミニウムを主成分とする導電性ペースト(アルミニウムペースト)によって形成される。しかしながら、アルミニウムペーストだけでは電気抵抗が大きくなりやすいため、パッシベーション膜の非開口領域に銀粒子を主体とする導電性ペースト(銀ペースト)によって比較的電気抵抗か小さい接続電極を設ける構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なPERC型太陽電池では、特許文献1に記載されるように、表面側の接続電極と裏面側の接続電極とが平面視で重複するよう配置される。このような太陽電池を複数接続して太陽電池モジュールを形成する場合には、1つの太陽電池の表面側の接続電極と隣接する太陽電池の裏面側の接続電極との間がインターコネクタと呼ばれる導電部材によって接続される。一方、表裏の接続電極を反対側の端部領域に配置し、1つの太陽電池の表側の接続電極に隣接する太陽電池の裏側の接続電極を直接接続することで、表面に接続電極が露出しないようにして総合的な光電変換効率を向上するシングリング構造の太陽電池モジュールも知られている。しかしながら、上述のようなPERC型太陽電池では、裏面側の接続電極を設ける領域には、パッシベーション膜に集電のための開口を設けることができないので集電効率が低い領域が形成されるため、光電変換効率を十分に向上することができない。そこで、本発明は、光電変換効率が高い太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る太陽電池は、第1主面及び第2主面を有する板状に形成され、前記第2主面にその全長に亘ってそれぞれ第1方向に沿うよう互いに間隔を空けて平行に配置された複数のベース領域を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記第1主面に配置され、前記第1方向に延びる複数の第1収集電極と、前記半導体基板の前記第1主面の前記第1方向の一方の端部領域に配置され、前記複数の第1収集電極を接続するよう前記第1方向に交差する第2方向に延びる第1接続電極と、前記半導体基板の前記第2主面に積層され、前記ベース領域をそれぞれ露出する複数の接続開口が形成されたパッシベーション層と、前記パッシベーション層の前記第1方向に前記第1接続電極と反対側の端部領域に、前記第1方向に見て前記接続開口と重複しないよう前記第2方向に並んで配置される複数の第2接続電極と、前記接続開口内に露出する前記ベース領域、前記パッシベーション層、及び前記第2接続電極に跨って配置され、前記第2接続電極の中央部を露出する第2収集電極と、を備える。
【0007】
本発明の太陽電池において、前記第2収集電極は、前記第1方向の両端部において、前記パッシベーション層の端部を露出してもよい。
【0008】
本発明に係る太陽電池において、前記第2収集電極は、前記半導体基板の前記第1方向の両端部において、前記接続開口を選択的に被覆してもよい。
【0009】
本発明に係る太陽電池において、前記第2接続電極は複数の銀粒子とバインダとを含み、前記第2収集電極は複数のアルミニウム粒子とバインダとを含んでもよい。
【0010】
本発明の別の態様に係る太陽電池モジュールは、前記太陽電池を複数備え、前記太陽電池の前記第1接続電極に他の前記太陽電池の前記第2接続電極が直接接続されている。
【0011】
本発明の別の態様に係る太陽電池の製造方法は、第1主面及び第2主面を有する半導体基板の前記第2主面にパッシベーション層を積層する工程と、前記半導体基板の前記第1主面に、第1方向に延びる複数の第1収集電極を配置する工程と、前記半導体基板の前記第1主面の前記第1方向の一方の端部領域に、前記複数の第1収集電極を接続するよう前記第1方向に交差する第2方向に延びる第1接続電極を配置する工程と、レーザーの照射により、前記パッシベーション層に、前記半導体基板の全長に亘ってそれぞれ前記第1方向に沿うよう互いに間隔を空けて平行に配置される複数の接続開口を形成する工程と、前記パッシベーション層の前記第1方向に前記第1接続電極と反対側の端部領域に、前記第1方向に見て前記接続開口と重複しないよう前記第2方向に並んで複数の第2接続電極を配置する工程と、前記接続開口内に露出する前記半導体基板、前記パッシベーション層、及び前記第2接続電極に跨り、前記第2接続電極の中央部を露出する第2収集電極を配置する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光電変換効率が高い太陽電池、太陽電池モジュール及び太陽電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る太陽電池の平面図である。
【
図5】
図1の太陽電池の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図1の太陽電池を備える太陽電池モジュールの平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る太陽電池の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0015】
<太陽電池>
図1乃至
図4に、本発明の第1実施形態に係る太陽電池1を示す。
図1は太陽電池の平面
図1、
図2は太陽電池1の裏面図(
図1から上限方向に裏返した状態を示す)、
図3は太陽電池1の
図1におけるA-A線断面図、
図4は太陽電池1の
図1におけるB-B線断面図である。
【0016】
本実施形態の太陽電池1は、第1主面(受光面)及び第2主面(裏面)を有する板状の半導体基板10と、半導体基板10の第1主面に配置される複数の第1収集電極20と、半導体基板10の第1主面に配置される第1接続電極30と、半導体基板10の第1主面の第1収集電極20間の領域を覆う反射防止層40と、半導体基板10の第2主面に積層されるパッシベーション層50と、パッシベーション層50の裏面に配置される複数の第2接続電極60と、パッシベーション層50の裏面に配置される第2収集電極70と、を備える。なお、
図1及び
図2では、分かりやすくするために、第1収集電極20、第1接続電極30及び第2収集電極70にはハッチングを付している。
【0017】
半導体基板10は、第1の導電型を示す基材層11と、第1主面側に形成され、第1の導電型と異なる第2の導電型を示すエミッタ層12と、第2主面側に配置された複数のベース領域13と、を有する。半導体基板10は、基材層11を構成する材料からなり、第1の導電型を示す基材から形成することができる。
【0018】
基材層11(半導体基板10の基材)は、例えばボロン、ガリウム等を含有する多結晶シリコン基板又は単結晶シリコン基板によって構成することができる。
【0019】
エミッタ層12は、半導体基板10の第1主面全体に形成される。エミッタ層12は、基材層11との間にキャリアを通過するpn接合を形成する。これにより、エミッタ層12は、キャリアに対応する電荷を帯びる。
【0020】
エミッタ層12は、半導体基板10の基材の第1主面の表層に例えばリン等のドーパントをドープすることによって形成することができる。具体的には、エミッタ層12は、熱拡散によって結晶シリコン基板の表面から数μmの厚み領域にドーパントを拡散させることによって形成することができる。また、エミッタ層12は、結晶シリコン基板の表面に5nm以上20nm以下程度の厚みを有する非晶質シリコン層等を製膜することによって形成されてもよい。
【0021】
ベース領域13は、基材層11よりも強い第1の導電型を示し、エミッタ層12とは反対の電荷を帯びるBSF(Back Surface Field)と呼ばれる電場を形成する。これにより、ベース領域13は、多数キャリアを引き付け、少数キャリアをエミッタ層12側に追い返すことで、キャリアライフタイムを増大させる。
【0022】
ベース領域13は、半導体基板10の第2主面に、それぞれ半導体基板10を横断するよう半導体基板10の全長に亘って第1方向に沿って線状に延び、互いに間隔を空けて平行に配置される。好ましくは、半導体基板10の第2主面の全体に一定の間隔で並んだストライプ状に配置される。なお、「線状」とは、一定の幅で連続して延びるものに限られず、例えば破線状乃至点線状等、切れ目を有してもよい。また、ベース領域13の幅は一定でなくてもよく、例えば円、楕円等の集合として形成される幅が繰り返し変化するような形状を有してもよい。
【0023】
ベース領域13は、後述する第2収集電極70の主体となる金属を半導体基板10の基材の第2主面の表層に拡散させて合金化したものとすることができ、例えばアルミシリサイドによって形成され得る。
【0024】
第1収集電極20は、エミッタ層12から集電するために設けられるいわゆるフィンガー電極であり、半導体基板10の第1主面にそれぞれ第1方向に延びる細い線状に形成される。第1収集電極20は、好ましくは一定の間隔を空けて、互いに平行に配置される。第1収集電極20は、集電効率を向上するために、平面視でベース領域13と交互に配置されるよう形成されることが好ましい。第1収集電極20は、導電性ペーストの印刷及び焼成により形成することができ、電気抵抗を小さくするために、銀粒子とバインダとを含む銀ペーストによって形成することが好ましい。
【0025】
第1収集電極20は、半導体基板10への光の入射を阻害するため、導電性を確保できる範囲内で幅をできるだけ小さくすることが望ましい。具体的には、第1収集電極20の幅は、30μm以上100μm以下とすることが好ましい。
【0026】
第1接続電極30は、半導体基板10の第1主面の第1方向の一方の端部領域に、第1収集電極20を接続するよう、第1方向に交差する第2方向に延びるように形成される。第1接続電極30は、各第1収集電極20が集めた電流を合流させて、隣接する太陽電池1又は外部の回路に接続する。このため、第1接続電極30は、第1収集電極20よりも幅が大きい帯状に形成される。第1接続電極30は、全ての第1収集電極20に接続されるよう、半導体基板10を第2方向に横断するように形成されることが好ましい。第1接続電極30は、例えば銀ペースト等の導電性ペーストの印刷及び焼成により形成することができ、第1収集電極20の成形時に第1収集電極20と一体に形成することが好ましい。
【0027】
反射防止層40は、太陽電池1の表面における光の反射を抑制し、太陽電池1の内部に入射する光量を増大させる。反射防止層40は、例えば窒化ケイ素によって構成することができる。具体的には、半導体基板10の表面に窒化処理を施すことにより、半導体基板10の表面を窒化して反射防止層40に変性することができる。また、反射防止層40を形成した半導体基板10の表面に電性ペーストの印刷及び焼成により第1収集電極20及び第1接続電極30を形成することで、第1収集電極20及び第1接続電極30が反射防止層40を貫通し、第1収集電極20及び第1接続電極30が形成されない部分に反射防止層40を残すことができる。
【0028】
パッシベーション層50は、半導体基板10の第2両主面の表面の欠陥準位を化学的に終端することにより、キャリアの再結合を抑制する。パッシベーション層は、窒化ケイ素によって形成することができ、窒化ケイ素の薄膜の裏面側にさらに第2収集電極70との接着性を向上するアルミナの薄膜を積層した構成としてもよい。
【0029】
パッシベーション層50は、それぞれベース領域13を露出するよう形成された複数の接続開口51を有する。このため、接続開口51は、各ベース領域13に対応し、それぞれ第1方向に沿って半導体基板10を横断するよう線状に延び、互いに平行に配設される。したがって、接続開口51の形状は、ベース領域13の形状と同様に、連続した線状のものに限られず、例えば破線状乃至点線状等、切れ目を有する線状であってもよい。また、接続開口51の幅は一定でなくてもよく、例えば円、楕円等の集合として形成される幅が繰り返し変化するような形状を有してもよい。
【0030】
接続開口51は、後で詳しく説明するように、半導体基板10の第2両主面全体に積層したパッシベーション層50の一部をレーザー照射等によって除去することによって形成することができる。
【0031】
第2接続電極60は、パッシベーション層50の第1方向の第1接続電極30と反対側の端部領域に、第1方向に見て、接続開口51と重複しないよう第2方向に並んで積層される。この複数の第2接続電極60は、従来の太陽電池における単一の接続電極(バスバー)からベース領域13と重複する領域を除去することにより複数に分割したものである。第2接続電極60のベース領域13部分の除去による電気抵抗の増加は、第2接続電極60の第1方向の幅を大きくすることで補完することができる。
【0032】
第2接続電極60は、平面視において第1接続電極30とは重複しない。つまり、半導体基板10の第2接続電極60が配設される側の端部領域の表面側には第1接続電極30が配置されておらず、第1収集電極20が配設され、その裏面側にはベース領域13が形成されている。これにより、太陽電池1は、第2接続電極60が配設される側の端部領域においても光電変換を行うことができる。
【0033】
第2接続電極60は、導電性ペーストの印刷及び焼成により形成することができる。第2接続電極60は、銀粒子とバインダとを含み、導電性に優れる銀ペーストを用いて形成されることが好ましい。第2接続電極60と接続開口51との間には、導電性ペーストの印刷に誤差があっても第2接続電極60が接続開口51と重ならないようにマージンを設けることが好ましい。
【0034】
第2収集電極70は、接続開口51内に露出するベース領域13、パッシベーション層50、及び第2接続電極60に跨って、第2接続電極60の中央部を露出するよう積層される。この第2収集電極70は、半導体基板10のベース領域13と第2接続電極60との間を接続する。第2収集電極70は、パッシベーション層50の裏面を広く覆うことによって、ベース領域13と第2接続電極60との間の電気抵抗を低減すると共に、第2収集電極70を剥離し難くすることができる。
【0035】
但し、第2収集電極70は、第1方向の両端部においては、パッシベーション層50の端部を露出することが好ましい。第2収集電極70がパッシベーション層50の端部を露出することによって、第2収集電極70と第1収集電極20又は第1接続電極30との短絡のリスクを低減することができる。より好ましくは、第2収集電極70は、半導体基板10の両端部において、接続開口51を選択的に被覆する。これにより、第2収集電極70と第1収集電極20又は第1接続電極30との短絡のリスクを小さくしながら、半導体基板10の第1方向の端部からも集電することができる。
【0036】
第2収集電極70の第2接続電極60との重複幅は、第2接続電極60の前記第1接続電極30の側(第1方向の半導体基板10の端部までの距離が大きい側)において最大とされることが好ましい。これにより、第2接続電極60と第2収集電極70との接合面積が第2収集電極70の電流密度が大きい側においてより大きくなるので、電流が第2収集電極70内を流れる距離が大きい部分の電気抵抗を小さくして、より効率よく集電することができる。
【0037】
第2収集電極70は、導電性ペーストの印刷及び焼成により形成することができる。第2収集電極70は、半導体基板10の基材に拡散して第1の導電性を増大することによってベース領域を形成できる金属を主体とすることが好ましい。具体的には、第2収集電極70は、アルミニウム粒子とバインダとを含むアルミニウムペーストを用いて形成することが好ましい。
【0038】
太陽電池1は、第2接続電極60が配設される端部領域にもベース領域13が形成され、半導体基板10の第2接続電極60の表面側領域において生成される電力も回収することができる。このため、太陽電池1は、光電変換効率が高い。また、太陽電池1は、第2接続電極60が接続開口51の間に配置されるので、第2接続電極60の第1方向の幅を大きくすることによって光電変換効率を低下させることなく電気抵抗を低減することができる。
【0039】
<太陽電池の製造方法>
太陽電池1は、本発明に係る太陽電池の製造方法によって製造することができる。以下、本発明に係る太陽電池の製造方法の一実施形態について、
図5を参照しながら、太陽電池1の製造を例にとって説明する。
【0040】
太陽電池1は、半導体基板10にエミッタ層12を形成する工程(ステップS1:エミッタ層形成工程)と、半導体基板10に反射防止層40を積層する工程(ステップS2:反射防止層積層工程)と、半導体基板10の第2主面にパッシベーション層50を積層する工程(ステップS3:パッシベーション層積層工程)と、半導体基板10の第1主面に第1収集電極20を配置する工程(ステップS4:第1収集電極積層工程)と、半導体基板10の第1主面に第1接続電極30を配置する工程(ステップS5:第1接続電極積層工程)と、レーザーの照射によりパッシベーション層50に接続開口51を形成する工程(ステップS6:接続開口形成工程)と、パッシベーション層50に第2接続電極60を配置する工程(ステップS7:第2接続電極積層工程)と、接続開口51内に露出する半導体基板10、パッシベーション層50、及び第2接続電極60に跨って第2収集電極70を配置する工程(ステップS8:第2収集電極積層工程)と、を備える、製造方法によって製造することができる。なお、一部の工程は、その順番を入れ替えたり、他の工程と同時に行ったりすることができる。
【0041】
(エミッタ層形成工程)
ステップS1のエミッタ層形成工程では、半導体基板10の基材の表面に、基材と異なる導電性を発現させるドーパントをドープすることによりエミッタ層12を形成する。また、エミッタ層形成工程では、成膜技術により半導体基板10の基材の表面に基材と異なる導電性を有する材料の層を積層することによってエミッタ層12を形成してもよい。
【0042】
(反射防止層積層工程)
ステップS2の反射防止層積層工程では、半導体基板10の窒化を行うことにより、反射防止層40を形成することができる。また、半導体基板10の表面に反射防止層40を形成する材料を積層することによって反射防止層40を形成してもよい。
【0043】
(パッシベーション層積層工程)
ステップS3のパッシベーション層積層工程では、周知の成膜技術により半導体基板10の第2主面にパッシベーション層50を積層する。
【0044】
(第1収集電極積層工程)
ステップS4の第1収集電極積層工程では、導電性ペーストの印刷及び焼成により、半導体基板10の第1主面に第1収集電極20を形成する。導電性ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷を採用することができる。
【0045】
(第1接続電極積層工程)
ステップS5の第1接続電極積層工程では、導電性ペーストの印刷及び焼成により、半導体基板10の第1主面に、第1収集電極20を接続するよう第2方向に延びる第1接続電極30を形成する。この第1接続電極積層工程は、ステップS4の第1収集電極積層工程と同時に行うことが好ましい。つまり、導電性ペーストを第1収集電極20と第1接続電極30を含むパターンで半導体基板10の表面に印刷し、焼成することにより、第1収集電極20及び第1接続電極30を一体に形成することが好ましい。
【0046】
(接続開口形成工程)
ステップS6の接続開口形成工程では、レーザーの照射により、パッシベーション層50を部分的に除去することで、接続開口51を形成することができる。レーザーを第1方向に走査してストライプ状の接続開口51を形成する場合、一般に、レーザー照射位置の第1方向の精度は、第2方向の精度と比べて低くなる。しかしながら、太陽電池1では接続開口51が第1方向に連続して半導体基板10の全長に亘って形成されるため、レーザー照射の第1方向の精度を考慮する必要がない。この接続開口51はレーザーパルスが断続的に照射された、点線状であっても良い。この場合、点線を構成する点同士の間隔は、パルス周期とレーザー走査速度によって決定され、例えば0.1mm以上1mm以下とすることができる。
【0047】
(第2接続電極積層工程)
ステップS7の第2接続電極積層工程では、電気抵抗が小さい導電性ペーストの印刷及び焼成により、パッシベーション層50の第1方向に第1接続電極30と反対側の端部領域に、第1方向に見て接続開口51と重複しないよう第2方向に並んで複数の第2接続電極60を積層する。前述の接続開口51が点線状であった場合も、接続開口51が連続線である場合と同様に、接続開口51線が形成された線状乃至帯状の領域と重複しないように配置され、点線の点と点の間に第2接続電極60が配置されることはない。点線における各点の位置(レーザーパルスのタイミング)は、厳密に制御されておらず、印刷版と整合させることは技術的に困難であり、またメリットも少ない。レーザー走査速度を低減することで、点の位置を向上させることは出来るが、生産性が悪くなりコスト増となってしまう。点線状にすることで、一つのレーザーパルスが一つの開口を形成することになるので、レーザーによる半導体基板10への影響を制御することが容易になる。
【0048】
(第2収集電極積層工程)
ステップS8の第2収集電極積層工程では、ベース領域13との接続性に優れる導電性ペーストの印刷及び焼成により、接続開口51内に露出する半導体基板10(つまりベース領域13)、パッシベーション層50、及び第2接続電極60に跨り、第2接続電極60の中央部を露出するよう第2収集電極70を積層する。第2接続電極60と第2収集電極70の積層幅は0.05mm以上0.4mm以下であることが、材料使用効率及び両電極間の接続抵抗の観点から好ましい。第2収集電極70は、個々の太陽電池1を分離するために半導体基板10を切断する領域(分離後の太陽電池1の半導体基板10の第1方向の両端部)の少なくとも接続開口51の近傍領域以外の部分を露出することが好ましい。こうすることで、接続開口51を第2収集電極70で完全に被覆しつつ、端部近傍を被覆する第2収集電極70を最小限にすることができる。
【0049】
印刷された導電性ペーストを焼成する際、導電性ペーストの金属が半導体基板10の接続開口51から露出する領域に拡散して合金化する。第2収集電極70をアルミニウムペーストにより形成することで、半導体基板10の第2主面を局所的にアルミシリサイドに変性してベース領域13を形成することができる。
【0050】
<太陽電池モジュール>
続いて、
図6及び7を参照しながら、太陽電池1を用い太陽電池モジュール100について説明する。太陽電池モジュール100は、本発明に係る太陽電池モジュールの一実施形態である。
【0051】
太陽電池モジュール100は、
図1乃至
図4の太陽電池1を複数備える。太陽電池モジュール100は、それぞれ複数の太陽電池1を接続して形成される複数の太陽電池ストリング110と、太陽電池ストリング110の表面側に配置される表側保護部材120と、太陽電池ストリング110の裏面側に配置される裏側保護部材130と、表側保護部材120及び裏側保護部材130間の隙間に充填される封止材140と、太陽電池ストリング間を接続する接続部材150と、を備える。
【0052】
太陽電池ストリング110は、複数の太陽電池1を第1方向の端部を重ねるシングリング方式で接続したものである。太陽電池ストリング110において、隣接し合う2つの太陽電池1間において、一方の太陽電池1の第1接続電極30に、他方の太陽電池1の第2接続電極60が、導電性接着剤、半田等の接続材料99を用いて直接接続されている。太陽電池ストリング110を形成する際にAgを主材料とする接続材料99がベース領域13に直接触れると、暗電流が増加して性能が低下することがあるので、接続開口51は第2収集電極70で完全に覆われていることが好ましい。また、第1接続電極30上の接続材料99がはみだして反対側の主面に到達した場合であっても、第2収集電極70に触れなければ短絡しないので、第1接続電極30の裏面側の端部領域における第2収集電極70の被覆面積はなるべく小さいことが好ましい。
【0053】
太陽電池ストリング110において、太陽電池1は、半導体基板10への光の入射を阻害する第1接続電極30が設けられる端部領域に他の太陽電池1の光電変換に寄与する反対側の端部領域が重ねられる。このため、太陽電池ストリング110は、その全面が光電変換に寄与する。とりわけ、太陽電池ストリング110は、半導体基板10の裏面側に第2接続電極60が設けられる領域にも均等にベース領域13が配設されている太陽電池1を用いることにより光電変換効率が低い部分がないので光電変換効率が高い。
【0054】
表側保護部材120は、封止材140を介して、太陽電池ストリング110、すなわち太陽電池1の第1主面を覆うことにより、太陽電池1を保護する。表側保護部材120は、板状またはシート状の材料から形成することができ、透光性及び対候性に優れることが好ましい。具体的には、表側保護部材120の材質としては、例えばアクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂、ガラスなどを挙げることができる。また、表側保護部材120の表面は、光の反射を抑制するために、凹凸状に加工されたり、反射防止コーティング層で被覆されてもよい。
【0055】
裏側保護部材130は、封止材140を介して、太陽電池ストリング110の裏面を覆って、太陽電池1を保護する。裏側保護部材130は、表側保護部材120と同様に、板状またはシート状の材料から形成することができ、遮水性に優れることが好ましい。具体的には、裏側保護部材130としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂フィルムと、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が好適に用いられる。
【0056】
封止材140は、太陽電池ストリング110、すなわち太陽電池1を封止して保護するもので、太陽電池1の受光側の面と表側保護部材120との間、及び太陽電池1の裏側の面と裏側保護部材130との間に介在する。
【0057】
封止材140は、太陽電池ストリング110と表側保護部材120及び裏側保護部材130とを接着すると共に、太陽電池ストリング110の周囲の隙間をなくすことで、太陽電池1を保護する。このため、封止材140としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性を有する熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0058】
接続部材150は、太陽電池ストリング110の一端の太陽電池1の第1接続電極30間と、太陽電池ストリング110の他端の太陽電池1の第2接続電極60間をそれぞれ接続する。接続部材150は、太陽電池モジュール100の外部の回路に接続可能に、表側保護部材120及び裏側保護部材130の間から外側に延出している。
【0059】
太陽電池モジュール100は、光電変換効率が高い太陽電池1を用いた太陽電池ストリング110を備えるため、光電変換効率が高い。
【0060】
続いて、
図8に、本発明の第2実施形態に係る太陽電池1Aを示す。
図8の太陽電池1Aは、
図1の太陽電池1に換えて
図7の太陽電池モジュール100に用いることができる。
図8の太陽電池1Aについて、
図1の太陽電池1と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0061】
図8の太陽電池1Aは、
図1の太陽電池1の第2収集電極70とは異なる平面形状を有する第2収集電極70Aを備える。つまり、
図8の太陽電池1Aは、
図1の太陽電池1の第2収集電極70を平面形状が異なる第2収集電極70Aに置き換えたものである。
【0062】
第2収集電極70Aは、接続開口51内に露出するベース領域13、第2接続電極60及びパッシベーション層50の第2接続電極60近傍領域を覆うよう選択的に積層されている。第2収集電極70Aのベース領域13を覆う部分は、製造誤差を考慮して、接続開口51内のベース領域13を露出させない程度に、パッシベーション層50の接続開口51近傍領域を覆っている。
【0063】
太陽電池1Aは、裏面側の第2収集電極70Aが配置されていない部分からも光を取り込むことができるので、使用する環境によっては出力を向上することができる。また、太陽電池1Aは、第2収集電極70Aを形成する材料の使用量が比較的少ないため、安価に提供することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,1A 太陽電池
10 半導体基板
11 基材層
12 エミッタ層
13 ベース領域
20 第1収集電極
30 第1接続電極
40 反射防止層
50 パッシベーション層
51 接続開口
60 第2接続電極
70,70A 第2収集電極
100 太陽電池モジュール
110 太陽電池ストリング
120 表側保護部材
130 裏側保護部材
140 封止材
150 接続部材